上記の本発明の薬液調製装置において、前記ステージが前記第1回動位置にあるとき、前記ステージは傾斜していてもよい。かかる態様は、薬液調製装置の高さ寸法及び奥行き寸法を小さくするのに有利である。また、上記態様は、ステージが第1回動位置にある状態で薬液調製装置に対してデバイスや薬液バッグを着脱する操作を容易にするのに有利である。
前記シリンジホルダは、前記シリンジが、その筒先を上方に向けて直立した状態で前記シリンジを保持することができるように、本発明の薬液調製装置は構成されていてもよい。かかる態様は、シリンジ内の溶解液を所望する通りに正確に計量することを可能にするので、薬液の調製誤差を低減するのに有利である。
前記シリンジホルダは、前記シリンジが、その筒先を下方に向けて倒立した状態で前記シリンジを保持することができるように、本発明の薬液調製装置は構成されていてもよい。かかる態様は、所望する量の薬液を正確に薬液バッグに注入することを可能にするので、薬液の調製誤差を低減するのに有利である。
前記シリンジホルダは、前記ステージと一体的に、前記ステージの回動軸回りに回動してもよい。かかる態様は、ステージが回動したときに、管状部とシリンジとをつなぐ流路(例えばチューブ)が捩れるのを防止する。また、上記態様は、ステージを回動させる機構を利用して、シリンジの向きを上記のように直立状態及び/又は倒立状態に変化させることを可能にするので、薬液調製装置の構成を簡単化するのに有利である。
前記シリンジホルダは、前記シリンジの長手方向が、前記第1コネクタの軸の方向及び前記第2コネクタの軸の方向に対して傾斜するように、前記シリンジを保持してもよい。かかる態様は、薬液調製装置の回動軸に沿った寸法を小さくするのに有利である。
本発明の薬液調製装置は、前記シリンジの外筒に対してプランジャを挿抜するプランジャ操作部を更に備えてもよい。かかる態様は、作業者がプランジャを挿抜することを不要にするので、薬液の調製作業において作業者の負担を軽減するのに有利である。
前記ステージが前記第2回動位置にあるとき、前記第1容器は、そのポートが上方に向いた直立状態となってもよく、また、前記第2容器は、その開口を封止する栓体が下方を向いた倒立状態となってもよい。第1容器が直立状態になることは、第1容器から空気を吸引するのに有利である。第2容器が倒立状態になることは、第2容器からシリンジに薬液を採取するのに有利である。
前記ステージは、前記第1コネクタに接続された前記第1容器が前記ステージより下に位置するように前記ステージが回動した場合に前記第1容器が前記ステージから離間しないように前記第1容器を保持する機構を備えていてもよい。かかる態様は、作業者が第1容器を保持することを不要にするので、作業者の負担を軽減するのに有利である。
本発明の薬液調製装置は、前記ステージを回動させる回動駆動装置を更に備えてもよい。かかる態様は、作業者が移送デバイスが搭載されたステージを回動させることを不要にするので、薬液の調製作業において作業者の負担を軽減するのに有利である。
本発明の薬液調製装置は、前記第2容器を保持する第2容器ホルダを更に備えてもよい。前記第2容器ホルダは、前記第2容器を、前記デバイスホルダに保持された前記移送デバイスの前記第2コネクタの軸と同軸になるように保持してもよい。前記第2容器ホルダは、前記第2コネクタの軸の方向に沿って直線的に移動してもよい。かかる態様は、作業者が第2容器を第2コネクタに対して着脱することを不要にするので、薬液の調製作業において作業者の負担を軽減するのに有利である。
前記第2容器ホルダは、前記ステージと一体的に、前記ステージの回動軸回りに回動してもよい。かかる態様は、薬液調製装置の小型化に有利である。また、上記態様は、ステージの回動位置に関わらず第2コネクタに対して第2容器を接続及び分離することを可能にする。
本発明の薬液調製装置は、前記移送デバイスに設けられたコックを回転させるためのコック操作部を更に備えてもよい。前記コック操作部は、前記移送デバイス内の流路が前記第1状態と前記第2状態との間で切り替わるように前記コックを回転させてもよい。かかる態様は、作業者がコックを回転することを不要にするので、薬液の調製作業において作業者の負担を軽減するのに有利である。
前記第1容器は、液体が収納された、容易に変形可能な容器であってもよい。この場合、当該容器のポートに、第1コネクタが直接的に又は間接的に接続される。
前記第2容器は、粉末状の薬剤が封入されたバイアルであってもよい。この場合、バイアルの開口に、第2コネクタが直接的に又は間接的に接続される。
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、本発明の実施形態を簡略化して示したものである。従って、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部を変更もしくは省略してもよく、また、任意の部材もしくは構成を追加してもよい。実施形態の説明において引用する図面において、同一又は対応する部材には同一の符号が付してある。
1.移送デバイス
図1は、本発明の一実施形態にかかる薬液調製装置1(後述する図2参照)に適合した移送デバイス(以下、単に「デバイス」という)800、薬液バッグ(第1容器)910、バイアル(第2容器)950、及びシリンジ980を示した分解斜視図である。
デバイス800は、薬液バッグ910が接続される第1コネクタ810と、バイアル950が接続される第2コネクタ820と、シリンジ980が接続される接続口850とを備える。第1コネクタ810と第2コネクタ820とは、それぞれの軸(図示せず)が互いに平行になるように(即ち、図1において上下方向に)配置され、互いに反対側に向かって開口している。第1コネクタ810と第2コネクタ820との間に、両端が開口した中空の略円筒形状の管状部830が設けられている。管状部830は、第1コネクタ810及び第2コネクタ820の軸に対して略垂直に延びている。管状部830に、その一端からコック840が挿入されている。管状部830の他端に、柔軟なチューブ852を介して接続口850が接続されている。接続口850は、中空の略円筒形状を有する。
