JP2022000323A - 塗膜除去用エア回転工具およびエア回転工具使用方法 - Google Patents

塗膜除去用エア回転工具およびエア回転工具使用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】構造体から既存塗膜を物理的に除去するために作業者によって把持状態で使用されるエア回転工具であって、作業中の回転工具の微調整および作業中の緊急停止を容易にするものを提供する。【解決手段】エア回転工具100は、ハウジング200と、エアモータと、外部からエアモータに向かう圧縮エアの流れを制御する第1バルブであって全閉可能であるものと、それを制御するために操作される主操作レバー210と、外部からエア回転工具に向かう圧縮エアの流れを制御する第2バルブ220であって流量調整可能かつ全閉可能であるものと、その第2バルブを制御するために操作される補助操作レバー230とを含む。作業者は、片側の手で主操作レバーをハウジングの外面に押し付けるように握った状態で、反対側の手で補助操作レバーを操作して流量調整および緊急停止を行うことが可能である。【選択図】図10

Description

本発明は、構造体から既存塗膜を物理的に除去するために作業者によって把持状態で使用される回転工具に関するものであり、特に、作業者が回転工具を用いて既存塗膜を除去する作業中の回転工具の回転状態量の微調整および作業中の緊急停止を容易にする技術に関するものである。
従来から、建築物(家屋、ビル等)、鉄製の骨組み構造を用いて構成される細長い建造物である鉄塔(例えば、送電用鉄塔、通信用鉄塔など)、土木構造物(橋梁等)、船舶、車両(自動車、列車等)、飛行機等の構造体の表面を塗り替えるために、その表面にすでに被着されている既存塗膜を構造体の表面から剥離し、その後、新たな塗料を構造体の同じ表面上に塗布する種類の施工が行われている。
ここに、既存塗膜を剥離する方法としては、例えば特許文献1に記載されているように、物理的手法と化学的手法とが存在する。物理的手法は、スクレーパなどの手工具、ワイヤーブラシなどの電動工具または回転工具、高圧水噴射機などの剥離機械などを作業者が用いて既存塗膜を構造体から剥離する手法である。
これに対し、化学的手法は、薬剤を含む剥離剤を既存塗膜に塗布してその既存塗膜を溶解または膨潤させ、それにより、既存塗膜を構造体から剥離する手法である。この手法は、例えば特許文献1に記載されているように、塗膜剥離剤を用いた湿式による塗膜除去方法すなわち湿式剥離方法とも称される。
その湿式剥離方法については、種々の要望が存在する。例えば、剥離剤が環境に対して与える悪影響が少ないという要望(環境対応能力の向上)、剥離剤が作業者の健康に対して与える悪影響が少ないという要望(作業者の健康被害の防止)、作業者が剥離作業を行う際の効率が高いという要望(作業者の剥離作業の効率化)、剥離剤が既存塗膜を剥離する能力が高いという要望(剥離剤の剥離性能の向上)などが存在する。
湿式剥離方法につき、特許文献1は、既存塗膜上に被着される剥離剤の層(以下、「剥離剤層」または「剥離剤の塗膜」ともいう。)の膜厚(以下、「塗膜厚」ともいう。)を増加させることを目的として、剥離剤のディッピング前にその剥離剤に界面活性剤を起泡剤として添加し、その状態で剥離剤を撹拌することによって剥離剤に微小な気泡を混入させる技術を開示している。ディッピングによって既存塗膜上に塗布される剥離剤の塗膜厚が増加して塗布量が増加すれば、剥離作業の効率化および剥離性能の向上という要望が満たされる可能性がある。
また、特許文献2は、剥離剤の塗布面積を拡大するために、エアレススプレー塗装機を用いる技術を開示している。しかし、この特許文献2は、剥離剤の塗膜厚を厚くするためにエアレススプレー塗装機を用いることが有用である点については開示も示唆もしていない。
従来、上述の物理的手法の一例として、上述の化学的手法により、薬剤を含む剥離剤を構造体上の既存塗膜に塗布してその既存塗膜を溶解または膨潤させた後、構造体上に残存する既存塗膜を作業者が工具を用いて物理的にないしは機械的に除去するという技術が存在する。また、別の例として、その化学的手法の実施なしで、最初から、構造体から既存塗膜を物理的にないしは機械的に除去するという技術も存在する。後者の技術の一従来例が、特許文献3および4に開示されている。
特許文献3には、塗膜を物理的に除去するための回転工具としての電動回転工具の一例も開示されている。
特許文献4には、回転工具を用いた物理的な塗膜除去作業中、その回転工具の刃先が金属製の構造体と接触し、それによって回転工具と構造体とから火花が発生すると、火災の原因となるとのリスクが指摘されている。
特許文献5には、塗膜除去という用途に向けられていないが、エア回転工具の一使用例が開示されている。
特許文献6にも、エア回転工具の一使用例が開示されている。しかし、この特許文献6には、その使用例の用途として、エア回転工具により、構造物の表面(素地)が損傷しないとともに塗膜片が飛散しないように工具回転速度を頻繁に微調整しながら慎重に構造物の表面から既存塗膜を物理的に除去するというものが開示されていない。
この特許文献6には、エア回転工具に、主操作レバーとは別に、流量調整用のダイヤル式操作具を装着する点が開示されている。
しかし、この特許文献6には、そのダイヤル式操作具が、圧縮エアの流路が全閉可能であるように設計されている点は開示されていない。
さらに、この特許文献6には、エア回転工具の作動の進行中に、作業者の両手のうち、主操作レバーを握って操作している側の手とは反対側の手でダイヤル式操作具を操作して流量調整を行う点も、その作業の進行中に、同じく反対側の手でダイヤル式操作具を、今度は、全閉位置に継続的に操作してエア回転工具を緊急停止させる点も開示されていない。
特開昭62−20575号公報 特許第6442101号公報 特開2008−274367号公報 特開2011−000524号公報 特開2001−054882号公報 特表2009−545464号公報
本発明者は、回転工具を用いた物理的な塗膜除去作業中における火災のリスクを研究し、その結果、火災が発生する別の火災リスク・ファクタが存在し得ることに気が付いた。
そのような火災リスク・ファクタは、例えば、物理的な塗膜除去作業に先立ち、前述の化学的手法が実施される場合であって、剥離剤が使用される場面に存在し得る。なぜなら、その剥離剤は、アルコール成分を含有する場合があり、そのアルコール成分は高い揮発性を有し、低い揮発性を有する液体より低い発火点を有するからである。
また、剥離剤がそのような揮発成分を含有していなくても、塗膜除去作業の現場において、別の揮発成分が使用され、その揮発成分が、回転工具を用いて塗膜除去を行う作業者の周辺空気中に、作業者が知らないまま、浮遊している場合がある。この場合にも、同様に、火災リスク・ファクタが存在し得る。
一方、特許文献3に開示されているように、回転工具として電動回転工具が存在する。その電動回転工具を使用する場合には、電源から電動回転工具まで延びる電線を経て電動回転工具に電気が供給される。このような環境においては、その電線または電動回転工具が断線して漏電したり、それら電線または電動回転工具が短絡して火花が発生したり、半断線して加熱したり、その電線が局部的に過大に屈曲して加熱する場合にも、火災リスク・ファクタが存在し得る。
一方、電動回転工具は、電動モータを内蔵する。その電動モータがブラシを用いて整流を行うブラシ型である場合には、電動モータ内において、ブラシが、離散的に並んだ複数の整流子に順次接触して離れる瞬間に整流火花が発生する。この火花が発生する場合にも、火災リスク・ファクタが存在し得る。
さらに、本発明者は、回転工具を用いた物理的な塗膜除去を、回転工具としてエア回転工具または空圧回転工具を用いて行えば火災リスク・ファクタの出現が抑制されることに気が付いた。
その知見に基づき、本発明者は、従来のエア回転工具を用いて塗膜除去作業を行い、その結果、従来のエア回転工具では、作業中に、その工具の回転数すなわちその工具に装着されている除去具のトルクおよび/または回転数(それらを「回転状態」、「回転状態量」、「回転特性」または「回転特性値」と総称することもある。)をきめ細かく調整することが困難であるという問題があることに気が付いた。
具体的には、作業者は、塗膜除去作業中、エア回転工具によって構造体から除去された塗膜の破片(例えば、有害物質を含んだ塗膜片)が空気中に飛散する程度を最小限に抑えることが必要であり、そのために、エア回転工具から除去具に加えられるトルクおよび回転数を微調整することが必要である。
さらに、作業者は、塗膜除去作業中、エア回転工具から構造体の地肌(例えば、構造体の地肌に亜鉛メッキ層が付着させられて成る素地亜鉛メッキ面)が受けるダメージを最小限に抑えることも必要であり、そのためにも、エア回転工具から除去具に加えられるトルクおよび回転数を微調整することが必要である。
さらに、作業者は、塗膜除去作業中、緊急事態が発生したら、エア回転工具を素早く停止させて被害の発生および拡大を防止することも必要である。
なお付言するに、回転工具が使用される場面において、上述の塗膜除去作業以外の作業が行われる場合であっても、作業中に電気火災が発生することを防止するとともに回転工具の回転状態を容易に微調整したいという要請および作業中に素早く緊急停止させたいという要請が存在することが予想される。
それらの事情を背景に、本発明は、構造体から既存塗膜を物理的に除去するために作業者によって把持状態で使用される回転工具であって、作業中の回転工具の回転状態量の微調整および作業中の緊急停止を容易にするものを提供することを課題としてなされたものである。
その課題を解決するために、本発明の一側面によれば、構造体から既存塗膜を物理的に除去するために作業者によって把持状態で使用されるエア回転工具であって、
概して一軸線に沿って延びるハウジングと、
そのハウジング内に収容されるエアモータと、
そのハウジング内に収容され、外部から前記エアモータに向かう圧縮エアの流れを制御する第1バルブであって、その圧縮エアの流量調整を行うとともに全閉可能であるものと、
その第1バルブを制御するために作業者によって操作される主操作レバーと、
外部から当該エア回転工具のうちの前記第1バルブに向かう圧縮エアの流れを制御する第2バルブであって、その圧縮エアの流量調整を行うとともに全閉可能であるものと、
その第2バルブを制御するために作業者によって操作される補助操作具と
を含み、
その補助操作具は、前記第2バルブの最開位置と全閉位置とにそれぞれ対応する最開位置と全閉位置との間を回転させられるとともに任意の中間位置で固定可能であり、
それにより、作業者が、片方の手で前記主操作レバーと前記ハウジングとを一緒に握っているために前記第1バルブがオン状態にあるときに、反対側の手で前記補助操作具を任意の位置に操作することによって前記圧縮エアの流量が調整される一方、同じく反対側の手で前記補助操作具を前記全閉位置に操作すれば、前記第2バルブが全閉し、停止する塗膜除去用エア回転工具が提供される。
また、本発明の別の側面によれば、構造体から既存塗膜を除去するために上述のエア回転工具を使用する方法であって、
作業者が、片方の手で前記主操作レバーを前記ハウジングの外面に押し付けられるように握ることにより、前記第1バルブをオン状態とし、それにより、前記エア回転工具を作動させる作動工程と、
作業者が片方の手で前記主操作レバーを前記ハウジングの外面に押し付けられるように握ることによって前記エア回転工具が作動している状態で、作業者が、反対側の手で前記補助操作具を任意の位置に操作することにより、前記第2バルブの弁開度を制御し、それにより、前記エア回転工具の回転状態量を微調整する微調整工程と、
作業者が片方の手で前記主操作レバーを前記ハウジングの外面に押し付けられるように握ることによって前記エア回転工具が作動している状態で、作業者が、反対側の手で前記補助操作具を前記全閉位置に操作することにより、前記第2バルブを全閉し、それにより、前記エア回転工具を停止させる停止工程と
を含むエア回転工具使用方法が提供される。
一例においては、前記微調整工程が、前記構造体上における前記既存塗膜のうち、前記エア回転工具によって加工されるべき部分である加工部位の塗膜厚に応じ、その塗膜厚が薄いほど前記エア回転工具の回転速度が低下するように、作業者が前記補助操作具を操作する工程を含む。
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
(1) 構造体から既存塗膜を物理的に除去するために作業者によって把持状態で使用されるエア回転工具であって、
概して一軸線に沿って延びるハウジングと、
そのハウジング内に収容されるエアモータと、
そのハウジング内に収容され、外部から前記エアモータに向かう圧縮エアの流れを制御する第1バルブと、
その第1バルブを制御するために作業者によって操作される主操作レバーと、
外部から当該エア回転工具に向かう圧縮エアの流れを制御する第2バルブと、
その第2バルブを制御するために作業者によって操作される補助操作具と
を含み、
作業者は、片方の手で前記主操作レバーを前記ハウジングの外面に押し付けるようにそれら主操作レバーとハウジングとを一緒に握った状態で、他方の手で前記補助操作具を操作することが可能である塗膜除去用エア回転工具。
