JP7020716B1 - 剥離剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】充分な剥離性能を備えながら、適正な粘度がより長期に亘って維持される剥離剤を得る。【解決手段】本発明の剥離剤は、0.1~5重量%の苛性アルカリと、5~30重量%の芳香族系溶剤と、0.7~5重量%のキサンタンガムと、1~10重量%のN-メチルエタノールアミンと、60~90重量%の水とを含有する。このように、増粘剤としてキサンタンガムを採用することに加えて、安定剤としてN-メチルエタノールアミンを配合すると、剥離剤の粘度特性の経時劣化が抑えられ、より長期に亘って剥離剤の粘度を適正に維持することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、塗膜等を剥離、除去するために使用される剥離剤に関する。
苛性アルカリと芳香族系アルコールとを含む剥離剤は公知であり、例えば特許文献1には、アルカリ金属水酸化物又は(メタ)ケイ酸塩0.1~10重量%と、ベンジルアルコールなどの芳香族系アルコール0.5~10重量%と、水80~99.4重量%とを含有してなるエッチングレジスト膜用剥離液が開示されている。
苛性アルカリと芳香族系アルコールとを含む剥離剤に、アルカノールアミンを混合することも公知であり、特許文献2には、剥離剤100質量%中、無機アルカリ化合物を5~40質量%、アルカノールアミンを10~50質量%、芳香族アルコールを10~50質量%含む剥離剤が開示されている。特許文献3には、水酸化アルカリ0.1~5重量%、芳香族系アルコール5~93.8重量%、アルカノールアミン5~60重量%、グリコール類0.1~30重量%、及び水1~50重量%を含有してなる水溶性塗料剥離剤が開示されている。
この種の剥離剤には、塗布性に優れ、剥離対象である塗膜に塗布された後に液だれせずに塗膜に密着して留まることが求められる。このため剥離剤に増粘剤を添加して粘度向上を図ることは公知技術であり、例えば特許文献3には「本発明による塗料剥離剤に、必要に応じて適宜、防錆剤、界面活性剤、キレート剤、粘度調整剤、等を添加することができる。」と記載されている。特許文献4には、水溶性アミン、特定の芳香族アルコール、金属イオン封鎖剤、界面活性剤、および水からなる保護塗膜の除去用洗浄剤において、増粘剤としてアルギン酸ナトリウムを使用することができることが開示されている。
特開平4-359257号公報 特開2015-74682号公報 特開2002-275394号公報 特開平6-107984号公報
本発明者等は、上記のような苛性アルカリと芳香族系アルコールとを含む剥離剤において、適切な粘度を備えているだけでなく、当該粘度がより長期に亘って維持されることを目標として開発を行った。つまり、本発明者等の知見によれば、この種の苛性アルカリと芳香族系アルコールとを含む剥離剤には、種々の配合割合からなる様々な態様の剥離剤が市場に存在するものの、それらは総じて粘度が低く、剥離対象である塗膜に塗布されたのちに液だれせずに塗膜に密着して留めておくことは困難であり、結果として塗膜内への浸潤性能が不良となり易いという問題があった。また、この問題は、剥離剤に増粘剤を加えることで解決できるものの、苛性アルカリが配合された強アルカリ水溶液中において、1年以上の長期に亘って適切な粘度特性が維持される剥離剤は実在しないというのが実情であり、この点に改良の余地があった。
本発明は以上のような従来の剥離剤の抱える問題を解決するためになされたものであり、充分な剥離性能を備えながら、適正な粘度がより長期に亘って維持される剥離剤を得ることを目的とする。
本発明者等は、増粘剤としてキサンタンガムを採用することに加えて、安定剤としてN-メチルエタノールアミンを配合すると、剥離剤の粘度特性の経時劣化が抑えられ、より長期に亘って良好な粘度が維持されることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の剥離剤は、0.1重量%以上、5重量%以下の苛性アルカリと、5重量%以上、30重量%以下の芳香族系溶剤と、0.7重量%以上、5重量%以下のキサンタンガムと、1重量%以上、10重量%以下のN-メチルエタノールアミンと、60重量%以上、90重量%以下の水とを含有することを特徴とする。
キサンタンガムの含有量が0.7重量%以上、1.5重量%以下であり、N-メチルエタノールアミンの含有量は1重量%以上、5重量%以下であることが望ましい。
苛性アルカリが水酸化ナトリウムであり、芳香族系溶剤がベンジルアルコールであることが望ましい。