薬液バッグ910は、制限されないが、一般に、容易に変形可能な、液密な容器である。本実施形態の薬液バッグ910は、略矩形の柔軟な2枚のシートを重ね合わせ、その外周縁部を溶着法(例えばヒートシール法、超音波溶着法)等によりシールしてなる袋状物である。但し、本発明の薬液バッグは、これに限定されず、例えばブロー成形等により製造された容器であってもよい。薬液バッグ910の形状は、例えば、収納された内容物が重力によって移動したり、薬液バッグ910に外力が加えられたりすることによって、自由に変化する。初期状態の薬液バッグ910内には、バイアル950内の薬剤を溶解するための溶解液(例えば生理食塩水)が貯留されている。薬液バッグ910は、薬液バッグ910に対して液体を出し入れするためのポート911を備える。ポート911の開口は栓体(例えばゴム栓、図示せず)で封止されている。薬液バッグ910のポート911とは反対側端に、孔918が設けられている。孔918は、薬液バッグ910内の薬液を患者に投与する際に、ポート911を下にして薬液バッグ910を吊り下げるために使用される。
薬液バッグ910のポート911は、アダプタ920を介して第1コネクタ810に接続される。アダプタ920の構成は任意であるが、本実施形態のアダプタ920は特許文献2に記載されたものと実質的に同じである。アダプタ920は、薬液バッグ910側に、鋭利な先端を備えた穿刺針921と複数の係合爪922とを備え、第1コネクタ810側に、セプタムと呼ばれる弾性隔壁部材を有する混注ポート925を備える。穿刺針921と混注ポート925とは連通している。穿刺針921を薬液バッグ910のポート911の栓体に穿刺し、且つ、係合爪922をポート911に係合させた状態で、アダプタ920はポート911に接続される。係合爪922とポート911との係合を解除しない限り、アダプタ920をポート911から分離することはできない。
第1コネクタ810は、棒状の第1オス部材(図示せず)と、第1オス部材に向かって突出した爪が設けられたロックレバー812とを備えたレバーロック型のコネクタである(例えば特許文献1参照)。中空の略円筒形状のフードが第1オス部材を取り囲んでいる。第1オス部材が、第1コネクタ810の軸を規定する。第1オス部材内には、その長手方向に沿って流路が設けられている。流路は管状部830に連通している。第1オス部材がアダプタ920の混注ポート925の弾性隔壁部材に挿入され、且つ、ロックレバー812の爪がアダプタ920の混注ポート925に係合される。ロックレバー812の爪と混注ポート925との係合を解除しない限り、アダプタ920を第1コネクタ810から分離することはできない。薬液バッグ910は、アダプタ920と第1コネクタ810の第1オス部材とを介して管状部830に連通される。
本実施形態では、薬液バッグ910はアダプタ920を介して第1コネクタ810に接続されるが、本発明はこれに限定されず、例えばアダプタ920を介さずに薬液バッグ910が第1コネクタ810に直接接続されるように構成されてもよい。
バイアル950は、瓶本体951と栓体(ゴム栓)956とを備える。瓶本体951は、ガラス等の実質的に変形しない硬質材料からなる。瓶本体951は、上方に向いた開口を備えた、中空円筒状の容器である。開口を介して、バイアル950に対して液体の出し入れが行われる。瓶本体951には、開口を取り囲むように、半径方向に突出したフランジ952が設けられている。瓶本体951の開口は、栓体956が嵌入されることにより気密及び液密に封止されている。初期状態のバイアル950内には、粉末状の薬剤(図示せず)が収容されている。
栓体956を覆うように、バイアル950にバイアルシールド960が装着される。バイアルシールド960の構成は任意であるが、本実施形態のバイアルシールド960は特許文献3に記載されたものと実質的に同じである。バイアルシールド960は、ゴム等の弾性材料からなる円形薄板状の弁体961と、弁体961を保持する本体962とを備える。本体962に複数の爪が設けられている。弁体961を栓体956の上面に重ね合わせ、且つ、爪を瓶本体951のフランジ952に係合させた状態で、バイアルシールド960はバイアル950に装着される。爪とフランジ952との係合を解除しない限り、バイアルシールド960をバイアル950から分離することはできない。バイアル950にバイアルシールド960を装着したとき、瓶本体951のフランジ952の一部は外界に露出する。
バイアル950は、バイアルシールド960が装着された状態で、第2コネクタ820に接続される。第2コネクタ820の構成は任意であるが、本実施形態の第2コネクタ820は特許文献4に記載されたものと実質的に同じである。第2コネクタ820は、管状部830と一体的に設けられた略円筒形状のコネクタ本体821と、略円筒形状のスライダ825とを備える。スライダ825は、コネクタ本体821内に同軸に挿入され、コネクタ本体821に対して軸方向に移動可能である。コネクタ本体821は、コネクタ本体821と同軸の、棒状の第2オス部材(図示せず)を備える。コネクタ本体821が第2オス部材を取り囲んでいる。第2オス部材が、第2コネクタ820の軸を規定する。第2オス部材は、鋭利な先端を有する穿刺針である。第2オス部材内には、その長手方向に沿って液体流路及び気体流路が互いに独立して設けられている。スライダ825には、第2オス部材に向かって突出した複数の爪(図示せず)が設けられている。
第2コネクタ820をバイアル950に接続したとき、第2オス部材はバイアルシールド960の弁体961及びバイアル950の栓体956を順に貫通する。バイアル950は、第2オス部材の液体流路及び気体流路を介して管状部830と連通する。バイアル950のフランジ952はスライダ825内に挿入され、スライダ825の爪はフランジ952に係合する。スライダ825は、バイアル950とともにコネクタ本体821内に挿入される。