(2) 前記主操作レバーは、概して前記軸線に沿って延びるとともにその軸線と立体交差する揺動軸線回りに揺動可能である(1)項に記載の塗膜除去用エア回転工具。
(3) 前記補助操作具は、前記軸線または当該エア回転工具に接続されるホースの中心線と交差する回転軸線回りに、前記第2バルブのための全開位置と全閉位置との間を回転させられるとともに任意の中間位置で固定可能であり、それにより、前記第2バルブは、前記ホースから当該エア回転工具に向かう前記圧縮エアのオンオフ制御(発停、起動・停止など)と流量調整との双方を行う(1)または(2)項に記載の塗膜除去用エア回転工具。
(4) 前記補助操作具は、前記主操作レバーが含まれる平面と同一平面上に配置される(1)ないし(3)項のいずれかに記載の塗膜除去用エア回転工具。
(5) 前記補助操作具は、前記軸線に関し、前記主操作レバーとは反対側に配置される(1)ないし(4)項のいずれかに記載の塗膜除去用エア回転工具。
(6) 前記補助操作具は、前記軸線に関し、前記主操作レバーと同じ側に配置される(1)ないし(4)項のいずれかに記載の塗膜除去用エア回転工具。
(7) 前記補助操作具は、前記軸線または当該エア回転工具に接続されるホースの中心線と交差する回転軸線から半径方向外向きに延びる補助操作レバーであり、
その補助操作レバーは、前記回転軸線回りに、前記第2バルブのための全開位置と全閉位置との間を回転させられるとともに任意の中間位置で固定可能である(1)ないし(6)項のいずれかに記載の塗膜除去用エア回転工具。
(8) 前記補助操作レバーは、前記全開位置にあるときに、前記主操作レバーに対して概して直線的にまたは平行に延びる姿勢を取る(7)項に記載の塗膜除去用エア回転工具。
(9) 前記補助操作レバーは、前記全閉位置にあるときに、前記主操作レバーに対して概して直線的にまたは平行に延びる姿勢を取る(7)項に記載の塗膜除去用エア回転工具。
(10) 前記第1バルブは、前記ホースから前記エアモータに向かう前記圧縮エアのオンオフ制御と流量調整とのうちの少なくともオンオフ制御を行う(1)ないし(9)項のいずれかに記載の塗膜除去用エア回転工具。
(11) 前記第2バルブは、前記ホースから当該エア回転工具に向かう前記圧縮エアのオンオフ制御と流量調整との双方を行う(1)ないし(10)項のいずれかに記載の塗膜除去用エア回転工具。
(12) さらに、
前記ハウジングの先端部に装着されるヘッドと、
そのヘッドから少なくとも部分的に露出する状態で当該エア回転工具に前記エアモータと連携する状態で装着され、前記構造体から前記既存塗膜を物理的に除去するために前記エアモータによって回転させられる除去具と
を含む(1)ないし(11)項のいずれかに記載の塗膜除去用エア回転工具。
(13) 前記除去具は、ロータリーブラシとグラインダとのうちの少なくとも一方を含む(12)項に記載の塗膜除去用エア回転工具。
(14) 構造体から既存塗膜を剥離剤を用いて湿式で剥離する方法であって、
ノズルを有するエアレススプレーガンを用いることにより、前記剥離剤自体を加圧して前記剥離剤を前記ノズルから噴射し、その噴射された剥離剤を前記塗膜表面上に塗布する塗布工程であって、その塗布に際し、前記剥離剤の前記複数の液滴が前記塗膜表面に衝突し、それにより、前記複数の液滴が複数のエアバブルとして前記塗膜表面上に被着されて固定されるものと、
その塗布完了から所要時間の経過後、作業者が、(1)ないし(13)項のいずれかに記載のエア回転工具を用いることにより、前記剥離剤によって軟化した既存塗膜を前記構造体から物理的に除去する除去工程と
を含む塗膜剥離方法。
(15) 構造体から既存塗膜を剥離剤を用いて湿式で剥離する方法であって、
ノズルを有するエアレススプレーガンを用いることにより、前記剥離剤自体を加圧して前記剥離剤を前記ノズルから噴射し、その噴射された剥離剤を前記塗膜表面上に塗布する塗布工程であって、その塗布に際し、前記剥離剤の前記複数の液滴が前記塗膜表面に衝突し、それにより、前記複数の液滴が複数のエアバブルとして前記塗膜表面上に被着されて固定されるものと、
その塗布完了から所要時間の経過後、作業者が、エア回転工具を用いることにより、前記剥離剤によって軟化した既存塗膜を前記構造体から物理的に除去する除去工程と
を含む塗膜剥離方法。
(16) 構造体から既存塗膜を剥離剤を用いて湿式で剥離する方法であって、
ノズルを有するエアレススプレーガンを用いることにより、前記剥離剤自体を加圧して前記剥離剤を前記ノズルから噴射し、その噴射された剥離剤を前記塗膜表面上に塗布する塗布工程と、
その塗布完了から所要時間の経過後、作業者が、エア回転工具または(1)ないし(13)項のいずれかに記載のエア回転工具を用いることにより、前記剥離剤によって軟化した既存塗膜を前記構造体から物理的に除去する除去工程と
を含む塗膜剥離方法。
(17) 構造体から既存塗膜を剥離剤を用いずに乾式で剥離する方法であって、
作業者が、エア回転工具または(1)ないし(13)項のいずれかに記載のエア回転工具を用いることにより、前記既存塗膜を前記構造体から物理的に除去する除去工程を含む塗膜剥離方法。
(18) 塗膜除去作業以外の作業のために使用されるエア回転工具であって、
概して一軸線に沿って延びるハウジングと、
そのハウジング内に収容されるエアモータと、
そのハウジング内に収容され、外部から前記エアモータに向かう圧縮エアの流れを制御する第1バルブと、
その第1バルブを制御するために作業者によって操作される主操作レバーと、
当該エア回転工具に外付けされ、外部から当該エア回転工具に向かう圧縮エアの流れを制御する第2バルブと、
その第2バルブを制御するために作業者によって操作される補助操作具と
を含み、
作業者は、片方の手で前記主操作レバーを前記ハウジングの外面に押し付けるようにそれら主操作レバーとハウジングとを一緒に握った状態で、他方の手で前記補助操作具を操作することが可能であるエア回転工具。
(19) (1)ないし(18)項のいずれかに記載のエア回転工具であって、
当該エア回転工具は、さらに、前記エアモータ、前記第1バルブおよび前記第2バルブに共通のエア通路を含み、
そのエア通常の上流端に高圧源が接続され、
前記エア通路のうち、前記第1バルブより上流側の部分に前記第2バルブが接続され、
その第2バルブは、上流側バルブおよび下流側バルブが直列に並ぶものを含み、
それら上流側バルブおよび下流側バルブは、いずれも、流量調整機能を有しており、
それら上流側バルブおよび下流側バルブのうちの少なくとも一方は、全閉可能であり、
前記補助操作具は、前記上流側バルブおよび前記下流側バルブをそれぞれ制御するために操作される上流側補助操作具および下流側補助操作具を含み、
前記上流側バルブは、前記高圧源から当該上流側バルブを通過して前記下流側バルブ内に流入する圧縮エアの流量の上限値を制限する流量制限バルブとして機能し、
前記下流側バルブは、前記上流側バルブから当該下流側バルブを通過して前記第1バルブ内に流入する圧縮エアの流量を、前記上流側バルブによって制限された前記上限値を超えない範囲で調整する流量調整バルブとして機能するエア回転工具。
ところで、本発明者は、前述の4つの要望、すなわち、環境対応能力の向上という要望と、作業者の健康被害の防止という要望と、剥離作業の効率化という要望と、剥離剤の剥離性能の向上という要望とのうちの少なくとも二つを同時に達成するために、剥離剤の塗布時にその剥離剤が飛散しないようにすることと、既存塗膜の表面上に塗布された剥離剤が既存塗膜から垂れることなくその剥離剤の塗膜厚ひいては塗布量を増加させることとを同時に行うことが重要であることに気が付いた。
そして、本発明者は、湿式剥離剤塗布技術につき、剥離剤の塗布時にその剥離剤が飛散しないようにすることと、既存塗膜の表面上に塗布された剥離剤が既存塗膜から垂れることなくその剥離剤の塗膜厚を極大化して塗布量ひいては塗布量を増加させることとを同時に行うことを可能にするための研究開発を行った。
それらの事情を背景にして、本発明は、湿式剥離剤塗布技術であって、剥離剤の塗布時にその剥離剤が飛散しないようにすることと、既存塗膜の表面上に塗布された剥離剤が既存塗膜から垂れることなくその剥離剤の塗膜厚ひいては塗布量を増加させることとを同時に行うことを可能にするものを提供することを課題としてなされたものである。
その課題を解決するために、本発明の第1の側面によれば、構造体から既存塗膜を剥離剤を用いて湿式で剥離する方法であって、
当該方法は、
ノズルを有するエアレススプレーガンを用いることにより、前記剥離剤自体を加圧して前記剥離剤を前記ノズルから噴射し、それにより、前記剥離剤は複数の液滴に分断されて前記塗膜表面に衝突する噴射工程と、
その噴射された剥離剤を前記塗膜表面上に塗布する塗布工程であって、その塗布に際し、前記剥離剤の前記複数の液滴が前記塗膜表面に衝突し、それにより、前記複数の液滴がそれぞれ大気中のエアを巻き込んで発泡化し、それにより、前記複数の液滴が複数のエアバブルとして前記塗膜表面上に被着されて固定されるものと、
前記剥離剤の粘度と、前記剥離剤が前記ノズルから噴射される際の噴射圧と、前記ノズルの平均口径とのうちの少なくとも一方は、前記エアレススプレーガンを用いて前記剥離剤が塗布される際のその剥離剤の霧化性が不良化するように設定する条件設定工程と
を含む塗膜剥離方法が提供される。
また、本発明の第2の側面によれば、構造体から既存塗膜を剥離剤を用いて湿式で剥離する方法であって、
当該方法は、
エアレススプレーガンを用いて前記剥離剤を噴射して複数の液滴に分断する噴射工程と、
その噴射された剥離剤を前記塗膜表面上に、前記剥離剤が前記塗膜表面上に被着されることによって形成されることとなる塗膜が前記既存塗膜の表面粗度が小さいほど大きい塗膜厚を有するように塗布する塗布工程と
を含む塗膜剥離方法が提供される。
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
(1) 構造体から既存塗膜を剥離剤を用いて湿式で剥離する方法であって、
ノズルを有するエアレススプレーガンを用いることにより、前記剥離剤自体を加圧して前記剥離剤を前記ノズルから噴射し、それにより、前記剥離剤を複数の液滴に分断する噴射工程と、
その噴射された剥離剤を前記塗膜表面上に塗布する塗布工程であって、その塗布に際し、前記剥離剤の前記複数の液滴が前記塗膜表面に衝突し、それにより、前記複数の液滴がそれぞれ大気中のエアを巻き込んで発泡化し、それにより、前記剥離剤が発泡状態で前記塗膜表面上に塗布されるものと、
その塗布完了から所要時間の経過後、前記剥離剤によって軟化した既存塗膜を前記構造体から物理的に剥離する剥離工程と
を含む塗膜剥離方法。
(2) 前記剥離剤は、高粘度を有する(1)項に記載の塗膜剥離方法。
(3) 前記剥離剤は、主成分と水とが界面活性剤を用いて乳化された水系剥離剤エマルジョンである(1)または(2)項に記載の塗膜剥離方法。
(4) 前記剥離剤は、溶剤系剥離剤である(1)または(2)項に記載の塗膜剥離方法。
(5) 前記塗布工程は、前記発泡状態にある剥離剤が平均直径が約0.1mmから約0.5mmまでの範囲内にある複数の泡を有するように、前記剥離剤を前記塗膜表面上に塗布する(1)ないし(4)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(6) 前記塗布工程は、前記剥離剤が前記塗膜表面上に被着されることによって形成される塗膜の平均塗膜厚が約1mmであるように、前記剥離剤を前記塗膜表面上に塗布する(1)ないし(5)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(7) 前記塗布工程は、前記剥離剤が前記塗膜表面上に被着されることによって形成される塗膜の平均塗膜厚が約2mmから約5mmまでの範囲内にあるように、前記剥離剤を前記塗膜表面上に塗布する(1)ないし(5)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(8) 前記塗布工程は、前記剥離剤が前記塗膜表面上に被着されることによって形成される塗膜が前記既存塗膜の表面粗度が小さいほど大きい塗膜厚を有するように、前記剥離剤を前記塗膜表面上に塗布する(1)ないし(7)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(9) 前記噴射工程は、前記剥離剤の粘度とその剥離剤の前記ノズルからの吐出量とに応じて変化する高さを有する噴射圧で前記剥離剤を加圧して前記ノズルから噴射する(1)ないし(8)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(10) 前記剥離剤は、揮発性を有し、
当該塗膜剥離方法は、さらに、
前記剥離剤の塗布完了後に、前記剥離剤に対して不透過性を有する保護シートで前記塗膜表面をラッピングし、それにより、前記剥離剤から発生した気化ガスが前記塗膜表面から大気に放出されることを防止するラッピング工程を含み、
前記剥離工程は、前記所要時間の経過後、前記保護シートを前記既存塗膜から剥離する工程を含む(1)ないし(9)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(11) 前記噴射工程は、圧縮エアの流れに前記剥離剤を接触させてその剥離剤を霧吹きの原理で霧化する工程を含まず、さらに、前記剥離剤を前記ノズルから噴射する前に前記剥離剤を発泡させる工程を含まない(1)ないし(10)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(21) 構造体から既存塗膜を剥離剤を用いて湿式で剥離する方法であって、
