以下、本発明の一つの実施形態による非接触給電装置を、図を参照しつつ説明する。
最初に、本発明による非接触給電装置の理解を容易にするために、SPL方式による非接触給電装置による、定電圧出力動作について説明する。
図1は、SPL方式による非接触給電装置の等価回路図である。この等価回路100において、送電側の共振回路の送信コイルと受電側の共振回路の受信コイルとが結合して、n:1の理想トランスを形成するものとする。Cr1は、送電側の共振回路における、送信コイルと直列接続されるコンデンサの静電容量である。Lr及びLmは、送電側の共振回路の漏れインダクタンス及び励磁インダクタンスである。なお、送電側の共振回路の送信コイルのインダクタンスLpは、(Lm+Lr)と等しく、送信コイルと受信コイル間の結合度をkとすると、Lr=(1-k)Lp、Lm=kLpである。また、Riは、送電側の巻線抵抗値であり、Risは、受電側の巻線抵抗値である。Cpは、受電側の共振回路における、受信コイルと並列接続されるコンデンサの静電容量である。Lopは、受信コイルと直列接続されるコイルのインダクタンスである。そしてRacは、負荷回路Roの交流等価抵抗値であり、Rac=(8/π2)×Roで表される。
等価回路100より、SPL方式の非接触給電装置のF行列Fspl(s, k, Rac)は、次式で表される。
ここでs=j2πfである。ただしfは、送電側の共振回路に供給される交流電力の周波数である。またkは送信コイルと受信コイル間の結合度である。
F行列の定義から、SPL方式の非接触給電装置の出力利得Gspl(s, k, Rac)は、次式で表される。
ここでVinは、送電側の共振回路に供給される交流電力の電圧(振幅)であり、Fspl(s,k,Rac)
0,0は、(1)式で表されたF行列における左上の要素を表す。
図2は、(2)式に従って算出される、SPL方式の非接触給電装置の出力電圧の周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。図2において、横軸は、周波数を表し、縦軸は、出力電圧を表す。グラフ201は、結合度k=0.15、負荷回路の交流等価抵抗値をRacとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ202は、結合度k=0.15、負荷回路の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。また、グラフ203は、結合度k=0.3、負荷回路の交流等価抵抗値をRacとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ204は、結合度k=0.3、負荷回路の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ205は、結合度k=0.6、負荷回路の交流等価抵抗値をRacとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ206は、結合度k=0.6、負荷回路の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。なお、このシミュレーションでは、Lp=174μH、Cr1=Cp=20nF、Lop=3Lp、Ri=Ris=0.3Ω、n=1、Vin=200V、Ro=200Ω(Rac≒162.1Ω)とした。
図2においてポイント211~216で示されるように、結合度kが一定となる条件下で負荷回路の交流等価抵抗値が変化しても出力電圧が略一定となる(すなわち、結合度kが一定の場合に定電圧出力となる)、周波数と出力電圧の組み合わせは6通りある。このうち、低周波数側のポイント211~213は、送電側の共振回路の共振周波数に近く、送電側の共振回路の共振に影響される。一方、高周波数側のポイント214~216は、送電側の共振回路の共振周波数よりもある程度高く、送電側の共振回路の共振による影響は少ない。一般に、SPL方式では、送電側の共振回路も共振させるので、非接触給電装置を定電圧出力動作させるためには、ポイント211~213に示されるような周波数を持つ交流電力を送電側の共振回路に供給することとなる。
図3は、SPL方式による非接触給電装置の入力インピーダンスZinspl(s,k,Rac)の周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。図3において、横軸は周波数を表し、縦軸は入力インピーダンスを表す。そしてグラフ301~304は、それぞれ、負荷回路の交流等価抵抗値をRacとし、結合度kを0.001、0.15、0.3、0.6としたときの、入力インピーダンスZinspl(s,k,Rac)の周波数特性を表す。なお、グラフ301~304に示される入力インピーダンスZinspl(s,k,Rac)の周波数特性は、次式で表される、入力インピーダンスZinspl(s,k,Rac)の算出式に、図2に示したシミュレーションで用いた各パラメータの値を入力することで算出した。
ここで、Fspl(s,k,Rac)
1,0は、(1)式で表されたF行列における左下の要素を表す。
図3に示されるように、送電側の共振回路の共振周波数に近い周波数領域では、結合度が低くなるほど、定電圧出力となる周波数において、入力インピーダンスが低くなる。例えば、ポイント211で示される、結合度k=0.15のときに定電圧出力動作可能な周波数f1では、結合度k=0.15での入力インピーダンスは10Ωよりも小さい値となる。これは、送電側の共振回路の共振により、その共振回路に流れる電流が増加して送信コイルに蓄えられるエネルギーが増加するためである。そのため、SPL方式では、結合度が低い場合に送電側の共振回路に交流電力を供給するとエネルギーの損失が増大してしまう。また、ポイント211~213から分かるように、結合度が上昇しても、必ずしも出力利得は向上しない。
一方、送電側の共振回路の共振周波数よりも高く、送電側の共振回路が共振せず、かつ、結合度が変化しても定電圧出力動作可能な周波数領域(例えば、図2におけるポイント214に相当する周波数f3からポイント216に相当する周波数f4の範囲)では、入力インピーダンスもある程度大きくなるため、エネルギーの損失は抑制される。しかし、この周波数領域は、送電側の共振回路が共振し、かつ、定電圧出力動作可能な周波数領域(周波数f2~f1)よりも広くなってしまう。
これは、受電側の共振回路の共振周波数が結合度に依存して変動してしまうためと考えられる。
そこで、本発明の実施形態による非接触給電装置は、送信コイルが共振しない周波数を持つ交流電力を送信コイルに供給する送電装置から、並列共振する共振回路と、共振回路が有する受信コイルと直列に接続されたコイルを有する受電装置へ給電する。そして受電装置の共振回路に、受信コイルと別個に、電力伝送時にも送信コイルと結合しないコイルを設ける。これにより、この非接触給電装置は、結合度の変動によるエネルギー損失の増加を抑制するとともに、送信コイルと受信コイル間の結合度の変化による受電装置の共振回路の共振周波数の変動を抑制することで、定電圧出力動作を実行する際の送信コイルに供給される交流電力の周波数の調整範囲を狭くする。
さらに、この非接触給電装置は、受電側の共振回路の出力電圧を測定し、その測定値が定電圧出力動作時の電圧の許容範囲に収まるように、送信コイルに供給される交流電力のスイッチング周波数及び電圧を制御することで、送信コイルと受信コイル間の結合度、あるいは負荷回路の抵抗値が変化しても、定電圧出力動作を維持する。
なお、本明細書において、定電圧出力動作とは、非接触給電装置に接続される負荷回路の仕様などに応じて定められる電圧の許容範囲(例えば、所定の電圧基準値の±10%以内)内で出力電圧が維持されるように、非接触給電装置が動作することをいう。
図4は、本発明の一つの実施形態に係る非接触給電装置の概略構成図である。図4に示されるように、非接触給電装置1は、送電装置2と、送電装置2から空間を介して非接触で電力伝送される受電装置3とを有する。送電装置2は、電力供給回路10と、送信コイル14と、コンデンサ15と、受信器16と、ゲートドライバ17-1、17-2と、制御回路18とを有する。一方、受電装置3は、受信コイル21、共振コンデンサ22及びコイル23を有する共振回路20と、コイル24と、整流平滑回路25と、負荷回路28と、電圧検出回路29と、定電圧判定回路30と、送信器33とを有する。
先ず、送電装置2について説明する。
電力供給回路10は、調節可能なスイッチング周波数、及び、調節可能な電圧を持つ交流電力を送信コイル14へ供給する。そのために、電力供給回路10は、電源11と、力率改善回路12と、4個のスイッチング素子13-1~13-4とを有する。
電源11は、所定の脈流電圧を持つ電力を供給する。そのために、電源11は、商用の交流電源と接続され、その交流電源から供給された交流電力を整流するための全波整流回路を有する。
力率改善回路12は、電源11から出力された電力の電圧を、制御回路18からの制御に応じた電圧に変換して出力する。そのために、力率改善回路12は、例えば、電源11の正極側端子から順に直列に接続されるコイルL及びダイオードDと、コイルLとダイオードDの間にドレイン端子が接続され、電源11の負極側端子にソース端子が接続されたnチャネル型のMOSFETであるスイッチング素子SWと、ダイオードDを挟んでスイッチング素子SWと並列に接続される平滑コンデンサCを有する。またスイッチング素子SWのゲート端子は、ゲートドライバ17-1と接続される。さらに、力率改善回路12は、電源11の正極側端子と負極側端子との間に直列に接続される二つの抵抗R1、R2を有する。この抵抗R1、R2は、ダイオードDと平滑コンデンサCとの間に、平滑コンデンサCと並列に接続される。そして抵抗R1と抵抗R2間の電圧が、ダイオードDから出力される電圧を表すものとして、制御回路18により測定される。
