この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1に、この発明の木造軸組建築物11における躯体の要部を断面図で示す。図1は軸材を有する位置で切断した断面図である。この木造軸組建築物11は、基礎12や床束を除く床、壁、梁など建物の構造を支える骨組みである躯体を構成するおおよそすべての部材をパネル13で構成している。すなわち、基礎12の上に所定のパネル13を順に固定すると、木造軸組建築物11が得られる構造である。躯体のすべてがパネル13のみで構成されるのが好ましい。
パネル13は、木造軸組を構成する軸材Sと、軸材Sより薄い枠材Tを組んで構成される。このパネル13には、床面を構成する床パネル13Aと、壁面を構成する外壁パネル13B及び間仕切りパネル13Cと、壁面の上に小屋組を構成する小屋パネル13Dと、屋根面を構成する屋根パネル13Eという、適用部位に応じた種類がある。
軸材Sとは、軸組を構成する柱や横架材など荷重を支持し伝達する線部材の太さと同等の太さの材であり、換言すれば線部材の横断面に相応する横断面を有した材であり、角材で構成される。「相応する横断面」とは、横断面の形状と大きさが同じもの、同じようなもの、又はそれ以上の大きさのものである他、横断面のたてよこのいずれか一方の値が同じであって、線部材と同様の荷重支持能力を有するものであることをいう。
軸材Sよりも薄い枠材Tは、横断面形状が長方形であり、その長辺が軸材Sの横断面形状の対応する辺と同一長さであり、短辺がそれより短い。
適用部位ごとのパネル13は、それぞれ複数のパネル13で構成されており、形態に応じて3種類のパネルから選択して構成される。3種類のパネルは、図2、図3に模式的に示したように、軸パネルPaと、枠パネルPbと、軸枠パネルPcである。
軸パネルPaは、パネル同士の接合辺13sに軸材Sのみを有するものである。つまり軸パネルPaは、たとえば接合辺13sが図2に示したように2辺あれば、それら2辺の接合辺13sが共に軸材Sで構成されている。接合辺13sが1辺であればその辺が軸材Sで構成されている。
枠パネルPbは、接合辺13sに枠材Tのみを有するものである。つまり枠パネルPbは、たとえば接合辺13sが図2に示したように2辺あれば、それら2辺の接合辺13sが共に枠材Tで構成されている。接合辺13sが1辺であればその辺が枠材Tで構成されている。
軸枠パネルPcは、接合辺13sのうちの少なくとも一つに軸材Sを、他に枠材Tを有するものである。つまり軸枠パネルPcは、たとえば接合辺13sが図2に示したように2辺あれば、それら2辺の接合辺13sのうち一辺が軸材Sで、他の一辺が枠材Tで構成されている。
同一適用部位のパネル同士の接合辺13sは、両側の辺に限定されるものではなく、例えば図3に示したように、パネル13の幅方向の中間部位も接合辺13sとなり得る。パネル13が構成すべき面が広い場合には、3辺又は4辺も接合辺13sとなる場合がある。
同一適用部位のパネル同士の接合辺13s以外の辺は、接合する対象に応じて、軸材Sで構成するか、枠材Tで構成するか、軸材Sの長手方向の端面で構成するか、その他の材で構成するかなど、適宜設定される。
また、床パネル13A、外壁パネル13B、間仕切りパネル13C、小屋パネル13D、屋根パネル13E同士の接合箇所、及びこれらパネルと他のパネルとの接合箇所には接合金物15が備えられる。
接合金物15のうち、外壁パネル13B、間仕切りパネル13C、小屋パネル13D、屋根パネル13Eに備えられる接合金物15はパネル13に内蔵される。また接合金物15が、結合のための締結ボルト51を有する雄型接合金物15x、又は雄型接合金物15xの締結ボルト51が螺合される雌ねじ52を有する雌型接合金物15yである。
前述のような形態に基づいて分けられる3種類のパネル(Pa,Pb,Pc)について、各適用部位のパネル、すなわち床パネル13A、外壁パネル13B、間仕切りパネル13C、小屋パネル13D、屋根パネル13Eごとに、接合金物15と共にその形態を具体的にみる。なお、基礎12は、形状を単純化して、図4に表したような平面視長方形の場合を例に説明する。この図4では、基礎12の周囲に位置を合わせて外壁パネル13Bと小屋パネル13Dを寝かせた状態をあらわしている。
床パネル13Aは、基礎12より上に一つの水平な平面を構成するもので、図5に示したように、平面視長方形の基礎12とおおよそ同じ長方形を長手方向に6分割した態様の6枚の床パネル13Aで構成される。すべての床パネル13Aは長方形である。
両端に配置される2枚の床パネル13Aを除く4枚の床パネル13Aは、床パネル同士の接合辺13sを2辺有し、これら2辺とも軸材Sで構成した2枚の軸パネルPaと、枠材Tで構成した2枚の枠パネルPbである。
すなわち、軸パネルPaからなる床パネル13Aは、断面正方形の角材からなる2本の軸材Sを、間隔をあけて平行に配設するとともに、これらの間に軸材Sと直交する方向に延びる複数の連結材31が配設されている。連結材31は、軸材Sに相応する横断面の角材で構成される。軸材Sは、土台の間にかけ渡される大引となり、連結材31は大引間に横架される小引となる。
軸材Sと連結材31の上面には、パネル13の面を塞ぐ面材として構造用合板等からなる面材32が張り付けられている。面材32は、軸材Sの太さの半分までを覆う大きさである。