前記剥離剤は、0.1Pa・sより高い粘度を有する高粘度のものであり、
当該方法は、
ノズルを有するエアレススプレーガンを用いることにより、前記剥離剤自体を加圧して前記剥離剤を前記ノズルから噴射し、それにより、前記剥離剤は複数の液滴に分断されて前記塗膜表面に衝突する噴射工程と、
その噴射された剥離剤を前記塗膜表面上に塗布する塗布工程であって、その塗布に際し、前記剥離剤の前記複数の液滴が前記塗膜表面に衝突し、それにより、前記複数の液滴がそれぞれ大気中のエアを巻き込んで発泡化し、それにより、前記複数の液滴が複数のエアバブルとして前記塗膜表面上に被着されて固定されるものと
を含む塗膜剥離方法。
(22) 前記剥離剤は、16Pa・s(20℃)を超えない粘度を有する(21)項に記載の塗膜剥離方法。
(23) 前記剥離剤は、主成分と水とが界面活性剤を用いて乳化された水系剥離剤エマルジョンである(21)または(22)項に記載の塗膜剥離方法。
(24) 前記剥離剤は、溶剤系剥離剤である(21)または(22)項に記載の塗膜剥離方法。
(25) 前記噴射工程は、前記剥離剤を前記ノズルから80kg/cmを超えない噴射圧で噴射する(21)ないし(24)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(26) 前記塗布工程は、重ね塗りせずに前記剥離剤が前記塗膜表面上に被着されることによって形成される塗膜の平均塗膜厚が約1mmを下回らないように、前記剥離剤を前記塗膜表面上に塗布する(21)ないし(25)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(27) 前記塗布工程は、重ね塗りせずに前記剥離剤が前記塗膜表面上に被着されることによって形成される塗膜の平均塗膜厚が約2mmから約5mmまでの範囲内にあるように、前記剥離剤を前記塗膜表面上に塗布する(21)ないし(25)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(28) 前記塗布工程は、1.0kg/mの塗布量を有するように前記剥離剤を前記塗膜表面上に塗布する(21)ないし(27)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(29) 前記噴射工程は、前記剥離剤の粘度とその剥離剤の前記ノズルからの吐出量とに応じて変化する高さを有する噴射圧で前記剥離剤を加圧して前記ノズルから噴射する(21)ないし(28)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(30) 前記剥離剤は、揮発性を有し、
当該塗膜剥離方法は、さらに、
前記剥離剤の塗布完了後に、前記剥離剤に対して不透過性を有する保護シートで前記塗膜表面をラッピングし、それにより、前記剥離剤から発生した気化ガスが前記塗膜表面から大気に放出されることを防止するラッピング工程と、
所定時間の経過後、前記保護シートを前記既存塗膜から剥離し、さらに、前記剥離剤によって軟化した既存塗膜を前記構造体から剥離する剥離工程と
含む(21)ないし(29)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(31) 前記噴射工程は、圧縮エアの流れに前記剥離剤を接触させてその剥離剤を霧吹きの原理で霧化する工程を含まず、さらに、前記剥離剤を前記ノズルから噴射する前に前記剥離剤を発泡させる工程を含まない(21)ないし(30)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(51) 構造体から既存塗膜を剥離剤を用いて湿式で剥離する方法であって、
当該方法は、
ノズルを有するエアレススプレーガンを用いることにより、圧縮エアを用いることなく、前記剥離剤自体を加圧して前記剥離剤を前記ノズルから噴射し、それにより、前記剥離剤は複数の液滴に分断されて前記塗膜表面に衝突する噴射工程と、
その噴射された剥離剤を前記塗膜表面上に塗布する塗布工程であって、その塗布に際し、前記剥離剤の前記複数の液滴が前記塗膜表面に衝突し、それにより、前記複数の液滴がそれぞれ大気中のエアを巻き込んで発泡化し、それにより、前記複数の液滴が複数のエアバブルとして前記塗膜表面上に被着されて固定されるものと、
前記剥離剤の粘度と、前記剥離剤が前記ノズルから噴射される際の噴射圧と、前記ノズルの平均口径とのうちの少なくとも一方は、前記エアレススプレーガンを用いて前記剥離剤が噴霧される際のその剥離剤の霧化性が不良化するように設定される塗膜剥離方法。
(52) 前記粘度と前記噴射圧と前記平均口径とのうちの少なくとも一方は、前記複数の液滴のそれぞれの平均粒径が50μmより大きくなるように設定される(51)項に記載の塗膜剥離方法。
(53) 前記粘度は、0.1Pa・s(20℃)より高い値に設定される(51)または(52)項に記載の塗膜剥離方法。
(54) 前記噴射圧は、80kg/cmを超えない高さに設定される(51)ないし(53)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(55) 前記等価口径は、0.4mm以上の値に設定される(51)ないし(54)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(56) 前記粘度は、16Pa・s(20℃)を超えない値に設定される(51)ないし(55)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(57) 前記塗布工程は、重ね塗りせずに前記剥離剤が前記塗膜表面上に被着されることによって形成される塗膜の平均塗膜厚が約1mmを下回らないように、前記剥離剤を前記塗膜表面上に塗布する(51)ないし(56)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(58) 前記塗布工程は、重ね塗りせずに前記剥離剤が前記塗膜表面上に被着されることによって形成される塗膜の平均塗膜厚が約2mmから約5mmまでの範囲内にあるように、前記剥離剤を前記塗膜表面上に塗布する(51)ないし(57)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(59) 前記塗布工程は、1.0kg/mの塗布量を有するように前記剥離剤を前記塗膜表面上に塗布する(51)ないし(58)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(60) 前記噴射工程は、前記剥離剤の粘度とその剥離剤の前記ノズルからの吐出量とに応じて変化する高さを有する噴射圧で前記剥離剤を加圧して前記ノズルから噴射する(51)ないし(59)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(61) 前記剥離剤は、揮発性を有し、
当該塗膜剥離方法は、さらに、
前記剥離剤の塗布完了後に、前記剥離剤に対して不透過性を有する保護シートで前記塗膜表面をラッピングし、それにより、前記剥離剤から発生した気化ガスが前記塗膜表面から大気に放出されることを防止するラッピング工程と、
所定時間の経過後、前記保護シートを前記既存塗膜から剥離し、さらに、前記剥離剤によって軟化した既存塗膜を前記構造体から剥離する剥離工程と
含む(51)ないし(60)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(62) 前記噴射工程は、圧縮エアの流れに前記剥離剤を接触させてその剥離剤を霧吹きの原理で霧化する工程を含まず、さらに、前記剥離剤を前記ノズルから噴射する前に前記剥離剤を発泡させる工程を含まない(51)ないし(61)項のいずれかに記載の塗膜剥離方法。
(63) 構造体から既存塗膜を剥離剤を用いて湿式で剥離する方法であって、
当該方法は、
エアレススプレーガンを用いて前記剥離剤を噴射して複数の液滴に分断する噴射工程と、
その噴射された剥離剤を前記塗膜表面上に、前記剥離剤が前記塗膜表面上に被着されることによって形成されることとなる塗膜が前記既存塗膜の表面粗度が小さいほど大きい塗膜厚を有するように塗布する塗布工程と
を含む塗膜剥離方法。
(64) 前記塗布工程は、前記剥離剤を前記複数の液滴として前記塗膜表面に衝突させ、それにより、前記複数の液滴をそれぞれ大気中のエアを巻き込んで発泡化させ、それにより、前記複数の液滴を複数のエアバブルとして前記塗膜表面上に被着して固定する(63)項に記載の塗膜剥離方法。
本発明によれば、当該エア回転工具に、主操作レバーとは別に、流量調整用の補助式操作具が装着される。さらに、その補助操作具が、当該エア回転工具内における圧縮エアの流路が全閉可能であるように設計される。
そのような構成のもと、本発明によれば、当該エア回転工具の作動中に、作業者の両手のうち主操作レバーを握って操作している側の手とは反対側の手で補助操作具を最開位置と全閉位置との間において任意の位置に操作して流量調整を行うとともに、その作業中に、同じく反対側の手で補助操作具を、今度は、全閉位置に継続的に操作して当該エア回転工具を緊急停止させることが可能となる。
図1は、本発明の例示的な一実施形態に従う塗膜剥離方法を実施するために使用される例示的なエアレス塗布機を概念的に表す系統図である。 図2は、図1に示すエアレス塗布機において選択的に使用される複数種類の剥離剤すなわちリムーバのそれぞれの組成および使用温度を表す表である。 図3は、前記塗膜剥離方法における例示的な準備工程を示す工程図である。 図4は、前記塗膜剥離方法における例示的な施工工程を示す工程図である。 図5は、図1に示すエアレススプレーガンのうちのノズルから噴出したリムーバの性状の時間的変遷を概念的に表す図である。 図6は、本発明の一実施例によって既存塗膜上に塗布されたリムーバの塗着性の試験結果を比較例と対比して示す図である。 図7(a)は、液状の剥離剤をエアレス塗布するに際して、エアレススプレーガンから噴霧される前の剥離剤の粘度と、噴霧によって当該剥離剤が分断された複数の液滴のそれぞれの粒径(例えば、平均直径)と、エアレススプレーガンによる剥離剤の霧化性との間に成立する一般的な関係を概念的に表すグラフであり、同図(b)は、同じ噴霧環境において、エアレススプレーガンからの剥離剤の噴射圧と、前記各液滴の粒径との間に成立する一般的な関係を概念的に表すグラフである。 図8は、前記実施形態に従う塗膜剥離方法を実施するに際して、既存塗膜の表面粗度に応じて、剥離剤をその既存塗膜の表面上に塗布すべき膜の厚さである平均塗膜厚が決定されるプロセスの一例を概念的に表すグラフである。 図9は、前記実施形態に従う塗膜剥離方法の一実施例として、エア回転工具によって既存塗膜を構造体から物理的に除去するための塗膜除去システムを概念的に表す系統図である。 図10は、図9に示す塗膜除去システムからエア回転工具とホースのうちの下流端部とを取り出して拡大して示す斜視図である。 図11(a)は、図10に示すエア回転工具からエアバルブと補助操作レバーとの組立体を取り出して拡大して示す側面断面図であり、同図(b)は、同図(a)に示す組立体を示す平面図である。 図12は、図11に示すエアバルブの固有流量特性のいくつかの例を説明するためのグラフである。 図13は、既存塗膜を構造体から物理的に除去するために図10に示すエア回転工具を使用する方法の一例を表すフローチャートである。 図14は、図10に示すエア回転工具のうちの補助操作レバーの別の例を示す平面図である。
以下、本発明のさらに具体的な例示的な一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の例示的な一実施形態は、構造体(または構造物)から既存塗膜を剥離剤(以下、「リムーバ」ともいう。)を用いて剥離する湿式剥離方法に関するものである。具体的には、その湿式剥離方法は、剥離剤を既存塗膜上に発泡型エアレス(無気噴射、無気噴霧)塗布して剥離する発泡型エアレス塗布剥離方法である。
その発泡型エアレス塗布剥離方法の一例は、高粘度の剥離剤を既存塗膜上に発泡型エアレス塗布して剥離する方法である。
ここに、「高粘度」は、例えば、塗料粘度で表現すると、一般的な塗装が可能な粘度限界(例えば、0.1Pa・s(20℃))より高い粘度を意味する。例えば、「高粘度」は、ゲルコート塗料に相当する粘度(3Pa・s(20℃))またはそれより高い粘度を意味する場合や、マヨネーズ(23℃)に相当する粘度(8Pa・s(20℃))またはそれより高い粘度を意味する場合がある。
発泡型エアレス塗布剥離方法の別の一例は、高粘度かつ乳化状態の剥離剤を既存塗膜上に発泡型エアレス塗布して剥離する方法である。高粘度かつ乳化状態の剥離剤の一例は、後述のように、図2に示す第1リムーバである。
上述の発泡型エアレス塗布剥離方法(以下、「本剥離方法」という。)は、後に図4を参照して詳述するように、化学的な剥離工程としての発泡型エアレス塗布工程S201と、物理的な(機械的な)剥離工程としての剥離工程S203とを、それらの順に実施される複数の工程として有する。
図1には、上述の発泡型エアレス塗布工程S201を実施するために使用される例示的なエアレス塗布機10が概念的に系統図で表されている。