制御回路18により指示されたデューティ比にしたがって、かつ、ダイオードDから出力される電流波形の軌跡が、電源11から供給される電圧の軌跡と一致するように、ゲートドライバ17-1がスイッチング素子SWのオン/オフを制御することにより、力率改善回路12は、力率改善動作を実行する。そしてスイッチング素子SWがオンとなるデューティ比が高くなるほど、ダイオードDから出力される電圧は高くなる。
ダイオードDから出力される電圧は、平滑コンデンサCにより平滑化されて、4個のスイッチング素子13-1~13-4を介して送信コイル14へ供給される。
なお、力率改善回路12は、上記の構成に限られず、制御回路18からの制御によって出力電圧を調整可能な他の構成を有していてもよい。
4個のスイッチング素子13-1~13-4は、例えば、nチャネル型のMOSFETとすることができる。そして4個のスイッチング素子13-1~13-4のうち、スイッチング素子13-1とスイッチング素子13-2は、電源11の正極側端子と負極側端子との間に、力率改善回路12を介して直列に接続される。また本実施形態では、電源11の正極側に、スイッチング素子13-1が接続され、一方、電源11の負極側に、スイッチング素子13-2が接続される。そしてスイッチング素子13-1のドレイン端子は、力率改善回路12を介して電源11の正極側端子と接続され、スイッチング素子13-1のソース端子は、スイッチング素子13-2のドレイン端子と接続される。また、スイッチング素子13-2のソース端子は、力率改善回路12を介して電源11の負極側端子と接続される。さらに、スイッチング素子13-1のソース端子、及び、スイッチング素子13-2のドレイン端子は、コンデンサ15を介して送信コイル14の一端に接続され、スイッチング素子13-2のソース端子は、スイッチング素子13-4を介して送信コイル14の他端に接続される。
同様に、4個のスイッチング素子13-1~13-4のうち、スイッチング素子13-3とスイッチング素子13-4は、スイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-2と並列に、かつ、力率改善回路12を介して電源11の正極側端子と負極側端子との間に直列に接続される。また、電源11の正極側に、スイッチング素子13-3が接続され、一方、電源11の負極側に、スイッチング素子13-4が接続される。そしてスイッチング素子13-3のドレイン端子は、力率改善回路12を介して電源11の正極側端子と接続され、スイッチング素子13-3のソース端子は、スイッチング素子13-4のドレイン端子と接続される。また、スイッチング素子13-4のソース端子は、力率改善回路12を介して電源11の負極側端子と接続される。さらに、スイッチング素子13-3のソース端子、及び、スイッチング素子13-4のドレイン端子は、送信コイル14の他端に接続される。
また、各スイッチング素子13-1~13-4のゲート端子は、ゲートドライバ17-2を介して制御回路18と接続される。さらに、各スイッチング素子13-1~13-4のゲート端子は、オンとなる電圧が印加されたときにそのスイッチング素子がオンとなることを保証するために、それぞれ、抵抗を介して自素子のソース端子と接続されてもよい。そして各スイッチング素子13-1~13-4は、制御回路18からの制御信号にしたがって、調整可能なスイッチング周波数にてオン/オフが切り替えられる。本実施形態では、スイッチング素子13-1とスイッチング素子13-4とがオンとなっている間、スイッチング素子13-2とスイッチング素子13-3とがオフとなり、逆に、スイッチング素子13-2とスイッチング素子13-3とがオンとなっている間、スイッチング素子13-1とスイッチング素子13-4とがオフとなるように、スイッチング素子13-1とスイッチング素子13-4の組と、スイッチング素子13-2とスイッチング素子13-3との組について交互にオン/オフが切り替えられる。これにより、電源11から力率改善回路12を介して供給された直流電力は、各スイッチング素子のスイッチング周波数を持つ交流電力に変換されて、送信コイル14に供給される。
そして送信コイル14は、電力供給回路10から供給された交流電力を、空間を介して受電装置3の共振回路20へ伝送する。
コンデンサ15は、送信コイル14と直列に接続され、送信コイル14に流れる直流を遮断する。なお、スイッチング周波数が調整される周波数範囲において送信コイル14とコンデンサ15とが共振回路として動作しないよう、送信コイル14とコンデンサ15の共振周波数は、受電装置3の共振回路20の共振周波数及びスイッチング周波数が調整される周波数範囲の下限周波数よりも小さくなるように、コンデンサ15の静電容量が設定されることが好ましい。
受信器16は、受電装置3の送信器33から無線信号を受信する度に、その無線信号から、非接触給電装置1が定電圧出力動作しているか否かなどを表す判定情報を取り出して、制御回路18へ出力する。そのために、受信器16は、例えば、所定の無線通信規格に準じて無線信号を受信するアンテナと、その無線信号を復調する通信回路とを有する。なお、所定の無線通信規格は、例えば、ISO/IEC 15693、ZigBee(登録商標)、あるいはBluetooth(登録商標)とすることができる。
ゲートドライバ17-1は、制御回路18から、力率改善回路12のスイッチング素子SWのオン/オフを切り替える制御信号を受信し、その制御信号に応じて、スイッチング素子SWのゲート端子に印加する電圧を変化させる。すなわち、ゲートドライバ17-1は、スイッチング素子SWをオンにする制御信号を受け取ると、スイッチング素子SWのゲート端子に、スイッチング素子SWがオンとなる相対的に高い電圧を印加する。一方、ゲートドライバ17-1は、スイッチング素子SWをオフにする制御信号を受け取ると、スイッチング素子SWのゲート端子に、スイッチング素子SWがオフとなる、相対的に低い電圧を印加する。これにより、ゲートドライバ17-1は、制御回路18により指示されたタイミングで力率改善回路12のスイッチング素子SWのオン/オフを切り替える。
ゲートドライバ17-2は、制御回路18から、各スイッチング素子13-1~13-4のオン/オフを切り替える制御信号を受信し、その制御信号に応じて、各スイッチング素子13-1~13-4のゲート端子に印加する電圧を変化させる。すなわち、ゲートドライバ17-2は、スイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-4をオンにする制御信号を受け取ると、スイッチング素子13-1のゲート端子及びスイッチング素子13-4のゲート端子に、スイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-4がオンとなる相対的に高い電圧を印加する。これにより、電源11からの電流が、スイッチング素子13-1、送信コイル14及びスイッチング素子13-4を介して流れるようになる。一方、ゲートドライバ17-2は、スイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-4をオフにする制御信号を受け取ると、スイッチング素子13-1のゲート端子及びスイッチング素子13-4のゲート端子に、スイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-4がオフとなり、電源11からの電流がスイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-4を流れなくなる、相対的に低い電圧を印加する。ゲートドライバ17-2は、スイッチング素子13-2及びスイッチング素子13-3についても同様に、ゲート端子に印加する電圧を制御する。したがって、スイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-4がオフとなり、スイッチング素子13-2及びスイッチング素子13-3がオンとなると、電源11からの電流が、スイッチング素子13-3、送信コイル14及びスイッチング素子13-2を介して流れるようになる。
制御回路18は、例えば、不揮発性のメモリ回路及び揮発性のメモリ回路と、演算回路と、他の回路と接続するためのインターフェース回路とを有する。そして制御回路18は、受信器16から判定情報を受け取る度に、その判定情報に応じて、電力供給回路10から送信コイル14に供給される交流電力のスイッチング周波数及び電圧を制御する。
そのために、本実施形態では、制御回路18は、スイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-4の組とスイッチング素子13-2及びスイッチング素子13-3の組とが交互にオンとなり、かつ、スイッチング周波数に対応する1周期内でスイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-4の組がオンとなっている期間とスイッチング素子13-2及びスイッチング素子13-3の組がオンとなっている期間とが等しくなるように、各スイッチング素子13-1~13-4を制御する。なお、制御回路18は、スイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-4の組とスイッチング素子13-2及びスイッチング素子13-3の組が同時にオンとなり、電源11が短絡されることを防止するために、スイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-4の組とスイッチング素子13-2及びスイッチング素子13-3の組のオン/オフを切り替える際に、両方のスイッチング素子の組がオフとなるデッドタイムを設けてもよい。
