JP7012332B2 - 凍結食肉用品質改良剤、凍結食肉および凍結食肉の製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2に記載の肉用食感改良剤は、食肉に浸透させて食感を改良した後に凍結させると、改良された食感を維持することが難しいという課題があった。
本発明に係る凍結食肉用品質改良剤において、前記担子菌はエノキタケ(Flammulina velutipes種)またはその類縁品種もしくは改良品種であることが好ましい。
本発明に係る凍結食肉用品質改良剤は、水溶液から成るとき、不凍活性として、RI値0.6~0.8に規格化されたキシロマンナン含有エノキタケエキスを0.00005~0.0002質量%程度、高度分岐環状デキストリンを0.1~1.5質量%含むことが好ましい。
なお、不凍活性は、式1:氷再結晶化阻害活性(RI値)=(不凍タンパク質又は不凍多糖類を含む30%ショ糖溶液を-40℃に冷却後、-6℃まで100℃/分で昇温して30分保存した際に形成される氷結晶の平均面積)/(30w/v%ショ糖溶液のみを-40℃に冷却後、-6℃まで100℃/分で昇温して30分保存した際に形成される氷結晶の平均面積)により求められる。
本発明に係る凍結食肉用品質改良剤は、調味料、保存料、着色料、増量剤その他の添加剤を含んでいてもよい。
本発明に係る凍結食肉は、本発明に係る凍結食肉用品質改良剤を含むことを特徴とする。
本発明に係る凍結食肉の製造方法は、本発明に係る凍結食肉用品質改良剤を食肉に添加した後、凍結させることを特徴とする。
本発明に係る凍結食肉用品質改良剤は、食肉への練込み、浸漬、タンブリング処理、インジェクション処理などにより食肉に添加して使用することができる。
本発明の実施の形態の凍結食肉用品質改良剤は、担子菌由来のキシロマンナンから成る氷結晶化阻害剤(不凍多糖)と、アルカリ剤と、デキストリンとを含んでいる。本発明の実施の形態の凍結食肉は、本発明の実施の形態の凍結食肉用品質改良剤を含んでいる。
各種試験において、以下の食感評価基準により評価を行った。
「しっとり感」:◎とてもしっとりする ○しっとりする △ややぱさつく ×ぱさつく
「繊維感」:◎繊維が太くふっくらとする ○ややふっくらする △あまりふっくらとしない ×全くふっくらしない
「旨味」:◎旨味がとてもある ○旨味がある △やや旨味がある ×旨味が全くない
「アルカリ味」:◎アルカリ味ほとんどなし ○アルカリ味なし △アルカリ味ややあり ×アルカリ味かなりあり
「凍結後焼成の食感」:◎未凍結時と遜色なし ○未凍結時に近い △冷凍ダメージが感じられる ×かなり冷凍ダメージが感じられる
[試験1:不凍多糖のみを添加した際の効果の評価]
魚肉に不凍多糖のみを添加した際の効果を評価した。以下の各種試験において、不凍多糖には、市販のエノキタケ抽出液製剤(株式会社カネカ製、商品名「カネカ不凍多糖 EF1」、不凍活性(RI値):0.6~0.8、エノキタケエキスの含有量:0.1%)を使用した。
[試験方法]:試験区ごとに表1の配合に従いピックル液を用意し、タラの生の切り身を同質量のピックル液に4℃で2時間浸漬した。タラは、冷凍変性ダメージを受けやすい魚種として選択した。浸漬後、液切りを行い急速凍結した。凍結後、冷凍機(霜取り機能付き、-20℃設定)にて1日、凍結保管した。凍結状態のまま230℃、13分間の焼成を行い、食感を確認した。
表2に示す通り、不凍多糖の添加量を増やしていくにつれ、旨味やその他の食感も向上する傾向にあるが、その効果は無添加と比較して差は小さかった。