エアレス塗布機10は、構造体12から既存塗膜14を湿式で剥離するために既存塗膜14上に塗布される剥離剤20を保存するタンク30と、エアレス型の圧送ポンプ40(圧送機)と、エアレススプレーガン(以下、単に「スプレーガン」という。)50と、圧送ポンプ40の駆動源としてのエアコンプレッサ60とを有する。
具体的に、エアコンプレッサ60は、後述のプランジャまたはピストンの背後に位置する加圧室76に高圧を作用させ、それにより、それらプランジャまたはピストンの前方に位置する吐出室(吐出されるべき高粘性の剥離剤20がタンク30から送り込まれる部屋)80を加圧するために使用される。エアコンプレッサ60自体は、図示しない電動モータによって駆動される。
したがって、本実施形態においては、圧送ポンプ40が、電気を使用するために電気火災のリスクがある電動モータによって駆動されるのではなく、電気を使用しないエアコンプレッサ60すなわち圧縮エア源または高圧源によって駆動される。
その結果、本実施形態によれば、スプレーガン50を用いたエアレススプレー作業中に、エアコンプレッサ60からスプレーガン50までの圧縮エア経路の途中で電気火災が発生することが防止される。
さらに、本実施形態においては、図1に示すように、タンク30、圧送ポンプ40およびスプレーガン50という3個のツールならびにそれらを互いに接続するホース70および78(配管)のそれぞれのうち、塗布作業時に剥離剤(リムーバ)20が接触する部分が、ステンレス鋼で製造される。
その結果、それらツールおよび配管が、剥離剤20、洗浄液(例えば、アルコールや水)などによって腐蝕することが抑制されるとともに、塗布作業終了後に、それらツールおよび配管内にそれぞれ残存する剥離剤20の、それらツールおよび配管のそれぞれの表面からの剥離性が増し、それにより、それらツールおよび配管の洗浄作業が容易となるとともに確実となる。
スプレーガン50を用いたエアレススプレー方式は、後に図5を参照して詳述するが、簡単に説明すると、剥離剤20に高圧をかけて液膜を作り、その液膜を大気(静止空気)と衝突させて、剥離剤20を液滴化する方式である。
タンク30は、ホース70を介して、圧送ポンプ40の供給口72に接続されている。その供給口72は、吐出口80に流体的に接続されている。エアコンプレッサ60は、エアホース74を介して、圧送ポンプ40の加圧室76に接続されている。スプレーガン50は、高圧ホース78を介して、圧送ポンプ40の吐出室80に接続されている。エアレス塗布機10において、ホース70は供給ラインを構成し、エアホース74は圧縮エアラインを構成し、高圧ホース78は圧送ラインを構成する。
スプレーガン50は、圧縮エアを直接、剥離剤20に接触させることなく、前記プランジャまたはピストンによって剥離剤20自体を加圧してその剥離剤20をノズルから噴射し、それにより、剥離剤20を複数の液滴に分断するように構成される。
<噴霧ファクターの設定>
本実施形態においては、噴霧ファクター、すなわち、剥離剤20の粘度と、剥離剤20が前記ノズルから噴射される際の噴射圧(「霧化圧力」)と、前記ノズルの平均口径とのうちの少なくとも一方が、エアレススプレーガン50を用いて剥離剤20が噴霧される際のその剥離剤20の霧化性が不良化されるように設定される。
噴霧ファクターを剥離剤20の霧化性が不良化されるように設定する理由は、後に詳述するが、簡単に説明すれば、次のようになる。
すなわち、剥離剤20の霧化性が不良化される場合には、噴霧によって剥離剤20が分断されることとなる複数の液滴のそれぞれの平均粒径が、霧化性が良好である場合より大きくなる。一方、平均粒径が大きいほど、各液滴が静止空気中を飛行する際に、各液滴の運動量(=mv)が大きくなり、静止空気を貫通する能力が高くなり、その結果、各液滴の飛行速度が、各液滴が小さい場合より高速化する。その結果、各液滴が既存塗膜14の表面上に衝突する際の衝撃エネルギー(衝突エネルギー)が霧化性が良好である場合より大きくなる。
図7(a)には、液状の剥離剤20をエアレス塗布するに際して、エアレススプレーガン50から噴霧される前の剥離剤20の粘度と、噴霧によって剥離剤20が分断された複数の液滴のそれぞれの粒径(例えば、平均直径)と、エアレススプレーガン50による剥離剤20の霧化性との間に成立する一般的な関係がグラフで概念的に表されている。
具体的には、粘度が高いほど、粒径が増し、それにより、霧化性が不良化する。一例においては、粒径が50μm以下である領域においては、霧化性が良好であるのに対し、粒径が50μmより大きい領域においては、霧化性が不良であると定義される。
さらに、同図(b)には、同じ噴霧環境において、エアレススプレーガン50からの剥離剤20の噴射圧と、前記各液滴の粒径との間に成立する一般的な関係がグラフで概念的に表されている。具体的には、噴射圧が低いほど、粒径が増し、それにより、霧化性が不良化する。上記と同様にして、一例においては、粒径が50μm以下である領域においては、霧化性が良好であるのに対し、粒径が50μmより大きい領域においては、霧化性が不良であると定義される。
そして、本実施形態においては、霧化性を不良化するために、剥離剤20の粘度が、0.1Pa・s(20℃)より高い値に設定される。とはいえ、粘度が高いほど望ましいということではなく、上限値が存在する。その上限値は、例えば、16Pa・s(20℃)である。その上限値が必要であるのは、粘度が高すぎると、剥離剤20が全く霧化しない可能性があるからである。
さらに、本実施形態においては、霧化性を不良化するために、前記噴射圧が、80kg/cmを超えない高さに設定される。
さらに、本実施形態においては、霧化性を不良化するために、前記ノズルの等価口径(以下、「ノズル径」ともいう。)が、0.4mm以上の値に設定される。等価口径が小さいほど、剥離剤20は霧化し易いのに対し、ノズル径が大きいほど、剥離剤20は液状に維持されて霧化し難いからである。
さらに、霧化性を不良化する噴霧条件について敷衍する。
スプレーガン50においては、剥離剤20に作用する圧力(例えば、後述の噴射圧)は、通常は、80−200kg/cm程度であるが、本実施形態においては、後述のように、例えば30−40kg/cmというように、通常値より低圧である。
スプレーガン50は、材料としての剥離剤20をスプレーガン50のノズルから吐出する方式として、ダイヤフラム式、プランジャーを用いたプランジャーポンプ式またはピストンを用いたピストンポンプ式のいずれを採用してもよいが、剥離剤20が高粘度である場合には、プランジャーポンプ式またはピストンポンプ式を採用することが望ましい。
また、スプレーガン50は、上述のように、噴射圧が低圧であることから、材料としての剥離剤20をスプレーガン50内の吐出室内に送給する方式として、圧送式(剥離剤20を加圧して押し出す)よりむしろ、重力式(自然落下を利用して剥離剤20を噴射する)または吹上げ式(空気の流れを利用して剥離剤20を吹き上げて噴射する)を採用してもよいが、圧送式を採用してもよい。
いずれの方式を採用しても、スプレーガン50は、本体部90と、その本体部90に対して着脱可能に装着されるノズルチップ92とを有するように構成される。本体部90は、作業者によって握られるグリップ94と、作業者によって操作されるトリガ96とを含むように構成される。
ノズルチップ92は、剥離剤20が噴射されるノズルを有する。そのノズルの断面形状は、例えば、円形としたり、楕円形としたり、スリット形とすることが可能である。本実施形態においては、ノズルの断面形状が楕円形であり、また、ノズルの等価口径は、0.59mm(0.4−0.8mmの範囲内)である。ここに、「等価口径」は、ノズル開口部の開口領域を、それと同じ面積を有する円状領域に置換した場合のその円状領域の外形の直径を意味する。
スプレーガン50からの剥離剤20の吐出量(噴出量ともいい、例えば、ノズルから一定時間当たりに吐出される剥離剤20の重量として定義される)および散布パターンは、ノズルの形状に依存する。
本実施形態においては、スプレーガン50の楕円形ノズルからの剥離剤20の目標散布パターンが、例えば、真横(楕円形ノズルの断面形状のうちの長軸に対して直角な方向)から見ると、噴射方向に進むにつれて幅広となる二等辺三角形状(扇形)であり、その三角形においては、例えば、高さ(スプレー距離)が約25cm、底辺の長さ(パターン幅)が約15−約20cmである。
さらに、本実施形態においては、上記楕円形ノズルを採用する場合、前記噴射圧が60kg/cmのとき、噴出量が1490mL/minであり、また、前記噴射圧が30−40kg/cmのとき、噴出量が750−1000mL/minである。
スプレーガン50の特徴
スプレーガン50は、空気吹付けに依存せずに、剥離剤20自体に圧力を作用させて強制的にノズルから剥離剤20を噴出させて塗布する。
スプレーガン50を用いたエアレススプレー方式によって剥離剤20が液滴化する原理を説明するに、図5に示すように、まず、剥離剤20が、ノズルから高圧で液膜として噴射される。その液膜の先端部が周辺の静止空気と衝突し、それにより、液膜の先端部の速度が次第に低下する。これに対し、剥離剤20を噴出させる圧力は一定であるため、液膜は波状化する。その波状化した液膜は、静止空気内を進行するにつれて、その静止空気から抵抗を受け、波状化した液膜は、それの進行方向に並んだ複数の部分に分裂する。
その後、各分裂した液膜は、進行方向に対して交差する方向に延びるとともに、その延びる方向に凹部と凸部とを繰り返すように、凹凸ひも状化する。
その凹凸ひも状部は、その後、自身の延びる方向に並んだ複数の液滴に分断し、それにより、剥離剤20の液滴化が行われることになる。
ところで、スプレーガン50は、高圧の剥離剤20を直接噴霧するため、エアスプレーガンに比べて剥離剤20の飛散量が少なく、塗着効率(例えば、噴霧した剥離剤20の全重量Weに対する、その噴霧された剥離剤20のうち、既存塗膜14上に塗着した部分(飛散した部分を除く)の量Wの比率として定義される)が高い。
すなわち、スプレーガン50は、空気を使わずに剥離剤20を液滴化して塗布を行うため、剥離剤20が空気中に霧状化して飛散する量が少なく、環境および作業者に対する健康被害が少なく、かつ、剥離剤20の塗布効率(例えば、塗着効率)が高い。
さらに、スプレーガン50への剥離剤20の補給を行いながら剥離剤20の塗布を行うことができるため、剥離作業のストリームライン化に向いている。
スプレーガン50は、エアスプレーガンに比べて高圧で剥離剤20を既存塗膜14上に塗布できるため、剥離剤20の厚い膜を既存塗膜14上に形成できる。
しかし、スプレーガン50は、エアスプレーガンに比べて剥離剤20の噴出量が多いため、既存塗膜14上に塗布された剥離剤20は、追加の対策を講じないと、垂れが発生し易い。
そこで、本実施形態においては、既存塗膜14上への剥離剤20の塗着性(固着性、付着性など)を向上させるために、いくつかの対策が追加された。
(1)噴射ファクターの最適化による剥離剤20の泡状化
エアスプレーガンと対比して説明するに、本発明者の実験により、スプレーガン50からの剥離剤20の噴射圧が高いほど(例えば、エアコンプレッサ60からスプレーガン50に作用する圧力が高いほど)、スプレーガン50からの剥離剤20の噴射速度が高速化するとともに散布パターン(例えば、円錐状)の断面直径(散布直径)が小径化するという事実が判明した。
さらに、上述のように、噴射ファクターの最適化、すなわち、剥離剤20の高粘度化、噴射圧の低圧化およびノズル径の大径化の組合せにより、剥離剤20の各液滴の粒径が大径化し、それにより、各液滴が静止空気中を飛行する際の飛行速度が高速化する。
このように、本実施形態においては、そのような噴射ファクターの最適化により、エアスプレーガンに代えてエアレススプレーガン50を採用したこととも相まって、各液滴が高速化される。
各液滴の高速化により、前述の各液滴が既存塗膜14上に衝突する際の衝撃エネルギーが増加し、各液滴が衝突によって微細化して液滴の総数が増加し、その結果、それら液滴全体としての表面積すなわち静止空気との接触面積が増加する。それにより、それら液滴がより多くの静止空気を巻き込んで泡状化する。その結果、各液滴がより微細化され、それにより、全体として、より多数の泡(エアバブル)が剥離剤20内に形成されることになる。
一方、同じ塗膜厚の剥離剤20において、エアバブルの数が多いほど、各エアバブルが軽量化し、各エアバブルが自重によって既存塗膜14上を流れ難くなる。その結果、既存塗膜14上への剥離剤20の塗着性が向上し、それにより、既存塗膜14上における剥離剤20の塗膜厚が厚くなったと推定される。また、剥離剤20の塗膜厚が厚いほど、既存塗膜14への剥離剤20の塗布量(塗着量ともいい、例えば、一定面積(または一定時間)当たりに塗布される剥離剤20の重量として定義される)が増加する。
本発明者の実験により、前記噴射圧としては、30−60kg/cmの範囲または30−40kg/cmの範囲が望ましいことが判明した。その数値は、スプレーガン50から剥離剤20が散布されるパターンが前述の目標散布パターンとなり、かつ、スプレーガン50から剥離剤20が十分に霧化せずに(微粒子化せずに)既存塗膜14上に到達するように、設定することが望ましい。
(2)剥離剤20の高粘度化による追加の効果
一般に、高粘度の剥離剤を塗布する場合には、低粘度の剥離剤を用いる場合とは異なり、剥離剤の塗膜に厚さを必要とする場合に、その塗膜において剥離剤が流れて垂れてしまうことが防止される。
