JP7023623B2 - 転写型インクジェット記録装置、及び転写型インクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
一方、転写型インクジェット記録装置においては、転写体に隣接して付与されたインク同士が混ざり合うブリーディングや、先に着弾したインクが後に着弾したインクに引き寄せられてしまうビーディングが生じる場合がある。
これに対して、インク付与に先立って、インク中の色材等の固形分を凝集させるなどしてインクを高粘度化させる反応液(処理液ともいう)を付与し、インクドット間の干渉を抑制してブリーディングやビーディングを抑制する技術が知られている。
反応液とインクを用いて中間画像を形成する方法では、転写体への液体成分の総付与量が大きくなる傾向がある。
特許文献1には、転写体上の画像に含まれる液体成分を除去する手段として、熱エネルギーを用いずに、多孔質体を液吸収部材として用いることで、転写体上のインクから液体成分を吸収し、除去する方法が開示されている。
また、特許文献2には、転写体上の画像と記録媒体とに赤外線を照射し、画像よりも記録媒体の温度の方が高い状態にして、転写を行う方法が開示されている。これにより、転写体と画像の付着力よりも、画像と記録媒体との付着力が大きくなり、良好な転写を行うことができる。
しかしながら、酸を含む反応液とインクとを用いて形成された画像の加熱処理における温度条件によっては、繰り返し使用される転写体の劣化による耐久性の低下が生じる可能性がある。
本発明の目的は、酸を含む反応液とインクによって転写体上に形成した画像の加熱処理による転写体の劣化を防止することができる転写型インクジェット記録装置及び転写型インクジェット記録方法を提供することにある。
転写体に、インク増粘用の酸を含む反応液と、水性液媒体と樹脂微粒子と色材を含むインクとを付与し、水性液体成分と該色材を含む第一の画像を形成する画像形成ユニットを備える画像形成部と、
前記第一の画像と接触し、該第一の画像から液体成分の少なくとも一部を吸収して第二の画像を形成する多孔質体を有する液吸収部材を備える液吸収部と、
前記第二の画像を前記樹脂微粒子の最低造膜温度以上に加熱する加熱装置を有する加熱部と、
前記加熱部により加熱された第二の画像を、記録媒体に転写する転写部と
を有する転写型インクジェット記録装置であって、
前記転写体の劣化を防止する劣化防止剤を前記多孔質体に付与する劣化防止剤付与装置を備える劣化防止処理部を有し、
前記転写体上の前記反応液が付与され、かつ前記インクが付与されていない領域に前記劣化防止剤が付与された前記液吸収部の多孔質体が接触することで、前記領域に前記劣化防止剤を付与し、前記劣化防止剤付与装置は、前記液吸収部の多孔質体が接触した前記領域のpHが中性からアルカリ性となるように前記劣化防止剤を前記多孔質体に付与することを特徴とする。
本発明にかかる転写型インクジェット記録装置の一態様は、
転写体に、インク増粘用の酸を含む反応液と、水性液媒体と樹脂微粒子と色材を含むインクとを付与し、水性液体成分と該色材を含む第一の画像を形成する画像形成ユニットを備える画像形成部と、
前記第一の画像と接触し、該第一の画像から液体成分の少なくとも一部を吸収することで、当該画像を構成するインクを濃縮して第二の画像を形成する多孔質体を有する液吸収部材を備える液吸収部と、
前記第二の画像を前記樹脂微粒子の最低造膜温度以上に加熱する加熱装置を有する加熱部と、
前記加熱部により加熱された第二の画像を、記録媒体に転写する転写部と
を有する転写型インクジェット記録装置であって、
前記転写体の劣化を防止する劣化防止剤を前記多孔質体に付与する劣化防止剤付与装置を備える劣化防止処理部を有し、
前記転写体上の前記反応液が付与され、かつ前記インクが付与されていない領域に前記劣化防止剤が付与された前記液吸収部の多孔質体が接触することで、前記領域に前記劣化防止剤を付与し、前記劣化防止剤付与装置は、前記液吸収部の多孔質体が接触した前記領域のpHが中性からアルカリ性となるように前記劣化防止剤を前記多孔質体に付与することを特徴とする。
本発明にかかる転写型インクジェット記録方法の一態様は、
転写体に、インク増粘用の酸を含む反応液と、水性液媒体と樹脂微粒子と色材を含むインクと、を付与し、水性液体成分と該色材を含む第一の画像を形成する画像形成工程と、
液吸収部材の有する多孔質体を前記第一の画像に接触させて、該第一の画像から液体成分の少なくとも一部を吸収して第二の画像を形成する液吸収工程と、
前記第二の画像を前記樹脂微粒子の最低造膜温度以上に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程により加熱された第二の画像を、記録媒体に転写する転写工程と
を有する転写型インクジェット記録方法であって、
前記転写体の劣化を防止する劣化防止剤を前記多孔質体に付与する劣化防止剤付与工程を有し、
前記転写体上の前記反応液が付与され、かつ前記インクが付与されていない領域に前記劣化防止剤が付与された前記多孔質体が接触することで、前記領域に前記劣化防止剤を付与し、前記劣化防止剤付与工程において、前記多孔質体が接触した前記領域のpHが中性からアルカリ性となるように前記劣化防止剤を前記多孔質体に付与することを特徴とする。
本発明にかかる転写型インクジェット記録方法の一態様は、
転写体に、インク増粘用の酸を含む反応液と、水性液媒体と樹脂微粒子と色材を含むインクと、を付与し、水性液体成分と該色材を含む第一の画像を形成する画像形成工程と、
液吸収部材の有する多孔質体を前記第一の画像に接触させて、該第一の画像から液体成分の少なくとも一部を吸収することで、当該画像を構成するインクを濃縮して第二の画像を形成する液吸収工程と、
前記第二の画像を前記樹脂微粒子の最低造膜温度以上に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程により加熱された第二の画像を、記録媒体に転写する転写工程と
を有する転写型インクジェット記録方法であって、
前記転写体の劣化を防止する劣化防止剤を前記多孔質体に付与する劣化防止剤付与工程を有し、
前記転写体上の前記反応液が付与され、かつ前記インクが付与されていない領域に前記劣化防止剤が付与された前記多孔質体が接触することで、前記領域に前記劣化防止剤を付与し、前記劣化防止剤付与工程において、前記多孔質体が接触した前記領域のpHが中性からアルカリ性となるように前記劣化防止剤を前記多孔質体に付与することを特徴とする。
画像に含まれる液体成分の量が多い場合には、特許文献1に記載されるような多孔質体による液吸収部材による液吸収処理に加えて、高温条件での加熱処理を併用することが有効である。このような加熱処理の併用によって、高速画像形成に対応可能な液体除去効果を提供することができる。
一方、反応液及びインクの少なくとも一方に、加熱により軟化または溶融して被膜化する樹脂成分を添加した場合においては、樹脂成分による被膜化温度と、転写後の画像の温度との差を大きくすることで、画像の堅牢性をより向上させることができる。このような場合に対しても、多孔質体による液吸収処理と高温条件での加熱処理の併用は有効な手段である。
例えば、反応液を予め付与した転写体上に樹脂エマルションを含むインクを用いて画像を形成する場合、転写体上の画像に対して液吸収処理を行ってから樹脂エマルションの最低造膜温度(MFT:Minimum Filing Temperature)以上の温度に加熱して転写が行われる。特許文献1では、MFTの低い樹脂エマルションを用いることで、低温で転写できることが示されている。しかしながら、MFTの低い樹脂エマルションを使用した画像は堅牢性に劣ることが懸念される。本発明者らの検討では、画像の堅牢性を高めるためにはMFTが100℃以上となることが好ましい。この場合、転写性と画像の堅牢性を両立させるためには転写時の加熱温度は100℃以上とする必要がある。ところが、転写性の確保や画像堅牢性の向上のために加熱温度を上げると、酸を含む反応液を用いた場合には、反応液に含まれる酸が転写体と化学反応を起こし、転写体が劣化して耐久性が低下する場合があることが分かった。これは、インクと反応しなかった未反応の酸と転写体の表面の材料との反応と考えられる。インクが付与されず、未反応の酸が多く残る領域で劣化が起こりやすいことも分かった。
本発明者らは上記の転写体の劣化という課題について鋭意検討した結果、液吸収部材を利用して劣化防止剤を転写体に付与することにより、転写体の劣化を効率よく防止し、繰り返し使用における良好な耐久性を得ることができるとの新たな知見を得た。本発明は、かかる本発明者らの新たな知見に基づいて完成されたものである。
(A)転写体に、インク増粘用の酸を含む反応液と、水性液媒体と色材を含むインクと、を付与し、水性液体成分と該色材を含む第一の画像を形成する画像形成ユニットを備える画像形成部。
(B)第一の画像と接触し、第一の画像から液体成分の少なくとも一部を吸収して第二の画像を形成する多孔質体を有する液吸収部材を備える液吸収部。
(C)転写体の劣化を防止する劣化防止剤を前記多孔質体に付与する劣化防止剤付与装置を備える劣化防止処理部。
(D)第二の画像を加熱する加熱装置を有する加熱部。
(E)加熱部により加熱された第二の画像を、記録媒体に転写する転写部。
本発明にかかる転写型インクジェット記録方法は、以下の工程を有する。
(1)転写体に、インク増粘用の酸を含む反応液と、水性液媒体と色材を含むインクと、を付与し、水性液体成分と該色材を含む第一の画像を形成する画像形成工程。