魚肉にアルカリ剤を加えた際の、高度分岐環状デキストリンの適切な添加量について検討を行った。以下の各種試験において、高度分岐環状デキストリンには、市販品(グリコ株式会社製、商品名「クラスターデキストリン」)を使用した。アルカリ剤は、炭酸ナトリウム無水物(ソーダ灰)を使用した。
[試験方法]:試験区ごとに表3の配合に従いピックル液を用意し、タラの生の切り身を同質量のピックル液に4℃で2時間浸漬した。浸漬後、液切りを行い、230℃、13分の焼成を行い、食感を確認した。
表4に示す通り、高度分岐環状デキストリンの添加量を増やすことで、しっとり感・繊維感がともに増大し、アルカリ味に関しても低減する傾向にあった。
溶液の浸透の度合いと、味への影響を評価し、適切なpHの範囲を検討した。また、高度分岐環状デキストリンを添加した際のそれぞれのpHでの浸透度合い・効果を確認する評価を行った。さらに、凍結後の食感の確認も行った。
[試験方法]:試験区ごとに表5の配合に従いピックル液を用意し、タラの生の切り身を同質量のピックル液に4℃で2時間浸漬した。浸漬後、液切りを行い230℃、13分間の焼成を行い、食感を確認した。また、凍結後の食感確認として、上記溶液に浸漬後、液切りを行い急速凍結後、冷凍機(霜取り機能付き、-20℃設定)にて1日、凍結保管した。凍結状態のまま230℃、13分間の焼成を行い、食感を確認した。
表6に示す通り、高度分岐環状デキストリンのみでは無添加と比較しても差は見られなかった。一方で、アルカリ剤との併用によりpHを上げることで、高度分岐環状デキストリンの効果は食感として観察され、アルカリ味も改善されていた。しかし、凍結後焼成を行った結果、未凍結時のような食感は全試験区において観察されなかった。
アルカリ剤と不凍多糖を加えた際に、高度分岐環状デキストリンを添加した際の効果を検討した。
[試験方法]:試験区ごとに表7の配合に従いピックル液を用意し、タラの生の切り身を同質量のピックル液に4℃で2時間浸漬した。浸漬後、液切りを行い急速凍結した。凍結後、冷凍機(霜取り機能付き、-20℃設定)にて1日、凍結保管した。凍結状態のまま230℃、13分間の焼成を行い、食感を確認した。
表8に示す通り、不凍多糖の添加量を多くすることによって、アルカリ剤のみを加えた場合でも改善効果は大きくなるが、そこに高度分岐環状デキストリンをさらに加えることで、より大きな改善効果が得られた。
アルカリ剤と不凍多糖を加えた際に、高度分岐環状デキストリンと他のデキストリンを添加した際の効果の比較確認を行う。
[試験方法]:試験区ごとに表9の配合に従いピックル液を用意し、タラの生の切り身を同質量のピックル液に4℃で2時間浸漬した。浸漬後、液切りを行い急速凍結した。凍結後、冷凍機(霜取り機能付き、-20℃設定)にて1日、凍結保管した。凍結状態のまま230℃、13分間の焼成を行い、食感を確認した。
表10に示す通り、α-シクロデキストリン及びその他デキストリンを添加した場合にもしっとり感や繊維感、旨味に多少の改善はみられたが、高度分岐環状デキストリンを添加した場合の効果が最も大きかった。特に繊維感と旨味の面が際立っていた。
[試験6:不凍多糖のみを添加した際の効果の評価]
不凍多糖のみを添加した際の効果を評価する。
[試験方法]:原料の鶏モモ肉をテンダリングし、カットを行った。カット後、表11の配合で調製した、原料に対し100分の20の質量のピックル液に4℃で2時間浸漬し、正転20分、休止10分、反転20分、休止10分の条件でタンブリングを行った。タンブリング後、220℃で10分間、焼成し、焼成後、放冷し、急速凍結した。凍結後、冷凍機(霜取り機能付き、-20℃設定)にて1ヶ月、凍結保管した。保管後、レンジアップにて解凍し、食感確認を行った。