枠パネルPbからなる床パネル13Aは、軸材Sに相応する横断面の角材で構成された複数の連結材31を、軸パネルPaからなる床パネル13Aと同様に間隔をあけて床パネル13Aの長手方向に沿って配設している。また、これら連結材31を挟み、また連結材31に挟まれる、枠材Tからなる基本的に四角い複数の枠体33を設けている。連結材31は大引間に横架される小引となる。この例の床パネル13Aは、連結材31を3本備え、枠体を4個備えている。
連結材31と枠体33の上面には、構造用合板等からなる面材32が張り付けられている。面材32は、枠体33の端から外側に、軸材Sの太さの半分の長さの張り出し部32aを有している。
両端に配される2枚の床パネル13Aのうち、軸パネルPaかなる床パネル13Aに隣接する床パネル13Aは枠パネルPbであり、前述した枠パネルPbと同様に連結材31と枠体33を有している。このため接合辺13sを含む全周に枠材Tが備えられている。また、この連結材31は土台と大引きとの間に横架される小引となる。
上面に張り付けられる面材32は、接合辺13sにおいて軸材Sの太さの半分の長さの張り出し部32aを有している。
両端に配される2枚の床パネル13Aのうち、枠パネルPbかなる床パネル13Aに隣接する床パネル13Aは軸パネルPaであり、前述した軸パネルPaと同様に軸材Sと連結材31を有している。このため接合辺13sは軸材Sで構成されることになるが、接合辺13sの反対側の辺には、連結材31の長手方向の端面が表れることになる。この連結材31は土台と大引きとの間に横架される小引となる。
上面に張り付けられる面材32は、接合辺13sにおいては軸材Sの太さの半分までを覆う大きさである。
図示は省略するが、床パネル13Aの厚み内、すなわち軸材Sや連結材31を有する空間や枠体33で囲まれた空間には、断熱材が備えられ、上面の面材32とは反対側の下面にも構造用合板等からなる面材が張り付けられている。
床パネル13Aの接合金物15は、図6に示したように束金物17の一部として構成されており、軸パネルPaとしての床パネル13Aに固定されている。束金物17は基礎12の内部で大引を支えるものであって、設置面12aに置かれる基台部71と、基台部71に立設された支持部72と、支持部72の上で大引、つまりこの例では床パネル13Aの軸材Sを受ける受け部73を有している。受け部73が接合金物15として機能する。
基台部71は全周方向での角調節可能に構成されており、支持部72は丸棒状に形成されて基台部71上で相対回転可能である。支持部72の外周面における下方から上端にかけての部分には雄ねじ72aが形成されている。
受け部73は、図7にも示したように軸材Sを受ける中間部73aから、軸材Sの長手方向と直交する方向に向けて突出して連結材31を受ける突出部73bが形成されている。受け部73の中間部73aと突出部73bの間には軸材Sを挟む起立壁73cが設けられている。中間部73aの中央には円筒軸部74が下方に突設され、円筒軸部74の内周面には支持部72の雄ねじ72aに螺合する雌ねじ74aが形成されている。
軸材Sには上下方向に貫通し支持部72を通す貫通穴81を有し、貫通穴81より上方には貫通穴81から突出する支持部72に螺合した2個のナット75を納める座彫り部82が形成されている。
また軸材S内には突出部73bが形成される方向に延びる円筒形状の埋め込みナット76が設けられる。埋め込みナット76の長さは軸材Sの太さに対応しており、長手方向の中間位置には貫通穴76aを有して、束金物17の支持部72を挿通させている。埋め込みナット76の両端部には、起立壁73cの外側から挿入されるボルト77が螺合する。
突出部73bの中央には貫通穴73dが設けられ、その下にはナット78が備えられている。このナット78には、突出部73bに載置された連結材31に上から挿入した締結ボルト79が螺合する。
軸パネルPaからなる床パネル13Aのうち、軸材Sの長手方向の端部と連結材31の長手方向の端部には、図7に示したように中央において上下に貫通する貫通穴83と、端面において上下に延びる縦溝部84が形成されている。枠パネルPbからなる床パネル13Aの連結材31における長手方向の端部についても同様に、貫通穴83と縦溝部84が形成されている。貫通穴83は軸材Sや連結材31を固定するためのボルト79を挿通するためのものであり、縦溝部84は固定相手方にあるボルト77の頭部との干渉を防ぐためものである。
外壁パネル13Bは、木造軸組建築物11の周りを取り囲む4つの垂直面を構成するもので、図8に示したような3種類のパネルで構成される。また、すべての外壁パネル13Bは縦長の長方形である。
すなわち、軸パネルPaからなる外壁パネル13Bは、図8の(a)に示したように、外壁パネル13B同士の接合辺13sである左右両側に軸材Sが配設されている。外壁パネル13Bは基礎12の上に建てられ小屋パネル13Dを支持するので、下端には基礎12の上に固定される土台34が設けられ、上端には梁材35が設けられている。これら土台34と梁材35は、軸材Sに相応する横断面の角材で構成される。
土台34の内側面には、床パネル13Aの面材32を受ける角材からなる受け材34aが図8の(b)にも示したように適宜形成されている。