また、制御回路18は、スイッチング周波数と、そのスイッチング周波数にて定電圧出力となる、送信コイル14への印加電圧に相当する、力率改善回路12のスイッチング素子SWのオン/オフ制御のデューティ比との関係を表す参照テーブルを参照して、スイッチング周波数に応じたデューティ比を選択する。そして制御回路18は、そのデューティ比と、力率改善回路12のダイオードDからの出力電圧の変化に応じて、スイッチング素子SWのオン/オフを切り替えるタイミングを決定し、そのタイミングを表す制御信号をゲートドライバ17-1へ出力する。
さらに、受信器16が受電装置3からの無線信号を受信できない場合、受電装置3は、送電装置2から電力供給を受けることができる位置に存在しない、すなわち、送電装置2は待機状態にあると想定される。そこでこの場合、制御回路18は、スイッチング素子SWのオン/オフ制御のデューティ比を設定可能な最小値としてもよい。あるいは、制御回路18は、比較的短い一定期間(例えば、数秒程度)、スイッチング素子SWのオン/オフ制御のデューティ比を予め設定された値として電力供給回路10を動作させ、その後、比較的長い期間(例えば、数分程度)、各スイッチング素子をオフに保って電力供給回路10から送信コイル14への電力供給を停止するといった制御を繰り返す、いわゆるバーストモードで電力供給回路10を制御してもよい。これにより、送電装置2が待機状態となっている間、送信コイル14に印加される電圧も設定可能な最小値となるので、エネルギーの損失が抑制される。
なお、制御回路18による、スイッチング周波数及び送信コイル14への印加電圧の制御の詳細については後述する。
次に、受電装置3について説明する。
共振回路20は、直列に接続される受信コイル21及びコイル23と、共振コンデンサ22とが並列に接続されるLC共振回路である。そして共振回路20が有する受信コイル21の一端が、コイル23を介して共振コンデンサ22の一端に接続されるとともに、コイル24を介して整流平滑回路25の一方の入力端子に接続される。また、受信コイル21の他端が共振コンデンサ22の他端に接続されるとともに、整流平滑回路25の他方の入力端子に接続される。
受信コイル21は、送電装置2の送信コイル14に流れる交流電流と共振することで、送信コイル14から電力を受信する。そして受信コイル21は、コイル23、共振コンデンサ22及びコイル24を介して、受信した電力を整流平滑回路25へ出力する。なお、受信コイル21の巻き数と、送電装置2の送信コイル14の巻き数は同一でもよく、あるいは、異なっていてもよい。
共振コンデンサ22は、その一端で、コイル23を介して受信コイル21の一端と接続されるとともに、コイル24と接続され、他端で受信コイル21の他端及び整流平滑回路25と接続される。そして共振コンデンサ22は、受信コイル21にて受信した電力を、コイル24を介して整流平滑回路25へ出力する。
コイル23は、受信コイル21の一端と共振コンデンサ22の一端との間に接続される。そしてコイル23は、受信コイル21及び共振コンデンサ22とともに、LC共振回路を構成する。またコイル23は、受信コイル21と異なり、送電装置2から受電装置3へ電力伝送される間も、送信コイル14と結合しないように設けられる。そのため、共振回路20の共振周波数f
r2は、次式で表される。
ここで、Cpは、共振コンデンサ22の静電容量であり、L
2は、受信コイル21のインダクタンスである。L
r2は、送信コイル14を短絡した際の受信コイル21のインダクタンスであり、kは送信コイル14と受信コイル21の結合度である。またL
3は、コイル23のインダクタンスである。(4)式から明らかなように、コイル23が無い場合(すなわち、L
3=0)と比較して、結合度kが変化したときの共振回路20の共振周波数f
r2の変動が抑制されることが分かる。インダクタンスL
3が大きいほど、共振周波数の変化が小さくなるので、スイッチング周波数の調整範囲も狭くなる。一方、インダクタンスL
3が大きいほど、出力電力の利得は低下する。そのため、コイル23のインダクタンスL
3は、送信コイル14に供給される交流電力のスイッチング周波数について、設定可能な調整範囲に応じて設定される。例えば、その調整範囲が略80kHz~略90kHzである場合、コイル23のインダクタンスL
3は、送信コイル14を短絡した際の受信コイル21のインダクタンスL
r2より大きく、かつ、そのインダクタンスL
r2の3倍未満に設定されることが好ましい。しかし、コイル23のインダクタンスL
3は、この例に限定されるものではない。
コイル24は、共振回路20と整流平滑回路25との間に接続される。本実施形態では、コイル24は、受信コイル21及びコイル23と直列となるように、その一端で共振回路20のコイル23及び共振コンデンサ22と接続され、他端で整流平滑回路25と接続される。そしてコイル24は、共振回路20からの電力を整流平滑回路25へ出力する。なお、このコイル24が設けられることにより、SPL方式と同様に、受電した電力の高調波成分が抑制される。
整流平滑回路25は、整流回路の一例であり、ブリッジ接続された4個のダイオードを有する全波整流回路26と平滑コンデンサ27とを有し、共振回路20により受信され、かつ、コイル24を介して受け取った電力を整流し、かつ、平滑化して、直流電力に変換する。そして整流平滑回路25は、その直流電力を、負荷回路28に出力する。
電圧検出回路29は、整流平滑回路25の両端子間の出力電圧を所定の周期ごとに測定する。整流平滑回路25の両端子間の出力電圧は、共振回路20の出力電圧と1対1に対応するので、整流平滑回路25の両端子間の出力電圧の測定値は、間接的に共振回路20の出力電圧の測定値となる。電圧検出回路29は、例えば、直流電圧を検出できる公知の様々な電圧検出回路の何れかとすることができる。そして電圧検出回路29は、その出力電圧の測定値を表す電圧検出信号を定電圧判定回路30へ出力する。
定電圧判定回路30は、電圧検出回路29から受け取った出力電圧の測定値に基づいて、非接触給電装置1が定電圧出力動作しているか否か、及び、出力電圧の測定値が定電圧出力動作が行われているときの電圧の許容範囲内に含まれているか否か判定する。そして定電圧判定回路30は、その判定結果を送信器33へ通知する。そのために、定電圧判定回路30は、例えば、電圧の許容範囲を記憶するメモリ回路と、出力電圧の測定値と電圧の許容範囲とを比較する演算回路とを有する判定回路31を有する。
さらに、定電圧判定回路30は、整流平滑回路25と負荷回路28との間に接続される、MOSFETといったスイッチング素子32を有する。このスイッチング素子32は、オフとなると整流平滑回路25から負荷回路28へ電流が流れないようにし(すなわち、Rac=∞)、一方、オンとなると整流平滑回路25から負荷回路28へ電流が流れるようにする。そして定電圧判定回路30の判定回路31は、出力電圧の測定値が、電圧の許容範囲から外れている間、所定の周期でスイッチング素子32のオン/オフを切り替える。これにより、その所定の周期で、整流平滑回路25と接続される、負荷回路28を含む回路全体の抵抗値が変化する。したがって、判定回路31は、スイッチング素子32のオン/オフを切り替えながら、出力電圧の測定値が略一定となるか否かを判定することで、非接触給電装置1が定電圧出力動作しているか否かを判定できる。そこで、判定回路31は、所定の周期でスイッチング素子32のオン/オフを切り替えても出力電圧の測定値が略一定となっている間、非接触給電装置1が定電圧出力動作していることを送信器33へ通知する。
また、判定回路31は、出力電圧の測定値が所定の周期よりも長い一定期間の間、非接触給電装置1が定電圧出力動作している場合、スイッチング素子32のオン/オフの切り替えを停止して、オンとなる状態を維持する。そして判定回路31は、出力電圧の測定値が電圧の許容範囲に含まれるか否か判定し、その判定結果を送信器33へ通知する。
その際、判定回路31は、出力電圧の測定値が所定の周期よりも長い一定期間の間、電圧の許容範囲に含まれる場合、非接触給電装置1が定電圧出力動作しており、かつ、出力電圧の測定値が電圧の許容範囲内であることを表す判定結果を送信器33へ通知する。
なお、変形例によれば、定電圧判定回路30は、整流平滑回路25に対して、負荷回路28と並列に接続される抵抗を有していてもよい。この場合、スイッチング素子32は、その抵抗と直列、かつ、負荷回路28と並列となるように設けられてもよい。この場合には、出力電圧の測定値が電圧の許容範囲に含まれる間、判定回路31は、スイッチング素子32をオフにする。一方、出力電圧の測定値が電圧の許容範囲から外れると、上記の実施形態と同様に、判定回路31は、所定の周期でスイッチング素子32のオン/オフを切り替えればよい。この変形例によれば、非接触給電装置1が定電圧出力動作していない場合にも、負荷回路28への電力供給が継続される。
さらに他の変形例によれば、上記の抵抗と並列、かつ、負荷回路28と直列に、MOSFETといった第2のスイッチング素子が設けられてもよい。この場合、出力電圧の測定値が電圧の許容範囲に含まれる間、判定回路31は、第2のスイッチング素子をオンにして、負荷回路28への電力供給を可能とする。一方、出力電圧の測定値が電圧の許容範囲から外れると、判定回路31は、第2のスイッチング素子をオフにして、負荷回路28への電力供給を停止してもよい。これにより、送電装置2においてスイッチング周波数が調整されている間に、受電した電力の電圧が過度に高くなっても、その過度に高い電圧が負荷回路28に印加されることが防止される。
