JP2019131651A - 塗膜剥離剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた塗膜剥離性を有するとともに、人体や環境に対して優しく、しかもスプレー塗工に適した粘度を有しながら、塗工後は液ダレし難いという、最適なレオロジーコントロール特性(チクソトロピー性)を有するとともに、当該レオロジーコントロール特性(チクソトロピー性)が広範なpH領域において長期に渡って得られる、実用利便性に優れた塗膜剥離剤を提供する。【解決手段】本発明の塗膜剥離剤は、(成分A)沸点が100℃以上の1価又は2価のアルコール系溶剤、及びその誘導体、(成分B)水、(成分C)レオロジーコントロール剤を含む。成分(C)は、非アルカリ金属塩である金属石けんである。塗膜剥離剤は、粘度が25Pa・s以下(25℃)に調整されている。【選択図】なし
Description
本発明は塗膜剥離剤に関する。本発明に係る塗膜剥離剤は、橋梁などの土木・建築材の塗膜の剥離に好適に使用できる。
橋梁などの鋼構造物の塗膜は経時により劣化するため、定期的な塗り替え補修が必要である。補修の為に再塗装を行う際には、素地調整としての錆の除去や劣化塗膜等の剥離が行われる。劣化塗膜等の剥離には、ブラスト処理や動力工具による物理的作用による方法が広く採られているが、これら方法では汚染された研磨材と有害な塗膜の粉塵や破片の発生及び飛散が懸念されており、また、処理を行う際に発生する騒音も懸念事項となっている。
上記問題点を解決する方法として、塗膜剥離剤を使用する方法が知られている。従来の塗膜剥離剤としては、塩化メチレン(ジクロロメタン)などの塩素系有機溶剤を主成分とする剥離剤が主に用いられている。しかし塩素系有機溶剤は臭気が強く、人体への有害性および環境への影響などの観点から、労働安全衛生法など様々な法律の規制を受けるようになり、現在では使用されていない。
塩素系有機溶剤に代わる塗膜剥離剤としては、モノアルキルグリコールエーテルとジアルキルグリコールエーテルのいずれか一方または両方の混合物を主成分とし、該エーテルにN−メチルピロリドン(N−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、以下適宜「NMP」と称す)、エステル類、ケトン類、アルコール類から選ばれた、少なくとも1種の高沸点溶剤と、界面活性剤を配合してなるもの(特許文献1)、二塩基酸エステルを主成分とし、該エステルにN−メチルピロリドンまたはN−メチルピロリドンとベンジルアルコールからなる高沸点溶剤と、有機酸と、界面活性剤からなるもの(特許文献2)、環状構造を有する含窒素溶剤および脂肪酸エステルを含有するもの(特許文献3)、及び二塩基酸エステルを主成分として複素環状系有機化合物、アルコール類から選ばれた高沸点溶剤などからなるもの(特許文献4)などが提案されている。
この種の塗膜剥離剤は、作業効率などに鑑みるとスプレー塗工により対象物に塗布されて好適であるが、スプレー塗工に適した塗膜剥離剤は特許文献5に開示されている。特許文献5の塗膜剥離剤は、アルコール系溶剤と水と無機系増粘剤とを含有してなるものであり、その段落[0011]には、アルコール系溶剤の具体例として、メチルアルコール、エチルアルコール、ベンジルアルコール等を含む広範なアルコールが列挙されている。また、特許文献5の段落[0016]には、無機系増粘剤の具体例として、シリカ、カオリン鉱物、サーペンチン、タルク、雲母、バーミキュライト、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイトを含む)、ベントナイト、セピオライト、有機クレー、有機ベントナイト等が列挙されている。
特許文献1〜4の塗膜用剥離剤では、剥離性能が十分ではなく、特に、さび止めペイントが配合された塗料が使用された塗膜などに対する剥離性や、鉛化合物、クロム化合物、ポリ塩化ビフェニル(PCB)等の有害物質を含む塗膜に対する剥離性能や、アスベスト塗装物等の有害物質を含む塗膜に対する剥離性能が不十分である。また、N−メチルピロリドンは臭気の強い物質であるため、これを用いた剥離剤は作業性に問題がある。さらに、N―メチルピロリドンは欧州高懸念物質(SVHC)リストの追加物質となったため、業界でも使用しない方向で検討が進んでいる。