梁部の剛性を高めるため梁材35の下方に副梁36が間隔を隔てて平行に設けられ、梁材35と副梁36との間には縦に延びる束材37がかけ渡されている。副梁36と束材37は、軸材Sに相応する横断面の角材で構成される。また、梁材35と副梁36と束材37で挟まれる部分には空間を塞ぐように面材38が設けられている。面材38構造用合板等の板材で構成され、梁材35等の厚み方向の中間に位置して、面材38の外周部は軸材Sよりも細い角材からなる挟持材38aで内外に挟み込まれている。挟持材38aと梁材35等は面一である。なお、束材37は外壁パネル13Bの幅が小さい場合には省略できる。
副梁36より下には、枠材Tが適宜設けられるとともに、必要な開口が形成され、少なくとも外側面には、図8の(b)に示したように、面を塞ぐ面材39が張り付けられている。面材39も構造用合板等の板材で構成される。
図示は省略するが、外壁パネル13Bの厚み内、すなわち軸材Sや枠材Tで囲まれた空間には、断熱材が備えられ、外側面の面材39とは反対側の内側面にも構造用合板等からなる面材が張り付けられてもよい。面材39を張った場合、面材39における雄型接合金物15xなどの接合金物15における締結のための操作を行う部位には切り欠きが形成される。
枠パネルPbからなる外壁パネル13Bは、図8の(c)に示したように、外壁パネル13B同士の接合辺13sである左右両側に枠材Tが配設されている。下端の土台34、上端の梁材35及び面材39等が備えられるのは、軸パネルPaからなる外壁パネル13Bの場合と同じである。
軸枠パネルPcからなる外壁パネル13Bは、図8の(d)に示したように、外壁パネル13B同士の接合辺13sである左右両側のうちの一方に軸材Sが、他方に枠材Tが配設されている。下端の土台34、上端の梁材35及び面材39が備えられるのは、軸パネルPaからなる外壁パネル13Bの場合と同じである。
外壁パネル13Bの接合金物15には、他のパネル13の場合と同様、多くの種類がある。
接合金物15には前述のように同じパネル同士を接合するものと、他のパネルとの接合を行うものがあり、これらのうちには、両者を兼用するものがあり、またパネル自体の組立て機能も有するものがある。形態の上からは、接合金物15前述した雄型接合金物15xと雌型接合金物15yに分けることができる。
外壁パネル13Bの部位ごとに接合金物15の説明を行う。また、後の他のパネル13についての説明において、先に説明した接合金物15と同じ構成の接合金物15については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
接合辺13sの長手方向の両端には、接合金物15としてのコーナ接合金物15Aを用いる(図8参照)。このコーナ接合金物15Aは軸材Sからなる接合辺13sに備えられるものであり、雌型接合金物15yである。
図9はコーナ接合金物15Aの斜視図であり、この図に示すようにコーナ接合金物15Aは、直方体形状に形成された本体部53の6個の面のうち必要な面に、軸材S等の角材の端面から差し込まれる差し込み片54が形成されている。本体部53における差し込み片54が形成されない他の面に、ボルトが挿通する貫通穴55、又は締結ボルト51が螺合する雌ねじ52を有している。
具体的には、本体部53は中空であり、縦方向に延びる4つの角部が切り欠かれている。角部の切欠き幅は、貫通穴55の上に入れたナットを回転できる大きさである。
差し込み片54は角材内に収まる長方形板状であり、複数の貫通穴54aが形成されている。これらの貫通穴54aには、角材から差し込まれたドリフトピン56が挿入される。このような差し込み片54は、本体部53の上面と、これに連なる一つの縦面に形成される。
本体部53における差し込み片54が備えられた上面とは反対側の下面の中央に、前述した貫通穴55が形成されている。この貫通穴55は、コーナ接合金物15Aが外壁パネル13Bの下端に設けられる場合、基礎12に設けられたアンカーボルト12b(図1、図4参照)が挿通される部分であり、アンカーボルト12bに螺合するナットによって基礎12に締結される。コーナ接合金物15Aが外壁パネル13Bの上端に設けられる場合には他のボルトが挿通される。
本体部53における差し込み片54が備えられた縦面の反対側の面と、これと隣り合う2面の中央に前述の雌ねじ52が形成され、この雌ねじ52は各面の貫通穴の裏側にナットが固定されることによって形成される。
このような構成のコーナ接合金物15Aでは、接合辺13sを構成する軸材Sと土台34又は梁材35が結合一体化されるとともに、雌型接合金物15yとして、雌ねじ52が他の外壁パネル13Bや適用個所が異なる他のパネル13との接合に利用される。また雌型接合金物15yであるコーナ接合金物15Aは外壁パネル13Bに対して全体が完全に埋設された状態となる。
枠材Tからなる接合辺13sの長手方向の両端には、接合金物15としての軸端接合金物15Bを用いる(図8参照)。この軸端接合金物15Bは雄型接合金物15xである。
図10は軸端接合金物15Bの斜視図であり、図11はその正面図である。図10には、向きを異にした2つの図、(a)と(b)を示している。
これらの図に示したように、軸端接合金物15Bは、直接には、接合辺13sを構成する枠材Tではなく、その枠材Tに結合する軸材Sに相応する横断面の角材(土台34、梁材35)の端部に固定されるものである。この軸端接合金物15Bは、コーナ接合金物15Aと同様に、中空箱状の本体部53と、本体部53から突設された差し込み片54を有している。