(2)液吸収部材の有する多孔質体を第一の画像に接触させて、第一の画像から液体成分の少なくとも一部を吸収して第二の画像を形成する液吸収工程。
(3)転写体の劣化を防止する劣化防止剤を多孔質体に付与する劣化防止剤付与工程。
(4)第二の画像を加熱する加熱工程。
(5)加熱工程により加熱された第二の画像を、記録媒体に転写する転写工程。
本発明においては、転写体の劣化を防止する劣化防止剤が、液吸収部材の多孔質体を介して転写体に付与される。この劣化防止剤の付与方法を用いることによって、転写体への効率よい劣化防止剤の付与と、転写体の繰り返し使用における耐久性の向上を図ることが可能となる。更に、液吸収部材が、転写体への劣化防止剤の付与機能を兼備することによって、転写体周りに劣化防止剤の付与装置を別途配置する必要がなく、装置のコンパクト化にも対応することができる。
搬送装置を設け、画像形成部、液吸収部、加熱部及び転写部に対して転写体を相対的に移動させて上記の各工程を行うことが好ましい。後述するように、円筒状の支持部材の周面に転写体を配置した構成においては、搬送装置は支持部材とその回転駆動装置を有する構成とし、支持部材を回転させることで転写体を前記各部に対して移動させることができる。
<画像形成ユニット>
画像形成ユニットは、転写体上に水性液体成分と色材とを含む第一の画像を形成できるものであれば、特に限定されるものではない。なお、第一の画像とは、液吸収部材による液吸収処理に供される前の「液除去前インク像」のことをいう。また、液吸収処理を行って水性液体成分の含有量が低減された「液除去後インク像」のことを第二の画像と称する。
画像形成ユニットは、好ましくは、反応液を転写体上に付与する反応液付与部を構成する装置と、水性液媒体と色材を含むインクを転写体上に付与するインク付与部を構成する装置と、を有する。
液吸収処理対象としての第一の画像は、反応液とインクを、これらが少なくとも重複する領域を有するように転写体に付与することによって形成される。反応液により、転写体上にインクとともに付与された色材の定着性が促進され向上する。この色材の定着性の促進、向上は、転写体に付与されたインクが流動性を有している初期状態から、反応液の作用によってインク自体のあるいはインク中の色材の流動性が低下して、初期状態と比較して増粘して流動し難い固定化された状態となることをいう。そのメカニズムについては後述する。
第一の画像は、反応液とインクの混合物を含んで形成される。インクには水を含む水性液媒体が含まれており、また、必要に応じて反応液にも水を含む水性液媒体が含まれている。水性液媒体は、少なくとも水を含み、必要に応じて水溶性有機溶媒や各種の添加剤を含む。第一の画像には、これらの水性液媒体から供給される水を含む水性液体成分が色材とともに含まれる。
反応液及びインクの少なくとも一方には、水を第一の液体とした場合に、それ以外の第二の液体を含むことができる。第二の液体の揮発性の高低は問わないが、第一の液体よりも揮発性の高い液体であることが好ましい。
<反応液付与装置>
反応液付与装置は、反応液を転写体上に付与できるいかなる装置であってもよく、従来から知られている各種装置を適宜用いることができる。具体的には、グラビアオフセットローラ、インクジェットヘッド、ダイコーティング装置(ダイコータ)、ブレードコーティング装置(ブレードコータ)などが挙げられる。反応液付与装置による反応液の付与は、転写体上でインクと混合(反応)することができれば、インクの付与前に行っても、インクの付与後に行ってもよい。好ましくは、インクの付与前に反応液を付与する。反応液をインクの付与前に付与することによって、インクジェット方式による画像形成時に、隣接して付与されたインク同士が混ざり合うブリーディングや、先に着弾したインクが後に着弾したインクに引き寄せられてしまうビーディングの発生を抑制することができる。
反応液は、インク増粘用の成分(インク高粘度化成分)を含有する。インクの高粘度化とは、インクを構成している成分の一部である色材や樹脂等がインク高粘度化成分と接触することによって化学的に反応し、あるいは物理的に吸着し、これによってインク粘度の上昇が認められることである。このインクの高粘度化には、インク粘度の上昇が認められる場合のみならず、色材や樹脂などのインクを構成する成分の一部が凝集することにより局所的に粘度の上昇を生じる場合も含まれる。インクを構成する成分の一部を凝集する方法として、インク中の顔料の分散安定性を低下させる反応液を用いることができる。このインク高粘度化成分は、転写体上でのインク及び/又はインクを構成している成分の一部の流動性を低下せしめて、第一の画像形成時のブリーディングや、ビーディングを抑制する効果がある。インクを高粘度化することを“インクを粘稠する”とも称する。このようなインク高粘度化成分として、有機酸等の酸などの公知の高粘度化成分を用いることができる。
本実施形態においては、インク高粘度化成分として、少なくとも酸を用いる。複数の種類のインク高粘度化成分を含有させることも好適である。尚、反応液中のインク高粘度化成分の含有量は、反応液全質量に対して5質量%以上であることが好ましい。
高粘度化成分としての酸としては有機酸が好ましい。有機酸としては、例えば、シュウ酸、ポリアクリル酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、レブリン酸、コハク酸、グルタル酸、グルタミン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、オキシコハク酸、ジオキシコハク酸等が挙げられる。
反応液は、水性液媒体として水や低揮発性の有機溶剤を適量含有することができる。この場合に用いる水はイオン交換等により脱イオンした水であることが好ましい。また、反応液に用いることのできる有機溶剤としては、特に限定されず、公知の有機溶剤を用いることができる。
また、反応液は、界面活性剤や粘度調整剤を加えてその表面張力や粘度を適宜調整して用いることができる。用いられる材料としてはインク高粘度化成分と共存できるものであれば特に制限は無い。具体的に用いられる界面活性剤としては、アセチレングリコールエチレンオキシド付加物(製品名:アセチレノールE100、川研ファインケミカル株式会社製)、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(製品名:メガファックF444、DIC株式会社製)等のフッ素系界面活性剤などが挙げられる。
インクを付与するインク付与装置としてインクジェットデバイスを用いることができる。インクジェットデバイスの有するインクジェットヘッドの液体吐出の形態としては以下の形態等を挙げることができる。
・電気-熱変換体によりインクに膜沸騰を生じさせ気泡を形成することでインクを吐出する形態。
・電気-機械変換体によってインクを吐出する形態。
・静電気を利用してインクを吐出する形態。
本実施形態では、公知のインクジェットヘッドを用いることができる。中でも特に高速で高密度の印刷の観点からは電気-熱変換体を利用したものが好適に用いられる。描画は、画像信号を受け、各位置に必要なインク量を付与することにより行われる。
インク付与量は画像濃度(duty)やインク厚みで表現することができるが、本実施形態では各インクドットの質量に付与個数(吐出数)を掛け、印字面積で割った平均値をインク付与量(g/m2)とした。尚、画像領域における最大インク付与量とは、インク中の液体分を除去する観点より、被記録体の情報として用いられる領域内において、少なくとも5mm2以上の面積において付与されているインク付与量を示す。
インクジェットデバイスは、転写体上に各色のインクを付与するために、インクジェットヘッドを複数有していてもよい。例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクを用いてそれぞれの色画像を形成する場合、インクジェット記録装置は上記4種類のインクを被記録体上にそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッドを有する。
また、インク付与装置は、色材を含有しないインク(クリアインク)を吐出するインクジェットヘッドを含んでいてもよい。
(色材)
インクに含有される色材として、顔料、又は染料と顔料との混合物を用いることができる。色材として用いることができる顔料の種類は特に限定されない。顔料の具体例としては、カーボンブラックなどの無機顔料、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イミダゾロン系、ジケトピロロピロール系、ジオキサジン系などの有機顔料を挙げることができる。これらの顔料は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
色材として用いることができる染料の種類は特に限定されない。染料の具体例としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料、食用染料などを挙げることができ、アニオン性基を有する染料を用いることができる。染料骨格の具体例としては、アゾ骨格、トリフェニルメタン骨格、フタロシアニン骨格、アザフタロシアニン骨格、キサンテン骨格、アントラピリドン骨格などが挙げられる。
インク中の顔料の含有量は、インク全質量に対し0.5質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。
