JP7002853B2 - 研磨パッド及びその製造方法、並びに、研磨加工品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、研磨パッド及びその製造方法、並びに、研磨加工品の製造方法に関する。
近年、次世代パワー半導体素子材料として、ワイドバンドギャップ半導体である炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド、サファイア(Al23)及び窒化アルミニウム(AlN)などの材料が注目されている。例えば、炭化珪素(SiC)はSi半導体と比べてバンドギャップが3倍であり、絶縁破壊電界強度が約7倍である等優れた物性値を有しており、現在のシリコン半導体に比べ高温動作性に優れ、小型で省エネ効果も高いといった点で優れている。また、サファイアウエハについては、その化学的安定性、光学的特性(透明性)、機械的強度、熱的特性(熱伝導性)等から、光学的要素を持った電子機器、例えば高性能オーバーヘッドプロジェクター用部品としての重要性が高まりつつある。これらの次世代パワーデバイスの本格的普及に向けて、基板の大口径化・量産化が進められ、それに伴い、基板加工技術の重要性も増している。そのような基板の加工プロセスでは、Siと同様に、まず、ウエハに用いる円柱状単結晶(インゴット)をスライスすることで円盤状に切り出す。次に、スライスした円盤状単結晶の表面を平坦化するが、まずは、その表面を大まかに平坦化するため、ラッピング定盤を用いてラッピング加工を行う。その後、円盤状単結晶の表面の平坦性を更に向上させ、かつ、表面の微細な傷を除去して鏡面化するために、ポリシング加工を行う。
このような研磨加工においては、研磨粒子を含む研磨層組成物を、基材フィルムの一方の面にスクリーン印刷法で印刷し、電離放射線で硬化させて得られる研磨シートを用いる方法や(例えば、特許文献1参照)、飽和共重合ポリエステル樹脂に、一次粒子径が3μm未満の研磨粒子(固定砥粒)が分散された複数の研磨構造体が形成された研磨シートを用いて、遊離砥粒を用いずに研磨を行う方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2003-145433号公報 特開2009-72832号公報
しかしながら、特許文献1及び2に記載の研磨シートでは、研磨層(研磨構造体)表面に露出した研磨粒子のみが固定砥粒として機能し、研磨層内に埋没している研磨粒子は砥粒として作用しないため、経時的に研磨レートが低下し得る。経時的に研磨レートが変化するとその都度研磨条件を変更する必要性が生じるため、従来技術においては研磨レートの安定性について更に検討の余地がある。
この点について、研磨レートの安定性を向上させるために、研磨層が所望の崩壊性を有し、研磨とともに研磨層表面が所望の速度で徐々に削れることにより研磨層内に埋没している研磨粒子を新たに露出させることが考えられる。研磨層の崩壊性は、研磨層中の研磨粒子の体積割合に依存すると考えられ、研磨粒子の体積割合が多いほど崩壊性が向上するものと考えられる。
しかしながら、単純に研磨層中の研磨粒子の体積割合を増加させると崩壊性が極端に高まり、研磨パッドの寿命が極端に低下するという問題がある。これは、研磨に伴い崩壊した研磨層から研磨粒子が遊離し、遊離した研磨粒子が研磨層の崩壊を助長するように働くためと考えられる。また、研磨粒子として、研磨レートの観点からダイヤモンドなどの比較的高価な粒子を用いる場合、崩壊性向上の観点から研磨粒子の体積割合を増加させたとしても、崩壊性が高まりすぎることで研磨パッドの寿命が低下してしまうのではコスト的な観点から許容し難いという問題もある。一方で、単純に研磨粒子の体積割合を低下させると、研磨層を製造するために用いる組成物の粘度が変化し、スクリーン印刷などの手法により製造することが困難となる他、崩壊性も低下し、研磨レートも低下するという問題が生じる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、適切な崩壊性を有することにより、安定した研磨レートを維持することのできる研磨パッド及びその製造方法、並びに、その研磨パッドを用いた研磨加工品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、固定砥粒とは別に被研磨物の研磨にほぼ寄与しない充填材を用いることにより、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
基材と、該基材上に配された樹脂部と、を備え、
該樹脂部は、ロジン系化合物と、被研磨物の研磨に寄与する固定砥粒と、を有し、
前記ロジン系化合物の酸価が、50~150KOHmg/gである、
研磨パッド。
〔2〕
前記樹脂部が、ロジン系化合物以外の樹脂をさらに含み、
