JP7007711B2 - 複合部材 - Google Patents
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Description
たとえば、自動車に搭載されるモーターやバッテリーなどへの電気配線には、コネクタが使用されており、特に外装用コネクタでは、自動車下部から巻き上げた雨水がコネクタ内に浸入するのを防止するために、コネクタを構成する金属製部材と樹脂製部材の間にはシール材が使用されている。たとえば、特許文献1~2に開示された防水コネクタにおいては、シール材として、特許文献1ではホットメルト樹脂が使用され、特許文献2ではアクリル系粘着剤層を有する両面テープが使用されている。
本発明の課題は、複合部材に使用することができるシール材であって、様々な部材との密着性に優れるとともに、水や溶剤などに対するシール性に優れ、また耐ヒートサイクル性に優れたシール材を提供することを目的とする。
すなわち本発明の要旨は、下記の通りである。
(2)酸変性ポリオレフィン(A)が、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸共重合体を含有することを特徴とする(1)記載の複合部材。
(3)シール材が、さらに硬化剤(C)を含有することを特徴とする(1)または(2)記載の複合部材。
(4)少なくとも一つの部材が熱可塑性樹脂部材であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の複合部材。
(5)少なくとも一つの部材が金属製部材であることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の複合部材。
(6)上記(1)記載の複合部材を製造するための方法であって、酸変性ポリオレフィン(A)とポリウレタン(B)を含有するシール層が表面に形成された一次部材を金型内に挿入した後、金型内に熱可塑性樹脂を注入して、一次部材と熱可塑性樹脂製部材とをシール層を介して一体化することを特徴とする複合部材の製造方法。
本発明のシール材は、酸変性成分が1~10質量%である酸変性ポリオレフィン(A)とポリウレタン(B)とを含有する。本発明のシール材は、樹脂として酸変性ポリオレフィン(A)とポリウレタン(B)を含有することで、熱可塑性樹脂や金属などからなる部材との密着性を向上させることができる。
酸変性ポリオレフィン(A)における酸変性成分の含有量は、シール材からなるシール層と部材との密着性の点から、1~10質量%であることが必要であり、1~8質量%であることが好ましく、2~7質量%であることがより好ましい。
酸変性成分は、不飽和カルボン酸成分(A1)であることが好ましく、不飽和カルボン酸や、その無水物により導入される。不飽和カルボン酸成分(A1)としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。また、不飽和カルボン酸成分(A1)は、ポリオレフィン中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
酸変性ポリオレフィン(A)におけるオレフィン成分(A2)の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。酸変性ポリオレフィン(A)は、オレフィン成分(A2)の含有量が50質量%未満では、ポリオレフィン製部材に対する密着性や耐溶剤性等のポリオレフィン由来の特性が失われてしまう。
(メタ)アクリル酸エステル(A3)成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1~30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1~20のアルコールとのエステル化物が好ましい。そのような化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。この中で、熱可塑性樹脂製部材との密着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがより好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸~」とは、「アクリル酸~またはメタクリル酸~」を意味する。
本発明のシール材を構成するポリウレタン(B)は、主鎖中にウレタン結合を含有する高分子であり、例えばポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応で得られるものが挙げられる。
シール材におけるオキサゾリン化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、2~15質量部であることがより好ましく、3~10質量部であることがさらに好ましく、3~5質量部であることが特に好ましい。オキサゾリン化合物の含有量が20質量部を超えると、耐溶剤性、金属製部材への密着性が低下する傾向がある。
シール材におけるエポキシ化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、5~30質量部であることが好ましく、5~25質量部であることがより好ましく、7~20質量部であることがさらに好ましく、10~15質量部であることが特に好ましい。エポキシ化合物の含有量が30質量部を超えると、耐溶剤性、金属製部材への密着性が低下する傾向がある。
シール材におけるイソシアネート化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、0.5~5質量部であることが好ましく、0.6~4質量部であることがより好ましく、0.7~2質量部であることがさらに好ましい。イソシアネート化合物の含有量が5質量部を超えると、シール層形成用コート液は、液安定性が低下する傾向がある。