顔料を分散させる分散剤としては、インクジェット用インクに用いられる公知の分散剤を使用することができる。中でも本実施形態においては構造中に親水性部と撥水性部とを併せ持つ水溶性の分散剤を用いることが好ましい。特に、少なくとも親水性のモノマーと撥水性のモノマーとを含んで共重合させた樹脂からなる顔料分散剤が好ましく用いられる。ここで用いられる各モノマーについては特に制限はなく、公知のものが好適に用いられる。具体的には、撥水性モノマーとしては、スチレン及びその他のスチレン誘導体、アルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられる。
該分散剤の酸価は50mgKOH/g以上550mgKOH/g以下であることが好ましい。また、該分散剤の重量平均分子量は1000以上50000以下であることが好ましい。尚、顔料と分散剤との質量比(顔料:分散剤)としては1:0.1~1:3の範囲であることが好ましい。
また分散剤を用いず、顔料自体を表面改質して分散可能としたいわゆる自己分散顔料を用いることも好適である。
インクは、色材を有しない各種微粒子を含有させて用いることができる。中でも樹脂微粒子は画像品位や定着性の向上に効果がある場合があり好適である。
本発明に用いることのできる樹脂微粒子の材質としては、特に限定されず公知の樹脂を適宜用いることができる。具体的には、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリ尿素、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸及びその塩、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル、ポリジエン等の単独重合物、または、これらの単独重合物を生成するためのモノマーを複数組み合わせて重合した共重合物が挙げられる。該樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上2,000,000以下の範囲が好適である。またインク中における樹脂微粒子の量は、インク全質量に対して1質量%以上50質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以上40質量%以下である。
インクの調製には樹脂微粒子が液中に分散した樹脂微粒子分散体を用いることが好ましい。分散の手法については特に限定されないが、解離性基を有するモノマーを単独重合もしくは複数種共重合させた樹脂を用いて分散させた、いわゆる自己分散型樹脂微粒子分散体が好適である。ここで解離性基としてはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられ、この解離性基を有するモノマーとしてはアクリル酸やメタクリル酸等が挙げられる。また、乳化剤により樹脂微粒子を分散させた、いわゆる乳化分散型樹脂微粒子分散体も、同様に本発明に好適に用いることができる。ここでいう乳化剤としては、低分子量、高分子量に関わらず公知の界面活性剤が好ましい。該界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤か、もしくは樹脂微粒子と同じ電荷を持つ界面活性剤が好ましい。
樹脂微粒子分散体は、10nm以上1000nm以下の分散粒径を有することが好ましく、50nm以上500nm以下の分散粒径を有することがより好ましく、100nm以上500nm以下の分散粒径を有することが更に好ましい。
また、樹脂微粒子分散体を作製する際に、安定化のために各種添加剤を加えておくことも好ましい。該添加剤としては、例えば、n-ヘキサデカン、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、クロロベンゼン、ドデシルメルカプタン、青色染料(ブルーイング剤)、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
樹脂微粒子として、第二の画像中に含有された状態での加熱による軟化または溶融によって第二の画像の被膜化を更に促進可能な樹脂成分を含む樹脂微粒子を用いることが好ましい。
また。画像の堅牢性を高めるためには、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上の樹脂からなる樹脂微粒子を用いることが好ましい。
本発明に用いることのできるインクは界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、具体的には、アセチレングリコールエチレンオキシド付加物(製品名:アセチレノ-ルE100、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。インク中の界面活性剤の量は、インク全質量に対して0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
インクとしては、水性液媒体と色材を含む水性インクが用いられる。水性インクとしては、色材として少なくとも顔料を含む水性顔料インクを用いることができる。
水性液媒体は、少なくとも水を含み、更に、必要に応じて水溶性有機溶剤を含むことができる。水は、イオン交換等により脱イオンした水であることが好ましい。また、インク中の水の含有量は、インク全質量に対して30質量%以上97質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤の種類は特に限定されず、公知の有機溶剤をいずれも用いることができる。具体的には、グリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、2-ピロリドン、エタノール、メタノール、等が挙げられる。もちろん、これらの中から選択した2種類以上のものを混合して用いることもできる。
また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量は、インク全質量に対して3質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
(その他添加剤)
インクは上記成分以外にも必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、水溶性樹脂及びその中和剤、粘度調整剤など種々の添加剤を含有してもよい。
本実施形態では、第一の画像から水性液体成分の少なくとも一部を、多孔質体を有する液吸収部材と接触させることで吸収し、第一の画像中の液体成分の含有量を減少させる。液吸収部材の第一の画像との接触面を第一の面とし、第一の面に多孔質体が配置される。
(多孔質体)
多孔質体は、インクの色材の付着を抑制するため、孔径は小さいことが好ましく、少なくとも第一の画像と接触する側(第一の面)の多孔質体の孔径は、1μm以下であることが好ましい。なお、本発明において孔径とは平均直径のことを示し、公知の手段、例えば水銀圧入法や、窒素吸着法、SEM画像観察等により測定可能である。
また、均一に高い通気性とするために多孔質体の厚みを薄くすることが好ましい。通気性はJIS P8117で規定されるガーレ値で示すことができ、ガーレ値は10秒以下であることが好ましい。多孔質体の形状としては、特に制限されないが、ローラ形状、ベルト形状等が挙げられる。
但し、多孔質体を薄くすると、液体成分を吸収するために必要な容量を十分に確保できない場合があるため、多孔質体を多層構成とすることが可能である。また、液吸収部材は、転写体上の画像と接触する層が多孔質体であればよく、転写体上の画像と接触しない層は多孔質体でなくてもよい。
また、多孔質体の製法については特に制限は無く、従来から広く用いられている製法が適用できる。一例として特許第1114482号明細書に記載のポリテトラフルオロエチレンを含有する樹脂を2軸延伸する事により得られる多孔質体の製法が挙げられる。
本発明において、多孔質体形成用の材料は特に限定されることはなく、水に対する接触角が90°未満の親水性材料と、水に対する接触角が90°以上の撥水性材料のいずれも使用することができる。
親水性材料の場合、水に対する接触角が40°以下であることがより好ましい。第一の層が親水性材料で構成されている場合、毛管力により水性液体成分、特に水を吸い上げる効果がある。
親水性材料としては、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)など)、ポリウレタン、ナイロン、ポリアミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)など)、ポリスルフォン(PSF)等が挙げられる。
多孔質体は第一の画像に含まれる色材との親和性を低くするため、撥水性を有することが好ましい。撥水性の多孔質体は、純水との接触角は90°以上であることが好ましい。本発明者らの鋭意検討の結果、純水との接触角が90°以上である多孔質体を用いることで、多孔質体へのインクの色材の付着を抑制できることが分かった。本明細書における接触角とは、測定液体を対象物に滴下し、その液滴が対象物に接している部分での対象物表面と液滴の接線とがなす角度のことである。測定の技法にはいくつか種類があるが、本発明者はJIS R3257の「6.静滴法」に記載の技法に準拠して撥水性の測定を行った。