一方、特許文献5のようなアルコール系溶剤を含有する塗膜剥離剤では、該アルコール系溶剤に由来する塗膜膨潤作用、塗膜軟化作用が期待できる。但し、メチルアルコールなどの低沸点のアルコールを溶剤とした場合には、皮膚刺激や呼吸器刺激などの人体へ悪影響を及ぼすおそれがある。溶剤が気化することによる引火の危険性もある。加えて、塗膜剥離剤をスプレー噴霧する場合には、スプレー塗工時には目詰まりせず、塗工後は液ダレし難いというチクソトロピー性が求められるとともに、実用上は当該チクソトロピー性が広範なpH領域において長期に渡って発揮されることが求められる。しかし、特許文献5のようにシリカ粒子等の無機系増粘剤を含む塗膜剥離剤では、チクソトロピー性についてはある程度は考慮されているものの、実際にはスプレー塗工が困難であったり、スプレー塗工後に液ダレが生じることが避けられず、実用上、著しい難がある。液ダレが生じると、塗膜剥離剤を剥離対象となる塗膜上に留めておくことが困難となり、結果として塗膜剥離性が低下する。広範なpH領域においてチクソトロピー性を得ることもできず、しかも長期保存性にも難がある。さらに、特許文献5において増粘剤として添加されるシリカ粒子のうち、特に不溶性の結晶シリカは発癌性があると指摘されており、ラベル表示やSDSの公布対象となっている。
本発明は以上のような従来の塗膜剥離剤の抱える問題を解決するためになされたものであり、優れた塗膜剥離性を有するとともに、人体や環境に対して優しく、しかもスプレー塗工に適した粘度を有しながら、塗工後は液ダレし難いという、最適なレオロジーコントロール特性(チクソトロピー性)を有するとともに、当該レオロジーコントロール特性(チクソトロピー性)が広範なpH領域において長期に渡って得られる、実用利便性に優れた塗膜剥離剤を提供することを目的とする。
本発明者は、沸点が100℃以上の1価又は2価のアルコール系溶剤・及びその誘導体を用いれば、常温使用時において気化することがなく、皮膚刺激や呼吸器刺激などの人体への悪影響や引火の危険性を低くすることができること、および当該アルコール系溶剤及びその誘導体のレオロジーコントロール剤として金属石けん類を採用すれば、人体・環境への影響を最小限に抑えることができること、さらに、これらアルコール系溶剤、及びその誘導体とレオロジーコントロール剤としての金属石けん類とで塗膜剥離剤を形成すると、塗工前において比較的粘度の低い物性を確保しながら、塗工後は液ダレが少なく、優れたレオロジーコントロール特性(チクソトロピー性)を発揮すること、および当該チクソトロピー性が広範なpH領域において長期に渡って発揮されることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、(成分A)沸点が100℃以上の1価又は2価のアルコール系溶剤、及び・その誘導体、(成分B)水、(成分C)レオロジーコントロール剤を含み、成分(C)は、非アルカリ金属塩である金属石けんであり、粘度が25Pa・s以下(25℃)に調整されている塗膜剥離剤である。
本発明に係る塗膜剥離剤は、スプレー(リシンガン、エアスプレー、エアレススプレー)塗工に好適に使用できる。本発明に係る塗膜剥離剤は、橋梁用、土木・建築用等の塗膜(旧塗膜)の表面に上記スプレー塗工等により塗布されたのち、一定時間放置され、その後、皮すき、スクレーパー等により旧塗膜とともに除去される。
本発明に係る塗膜剥離剤は、スプレー(リシンガン、エアスプレー、エアレススプレー)塗工に好適に使用できる。本発明に係る塗膜剥離剤は、橋梁用、土木・建築用等の塗膜(旧塗膜)の表面に上記スプレー塗工等により塗布されたのち、一定時間放置され、その後、皮すき、スクレーパー等により旧塗膜とともに除去される。
本発明の塗膜剥離剤には、(成分D)付着性付与剤、粘度調整剤、pH調整剤から選択される少なくとも1種の添加剤を含有させることが好ましい。
具体的には成分Aがベンジルアルコール、又はベンジルアルコールとジエチレングリコールとの混合物であり、成分Cはカルシウムステアレート、又はカルシウムラウレートであることが好ましい。より具体的には、成分Aがベンジルアルコール、又はベンジルアルコールとジエチレングリコールとの混合物であり、両者の使用比率はベンジルアルコール70〜100重量%、ジエチレングリコール0〜30重量%とすることが好ましい。
成分Aが30〜80重量%、成分Cが1〜10重量%、成分Dが0〜15重量%、残部として成分Bを含有するものであることが好ましい。なお、後述の成分A’を含有させる場合には、上述の成分Aの含有量には成分A’の含有量が含まれる。また、本発明において成分Bは必須成分であり、10重量%以上含有させることが望ましい。
以下にA〜Dの各成分について説明する。
(成分A)
本発明の成分Aである沸点が100℃以上の1価又は2価アルコール系溶剤・及びその誘導体は、剥離対象の塗膜(旧塗膜)に対して濡れ易く、当該旧塗膜を膨潤・軟化させることを目的として配合される。なお成分Aの沸点が100℃未満の場合、常温使用時も蒸気圧が高くなり、引火するおそれがある。また旧塗膜に浸透する前に蒸発して、旧塗膜の除去効率(塗膜剥離性)の著しい低下を招く。このような観点から、成分Aの沸点は100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
(成分A)