本発明者の実験により、剥離剤20の粘度が高いほど、既存塗膜14上への剥離剤20の塗着性が向上するという事実が判明した。
さらに、本発明者の実験により、剥離剤20の塗料粘度として、約5−約16Pa・s(20℃)という程度の高粘度であることが望ましいことが判明した。
(3)剥離剤20の高乳化度
本発明者の実験により、剥離剤20の乳化度が高いほど、既存塗膜14との衝突によって剥離剤20に発生する泡の数が増加するとともに泡が微細化し、その結果、既存塗膜14上への剥離剤20の塗着性が向上するという事実が判明した。
この知見に従い、剥離剤20は、エマルジョンすなわち水系剥離剤(例えば、図2における第1リムーバ)が採用された。
とはいえ、本発明者の実験により、剥離剤20が非エマルジョンすなわち溶剤系剥離剤(例えば、図2における第2−第4リムーバ)であっても、剥離剤20の塗膜厚が、従来の塗布方法すなわちエアスプレーガンを用いるか刷毛塗りによる方法の場合より厚くなるという事実が判明した。
<剥離剤20の成分構成>
剥離剤20は、種類の如何を問わず、主成分と、補助剤と、増粘剤とを含有する。
主成分は、既存塗膜14を膨潤させて構造体12の表面から剥がれ易くするために、有機溶剤を含有する。有機溶剤としては、アルコール系高沸点溶剤、エステル系有機溶剤、複素環状有機溶媒などがある。
補助剤は、剥離剤20の性質安定化のために存在し、例えば、芳香族炭化水素系溶剤、テルペン類等がある。
増粘剤は、剥離剤20を所定の塗付け量で既存塗膜14上に塗布でき、垂れ難くするために存在し、例えば、珪酸塩化合物、有機ベントナイトなどがある。
<剥離剤20の組成のバリエーション>
図2に示すように、本実施形態においては、スプレーガン50によって既存塗膜14上に塗布することが可能な剥離剤20として、第1−第4リムーバというように、4種類が存在する。
それらのうち、第1リムーバは、水系剥離剤(エマルジョン)であるのに対し、第2−第4リムーバは、溶剤系剥離剤(非エマルジョン)である。
さらに、第1−第2リムーバは、平均気温が約10℃より高い高温期において、正常な反応性を示し、使用が推奨されるのに対し、第3リムーバは、平均気温が約10℃未満である低温期であっても、正常な反応性を示し、使用が推奨される。
第4リムーバは、ジクロロメタンを含有するため、作業者の健康被害を予防するための安全管理対策が必要であるが、他のリムーバより速乾性があり、かつ、強力な剥離力を発揮する。この第4リムーバは、部分補修用として使用することが推奨される。
1.溶剤系剥離剤
主成分(20−90%)として有機溶剤を含有し、また、補助成分として、補助剤、増粘剤等を含有する。
2.水系剥離剤
主成分(30−50%)として有機溶剤を含有し、また、補助成分として、補助剤、増粘剤等と水(35−50%)とを含有する。
一般に、水系剥離剤のほうが溶剤系剥離剤より危険有害性が低い。
水系剥離剤は、主成分と水とが界面活性剤を用いて乳化されて成るエマルジョンである。
<発泡型エアレス塗布剥離方法>
本実施形態に従う発泡型エアレス塗布剥離方法は、図3に示す準備工程S100と、図4に示す施工工程S200とを、それらの順に実施されるように有する。
<準備工程>
図3に示すように、まず、ステップS101において、作業者が、剥離対象である既存塗膜14を調査する。具体的には、既存塗膜14の材質、塗膜厚、表面性状(例えば、表面粗度μmRmax)などの既存塗膜ファクターや、構造体12の構造、形状などの構造体ファクターを調査する。
次に、ステップS102において、作業者が、既存塗膜14を剥離するための施工時期を選択する。施工時期が選択されれば、その施工時期における環境の平均気温が予測される。その平均気温は、前述の4種類のリムーバのうちいずれのものが最適であるかを決定するために参照される。
続いて、ステップS103において、作業者が、剥離条件を選択する。具体的には、既存塗膜14についての前述の既存塗膜ファクターおよび/または構造体ファクターに基づき、図2における第1−第4リムーバのうちのいずれかを今回使用する剥離剤20として選択する。このとき、今回使用する剥離剤20は、前述のように、エアレス塗布において剥離剤20の霧化性が不良化するのに適した粘度を有するように選択される。
さらに、調査した塗膜厚を含むファクターに応じ、今回の剥離剤20を用いた剥離作業を何回反復するかを決定する。さらに、前述の既存塗膜ファクターおよび/または構造体ファクターに基づき、各回の剥離作業における剥離剤20の目標塗膜厚を決定する。
具体的には、既存塗膜ファクターのうち、既存塗膜14の表面粗度(例えば、単位:μmRmax)に応じて、剥離剤20が既存塗膜14の表面上に被着されることによって形成されることとなる塗膜の目標塗膜厚(平均塗膜厚など)を決定する。
さらに具体的には、所定の関係に従い、既存塗膜14の表面粗度に応じて剥離剤20の目標塗膜厚を、表面粗度が小さいほど目標塗膜が厚膜化するように決定する。
図8には、既存塗膜14の表面粗度と剥離剤20の目標塗膜厚との関係の一例がグラフで概念的に表されている。表面粗度が低いほど、すなわち、表面平滑度が高いほど、剥離剤20が既存塗膜14の表面に塗布されたときに剥離剤20が既存塗膜14の微視的表面に接触する合計面積(表面凹凸を考慮した微視的な表面の全体面積であり、以下、「微視的合計接触面積」という。)が狭い。
既存塗膜14の表面の投影面積(すなわち、表面凹凸を無視した巨視的な表面の全体面積)の割に前記微視的合計接触面積が広いほど、剥離剤20が一度に既存塗膜14を剥離する速度が高いのに対し、前記微視的合計接触面積が狭いほど、剥離剤20が一度に既存塗膜14を剥離する速度が低いため、剥離剤20は、より多くの時間をかけて、既存塗膜14に接触し続けることが望ましい。
よって、剥離剤20の剥離速度を極大化するために、既存塗膜14の表面粗度が低いほど、剥離剤20の塗膜を厚膜化し、それにより、既存塗膜14の表面の各部位に、膜厚方向に積層された剥離剤20が、前記表面に近い部分から次々に接触し続けるようにすることが望ましい。
なお付言するに、既存塗膜14の表面粗度と剥離剤20の目標塗膜厚との関係は、上記のものとは逆のものを採用することが望ましい事例も想定され得る。
具体的には、既存塗膜14の表面粗度が高いほど、前記巨視的全体面積の割に前記微視的合計接触面積が広いため、それに見合うように、剥離剤20の塗膜を厚膜化して合計塗布量を増量し、それにより、既存塗膜14の微視的表面の各部位に接触する剥離剤20の量をすべての部位の間で均一化することが有効である事例も想定され得る。
さらに、上記のようにして決定された目標塗膜厚から目標塗布量を決定する。さらに、その決定された目標塗布量に応じ、スプレーガン50からの剥離剤20の目標吐出量を決定し、場合によっては、今回使用するノズルチップ92を選択する。ただし、このとき、今回使用するノズルチップ92は、前述のように、エアレス塗布において剥離剤20の霧化性が不良化するのに適した等価口径を有するように選択される。
さらに、今回の剥離剤20の粘度とその剥離剤20の前記ノズルからの目標吐出量とに応じ、スプレーガン50が今回の剥離剤20を加圧して前記ノズルから噴射する際の噴射圧を決定する。ただし、このとき、噴射圧は、前述のように、エアレス塗布において剥離剤20の霧化性が不良化するのに適した高さを有するように選択される。
<施工工程>
図4に示すように、まず、ステップS201において、作業者が、既存塗膜14に対し、前述の発泡型エアレス塗布方法を実施する。
その発泡型エアレス塗布方法は、作業者が、今回の剥離剤20を調製するかまたは調達し、それをタンク30内に投入する準備工程と、作業者が圧送ポンプ40を起動させ、それにより、今回の剥離剤20をタンク30からスプレーガン50にエアレス状態で圧送する圧送工程とを有する。
上記発泡型エアレス塗布方法は、さらに、作業者が、スプレーガン50を把持して標的すなわち既存塗膜14に向け、その状態でトリガ96を引き、それにより、スプレーガン50から剥離剤20を複数の液滴に分断して標的に向けて噴射する噴射工程を有する。
その噴射工程は、圧縮エアの流れに剥離剤20を接触させてその剥離剤20を霧吹きの原理で霧化する工程を含まず、さらに、剥離剤20をノズル92から噴射する前に剥離剤20を発泡させる工程を含まない。
前記発泡型エアレス塗布方法は、さらに、作業者が、前記噴射された剥離剤20を既存塗膜14の表面上に塗布する塗布工程を有する。
その塗布工程においては、その塗布に際し、剥離剤20の前記複数の液滴が既存塗膜14の表面に衝突し、それにより、前記複数の液滴がそれぞれ大気中のエアを巻き込んで発泡化し、それにより、剥離剤20が発泡状態で既存塗膜14の表面上に塗布される。
一例においては、前記塗布工程が、前記発泡状態にある剥離剤20が平均直径が約0.1mmから約0.5mmまでの範囲内にある複数の泡を有するように、剥離剤20を既存塗膜14の表面上に塗布するように実施される。
別の例においては、前記塗布工程が、剥離剤20が既存塗膜14の表面上に被着されることによって形成される塗膜の平均塗膜厚が約1mmであるように、剥離剤20を既存塗膜14の表面上に塗布するように実施される。
さらに別の例においては、前記塗布工程が、剥離剤20が既存塗膜14の表面上に被着されることによって形成される塗膜の平均塗膜厚が約2mmから約5mmまでの範囲内にあるように、剥離剤20を既存塗膜14の表面上に塗布するように実施される。
いずれの例においても、既存塗膜14が剥離剤20によって膨潤軟化し、構造体12の表面への付着力が低下し、その結果、既存塗膜14は構造体12の表面から浮き上がる。
次に、ステップS202において、剥離剤20の塗布完了後に、作業者が、剥離剤20に対して不透過性を有する保護シートで既存塗膜14の表面をラッピングし、それにより、剥離剤20(揮発性を有する場合)から発生した気化ガスが既存塗膜14の表面から大気に放出されることを防止する。前記保護シートは、例えば、柔軟性を有するポリエチレン製シート、ポリプロピレン製シートなどである。
本発明者の実験により、前記ラッピングの効果として、既存塗膜14上に塗布された剥離剤20からの蒸気(気化ガス)の放出が防止され、それにより、約90%の蒸気が既存塗膜14内に浸透して剥離作業の効率化が推進されたことが確認された。
続いて、ステップS203において、その塗布完了から所要時間(例えば、16−48時間)の経過後、作業者が、前記保護シートを既存塗膜14から剥離して除去する。その後、作業者が、剥離剤20によって付着力が低下して構造体12の表面から浮き上がった既存塗膜14を構造体12の表面(素地)から物理的に剥離して除去する。
既存塗膜14を構造体12の表面(素地)から物理的に剥離するために、作業者は、手工具としてのスクレーパを用いてもよい。
さらに、その最初の剥離作業後に構造体12の表面上に残存する既存塗膜14の一部である塗膜残渣物を除去するために、電動回転工具としてのワイヤーブラシ(例えば、カップ状ワイヤーブラシ)やエア・グラインダを用いてもよい。
ここに、「エア・グラインダ」は、エア回転工具または空圧回転工具の一例である。エア回転工具を用いて塗膜残渣物を構造体12の表面から物理的に除去するための塗膜除去システムおよびそれを用いた塗膜除去方法については、後に図9−図12を参照して詳述する。
この除去作業が作業者にとっての大きな負担となるため、前記電動回転工具は可及的に軽量であること、剥離した塗膜残渣物が飛散しないことなどが重要である。よって、電動回転工具は、小型で、かつ、回転部が通常より低速で回転するものであることが望ましい。
さらに、必要に応じ、作業者は、高圧洗浄機を追加的にまたは代替的に用いて既存塗膜14および/または塗膜残渣物を除去してもよい。
なお、本実施形態によれば、剥離剤20の目標塗膜厚を実現するために、刷毛やローラーであると、複数回の塗布作業が必要であったところ、目標塗膜厚を一回の塗布作業で実現可能となり、作業効率が向上する。
さらに、本実施形態においては、剥離剤20を設置場所(図1において、エアレス塗布機10のうちスプレーガン50を除く本体部が固定設置されている場所)からインラインで(前記本体部と、作業場所であるスプレーガン50とが、連続した圧送ライン78で互いに接続される状態で)作業場所に送給することが可能となる。
具体的には、エアレス塗布機10のうちの本体部(特に、圧送ポンプ40)とスプレーガン50とが、圧力伝達経路と材料供給経路との双方を兼ねるホース(ライン)78で互いに接続される。その結果、エア塗装(吹き付け塗装)の場合とは異なり、本体部(特に、圧送ポンプ40)とスプレーガン50とを、互いに独立した圧力伝達経路と材料供給経路との双方によって互いに接続することが不要となる。
それにより、剥離剤20を確実にスプレーガン50に送給することが可能となり、具体的には、剥離剤20が本体部からスプレーガン50に送給される途中で、剥離剤20が予定外に漏れて作業床等にこぼれてその箇所が剥離剤20で汚染されてしまうことがなくなる。
<塗着性試験>
塗着性試験に使用した剥離剤20の種類
塗着性試験に使用した剥離剤20の種類は、図2に示す第1リムーバ(高粘度エマルジョン)である。その第1リムーバの一具体例は、次のような成分構成を有する。
水分: 40−50重量%
アルコール系溶剤:40−50重量%
石油系溶剤: 1− 5重量%