該樹脂が、アクリルフェノール系樹脂を含む、
〔1〕に記載の研磨パッド。
〔3〕
前記固定砥粒が、ダイヤモンド砥粒、酸化セリウム砥粒、アルミナ砥粒、炭化珪素砥粒、酸化珪素砥粒、ジルコニア砥粒、酸化鉄砥粒、酸化マンガン砥粒、酸化マグネシウム砥粒、酸化カルシウム砥粒、酸化バリウム砥粒、酸化亜鉛砥粒、炭酸バリウム砥粒、及び炭酸カルシウム砥粒からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、
〔1〕又は〔2〕に記載の研磨パッド。
〔4〕
前記ロジン系化合物以外の樹脂の含有量が、前記樹脂部の総量に対して、5~45質量%である、
〔2〕又は〔3〕に記載の研磨パッド。
〔5〕
前記ロジン系化合物の含有量が、前記樹脂部の総量に対して、2.5~50質量%である、
〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔6〕
前記固定砥粒の含有量が、前記樹脂部の総量に対して、30~60質量%である、
〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔7〕
前記基材が、ポリエステル系フィルムを含む、
〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔8〕
前記基材の前記樹脂部とは反対側に、接着層をさらに備える、
〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔9〕
基材の上に、酸価が50~150KOHmg/gであるロジン系化合物と、被研磨物の研磨に寄与する固定砥粒と、を含む硬化性組成物を付着させる付着工程と、
付着した前記硬化性組成物を硬化させて樹脂部を得る硬化工程と、を有する、
研磨パッドの製造方法。
〔10〕
〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨する研磨工程を有する、
研磨加工品の製造方法。
本発明によれば、適切な崩壊性を有することにより、安定した研磨レートを維持することのできる研磨パッド及びその製造方法、並びに、その研磨パッドを用いた研磨加工品の製造方法を提供することができる。
本実施形態の研磨パッドの一例を示す概略的な正面図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
〔研磨パッド〕
本実施形態の研磨パッドは、基材と、該基材上に配された樹脂部と、を備え、該樹脂部は、ロジン系化合物と、被研磨物の研磨に寄与する固定砥粒と、を有する。
図1に、本実施形態の研磨パッドの一例を示す概略的な正面図を示す。図1に示されるように、この研磨パッド10は、基材12と、該基材12上に配された樹脂部11とを備える。図1では、基材12の表面上に樹脂部11による複数のドットが配置されて凹凸パターン(ポジパターン)が形成されている。ただし、樹脂部11は、図1に示すように基材12と共に凹凸パターンを構成するものであっても、基材表面上に形成された一様な層であってもよい。また、凹凸パターンは、一様な層がドット状に打ち抜かれるようにして形成された樹脂部11によるパターン(ネガパターン)であってもよい。なお、本実施形態の研磨パッドは、必要に応じて、後述する接着層を有していてもよい。
図1に示されるように、本実施形態の研磨パッドでは、ロジン系化合物(不図示)の存在により、樹脂部の崩壊性が制御されたものとなり、研磨が進むと共に樹脂部11の研磨面が徐々に削れ、樹脂部11に埋め込まれていた固定砥粒13が露出した新たな研磨面が形成される。
樹脂部が固定砥粒を有し、ロジン系化合物を有しない場合であって、樹脂自体の崩壊性が小さい場合、表面から突出している固定砥粒は研磨に寄与するが、樹脂部の崩壊性が抑制されることにより内部の固定砥粒が表面に露出し難く、経時的に研磨レートが低下し得る。これに対して、樹脂部が固定砥粒を有し、ロジン系化合物を有しない場合であって、樹脂自体の崩壊性が大きい場合には、樹脂部の崩壊により固定砥粒の露出・脱離が進み、脱離した(遊離化した)固定砥粒が樹脂を研磨することによりさらに樹脂部の崩壊が促進され、加速度的に崩壊が進むことにより研磨パッドのライフが短くなる。
なお、樹脂部の崩壊性の制御方法としては、樹脂部に用いる樹脂の選択等により硬度や脆性を変化させる方法や、樹脂部に用いる固定砥粒の割合を増加させて樹脂部の脆性を変化させる方法や、研磨に寄与し難い充填剤を樹脂部に混合し樹脂部の脆性を変化させる方法や、研磨中に流すルブリカントの中に(被研磨物の研磨ではなく)樹脂崩壊に寄与するホワイトアルミナなどの成分を添加する方法など、物理的に崩壊を制御する方法などが考えられる。