本発明の成分Aである沸点が100℃以上の1価又は2価アルコール系溶剤・及びその誘導体は、剥離対象の塗膜(旧塗膜)に対して濡れ易く、当該旧塗膜を膨潤・軟化させることを目的として配合される。なお成分Aの沸点が100℃未満の場合、常温使用時も蒸気圧が高くなり、引火するおそれがある。また旧塗膜に浸透する前に蒸発して、旧塗膜の除去効率(塗膜剥離性)の著しい低下を招く。このような観点から、成分Aの沸点は100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
1価アルコール系溶剤の具体例としては、C5以上のアミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等の脂肪酸アルコール、ベンジルアルコール、ベンジルカルビノール、ベンジルジメチルカルビノール等の芳香族アルコール等が例示できる。これらのうち、剥離性能、高沸点、および化審法の表示・通知物質に該当しないという点で、ベンジルアルコール等の芳香族アルコールが好適である。
2価アルコール系溶剤・およびその誘導体の具体例としては、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びそれらのメチル、エチル、プロピル、及びブチルエーテルの群から選ばれる。
具体的にはエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が例示できる。
但し、エチレングリコール及びその誘導体は労安法(労働安全衛生法)で表示及び通知対象物質であるため、安全対策の点では不使用であることが好ましく、特に剥離性能、高沸点、安衛法の表示及び通知対象物質に該当しないという点で、ジエチレングリコール、及びその誘導体が好適である。
具体的にはエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が例示できる。
但し、エチレングリコール及びその誘導体は労安法(労働安全衛生法)で表示及び通知対象物質であるため、安全対策の点では不使用であることが好ましく、特に剥離性能、高沸点、安衛法の表示及び通知対象物質に該当しないという点で、ジエチレングリコール、及びその誘導体が好適である。
以上のような本発明のアルコール系溶剤は、前記例示の物質を少なくとも1種含むものであり、2種以上を併用するものであってもよい。具体的には芳香族アルコールとグリコール、芳香族アルコールとグリコールエーテルの併用が好ましく、特にベンジルアルコール、ベンジルアルコールとジエチレングリコールの併用、ベンジルアルコールとジエチレングリコールモノアルキルエーテルの併用、ベンジルアルコールとジエチレングリコールジアルキルエーテルの併用がより好ましい。
成分Aは、剥離剤全体の30〜80重量%配合され、40〜75重量%の範囲であることがより好ましい。成分Aの含有量が30重量%を下回ると、剥離性能の低下を招く。成分Aの含有量が80重量%を超えると、成分B(水)の含有量が少なくなり、チクソトロピー性、耐液ダレ性が低下し、その結果塗膜剥離性の低下を招く。
上記の溶剤には、さらに沸点100℃以上の他の高沸点溶剤(成分A’)を併用することができる。かかる高沸点溶剤の具体例としては、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、アゼライン酸ジ(2-エチルヘキシル)等の脂肪族二塩基酸エステル系溶剤、テルペンアルコール、テルペンケトン等のテルペン類、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトン類で例示される鎖状・環状炭化水素系溶剤の1種、又は2種以上を併用することができる。成分A’は、剥離剤全体の1〜50重量%の範囲で配合することができる。なお、当該成分A’を配合する場合の含有量(配合量)は、成分Aの含有量(配合量、30〜80重量%)に含まれる。
(成分B)
本発明の塗膜剥離剤に含まれる水(成分B)は、剥離剤全体の10〜25重量%配合され、より好ましくは15〜20重量%配合される。塗膜剥離剤を非引火性(消防法危険物に非該当)とする為には、成分Bの配合量は10重量%以上であることが望ましく、剥離性能の観点からは25重量%以下であることが望ましい。
本発明の塗膜剥離剤に含まれる水(成分B)は、剥離剤全体の10〜25重量%配合され、より好ましくは15〜20重量%配合される。塗膜剥離剤を非引火性(消防法危険物に非該当)とする為には、成分Bの配合量は10重量%以上であることが望ましく、剥離性能の観点からは25重量%以下であることが望ましい。
(成分C)
本発明に係るレオロジーコントロール剤は、単なる増粘の目的で配合されるものではなく、剥離剤にスプレー塗工の前後において粘性が変化するチクソトロピー性を付与することを目的として配合される。より具体的には、スプレー塗工時においては相対的に粘度が低くノズル詰まりを生じさせないこと、およびスプレー塗工後では液ダレが生じない程に相対的に高い粘度となるようなチクソトロピー性を付与する目的で配合される。加えて本発明に係るレオロジーコントロール剤には、上記のチクソトロピー性が強アルカリ領域を含む広範なpH領域で発揮されること、さらに当該広範なpH領域におけるチクソトロピー性が長期に渡り安定的に発揮されることが求められる。即ち、(1)スプレー塗工時での上記適性を発揮すること、(2)広範なpH領域においても変わらずチクソトロピー性を発揮すること、(3)長期に渡り安定的にチクソトロピー性を発揮することの三点を同時に満たすレオロジーコントロール剤として、本発明においては金属石けんを採用している。