本発明の剥離剤のように、苛性アルカリと芳香族系溶剤とを配合していると、苛性アルカリに由来する油溶性塗料に対する剥離作用と、芳香族系溶剤に由来する水溶性塗料に対する剥離作用の両作用が得られるため、油溶性塗料の塗膜と水溶性塗料の塗膜の両種の塗膜に対する良好な剥離作用を発揮する剥離剤を得ることができる。また、本発明のように、増粘剤であるキサンタンガムを剥離剤に配合していると、粘度特性の向上を図って、適正な粘度を剥離剤に付与することができる。そのうえで、N-メチルエタノールアミンを配合していると、増粘剤であるキサンタンガムに由来する粘度特性が経時劣化することを効果的に抑えることできるので、より長期に亘って適正な粘度を発揮する剥離剤を得ることができる。剥離剤の分離を抑えて、液安定性の向上を図ることもできる。
具体的には、苛性アルカリは、主として油溶性塗料の剥離に効果を発揮するものであり、その配合割合は、0.1重量%以上、5重量%以下であることが好ましい。0.1重量%未満では苛性アルカリに由来する剥離剤の塗膜への浸透性又は剥離速度の増大効果が充分に得られない。5重量%を超えても浸透性又は剥離速度の増大効果はそれ程大きくならず、却って剥離剤のコストアップを招来する。5重量%を超えて苛性アルカリの濃度が高くなると、使用後の廃液処理に手間がかかる不利もある。苛性アルカリは水酸化ナトリウムが最適である。
芳香族系溶剤は、主として水溶性塗料の剥離に効果を発揮するものであり、その配合割合は、5重量%以上、30重量%以下であることが好ましい。5重量%未満では芳香族系溶剤に由来する塗膜の剥離除去効果が少なく、30重量%を超えると塗膜が設けられた基材の表面の溶解や膨潤を引き起こすおそれがある。芳香族系溶剤はベンジルアルコールが最適である。
本発明に係る剥離剤には苛性アルカリが配合されているため、当該剥離剤はpH14程度の強アルカリの水溶液となる。このため剥離剤に粘度を付与する増粘剤には、強アルカリ環境下でも安定的に粘度特性を発揮することが求められ、本発明者の知見によればキサンタンガムが好適である。かかるキサンタンガムの配合割合は、0.7重量%以上、5重量%以下であることが好ましく、0.7重量%を下回ると充分な粘度が得られない。他方で5重量%を超えると、粘度は高くなるものの塗工性が不良となる。また、キサンタンガムの含有量は、0.7重量%以上、1.5重量%以下であることがより好ましい。これは、1.5重量%を超えると、塗工性が若干不良となることとに拠る。
上記のようなキサンタンガムを配合したことで得られる粘度特性の向上効果は、それだけでは長期に亘って維持されず、数か月程度で粘度は低下しやすい。また、上記のような苛性アルカリと芳香剤系溶剤とを含む剥離剤は分離しやすい。これら不都合を解決するため、本発明においては、N-メチルエタノールアミンを少量配合することで、粘度特性の経時的劣化を抑えて、より長期に亘って粘度が良好に維持されるようにしている。またN-メチルエタノールアミンを少量配合することで、剥離剤の液安定性の向上を図って、剥離剤が分離することを防いでいる。
かかるN-メチルエタノールアミンの配合割合は、1重量%以上、10重量%以下であることが望ましく、1重量%を下回ると、先のN-メチルエタノールアミンに由来する粘度特性の維持効果と液安定性の向上効果が得られない。10重量%を超えると、却って粘度は低下しやすくなり、液安定性の向上効果も得られない。N-メチルエタノールアミンの含有量は1重量%以上、5重量%以下であることがより好ましい。これは5重量%を超えると、1年程度の経過後に若干の分離が見られ、粘度も若干低下することに拠る。
水を配合していると、剥離剤が乾燥することを抑えることができる。また、水を配合することで、引火点をなくすことができるので、安全性に優れた剥離剤を得ることができる。この水の配合割合は、60重量%以上、90重量%以下であることが望ましい。
(増粘剤の選定)
下記の表1、2に示すように、異なる増粘剤が配合されたNо.1~7の剥離剤を作成し、各剥離剤の粘度特性について観察した。その結果を表2に示す。
Figure 0007020716000001
Figure 0007020716000002
以上より、水酸化ナトリウムとベンジルアルコールとを含む剥離剤の増粘剤としては、キサンタンガムが好適であるとの知見を得た。
(安定化剤の特定)
上記のように本発明の剥離剤の増粘剤としてはキサンタンガムが好適であるが、それだけでは液安定性に乏しく、数週間程度で剥離剤が分離し、或いは粘度特性が劣化する。このため、本発明者等は、剥離剤の安定性の向上を図り、粘度特性の劣化を抑えるためには、何らかの安定化剤を配合することが必要であると考えて、以下の表3のような組成でNо.1~5の剥離剤を作成し、各剥離剤について液安定性や粘度特性の経時的変化を観察した。その結果を表4に示す。