また、撥水性の多孔質体の材質については、純水との接触角は90°以上であれば特に限定されることはないが、撥水性樹脂からなるものが好ましい。更に、撥水性樹脂は、フッ素樹脂であることが好ましい。フッ素樹脂としては、具体的に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)が挙げられる。これらの樹脂は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができ、複数の膜が積層された構成でもよい。これらの中では、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
次に、多孔質体を多層構成とする場合の実施形態について説明する。ここでは第一の画像に接触する側の第一の層、第一の層の第一の画像との接触面と反対の面に積層される層を第二の層として説明する。さらに多層の構成についても順次第一の層からの積層順で表記する。なお、本明細書において、第一の層を「吸収層」、第二の層以降を「支持層」ということがある。
[第一の層]
第一の層は、先に「(多孔質体)」の項で説明した多孔質体から形成することができる。
色材の付着を抑制するため、及び、クリーニング性を高くするために、第一の層には上述した撥水性の多孔質体を用いることが好ましい。これらの樹脂は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができ、第一の層の中に複数の膜が積層された構成でもよい。
本発明において、第一の層の膜厚は、50μm以下であることが好ましい。膜厚は、30μm以下がより好ましい。本発明の実施例において、膜厚は、直進式のマイクロメーターOMV_25(ミツトヨ製)で任意の10点の膜厚を測定し、その平均値を算出することで得た。
第一の層は、公知の薄膜多孔質膜の製造方法により製造することができる。例えば、押出成形などの方法で樹脂材料のシート状物を得た後、所定の厚みに延伸することで得ることができる。また、押出成形時の材料にパラフィン等の可塑剤を添加し、延伸時に加熱などにより可塑剤を除去することで多孔質膜として得ることができる。孔径は添加する可塑剤の添加量、延伸倍率などを適宜調整することで調節することができる。
第二の層は通気性をもつ層であることが好ましい。このような層は樹脂繊維の不織布でもよいし、織布でも良い。第二の層の材料としては、特に限定されないが、第一の層側へ吸収した液体が逆流しないように、第一の層に対して画像から吸収される水性液体成分との接触角が同等かそれよりも低い材料であることが好ましい。具体的には、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリウレタン、ナイロン、ポリアミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタラート(PET)など)、ポリスルフォン(PSF)などの単一素材、またはこれらの複合材料などから好ましく選択される。また、第二の層は第一の層よりも孔径の大きな層であることが好ましい。
[第三の層]
多層構造の多孔質体は3層以上の構成であってもよい。三層目(第三の層ともいう)以降の層としては剛性の観点から不織布が好ましい。材料としては第二の層と同様なものが用いられる。
[その他の材料]
液吸収部材には、上記の積層構造の多孔質体以外に、液吸収部材の側面を補強する補強部材を有してもよい。また、長尺のシート形状の多孔質体の長手方向端部を繋いでベルト状の部材とする際の接合部材を有してもよい。このような材料としては非孔質のテープ材などを用いることができ、画像と接触しない位置あるいは周期に配置すればよい。
第一の層と第二の層を積層して多孔質体を形成する方法は、特に限定されることはない。重ね合わせるだけでもよいし、接着剤ラミネートまたは熱ラミネートなどの方法を用いて互いに接着してもよい。通気性の観点から、本発明においては熱ラミネートが好ましい。また例えば、加熱により第一の層または第二の層の一部を溶融させて接着積層してもよい。また、ホットメルトパウダーのような融着材を第一の層と第二の層の間に介在させて加熱により互いに接着積層してもよい。第三の層以上を積層する場合は、一度に積層させてもよいし、順次積層させてもよく、積層順に関しては適宜選択される。
加熱工程では、加熱されたローラで多孔質体を挟み込んで加圧しながら、多孔質体を加熱するラミネート法が好ましい。
液吸収部材の多孔質体が第一の画像に接触する前に、劣化防止剤付与装置111を用いて多孔質体に転写体の劣化を防止する劣化防止剤を付与する前処理としての劣化防止剤付与工程を行う。劣化防止剤としては、液状の劣化防止剤(劣化防止液)が好ましい。劣化防止剤としては、液吸収部材の多孔質体を介して付与可能であり、転写体に対する酸の反応性を低下あるいは消滅させることによって劣化防止効果を得ることができるものであればよい。劣化防止剤としては、酸を含む反応液を中和して、あるいは反応液のpHを酸性側から中性付近、更には中性からアルカリ性側にシフトすることによる劣化防止機能を有する液体が好ましい。このような液体としては、水、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性溶液、中性またはアルカリ性の緩衝液を挙げることができる。
劣化防止剤を液吸収部材の多孔質体に付与しておくことによって、転写体のインクが付与されておらず未反応の反応液が残存している箇所を、多孔質体で押圧する際に、劣化防止剤が転写体上の反応液に付与される。押圧される多孔質体による液吸収の作用によって反応液が多孔質体に吸収されるのであるが、押圧される多孔質体と転写体上に留まる反応液の界面においては、多孔質体に付与された劣化防止剤と反応液とが接し、わずかな混じり合いがあると考えられる。これにより、酸の成分は反応液から多孔質体へと移動し、一方で劣化防止剤の成分が転写体上に残る反応液へと移動し、結果として転写体上に残る反応液では酸が薄まり、その変わりに劣化防止剤が取り込まれると考えられる。こうして転写体に付与された劣化防止剤は反応液に作用して転写体の劣化を防止することができる。中性またはアルカリ性の緩衝液を含む劣化防止剤の場合には、反応液のpHを中性側に近づけることができる。その結果、第二の画像の加熱処理において高温の加熱条件を選択した場合でも転写体の劣化を防止することができ、転写体の耐久性の低下が抑制されるものと推測される。
劣化防止剤は、アルカリ性の緩衝液であることがより好ましい。アルカリ性の緩衝液であることにより、転写体の劣化防止効果がより顕著となる。
また、劣化防止剤は水及び水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。水は、イオン交換等により脱イオンした水であることが好ましい。また、水溶性有機溶剤の種類は特に限定されず、エタノールやイソプロピルアルコール等の公知の有機溶剤をいずれも用いる事ができる。液吸収部材への劣化防止剤の付与による前処理において、劣化防止剤の付与方法は特に限定されないが、浸漬や液滴滴下が好ましい。
(転写型インクジェット記録装置)
図1は、本発明の転写型インクジェット記録装置の概略構成の一例を示す模式図である。
この装置は、転写体101、反応液を付与する反応液付与装置103、インクを付与し、転写体上で第一の画像を形成するインク付与装置104、液吸収装置105、加熱装置110、転写用の押圧部材106を有する。
転写型インクジェット記録装置は、第二の画像を記録媒体108に転写した後の転写体101の表面をクリーニングする転写体クリーニング部材109を有していてもよい。
支持部材102は、回転軸102aを中心として図1の矢印の方向に回転する。この支持部材102の回転により、転写体101が移動される。図示した装置には、支持部材102とその回転駆動装置(不図示)を有する転写体の搬送装置が設けられている。
移動された転写体101上に、反応液付与装置103による反応液およびインク付与装置104によるインクが順次付与され、転写体101上に液吸収前のインク像として第一の画像が形成される。転写体101上に形成された第一の画像は、転写体101の移動により、液吸収装置105が有する液吸収部材105aと接触する位置まで移動される。
液吸収装置105の液吸収部材105aは、転写体101の回転に同期して移動する。転写体101上に形成された第一の画像はこの移動する液吸収部材105aと接触した状態を経る。この間に液吸収部材105aは、第一の画像から少なくとも水性液体成分を含む液体成分を除去する。この液吸収部材105aと接触した状態を経ることで、第一の画像に含まれる液体成分が除かれる。この接触した状態において、液吸収部材105aは所定の押圧力をもって第一の画像に押圧されることが、液吸収部材105aを効果的に機能させる点で好ましい。
液体成分の除去を異なる視点で説明すれば、転写体上に形成された画像を構成するインクを濃縮するとも表現することができる。インクを濃縮するとは、インクに含まれる液体成分が減少することによって、インクに含まれる色材や樹脂といった固形分の液体成分に対する含有割合が増加することを意味する。
なお、転写体上には反応液が付与されてからインクが付与されて画像が形成されるため、インクによる画像が形成されない非画像領域(非インク像形成領域)には反応液がインクと反応することなく残っている。本装置では液吸収部材105aは画像からのみならず、未反応の反応液とも接触し、反応液の液体成分も併せて転写体101の表面上から除去している。したがって、以上では、画像から液体成分を除去すると表現し説明しているが、画像のみから液体成分を除去するという限定的な意味合いではなく、少なくとも転写体上の画像から液体成分を除去していればよいという意味合いで用いている。例えば、第一の画像とともに第一の画像の外側領域に付与された反応液中の液体成分を除去することも可能である。なお、液体成分は、一定の形を持たず、流動性を有し、ほぼ一定の体積を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、インクや反応液に含まれる水や有機溶媒等が液体成分として挙げられる。