スライダ825の爪とバイアル950のフランジ952との係合を解除しない限り、バイアル950を第2コネクタ820から分離することはできない。第2コネクタ820は、バイアル950及びスライダ825がコネクタ本体821から最大に引き出された最大引き出し位置にあるときに、バイアル950を第2コネクタ820から強く引き抜けば、爪とフランジ952との係合が解除され、バイアル950を第2コネクタ820から分離することができるように構成されている。第2コネクタ820にはリリースボタン827が設けられている。リリースボタン827を半径方向内向きに押し込んだ状態でないと、バイアル950及びスライダ825をコネクタ本体821から最大引き出し位置にまで引き出すことができず、したがって、バイアル950を第2コネクタ820から分離することができない。
本実施形態では、バイアル950はバイアルシールド960が装着された状態で第2コネクタ820に接続されるが、本発明はこれに限定されず、例えばバイアル950が、バイアルシールド960が装着されずに第2コネクタ820に接続されてもよい。第2コネクタ820が、リリースボタン827が省略され、リリースボタン827を押し込むことなくバイアル950及びスライダ825をコネクタ本体821から最大引き出し位置にまで引き出し可能に構成されていてもよい。第2コネクタ820が、スライダ825が省略され、特許文献1の第2コネクタと同様に構成されていてもよい。
コック840は、管状部830内に挿入された円柱状の挿入部(図示せず)と、外界に露出した操作レバー841とを備える。挿入部と操作レバー841とは略「T」字状をなすように直角に連結されている。挿入部には、複数の流路(図示せず)が設けられている。管状部830に対してコック840を回転させると、挿入部に設けられた複数の流路が回転する。コック840が第1回転位置(第1状態)にあるとき、第1コネクタ810の第1オス部材内の流路が接続口850に連通する。コック840が第2回転位置(第2状態)にあるとき、第2コネクタ820の第2オスコネクタ内の液体流路が接続口850に連通する。このように、コック840を回転(本実施形態では180度の回転)させることにより、薬液バッグ910をシリンジ980に連通させる第1状態と、バイアル950をシリンジ980に連通させる第2状態とに、デバイス800内の流路を切り替えることができる。なお、第1状態(第1回転位置)では、第2コネクタ820の第2オス部材内の液体流路及び気体流路は、コック840によって封止される。第2状態(第2回転位置)では、第2コネクタ820の第2オス部材内の気体流路は、第1コネクタ810の第1オス部材内の流路に連通する。
シリンジ980は、一般的なシリンジと同様に、中空円筒形状の外筒(バレルとも呼ばれる)981と、外筒981に対して挿抜可能なプランジャ(押し子とも呼ばれる)985とを備える。外筒981の先端の筒先は接続口850に接続される(図1では、筒先は接続口850に挿入されているので見えない)。外筒981の後端には、外方向に突出した指掛け用のフィンガーフランジ982が設けられている。プランジャ985は、その後端に、略円形の押圧板986を備える。
デバイス800を用いた薬液の調製方法は、特許文献1と実質的に同様である。デバイス800は、本発明の薬液調製装置を用いずに、特許文献1と同様にして薬液を調製することができる。
2.薬液調製装置の構成
図2は、本発明の一実施形態にかかる薬液調製装置(以下「調製装置」という)1を示した斜視図である。調製装置1は、ステージ(メインステージ)10、デバイスホルダ20、シリンジホルダ30、バイアルホルダ50を備える。
調製装置1の土台をなす基板(図示せず)の上面に、上下方向に沿って延びた支柱15が設けられている。回動側板16が、支柱15に対して回動可能に連結されている。支柱15と回動側板16との間に介在する回動駆動装置17が、回動側板16を回動させる。回動側板16の回動軸(以下、単に「回動軸」という)は、水平方向に平行である。回動側板16は、支柱15とは反対側に平坦な主面(面積が最大である面)16aを有する板状物である。主面16aは、回動軸に対して垂直である。回動側板16の主面16aに、ステージ10が設けられている。ステージ10は、平坦な載置面10aを有する略矩形の薄板状物である。載置面10aは、回動側板16の主面16aに対して垂直であり、また、回動軸に対して平行である。ステージ10の側辺11が、回動側板16の主面16aに固定されている。以下の説明の便宜のため、側辺11に平行な方向を、ステージ10の「第1方向D1」という。第1方向D1は、載置面10aに平行であり、また、回動軸に対して垂直である。
ステージ10の載置面10aにおいて、第1方向D1の一方の側にデバイスホルダ20が設けられ、他方の側にフック18が設けられている。
デバイスホルダ20は、全体として略「U」字状を有する第1保持部21と、回動側板16の回動軸と平行に延びた直線状の第2保持部22とを備える。第1保持部21は、載置面10aに対して垂直に延びた一対の保持片を含む。一対の保持片は、回動軸の方向に対向している。第1保持部21は、デバイス800のコネクタ本体821(図1参照)を挟持して保持する。
フック18は、薬液バッグ910の孔918(図1参照)に挿入されて薬液バッグ910に係合するように、鉤状に湾曲されている。フック18は、直線案内機構19によって第1方向D1に沿って移動可能であり、第1方向D1の所望する位置でステージ10に対して固定されうる。フック18の位置は、薬液バッグ910のサイズ(特に、ポート911と孔918との距離)に応じて、適宜調整される。
回動側板16の主面16aには、更にシリンジステージ35が設けられている。シリンジステージ35は、ステージ10の載置面10aに対して傾斜している。シリンジステージ35に、シリンジホルダ30が設けられている。シリンジホルダ30は、外筒981の外周面に沿う半円筒面状の複数の載置面を有する。シリンジホルダ30には、外筒981から突出したフィンガーフランジ982(図1参照)が嵌入するようにスロット状の溝が、載置面に隣接して設けられている。
シリンジステージ35には、更に、プランジャ操作部33が設けられている。プランジャ操作部33には、プランジャ985の押圧板986(図1参照)が嵌入するようにスロット状の溝が設けられている。プランジャ操作部33は、外筒981に対してプランジャ985を挿抜することができるように直線的に往復移動可能である。プランジャ操作部33の移動は、プランジャ駆動機構34が行う。プランジャ駆動機構34の構成は任意であるが、例えばシリンダ装置や送りねじなどの任意の一軸アクチュエーターを用いうる。プランジャ駆動機構34はシリンジステージ35に設けられている。