界面活性剤: 1− 5重量%
増粘剤: 1− 5重量%
防錆類: 1重量%未満
ワックス類: 1重量%未満
また、その具体例は、次のような性状を有する。
外観:白色または淡黄色を呈する粘稠液体
粘度:5−16Pa・s(20℃)
実施例
試験片としての500×500mmの塗装用鋼板に剥離剤20を260g、スプレーガン50を用いてエアレス塗布し、それにより、試験片において1.0kg/mの塗布量(塗布密度、散布密度)を実現した。
その塗布後、試験片を垂直に吊るし、剥離剤20の垂れ具合を観察するために、5分経過後に試験片を撮影した。その写真を図6の上部に貼り付けた。
比較例
試験片としての500×500mmの塗装用鋼板に剥離剤20を260g、刷毛(図示しない)を用いて塗布し、それにより、試験片において、1.0kg/mの塗布量(塗布密度、散布密度)を実現した。
その塗布後、試験片を垂直に吊るし、剥離剤20の垂れ具合を観察するために、5分経過後に試験片を撮影した。その写真を図6の下部に貼り付けた。
対比観察
実施例においては、剥離剤20の垂れ(例えば、剥離剤20が流れた痕跡、剥離剤20の落下など、重力に起因する予定外の剥離剤20の挙動)は全く観察できなかった。また、試験片に塗布された剥離剤20の表面は平滑であった。
図6の上部の写真から明らかなように、実施例においては、試験片に塗布された剥離剤20が全く試験片から流れ落ちなかったことが確認された。
さらに、試験片から垂れずに試験片に被着して固定された剥離剤20の平均塗膜厚(例えば、重ね塗りせずに一回のみ塗布した場合の塗膜厚)が約2mmから約5mmまでの範囲内にあったことも確認された。
さらに、試験片上において発泡状態にある剥離剤20が平均直径が約0.1mmから約0.5mmまでの範囲内にある複数の泡を有することも確認された。
これに対し、比較例においては、試験片全域に剥離剤20の垂れ(または流れ、フローライン)が観察された。また、試験片に塗布された剥離剤20の表面には、材料流れが生じて筋状の凹凸模様が存在していた。
図6の下部の写真から明らかなように、比較例においては、試験片に塗布された剥離剤20の一部が試験片から流れ落ちたことが確認された。
なお付言するに、本発明者は、本実施形態の効果を確認するために、建築物としての鉄塔であって、形状が複雑であるために剥離剤が拡布し難い表面を有するものについて、本実施形態に従う発泡型(発泡促進型)エアレス塗布剥離方法を用いて実際に剥離作業を行った。その結果、剥離作業の確実化、すなわち、例えば、隅々まで既存塗膜が剥離されることと、効率化、すなわち、剥離作業の時間が短縮されることとが確認できた。
さらに付言するに、本実施形態に関する前述の説明においては、剥離剤20が泡状化する現象が、スプレーガン50から噴射された剥離剤20が静止空気中を飛行する行程においては、静止空気との衝突によって剥離剤20から分裂した複数の液滴がエアバブル化せず、既存塗膜14と衝突したときにはじめて複数の液滴がエアバブル化して剥離剤20が既存塗膜14上で泡状化する態様として説明された。
しかし、剥離剤20の複数の液滴が静止空気中を飛行する行程において、それら液滴のうちの少なくとも一部が静止空気との衝突によってエアバブル化する態様で本発明が実施される可能性を排除しない。
ここで、図9−図12を参照することにより、エア回転工具100を用いて塗膜残渣物を構造体12の表面(素地)から物理的に除去するための塗膜除去システム110およびそれを用いた塗膜除去方法を説明する。
図9は、本実施形態に従う塗膜剥離方法の一実施例として、エア回転工具100によって既存塗膜14を構造体12の表面(素地)から物理的に除去するための塗膜除去システム110を概念的に表す系統図である。
この塗膜除去システム110においては、エア回転工具100のエアインレット(空気取入れ口)にホース112の下流端部が気密に接続され、そのホース112の上流端部がポンプ114(前記高圧源の一例)のエア吐出口に気密に接続されている。そのポンプ114は、電動モータ116によって駆動され、その電動モータ116は、電源118から供給される電気によって駆動されて回転する。
したがって、この塗膜除去システム110においては、エア回転工具100から電動モータ116の出力シャフト120までの系統が非電気系統であり、その電動モータ116の本体部122から電源118までの系統が電気系統である。作業現場のうち、非電気系統が使用される領域においては、電気火災のリスクが解消される。
図10は、塗膜除去システム110からエア回転工具100とホース112のうちの下流端部とを取り出して拡大して示す斜視図である。
エア回転工具100は、概して一軸線(以下、「ハウジング軸線」という。)に沿って延びるモータハウジング200と、それの先端に装着されたヘッドハウジング202とを有する。そのヘッドハウジング202は、図9に例示するように直線型であっても、図10に例示するようにアングル型であってもよい。本実施形態においては、モータハウジング200とヘッドハウジング202とが共同して前記「ハウジング」の一例を構成する。
モータハウジング200内に、エアモータ204(図9参照)と、外部(ホース112)からエアモータ204に向かう圧縮エアの流れを制御する第1バルブとしてのレギュレータ206(図9参照)と、エアモータ204の出力速度を減速する減速機(減速ギヤなど)208(図9参照)とが収容されている。
エアモータ204は、図示しないが、よく知られているように、複数個のベーンが組み込まれたロータと、そのロータを収容するロータハウジングとを含むように構成される。また、レギュレータ206は、ホース112からエアモータ204に向かう圧縮エアのオンオフ制御または全閉化と流量調整との双方を行うように設計される。
ここに、「オンオフ制御」は、当該バルブ(レギュレータ206および/またはエアバルブ220)を全開位置または最開位置(最大開口位置)と全閉位置(閉塞位置)とに切り換えることを意味する。このオンオフ制御において、当該バルブを全開位置または最開位置(最大開口位置)に切り換えることは、エアモータ204を起動させることを意味し、また、全閉位置(閉塞位置)に切り換えることは、エアモータ204を停止させることを意味する。
また、「全閉化」は、当該バルブを全閉位置に切り換えることを意味する。
また、「流量調整」は、当該バルブの弁開度を最開状態(最大開口状態)と全閉状態(閉塞状態)との中間の状態(中間開口状態)に制御することを意味する。
さらに、「オンオフ制御」は、「全閉化」を包含する。また、「全開位置」は、レギュレータ206が接続されているエア通路の流路面積をすべて有効化する位置であり、これは、「最開位置」の一例である。ここに、「最開位置」は、レギュレータ206がとり得る複数または無数の弁位置のうち、最大の弁開度(最大開口度)を有する弁位置を意味する。それらの定義は、後述のエアバルブ220についても適用される。
エア回転工具100には、ヘッドハウジング202から少なくとも部分的に露出するように、既存塗膜14を構造体12から物理的に除去するための除去具209が装着される。その除去具20は、エアモータ204によって駆動されて回転する。
この除去具20は、例えば、ロータリーブラシ(例えば、ワイヤーブラシ、カップ状ブラシ、軸付きブラシ)やグラインダ用砥石などである。そのグラインダ用砥石には、平面研削用のものや、ボルト廻り部等の細部の研削(外面研削、内面研削)用のものがある。
モータハウジング200の外面に、レギュレータ206を制御するために作業者によって操作される主操作レバー210が装着されている。その主操作レバー210は、概して前記ハウジング軸線に沿って延びるとともにそのハウジング軸線と立体交差する揺動軸212の回りに揺動可能である。
主操作レバー210は、プッシュピン214を介してレギュレータ206と機械的に連携している。作業者は、主操作レバー210を片方の手で握ってモータハウジング200の外面に接近させるかまたは押し付けることにより、レギュレータ206をオフ状態(弁開度が0%である全閉状態)からオン状態(弁開度が0%より大きい状態であり、全開状態および全開状態を除く開状態を含む)に切り換え、それにより、停止状態にあるエア回転工具100を起動させる。
さらに、主操作レバー210は、作業者の意に反してモータハウジング200に押し付けられてエア回転工具100が作動してしまうことを防止するための安全装置として、リターンスプリング付きレバー216を備えている。
エア回転工具100に、外部からエア回転工具100のエアインレットに向かう圧縮エアの流れを制御する第2バルブとしてのエアバルブ220が外付けされている。このエアバルブ220は、エア回転工具100に最初から装着されている先付けのもの(標準部品)であっても、後付けのもの(付属品)であってもよい。エアバルブ220は、ホース112からエア回転工具100に向かう圧縮エアのオンオフ制御と流量調整との双方を行うように設計されている。
なお、エアバルブ220は、レギュレータ206と同様にエア回転工具100に内蔵されてもよい。この場合には、同じエア回転工具100のハウジングの外面に、主操作レバー210と後述の補助操作具との双方が装着されることになる。
図9および図10に示すように、エアバルブ220の外面に、そのエアバルブ220を制御するために作業者によって操作される補助操作具としての補助操作レバー230が装着されている。ここに、「補助操作具」は、レバー状以外にも、例えば、回転体状を成してもよく、その形状に制約はない。
補助操作レバー230は、ハウジング軸線またはホース112の中心線と交差する回転軸線から半径方向外向きに延びている。この補助操作レバー230は、細長い板状を成し、前記回転軸線が通過する基端部と、その基端部から半径外向きに離れた自由端部とを有する。
さらに、補助操作レバー230は、主操作レバー210が含まれる平面と同一平面上に配置される。ただし、補助操作レバー230は、主操作レバー210が含まれる平面とは異なる平面上に配置してもよい。
さらに、補助操作レバー230は、ハウジング軸線に関し、主操作レバー210とは反対側に配置される。ただし、補助操作レバー230は、ハウジング軸線に関し、主操作レバー210と同じ側に配置してもよい。
本実施形態においては、エア回転工具100が上述のように構成され、その結果、主操作レバー210に加え、その主操作レバー210より微調整のための操作が容易な補助操作レバー230が装着される。それにより、本実施形態によれば、作業者が、片方の手で主操作レバー210をモータハウジング200の外面に押し付けるようにそれら主操作レバー210とモータハウジング200とを一緒に握った状態で、他方の手で補助操作レバー230を操作することが可能である。
ところで、作業者が、エア回転工具100の回転状態量の微調整を主操作レバー210で行おうとすると、その主操作レバー210の操作量(押付け量)を、モータハウジング200を握っている手と同じ手およびその手の指の部分(その手の掌が、モータハウジング200の外面のうち、主操作レバー210が位置する側とは反対側の部分に接触している)で調整せざるを得ないため、正確な操作が困難である。
これに対し、作業者が、エア回転工具100の回転状態量の微調整を補助操作レバー230で行おうとすると、その補助操作レバー230の操作角θを、モータハウジング200を握っている手とは別の手およびその手の指の部分で調整することができるため、正確な操作が容易となる。
本実施形態においては、図10に示すように、作業者が除去作業のためにエア回転工具100を握っている状態で、主操作レバー210が、エア回転工具100の下面(作業者から遠い側の面)に配置される一方、補助操作レバー230が、エア回転工具100の上面(作業者に近い側の面)、すなわち、作業者が補助操作レバー230を、エア回転工具100自体によって遮蔽されることなく、直接視認できる面に配置される。
このような視認性向上レイアウトを採用すれば、作業者による補助操作レバー230の操作性が向上するから、本実施形態によれば、このレイアウトによっても、エア回転工具100の回転状態量の微調整が容易となる。
図11(a)は、エアバルブ220と補助操作レバー230との組立体を拡大して示す側面断面図であり、同図(b)は、同図(a)に示す組立体を示す平面図である。
エアバルブ220は、中空のバルブハウジング231を有し、そのバルブハウジング231は、インレット232と、アウトレット234とを有する。インレット232は、ホース112に接続される一方、アウトレット234は、エア回転工具100のエアインレットに接続される。
バルブハウジング231は、さらに、インレット232とアウトレット234とを流体的に連通させる直線状の(または曲線状の)貫通穴240と、その貫通穴240の途中にそれより大径に形成されたボール状の空洞242とを有する。その空洞242を形成する概してボール状を成す凹状表面が、ボール状の弁座244として機能する。
エアバルブ220は、さらに、弁子としてのボール246を有し、そのボール246は、弁座244内に実質的に気密かつ摺動によって回転可能に嵌合されている。ボール246には、それの中心点を通過するように貫通穴248が貫通している。そのボール246の中心点からシャフト250が半径方向外向きに延び出している。そのシャフト250は、バルブハウジング231の半径方向貫通穴252に自転可能に嵌合されている。