本体部53は、軸材Sの端面に対応する正方形の後面板57を有し、後面板57に差し込み片54が立設されている。差し込み片54は長方形板状であり、ドリフトピン56が挿入される複数の貫通穴54aを有している。
本体部53の後面板57の中央には貫通穴57aが形成され、差し込み片54の基部における貫通穴57aの近傍には、四角い切欠き54bが形成されている。この切欠き54bは締結ボルト51の存在を許容する部分である。
後面板57とは反対側の前面板58も正方形であり、その中央にも貫通穴58aが形成されている。
本体部53の後面板57と前面板58を除く4つの側面のうち、差し込み片54の面と平行な2面には操作窓部59が形成されている。操作窓部59は、締結ボルト51等を回転操作するための空間であり、前述した接合金物15の締結のための操作を行う部位である。
後面板57と前面板58の貫通穴57a,58aには、それらの間の距離よりも長い締結ボルト51が回転自在に保持される。締結ボルト51における後面板57と前面板58との間の部位には、締結ボルト51と一体で相対回転不可能なナット形状の回転入力部51aが形成されている。本体部53内の締結ボルト51における回転入力部51aよりも後面板57側の部位には、締結ボルト51に対して回転自在な2個のナット60,61が螺合されている。2個のナットのうち後面板側のナットは下ナット60であり、他のナットは上ナット61である。これら下ナット60と上ナット61は、一般的なナットで構成され、後面板57側に締め付けられたあと、いわゆるダブルナットとして機能する。
前述のように枠材Tではなくその背後に位置する軸材Sの端部に固定される軸端接合金物15Bは、締結ボルト51における前面板58から突出する部分が接合辺13sを構成する枠材Tの厚み内に位置している。締結ボルト51は回転して突出することにより、雌型接合金物15yに螺合する。常態では締結ボルト51が枠材T内に収まるので、雄型接合金物15xである軸端接合金物15Bは外壁パネル13Bに対して全体が完全に埋設されることになる。
図11に示した雌型接合金物15yは、前述した円筒状の埋め込みナット76(図6参照)と同じ構成であり、軸材Sの太さに対応した長さの円筒形であり、内周面に雌ねじ52が形成された円筒接合金物15Cである。また、円筒接合金物15Cの長手方向の中間部にはドリフトピンやボルトを挿通可能にする貫通穴62を有している。この円筒接合金物15Cは軸材Sに対して全体が完全に埋設されることになる。
接続方向が多く、前述した円筒接合金物15Cでは足りない部位では、図12に示したような円筒接合金物15Cを使用できる。すなわち、この円筒接合金物15Cは、貫通穴62に相当する部位に雌ねじ部62aを有しており、必要に応じて雌ねじ部62aに、雌ねじ52を有する追加型雌ねじ軸部材63を備えることができる。追加型雌ねじ軸部材63は、一端が閉じた略円筒形状であり、雌ねじ部62aに螺合する凸部63aと、締結ボルト51が螺合する雌ねじ52を有している。
前述した構成の軸端接合金物15Bは、土台34や梁材35における接合辺13sを構成する枠材T側の端に備えられて、枠パネルPbからなる外壁パネル13Bや軸枠パネルPcからなる外壁パネル13Bが構成される(図8(c)(d)参照)。このほか、副梁36の端に備えて、外壁パネル13Bの組立てや他の外壁パネル13Bとの接合にも利用される(図8(c)(d)参照)。
接合辺13sの長手方向の中間部には、接合金物15としての中間接合金物15Dを用いる(図8(c)参照)。この中間接合金物15Dは雄型接合金物15xである。
図13は中間接合金物15Dと、これと組みをなす円筒接合金物15Cの斜視図であり、この図に示すように中間接合金物15Dは、本体部53が中空の直方体形状であり、接合辺13sを構成する枠材Tの内側面に固定できるように構成されている。すなわち、本体部53における枠材Tに接する前面板58と、これとは反対側の後面板57は、枠材Tの側面に収まる大きさの長方形である。前面板58と後面板57の平面視形状は正方形であってもよい。
長方形をなす前面板58と後面板57の4辺のうち、長辺を有する部分に操作窓部59が形成され、短辺側に側壁53aが形成されている。
前面板58における側壁53aを有する側には、外方に突出する固定片53bが延設されている。固定片53bは前面板58と面一である。この固定片53bは、固定対象に対する固定のため、釘やねじなどの固着部材を挿入するための複数の貫通穴53cを有している。
前面板58と後面板57には締結ボルト51を挿通保持するための貫通穴58a,57aが形成される。締結ボルト51には、前述の軸端接合金物15Bと同様に、回転入力部51aが形成されるとともに下ナット60と上ナット61が保持されている。
枠材Tに固定された中間接合金物15Dは、締結ボルト51における前面板58から突出する部分は、接合辺13sを構成する枠材Tの厚み内に位置し、回転して突出することにより雌型接合金物15yに螺合する。
この雌型接合金物15yは、図13に示したとおり、前述の円筒接合金物15Cを利用できる。締結ボルト51が螺合する雌ねじを有するならばその他の構造の雌型接合金物15y、例えば図9に例示したコーナ接合金物15Aであってもよい。
接合辺13s以外の辺における長手方向の中間部には、雄型接合金物15xとして前述の中間接合金物15Dや雌型接合金物15yとして前述の円筒接合金物15Cが使用できる。