送信器33は、所定の送信周期ごとに、定電圧判定回路30の判定回路31から受け取った判定結果に応じて、非接触給電装置1が定電圧出力動作しているか否か、及び、出力電圧の測定値が電圧の許容範囲に含まれるか否かを表す判定情報を含む無線信号を生成し、その無線信号を送電装置2の受信器16へ向けて送信する。そのために、送信器33は、例えば、所定の無線通信規格に準じて無線信号を生成する通信回路と、その無線信号を出力するアンテナとを有する。なお、所定の無線通信規格は、受信器16と同様に、例えば、ISO/IEC 15693、ZigBee(登録商標)、あるいはBluetooth(登録商標)とすることができる。
以下、非接触給電装置1の動作の詳細について説明する。
本実施形態では、送電装置2の制御回路18は、受信器16から受け取った判定情報に基づいて、非接触給電装置1が定電圧出力動作を継続するように、電力供給回路10から送信コイル14に供給される交流電力のスイッチング周波数及び電圧を制御する。
図5は、本実施形態による非接触給電装置1の等価回路図である。この等価回路500において、送電装置2の送信コイル14と受電装置3の共振回路20の受信コイル21とが結合して、n:1の理想トランスを形成するものとする。Cr1は、送信コイル14と直列接続されるコンデンサ15の静電容量である。Lr及びLmは、送信コイル14による漏れインダクタンス及び励磁インダクタンスである。なお、送信コイル14のインダクタンスLpは、(Lm+Lr)と等しく、送信コイル14と受信コイル21間の結合度をkとすると、Lr=(1-k)Lp、Lm=kLpである。また、Riは、送電側の巻線抵抗値であり、Risは、受電側の巻線抵抗値である。Cpは、共振回路20の共振コンデンサ22の静電容量である。L1は、共振回路20に含まれる、受信コイル21と直列接続されるコイル23のインダクタンスである。またL2は、共振回路20と整流平滑回路25間に接続されるコイル24のインダクタンスである。そしてRoは、負荷回路28の抵抗値(交流等価抵抗値Rac=(8/π2)×Ro)である。
等価回路500より、非接触給電装置1のF行列Fp(s, k, Rac)は、次式で表される。
したがって、(2)式と同様に、非接触給電装置1の出力利得Gp(s, k, Rac)は次式で表される。
ここでVinは、送電側の共振回路に供給される交流電力の電圧(振幅)であり、Fp(s,k,Rac)
0,0は、(5)式で表されたF行列における左上の要素を表す。
図6は、(6)式に従って算出される、非接触給電装置1の出力電圧の周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。図6において、横軸は、周波数を表し、縦軸は、出力電圧を表す。グラフ601は、結合度k=0.15、負荷回路28の交流等価抵抗値をRacとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ602は、結合度k=0.15、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。また、グラフ603は、結合度k=0.3、負荷回路28の交流等価抵抗値をRacとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ604は、結合度k=0.3、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ605は、結合度k=0.6、負荷回路28の交流等価抵抗値をRacとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ606は、結合度k=0.6、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。なお、このシミュレーションでは、Lp=174μH、Cr1=2μF、Cp=10nF、L1=350μH、L2=1300μH、Ri=Ris=0.3Ω、n=1、Ro=150Ω、Vin=800Vとした。
図6では、送信コイル14が共振しないため、図6に示される周波数の範囲では、図2と比較して、低周波数側で出力電圧の極値がなくなっている。しかし、この場合でも、結合度kが変化しない条件下で、負荷回路の交流等価抵抗値が変化しても出力電圧が略一定となる(すなわち、定電圧出力となる)、周波数と出力電圧の組み合わせは、結合度ごとに(図のポイント611~613の3通り)存在する。したがって、送信コイル14が共振しないスイッチング周波数を持つ交流電力を送信コイル14に印加しても、負荷回路28の抵抗値の変化に対して非接触給電装置1を定電圧出力動作させることができることが分かる。
さらに、ポイント611~613で示される通り、負荷回路28の抵抗値の変動に関して定電圧出力となるときの出力電圧は、結合度に応じて互いに異なっているものの、この出力電圧の差は、送信コイル14に印加する電圧を調節することで、結合度によらず、略一定の出力電圧とすることができる。
図7は、図6に示されたシミュレーションにおいて、結合度に応じて送信コイル14に印加する電圧を変化させたときの、出力電圧の周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。図7において、横軸は、周波数を表し、縦軸は、出力電圧を表す。グラフ701は、結合度k=0.15、負荷回路28の交流等価抵抗値をRac、送信コイル14に印加される電圧をVinとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ702は、結合度k=0.15、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac)、送信コイル14に印加される電圧をVinとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。また、グラフ703は、結合度k=0.3、負荷回路28の交流等価抵抗値をRac、送信コイル14に印加される電圧を(0.49*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ704は、結合度k=0.3、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac)、送信コイル14に印加される電圧を(0.49*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ705は、結合度k=0.6、負荷回路28の交流等価抵抗値をRac、送信コイル14に印加される電圧を(0.22*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ706は、結合度k=0.6、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac、送信コイル14に印加される電圧を(0.22*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。
図6に示されたポイント611~613に対応する、結合度kが変化しない条件下で、負荷回路28の交流等価抵抗値が変化しても出力電圧が略一定となる(すなわち、定電圧出力となる)、周波数と出力電圧の組み合わせは、ポイント711~713の3通りとなる。そしてポイント711~713のそれぞれの出力電圧は、互いに略等しい。
以上により、負荷回路28の抵抗値及び結合度の何れが変動しても、送信コイル14に印加する交流電力のスイッチング周波数及び電圧を適切に調節することで、出力電圧が略一定に保たれることが分かる。
さらに、ポイント711に相当する周波数f1からポイント713に相当する周波数f2までの周波数領域は、図2に示される、ポイント214に相当する周波数f3からポイント216に相当する周波数f4までの周波数領域よりも大幅に狭くなっている。このことから、非接触給電装置1を定電圧出力動作させる際の周波数の調整範囲は、SPL方式による非接触給電装置を、送電側の共振回路が共振しない周波数にて定電圧出力動作させたときの周波数の調整範囲よりも狭くできることが分かる。
以上により、制御回路18は、定電圧出力動作を達成するために、下記のように送信コイル14に印加される交流電力のスイッチング周波数及び電圧を制御する。
受電装置3から受信器16を介して受けとった無線信号に含まれる判定情報において、非接触給電装置1が定電圧出力動作していないことが示されている場合、制御回路18は、交流電力のスイッチング周波数を所定の周波数領域内で変化させる。所定の周波数領域は、例えば、送電装置2から受電装置3への給電が行われる場合における、送信コイル14と受信コイル21間の想定される結合度の最小値において定電圧出力となる周波数を下限とし、送信コイル14と受信コイル21間の想定される結合度の最大値において定電圧出力となる周波数を上限とする周波数領域とすることができる。
制御回路18は、スイッチング周波数を変化させる際、所定の周波数領域の下限から上限まで順にスイッチング周波数を高くしてもよく、あるいは、逆に、所定の周波数領域の上限から下限まで順にスイッチング周波数を低くしてもよい。その際、制御回路18は、受電装置3の定電圧判定回路30が出力電圧が略一定となったか否かを調べることができるように、定電圧判定回路30の判定回路31がスイッチング素子32のオンとオフを切り替える周期よりも長い期間、同じスイッチング周波数を保つように、ステップ状にスイッチング周波数を変化させることが好ましい。