そのシャフト250の露出端部に補助操作レバー230の基端部が固定されている。その補助操作レバー230は、シャフト250の回転軸線回りに、エアバルブ220のための全開位置(ボール246内の貫通穴248が貫通穴240に一致してその貫通穴240を連通状態にする位置)と全閉位置(ボール246の外面のうち開口していない部分が貫通穴240に一致してその貫通穴240を遮蔽する位置)との間を回転させられるとともに任意の中間位置に固定可能である。
ここに、「全開位置」は、ボール246内の貫通穴248が貫通穴240に一致してその貫通穴240を完全な連通状態にする位置(弁開度が100%)である。これに対し、「全閉位置」は、ボール246の外面のうち開口していない部分が貫通穴240に一致してその貫通穴240を完全に遮蔽する位置(弁開度が0%)である。また、「中間位置」は、ボール246内の貫通穴248が貫通穴240に部分的に一致してその貫通穴240を不完全な連通状態にする位置(弁開度が0%より大きく、100%より小さい)である。
補助操作レバー230は、前記全開位置にあるときに、主操作レバー210に対して概して直線的にまたは平行に延びる姿勢を取る。さらに、補助操作レバー230は、前記全閉位置にあるときに、前記全開位置にあるときの補助操作レバー230の位置からの隔たり角である操作角θが90度を取る。
エアバルブ220は、補助操作レバー230を回転可能に支持する支持機構を有し、その支持機構は、補助操作レバー230を任意の中間位置に固定することが可能な停止機構(例えば、摩擦力を利用するタイプ、例えば転動子と凹部と転動子を凹部内に押し込もうとする弾性体とを用いるディテント機構など)を有する。
よって、作業者が片方の手で補助操作レバー230を回転させて任意の位置(全開位置、全閉位置または中間位置)に停止させた後、その手を補助操作レバー230から離しても、その直前の位置に補助操作レバー230は停留する。
これに対し、主操作レバー210については、作業者が片方の手で主操作レバー210を回転させて任意の位置(全開位置、全閉位置または中間位置)に停止させた後、その手を主操作レバー210から離すと、その直前の位置に主操作レバー210が停留することなく、全閉位置に弾性的に復元する。
ところで、作業中、作業者が誤ってエア回転工具100を落下させてしまうと、作業者の両手がエア回転工具100から離れるため、主操作レバー210は全閉位置に復元し、新たな圧縮エアがエアモータ204に供給されることが停止しようとする。このとき、エアモータ204のうち、供給される圧縮エアによって回転する前記ロータは、回転を継続しようとする慣性を有する。
ここに、エア回転工具100が、落下後も、例えば作業者の足を支持する支持面上において除去具209が回転し続ける時間が長いと、除去具209との係合を予定していない周辺物体の一部や作業者の身体の一部に除去具209が意に反して接触してしまい、予定外の損傷、負傷などが周辺物体や作業者に発生するおそれがある。
しかし、エア回転工具100のエアモータ204のロータの慣性は、電動回転工具の電動モータのロータの慣性より小さい。よって、エア回転工具100は、万一落下しても、電動回転工具より短時間で停止する。よって、エア回転工具100の方が、万一落下した場合でも、安全性が高い。
図12は、圧力損失(エアバルブ220の前後の差圧)△Pが一定である場合にエアバルブ220が示す固有流量特性のいくつかの例を説明するためのグラフである。
エアバルブ220がイコールパーセント特性を示す場合には、流量Cv(容量係数)値が、弁が開き始めるタイミングで緩やかに(鈍感に)変化する。このイコールパーセント特性においては、弁開度の変化分と流量Cv値の変化比率とが等しいため、流量調整に最も適している特性である。
また、エアバルブ220がリニア特性を示す場合には、流量Cv値が弁開度に対して比例的に変化する。このリニア特性は、配管抵抗が小さい場合の流量調整に適している。また、エアバルブ220がクイックオープン特性を示す場合には、流量Cv値が、弁が開き始めるタイミングで急激に(敏感に)変化する。このクイックオープン特性は、遮断弁や一斉開放弁などオンオフ制御という目的に適している。
本実施形態においては、エアバルブ220が、オンオフ制御用および流量調整用(特に、微調整可能な流量調整用)として使用され、さらに、エアバルブ220を通過する流量ひいてはエア回転工具100のトルクおよび回転数の作業者による微調整が要望されるため、イコールパーセント特性を示すように設計されることが最も望ましく、それに次いで、リニア特性を示すように設計されることが望ましい。
なお付言するに、本実施形態においては、エアバルブ220が、全開時の流体抵抗が小さいボール型(例えば、ボールコック、ボールバルブ)であったが、他の型式を採用することが可能であり、例えば、全般的に流体抵抗が小さいバタフライ型や、グローブ型、ゲート型などを採用してもよい。
<エア回転工具使用方法>
本実施形態においては、回転工具により、構造体12の表面が損傷しないとともに塗膜片が飛散しないように工具回転速度を頻繁に微調整しながら慎重に構造体12から既存塗膜14を物理的に除去するという用途において、構造体12から既存塗膜14を除去するためにエア回転工具100を使用する方法が提供される。
その使用方法の一例が図13にフローチャートで表されている。
ステップS1:作動工程
この使用方法は、作業者が、片方の手で主操作レバー210をモータハウジング200の外面に押し付けられるように握ることにより、レギュレータ206をオフ状態(弁開度:0%)からオン状態(弁開度:100%)とし、それにより、エア回転工具100を作動させる作動工程を有する。
この作動工程の実行中、補助操作レバー230は、全閉位置ではない操作位置に維持され、その位置は、例えば、全開位置か、または、前回の作業における最終的な操作位置である。また、主操作レバー210は、オン状態(弁開度:100%)に維持される。
ステップS2:微調整工程
上記の使用方法は、さらに、エア回転工具100の作動中に、作業者が、反対側の手で補助操作レバー230を操作することにより、エアバルブ220の弁開度を全開状態と全閉状態との中間の状態に制御し、それにより、エア回転工具100の回転状態量を微調整する微調整工程を有する。この微調整工程の実行中、主操作レバー210は、オン状態(弁開度:100%)に維持される。
一例においては、その微調整工程が、構造体12上における既存塗膜14のうち、エア回転工具100によって加工されるべき部分である加工部位の塗膜厚に応じ、その塗膜厚が薄いほどエア回転工具10の回転速度およびトルクが低下するように、作業者が補助操作レバー230を操作する塗膜厚フィードバック式回転状態量微調整工程を含む。
一般に、回転工具による素地調整作業においては、その回転工具の回転数が低速であると、構造体12から剥離した既存塗膜の破片である塗膜剥離片のサイズが大きくなる。塗膜剥離片のサイズが大きいほど、その自重が重くなり、回転工具の使用場所の周囲に飛散する塗膜剥離片の数が減る。これに対し、例えば、回転数が12,000回/分というように高速であると、塗膜剥離片のサイズが小さくなり、その自重が軽くなり、回転工具の使用場所の周囲に飛散する塗膜剥離片の数が増えてしまう。
上記の塗膜厚フィードバック式回転状態量微調整工程において、一例においては、エア回転工具100を用いた今回の塗膜除去作業に先立ち、作業者が、構造体12における複数の加工部位のそれぞれにつき、後述の剥離関連情報としての実際の塗膜厚を膜厚計(例えば、非破壊式の膜厚計、非接触・非破壊式の膜厚計)を用いて測定する。作業者は、エア回転工具100を用いた塗膜除去作業が開始されると、その測定結果がエア回転工具100の回転速度にフィードバックされるように補助操作レバー230を任意の位置に操作する。これは、事前測定値フィードバック方式である。
ここにおいて、一例においては、作業者が、塗膜厚が薄いほど、低速になるように回転速度を調整する。
これに代わるかまたはこれに加えて、エア回転工具100を用いた塗膜除去作業が開始されると、作業者が、各加工部位についての作業ごとに、実際の既存塗膜14に関する剥離関連情報、すなわち、例えば、剥離した塗膜片の厚さやサイズ、塗膜片の飛散量(飛散した距離、飛散量の分布など)、既存塗膜の構造体12の表面へのこびり付き度合い(既存塗膜の剥離し難さなど)などの情報を取得する。作業者は、次回の加工部位に対する作業において、前回の加工部位について取得した剥離関連情報がエア回転工具100の回転速度にフィードバックされるように補助操作レバー230を任意の位置に操作する。これは、リアルタイム測定値フィードバック方式である。
ここにおいて、一例においては、作業者が、塗膜片が薄いほど低速になるように回転速度を調整し、また、塗膜片のサイズが小さいほど低速になるように回転速度を調整し、また、塗膜片の飛散量が多いほど低速になるように回転速度を調整し、また、既存塗膜のこびり付き度合いが弱いほど低速になるように回転速度を調整する。
ステップS3:停止工程
上記の使用方法は、さらに、エア回転工具100の作動中に、作業者が、反対側の手で補助操作レバー230を全閉位置に操作することにより、エアバルブ220を全閉位置とし、それにより、エア回転工具100を停止(例えば、緊急停止)させる停止工程を有する。この停止工程の実行中、主操作レバー210は、オン状態(弁開度:100%)に維持される。
この使用方法によれば、作業者が、主操作レバー210を握っている手とは反対側の手で、主操作レバー210から独立した第2の操作具としての補助操作レバー230を、握るという動作ではなく、捻るか回すという動作により、作業中にエア回転工具100の回転状態量を微調整するための操作が容易になるとともに、作業中にエア回転工具100を緊急停止させるための操作が容易になるという効果が得られる。
以上の説明から明らかなように、エア回転工具100は、主操作レバー210によって制御される第1バルブとしてのレギュレータ206に対して、同じ圧縮エア経路上、直列に配置される第2バルブとしてのエアバルブ220であって補助操作レバー230によって制御されるものが、その圧縮エアの流量調整のみならずオンオフ制御をも行うように、エア回転工具100が全体として、圧縮エアのオンオフ制御の実現性に関して2つの直列バルブ206,220が重畳的に設計される点、すなわち、第1バルブ206のみならず第2バルブ220も作業者の操作によって全閉可能であるように設計されている点を特徴とする。
さらに、本実施形態によれば、作業者が、既存塗膜14を構造体12から物理的に除去するために、電気を使用する電動回転工具ではなく電気を使用しないエア回転工具100を用いて作業を行うことが可能となるため、電動回転工具を使用する場合とは異なり、電気火災のリスクが発生せずに済むという効果が得られる。
具体的には、本実施形態によれば、例えば、作業現場に存在する水分の進入による電動回転工具の漏電・停止、作動中の電動回転工具の火花を原因とする揮発性剥離剤の発火などの電気火災が発生することが回避される。
ところで、エア回転工具100は、その用途が塗膜除去に特化されており、それに起因して、エア回転工具100には特有の事情(使用環境など)が存在する。
具体的には、塗膜除去作業の実際において、作業者は、その作業中、作業目標部位を順次移動させつつ塗膜除去作業を行う。その作業目標部位ごとに、構造体12の地肌の性状が異なるし、同じ作業目標部位であっても、作業の進行につれて構造体12の地肌の性状が変化する。
そのため、作業者は、エア回転工具100から除去具209ひいては構造体12上の既存塗膜14に加えられるトルクおよび回転数を、作業中、頻繁に微調整することが要請される。
このような特有の事情を背景として、本実施形態によれば、補助操作レバー230が追加されたおかげで、エア回転工具100の回転状態の微調整が主操作レバー210を操作せざるを得ない場合より容易となる。
その結果、除去作業中に構造体12の地肌が除去具209によって受けるダメージを最小限に抑えたいという目的のために、除去具209の回転状態を微調整することが可能となる。
さらに、構造体12から除去された既存塗膜14の塗膜片が空気中に飛散する程度を最小限に抑えたいという目的のために、除去具209の回転状態を微調整することが可能となる。
具体的には、塗膜除去作業の実際において、既存塗膜14の厚さは、場所によって異なる場合があり、一方、既存塗膜14が薄い場所であるにもかかわらず、その場所における既存塗膜14にエア回転工具100から作用するトルクが大きいと、その既存塗膜14が機械的に除去される際に発生する、その既存塗膜14が分断される複数の破片のそれぞれのサイズが小さくなる。各破片のサイズが小さいほど、軽量化するため、すぐに落下せずに周辺空気中を飛散ないしは浮遊し易くなる。これは、環境保全という社会的要請に反する。
そのため、作業者は、エア回転工具100から除去具209に加えられるトルクおよび回転数を、作業中、頻繁に微調整することが要請される。
一方、エア回転工具100を用いた塗膜除去作業中、作業者は、同じ側の手により、エア回転工具100を、その狙いを構造体12上における作業目標部位に定めて保持するという作業と、主操作レバー210の角度を微調整して圧縮エアの流量を微調整するという作業とを一緒に行わせることは理論的には可能である。