また、土台34の長手方向の中間部における大引や小引が接合される箇所、すなわち他のパネル、具体的には床パネル13Aとの接合箇所には、図14に示したような接合金物15としての受金物19が備えられる。この受金物19は前述した雄型接合金物15x又は雌型接合金物15yとは異なる種類の金具であり、外壁パネル13Bの土台34と床パネル13Aの大引又は小引との間の接合を行うものである。
受金物19は側面視略L字型に形成され縦に延びる縦片19aが外壁パネル13Bにおける土台34となる角材の縦面にボルト77で固定される。固定は、図15にも示したように土台34に内蔵された円筒状の埋め込みナット76を利用して行える。水平に延びる水平片19bは中央に貫通穴19cを有し、貫通穴19cの下にナット19dが保持されている。水平片19bの基部には、縦片19aよりも背面側に突出して土台の下面に係止する係止片19eが形成されている。
間仕切りパネル13Cは、外壁パネル13Bで囲まれた内部空間に、大小さまざまな垂直面を構成するもので、図16、図17に示したような3種類のパネルで構成される。また、間仕切りパネル13Cもすべて縦長の長方形に形成される。
すなわち、軸パネルPaからなる間仕切りパネル13Cは、図16、図17の(a)に示したように、外壁パネル13Bとの、又は間仕切りパネル13C同士の接合辺13s、あるいは他のパネルとは接合されない端となる左右両側に軸材Sが配設されている。間仕切りパネル13Cは床パネル13Aの上に建てられて小屋パネル13Dを支持するので、下端は、枠材Tからなる下枠40が設けられ、上端には、枠材Tからなる上枠41が設けられている。
図16の間仕切りパネル13Cは、上端部の剛性を高めるため梁材35の下方に副梁36が間隔を隔てて平行に設けられ、梁材35と副梁36との間には縦に束材37がかけ渡されている。梁材35と副梁36と束材37は、軸材Sに相応する横断面の角材で構成される。また、梁材35と副梁36と束材37で挟まれる部分には空間を塞ぐように面材38が設けられている。面材38は軸材Sの厚み方向の中間に位置して、面材38の外周部は軸材Sよりも細い角材からなる挟持材38aで内外に挟み込まれている。
図17の間仕切りパネル13Cは、剛性を高めるための構造を省略して、図16の間仕切りパネル13Cよりも高さを低くしたものである。
副梁36より下には、枠材Tが適宜設けられるとともに、必要な開口が形成され、必要に応じてパネル面には、図示を省略するが、面を塞ぐ面材が張り付けられる。
間仕切りパネル13Cには、床パネル13Aに直接固定されるものではなく、床パネル13Aの上方に横架されて間接的に固定されるタイプのものある。
間仕切りパネル13Cの厚み内、すなわち軸材Sや枠材Tで囲まれた空間には、断熱材が備えられてもよい。面材を張った場合、面材における雄型接合金物15xなどの接合金物15における締結のための操作を行う部位には切り欠きが形成される。
枠パネルPbからなる間仕切りパネル13Cは、図16、図17の(b)に示したように、外壁パネル13Bとの、又は間仕切りパネル13C同士の接合辺13sである左右両側に枠材Tが配設されている。下端の下枠40、上端の梁材35や上枠41、必要に応じて面材が備えられるのは、軸パネルPaからなる間仕切りパネル13Cの場合と同じである。
軸枠パネルPcからなる間仕切りパネル13Cは、図16、図17の(c)に示したように、外壁パネル13Bとの、又は間仕切りパネル13C同士の接合辺13sである左右両側のうちの一方に軸材Sが、他方に枠材Tが配設されている。下端の下枠40、上端の梁材35や上枠41、必要に応じて面材が備えられるのは、軸パネルPaからなる間仕切りパネル13Cの場合と同じである。
間仕切りパネル13Cの接合金物15は、前述したコーナ接合金物15A(図9参照)と受金物19(図13参照)を用いない点以外は、基本的に外壁パネル13Bに使用された接合金物15と同じものが使用できる。特筆すべき点は、図17の(a),(c)に示したように、接合辺13sが軸材Sで構成される部分は、その軸材Sの上下両端に軸端接合金物15B(図10、図11参照)を固定することであり、このとき、締結ボルト51を上下方向に向ける。
図18に、図17に示したような構成の間仕切りパネル13Cの上に固定される梁パネル13Fを示す。
この梁パネル13Fも、長方形であり、躯体を構成する部材(パネル13)の一つである。梁パネル13Fは、前述の床パネル13Aや外壁パネル13B等と同様に、木造軸組を構成する軸材Sを用いて構成されており、上下に間隔をあけて平行に並設された軸材Sからなる梁材35及び副梁36を有している。上下の軸材Sで囲まれた空間、つまり梁材35と副梁36の間には面材38が固定されている。面材38は、外周端のうち上下の2辺が軸材Sに当接した状態で軸材Sの太さの中間位置に嵌められており、面材38の外周縁における表裏両面には、軸材Sより細い角材からなる挟持材38aで挟み付けられて固定される。
図18(a)の梁パネル13Fは、長さが短いので軸材Sと面材38で構成されるが、図18(b)の梁パネル13Fは、中間部に適宜間隔おきに上下の軸材Sを縦に連結する軸材からなる束材37を備えており、これに伴い面材38も複数備えられている。中間部に配設された束材37は、他の梁パネル13F等が接合される接合辺13sとなり得る。