また、上述したクリアインクが第一の画像に含まれている場合においても、液吸収処理によるインクの濃縮を行うことができる。例えば、転写体101上に付与された色材を含有するカラーインクの上にクリアインクが付与された場合、第一の画像の表面には全面的にクリアインクが存在する、若しくは、第一の画像の表面の一箇所または複数箇所にクリアインクが部分的に存在し、他の箇所はカラーインクが存在する。第一の画像において、カラーインク上にクリアインクが存在している箇所では、多孔質体が第一の画像の表面のクリアインクの液体成分を吸収し、クリアインクの液体成分が移動する。それに伴ってカラーインク中の液体成分が多孔質体側へ移動することで、カラーインク中の液体成分が吸収される。一方、第一の画像の表面にクリアインクの領域とカラーインクの領域が存在している箇所では、カラーインク及びクリアインクのそれぞれの液体成分が多孔質体側へ移動することで液体成分が吸収される。なお、このクリアインクには、転写体101から記録媒体への画像の転写性を向上させるための成分を多く含ませておいてもよい。例えばカラーインクよりも加熱により記録媒体への粘着性が高くなる成分の含有率を高くしておくことが挙げられる。
<転写体>
転写体101は、画像形成面を含む表面層を有する。表面層の部材としては、樹脂、セラミック等各種材料を適宜用いることができるが、耐久性等の点で圧縮弾性率の高い材料が好ましい。具体的には、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素含有樹脂、加水分解性有機ケイ素化合物を縮合して得られる縮合物等が挙げられる。反応液の濡れ性、転写性等を向上させるために、表面処理を施して用いてもよい。表面処理としては、フレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理、研磨処理、粗化処理、活性エネルギー線照射処理、オゾン処理、界面活性剤処理、シランカップリング処理などが挙げられる。これらを複数組み合わせてもよい。また、表面層に任意の表面形状を設けることもできる。
また、転写体は、圧力変動を吸収する機能を有する圧縮層を有することが好ましい。圧縮層を設けることで、圧縮層が変形を吸収し、局所的な圧力変動に対してその変動を分散し、高速印刷時においても良好な転写性を維持することができる。圧縮層の部材としては、例えばアクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。上記ゴム材料の成形時に、所定量の加硫剤、加硫促進剤等を配合し、さらに発泡剤、中空微粒子或いは食塩等の充填剤を必要に応じて配合し多孔質としたものが好ましい。これにより、様々な圧力変動に対して気泡部分が体積変化を伴って圧縮されるため、圧縮方向以外への変形が小さく、より安定した転写性、耐久性を得ることができる。多孔質のゴム材料としては、各気孔が互いに連続した連続気孔構造のものと、各気孔がそれぞれ独立した独立気孔構造のものがある。本発明ではいずれの構造であってもよく、これらの構造を併用してもよい。
転写体を構成する各層(表面層、弾性層、圧縮層)の間に、これらを固定・保持するために各種接着剤や両面テープを用いてもよい。また、装置に装着する際の横伸びの抑制や、コシを保つために圧縮弾性率が高い補強層を設けてもよい。また、織布を補強層としてもよい。転写体は前記材質による各層を任意に組み合わせて作製することができる。
転写体の大きさは、目的の印刷画像サイズに合わせて自由に選択することができる。転写体の形状としては、特に制限されず、具体的にはシート形状、ローラ形状、ベルト形状、無端ウェブ形状等が挙げられる。
転写体の反応液が接触する部分、あるいは反応液が接触する可能性がある部分に、高温加熱下で反応液に含有される酸の作用により劣化が生じ易くなる、あるいは劣化が生じる可能性のある材料が含まれる場合に、劣化防止剤での劣化防止処理が有効である。このような材料として、ゴム材料等を挙げることができる。
転写体101は、支持部材102上に支持されている。転写体の支持方法として、各種接着剤や両面テープを用いてもよい。または、転写体に金属、セラミック、樹脂等を材質とした設置用部材を取り付けることで、設置用部材を用いて転写体を支持部材102上に支持してもよい。
支持部材102は、その搬送精度や耐久性の観点からある程度の構造強度が求められる。支持部材の材質には金属、セラミック、樹脂等が好ましく用いられる。中でも特に、転写時の加圧に耐え得る剛性や寸法精度のほか、動作時のイナーシャを軽減して制御の応答性を向上するために、アルミニウム、鉄、ステンレス、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン、シリカセラミクス、アルミナセラミクスが好ましく用いられる。またこれらを組み合わせて用いるのも好ましい。
反応液付与装置103は、反応液を収容する反応液収容部103aと、反応液収容部103aにある反応液を転写体101上に付与する反応液付与部材103b、103cとを有するグラビアオフセットローラの構成を有している。
<インク付与装置>
インク付与装置104から転写体101にインクが付与され、反応液とインクとが混合されることで第一の画像が形成され、次の液吸収装置105により第一の画像から液体成分の少なくとも一部が吸収される。
<液吸収装置>
液吸収装置105は、液吸収部材105a、および、液吸収部材105aを転写体101上の第一の画像に押し当てる液吸収用の押圧部材105bを有する。
押圧部材105bが作動して液吸収部材105aの第二の面を押圧することでその多孔質体からなる第一の面を転写体101の外周表面に接触させることにより形成されるニップ部を第一の画像を通過させることにより、第一の画像からの液吸収処理を行うことができる。転写体101の外周表面に対して液吸収部材105aの押圧接触を可能とする領域を液吸収処理領域として用いる。
押圧部材105bの転写体101に対する位置は、位置制御機構(不図示)によって調整でき、例えば、図1に示す矢印A方向に往復移動可能に構成し、液吸収処理が必要とされるタイミングで液吸収部材105aを転写体101の外周面に接触させ、また、この外周面から離間させることができる。
なお、液吸収部材105aおよび押圧部材105bの形状については特に制限がない。例えば、図1に示すように、押圧部材105bが円柱形状であり、液吸収部材105aがベルト形状であって、円柱形状の押圧部材105bでベルト形状の液吸収部材105aを転写体101に押し当てる構成であってもよい。また、押圧部材105bが円柱形状であり、液吸収部材105aが円柱形状の押圧部材105bの周面上に形成された円筒形状であって、円柱形状の押圧部材105bで円筒形状の液吸収部材105aを転写体に押し当てる構成であってもよい。
インクジェット記録装置内でのスペース等を考慮すると、液吸収部材105aはベルト形状であることが好ましい。
また、このようなベルト形状の液吸収部材105aを有する液吸収装置105は、液吸収部材105aを張架する張架部材を有していてもよい。図1において、105c、105d、105eは張架部材としての張架ローラである。これらのローラ及びこれらのローラに張架されたベルト形状の液吸収部材105aにより、第一の画像からの液吸収処理を行う多孔質体を搬送する搬送ユニットが構成されている。この搬送ユニットにより、多孔質体の液吸収処理領域への搬入、搬出及び再送を行うことができる。
図1において、押圧部材105bも張架ローラと同様に回転するローラ部材としているが、これに限定されるものではない。
液吸収装置105では、多孔質体を有する液吸収部材105aを押圧部材105bによって第一の画像に押圧することで、第一の画像に含まれる液体成分を液吸収部材105aに吸収させ、第一の画像から液体成分を除去する。第一の画像中の液体成分を除去する方法として、液吸収部材を押圧する本方式に加え、その他従来から用いられている各種手法、例えば、加熱による方法、低湿空気を送風する方法、減圧する方法等を組み合わせても良い。
(前処理)
劣化防止処理部は、液吸収部材105aの搬送経路中に、劣化防止剤付与装置111を有する。多孔質体を有する液吸収部材が第一の画像に接触する前に、劣化防止剤付与装置111によって劣化防止剤を多孔質体に付与する。
劣化防止剤付与装置111は液吸収部材105aの多孔質体を劣化防止液に浸漬する構成を有する。
(加圧条件)
転写体上の画像に対して押圧する多孔質体の圧力が2.94N/cm2(0.3kgf/cm2)以上であれば、第一の画像中の液体成分をより短時間に固液分離でき、第一の画像中から液体成分を除去できるため好ましい。また、圧力は98.07N/cm2(10kgf/cm2)以下であれば、装置への構造上の負荷が抑制できるため好ましい。尚、本発明における多孔質体の第一の画像に対する圧力とは、転写体101と液吸収部材105aとの間のニップ圧を示しており、面圧分布測定器(製品名:I-SCAN 新田株式会社製)により面圧測定を行い、加圧領域における加重を面積で割って値を算出した。