なお、制御回路18は、スイッチング周波数を調整している間、送信コイル14に印加する電圧を下限の電圧にまで低下させることが好ましい。これにより、受電装置3に供給される電力の電圧が過度に高くなることが抑制される。
制御回路18は、受電装置3から受信器16を介して受けとった無線信号に含まれる判定情報において、出力電圧の測定値が電圧の許容範囲には含まれないものの、負荷回路28の抵抗が変化しても略一定となること、すなわち、定電圧出力動作が行われていることが示されていると、それ以降、スイッチング周波数を一定に保つ。そして次に、制御回路18は、スイッチング周波数と、そのスイッチング周波数において結合度によらず一定の電圧出力となる、力率改善回路12のスイッチング素子SWのオン/オフ制御のデューティ比との関係を示す参照テーブルを参照して、そのデューティ比を決定する。そして制御回路18は、そのデューティ比に従って力率改善回路12のスイッチング素子SWのオン/オフを切り替えるよう、ゲートドライバ17-1を制御する。これにより、共振回路20からの出力電圧が電圧の許容範囲に含まれるように、すなわち、結合度によらずに一定の電圧が出力されるように、送信コイル14に印加される電圧が調整される。そして制御回路18は、受電装置3から受信器16を介して受けとった無線信号に含まれる判定情報において、出力電圧の測定値が電圧の許容範囲に含まれることが示されると、送信コイル14に供給される交流電力のスイッチング周波数及び電圧を一定に保つ。
なお、制御回路18は、上記の参照テーブルを参照してデューティ比を決定する代わりに、受電装置3から受信器16を介して受けとった無線信号に含まれる判定情報において、出力電圧の測定値が電圧の許容範囲に含まれることが示されるようになるまで、徐々にデューティ比を変化させてもよい。
また、エネルギー伝送効率を向上するためには、送電装置2の電力供給回路10及び送信コイル14が継続してソフトスイッチング(誘導性)動作することが好ましい。電力供給回路10及び送信コイル14がソフトスイッチング動作するためには、送信コイル14を流れる電流の位相が印加される電圧の位相よりも遅れることが好ましい。これにより、例えば、スイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-4がオンとなる際に、スイッチング素子13-1のソース端子からドレイン端子へ向かって電流が流れることになるので、電力供給回路10及び送信コイル14がソフトスイッチング動作することとなり、スイッチングロスの発生が抑制される。
図8は、本実施形態による非接触給電装置1における、送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れの周波数特性を示す図である。図8において、横軸は周波数を表し、縦軸は位相を表す。なお、この図において、位相が正の値を持つ場合、電圧の位相に対して電流の位相が遅れていることを示す。グラフ801は、結合度k=0.15、負荷回路28の交流等価抵抗値をRacとしたときの位相の遅れの周波数特性を表す。またグラフ802は、結合度k=0.15、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの位相の遅れの周波数特性を表す。また、グラフ803は、結合度k=0.3、負荷回路28の交流等価抵抗値をRacとしたときの位相の遅れの周波数特性を表す。またグラフ804は、結合度k=0.3、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの位相の遅れの周波数特性を表す。さらに、グラフ805は、結合度k=0.6、負荷回路28の交流等価抵抗値をRacとしたときの位相の遅れの周波数特性を表す。またグラフ806は、結合度k=0.6、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの位相の遅れの周波数特性を表す。
グラフ801~806に示されるように、図7に示されるポイント711~713に対応する周波数を含む周波数領域において、すなわち、非接触給電装置1を定電圧出力動作させる周波数領域では、結合度によらず、位相の遅れが常に正の値を持っていることが分かる。したがって、本実施形態による非接触給電装置1は、電力供給回路10及び送信コイル14をソフトスイッチング動作させることができることが分かる。
以上に説明してきたように、この非接触給電装置は、受電装置の共振回路に、受信コイルと直列に接続される、電力伝送時にも送信コイルと結合しないコイルを設けることで、送信コイルと受信コイル間の結合度の変化による、その共振回路の共振周波数の変化を抑制する。これにより、この非接触給電装置は、結合度が一定とならない環境下において定電圧出力動作する場合における、送信コイルに供給される交流電力のスイッチング周波数の調整範囲を狭めることができる。またこの非接触給電装置は、送電装置の送信コイルに、送信コイルが共振しないスイッチング周波数を持つ交流電力を供給することで、結合度が低下する場合でも、入力インピーダンスがある程度の大きさを持つようにして、送信コイルに流れる電流の増加を抑制する。そのため、この非接触給電装置は、送信コイルと受信コイル間の結合度が低い場合でも、エネルギーの損失を抑制できる。また、この非接触給電装置は、受電装置の共振回路の出力電圧をモニタし、その出力電圧に応じて、送信コイルに印加される交流電力のスイッチング周波数及び電圧を制御する。これにより、この非接触給電装置は、送信コイルと受信コイル間の結合度が変化したり、負荷回路の抵抗値が変化する場合でも、定電圧出力動作することができる。
変形例によれば、受電装置3の共振回路20において、電力伝送時にも送信コイル14と結合しないコイル23は、共振コンデンサ22と直列、かつ、受信コイル21と並列に接続されてもよい。
図9は、この変形例による非接触給電装置の等価回路図である。図9に示される等価回路900は、図5に示される等価回路500と比較して、コイル23(インダクタンスL1に相当)が、共振コンデンサ22(静電容量Cpに相当)と直列に接続され、送信コイル14と受信コイル21とが結合して構成される理想トランスと並列になっている点で相違する。この変形例による非接触給電装置のF行列Fp2(s, k, Rac)は、次式で表される。
したがって、(2)式と同様に、非接触給電装置1の出力利得Gp2(s, k, Rac)は次式で表される。
ここでVinは、送電側の共振回路に供給される交流電力の電圧(振幅)であり、Fp2(s,k,Rac)
0,0は、(7)式で表されたF行列における左上の要素を表す。
図10は、(8)式に従って算出され、かつ、結合度に応じて送信コイル14に印加する電圧を変化させたときの、この変形例による非接触給電装置の出力電圧の周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。図10において、横軸は、周波数を表し、縦軸は、出力電圧を表す。グラフ1001は、結合度k=0.15、負荷回路28の交流等価抵抗値をRac、送信コイル14に印加される電圧をVinとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ1002は、結合度k=0.15、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac)、送信コイル14に印加される電圧をVinとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。また、グラフ1003は、結合度k=0.3、負荷回路28の交流等価抵抗値をRac、送信コイル14に印加される電圧を(0.48*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ1004は、結合度k=0.3、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac)、送信コイル14に印加される電圧を(0.48*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ1005は、結合度k=0.6、負荷回路28の交流等価抵抗値をRac、送信コイル14に印加される電圧を(0.17*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ1006は、結合度k=0.6、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac)、送信コイル14に印加される電圧を(0.17*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。なお、このシミュレーションでは、Lp=174μH、Cr1=2μF、Cp=10nF、L1=260μH、L2=430μH、Ri=Ris=0.3Ω、n=1、Ro=150Ω、Vin=800Vとした。