シール材におけるヒドラジド化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、0.2~5質量部であることが好ましく、0.3~4質量部であることがより好ましく、0.5~2質量部であることがさらに好ましい。ヒドラジド化合物の含有量が5質量部を超えると、金属製部材や熱可塑性樹脂製部材との密着性が低下する傾向がある。
粘着付与剤としては、ロジン類、ロジン誘導体、テルペン系樹脂、ブタジエン樹脂等が挙げられ、これらの1種を単独で、または2種以上の混合物を使用することができる。ロジン類としてはガムロジン、ウッドロジンもしくはトール油ロジンの原料ロジンまたは前記原料ロジンを不均化もしくは水素添加処理した安定化ロジンや重合ロジン等が挙げられる。また、ロジン誘導体としてはロジンエステル類、ロジンフェノール類が挙げられる。ロジンエステル類とは、前記ロジン類と多価アルコールとをエステル化反応させて得られたロジンエステル、原料ロジンを部分的にフマル化もしくはマレイン化し、次いでエステル化して得られる部分マレイン化もしくは部分フマル化ロジンの多価アルコールエステル、原料ロジンを部分的にフマル化もしくはマレイン化させた後、不均化し、次いでエステル化して得られる部分マレイン化もしくは部分フマル化不均化ロジンの多価アルコールエステル等をいう。また、ロジンフェノール類とは、ロジン類にフェノール類を付加させ熱重合したもの、または次いでエステル化したものをいう。なお、前記エステル化に用いられる多価アルコールは、特に制限はされず、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ペンタエリスリトール等の各種公知のものを例示できる。また、テルペン系樹脂としては、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂や、α-ピネン、β-ピネン等のテルペン類とスチレン等の芳香族モノマーを共重合させた芳香族変性のテルペン系樹脂およびこれらの水素化物等を例示できる。ブタジエン樹脂としては、1,2-ブタジエン、1,3-ブタジエンまたはこれらの共重合体などが例示できる。これら粘着付与剤の中でも、部材への良好な密着性を発現させることから、ロジンエステル類またはテルペン系樹脂を用いることが好ましい。
粘着付与剤の含有量は、酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、5~50質量部が好ましく、10~45質量部がより好ましく、20~40質量部がさらに好ましい。
ブロッキング防止剤としては、例えば、ステアリン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、アラギジン酸アミド、ベヘン酸アミド等の飽和脂肪酸モノアミド類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド等の不飽和脂肪酸モノアミド類、N-ラウリルラウリン酸アミド、N-パルミチルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-オレイルオレイン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリル12ヒドロキシステアリン酸アミド、N-オレイル12ヒドロキシステアリン酸アミド等の置換アミド類等やメチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N-ジステアリルアジピン酸アミド、N-ジステアリルセバシン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、m-キシリレンビスステアリン酸アミド等のビスアミド類、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド等のメチロールアミド類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ライスワックス、カルナバワックス等のワックス類などが挙げられる。
ブロッキング防止剤の含有量は、酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して0.1~50質量部であることが好ましく、耐ブロッキング性と密着性との点から、0.1~30質量部であることがより好ましく、0.1~20質量部であることがさらに好ましく、0.1~10質量部であることが特に好ましく、1~5質量部であることが最も好ましい。
他の重合体としては、特に限定されず、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、スチレン-マレイン酸樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらは、2種以上を混合して使用してもよい。
前記コート液は、酸変性ポリオレフィン(A)とポリウレタン(B)が、溶媒に溶解および/または分散したものであり、その溶解および/または分散方法は特に限定されない。酸変性ポリオレフィン(A)とポリウレタン(B)を、一括して溶媒に溶解および/または分散してもよく、ゲル化を防止するために、個別に溶媒に溶解および/または分散し、その後それらを常温で混合してもよい。個別に溶媒に溶解および/または分散する場合の溶媒はかならずしも同一の溶媒を用いる必要はないが、互いの溶解性が良好な溶媒同士を選定することが液安定性の点から好ましい。
なお、コート液における樹脂成分の含有量は、シール層の形成条件、目的とするシール層の厚さや性能等により適宜調整され、特に限定されず、コート液の粘性を適度に保ち、かつ良好なシール層形成能を発現させる点で、1~50質量%が好ましく、3~50質量%がより好ましく、5~45質量%がさらに好ましく、5~40質量%が特に好ましい。
本発明の複合部材は、複数の部材が本発明のシール材からなるシール層を介して一体化されたものである。