表12に示す通り、不凍多糖の添加量を増やしていくにつれ、旨味や繊維感が向上する傾向にあるが、その効果は無添加と比較して小さく、不凍多糖を、市販のエノキタケ抽出液製剤(株式会社カネカ製、商品名「カネカ不凍多糖 EF1」)で0.15%以上添加しなければ、十分な改善効果は得られなかった。
畜肉にアルカリ剤を加えた際の、高度分岐環状デキストリンの適切な添加量について検討を行った。アルカリ剤は、炭酸ナトリウム無水物(ソーダ灰)を使用した。
[試験方法]:原料の鶏モモ肉をテンダリングし、カットを行った。カット後、表13の配合で調製した、原料に対し100分の20の質量のピックル液に4℃で2時間浸漬し、正転20分、休止10分、反転20分、休止10分の条件でタンブリングを行った。タンブリング後、220℃で10分間、焼成し、食感を確認した。
表14に示す通り、高度分岐環状デキストリンを0.1%以上添加することで、しっとり感や繊維感は向上する傾向にあった。また、アルカリ味に関しても添加量を増やしていくにつれ低減する傾向にあった。
溶液の浸透の度合いと、味への影響を評価し、適切なpHの範囲を検討した。また、高度分岐環状デキストリンを添加した際のそれぞれのpHでの浸透度合い・効果を確認する評価を行った。さらに、凍結後の食感の確認も行った。
[試験方法]:原料の鶏モモ肉をテンダリングし、カットを行った。カット後、表15の配合で調製した、原料に対し100分の20の質量のピックル液に4℃で2時間浸漬し、正転20分、休止10分、反転20分、休止10分の条件でタンブリングを行った。タンブリング後、220℃で10分間、焼成し、焼成後、放冷し、急速凍結した。凍結後、冷凍機(霜取り機能付き、-20℃設定)にて1ヶ月、凍結保管した。保管後、レンジアップにて解凍し、食感確認を行った。
表16に示す通り、高度分岐環状デキストリンのみの添加では無添加と比較しても差は見られなかった。一方で、アルカリ剤との併用によりpHを上げることで、高度分岐環状デキストリンの効果は食感として観察され、アルカリ味も改善されていた。しかし凍結後焼成を行った結果、アルカリ剤との併用によって、パサツキは多少軽減されてはいるが、旨味や繊維感といった部分は凍結ダメージが大きく感じられた。
アルカリ剤と不凍多糖を加えた際に、高度分岐環状デキストリンを添加した際の効果を検討した。
[試験方法]:原料の鶏モモ肉をテンダリングし、カットを行った。カット後、表17の配合で調製した、原料に対し100分の20の質量のピックル液に4℃で2時間浸漬し、正転20分、休止10分、反転20分、休止10分の条件でタンブリングを行った。タンブリング後、220℃で10分間、焼成し、焼成後、放冷し、急速凍結した。凍結後、冷凍機(霜取り機能付き、-20℃設定)にて1ヶ月、凍結保管した。保管後、レンジアップにて解凍し、食感確認を行った。
表18に示す通り、不凍多糖の添加量を多くすることによって、アルカリ剤のみとの併用でも改善効果は大きくなるが、そこに高度分岐環状デキストリンをさらに加えることで、繊維感や旨味の面でさらに改善がみられ、不凍多糖の添加量が少量であっても不凍多糖の大きな改善効果が観察された。
アルカリ剤と不凍多糖を加えた際に、高度分岐環状デキストリンと他のデキストリンを添加した際の効果の比較確認を行った。
[試験方法]:原料の鶏モモ肉をテンダリングし、カットを行った。カット後、表19の配合で調製した、原料に対し100分の20の質量のピックル液に4℃で2時間浸漬し、正転20分、休止10分、反転20分、休止10分の条件でタンブリングを行った。タンブリング後、220℃で10分間、焼成し、焼成後、放冷し、急速凍結した。凍結後、冷凍機(霜取り機能付き、-20℃設定)にて1ヶ月、凍結保管した。保管後、レンジアップにて解凍し、食感確認を行った。