本発明に係るレオロジーコントロール剤は、単なる増粘の目的で配合されるものではなく、剥離剤にスプレー塗工の前後において粘性が変化するチクソトロピー性を付与することを目的として配合される。より具体的には、スプレー塗工時においては相対的に粘度が低くノズル詰まりを生じさせないこと、およびスプレー塗工後では液ダレが生じない程に相対的に高い粘度となるようなチクソトロピー性を付与する目的で配合される。加えて本発明に係るレオロジーコントロール剤には、上記のチクソトロピー性が強アルカリ領域を含む広範なpH領域で発揮されること、さらに当該広範なpH領域におけるチクソトロピー性が長期に渡り安定的に発揮されることが求められる。即ち、(1)スプレー塗工時での上記適性を発揮すること、(2)広範なpH領域においても変わらずチクソトロピー性を発揮すること、(3)長期に渡り安定的にチクソトロピー性を発揮することの三点を同時に満たすレオロジーコントロール剤として、本発明においては金属石けんを採用している。
金属石けんとは、脂肪酸等の有機酸からなる非アルカリ金属塩の総称であり、本発明で使用される金属石けんの具体例としては、アルミニウム石けん(アルミニウムステアレート)、カルシウム石けん(カルシウムステアレート、カルシウムラウレート)、亜鉛石けん(ジンクステアレート)、マグネシウム石けん(マグネシウムステアレート)、バリウム石けん(バリウムステアレート、バリウムラウレート)等を挙げることができ、これらの1種、又は2種以上を併用することができ、特に安全性(安衛法:表示・通知対象物質に非該当)の点で、ステアリン酸カルシウム(カルシウムステアレート)が好ましい。また、ステアリン酸カルシウムは透明であり融点も150〜160℃と他の金属石けんに比べて高い為、より安定的である点でも優れている。
上記の例示した金属石けんの一般市販品は、粒度75μm(0.075mm)以下の粉体である為、エアレススプレー塗工において、スプレーガン先端の細孔を詰まらせる(いわゆる「ノズル詰まり」)等のトラブルが無く、作業性に優れている。また、上記の金属石けんは、強アルカリ領域を含む広範な領域でチクソトロピー性を長期に渡り安定的に発揮する。さらに上記の金属石けんの透明融点は110℃以上である為、本剥離剤の消防法非危険物(非引火性)であるという特徴を損なうことも無い。
本発明のチクソトロピー性発現のメカニズムは、組成中の成分Aの1価又は2価のアルコール系溶剤、及びその誘導体と、成分Cの金属石けんとが凝集して、巨大な凝集状態分子が形成され、さらにこれら凝集状態分子どうしが成分B(水)を介して、さらに大きなネットワークを形成することに拠ると考える。
より詳しくは、1価又は2価のアルコール系溶剤、及びその誘導体は、親油性の有機基(アルカリ基、アリール基)と親水性のOH基よりなる。一方、金属石けん類は親油性の有機基(ステアリン酸等の脂肪酸残基)とカルシウム等の非アルカリ金属より成る。両者の分子中には、共に親油性の有機基が存在する為、これら(有機基)が相互に接近(凝集)することで、巨大な凝集状態分子(凝集状態金属石けん分子)が形成される。この凝集状態金属石けん分子の末端には、OH基、及び非アルカリ金属が位置しており、当該OH基が更に組成中の水(成分B)との間で水素結合による3次元のネットワーク(網目構造)を形成することで、更なる凝集効果が発揮され、これにて、さらに巨大な凝集状態金属石けん分子が形成される。
より詳しくは、1価又は2価のアルコール系溶剤、及びその誘導体は、親油性の有機基(アルカリ基、アリール基)と親水性のOH基よりなる。一方、金属石けん類は親油性の有機基(ステアリン酸等の脂肪酸残基)とカルシウム等の非アルカリ金属より成る。両者の分子中には、共に親油性の有機基が存在する為、これら(有機基)が相互に接近(凝集)することで、巨大な凝集状態分子(凝集状態金属石けん分子)が形成される。この凝集状態金属石けん分子の末端には、OH基、及び非アルカリ金属が位置しており、当該OH基が更に組成中の水(成分B)との間で水素結合による3次元のネットワーク(網目構造)を形成することで、更なる凝集効果が発揮され、これにて、さらに巨大な凝集状態金属石けん分子が形成される。
以上のように本発明の剥離剤においては、巨大な凝集状態金属石けん分子が形状されるため、スプレー塗工時の粘度は低いにも拘らず、塗工後は優れたタレ防止効果を発揮する。加えて、上述のように巨大な凝集状態金属石けん分子の構造は、上述のように(成分A)1価又は2価アルコール系溶剤・及びその誘導体、(成分C)本発明に係るレオロジーコントロール剤としての金属石けん類の2つの分子が単に水素結合などの化学結合によらず、相互に接近(凝集)しているのみであるから、塗工時において比較的高い剪断力がかかると、該剪断力により容易に引き離され流動性を示すが、塗工後において剪断力を取り除くと再び凝集するため、粘度は高くなり、タレ防止効果を示す。