図10に示される通り、この変形例でも、結合度kが変化しない条件下で、負荷回路28の交流等価抵抗値が変化しても出力電圧が略一定となる、周波数と出力電圧の組み合わせは、結合度ごとに(図のポイント1011~1013の3通り)存在する。またこの変形例における、ポイント1011に対応する周波数f1'からポイント1013に対応する周波数f2'までの範囲は、図7に示される、ポイント711対応する周波数f1からポイント713に対応する周波数f2までの範囲と略等しい。したがって、この変形例による非接触給電装置も、結合度が一定とならなくても定電圧出力動作することができるとともに、送信コイル14に供給される交流電力の周波数の調整範囲を狭くすることができる。その際、この変形例では、図7のシミュレーションに用いた各回路素子のパラメータ値と図10のシミュレーションに用いた各回路素子のパラメータ値から分かるように、周波数の調整範囲を同程度に設定するために、上記の実施形態と比較して、コイル23及びコイル24のそれぞれのインダクタンスを低くすることができる。
また他の変形例によれば、受電装置3の共振回路20に、送信コイル14と結合しないコイルを設ける代わりに、送電装置2において、送信コイル14と直列に接続され、かつ、電力伝送時にも受信コイル21と結合しないコイルが設けられてもよい。
図11は、この変形例による非接触給電装置の等価回路図である。図11に示される等価回路1100は、図5に示される等価回路500と比較して、インダクタンスL1に相当する、電力伝送時にも受信コイル21と結合しないコイルが、送信コイル14と直列に接続されるように設けられる点で相違する。
この場合、共振回路20の共振周波数f
r2は、次式で表される。
ここで、Cpは、共振コンデンサ22の静電容量であり、L
2は、受信コイル21のインダクタンスである。L
r2は、送信コイル14を短絡した際の受信コイル21のインダクタンスであり、kは送信コイル14と受信コイル21の結合度である。またL
3は、送信コイル14と直列に接続されるコイルのインダクタンスである。結合度kが常に0以上1以下となるため、送信コイル14と直列に接続されるコイルが無い場合(すなわち、L
3=0)と比較して、(9)式において結合度kが大きくなるほど、右辺の分母がより大きくなり、その結果として、共振周波数f
r2の上昇が抑制される。したがって、結合度kが変化したときの共振回路20の共振周波数f
r2の変動が抑制されることが分かる。
図12は、結合度に応じて送信コイル14に印加する電圧を変化させたときの、この変形例による非接触給電装置の出力電圧の周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。図12において、横軸は、周波数を表し、縦軸は、出力電圧を表す。グラフ1201は、結合度k=0.15、負荷回路28の交流等価抵抗値をRac、送信コイル14に印加される電圧をVinとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ1202は、結合度k=0.15、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac)、送信コイル14に印加される電圧をVinとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。また、グラフ1203は、結合度k=0.3、負荷回路28の交流等価抵抗値をRac、送信コイル14に印加される電圧を(0.48*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ1204は、結合度k=0.3、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac)、送信コイル14に印加される電圧を(0.48*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ1205は、結合度k=0.6、負荷回路28の交流等価抵抗値をRac、送信コイル14に印加される電圧を(0.22*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ1206は、結合度k=0.6、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac)、送信コイル14に印加される電圧を(0.22*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。なお、このシミュレーションでは、Lp=174μH、Cr1=2μF、Cp=25nF、L1=240μH、L2=1300μH、Ri=Ris=0.3Ω、n=1、Ro=150Ω、Vin=800Vとした。
この例では、上記の実施形態よりも、負荷回路28の抵抗変化による出力電圧の変動は大きくなるものの、ポイント1211~ポイント1213で示されるように、結合度ごとに、出力電圧の変動が抑制される周波数がある。またこの変形例でも、結合度の変動に伴う、送信コイル14に供給される交流電力のスイッチング周波数の調整範囲は上記の実施形態と同程度となる。
さらに他の変形例によれば、受電装置3の共振回路20に、電力伝送時にも送信コイル14と結合しないコイル23を設けるとともに、送電装置2の送信コイル14と直列に接続される、電力伝送時にも受信コイル21と結合しないコイルを設けてもよい。
図13は、この変形例による非接触給電装置の等価回路図である。図13に示される等価回路1300は、図9に示される、受電装置3の共振回路20に、共振コンデンサ22と直列に接続される、送信コイル14と結合しないコイル(インダクタンスL1に相当)が含まれる等価回路900と比較して、インダクタンスL3に相当する、電力伝送時にも受信コイル21と結合しないコイルが、送信コイル14と直列に接続されるように設けられる点で相違する。
図14は、結合度に応じて送信コイル14に印加する電圧を変化させたときの、この変形例による非接触給電装置の出力電圧の周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。図14において、横軸は、周波数を表し、縦軸は、出力電圧を表す。グラフ1401は、結合度k=0.15、負荷回路28の交流等価抵抗値をRac、送信コイル14に印加される電圧をVinとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ1402は、結合度k=0.15、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac)、送信コイル14に印加される電圧をVinとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。また、グラフ1403は、結合度k=0.3、負荷回路28の交流等価抵抗値をRac、送信コイル14に印加される電圧を(0.48*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ1404は、結合度k=0.3、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac)、送信コイル14に印加される電圧を(0.48*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ1405は、結合度k=0.6、負荷回路28の交流等価抵抗値をRac、送信コイル14に印加される電圧を(0.22*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ1406は、結合度k=0.6、負荷回路28の交流等価抵抗値を(10*Rac)、送信コイル14に印加される電圧を(0.22*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。なお、このシミュレーションでは、Lp=174μH、Cr1=2μF、Cp=9.2nF、L1=260μH、L2=1000μH、L3=180μH、Ri=Ris=0.3Ω、n=1、Ro=150Ω、Vin=800Vとした。
この変形例でも、ポイント1411~ポイント1413で示されるように、結合度ごとに、出力電圧の変動が抑制される周波数がある。さらに、この変形例では、結合度の変動に伴う、ポイント1411に対応する周波数f1''からポイント1413に対応する周波数f2''までの、送信コイル14に供給される交流電力のスイッチング周波数の調整範囲は、上記の実施形態によるスイッチング周波数の調整範囲(図7に示される周波数f1~f2)よりもさらに狭くすることができる。
なお、上記の各変形例についても、送電装置2の制御回路18は、上記の実施形態と同様に、受信した判定情報に基づいて、電力供給回路10から送信コイル14に供給される交流電力のスイッチング周波数及び電圧を調整することで、非接触給電装置を、結合度が一定でない場合でも、定電圧出力動作させることができる。
また、発明者は、受電装置の負荷回路の抵抗値が予め設定された値となる場合には、上記の実施形態または変形例による非接触給電装置が定電圧出力動作する周波数において、この非接触給電装置の入力インピーダンスが極小値となるという知見を得た。
図15は、SPL方式の非接触給電装置の出力電圧の周波数特性と入力インピーダンスの周波数特性との関係の一例を示す図である。図15の上側のグラフにおいて、横軸は、周波数を表し、縦軸は、出力電圧を表す。また、図15の下側のグラフにおいて、横軸は、周波数を表し、縦軸は、入力インピーダンスを表す。なお、このシミュレーションでは、図2に示されたシミュレーションに用いられた各回路素子のパラメータの値と同じ値を使用した。上側のグラフにおいて、グラフ1501(図2のグラフ203と同一)は、結合度k=0.3、負荷回路27の交流等価抵抗値をRacとしたときの非接触給電装置1の出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ1502(図2のグラフ204と同一)は、結合度k=0.3、負荷回路27の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの非接触給電装置1の出力電圧の周波数特性を表す。また、下側のグラフにおいて、グラフ1511は、結合度k=0.3、負荷回路27の交流等価抵抗値をRacとしたときの非接触給電装置1の入力インピーダンスの周波数特性を表す。さらに、グラフ1512は、結合度k=0.3、負荷回路27の交流等価抵抗値を(100*Rac)としたときの非接触給電装置1の入力インピーダンスの周波数特性を表す。