本発明の複合部材は、2種類以上の部材の隙間を本発明のシール材でシールされたものであって、部材の形状や材質に限定されるものではない。
また、樹脂材料は、ガラス繊維、炭素繊維、ビニロン繊維、タルクなどの樹脂強度を向上させる繊維や無機粒子などを5~50質量%程度含有してもよく、また難燃剤、紫外線吸収剤、架橋剤、帯電防止剤などを0.1~50質量%程度含有してもよい。
シール層が形成された部材(a)に、部材(b)を貼り合わせる方法としては、例えば、シール層が形成された一次部材(a)を金型内に挿入し、部材(b)を構成する熱可塑性樹脂により包埋する方法が挙げられる。成形条件は特に限定されないが、金型温度50~100℃、樹脂温度150~300℃が好ましい。また、シール層が形成された一次部材(a)のシール層面に部材(b)を重ねて熱処理する方法が挙げられる。
本発明の複合部材は、予め部材(a)表面にシール層を形成し、他の部材(b)を貼り合せる方法以外では、たとえば、部材(a)と部材(b)の間にシール層を設け、熱処理により部材(a)と部材(b)を共にシール層を介して貼り合せた複合部材を作製する方法も挙げられる。
1.酸変性ポリオレフィンの特性
(1)構成
1H-NMR分析(バリアン社製、300MHz)より求めた。オルトジクロロベンゼン(d4)を溶媒とし、120℃で測定した。
(1)固形分濃度
水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
(1)メルトフローレート(MFR)
シール層形成用コート液を100℃、2時間の条件で乾燥し、得られたシール材を、JIS K7210記載(190℃、2160g荷重)の方法で測定した。
表2、3記載の樹脂製または金属製の部材(5cm×10cm)全面に、コート液を乾燥後の厚みが表2に記載の厚みになるようにメイヤーバーで塗布して、120℃で1分間乾燥させて、部材上にシール層を形成した。前記シール層に粘着テープ(ニチバン社製TF-12)を貼り付けた後、勢いよくテープを剥離した。シール層の、部材からの剥がれ状態を目視で観察して、下記の基準で、密着性を評価した。
○:全く剥がれがなかった。
△:一部に剥がれが生じた。
×:全て剥がれた。
2cm×5cm×2mm厚みの錫メッキ銅に、得られたコート液を乾燥後の厚みが表2に記載の厚みになるようにメイヤーバーで2cm×2cmの範囲に塗布した後、120℃で1分間乾燥させて、錫メッキ銅上にシール層を形成した。
錫メッキ銅上に形成したシール層にPBT(ポリプラスチック社製、ジュラネックス531HS)の2cm×5cm×2mm厚みの部材を120℃で貼り合せて、接着面積が2cm×2cmの、錫メッキ銅製部材とPBT部材を含む複合部材を作製した。
作製した複合部材を40℃のエンジンオイル(カストロール社製、GTX DC-TURBO 10W-30 SM/CF)に24時間浸漬し、取り出し後にエンジンオイルをアセトンで洗浄した。洗浄後の複合部材のせん断強度を、引張り試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)を用いて、引張り速度10mm/分の条件で測定し、下記の基準で、シール材の耐溶剤性を評価した。
また、PBT部材をNy(ユニチカ社製、ユニチカナイロン6 A1030GFL)部材に変更して同様にシール材の耐溶剤性を評価した。
◎:500N以上
○:300N以上、500N未満
△:50N以上、300N未満
×:50N未満
実施例、比較例で得られた複合部材(インサート成形品)を用いて、200kPaの圧力をかけることができる容器に、作製したインサート成形品と水を入れて、150kPaの圧力で4時間放置して、大気圧に戻してインサート成形品を取り出し、端子側以外の面については水分を拭き取った状態で図4の試験装置10に固定し、エアーリーク試験にて、20、50、100kPaの各圧力にて、シール層からの空気の漏れと水の漏れにより、下記の基準でシール性を評価した。実用的には、20kPa以上の圧力をかけても空気の漏れも水の漏れもないものである。
◎:100kPaの圧力でも空気も水も漏れない。
○:50kPaの圧力では空気も水も漏れないが、100kPaの圧力で空気か水のいずれかが漏れる。
△:20kPaの圧力では空気も水も漏れないが、50kPaの圧力で空気か水のいずれかが漏れる。
×:20kPaの圧力で空気か水のいずれかが漏れる。
作製したインサート成形品を、40℃のエンジンオイル(カストロール社製、GTX DC-TURBO 10W-30 SM/CF)に24時間浸漬し、取り出し後にエンジンオイルをアセトンで洗浄した。この成形品を用いた以外は、上記(4)シール性の評価方法と同じ方法により、耐溶剤試験後のシール性を評価した。
作製したインサート成形品を、冷熱衝撃装置(ESPEC社製TSA-73)を使用して、マイナス40℃(30分間保持)と140℃(30分間保持)を1サイクルとし、10サイクルのヒートサイクル試験を行い、室温まで戻した。この成形品を用いた以外は、上記(4)シール性の評価方法と同じ方法により、ヒートサイクル試験後のシール性を評価した。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリオレフィンA-1(住友化学工業社製、ボンダインHX-8290)、60.0gのイソプロパノール、2.2gのトリエチルアミン、および177.8gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E-1を得た。水性分散体の各種特性を表1に示した。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリオレフィンA-2(ヒュルスジャパン社製、ベストプラスト708)、45.0gのエチレングリコール-n-ブチルエーテル、6.9gのN,N-ジメチルエタノールアミンおよび188.1gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白黄色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E-2を得た。この水性分散体の各種特性を表1に示した。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリオレフィンA-3(ダウ・ケミカル社製、プリマコール5980I)、16.8gのトリエチルアミン、および223.2gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を130℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白色の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E-3を得た。この水性分散体の各種特性を表1に示した。