劣化防止液を保持した多孔質体が転写体に押圧され、押圧から開放される過程において、転写体上の第一の画像に含まれる液体成分及び未反応の反応液の少なくとも一部が多孔質体に吸収される。更に、転写体には多孔質体との接触によって劣化防止剤が供給され、液吸収工程後の転写体に対して効率よい劣化防止処理を行うことができる。
(作用時間)
第一の画像に液吸収部材105aを接触させる作用時間は、第一の画像中の色材の液吸収部材への付着をより抑制するために、50ms(ミリ秒)以内であることが好ましい。尚、本発明における作用時間とは、上述した面圧測定における、転写体101の移動方向における圧力感知幅を、転写体101の移動速度で割って算出される。以降、この作用時間を液吸収ニップ時間と称す。
(液吸収部材からの液体除去方法)
画像から液吸収部材に吸収された液体成分は公知の手段により液吸収部材105aから除去することが可能である。例としては加熱による方法、低湿空気を送風する方法、減圧する方法、多孔質体を絞る方法等が挙げられる。
このようにして、転写体101上には、第一の画像から液体成分が吸収され、液体分の減少した第二の画像が形成される。第二の画像は次に加熱部において加熱された後、転写部において記録媒体108上に転写される。加熱部の装置構成及び条件、ならびに、転写時の装置構成及び条件について以下に説明する。
加熱部に設けられた加熱装置110により、転写体101上の第二の画像を加熱する。第二の画像を加熱することによって、第二の画像に残存する液体成分の量を更に低減させ、第二の画像の被膜化を促進することができる。
更に、インクが加熱により軟化または溶融により被膜化する樹脂成分を含有する場合には、加熱装置110により加熱することで、第二の画像が軟化して記録媒体への接着性が向上する。この状態で、例えば、樹脂成分のガラス転移温度以上の温度条件で、温度の低い記録媒体と接触することで、第二の画像が記録媒体に接着し、良好な転写性を得ることができる。更に、記録媒体に接着した画像が冷やされることで、画像が固化して固定化されるとともに、画像の堅牢性を向上させることができる。
加熱装置110の加熱源としては、公知のものならばいずれも適用可能であるが、加熱効率の良さから輻射加熱用の加熱源を用いることが好ましい。輻射加熱用加熱源としては各種ランプが用いられるが、加熱効率が高いことから、ハロゲンランプのような赤外線ヒータを用いることが好ましい。またさらに、輻射熱を効率よく転写体の導くために、加熱源からの輻射熱を転写体101へと向かわせる輻射熱反射部としての反射ミラーを用いることが好ましい。
加熱装置110は、ハロゲンランプと反射ミラーとを一対とした輻射加熱源を、転写体101の回転方向に複数並べた構成となっている。ハロゲンランプと反射ミラーは、有限会社フィンテック東京製を用いた。ハロゲンランプの最大出力は10×103W/mであり、反射ミラーはアルミニウム製で表面を鏡面研磨した放物面型ミラーを用いた。この放物面型ミラーは加熱源と転写体とを結ぶ最短線を含む放物面形状の断面を有する。
ハロゲンランプと反射ミラーは、転写体101の全幅(円筒状支持部材102の回転軸方向、すなわち図1の紙面奥行き方向の幅)よりもわずかに長く、転写体101の全幅を加熱できる構成となっている。複数あるハロゲンランプは図示されない電源に接続され、各加熱源毎に個別に、電力の供給による放射束の制御が可能となっている。各加熱源からの放射速の制御は放射速制御部によって行われる。
なお、加熱源の個数nは図示した例に限定されず、複数個(n個:n>1)とすることができる。
複数個の加熱源に対する放射束制御部による制御は、複数の加熱源のそれぞれからの放射束が、転写体の移動方向の上流側から順にW1・・Wn(n>1)とした放射束列を形成し、関係式(1):W1>Wnを満たす制御を含むことが好ましい。
この放射束の制御は、転写体として円筒状の転写体を用い、複数のハロゲンランプから転写体へと照射される放射束を、転写体の回転方向の上流側からW1・・Wnとしたとき、W1>Wn(n>1)とすることが好ましい。
更に、3以上の加熱源を用いる場合には、W1からWnに向かって放射束が低減するように、これらの加熱源を制御することが好ましい。例えば、3つの加熱源を用いる場合は、W1>W2>W3の関係を満たすように3つの加熱源を制御することが好ましい。6つの加熱源を用いる場合は、W1>W2>W3>W4>W5>W6の関係を満たすように3つの加熱源を制御することが好ましい。
本発明においては加熱源による一般的な加熱時間は数百msecであり、酸を含む反応液を塗布した状態の転写体を、130℃以下の温度で加熱する条件であれば、耐久性として問題ないことが確認されている。
なお、転写体の耐久性において許容される最高到達温度は、反応液に含まれる酸の種類や、転写体の表面の材質や作成方法、画像形成装置として必要とする耐久条件とも関係するため、それぞれ実施する構成、条件によって設定すればよい。
転写部は、記録媒体搬送装置107によって搬送される記録媒体108上に転写体101上の画像を、転写用の押圧部材106により記録媒体に押圧することで、画像(インク像)を記録媒体へ転写する転写装置を有する。転写体101上の画像に含まれる液体成分を液吸収部材105aにより除去した後に加熱部で加熱し、記録媒体へ転写することにより、被膜性と記録媒体への密着性を確保し、かつカールや、コックリング等を抑制した記録画像を得ることが可能となる。
押圧部材106は記録媒体の搬送精度や耐久性の観点からある程度の構造強度が求められる。押圧部材の材質には、金属、セラミック、樹脂等が好ましく用いられる。中でも特に、転写時の加圧に耐え得る剛性や寸法精度のほか、動作時のイナーシャを軽減して制御の応答性を向上するために、アルミニウム、鉄、ステンレス、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン、シリカセラミクス、アルミナセラミクスが好ましく用いられる。またこれらを組み合わせて用いてもよい。
転写体101上の画像を記録媒体に押圧させる時間については特に制限はないが、転写が良好に行われ、かつ転写体の耐久性を損なわないようにするために、5ms以上100ms以下であることが好ましい。尚、本実施形態における押圧する時間とは、記録媒体108と転写体101が接触している時間を示しており、面圧分布測定器(製品名:I-SCAN、新田株式会社製)にて面圧測定を行い、加圧領域の搬送方向長さを搬送速度で割り、値を算出したものである。
また、転写体101上の第二の画像を記録媒体に押圧する際の圧力についても特に制限はないが、転写が良好に行われ、かつ転写体の耐久性を損なわないようにするために、9.8N/cm2(1kg/cm2)以上294.2N/cm2(30kg/cm2)以下であることが好ましい。尚、本実施形態における圧力とは、記録媒体108と転写体101間のニップ圧を示しており、面圧分布測定器にて面圧測定を行い、加圧領域における加重を面積で割り、値を算出したものである。
転写体101上の第二の画像を記録媒体108に転写するために押圧部材106が押圧しているときの温度についても特に制限はないが、インクが樹脂成分を含む場合には、インクに含まれる樹脂成分のガラス転移点以上又は軟化点以上であることが好ましい。また、転写時の加熱には転写体101上の第二の画像、転写体101及び記録媒体108を加熱する加熱装置を備える態様が好ましい。
押圧部材106の形状については特に制限されないが、例えばローラ形状のものが挙げられる。
本実施形態において、記録媒体108は特に限定されず、公知の記録媒体をいずれも用いることができる。記録媒体としては、ロール状に巻回された長尺物、あるいは所定の寸法に裁断された枚葉のものが挙げられる。材質としては、紙、プラスチックフィルム、木板、段ボール、金属フィルムなどが挙げられる。
また、記録媒体108を搬送するための記録媒体搬送装置107は、記録媒体繰り出しローラ107aおよび記録媒体巻き取りローラ107bによって構成されているが、記録媒体を搬送できればよく、特にこの構成に限定されるものではない。
<制御システム>
本実施形態における転写型インクジェット記録装置は、各部に配置した装置を制御する制御システムを有する。図2は、図1に示す転写型インクジェット記録装置における、装置全体の制御システムを示すブロック図である。
図2において、301は外部プリントサーバー等の記録データ生成部、302は操作パネル等の操作制御部、303は記録プロセスを実施するためのプリンタ制御部、304は記録媒体を搬送するための記録媒体搬送制御部、305は印刷するためのインクジェットデバイスである。
図3は、図1の転写型インクジェット記録装置におけるプリンタ制御部のブロック図である。
401はプリンタ全体を制御するCPU、402は前記CPUの制御プログラムを格納するためのROM、403はプログラムを実行するためのRAMである。404はネットワークコントローラ、シリアルIFコントローラ、ヘッドデータ生成用コントローラ、モーターコントローラ等を内蔵した集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)である。405は液吸収部材搬送モータ406を駆動するための液吸収部材搬送制御部であり、404のASICからシリアルIFを介して、コマンド制御される。407は転写体駆動モータ408を駆動するための転写体駆動制御部であり、同様に404のASICからシリアルIFを介してコマンド制御される。409はヘッド制御部であり、インクジェットデバイス305の最終吐出データ生成、駆動電圧生成等を行う。