これに対して、本実施形態の研磨パッドは、樹脂部にロジン系化合物を混合することで、化学的に樹脂部の崩壊を制御しようとしたものであり、スクリーン印刷など製造時において要求される樹脂の特性を変更することなく、崩壊性を適度に制御するものである。特に、樹脂部を物理的に崩壊しやすくする方法では、研磨レートに直接的に影響のある樹脂や砥粒または充填剤を変更する必要があるが、化学的に樹脂部の崩壊を制御する本実施形態の研磨パッドにおいては、研磨レートを低下させることなく崩壊性を制御することが可能となる。
〔基材〕
基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム;ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、エチレン-プロピレン共重合体フィルム等のポリオレフィン系フィルム;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルムが挙げられる。基材としては上面に後述する樹脂を形成可能なものであれば特に限定されず、耐薬品性・耐熱性・経済性などの観点からポリエステル系フィルムが好ましい。
〔樹脂部〕
樹脂部は、基材上に配され、ロジン系化合物と、被研磨物の研磨に寄与する固定砥粒と、を有する。また、樹脂部は、必要に応じて、ロジン系化合物の樹脂と、研磨に寄与し難い充填材を含んでいてもよい。
〔固定砥粒〕
固定砥粒としては、特に制限されないが、例えば、ダイヤモンド砥粒、酸化セリウム砥粒、アルミナ砥粒、炭化珪素砥粒、酸化珪素砥粒、ジルコニア砥粒、酸化鉄砥粒、酸化マンガン砥粒、酸化マグネシウム砥粒、酸化カルシウム砥粒、酸化バリウム砥粒、酸化亜鉛砥粒、炭酸バリウム砥粒、及び炭酸カルシウム砥粒からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。このなかでも、ダイヤモンド砥粒が好ましい。このような固定砥粒を用いることにより、研磨レートがより向上する傾向にある。
固定砥粒の含有量は、樹脂部の総量に対して、好ましくは30~60質量%であり、より好ましくは35~55質量%であり、さらに好ましくは40~50質量%である。固定砥粒の含有量が30質量%以上であることにより、研磨レートがより向上する傾向にある。また、固定砥粒の含有量が60質量%以下であることにより、研磨レートの安定性がより向上する傾向にある。
〔ロジン系化合物〕
ロジン系化合物としては、特に制限されないが、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸などのロジン酸;水添ロジン、マレイン化ロジン、ホルミル化ロジン、重合ロジンなどのロジン誘導体;ジンクロジネート、カルシウムロジネート、カッパーロジネート、マグネシウムロジネートなどのロジン金属塩が挙げられる。このなかでも、ロジン酸がより好ましい。ロジン酸は、その採取方法によりトールロジン、ガムロジン、ウッドロジンに大別される。ロジン酸の主成分は、3つの環構造、共役2重結合、カルボキシル基を有するアビエチン酸とその異性体の混合物であり、反応性に富んだバルキーな構造を有する。このようなロジン系化合物を用いることにより、崩壊性が調整され研磨レートの安定性がより向上する傾向にある。
ロジン系化合物の組成は酸価によっても規定することができる。ロジン系化合物の酸価は、好ましくは50~200KOHmg/gであり、より好ましくは80~150KOHmg/gであり、さらに好ましくは90~110KOHmg/gである。ロジン系化合物の酸価が、50KOHmg/g以上であることにより、樹脂部の乾燥性がより向上し、200KOHmg/g以下であることにより、樹脂部のクラック発生をより抑制できる傾向にある。
ロジン系化合物の含有量は、樹脂部の総量に対して、好ましくは2.5~50質量%であり、より好ましくは5~45質量%であり、さらに好ましくは7.5~35質量%であり、特に好ましくは10~25質量%である。ロジン系化合物の含有量が2.5質量%以上であることにより、研磨レートの安定性がより向上する傾向にある。また、ロジン系化合物の含有量が50質量%以下であることにより、研磨レートがより向上する傾向にある。
〔樹脂〕