図15に示されるように、非接触給電装置1が定電圧出力動作する周波数f0では、負荷回路27の交流等価抵抗値がRacのときの入力インピーダンスは極小値となる。すなわち、周波数f0にて、送信コイル14に流れる電流は極大値を持つ。
そこで変形例によれば、送電装置の制御回路は、送信コイルを流れる電流の周波数特性に応じて、非接触給電装置が定電圧出力動作するか否かを判定してもよい。
図16は、この変形例による、非接触給電装置の概略構成図である。図16に示されるように、非接触給電装置41は、送電装置42と、送電装置42から空間を介して非接触で電力伝送される受電装置43とを有する。送電装置42は、電力供給回路50と、送信コイル54と、コンデンサ55と、電流検出回路56と、受信器57と、ゲートドライバ58と、制御回路59とを有する。一方、受電装置43は、受信コイル61、共振コンデンサ62及びコイル63を有する共振回路60と、コイル64と、全波整流回路66と平滑コンデンサ67を有する整流平滑回路65と、負荷回路68と、電圧検出回路69と、定電圧判定回路70と、固定負荷回路73と、送信器74とを有する。
非接触給電装置41は、図4に示された非接触給電装置1と比較して、送電装置42については、電力供給回路50の構成と、電流検出回路56を有する点と、制御回路59による制御の一部が相違する。また、受電装置43については、固定負荷回路73を有する点で相違する。そこで以下では、上記の相違点及び関連する部分について説明する。
電力供給回路50は、調節可能なスイッチング周波数、及び、調節可能な電圧を持つ交流電力を送信コイル54へ供給する。そのために、電力供給回路50は、電圧可変電源51と、DC/DCコンバータ52と、3個のスイッチング素子53-1~53-3とを有する。
電圧可変電源51は、直流電力を供給し、その直流電力の電圧を制御回路59からの制御によって調整可能な電源である。なお、電圧可変電源51は、供給する電圧を調整可能な様々な回路構成の何れを有していてもよい。非接触給電装置41が定電圧出力動作している間、電圧可変電源51から供給される直流電力は、スイッチング素子53-1及び53-2を介して交流電力に変換されて送信コイル54へ供給される。一方、非接触給電装置41が定電圧出力動作するためのスイッチング周波数の調整が行われている間、電圧可変電源51から供給される直流電力は、DC/DCコンバータ52及びスイッチング素子53-3を介して送信コイル54へ供給される。
DC/DCコンバータ52の入力端子は、電圧可変電源51の正極側端子と接続され、DC/DCコンバータ52の出力端子は、ダイオードD及びスイッチング素子53-3を介してコンデンサ55の一端と接続される。そしてDC/DCコンバータ52は、電圧可変電源51から供給された直流電力の電圧を所定の電圧(例えば、5V)に低下させる。
非接触給電装置41が定電圧出力動作するためのスイッチング周波数の調整が行われている間、DC/DCコンバータ52から出力された電圧は、ダイオードD、スイッチング素子53-3及びコンデンサ55を介して送信コイル54へ供給される。
スイッチング素子53-1~53-3は、それぞれ、例えば、nチャネル型のMOSFETとすることができる。スイッチング素子53-1とスイッチング素子53-2は、電圧可変電源51の正極側端子と負極側端子との間に直列に接続される。また、電圧可変電源51の正極側に、スイッチング素子53-1が接続され、一方、電圧可変電源51の負極側に、スイッチング素子53-2が接続される。そしてスイッチング素子53-1のドレイン端子は、電圧可変電源51の正極側端子と接続され、スイッチング素子53-1のソース端子は、スイッチング素子53-2のドレイン端子と接続される。また、スイッチング素子53-1のソース端子、及び、スイッチング素子53-2のドレイン端子は、コンデンサ55を介して送信コイル54の一端と接続される。さらに、スイッチング素子53-2のソース端子は、電圧可変電源51の負極側端子、及び、電流検出回路56を介して送信コイル54の他端と接続される。
また、スイッチング素子53-3のドレイン端子は、DC/DCコンバータ52の出力端子と接続され、スイッチング素子53-3のソース端子は、コンデンサ55を介して送信コイル54の一端と接続される。そして各スイッチング素子のゲート端子は、ゲートドライバ58と接続される。
非接触給電装置41が定電圧出力動作している間、ゲートドライバ58は、制御回路59からの制御信号に従って、スイッチング素子53-3をオフに保つ。またゲートドライバ58は、制御回路59からの制御信号に従って、スイッチング素子53-1とスイッチング素子53-2のオン/オフを、定電圧出力動作となるスイッチング周波数にて交互に切り替える。すなわち、スイッチング素子53-1がオンとなり、スイッチング素子53-2がオフとなる場合には、電圧可変電源51からスイッチング素子53-1を介してコンデンサ55へ電力が供給されてコンデンサ55が充電されるのに伴って、送信コイル54へ電流が流れる。一方、スイッチング素子53-1がオフとなり、スイッチング素子53-2がオンとなる場合には、コンデンサ55が放電して、コンデンサ55から送信コイル54へ電流が流れる。
また、非接触給電装置41が定電圧出力動作するためのスイッチング周波数の調整が行われている間、ゲートドライバ58は、制御回路59からの制御信号に従って、スイッチング素子53-1をオフに保ち、その代わりに、制御回路59からの制御信号に従って、スイッチング素子53-3とスイッチング素子53-2のオン/オフを、スイッチング周波数にて交互に切り替える。
コンデンサ55は、送信コイル54と電力供給回路50の間に接続される。そしてコンデンサ55は、各スイッチング素子のスイッチング周波数でのオン/オフの切り替えに応じて充電と放電とを繰り返すことで、送信コイル54に、スイッチング周波数を持つ交流電力を供給する。なお、スイッチング周波数が調整される周波数範囲において送信コイル54とコンデンサ55とが共振回路として動作しないよう、送信コイル54とコンデンサ55の共振周波数は、受電装置43の共振回路60の共振周波数及びスイッチング周波数が調整される周波数範囲の下限周波数よりも小さくなるように、コンデンサ55の静電容量が設定されることが好ましい。
電流検出回路56は、送信コイル54と電力供給回路50との間に接続され、送信コイル54を流れる電流を測定する。そして電流検出回路56は、電流の測定値を制御回路59へ出力する。なお、電流検出回路56は、電流検出回路56に対して直列に接続される分流用のコンデンサ(図示せず)とともに、送信コイル54に対して、コンデンサ55と並列に接続されてもよい。この場合、電流検出回路56は、間接的に送信コイル54に流れる電流を測定できる。
また、受電装置43の定電圧判定回路70は、上記の実施形態による判定回路30及びスイッチング素子31と同様の判定回路71及びスイッチング素子72を有する。
定電圧判定回路70の判定回路71は、電圧検出回路69による、共振回路60からの出力電圧の測定値が、電圧の許容範囲内に保たれている間、すなわち、非接触給電装置40が定電圧出力動作を行っている間、スイッチング素子72をオンにして、共振回路60からの出力電圧が整流平滑回路65を介して負荷回路68へ供給されるようにする。一方、出力電圧の測定値が、電圧の許容範囲から外れている間、判定回路71は、スイッチング素子72をオフにして、共振回路60からの出力電圧が負荷回路68へ供給されないようにする。
固定負荷回路73は、整流平滑回路65に対して、負荷回路68と並列に接続され、スイッチング周波数の調整が行われている間、負荷回路68の基準となる負荷(例えば、図15に示されるシミュレーションによるRac)と略等しい負荷を受電装置43に提供する。そのために、固定負荷回路73は、整流平滑回路65に対して負荷回路68と並列に接続され、かつ、負荷回路68の基準となる負荷に応じた抵抗値を持つ抵抗R1を有する。そして抵抗R1は、nチャネル型のMOSFETといったスイッチング素子SW1と直列に接続される。さらに、固定負荷回路73は、整流平滑回路65の両出力端子間に、正極側から順に直列に接続される抵抗R2とnpn型のバイポーラトランジスタといったスイッチング素子SW2とを有する。また抵抗R2とスイッチング素子SW2とは、抵抗R1と並列に接続される。そしてスイッチング素子SW1のゲート端子は、抵抗R2とスイッチング素子SW2の一端(この例では、コレクタ端子)との間に接続される。さらに、スイッチング素子SW2のベース端子は、抵抗R3及び逆バイアスされたツェナーダイオードZDを介して整流平滑回路65の正極側端子と接続される。
非接触給電装置41が定電圧出力動作している間、共振回路60の出力電圧は、ツェナーダイオードZDの降伏電圧よりも高く、その結果としてスイッチング素子SW2のベース端子には、ツェナーダイオードZD及び抵抗R3を介して電流が供給され、スイッチング素子SW2はオンとなる。その結果、スイッチング素子SW1のゲート端子に印加される電圧は低下して、スイッチング素子SW1はオフとなる。そのため、抵抗R1には共振回路60からの出力電圧は印加されない。