本実施形態にかかる転写型インクジェット記録装置は、加熱装置110の加熱源に電力を供給する電源を有する電力供給装置を設けた電力供給部と、電力供給装置を制御する制御システムを有する。この電力供給装置の制御は、図3に示すASICからシリアルIFを介して電力供給装置制御部をコマンド制御するようにしてもよい。
(実施例1~4、比較例1及び2)
図1に示す転写型インクジェット記録装置を用いた。
転写体101は接着剤により支持部材102に固定されている。
厚さ0.5mmのPETシートにシリコーンゴム(信越化学工業株式会社製KE12)を0.3mmの厚さにコーティングしたシートを転写体の弾性層として用いた。さらにグリシドキシプロピルトリエトキシシランとメチルトリエトキシシランとをモル比1:1で混合し、加熱還流により得られる縮合物と光カチオン重合開始剤(ADEKA製SP150)の混合物を作製した。弾性層表面の水の接触角を10度以下となるように大気圧プラズマ処理を行い、前記混合物を弾性層上に付与し、UV照射(高圧水銀ランプ、積算露光量5000mJ/cm2)、熱硬化(150℃2時間)により成膜し、弾性体上に厚さ0.5μmの表面層を形成した転写体101を作製した。
本構成においては、なお説明の簡略のため図示を省略しているが、転写体101と支持部材102の間に転写体101を保持するために両面テープを用いた。
反応液付与装置103により付与される反応液は、以下組成のものを用い、付与量は1g/m2とした。
・クエン酸:30.0部
・水酸化カリウム:3.5部
・グリセリン:5.0部
・界面活性剤(製品名:メガファックF444、DIC株式会社製):3.0部
・イオン交換水:残部
<顔料分散体の調製>
カーボンブラック(製品名:モナク1100、キャボット製)10部、樹脂水溶液(スチレン-アクリル酸エチル-アクリル酸共重合体、酸価150、重量平均分子量(Mw)8,000、樹脂の含有量が20.0質量%の水溶液を水酸化カリウム水溶液で中和したもの)15部、純水75部を混合し、バッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、0.3mm径のジルコニアビーズを200部充填し、水冷しつつ、5時間分散処理を行った。この分散液を遠心分離して、粗大粒子を除去した後、顔料の含有量が10.0質量%のブラック顔料分散体を得た。
<樹脂粒子分散体の調製>
エチルメタクリレート20部、2,2’-アゾビス-(2-メチルブチロニトリル)2部を混合し、0.5時間攪拌した。この混合物を、ノニオン界面活性剤であるNIKKOL BC15(商品名、日光ケミカルズ株式会社製)の3質量%水溶液78部に滴下して、0.5時間攪拌した。次に、超音波照射機で超音波を3時間照射した。続いて、窒素雰囲気下で80℃、4時間重合反応を行い、固形分25質量%の樹脂粒子の分散体を得た。得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は200nmであった。また、得られた樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は60℃であった。
<インクの調製>
上記で得られた樹脂粒子分散体、及び、顔料分散体を下記各成分と混合した。尚、イオン交換水の残部は、インクを構成する全成分の合計が100.0質量%となる量のことである。
・顔料分散体(色材の含有量は10.0質量%):40.0質量%
・樹脂粒子分散体:20.0質量%
・グリセリン:7.0質量%
・ポリエチレングリコール(数平均分子量(Mn):1,000):3.0質量%
・界面活性剤:アセチレノールE100(川研ファインケミカル株式会社製):0.5質量%
・イオン交換水: 残部
これを十分撹拌して分散した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム株式会社製)にて加圧ろ過を行い、ブラックインクを調製した。
本インクの最低造膜温度(MFT)は100℃であった。
液吸収部材105aは液吸収部材を張架しつつ搬送する搬送ローラ105c、105d、105eによって、転写体101の移動速度と同等の速度になるよう調節されている。また、転写体101の移動速度と同等の速度となるように、記録媒体108は記録媒体繰り出しローラ107aおよび記録媒体巻き取りローラ107bによって搬送される。搬送速度は0.4m/sとし、記録媒体108としてオーロラコート紙(日本製紙株式会社製・坪量104g/m2)を用いた。
<劣化防止液1>
イオン交換水
<劣化防止液2>
NaOH水溶液
(調製方法)
イオン交換水に1N-NaOH水溶液を加え、pHを11に調整して劣化防止液2を得た。
<劣化防止液3>
リン酸緩衝液
(組成)
・リン酸二水素ナトリウム(2水和物):3.8質量%
・リン酸水素二ナトリウム(12水和物):12.8質量%
・イオン交換水:83.4質量%
<劣化防止液4>
炭酸緩衝液
(組成)
・炭酸ナトリウム:3.5質量%
・炭酸水素ナトリウム:2.8質量%
・イオン交換水:93.7質量%
また、転写体101と液吸収部材105aとの間のニップ圧は、平均圧力が2kg/cm2となるよう液吸収部材105bに圧力が印加されている。また、液吸収用の押圧部材105bとして直径φ200mmのローラを用いた。
液吸収部材105aは、平均孔径0.2μmのPTFE多孔質体に、ポリオレフィン系の不織布であるHOP60(商品名:廣瀬製紙株式会社製)をラミネートしたものを用いた。PTFE多孔質体は、高度に結晶化したPTFEの乳化重合粒子を圧縮成形し,融点以下の温度で延伸することにより得た。
加熱装置110は、ハロゲンランプと反射ミラーとを一対とした輻射加熱用の加熱源を2つ用意し、転写体101の回転方向に直列に並べた構成を有する。ハロゲンランプと反射ミラーは、有限会社フィンテック東京製を用いた。ハロゲンランプの最大出力は10×103W/mであり、反射ミラーはAL製で表面を鏡面研磨した放物面型ミラーを用いた。ハロゲンランプと反射ミラーは、転写体101の全幅(図の紙面奥行き方向)よりもわずかに長く、転写体101の全幅を加熱できる構成となっている。複数あるハロゲンランプは図示されない電源に接続され、それぞれに個別の電力を供給できる構成となっている。
<加熱温度評価>
輻射加熱用の加熱源による転写体の加熱状態を評価するために、加熱源からの照度分布を見積もるための光線追跡シミュレーションと、輻射加熱を受けた際の温度を見積もるための、熱伝導シミュレーションを行った。光線追跡シミュレーションは、図1の紙面奥行き方向に対する断面の2次元計算であり、ハロゲンランプ、反射ミラー、転写体の形状、配置を考慮して、転写体上の輻射照度分布を計算することができる。また、熱伝導シミュレーションは、回転する転写体101表面にのった座標系での転写体厚み方向への1次元計算であり、光線追跡シミュレーションの結果を用いて、回転しながら輻射加熱を受ける転写体101のある点における温度変化を見積もることができる。
図4は、6つの輻射加熱源から転写体101に照射される照度分布を、光線追跡シミュレーションにより計算した結果であり、輻射加熱源の空間配置とともに示している。実際には複数の輻射加熱源が円筒状の転写体101の外周面に沿って配置されているが、相対的には直線状に並んだ関係であるため、図4においても転写体の外周面の局面を直線状に展開した形で示している。なお、輻射加熱源1001側が転写体101回転方向の上流側に位置し、輻射加熱源1006が下流側に位置している。6対の輻射加熱源1001~1006は、ハロゲンランプ1001(a)~1006(a)と反射ミラー1001(b)~1006(b)のそれぞれの組合せにより構成され、図の照度分布は6本のハロゲンランプを100%(12×103W/m)で動作させた場合の結果であり、1つの輻射加熱源からの照度分布の重ね合わせとなる。
図5は、図4の要領で計算した照度分布を用い、転写体101表面の温度推移を熱伝導シミュレーションにより計算した結果である。横軸は時間、縦軸左は転写体101の表面温度、縦軸右は輻射加熱源から転写体101に照射される照度を表している。図5において、実線が転写体の同一領域の表面温度の変化を表し、破線が照度の変化を表す。本加熱条件において、ハロゲンランプ1001(a)~1006(a)への投入可能な最大電力(100%作動用)に対する割合を、それぞれR1、R2、R3、R4、R5、R6としたとき、R1=33%、R2=33%、R3=33%、R4=33%、R5=33%、R6=33%である。
<加熱条件2>
図6に、R1=70.2%、R2=38.4%、R3=26.7%、R4=23.4%、R5=20.9%、R6=18.4%とした場合の図5と同様の方法により求めた表面温度推移を示す。この状態において転写体101の表面温度は、速やかに120℃付近まで立ち上がり、その後120℃弱の温度を保持している。
上述した劣化防止液1~4、加熱条件1及び2について以下の表1に示す組み合わせにて実験を行った。
以下の評価方法により評価を行った。評価結果を表2に示す。本評価においては、下記の各評価項目の評価基準のA~Bを好ましいレベルとし、Cを許容できないレベルとした。
<転写体の耐久性>
図1に示す転写型インクジェット記録装置を使用し、転写体の画像形成面を反応液付与部、インク付与部、液吸収部、加熱部、転写部、クリーニング部の各部を通過させて各部での処理工程を行うことを1サイクルとし、10000サイクル動作させた後の転写体表面の観察を行った。
評価基準は以下の通りである。
A:キズやヒビ割れが確認されない。
B:わずかにキズやヒビ割れが発生している。