梁パネル13Fに備えられる接合金物15には、前述した軸端接合金物15Bを使用できる。
このほか、図19に示したような軸端接合金物15Eを使用することも可能である。この軸端接合金物15Eは、前述した図10、図11の軸端接合金物15Bとは異なり、雌型接合金物15yである。
すなわち、本体部53は軸材Sの断面形状より細い長方形であり、軸材Sの端面と面一になる前面板58と、前面板58に対して平行で適宜の間隔を隔てて設けられる後面板57と、これらの間に一体化されたブロック状の雌ねじ部材64を有している。この本体部53には、後面板57側に、軸材Sに差し込まれる差し込み片54が形成されている。差し込み片54は前述の差し込み片54と同様にドリフトピン56を挿入する貫通穴54aを有している。この雌型接合金物15yである軸端接合金物15Eは軸材Sに対して全体が完全に埋設されることになる。
本体部53の雌ねじ部材64の雌ねじ52には、他のパネル13の軸材Sに外側面から挿入されるボルトや、他の接合金物15の締結ボルト51が螺合される。
軸端接合金物15Eのほか、図18に示したように、軸材Sの長手方向の必要箇所には、雌型接合金物15yとしての前述した円筒接合金物15Cが内蔵される。
図示は省略するが、パネル面を塞ぐ面材が必要に応じて張り付けられる。面材を張った場合、面材における雄型接合金物15xなどの接合金物15における締結のための操作を行う部位には切り欠きが形成される。
小屋パネル13Dは、外壁パネル13Bと間仕切りパネル13Cの上に立つ垂直面を構成するもので、小屋パネル13Dも、軸パネルPa、枠パネルPb、軸枠パネルPcの3種類のパネルから選択して構成される。
なお、この例では説明の簡素化のため、片流れ屋根を示すが、その他の形態の屋根であってもよい。
片流れ屋根であるため、小屋パネル13Dは桁側に位置する長方形の小屋パネル13Dと、妻側と平行の直角三角形の小屋パネル13Dが用いられる。いずれの小屋パネル13Dも複数の小屋パネル13Dを接合して構成するものとしてもよい。
図20は、長方形の小屋パネル13Dの正面図である。この小屋パネル13Dにおけるパネル同士の接合辺13sは、左右両端と中間部の一部であり、左右両側の接合辺13sの一方に軸材Sを、他方に枠材Tを有し、中間部の接合辺13sにはもちろん軸材Sを有している。つまり、図20に例示した小屋パネル13Dは軸枠パネルPcであり、小屋パネル13D同士の接合辺13sではなく、他のパネルとの接合辺となる下端には枠材Tからなる下枠42を、上端には軸材Sからなる上枠43を有している。下枠42と上枠43との間には、枠材Tと軸材Sが平行に適宜備えられる。
図示は省略するが、接合辺13sが左右両側のみであり、それらの接合辺13sを軸材Sで構成した場合は軸パネルPaであり、枠材Tで構成した場合は枠パネルPbとなる。
図21は、直角三角形の小屋パネル13Dの正面図である。この小屋パネル13Dにおけるパネル同士の接合辺13sは、一端において垂直に立つ辺である。中間部も接合辺13sになり得るが、この例では接合辺13sを一端のみとする。一端の接合辺13sに枠材Tを有しているので、図21に例示した小屋パネル13Dは枠パネルPbである。小屋パネル同士の接合辺13sではなく、他のパネルとの接合辺となる下端には枠材Tからなる下枠42を、傾斜する上端には枠材Tからなる上枠44を有している。下枠42と上枠44の間には、軸材Sと枠材Tが適宜縦横に備えられる。
図示は省略するが、接合辺13sが一端の垂直辺のみであり、その接合辺13sを軸材Sで構成した場合は軸パネルPaである。接合辺13sを一端の垂直辺のほかに中間部にも有する場合で、垂直辺を枠材Tで構成し中間部の接合辺13sを軸材Sで構成した場合は軸枠パネルPcとなる。
小屋パネル13Dの接合金物15には、前述した接合金物15を適宜使用できる。例えば、図20の右上に示したように枠材Tからなる接合辺13sの端部には、雄型接合金物15xの軸端接合金物15Bを内蔵することができる。また、図21の左に示したように枠材Tからなる接合辺13sの中間部に当接される軸材Sに、雄型接合金物15xの軸端接合金物15Bを内蔵することができる。さらに、図21の左に示したように、枠材Tかなる接合辺13sの中間部に雄型接合金物15xの中間接合金物15Dを備えることができる。
他のパネルとの接合を行うため、図20の左下に示したように軸材Sの下端には、雄型接合金物15xの軸端接合金物15Bが内蔵される。図21の下に示したように、雄型接合金物15xの中間接合金物15Dを下枠42に固定して他のパネルとの接合をはかることもできる。
また、小屋パネル13Dの構成のため、図21の中央部に示したように、枠材Tに固定した雄型接合金物15xの中間接合金物15Dを軸材Sの雌型接合金物15yである円筒接合金物15Cに結合する。図20の左上に示したように、雌型接合金物15yの軸端接合金物15Eに軸材Sの外側から締結ボルト51を結合することもできる。
図示は省略するが、パネル面を塞ぐ面材が必要に応じて張り付けられる。小屋パネル13Dの両面に面材を張り付けると、界壁パネルとすることができる。面材を張った場合、面材における雄型接合金物15xなどの接合金物15における締結のための操作を行う部位には切り欠きが形成される。
屋根パネル13Eは、小屋パネル13Dの上で一つの傾斜した平面を構成するもので、軸パネルPa、枠パネルPb、軸枠パネルPcの3種類のパネルから選択して構成される。