一方、非接触給電装置41が定電圧出力動作するためのスイッチング周波数の調整が行われている間、DC/DCコンバータ52から送信コイル54へ供給される電力の電圧が低いため、送電装置42から受電装置43へ供給される電力も低下する。そのため、共振回路60からの出力電圧も低下して、ツェナーダイオードZDの降伏電圧よりも低くなる。その結果、スイッチング素子SW2はオフとなり、これに伴い、スイッチング素子SW1のゲート端子に印加される電圧が上昇し、スイッチング素子SW1がオンとなる。そのため、共振回路60からの出力電圧が、抵抗R1に印加されることとなる。その結果、抵抗R1の持つ固定の負荷が受電装置43に提供される。
以下、この変形例による、送電装置42の制御回路59の動作について説明する。制御回路59は、非接触給電装置41が定電圧出力動作している間、上記の実施形態と同様に、受電装置43の共振回路60からの出力電圧の測定値が所定の許容範囲内となるように、スイッチング周波数に応じた電圧を持つ直流電圧を送信コイル54に供給するよう、電力供給回路50の電圧可変電源51を制御する。また制御回路59は、ゲートドライバ58を介して、スイッチング素子53-3をオフに保つとともに、定電圧出力動作するスイッチング周波数にて、スイッチング素子53-1及び53-2のオン/オフを切り替える。
一方、受電装置43から受信器57を介して受けとった無線信号に含まれる判定情報において、非接触給電装置41が定電圧出力動作していないことが示されている場合、制御回路59は、ゲートドライバ58を介してスイッチング素子53-1をオフに保つとともに、スイッチング素子53-3及び53-2のオン/オフを交互に切り替えることで、DC/DCコンバータ52から送信コイル54に電力が供給されるようにする。また制御回路59は、DC/DCコンバータ52から送信コイル54に供給される電圧が所定値となるように、電圧可変電源51を制御する。これにより、制御回路59は、送電装置42から受電装置43へ供給される電力を、受電装置43の固定負荷回路73の抵抗R1に電圧が印加される程度となるまで低下させる。
そして制御回路59は、スイッチング周波数を変化させながら、電流検出回路56による、送信コイル54に流れる電流の測定値を監視して、その電流の測定値が極大値となるスイッチング周波数を検出する。送信コイル54に流れる電流の測定値が極大値となるスイッチング周波数は、図15に示される周波数f0といった、非接触給電装置41の入力インピーダンスが極小値となる周波数、すなわち、非接触給電装置41が定電圧出力動作する周波数である。そこで制御回路59は、送信コイル54に流れる電流の測定値が極大値となるスイッチング周波数が検出されると、そのスイッチング周波数にて、電圧可変電源51からの電力が送信コイル54に供給されるように、ゲートドライバ58を介してスイッチング素子53-1及び53-2のオン/オフを制御する。また制御回路59は、スイッチング素子53-3をオフにする。これにより、制御回路59は、非接触給電装置41を定電圧出力動作させることが可能となる。また制御回路59は、上記のように、受電装置43の共振回路60からの出力電圧の測定値が所定の許容範囲内となるように、スイッチング周波数に応じた電圧を持つ直流電圧が送信コイル54に供給されるよう、電力供給回路50の電圧可変電源51を制御する。
この変形例によれば、送電装置の制御回路は、送電装置の送信コイルに流れる電流を監視することで、非接触給電装置が定電圧出力動作するスイッチング周波数を検出することができる。
なお、図16に示される変形例においても、図9に示される変形例と同様に、受電装置43の共振回路60において、電力伝送時にも送信コイル54と結合しないコイル63は、共振コンデンサ62と直列、かつ、受信コイル61と並列に接続されてもよい。あるいは、図11または図13に示される変形例と同様に、受電装置43の共振回路60に、送信コイル54と結合しないコイルとともに、あるいは、そのコイルを設ける代わりに、送電装置42において、送信コイル54と直列に接続され、かつ、電力伝送時にも受信コイル61と結合しないコイルが設けられてもよい。この場合も、送電装置の制御回路は、送電装置の送信コイルに流れる電流を監視することで、非接触給電装置が定電圧出力動作するスイッチング周波数を検出することができる。
他の変形例によれば、送電装置において、送信コイルに交流電力を供給する電力供給回路は、スイッチング周波数及び送信コイルに印加する電圧を可変に調節できる回路であれば、上記の実施形態及び変形例とは異なる回路構成を持っていてもよい。
図17(a)及び図17(b)は、それぞれ、変形例による、電力供給回路の回路図である。
図17(a)に示される電力供給回路110は、電源11と、力率改善回路12と、二つのスイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-2と、送信コイル14と直列に接続される、直流遮断用のコンデンサ15とを有する。なお、この変形例においても、各スイッチング素子は、例えば、nチャネル型のMOSFETとすることができる。また、力率改善回路12は、例えば、上記の実施形態における力率改善回路12と同一とすることができる。
この変形例では、スイッチング素子13-1とスイッチング素子13-2は、電源11の正極側端子と負極側端子との間に直列に接続される。また、電源11の正極側に、スイッチング素子13-1が接続され、一方、電源11の負極側に、スイッチング素子13-2が接続される。そしてスイッチング素子13-1のドレイン端子は、電源11の正極側端子と力率改善回路12を介して接続され、スイッチング素子13-1のソース端子は、スイッチング素子13-2のドレイン端子と接続される。また、スイッチング素子13-2のソース端子は、電源11の負極側端子と力率改善回路12を介して接続される。さらに、スイッチング素子13-1のソース端子、及び、スイッチング素子13-2のドレイン端子は、送信コイル14の一端に接続され、スイッチング素子13-2のソース端子は、コンデンサ15を介して送信コイル14の他端に接続される。また、各スイッチング素子のゲート端子は、ゲートドライバ17-2と接続される。
この変形例では、ゲートドライバ17-2が、制御回路からの制御信号に従って、スイッチング素子13-1とスイッチング素子13-2のオン/オフを交互に切り替えればよい。すなわち、スイッチング素子13-1がオンとなり、スイッチング素子13-2がオフとなる場合には、電源11から力率改善回路12及びスイッチング素子13-1を介して送信コイル14へ電流が流れ、コンデンサ15が充電される。一方、スイッチング素子13-1がオフとなり、スイッチング素子13-2がオンとなる場合には、コンデンサ15が放電して、コンデンサ15から送信コイル14及びスイッチング素子13-2を介して電流が流れる。したがって、この変形例では、制御回路が、受電装置3から受信した判定情報に応じて、ゲートドライバ17-2を介して、スイッチング素子13-1とスイッチング素子13-2のオン/オフを切り替えるスイッチング周波数を制御すればよい。
図17(b)に示される電力供給回路120も、電力供給回路110と同様に、電源11と、力率改善回路12と、二つのスイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-2と、送信コイル14と直列に接続されるコンデンサ15とを有する。ただし、電力供給回路120は、電力供給回路110と比較して、送信コイル14の一端が電源11の正極側端子と力率改善回路12を介して接続され、送信コイル14の他端がコンデンサ15を介してスイッチング素子13-1のソース端子、及び、スイッチング素子13-2のドレイン端子と接続される。
この変形例でも、ゲートドライバ17-2が、制御回路からの制御信号に従って、スイッチング素子13-1とスイッチング素子13-2のオン/オフを交互に切り替えればよい。
なお、図17(a)に示される電力供給回路110及び図17(b)に示される電力供給回路120について、スイッチング周波数が調整される周波数範囲において送信コイル14とコンデンサ15とが共振回路として動作しないよう、送信コイル14とコンデンサ15の共振周波数は、受電装置3の共振回路20の共振周波数及びスイッチング周波数が調整される周波数範囲の下限周波数よりも小さくなるように、コンデンサ15の静電容量が設定されることが好ましい。
また、上記の実施形態または図9、図11あるいは図13に示される変形例において、送信コイル14と直列に接続される、直流遮断用のコンデンサ15が省略されてもよい。
さらに、図4に示される実施形態、及び、図9、11、図17(a)及び図17(b)に示される変形例において、電源と力率改善回路の代わりに、図16に示されるように、電圧可変電源が用いられてもよい。逆に、図16に示される変形例において、電圧可変電源の代わりに、図4に示される実施形態における電源と力率改善回路とが用いられてもよい。さらに、図16に示される変形例において、スイッチング周波数が調整されている間の所定の電圧を持つ電力を送信コイル54に供給可能なように、電圧可変電源51が構成されてもよい。この場合には、DC/DCコンバータ52及びスイッチング素子53-3は省略されてもよい。
また、送電装置2の受信器16と受電装置3の送信器33とを有線にて接続することが可能な場合には、受信器16及び送信器33は、それぞれ、判定情報を含む信号を有線にて通信可能な通信回路を有していればよい。
このように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。