コック操作部40が、デバイスホルダ20に対して水平方向に隣り合うように、デバイスホルダ20の近傍に配置されている。コック操作部40は、ロータ41と、ロータ41を回転させる駆動機構42とを備える。ロータ41には、デバイス800のコック840の操作レバー841(図1参照)と嵌合する形状が設けられている。操作レバー841がロータ41に嵌合されると、操作レバー841はロータ41と一体的に回転される。ロータ41の回転軸は、回動側板16の回動軸と平行である。本実施形態では、コック操作部40は、回動側板16に設けられているが、本発明はこれに限定されず、例えばステージ10に設けられていてもよい。
バイアルホルダ50は、バイアル950の瓶本体951(図1参照)をその直径方向にしっかりと保持する一対のチャック51を備える。一対のチャック51のそれぞれは、両者間の距離が増減するように移動可能である。バイアルホルダ50は、バイアル950を、バイアル950の中心軸が、第1方向D1に平行になるように保持する。バイアルホルダ50は、板状の可動片55上に設けられている。可動片55は、第1方向D1(即ち、バイアル950の中心軸)に沿って直線的に移動可能に、ステージ10に連結されている。直線駆動機構56が、可動片55を、バイアルホルダ50とともに、第1方向D1に沿って移動させる。直線駆動装置56の構成は任意であるが、例えばシリンダ装置や送りねじなどの任意の一軸アクチュエーターを用いうる。直線駆動機構56は、ステージ10の載置面10aとは反対側に配置されている。図示を省略するが、直線駆動機構56の固定部は回動側板16(ステージ10でもよい)に固定され、可動部は可動片55に接続されている。バイアルホルダ50がデバイスホルダ20に接近する向きの移動を「前進」といい、デバイスホルダ20から離間する向きの移動を「後退」という。
回動側板16は、水平方向に平行な回動軸の回りに回動する。回動側板16が回動すると、回動側板16に直接的に又は間接的に設けられたステージ10、デバイスホルダ20、シリンジホルダ30、プランジャ操作部33、コック操作部40、バイアルホルダ50も、共通する回動軸を中心として回動側板16と一体的に回動する。回動側板16の回動軸は、ステージ10の回動軸でもある。
詳細は後述するが、回動側板16が回動することにより、ステージ10は、4つの代表的な回動位置を取り得る。即ち、ステージ10は、図2~図4、図6~図8に示す第1回動位置、図9A、図9B、図11に示す第2回動位置、図5A及び図5Bに示す第3回動位置、及び、図10に示す第4回動位置に、ステージ10の傾きが変化するように回動することができる。
回動側板16の回動駆動装置17、プランジャ操作部33のプランジャ駆動機構34、コック操作部40の駆動機構42、バイアルホルダ50、バイアルホルダ50の直線駆動機構56は、図示しない制御装置によって制御される。調製装置1は、更に、バイアル950をバイアルホルダ50を含む所望する位置に移動させるための移載装置(例えばロボット)や、バイアル950及び/又はシリンジ980を画像認識するためのカメラなどを備えていてもよい。制御装置は、カメラから得た情報に基づいて、調製装置1の各部の動作を制御してもよい。
3.薬液調製装置を用いた薬液の調製方法
調製装置1を用いた薬液の調製方法を説明する。
最初に、図1に示すように、デバイス800、薬液バッグ910、アダプタ920、バイアル950、バイアルシールド960を準備する。デバイス800の接続口850にはシリンジ980が接続されている。プランジャ985は外筒981内に最も深くまで挿入されている。デバイス800のコック840は、接続口850が第2コネクタ820に連通される第2回転位置にある(第2状態)。薬液バッグ910内には溶解液(例えば生理食塩水)が貯留されている。薬液バッグ910は、更に少量の空気を含んでいてもよい。薬液バッグ910のポート911にアダプタ920を接続し、更に、アダプタ920をデバイス800の第1コネクタ810に接続する。バイアル950内には、粉末状の薬剤(例えば抗がん剤)が収容されている。バイアル950にバイアルシールド960を装着する。
また、図2に示す調製装置1を準備する。調製装置1は、抗がん剤を含む薬液を調製をする際に一般的に使用される安全キャビネット内に設置されている。調製装置1を安全キャビネット内に収納することは、薬剤が外界に漏れ出る可能性が低減するので、抗がん剤等の危険な薬剤の薬液を調製する場合に作業者が被曝するのを防止するのに有利である。ステージ10は、第1回動位置にある。第1回動位置にあるステージ10は、水平方向に対して傾斜している。より詳細には、ステージ10の第1方向D1は、フック18がデバイスホルダ20よりも高くなるように、水平方向に対して傾斜している(即ち、水平方向に対して平行でも垂直でもない)。バイアルホルダ50は、デバイスホルダ20から最も遠い位置に後退されている。
次いで、図3に示すように、デバイス800をデバイスホルダ20に保持させ、薬液バッグ910をステージ10に載置する。
デバイス800の第2コネクタ820(特にそのコネクタ本体821、図1参照)は、デバイスホルダ20の略「U」字状の第1保持部21に嵌入される。第2コネクタ820のリリースボタン827(図1参照)は、第1保持部21によって押し込まれた状態になる。デバイス800の管状部830は、デバイスホルダ20の第2保持部22上に、ステージ10の回動軸と平行に載置される。第1コネクタ810及び第2コネクタ820の軸は、第1方向D1に平行である。デバイス800は、デバイスホルダ20に保持されると、第1方向D1に移動することができない。ステージ10が第1回動位置にあるので、第1コネクタ810は第2コネクタ820よりも高い位置にある。
コック840の操作レバー841(図1参照)は、コック操作部40のロータ41に嵌合する。
薬液バッグ910は、ステージ10の載置面10a(図2参照)上に載置される。薬液バッグ910の孔918にフック18が挿入されることにより、薬液バッグ910はフック18に係止される。フック18は、薬液バッグ910を第1方向D1にわずかに引っ張るように、第1方向D1に位置決めされてステージ10に固定される。薬液バッグ910のポート911は斜め下方を向く。