しかし、実際には、それなりの重量を有するエア回転工具100を片方の手で正確に方向付けしながら把持するという作業すら、作業者にとって負担が大きいにもかかわらず、同じ手で、主操作レバー210の握り具合を変えてその主操作レバー210の角度を微調整することは、不可能である。
これに対し、本実施形態によれば、エア回転工具100の使用中、作業者は、片方の手で主操作レバー210を握りつつ、反対側の手のうちの複数本の指で(例えば、親指と人差し指で補助操作レバー230のうちの前記自由端部を両側から摘まむことにより)補助操作レバー230を回転操作(ピボット操作)して微調整を行うことにより、圧縮エアの微調整が可能となるため、作業負担が作業者の両手にそれぞれ分散される。
すなわち、本実施形態に内在する技術的思想として、エア回転工具100を作動させるための動作と、作動中におけるエア回転工具100内を流れる圧縮エアを微調整するための動作とを、作業者の同じ側の手によって行わせるのではなく、両側の手によってそれぞれ行わせ、それにより、作業負担を両側の手にそれぞれ分散するというものがあるのである。
一方、エア回転工具100の使用中、作業者が補助操作レバー230を用いて微調整する頻度は高い。したがって、エア回転工具100の使用中、補助操作レバー230を用いた微調整中に緊急事態が発生する頻度も高い。
よって、エア回転工具100の使用中、補助操作レバー230を用いた微調整中に、あえて主操作レバー210を解除操作するのではなく、操作中の補助操作レバー230の操作状態を微調整モードから解除操作モードに変えるだけで迅速にエア回転工具100を緊急停止させたいという要望が強い。
このような特有の事情を背景として、本実施形態によれば、作業者がモータハウジング200を主操作レバー210と一緒に握っているためにレギュレータ206がオン状態にあるときに、微調整のために反対側の手で補助操作レバー230を操作している最中に、急にエア回転工具100を停止させることが必要になると、同じ補助操作レバー230に対し、それを全閉位置にするという追加の操作を加えればよい。そのため、作業者は、緊急時に、混乱することなく、エア回転工具100を緊急停止させることが容易となる。
このことをさらに敷衍するに、本実施形態においては、作業者が、片方の手で主操作レバー210をエア回転工具100のモータハウジング200の外面に押し付けられるように底付き状態で(ボトミング状態で)握りつつ、反対側の手で補助操作レバー230を微調整している両手塞がり状態において、突然、エア回転工具100を速やかに停止させることが必要となる緊急事態が発生すると、作業者としては、完全に握られて静止状態にある主操作レバー210ではなく、動的状態にある可能性がある補助操作レバー230を操作する方が高速化可能な動作であって人間工学的に見て有利な動作となることが容易に推認される。
そして、本実施形態には、その人間工学的に有利な動作を利用すると、エア回転工具100を可及的に速やかに停止させることが可能となるという基礎的な思想が内在する。
すなわち、本実施形態には、エア回転工具100において、流量調整のためにマニュアル操作が可能な補助操作レバー230を、エア回転工具100の作動中において、緊急事態になると、同じ作業者本人によるマニュアル操作が可能な緊急停止スイッチとして機能させるという新規な技術思想が内在するのである。
ここに、補助操作レバー230を緊急停止スイッチと称する場合、それと区別するために、主操作レバー210を例えばメインスイッチと称することが可能である。
さらに、本実施形態によれば、エア回転工具100が通常の電動回転工具より軽量であるため、作業者が工具を把持しつつその工具の向きを随時変えて作業する場合の作業し易さが向上するという効果も得られる。本発明者のこれまでの経験に則して例示すれば、電動回転工具は、それの電動モータが特に重い(例えば磁石やコイルの部分)などの理由で、重量が約1.7kgであるのに対し、エア回転工具100は、それのエアモータ204が電動モータより単純な構造である(例えば通常の金属材料で構成される)などの理由で、重量が約0.7−約1.0kgであった。
ここで、図14を参照することにより、補助操作レバー230の一変形例を有するエア回転工具100を説明する。
このエア回転工具100は、前述のように、エアモータ204および前記第1バルブとしてのレギュレータ206を有し、さらに、前記第2バルブとして、この例においては、2連エアバルブ(エアバルブ・セット)220を有する。
このエア回転工具100は、さらに、それら流体要素に共通のエア通路(エア回転工具100の内部エア通路と外部エア通路とを有する)112を有する。そのエア通路112の上流端に高圧源(図示しない)が接続されている。エア通路112のうち、レギュレータ206より上流側で、かつ、前記高圧源より下流側の部分に2連エアバルブ220が接続されている。
この2連エアバルブ220は、上流側エアバルブ220aと下流側エアバルブ220bとが互いに直列に並ぶように構成されている。それら上流側エアバルブ220aおよび下流側エアバルブ220bは、いずれも、流量調整機能(弁開度:0−100%)を有している。それら上流側エアバルブ220aおよび下流側エアバルブ220bのうちの少なくとも一方は、全閉可能であるように設計されている。
同図に示す例においては、2連エアバルブ220が、前記補助操作具として2連レバー(レー・セット)230を有する。この2連レバー230は、それぞれ、上流側エアバルブ220aおよび下流側エアバルブ220bをそれぞれ制御するために作業者によって操作される上流側補助操作レバー230aおよび下流側補助操作レバー230bを有する。
上流側エアバルブ220aは、前記高圧源から当該上流側エアバルブ220aを通過して下流側エアバルブ220b内に流入する圧縮エアの流量の上限値を制限する流量制限バルブとして機能する。
これに対し、下流側エアバルブ220bは、上流側エアバルブ220aから下流側エアバルブ220bを通過してレギュレータ206内に流入する圧縮エアの流量を、上流側エアバルブ220aによって制限された前記上限値を超えない範囲で調整する流量調整バルブとして機能する。
この例においては、流量制限バルブ220aが、一連の塗膜除去作業の開始に先立ち、既存塗膜14についての前述の剥離関連情報を反映するとともに、作業者の勘と経験などを頼りに、所望の上限値が設置されるように、作業者によって操作される。
この流量制限バルブ220aは、ある回の作業が開始されると、特別の事情がない限り、作業者によって操作されず、その結果、同じ回の作業中、同じ上限値が実現されるように同じ弁開度に維持される。
これに対し、流量調整バルブ220bは、一連の塗膜除去作業の開始後、各加工部位における個々の既存塗膜14についての前述の剥離関連情報に応じて、レギュレータ206を流れる圧縮エア流量が適正化されるように、作業者によって随時、加工部位ごとに操作される。
この流量調整バルブ220bは、通常、ある回の作業が開始されると、作業者によって繰り返し操作され、それにより、時間と共に変動するエア流量が実現されるように弁開度が変化させられる。
各エアバルブ220a,220bにおいては、対応するレバー230a,230bのうち、前記回転軸線回りの円筒部(回転体の一例)の表面に、平面視において、複数の数字が周方向に等間隔で並んで不動に表示されている。
さらに、各エアバルブ220a,220bにおいては、対応するバルブハウジング221(エア回転工具100に対して変位しない静止部材の一例)のうち、平面視において、前記円筒部の外周面に近接する位置に、矢印(ポインターの一例、目盛りの一例など)が不動に表示されている。前記複数の数字のうち、前記矢印に最も近接するものが、対応するレバー230a,230bの現在の操作位置を表す。
以上、本発明の例示的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の概要]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。

Claims (14)

  1. 構造体から既存塗膜を物理的に除去するために作業者によって把持状態で使用されるエア回転工具であって、
    概して一軸線に沿って延びるハウジングと、
    そのハウジング内に収容されるエアモータと、
    そのハウジング内に収容され、外部から前記エアモータに向かう圧縮エアの流れを制御する第1バルブであって、その圧縮エアの流量調整を行うとともに全閉可能であるものと、
    その第1バルブを制御するために作業者によって操作される主操作レバーと、
    外部から当該エア回転工具のうちの前記第1バルブに向かう圧縮エアの流れを制御する第2バルブであって、その圧縮エアの流量調整を行うとともに全閉可能であるものと、
    その第2バルブを制御するために作業者によって操作される補助操作具と
    を含み、
    その補助操作具は、前記第2バルブの最開位置と全閉位置とにそれぞれ対応する最開位置と全閉位置との間を回転させられるとともに任意の中間位置で固定可能であり、
    それにより、作業者が、片方の手で前記主操作レバーと前記ハウジングとを一緒に握っているために前記第1バルブがオン状態にあるときに、反対側の手で前記補助操作具を任意の位置に操作することによって前記圧縮エアの流量が調整される一方、同じく反対側の手で前記補助操作具を前記全閉位置に操作すれば、前記第2バルブが全閉し、停止する塗膜除去用エア回転工具。
  2. 前記主操作レバーは、概して前記軸線に沿って延びるとともにその軸線と立体交差する揺動軸線回りに揺動可能である請求項1に記載の塗膜除去用エア回転工具。
  3. 前記補助操作具は、前記軸線または当該エア回転工具に接続されるホースの中心線と交差する回転軸線回りに、前記第2バルブのための最開位置と全閉位置との間を回転させられるとともに任意の中間位置で固定可能であり、それにより、前記第2バルブは、前記ホースから当該エア回転工具に向かう前記圧縮エアの流量調整と全閉化との双方を行う請求項1または2に記載の塗膜除去用エア回転工具。
  4. 前記補助操作具は、前記主操作レバーが含まれる平面と同一平面上に配置される請求項1ないし3のいずれかに記載の塗膜除去用エア回転工具。
  5. 前記補助操作具は、前記軸線に関し、前記主操作レバーとは反対側に配置される請求項1ないし4のいずれかに記載の塗膜除去用エア回転工具。
  6. 前記補助操作具は、前記軸線に関し、前記主操作レバーと同じ側に配置される請求項1ないし4のいずれかに記載の塗膜除去用エア回転工具。
  7. 前記補助操作具は、前記軸線または当該エア回転工具に接続されるホースの中心線と交差する回転軸線から半径方向外向きに延びる補助操作レバーであり、
    その補助操作レバーは、前記回転軸線回りに、前記第2バルブのための最開位置と全閉位置との間を回転させられるとともに任意の中間位置で固定可能である請求項1ないし6のいずれかに記載の塗膜除去用エア回転工具。
  8. 前記補助操作レバーは、前記最開位置にあるときに、前記主操作レバーに対して概して直線的にまたは平行に延びる姿勢を取る請求項7に記載の塗膜除去用エア回転工具。
  9. 前記補助操作レバーは、前記全閉位置にあるときに、前記主操作レバーに対して概して直線的にまたは平行に延びる姿勢を取る請求項7に記載の塗膜除去用エア回転工具。
  10. 前記第1バルブは、前記ホースから前記エアモータに向かう前記圧縮エアの流量調整と全閉化とのうちの少なくとも全閉化を行う請求項1ないし9のいずれかに記載の塗膜除去用エア回転工具。
  11. 前記第2バルブは、前記ホースから当該エア回転工具に向かう前記圧縮エアの流量調整と全閉化との双方を行う請求項1ないし10のいずれかに記載の塗膜除去用エア回転工具。
  12. さらに、
    前記ハウジングの先端部に装着されるヘッドと、
    そのヘッドから少なくとも部分的に露出する状態で当該エア回転工具に前記エアモータと連携する状態で装着され、前記構造体から前記既存塗膜を物理的に除去するために前記エアモータによって回転させられる除去具と
    を含む請求項1ないし11のいずれかに記載の塗膜除去用エア回転工具。
  13. 前記除去具は、ロータリーブラシとグラインダとのうちの少なくとも一方を含む請求項12に記載の塗膜除去用エア回転工具。
  14. 構造体から既存塗膜を除去するために請求項1ないし13のいずれかに記載のエア回転工具を使用する方法であって、
    作業者が、片方の手で前記主操作レバーを前記ハウジングの外面に押し付けられるように握ることにより、前記第1バルブをオン状態とし、それにより、前記エア回転工具を作動させる作動工程と、
    作業者が片方の手で前記主操作レバーを前記ハウジングの外面に押し付けられるように握ることによって前記エア回転工具が作動している状態で、作業者が、反対側の手で前記補助操作具を任意の位置に操作することにより、前記第2バルブの弁開度を制御し、それにより、前記エア回転工具の回転状態量を微調整する微調整工程と、
    作業者が片方の手で前記主操作レバーを前記ハウジングの外面に押し付けられるように握ることによって前記エア回転工具が作動している状態で、作業者が、反対側の手で前記補助操作具を前記全閉位置に操作することにより、前記第2バルブを全閉し、それにより、前記エア回転工具を停止させる停止工程と
    を含むエア回転工具使用方法。
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