図22は、接合されて一つの面を形成した屋根パネル13Eの正面図であり、図23は各屋根パネル13Eを分離した状態の正面図である。
これらの図に示したように屋根パネル13Eは長方形に形成されており、長辺を、屋根パネル13E同士を接合する接合辺13sとしている。両端に位置する屋根パネル13Eは接合辺13sが一つであり、それらの内側に位置する屋根パネル13Eは左右の2辺が接合辺13sである。
中間側に位置する一つの屋根パネル13Eは、左右の接合辺13sを軸材Sで構成した軸パネルPaであり、この軸パネルPaとしての屋根パネル13Eの両側には、軸枠パネルPcとしての屋根パネル13Eが配置される。このため、両端に位置する屋根パネル13Eはいずれも枠パネルPbとしての屋根パネル13Eが配置されることになる。
各屋根パネル13Eの接合辺13s以外の部分には、軸材Sに相応する横断面の角材からなる支持材45と、枠材Tに相応する横断面の角材からなる支持材46が縦横に組まれている。特に軸材Sに相応する横断面の角材は、接合辺13sと直角に備えられる。
屋根パネル13Eの接合金物15には、前述した接合金物15を適宜使用できる。例えば、図23に示したように、枠材Tからなる接合辺13sに組まれる軸材Sに相応する横断面の角材の端部に、前述した雄型接合金物15xである軸端接合金物15Bを内蔵する。一方、この部分と接合される軸材Sからなる接合辺13sに組まれる軸材Sに相応する横断面の角材の端部にも同様に、前述した雄型接合金物15xである軸端接合金物15Bを内蔵する。この部分の軸材Sからなる接合辺13sには、雌型接合金物15yとしての円筒接合金物15Cを埋設して軸端接合金物15Bの締結ボルト51を結合する。互いに接合される屋根パネル13E同士は、軸端接合金物15Bの締結ボルト51を接合対象の接合辺13sに埋設された円筒接合金物15Cに結合することで接合できる。
図示は省略するが、面を塞ぐ面材が必要に応じて張り付けられる。面材を張った場合、面材における雄型接合金物15xなどの接合金物15における締結のための操作を行う部位には切り欠きが形成される。
以上のように構成された接合金物15付きの各パネル13は、次のようにして順に固定されて木造軸組建築物11が構成される。すなわち、まず外壁パネル13Bを基礎12の上に建てるとともに、隣接する外壁パネル13B同士を、それらの軸材Sと枠材Tを内蔵された接合金物15で相互に接合して固定する。この外壁パネル13Bの固定を行いつつ、外壁パネル13Bで囲まれる内側に床パネル13Aを設置し、隣接する床パネル13A同士は、それらの軸材Sと枠材Tを相互に接合して固定する。
固定された床パネル13Aの上には、間仕切りパネル13Cが建てられるとともに、隣接する間仕切りパネル13C同士、また間仕切りパネル13Cと外壁パネル13Bは、それらの軸材Sと枠材Tを相互に接合して固定する。間仕切りパネル13Cの固定を外壁パネル13Bの固定と平行して行ってもよい。
立設された外壁パネル13B及び間仕切りパネル13Cの上に小屋パネル13Dを建てて、隣接する小屋パネル13D同士はそれらの軸材Sと枠材Tを相互に接合して固定する。
最後に、小屋パネル13Dの上に屋根パネル13Eを設置し、隣接する屋根パネル13E同士はそれらの軸材Sと枠材Tを相互に接合して固定する。
具体的には、図24に示したように、基礎12の上に基礎パッキン(図示せず)を介して外壁パネル13Bを所定の位置に固定する。固定は、アンカーボルト12bに対して外壁パネル13Bのコーナ接合金物15Aの貫通穴55を挿嵌して、ナット(図示せず)で締め付ける。
隣接する外壁パネル13B同士は、前述のように接合金物15が内蔵され、突出しないで埋設されているので、外壁パネル13Bの固定は順番を問わずに上から降ろして行える。
床パネル13Aは、その大引や小引となる軸材S又は連結材31を外壁パネル13Bの土台34に固定して行う。このとき、前述した床パネル13Aにおいては、まず図6に示したように、大引となる軸材Sを有した軸パネルPaとしての床パネル13Aを束金物17で支持しながら固定する。このとき、束金物17の支持部72は回転可能であり雄ねじ72aを有しており、支持部72の回転により受け部73が上下動可能である。支持部72の回転はその上端部に備えたナット75で行える。このため、大引、つまり床パネル13Aの高さ調節は、床パネル13Aの上からでも行える。
床パネル13Aの大引となる軸材Sや小引となる連結材31の端部は、図15に示したように、外壁パネル13Bの内側に上から降ろして、受金物19の上に載置して、ボルト79で締結する。
軸パネルPaとしての床パネル13Aを固定した後、枠パネルPbとしての床パネル13Aの連結材31を図15に示したように外壁パネル13Bの土台34に固定する。
このように、床パネル13Aは大引と共に上から固定でき、高さ調節も上からできることと相まって、作業性がきわめて良い。
図25に、固定された床パネル13Aの平面図を示す。この図と図4に示したように、外壁パネル13Bの軸材Sを有する部位に大引が固定され、大引間や大引と土台34との間には小引が固定されている。特に床パネル13Aの大引となる軸材は外壁パネル13Bの軸材Sと対応させている。このため、基礎12のアンカーボルト12bに直結された外壁パネル13Bの土台34と床パネル13Aの一体性は高い。