上述したように、薬液バッグ910は容易に変形可能な袋状容器であり、その中に溶解液が貯留されている。ステージ10の載置面10aが斜め上方を向いているので、薬液バッグ910をステージ10に載置することは容易である。載置後は、ステージ10が薬液バッグ910を支持するので、薬液バッグ910の形状は安定的に維持される。
シリンジ980の外筒981は、シリンジホルダ30の半円筒面状の載置面に載置され保持される。外筒981のフィンガーフランジ982(図1参照)は、シリンジホルダ30に設けられたスロット状の溝に嵌入する。このため、外筒981は、外筒981の長手方向(即ち、プランジャ985の挿抜方向)に移動することができない。プランジャ985の押圧板986は、プランジャ操作部33のスロット状の溝に嵌入される。外筒981に対するプランジャ985の挿抜方向の位置は、プランジャ操作部33によって規定される。シリンジ980(または外筒981)の長手方向は、ステージ10(または回動側板16)の回動軸の方向に対して垂直である。また、シリンジ980の長手方向は、ステージ10の第1方向D1に対して鋭角にて傾斜している。管状部830と外筒981とをつなぐチューブ852は、略直角に湾曲されている。本実施形態では、ステージ10が第1回動位置にあるとき、シリンジ980の長手方向は、水平方向に対して平行である。但し、本発明はこれに限定されず、ステージ10が第1回動位置にあるとき、シリンジ980の長手方向は水平方向に対して傾斜していてもよい。
以上の操作は、作業者が手作業で行う。
次いで、図4に示すように、コック操作部40のロータ41が矢印R1の向きに回転し、コック840を第1回転位置へ回転させる。薬液バッグ910がシリンジ980に連通した第1状態に移行する。
次いで、プランジャ操作部33が矢印P1の向きに移動し、プランジャ985を外筒981から引き出す。薬液バッグ910内の溶解液の一部は、アダプタ920、デバイス800を介してシリンジ980内に採取される。薬液バッグ910内に空気が存在していても、薬液バッグ910から空気が流出することはない。
図4の状態においてプランジャ985を矢印P1の向きに引く前に、薬液バッグ910のポート911からシリンジ980までの流路(即ち、アダプタ920及びデバイス800(特に、第2コネクタ820、管状部830、チューブ852、接続口850)内の流路)内には空気が存在する。このため、プランジャ985を矢印P1の向きに引くと、シリンジ980に、最初にこの流路内の空気が流入し、続いて、溶解液が流入する。そこで、これに続いて、シリンジ980に流入した空気を排出する操作を行う。
即ち、図5A及び図5Bに示すように、ステージ10を、矢印A1の向きに、第3回動位置へ回動させる。
なお、本実施形態では、図5Bに最もよく示されているように、ステージ10を矢印A1の向きに回動させるのに先立って、バイアルホルダ50を矢印B1の向きに前進移動させている。これは、回動半径を小さくして、安全キャビネット内の限られた空間内での回動を可能にするためである。バイアルホルダ50が周辺部材に衝突することなくステージ10を回動させることが可能であれば、バイアルホルダ50の前進移動は不要である。
ステージ10が第3回動位置にあるとき、シリンジ980は、その筒先を上方に向けて直立する。シリンジ980の長手方向は上下方向に平行である。シリンジ980内の空気は、筒先近傍に集まる。この状態で、プランジャ操作部33が矢印P2の向きに移動し、プランジャ985を外筒981内に挿入する。シリンジ980内の空気は、シリンジ980から、デバイス800(特に、接続口850、チューブ852、管状部830、第2コネクタ820)及びアダプタ920を通って、薬液バッグ910に向かって流れる。シリンジ980に存在していた空気を全てシリンジ980から排出する。これにより、シリンジ980内の溶解液を正確に計量することができる。
次いで、図6に示すように、ステージ10を、矢印A2の向きに回動させ、第1回動位置(図2~図4参照)に戻す。続いて、バイアルホルダ50を矢印B2の向きに後退移動させる。そして、バイアル(第1バイアル)950を、バイアルホルダ50に載置する。バイアルホルダ50に対するバイアル950の載置は、作業者が行ってもよいし、移載装置(例えばロボット、図示せず)が行ってもよい。チャック51がバイアル950をしっかりと保持する(保持状態)。バイアルホルダ50は、バイアル950を、第2コネクタ820と同軸になるように保持する。
次いで、図7に示すように、バイアルホルダ50が矢印B3の向きに前進移動し、バイアル950を第2コネクタ820に押し込む。第2コネクタ820の第2オス部材は、バイアルシールド960の弁体961(図1参照)を貫通し、バイアル950の栓体956(図1参照)を穿刺する。バイアル950は、第2コネクタ820に接続される。
次いで、コック操作部40のロータ41が矢印R2の向きに回転し、コック840を第2回転位置へ回転させる。バイアル950がシリンジ980に連通した第2状態に移行する。
次いで、プランジャ操作部33が矢印P3の向きに移動し、プランジャ985を外筒981内に押し込む。シリンジ980内の溶解液はバイアル950に移送される。傾斜したバイアル950内に溶解液が注入されるので、バイアル950内で溶解液の泡立ちは少ない。バイアル950へ溶解液が注入されるのにしたがって、バイアル950内の空気はデバイス800を通って薬液バッグ910へ流入する。
次いで、図8に示すように、バイアルホルダ50が矢印B4の向きに後退移動し、バイアル950を第2コネクタ820から引き出す。上述したように、第2コネクタ820のリリースボタン827(図1参照)は押し込まれた状態であるので、バイアル950を第2コネクタ820から分離することができる。その後、チャック51はバイアル950を解放する。