なお、従来公知のレオロジーコントロール剤としては、超微粉シリカ系、カオリン鉱物、タルク、雲母、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトナイト等)、ペントナイト、クレー等の無機系添加剤、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の合成添加剤、種子を原料とする多糖類(グアーガム、タラガム等)、樹脂・樹液を原料とする多糖類(アラビアガム、トラガントガム等)、海藻を原料とする多糖類(アルギン酸、カラギナン等)、発酵生産物多糖類(キサンタンガム、ジエランガム等)、植物抽出物(ペリチン)、甲殻類抽出物(キチン、キトサン、キトサミン等)等を挙げることができるが、これら従来のレオロジーコントロール剤では、上述のようなチクソトロピー性が発揮されること、強アルカリ領域においてもチクソトロピー性が発揮されること、および長期に渡り安定的にチクソトロピー性が発揮されることの3点を同時に満たすことはできない。
(成分D)
本発明の塗膜剥離剤には、本来の性能を損なわない範囲に於いて、付着性付与剤、粘度調整剤、pH調整剤から選択される少なくとも1種の添加剤(成分D)を含有させることができる。pH調整剤以外の添加剤の配合割合は、剥離対象塗膜の表面状態に応じた、剥離剤の付着性付与や、スプレー塗工に適した粘度保持(25Pa・s以下(25℃)に調整)に従って変更される。かかる添加剤(成分D)の添加量は、0〜15重量%であることが望ましい。
本発明の塗膜剥離剤には、本来の性能を損なわない範囲に於いて、付着性付与剤、粘度調整剤、pH調整剤から選択される少なくとも1種の添加剤(成分D)を含有させることができる。pH調整剤以外の添加剤の配合割合は、剥離対象塗膜の表面状態に応じた、剥離剤の付着性付与や、スプレー塗工に適した粘度保持(25Pa・s以下(25℃)に調整)に従って変更される。かかる添加剤(成分D)の添加量は、0〜15重量%であることが望ましい。
pH調整剤は、剥離対象塗膜(旧塗膜)に対する剥離効果の向上を目的として配合される。酸性成分としては、塩酸、リン酸等の無機酸、酢酸、蓚酸、クエン酸、酪酸、乳酸、りんご酸等の有機酸が例示できる。アルカリ性成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリが例示できる。pH調整剤は、上記のうちの1種のみに限らず、複数種を併用することができる。
上記のアルカリ性成分のうち、アミン系化合物やアミド系化合物は一般的に人体や環境への影響が懸念されるうえに、化学的に不安定(特にアルカリ性の条件下で不安定)であり、水酸化ナトリウムや過酸化水素等と併用すると、アンモニア性分解物の生成、及びそれに伴い特有のアンモニア臭を発生する為、作業者の人体・健康面への影響、或いは環境への影響面で適していない。
pH調整剤を使用した本発明の塗膜剥離剤の適応pHの範囲は、pH1〜14であり、剥離剤の基本物性(粘度、剥離性能等)が阻害されること無く、長期にわたり安定的に保つことができる。
その他添加剤としては、汎用の有機合成高分子系添加剤として、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アクリル酸/アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキサイド系、ウレタン変性ポリエーテル系、及びデンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のD‐グリコール系多糖類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系多糖類が挙げられ、天然品としては種子を原料とする多糖類(グアーガム、タラガム等)、樹脂・樹液を原料とする多糖類(アラビアガム、トラガントガム等)、海藻を原料とする多糖類(アルギン酸、カラギナン等)、発酵生産物多糖類(キサンタンガム、ジエランガム等)、植物抽出物(ペリチン)、甲殻類抽出物(キチン、キトサン、キトサミン等)等の増粘剤が挙げられ、特にセルロース系多糖類が、人・環境に対する安全性の点から好適である。
本発明によれば、優れた塗膜剥離性を有するとともに、人体や環境に対して優しく、しかもスプレー(リシンガン、エアスプレー、エアレススプレー)塗工に適した粘度を有しながら、塗工後は液ダレし難いという、最適なレオロジーコントロール特性(チクソトロピー性)を有するとともに、当該レオロジーコントロール特性(チクソトロピー性)が広範なpH領域において長期に渡って得られる、実用利便性に優れた塗膜剥離剤を得ることができる。