Figure 0007020716000003
Figure 0007020716000004
以上より、増粘剤であるキサンタンガムに由来する粘度特性を維持するとともに、剥離液の分離を防ぐためには、N-メチルエタノールアミンが好適である。つまり、増粘剤としてのキサンタンガムと、安定化剤としてのN-メチルエタノールアミンとの組み合わせにより、剥離剤の液安定性の向上を図るとともに、粘度特性の経時的劣化を抑えることができる。
(キサンタンガムの配合割合)
以下の表5に示すようにキサンタンガムの配合割合を変化させて、Nо.1~10の剥離剤を作成した。また、各剥離剤について、粘度特性と液安定性について評価した。その結果を表6に示す。
Figure 0007020716000005
Figure 0007020716000006
粘度特性について
低い :粘度が低く、液だれが発生する。
滑らか :粘度が適切であり、液だれは発生せず、塗工性も良好である。
少し高い:粘度が若干高く、液だれは発生しないが、塗工性が若干不良となる。
高い :粘度が高く、液だれは発生しないが、塗工性が非常に悪い。
なお、上記の「液だれ」については、具体的には以下のように評価した。
一般的に奨励される剥離剤塗布量である400~500g/mの中間値である450g/mを目安として、準備した杉板(75mm×150mm)の表面に5.1gに計量した剥離剤をへらでできるだけ均一となるように塗布した。塗布後、杉板を計量して、5.1gの剥離剤が塗布されていることを確認した。計量後、直ちに杉板を垂直に立て掛け、10分後に塗布した剥離剤のタレ等の付着状態を確認した。
そして、タレが確認できない場合には「〇:液だれ発生せず」と評価し、5ミリ以下のタレが確認された場合には「△:若干の液だれが見られる」、5ミリを超えるタレが確認された場合には「×:液だれがみられる」と評価した。
なお、上記のNо.1~10の剥離剤では、Nо.1において5ミリを超えるタレが確認されたため、「×」と評価し、それ以外のNо.2~10については液だれは見られなかったため、「〇」と評価した。
以上より、キサンタンガムの配合割合としては、0.7重量%以上、5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.7重量%以上、1.5重量%以下であることが確認できた。
(N-メチルエタノールアミンの配合割合)
以下の表7に示すようにN-メチルエタノールアミンの配合割合を変化させて、Nо.1~4の剥離剤を作成した。また、各剥離剤について、粘度特性の劣化と、液安定性を評価した。その結果を表8に示す。
Figure 0007020716000007
Figure 0007020716000008
なお、液安定性については、分離の有無を目視にて確認した。粘度特性については、上述の「液だれ」の評価基準にしたがって評価した。
以上より、N-メチルエタノールアミンの配合割合としては、1重量%以上、10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以上、5重量%以下であることが確認できた。
以上の実施例により明らかなように、水酸化ナトリウムとベンジルアルコールとに由来する剥離機能を発揮する剥離剤の増粘剤としてはキサンタンガムが好適であること、および当該剥離剤の分離を防ぐこと、或いは粘度特性の劣化防止を図るために剥離剤に添加される安定化剤としては、N-メチルエタノールアミンが好適であることが確認された。また、特に当該剥離剤におけるキサンタンガムの配合割合としては0.7~5重量%が好適であること、およびN-メチルエタノールアミンの配合割合としては1~10重量%が好適であることが確認できた。
本発明に係る剥離剤には、適宜、防錆剤、界面活性剤、キレート剤、等を添加することができる。

Claims (3)

  1. 0.1~5重量%の苛性アルカリと、
    5~30重量%の芳香族系溶剤と、
    0.7~5重量%のキサンタンガムと、
    1~10重量%のN-メチルエタノールアミンと、
    60~90重量%の水と、
    を含有することを特徴とする剥離剤。
  2. キサンタンガムの含有量が0.7~1.5重量%であり、
    N-メチルエタノールアミンの含有量が1~5重量%である、請求項1に記載の剥離剤。
  3. 苛性アルカリが水酸化ナトリウムであり、
    芳香族系溶剤がベンジルアルコールである、請求項1又は2に記載の剥離剤。
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