表20に示す通り、高度分岐環状デキストリン以外のデキストリンを添加した場合にもしっとり感や繊維感、旨味にやや改善はみられたが、高度分岐環状デキストリンを添加した場合における、不凍多糖の効果が最も大きかった。
以上のとおり、魚肉、畜肉等の食肉において、アルカリ剤と高度分岐環状デキストリンと不凍多糖を併用することで、不凍多糖の肉組織への浸透性を大きく向上させ、その効果を十分に発揮させることが可能となる。
<とんかつ>
[試験方法]:豚ロースブロックに、表21の配合で調製したピックル液をインジェクションし、正転20分、休止10分、反転20分、休止10分を1回としてタンブリングを3回繰り返して行った。タンブリング後、一晩、冷蔵庫に入れ、4℃にてエージングを行った。エージング後、急速凍結した。凍結後、半解凍の状態で約2cmの厚さにスライスした。スライス肉に打ち粉、バッター、パン粉をつけ、急速凍結した。凍結後、冷凍機(霜取り機能付き、-20℃設定)にて1日、凍結保管した。保管後、凍結状態のまま中心温度80℃以上で油ちょうした。放冷後、食感を確認した。
表22に示す通り、試験区(1)では、肉組織が柔らかくなってしまっており、旨味も抜け、水っぽいような食感であった。試験区(2)では、肉繊維がしっかりとしており弾力が感じられた、また、肉本来の旨味も残っていた。
[試験方法]:豚バラブロックに、表23の配合で調製したピックル液をインジェクションし、正転20分、休止10分、反転20分、休止10分を1回としてタンブリングを2回繰り返して行った。タンブリング後、一晩、冷蔵庫に入れ、4℃にてエージングを行った。エージング後、乾燥機にて60℃で3時間、乾燥を行った。乾燥後、75℃で90分間、蒸煮を行った。蒸煮後、1時間、燻煙を行った。燻煙後、急速凍結を行い、冷凍機(霜取り機能付き、-20℃設定)にて1日、凍結保管した。保管後、自然解凍にて解凍を行った。解凍後、離水確認と食感確認を行った。
表24に示す通り、試験区(1)では離水が多く観察され。また食感としてもパサツキが感じられた。一方で試験区(2)では、離水も少なく、食感もとてもしっとりとしており、旨味も強く感じられた。
[試験方法]:原料のバナメイエビを解凍し、背ワタ・殻を除去後、表25の配合で調製した、原料に対し100分の30の質量のピックル液に4℃で2時間浸漬した。浸漬後、液切りを行い、90℃で3分間、ブランチングを行った。ブランチング後、放冷し急速凍結を行い、冷凍機(霜取り機能付き、-20℃設定)にて1ヶ月、凍結保管した。保管後、恒温槽にて85℃でボイル解凍を行い、食感確認を行った。
表26に示す通り、試験区(1)ではしっとり感はあるものの繊維感が無く、弾力も失われていた。一方で試験区(2)では繊維がしっかりとしており弾力も感じられた。また、旨味も残っていた。
Claims (4)
- 担子菌由来のキシロマンナンから成る氷結晶化阻害剤と、アルカリ剤と、高度分岐環状デキストリンとを含み、pH9.2以上の水溶液から成ることを特徴とする凍結食肉用品質改良剤。
- 前記担子菌はエノキタケ(Flammulina velutipes種)またはその類縁品種もしくは改良品種であることを特徴とする請求項1記載の凍結食肉用品質改良剤。
- 請求項1または2記載の凍結食肉用品質改良剤を含むことを特徴とする凍結食肉。
- 請求項1または2記載の凍結食肉用品質改良剤を食肉に添加した後、凍結させることを特徴とする凍結食肉の製造方法。
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