本発明に係る塗膜剥離剤は、橋梁用、土木・建築用等の塗膜(旧塗膜)の剥離に好適であり、LCC(Life Cycle Cost)の低減化に寄与することができる。また本発明に係る塗膜剥離剤を用いれば、旧塗膜に含まれる鉛化合物、クロム化合物、ポリ塩化ビフェニル(PCB)等の有害物質を安全に剥離することができる。解体される建築物件の塗膜に含まれるアスベスト塗装物等の有害物質を安全に剥離することもできる。
また本発明に係る塗膜剥離剤によれば、従来よりも少ない塗工量(〜0.5kg/m2程度)で、より薄い塗工塗膜(〜500μm程度)にコントロールすることが可能であり、少ない使用量で優れた剥離性能が得られる利点もある。
(実施例1〜4)
下記の成分A、A’、B、C、Dを配合して、実施例1の塗膜剥離剤を得た。
(成分A)
ベンジルアルコール(沸点205℃、1価の芳香族アルコール) 56.0重量%
ジエチレングリコール(沸点244.3℃、2価のアルコール) 5.0重量%
下記の成分A、A’、B、C、Dを配合して、実施例1の塗膜剥離剤を得た。
(成分A)
ベンジルアルコール(沸点205℃、1価の芳香族アルコール) 56.0重量%
ジエチレングリコール(沸点244.3℃、2価のアルコール) 5.0重量%
(成分A’)
γ-ブチロラクトン(沸点204℃) 15.0重量%
(成分B)
水 18.0重量%
(成分C)
カルシウムステアレート 4.0重量%
(成分D)
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2.0重量%
γ-ブチロラクトン(沸点204℃) 15.0重量%
(成分B)
水 18.0重量%
(成分C)
カルシウムステアレート 4.0重量%
(成分D)
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2.0重量%
同様に、下記の表1に示す配合割合で成分A、A’、B、C、Dを配合して実施例2〜4の塗膜剥離剤を得た。
(比較例1〜6)
実施例4の塗膜剥離剤の成分C(金属石けん)に代えて、レオロジーコントロール剤として多糖類(キサンタンガム)(成分C’)を配合して、比較例1の塗膜剥離剤を得た。
実施例4の塗膜剥離剤の成分C(金属石けん)に代えて、レオロジーコントロール剤とし超微粉シリカ(成分C’)を配合して、比較例2の塗膜剥離剤を得た。
以下、表1に示す配合割合で成分A、A’、B、C’、Dを配合して比較例3〜6の塗膜剥離剤を得た。
実施例4の塗膜剥離剤の成分C(金属石けん)に代えて、レオロジーコントロール剤として多糖類(キサンタンガム)(成分C’)を配合して、比較例1の塗膜剥離剤を得た。
実施例4の塗膜剥離剤の成分C(金属石けん)に代えて、レオロジーコントロール剤とし超微粉シリカ(成分C’)を配合して、比較例2の塗膜剥離剤を得た。
以下、表1に示す配合割合で成分A、A’、B、C’、Dを配合して比較例3〜6の塗膜剥離剤を得た。
(物性)
実施例、および比較例に係る塗膜剥離剤の物性(pH)と製品粘度(スプレー塗工前の常態における粘度)は表1に示すとおりである。粘度の測定には、B型粘度計(東機産業株式会社製品 BM形)を使用した。実施例、及び比較例での測定は、ロータNo.3、No.4を適宜、使い分け測定した。実施例の粘度の測定では、レオロジーコントロール剤の影響で、ロータの回転数(r.p.m)が大きくなる程、剪断力がかかり粘度が低下する傾向があるため、本実施例、及び比較例では使用ロータと回転数を変えて数点で測定を行い、数値が安定した点を測定値とした。測定温度は25℃に設定した。
実施例、および比較例に係る塗膜剥離剤の物性(pH)と製品粘度(スプレー塗工前の常態における粘度)は表1に示すとおりである。粘度の測定には、B型粘度計(東機産業株式会社製品 BM形)を使用した。実施例、及び比較例での測定は、ロータNo.3、No.4を適宜、使い分け測定した。実施例の粘度の測定では、レオロジーコントロール剤の影響で、ロータの回転数(r.p.m)が大きくなる程、剪断力がかかり粘度が低下する傾向があるため、本実施例、及び比較例では使用ロータと回転数を変えて数点で測定を行い、数値が安定した点を測定値とした。測定温度は25℃に設定した。
(評価)
スプレー塗工性、タレ性、懸念物質の有無に基づく安全性の評価、及び引火点に基づく消防法上の安全性の評価は表1に示すとおりである。
スプレー塗工性は、実施例、及び比較例に係る塗膜剥離剤をエアレススプレー方式により、垂直姿勢に載置した、塗膜剥離性能の評価試験に供する評価用塗膜試験片(後述)の表面に塗膜剥離剤を塗布し、そのときにノズル詰まりやスプレー塗工での不具合が生じるか否かの観点から評価した。
◎:スプレー塗工性が良好であり、タレは殆ど見られない。
△:タレは少ないが、高粘度のため、スプレー塗工性が不良である。
×:タレが生じている。