バイアル950をバイアルホルダ50から取り出し、バイアル950を振とうして、バイアル950内の粉末状の薬剤を溶解液に溶解させる。例えば、作業者が、バイアル950をバイアルホルダ50から取り出し、振とうして、バイアルホルダ50に戻してもよい。あるいは、バイアル950の振とうはバイアル950を加振する振とう器(または加振器)を用い、作業者または移載装置(例えばロボット)がバイアル950をバイアルホルダ50と振とう器との間で移載してもよい。あるいは、移載装置(例えばロボット)がバイアル950を振とうしてもよい。バイアル950内の薬剤は溶解液に溶解されて薬液となる。
振とうされたバイアル950はバイアルホルダ50へ戻される。チャック51は、再度、バイアル950をしっかりと保持する。
次いで、バイアルホルダ50が矢印B5の向きに前進移動し、バイアル950を第2コネクタ820に押し込む。バイアル950は、再度、第2コネクタ820に接続される。
次いで、図9A及び図9Bに示すように、ステージ10を、矢印A3の向きに、第2回動位置へ回動させる。ステージ10を回動させるのに先立って、バイアルホルダ50は前進移動されている。回動半径が小さくなるので、安全キャビネット内の限られた空間内での回動が容易である。バイアルホルダ50を前進移動させることは、調製装置1を実質的に小型化する。
図9Bに最もよく示されているように、ステージ10が第2回動位置にあるとき、ステージ10の第1方向D1は、上下方向に対して平行である。第2コネクタ820は第1コネクタ810よりも高い位置にある。薬液バッグ910は、デバイス800によってポート911を上方に向けて吊り下げられた直立状態となる。薬液バッグ910内の空気は、ポート911近傍に集まる。シリンジ980の筒先が斜め上方を向くように、シリンジ980の長手方向は水平方向に対して傾斜する(即ち、水平方向に対して平行でも垂直でもない)。
次いで、プランジャ操作部33が矢印P4の向きに移動し、プランジャ985を外筒981から引き出す。バイアル950内の薬液はシリンジ980に採取される。バイアル950は、その開口を封止する栓体956(図1参照)が下方を向くように上下が反転(即ち、倒立)されているので、バイアル950内の薬液は栓体956近傍に貯まる。従って、バイアル950から薬液を確実に採取することができる。バイアル950から薬液が採取されるのにしたがって、薬液バッグ910内の空気がデバイス800を通ってバイアル950内に流入する。
次いで、コック操作部40のロータ41が矢印R3の向きに回転し、コック840を第1回転位置へ回転させる。薬液バッグ910がシリンジ980に連通した第1状態に移行する。
次いで、図10に示すように、ステージ10を、矢印A4の向きに、第4回動位置へ回動させる。ステージ10が第4回動位置にあるとき、シリンジ980はその筒先を下方に向けて倒立する。シリンジ980の長手方向は上下方向に平行である。シリンジ980内の薬液は、筒先近傍に集まる。
薬液バッグ910はステージ10の下側に位置している。しかしながら、デバイスホルダ20が、デバイス800及びアダプタ920を介して薬液バッグ910のポート911を保持し、且つ、フック18が薬液バッグ910の孔918(図1参照)に係合しているので、薬液バッグ910はステージ10から落下することなく、載置面10aにほぼ沿って保持される。作業者が薬液バッグ910を保持する必要はない。
プランジャ操作部33が矢印P5の向きに移動し、プランジャ985を外筒981内に押し込む。シリンジ980内の薬液は薬液バッグ910に移送される。仮にシリンジ980内に空気が混入していたとしても、シリンジ980からは、最初に薬液が流出する。外筒981に対するプランジャ985の押し込み量を制御することにより、所望する量の薬液を薬液バッグ910に移送することができる。
図10の状態でプランジャ985を外筒981内に最も深くまで押し込んでも、薬液の一部が、シリンジ980から薬液バッグ910までの流路(即ち、デバイス800(特に、接続口850、チューブ852、管状部830、第2コネクタ820)及びアダプタ920内の流路)内に残留してしまい、薬液バッグ910に移送することができない場合が起こりうる。シリンジ980内の薬液の全量を薬液バッグ910に移送する場合には、以下の操作を行う。
最初に、図10の状態(第4回動位置)でプランジャ985を外筒981内に最も深くまで押し込んだ後、図11に示すように、ステージ10を矢印A5の向きに、第2回動位置へ回動させる。第2回動位置では、薬液バッグ910は、ポート911(図1参照)を上にして吊り下げられる。薬液バッグ910内の空気は、ポート911近傍に集まる。この状態で、プランジャ操作部33が矢印P6の向きに移動し、プランジャ985を外筒981から引き出す。シリンジ980と薬液バッグ910とを繋ぐ流路に残留していた薬液がシリンジ980内に戻り、続いて、薬液バッグ910内の空気の一部がシリンジ980に吸引される。
次いで、再度、ステージ10を、図10に示す第4回動位置へ回動させる。シリンジ980内において、薬液は筒先近傍に集まり、薬液の上に空気がある。この状態で、プランジャ操作部33が矢印P5の向きに移動し、プランジャ985を外筒981内に押し込む。シリンジ980から、最初に薬液が流出し、続いて空気が流出する。空気は、シリンジ980から薬液バッグ910までの流路内の薬液を、薬液バッグ910に向かって押し流す。このようにして上記流路内の薬液を空気で置換する。
必要に応じて、上記の、薬液バッグ910からシリンジ980への空気の吸引(図11)、及び、シリンジ980から薬液バッグ910に向かっての薬液及び空気の排出(図10)を繰り返す。シリンジ980から薬液バッグ910までの流路内に薬液を残存させることなく、シリンジ980内の薬液の全量を薬液バッグ910に注入することができる。
その後、ステージ10を第1回動位置(図6参照)に回動させる。バイアルホルダ50を後退移動させ、バイアル950を第2コネクタ820から引き出す。チャック51はバイアル950を解放する。バイアルホルダ50からバイアル950が取り出される。
必要に応じて、別の新しいバイアル(第2バイアル)950について、上記と同様の操作を行い、第2バイアル内の薬剤を溶解して得た薬液を薬液バッグ910に注入してもよい。