DSM社製、NeoRez R-600(固形分濃度32質量%、水分68質量%)
ポリエステル型ポリウレタン樹脂水性分散体U-2:
アデカ社製、アデカボンタイターHUX-380(固形分濃度37質量%、水分63質量%)
K-1:日本触媒社製、エポクロスWS-700(固形分濃度25質量%)
K-2:大塚化学社製、ADH(固形分濃度8質量%の水溶液)
(コート液の調製)
酸変性ポリオレフィン(E-1)の固形分100質量部に対して、ポリウレタン(U-1)の固形分が30質量部となるように、また硬化剤(K-1)の固形分が5質量部になるように、室温にてメカニカルスターラーで攪拌(100rpm)、混合し、コート液を得た。
(シール層の形成、複合部材(インサート成形品)の作製)
得られたコート液を、図1に示すように錫メッキ銅の端子1ならびに端子1に接続される電線2に塗布し、150℃、30秒で乾燥させて1μm厚みになるようにシール層3を形成した。端子を、形成したNy樹脂(ユニチカ社製、ユニチカナイロン6 A1030GFL)製部材4の差込口5にはめ込み、図2に示す一次成形品6を得た。
一次成形品6の所定箇所に前記同様にコート液を塗布して150℃、30秒で乾燥させて1μm厚みになるようにシール層7を形成した。そして、一次成形品6を金型内に配置し、PBT樹脂(ポリプラスチック社製、ジュラネックス531HS)を金型内に射出(インサート成形)し、図3に示す射出樹脂製部材8を有する複合部材9を作製した。また別の複合部材を作製した。つまり、射出樹脂をNy樹脂(ユニチカ社製、ユニチカナイロン6 A1030GFL)やPPS樹脂(ポリプラスチック社製、ジュラファイド1130A6 HD9100)に変更し、また端子1をアルミ製のものに変更して同様に複合部材を得た。
表2に示すように、酸変性ポリオレフィンの種類、ポリウレタンの種類や質量部、硬化剤の種類や質量部、シール層の厚み、乾燥条件を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行ってシール層を形成し、また複合部材(インサート成形品)を作製した。
比較例7では、ブチルゴム系両面テープ(寺岡製作所社製、718、厚み0.5mm)を使用し、部材と部材を両面テープで貼り合せて複合部材を得た。
比較例8では、PP系ホットメルト接着剤(3M社製、Scotch-Weld3797)を使用し、部材上にシール層を形成した。そして、実施例1の複合部材の作製と同様の方法で、複合部材を作製した。
比較例9では、2液ウレタン接着剤(トーヨーポリマー社製、ルビロンKA-10(主剤)/KB-35ME(硬化剤))を使用し、部材上にシール層を形成した。そして、実施例1の複合部材の作製と同様の方法で、複合部材を作製した。
一方、比較例1~3のシール材は、ポリウレタンの含有量が本発明で規定する量よりも少なかったため、密着性、シール性が劣っていた。
比較例4~6のシール材は、酸変性量が本発明の規定範囲を超えた酸変性ポリオレフィンをシール材に用いたため、耐溶剤性が劣っていた。
比較例7では、シール材がブチルゴム系の両面テープであるため、密着性は良好であったものの、耐溶剤性やシール性が不十分であった。
比較例8では、シール材がPP系のホットメルト接着剤であり、本発明で規定する酸変性ポリオレフィンとポリウレタンを含有するシール材組成ではないため、シール性が劣る結果となった。
比較例9では、シール材が2液ウレタン接着剤であるため、耐溶剤性に劣る結果であった。
2 電線
3 シール層
4 Ny製部材
5 差込口
6 一次成形品
7 シール層
8 射出樹脂製部材
9 複合部材
10 試験装置
11 空気
12 空気、水
Claims (6)
- 複数の部材が、シール材からなるシール層を介して一体化されてなる複合部材であって、シール材が、酸変性成分が1~10質量%である酸変性ポリオレフィン(A)100質量部とポリウレタン(B)1~40質量部とを含有することを特徴とする複合部材。
- 酸変性ポリオレフィン(A)が、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸共重合体を含有することを特徴とする請求項1記載の複合部材。
- シール材が、さらに硬化剤(C)を含有することを特徴とする請求項1または2記載の複合部材。
- 少なくとも一つの部材が熱可塑性樹脂製部材であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の複合部材。
- 少なくも一つの部材が金属製部材であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の複合部材。
- 請求項1記載の複合部材を製造するための方法であって、酸変性ポリオレフィン(A)とポリウレタン(B)を含有するシール層が表面に形成された一次部材を金型内に挿入した後、金型内に熱可塑性樹脂を注入して、一次部材と熱可塑性樹脂製部材とをシール層を介して一体化することを特徴とする複合部材の製造方法。
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