なお、上記評価の「×」の原因としては、アルカリ領域において増粘剤が分解することに起因する粘度低下(比較例1)、溶剤(NMP)が分解することに起因する粘度低下(比較例4)のほか、水を含まないことによりタレが生じたこと(比較例6)などが考えられる。
スプレー塗工性、タレ性、懸念物質の有無に基づく安全性の評価、及び引火点に基づく消防法上の安全性の評価は表1に示すとおりである。
スプレー塗工性は、実施例、及び比較例に係る塗膜剥離剤をエアレススプレー方式により、垂直姿勢に載置した、塗膜剥離性能の評価試験に供する評価用塗膜試験片(後述)の表面に塗膜剥離剤を塗布し、そのときにノズル詰まりやスプレー塗工での不具合が生じるか否かの観点から評価した。
◎:スプレー塗工性が良好であり、タレは殆ど見られない。
△:タレは少ないが、高粘度のため、スプレー塗工性が不良である。
×:タレが生じている。
なお、上記評価の「×」の原因としては、アルカリ領域において増粘剤が分解することに起因する粘度低下(比較例1)、溶剤(NMP)が分解することに起因する粘度低下(比較例4)のほか、水を含まないことによりタレが生じたこと(比較例6)などが考えられる。
表1におけるスプレー塗工性の評価より、実施例1〜4の塗膜剥離剤は、ノズル詰まり等が生じることはなく、エアレススプレーによる塗布が可能であることが確認できた。また、実施例1〜4の塗膜剥離剤は、塗工前の常態において20Pa・s(25℃)程度の比較的低粘度であるにも拘らず、液ダレは生じず、金属石けんが優れたレオロジーコントロール性(チクソトロピー性)を発揮することが確認できた。さらに、実施例2の塗膜剥離剤がpH2の強酸性を示し、実施例4の塗膜剥離剤がpH14の強アルカリ性を示すこと、および両実施例に係る塗膜剥離剤が6ヶ月保存後においても分解せず、しかも6ヶ月保存後においてもスプレー塗工性・タレ性が良好であり、優れたチクソトロピー性を発揮することにより、実施例1〜4に係る塗膜剥離剤が、最適なレオロジーコントロール特性(チクソトロピー性)を広範なpH領域において長期に渡って発揮することが確認できた。換言すれば、金属石けんをレオロジーコントロール剤とする実施例に係る塗膜剥離剤が、長期保存性や安定性に優れることが確認できた。
これに対して、金属石けんに代えて、増粘剤として多糖類(キサンタンガム)を含む比較例1の塗膜剥離剤では、その調整後から分解が生じ、粘度の低下が見られ、スプレー塗工後は液ダレが見られた。
金属石けんに代えて、増粘剤として超微粉シリカを含む比較例2、4、5の塗膜剥離剤では、塗工前の常態においては比較的高粘度であるにも拘らず、スプレー塗工後は液ダレが見られた。なお、超微粉シリカは発塵しやすく、安全性の点でも問題がある。
金属石けんに代えて、増粘剤としてポリアクリル酸ナトリウムを含む比較例3の塗膜剥離剤では、塗工前の常態においては比較的高粘度(40Pa・s(25℃))であるにも拘らず、スプレー塗工後は液ダレが見られた。また、比較例3の塗膜剥離剤では、成分A(アルコール系溶剤)の一部をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に代えているが(成分A’)、当該NMPは安全性の点でも問題がある。
成分B(水)を含有しない比較例6に係る塗膜剥離剤では、引火点が102℃(開放式試験機)を示し、引火性に問題があった。また、液ダレが生じる点でも問題があった。これは、実施例に係る塗膜剥離剤では、金属石けん(成分C)とアルコール系溶剤(成分A)とで構成される凝集状態金属石けんの端部のOH基が、更に組成中の水(成分B)と水素結合し、巨大な3次元ネットワーク(網目構造)が形成されることで、液ダレを防止できるのに対して、水を含有しない比較例6に係る塗膜剥離剤では、凝集効果が小さく、良好なタレ防止効果が発揮されないことに拠ると考える。
金属石けんに代えて、増粘剤として超微粉シリカを含む比較例2、4、5の塗膜剥離剤では、塗工前の常態においては比較的高粘度であるにも拘らず、スプレー塗工後は液ダレが見られた。なお、超微粉シリカは発塵しやすく、安全性の点でも問題がある。
金属石けんに代えて、増粘剤としてポリアクリル酸ナトリウムを含む比較例3の塗膜剥離剤では、塗工前の常態においては比較的高粘度(40Pa・s(25℃))であるにも拘らず、スプレー塗工後は液ダレが見られた。また、比較例3の塗膜剥離剤では、成分A(アルコール系溶剤)の一部をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に代えているが(成分A’)、当該NMPは安全性の点でも問題がある。
成分B(水)を含有しない比較例6に係る塗膜剥離剤では、引火点が102℃(開放式試験機)を示し、引火性に問題があった。また、液ダレが生じる点でも問題があった。これは、実施例に係る塗膜剥離剤では、金属石けん(成分C)とアルコール系溶剤(成分A)とで構成される凝集状態金属石けんの端部のOH基が、更に組成中の水(成分B)と水素結合し、巨大な3次元ネットワーク(網目構造)が形成されることで、液ダレを防止できるのに対して、水を含有しない比較例6に係る塗膜剥離剤では、凝集効果が小さく、良好なタレ防止効果が発揮されないことに拠ると考える。