薬液の調製作業が終了すると、作業者は、安全キャビネットのガラス戸を開き、ステージ10からデバイス800及び薬液バッグ910を取り外す。更に、薬液バッグ910をデバイス800から分離する。薬液バッグ910内には、所定量の薬剤が溶解された薬液が貯留されている。
4.作用
以上のように、本実施形態の調製装置1は、デバイス800を保持するデバイスホルダ20が設けられたステージ10を備える。ステージ10は、少なくとも、第1コネクタ810(または薬液バッグ910)が第2コネクタ820(またはバイアル950)よりも高い位置にある第1回動位置(図2~図4、図6~図8参照)と、第2コネクタ820(またはバイアル950)が第1コネクタ810(または薬液バッグ910)よりも高い位置にある第2回動位置(図9A、図9B、図11参照)とに、ステージ10の傾きが変化するように回動可能である。従来のデバイス800を用いた薬液の調製作業では、作業者がデバイス800を保持しながらデバイス800の向きを変える操作が必要であった。調製装置1は、この操作を作業者に代わって行う。このため、調製装置1は、作業者の負担を軽減する。
シリンジ980は全体として略棒状であり、更に、プランジャ985を挿抜するために、その長手方向に大きな寸法を占める。調製装置1では、シリンジホルダ30は、シリンジ980の長手方向がステージ10の回動軸の方向に対して垂直になるように、シリンジ980(特にその外筒981)を保持する。これにより、シリンジ980を含む調製装置1の全体の、回動軸に沿った寸法を小さくすることができる。これは、安全キャビネットの限られた空間内に調製装置1を設置して、薬液の調製作業を行うことを可能にする。調製装置1を安全キャビネット内に収納することは、薬剤が外界に漏れ出る可能性が低減するので、抗がん剤等の危険な薬剤の薬液を調製する場合に作業者が被曝するのを防止するのに有利である。
本実施形態では、ステージ10が第1回動位置にあるとき(図2~図4、図6~図8参照)、ステージ10(特にその第1方向D1)は傾斜している。もちろん、本発明では、本実施形態とは異なり、ステージ10が第1回動位置にあるとき、ステージ10は、例えば上下方向または水平方向と平行であってもよい。これらの場合、本実施形態と同様に、バイアルホルダ50が、ステージ10と一体的に回動し且つデバイス800に対して接離するように移動可能である構成を実現するためには、調製装置1の高さ寸法または奥行き寸法が大きくなってしまう。また、ステージ10が上下方向と平行に直立している場合には、調製装置1に対してデバイス800や薬液バッグ910を着脱することは困難である。本実施形態のように、第1回動位置にあるステージ10が傾斜していることは、調製装置1の高さ寸法及び奥行き寸法を小さくするのに有利であり、また、ステージ10が第1回動位置にある状態で調製装置1に対してデバイス800や薬液バッグ910を着脱する操作を容易にするのに有利である。
本実施形態の調製装置1は、図5A及び図5Bに示したように、シリンジホルダ30は、シリンジ980が、その筒先を上方に向けて直立した状態でシリンジ980を保持することができるように構成されている。薬液バッグ910から溶解液をシリンジ980に吸引した後、シリンジ980を上記の直立状態に保持してプランジャ985を外筒981に押し込むと、シリンジ980から空気が排出される。これにより、シリンジ980内の溶解液を所望する通りに正確に計量することができる。これは、正確な量の溶解液でバイアル950内の薬剤を溶解することを可能にする。従って、上記の構成は、薬液の調製誤差を低減するのに有利である。
本実施形態の調製装置1は、図10に示したように、シリンジホルダ30は、シリンジ980が、その筒先を下方に向けて倒立した状態でシリンジ980を保持することができるように構成されている。バイアル950から薬液をシリンジ980に吸引した後、シリンジ980を上記の倒立状態に保持してプランジャ985を外筒981に押し込むと、シリンジ980からは、必ず最初に薬液が流出される。シリンジ980内の薬液の一部のみを薬液バッグ910に移送する場合には、外筒981に対するプランジャ985の押し込み量を制御することにより、所望する量の薬液を薬液バッグ910に移送することができる。シリンジ980内の薬液の全量を薬液バッグ910に移送する場合には、ステージ10を第2回動位置に回動させて空気を薬液バッグ910からシリンジ980に吸引し(図11参照)、その後、シリンジ980を上記の倒立状態に保持してプランジャ985を外筒981に押し込む(図10参照)。これにより、薬液を、シリンジ980から薬液バッグ910までの流路内に残留させることなく、薬液バッグ910に注入することができる。このように、所望する量の薬液を正確に薬液バッグ910に注入することを可能である。従って、上記の構成は、薬液の調製誤差を低減するのに有利である。
本実施形態では、シリンジホルダ30は、ステージ10と一体的に、ステージ10の回動軸回りに回動する。このため、ステージ10が回動しても、管状部830とシリンジ980とをつなぐチューブ852が捩れることはない。また、ステージ10を回動させる機構を利用して、シリンジ980の向きを上記のように直立状態及び/又は倒立状態に変化させることが可能である。これは、調製装置1の構成を簡単化するのに有利である。
本実施形態では、シリンジホルダ30は、シリンジ980の長手方向が、ステージ10の第1方向D1(即ち、第1コネクタ810の軸の方向及び第2コネクタ820の軸の方向)に対して傾斜(即ち、平行でも垂直でもない)するように、シリンジ980を保持する。本実施形態と異なり、例えばシリンジホルダ30をステージ10の載置面10a上に、シリンジ980の長手方向が第1方向D1と平行になるように、設けることは可能である。この場合、シリンジ980及びシリンジホルダ30を、載置面10a上に載置される薬液バッグ910が衝突しないように配置する必要があり、これはステージ10の回動軸に沿った調製装置1の寸法(幅寸法)を増大させる。シリンジ980の長手方向が第1方向D1に対して傾斜する本実施形態は、調製装置1の幅寸法を小さくするのに有利である。