C:激しくキズやヒビ割れが発生している。
<転写性>
上記した記録方法で、得られた画像の品質評価を行った。
A:転写体からの転写不良がない。
B:転写体からの転写不良により、画像が乱れている。
103 反応液付与装置
104 インク付与装置
105a 液吸収部材
105b 液吸収用の押圧部材
106 転写用押圧部材
107 記録媒体搬送装置
108 記録媒体
109 クリーニング装置
110 加熱装置
111 劣化防止剤付与装置
Claims (22)
- 転写体に、インク増粘用の酸を含む反応液と、水性液媒体と樹脂微粒子と色材を含むインクとを付与し、水性液体成分と該色材を含む第一の画像を形成する画像形成ユニットを備える画像形成部と、
前記第一の画像と接触し、該第一の画像から液体成分の少なくとも一部を吸収して第二の画像を形成する多孔質体を有する液吸収部材を備える液吸収部と、
前記第二の画像を前記樹脂微粒子の最低造膜温度以上に加熱する加熱装置を有する加熱部と、
前記加熱部により加熱された第二の画像を、記録媒体に転写する転写部と
を有する転写型インクジェット記録装置であって、
前記転写体の劣化を防止する劣化防止剤を前記多孔質体に付与する劣化防止剤付与装置を備える劣化防止処理部を有し、
前記転写体上の前記反応液が付与され、かつ前記インクが付与されていない領域に前記劣化防止剤が付与された前記液吸収部の多孔質体が接触することで、前記領域に前記劣化防止剤を付与し、前記劣化防止剤付与装置は、前記液吸収部の多孔質体が接触した前記領域のpHが中性からアルカリ性となるように前記劣化防止剤を前記多孔質体に付与することを特徴とする転写型インクジェット記録装置。 - 前記転写体がゴム材料を含む、請求項1に記載の転写型インクジェット記録装置。
- 前記劣化防止剤が、水、アルカリ性溶液、あるいは、中性またはアルカリ性の緩衝液を含む、請求項1または2に記載の転写型インクジェット記録装置。
- 前記画像形成部、前記液吸収部、前記加熱部及び前記転写部に対して前記転写体を相対的に移動させる搬送装置を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の転写型インクジェット記録装置。
- 前記搬送装置が、円筒状の支持部材を有し、前記転写体を該支持部材の周面に配置し、該支持部材の回転により該転写体を移動させる、請求項4に記載の転写型インクジェット記録装置。
- 前記加熱装置は、前記転写体の移動方向に沿って直列配置された複数(n個:n>1)の輻射加熱源と、該複数の加熱源から該転写体へ向けて照射する放射束を、各加熱源で個別に制御する放射束制御部を有し、
前記複数の加熱源のそれぞれからの放射束が、前記転写体の移動方向の上流側から順にW1・・Wnとした放射束列を形成し、前記放射束制御部での制御が、
関係式(1):W1>Wn(n>1)
を満たす制御を含む、請求項4または5に記載の転写型インクジェット記録装置。 - 各加熱源には、該加熱源からの輻射熱を前記転写体へと向かわせる輻射熱反射部が備えられており、該輻射熱反射部は、該加熱源と前記転写体とを結ぶ最短線を含む放物面形状の断面を有する請求項6に記載の転写型インクジェット記録装置。
- 前記放射束制御部は、前記複数の加熱源へ供給する電力を個別に制御する電力供給部を有する、請求項6または7に記載の転写型インクジェット記録装置。
- 前記加熱装置は、前記反応液が付与された前記転写体が130℃以下となるように加熱する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の転写型インクジェット記録装置。
- 前記樹脂微粒子の最低造膜温度は100℃以上である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の転写型インクジェット記録装置。
- 転写体に、インク増粘用の酸を含む反応液と、水性液媒体と樹脂微粒子と色材を含むインクと、を付与し、水性液体成分と該色材を含む第一の画像を形成する画像形成工程と、
液吸収部材の有する多孔質体を前記第一の画像に接触させて、該第一の画像から液体成分の少なくとも一部を吸収して第二の画像を形成する液吸収工程と、
前記第二の画像を前記樹脂微粒子の最低造膜温度以上に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程により加熱された第二の画像を、記録媒体に転写する転写工程と
を有する転写型インクジェット記録方法であって、
前記転写体の劣化を防止する劣化防止剤を前記多孔質体に付与する劣化防止剤付与工程を有し、
前記転写体上の前記反応液が付与され、かつ前記インクが付与されていない領域に前記劣化防止剤が付与された前記多孔質体が接触することで、前記領域に前記劣化防止剤を付与し、前記劣化防止剤付与工程において、前記多孔質体が接触した前記領域のpHが中性からアルカリ性となるように前記劣化防止剤を前記多孔質体に付与することを特徴とする転写型インクジェット記録方法。 - 前記転写体がゴム材料を含む、請求項11に記載の転写型インクジェット記録方法。
- 前記劣化防止剤が、水、アルカリ性溶液、あるいは、中性またはアルカリ性の緩衝液を含む、請求項11または12に記載の転写型インクジェット記録方法。
- 転写型インクジェット記録装置に、前記画像形成工程を行う画像形成部、前記液吸収工程を行う液吸収部、前記加熱工程を行う加熱部及び前記転写工程を行う転写部を設け、これらの各部に対して前記転写体を相対的に移動させて、これらの工程を行う請求項11乃至13のいずれか1項に記載の転写型インクジェット記録方法。
- 前記転写体を支持部材の周面に配置し、該支持部材の回転により該転写体を移動させる、請求項14に記載の転写型インクジェット記録方法。
- 前記加熱部は加熱装置を有し、
前記加熱装置は、前記転写体の移動方向に沿って直列配置された複数(n個:n>1)の輻射加熱源と、該複数の加熱源から該転写体へ向けて照射する放射束を、各加熱源で個別に制御する放射束制御部を有し、
前記複数の加熱源のそれぞれからの放射束が、前記転写体の移動方向の上流側から順にW1・・Wnとした放射束列を形成し、前記放射束制御部での制御が、
関係式(1):W1>Wn(n>1)
を満たす制御を含む、請求項14または15に記載の転写型インクジェット記録方法。 - 各加熱源には、該加熱源からの輻射熱を前記転写体へと向かわせる輻射熱反射部が備えられており、該反射部は、該加熱源と前記転写体とを結ぶ最短線を含む放物面形状の断面を有する請求項16に記載の転写型インクジェット記録方法。
- 前記放射束制御部は、前記複数の加熱源へ供給する電力を個別に制御する電力供給部を有する、請求項16または17に記載の転写型インクジェット記録方法。
- 前記加熱工程において、前記反応液が付与された前記転写体が130℃以下となるように加熱する請求項11乃至18のいずれか1項に記載の転写型インクジェット記録方法。
- 前記樹脂微粒子の最低造膜温度は100℃以上である請求項11乃至19のいずれか1項に記載の転写型インクジェット記録方法。
- 転写体に、インク増粘用の酸を含む反応液と、水性液媒体と樹脂微粒子と色材を含むインクとを付与し、水性液体成分と該色材を含む第一の画像を形成する画像形成ユニットを備える画像形成部と、
前記第一の画像と接触し、該第一の画像から液体成分の少なくとも一部を吸収することで、当該画像を構成するインクを濃縮して第二の画像を形成する多孔質体を有する液吸収部材を備える液吸収部と、
前記第二の画像を前記樹脂微粒子の最低造膜温度以上に加熱する加熱装置を有する加熱部と、
前記加熱部により加熱された第二の画像を、記録媒体に転写する転写部と
を有する転写型インクジェット記録装置であって、
前記転写体の劣化を防止する劣化防止剤を前記多孔質体に付与する劣化防止剤付与装置を備える劣化防止処理部を有し、
前記転写体上の前記反応液が付与され、かつ前記インクが付与されていない領域に前記劣化防止剤が付与された前記液吸収部の多孔質体が接触することで、前記領域に前記劣化防止剤を付与し、前記劣化防止剤付与装置は、前記液吸収部の多孔質体が接触した前記領域のpHが中性からアルカリ性となるように前記劣化防止剤を前記多孔質体に付与することを特徴とする転写型インクジェット記録装置。 - 転写体に、インク増粘用の酸を含む反応液と、水性液媒体と樹脂微粒子と色材を含むインクと、を付与し、水性液体成分と該色材を含む第一の画像を形成する画像形成工程と、
液吸収部材の有する多孔質体を前記第一の画像に接触させて、該第一の画像から液体成分の少なくとも一部を吸収することで、当該画像を構成するインクを濃縮して第二の画像を形成する液吸収工程と、
前記第二の画像を前記樹脂微粒子の最低造膜温度以上に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程により加熱された第二の画像を、記録媒体に転写する転写工程と
を有する転写型インクジェット記録方法であって、
前記転写体の劣化を防止する劣化防止剤を前記多孔質体に付与する劣化防止剤付与工程を有し、
前記転写体上の前記反応液が付与され、かつ前記インクが付与されていない領域に前記劣化防止剤が付与された前記多孔質体が接触することで、前記領域に前記劣化防止剤を付与し、前記劣化防止剤付与工程において、前記多孔質体が接触した前記領域のpHが中性からアルカリ性となるように前記劣化防止剤を前記多孔質体に付与することを特徴とする転写型インクジェット記録方法。
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