つづいて、図26に示したように間仕切りパネル13Cを固定する。間仕切りパネル13Cのうち、梁材35と副梁36の高剛性構造を有しない間仕切りパネル13Cの上には、別途に梁パネル13Fを固定する。
図27に示したように、間仕切りパネル13Cの軸材Sには雄型接合金物15xや雌型接合金物15yが内蔵されている。これら接合金物15は、接合対象の間仕切りパネル13Cや外壁パネル13B、梁パネル13Fの軸材Sに内蔵された雌型接合金物15y又は雄型接合金物15xと締結ボルト51で結合される。
このように各パネル13の軸材Sと枠材Tが内蔵された接合金物15によって互いに接合される。
外壁パネル13Bと間仕切りパネル13Cの上には、図28に示したように小屋パネル13Dが固定される。長方形の小屋パネル13Dの軸材Sは、外壁パネル13Bの軸材Sと直線状に並べて固定される。同様に、直角三角形の小屋パネル13Dも、外壁パネル13Bや梁パネル13Fの上に対応する軸材S同士を直線状に並べて固定されるとともに、長方形の小屋パネル13Dに対しても固定される。図28中の矢印は、小屋パネル13Dの外壁パネル13Bと間仕切りパネル13Cに対する固定箇所を示している。
このようにして小屋パネル13Dが固定されると、図29に示したように外壁パネル13Bと間仕切りパネル13Cの軸材Sの上に、小屋パネル13Dの軸材Sが直線状に並んで一体となる。この上に、仮想線で示したように屋根パネル13Eが固定される。このとき、屋根パネル13Eの軸材Sを小屋パネル13Dの軸材Sと対応させる。
図30に、小屋パネル13Dと屋根パネル13Eの接合部分を示す。小屋パネル13Dと屋根パネル13Eの軸材Sには雄型接合金物15xや雌型接合金物15yが内蔵されている。これら接合金物15は、接合対象である別の小屋パネル13Dや屋根パネル13E、外壁パネル13B、梁パネル13Fの軸材Sに内蔵された雌型接合金物15y又は雄型接合金物15xに対して締結ボルト51で結合される。
屋根パネル13Eの勾配下においては、小屋パネル13Dに対して固定するのではなく、外壁パネル13Bの軸材Sに対して固定する。
このようにして各パネル13が固定されて構築される木造軸組建築物11では、図1に示したように外壁パネル13Bと間仕切りパネル13Cの軸材Sは小屋パネル13Dと屋根パネル13Eの軸材Sや床パネル13Aの軸材とひとつながりになる。
以上のように各部のパネル13同士は接合辺の軸材と枠材が互いに接合して一つの平面や立体面を構成し、雄型接合金物15xと雌型接合金物15yという一定のタイプの接合金物15で接合可能な、画一的に接合が行える構成である。このため熟練工でなくとも施工が行える。
しかも、すべてのパネル13には接合金物15が備えられているので、パネル13を組んで接合金物15による接合を行えばよく、施工は容易で施工性がよい。特に、施工時に吊り下げたりする必要のある主要なパネルに備えた接合金物15は、パネル13内に内蔵・埋設され、締結ボルト51が突出することもない。このため、パネルを用いた木造軸組建築物では、従来、枠の中にパネルを嵌め込むことが行われていたが、この発明では枠内に嵌め込むというような作業を不要にでき、単にパネルを並べるように固定することで構築できる。
そのうえ、すべてのパネル13は長方形、又はそれに準じた細長い形態であるので、横に長い幅広のパネルに比べて現場への搬入が容易であり、施工性の向上に資する。
また、接合金物15はパネル13に備えられており、それを利用して接合が行われるので、接合金物15を固定する段階から行う場合に比して、接合作業が容易になるうえに、作業員によらず均質な接合も行える。
さらに、パネル13の軸材Sは、パネル13同士の接合によって位置規制されながら接合金物15によって接合されるので、この点からも施工にばらつきが生じにくく、木造軸組建築物11の全体がまとまりのある躯体となり、強度も得られる。
躯体のすべてがパネル13のみで構成できるので、施工の単純化と簡素化の両立がはかれる。
パネルの少なくとも片面に、面を塞ぐ面材が固定されると、作業性をより良くすることができる。
間仕切りパネル13Cの上に梁パネル13Fを固定する構造にするとともに、間仕切りパネル13Cと梁パネル13Fを別個に設計すると、より高強度の躯体を得られる。すなわち、間仕切りパネル13Cの配置とは別に、外壁パネル13Bの内側の空間強度を持たせるように梁パネル13Fを設計すると、梁パネル13F部分を間仕切りパネル13Cと一体形成した場合に比べて、耐力を有する部分をバランスよく配置できる。
加えて、木造軸組建築物11はパネル13とこれに備えた接合金物15で構成でき、しかも接合金物15は締結ボルト51によって接合する構造であるので、締結ボルト51を緩めて分離できる。すなわち、構築した木造軸組建築物11を解体することができ、移動や再構築、パネルの再利用も可能である。特に、再利用に際しては、パネルとその接合を規格化でき画一化できる構成であるので、パネルを組み替えたり、交換したりして有用な再利用を実現できる。
以上の構成はこの発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
例えば、各種のパネル13A,13B,13C,13D,13Eは3種類のパネルPa,Pb,Pcのすべてではなく、1種類又は2種類のパネルのみで構成することもできる。