塗膜剥離性能の評価試験
(評価用塗装試験片の作製)
長さ150mm、幅70mm、厚さ3〜5mmの普通鋼板(JIS G 3101に規定するSS400の鋼板にブラスト処理をしたもの)を、下記の要領で作製した2種の塗装系(A塗装系、B塗装系)で被覆した。塗装完了後、60℃の恒温槽中で30日間養生して剥離用試験片を得た。
(評価用塗装試験片の作製)
長さ150mm、幅70mm、厚さ3〜5mmの普通鋼板(JIS G 3101に規定するSS400の鋼板にブラスト処理をしたもの)を、下記の要領で作製した2種の塗装系(A塗装系、B塗装系)で被覆した。塗装完了後、60℃の恒温槽中で30日間養生して剥離用試験片を得た。
(A塗装系)
長はく形エッチングプライマー(15μm)/(下塗)鉛・クロムフリーさび止めペイント(35μm)2回/(中塗)長油性フタル酸樹脂塗料(30μm)/(上塗)長油性フタル酸樹脂塗料(25μm)、(総膜厚140μm)
(B塗装系)
無機ジンクリッチプライマー(15μm)/(下塗)エポキシ樹脂系(60μm)/(中塗)塩化ゴム系塗料(35μm)/(上塗)塩化ゴム系塗料(30μm)、(総膜厚140μm)
長はく形エッチングプライマー(15μm)/(下塗)鉛・クロムフリーさび止めペイント(35μm)2回/(中塗)長油性フタル酸樹脂塗料(30μm)/(上塗)長油性フタル酸樹脂塗料(25μm)、(総膜厚140μm)
(B塗装系)
無機ジンクリッチプライマー(15μm)/(下塗)エポキシ樹脂系(60μm)/(中塗)塩化ゴム系塗料(35μm)/(上塗)塩化ゴム系塗料(30μm)、(総膜厚140μm)
上記の要領で作製した2種の塗装系(A塗装系、B塗装系)の試験片に、[表1]の実施例1〜4、及び比較例1〜6の塗膜剥離剤をハケを使って平均塗布膜厚500μm(付着目標)塗布し、塗布性、膜厚保持性、24時間放置後の塗膜剥離製等の評価試験を実施した。以下の表2に評価試験結果を示す。なお、表2では、先のスプレー塗工性・タレ性の評価試験結果を合わせて示す。
表2に示すように、実施例1〜4に係る塗膜剥離剤では、膜厚保持性が良好であり、液ダレが無く、平均膜厚約500μmの塗布が可能であった。
加えて、実施例1〜4の塗膜剥離剤を用いれば、A塗装系とB塗装系のいずれの塗装系についても、それら塗装系の塗膜を完全に剥離することができることが確認できた。特に、実施例2、及び実施例4の塗膜剥離剤では、24時間放置を待たずに、容易に完全に両塗装系の塗膜を剥離することができた。また、実施例1〜4の塗膜剥離剤において、材質(試験用鋼板)を腐食させる等の影響は無かった。
以上より、実施例1〜4に係る塗膜剥離剤が塗膜剥離性能を有することが確認できた。
加えて、実施例1〜4の塗膜剥離剤を用いれば、A塗装系とB塗装系のいずれの塗装系についても、それら塗装系の塗膜を完全に剥離することができることが確認できた。特に、実施例2、及び実施例4の塗膜剥離剤では、24時間放置を待たずに、容易に完全に両塗装系の塗膜を剥離することができた。また、実施例1〜4の塗膜剥離剤において、材質(試験用鋼板)を腐食させる等の影響は無かった。
以上より、実施例1〜4に係る塗膜剥離剤が塗膜剥離性能を有することが確認できた。
これに対して、表2に示すように、比較例1〜6に係る塗膜剥離剤では、タレ性や膜厚の保持能などが不良であり、A、Bの塗装系に対する塗膜剥離性能が不良であった。
以上より、実施例1〜4に係る塗膜剥離剤が優れた塗膜剥離性能を発揮することが確認できた。
Claims (5)
- 下記(A)〜(C)の成分を含有する塗膜剥離剤であって、
(成分A) 沸点が100℃以上の1価又は2価のアルコール系溶剤、及びその誘導体、
(成分B) 水
(成分C) レオロジーコントロール剤、
成分Cは、非アルカリ金属塩である金属石けんであり、
粘度が25Pa・s以下(25℃)に調整されていることを特徴とする塗膜剥離剤。 - (成分D) 付着性付与剤、粘度調整剤、pH調整剤から選択される少なくとも1種の添加剤を含有する、請求項1記載の塗膜剥離剤。
- 成分Aがベンジルアルコ−ル、又はベンジルアルコ−ルとジエチレングリコ−ルとの混合物であり、
成分Cがカルシウムステアレート、又はカルシウムラウレートである、請求項1又は2記載の塗膜剥離剤。 - 成分Aが30〜80重量%、成分Cが1〜10重量%、成分Dが0〜15重量%、残部として成分Bを含有する請求項1乃至3のいずれかひとつに記載の塗膜剥離剤。
- 成分Aがベンジルアルコール、又はベンジルアルコールとジエチレングリコールとの混合物であり、両者の使用比率がベンジルアルコール70〜100重量%、ジエチレングリコール0〜30重量%である請求項1乃至4のいずれか一つに記載の塗膜剥離剤。
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