本実施形態の調製装置1は、シリンジ980の外筒981に対してプランジャ985を挿抜するプランジャ操作部33を備える。プランジャ操作部33は、薬液バッグ910がシリンジ980に連通した第1状態では、薬液バッグ910とシリンジ980との間で液体(溶解液または薬液)を授受させ、バイアル950がシリンジ980に連通した第2状態では、バイアル950とシリンジ980との間で液体(溶解液または薬液)を授受させる。プランジャ操作部33は、作業者がプランジャ985を挿抜することを不要にするので、薬液の調製作業において作業者の負担を軽減するのに有利である。
なお、本実施形態とは異なり、調製装置1がプランジャ操作部33を備えていなくてもよい。この場合、作業者がプランジャ985の挿抜操作を行ってもよい。
本実施形態では、ステージ10が第2回動位置にあるとき(図9A、図9B、図11参照)、薬液バッグ910は、そのポート911が上方に向いた直立状態となり、且つ、バイアル950は、その開口を封止する栓体956が下方を向いた倒立状態となる。薬液バッグ910が直立状態にあることは、薬液バッグ910から空気を吸引するのに有利である。バイアル950が倒立状態であることは、バイアル950からシリンジ980に薬液を採取するのに有利である。
本実施形態では、ステージ10は、第1コネクタ810に接続された薬液バッグ910がステージ10より下に位置するようにステージ10が回動した場合(即ち、図10に示す第4回動位置)に薬液バッグ910がステージ10から離間しないように薬液バッグ910を保持する機構(薬液バッグ保持機構)を備える。薬液バッグ保持機構は、重く且つ変形容易である薬液バッグ910を、その形状が大きく変化することなく、ステージ10に沿うように保持する。これは、作業者が薬液バッグ910を保持することを不要にするので、作業者の負担を軽減するのに有利である。本実施形態では、薬液バッグ保持機構が、薬液バッグ910の孔918に挿入されるフック18であったが、薬液バッグ保持機構の構成はこれに限定されず任意である。例えば、薬液バッグ保持機構は、薬液バッグ910をステージ10に固定することができるバンド(例えば弾性バンド)や、薬液バッグ910を収納することができる容器であってもよい。容器は、柔軟なネットまたはシートで構成された袋、あるいは、硬質材料(例えば、樹脂、金属)で構成された箱など、任意の構成を有しうる。
なお、本実施形態とは異なり、調製装置1が薬液バッグ保持機構を備えていなくてもよい。例えば、ステージ10が第4回動位置(図10参照)をとらない場合、薬液バッグ910が小型である場合もしくは変形しにくい場合等では、薬液バッグ保持機構を省略しうる。
本実施形態の調製装置1は、ステージ10を回動させる回動駆動装置17を備える。回動駆動装置17は、作業者がデバイス800が搭載されたステージ10を回動させることを不要にするので、薬液の調製作業において作業者の負担を軽減するのに有利である。
なお、本実施形態とは異なり、調製装置1が回動駆動装置17を備えていなくてもよい。この場合、デバイス800の向きを変えるために、作業者がステージ10を回動させることができる。
本実施形態では、バイアルホルダ50は、バイアル950を、デバイスホルダ20に保持されたデバイス800の第2コネクタ820の軸と同軸になるように保持する。バイアルホルダ50は、第2コネクタ820の軸の方向(即ち、ステージ10の第1方向D1、または、バイアル950の軸の方向)に沿って直線的に移動する。これは、作業者がバイアル950を第2コネクタ820に対して着脱しなくてよいので、薬液の調製作業において作業者の負担を軽減するのに有利である。
本実施形態では、バイアルホルダ50は、ステージ10と一体的に、ステージ10の回動軸回りに回動する。本発明では、上記実施形態とは異なり、バイアルホルダ50及びその直線駆動機構56を、ステージ10と一体的に回動しないように、例えば支柱15が設けられた基板(図示せず)に設けることも可能である。しかしながら、この場合、バイアルホルダ50及び直線駆動機構56を、ステージ10やステージ10と一体的に回動する構造物(例えばシリンジステージ35)に衝突しないように、これらから離間して配置する必要がある。また、バイアル950を第2コネクタ820に対して接続及び分離するためには、ステージ10を所定の回動位置で行う必要がある。バイアルホルダ50及び直線駆動機構56がステージ10と一体的に回動する本実施形態は、調製装置1の小型化に有利であり、また、ステージ10の回動位置に関わらず第2コネクタ820に対してバイアル950を接続及び分離することを可能にする。
バイアルホルダ50を直線的に移動させる直線駆動機構56は、ステージ10のデバイスホルダ20が設けられた側(載置面10a側)とは反対側に配置されている。これは、直線駆動機構56を設けたことによる調製装置1の大型化を回避して、調製装置1を小型化するのに有利である。
なお、本実施形態とは異なり、調製装置1がバイアルホルダ50を備えていなくてもよい。この場合、作業者または移載装置(例えばロボット)が、バイアル950を第2コネクタ820に対して着脱することができる。
本実施形態の調製装置1は、コック840を回転させるためのコック操作部40を備える。コック操作部40は、デバイス800内の流路を、第1状態と第2状態との間で切り替える。コック操作部40は、作業者がコック840を回転することを不要にするので、薬液の調製作業において作業者の負担を軽減するのに有利である。
なお、本実施形態とは異なり、調製装置1がコック操作部40を備えていなくてもよい。この場合、作業者がコック840を回転させてデバイス800内の流路を第1状態と第2状態との間で切り替えてもよい。
本実施形態では、制御装置が、回動駆動装置17、プランジャ操作部33のプランジャ駆動機構34、コック操作部40の駆動機構42、バイアルホルダ50、直線駆動機構56を制御する。デバイス800を用いた薬液の調製に必要な工程の多くを自動的に行うように調製装置1を構成することが可能である。これば、薬液の調製作業において作業者の負担を更に軽減する。
但し、本発明の調製装置は、第1回動位置と第2回動位置とに回動可能なステージ10と、シリンジホルダ30のみで構成されていてもよい。この単純化した調製装置では、ステージ10の回動や、プランジャ985の挿抜、コック840の回転、第2コネクタ820に対するバイアル950の着脱は、作業者が行う。