樹脂部はロジン系化合物以外の樹脂をさらに含んでもよい。樹脂としては、特に限定されないが、例えば、分子内にエーテル又はエステル結合を有するポリウレタン、ポリウレタンポリウレア、ポリウレタンアクリレート等のポリウレタン系樹脂;ポリアクリレート、アクリルフェノール系樹脂、ポリアクリロニトリル等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のビニル系樹脂;ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等のポリサルホン系樹脂;アセチル化セルロース、ブチリル化セルロース等のアシル化セルロース系樹脂;ポリアミド系樹脂;及びポリスチレン系樹脂が挙げられる。このなかでも、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂が好ましく、アクリルフェノール系樹脂及び/又はポリウレタンアクリレートがより好ましく、アクリルフェノール系樹脂がさらに好ましい。このような樹脂を用いることにより、研磨レートがより向上する傾向にある。なお、樹脂部を構成する樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ロジン系化合物以外の樹脂の含有量は、樹脂部の総量に対して、好ましくは0~50質量%であり、より好ましくは5~45質量%であり、さらに好ましくは10~40質量%であり、特に好ましくは15~35質量%である。樹脂の含有量が0質量%以上であることにより、研磨レートがより向上する傾向にある。また、樹脂の含有量が50質量%以下であることにより、研磨レートの安定性がより向上する傾向にある。
〔研磨に寄与し難い充填材〕
樹脂部は研磨に寄与し難い充填材(以下、単に「充填材」ともいう。)をさらに含んでもよい。充填材としては、固定砥粒との関係において、「研磨に寄与し難い」といえるものであれば特に制限されないが、例えば、シリカ、及び酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。このような、充填剤を用いることにより、樹脂部の崩壊性がより向上する傾向にある。ここで、「研磨に寄与する」及び「研磨に寄与し難い」とは、研磨に寄与する砥粒を遊離砥粒として含むスラリーを用いた場合の研磨レートAと、研磨に寄与し難い充填材を遊離砥粒として含むスラリーを用いた場合の研磨レートBとの対比において、研磨レートAを1としたときに研磨レートBが0.1以下となるような関係をいう。ここで、研磨レートA、Bの測定条件は、遊離砥粒が異なる他は、スラリーにおける遊離砥粒の含有量(質量基準)を含め、同一である。
充填材の含有量は、樹脂部の総量に対して、好ましくは5~35質量%であり、より好ましくは7.5~30質量%であり、さらに好ましくは10~25質量%である。充填剤の含有量が5質量%以上であることにより、樹脂部の崩壊性がより高まり、研磨レートの安定性がより向上する傾向にある。また、充填剤の含有量が35質量%以下であることにより、相対的に固定砥粒が増えるため研磨レートがより向上する傾向にあると共に、研磨パッドのライフがより向上する傾向にある。
また、充填材の含有量は、固定砥粒と充填材の総体積100体積%に対して、好ましくは10~70体積%であり、より好ましくは20~60体積%であり、さらに好ましくは25~50体積%である。充填剤の含有量が10体積%以上であることにより、樹脂部の崩壊性がより向上し、研磨レートの安定性がより向上する傾向にある。また、充填剤の含有量が70体積%以下であることにより、相対的に固定砥粒が増えるため研磨レートがより向上する傾向にある。なお、後述する硬化性組成物の粘度等は、固定砥粒と充填材の総質量よりも総体積に依存する傾向がある。
〔樹脂部のパターン〕
樹脂部は、基材表面上に一様な層として形成されていてもよいし、単独で又は基材と共に凹凸パターンを構成するように形成されていてもよい(図1参照)。このなかでも、ルブリカント等の研磨時に使用する液体成分を研磨面に供給又は排出する観点から、樹脂部は規則的な凹凸パターンを構成することが好ましい。規則的なパターンを有することにより、均質な研磨を可能とし、面品位に優れた研磨を達成し得る。なお、「規則的なパターン」とは、単位となる小パターンを複数並べて得られるパターンをいう。また、樹脂部の基材と反対側の表面は、被研磨物を研磨するための研磨面となる。
凹凸パターンとしては、被研磨物に接触する部分(凸部)と、被研磨物に接触しない部分(凹部)とを有するパターンであれば特に限定されないが、例えば、図1に示すような樹脂部11が基材12上に独立して形成されたポジパターン(ドット状の凸部を有するパターン);樹脂部が基材上に連続して形成されたネガパターン(ドット状の凹部を有するパターン);ドーナツ状の凸部を有するパターン;略C型の凸部を有するパターン;同心円状に、被研磨物に接触する部分と被研磨物に接触しない部分とを有するパターン;格子状に、被研磨物に接触する部分と被研磨物に接触しない部分とを有するパターン;放射状に、被研磨物に接触する部分と被研磨物に接触しない部分とを有するパターン;螺旋状に、被研磨物に接触する部分と被研磨物に接触しない部分とを有するパターン;又はこれらを組み合わせて構成されたパターンが挙げられる。このなかでも、ドット状の凸部を有するパターン、又は、ドット状の凹部を有するパターンが好ましい。このような凹凸パターンを有することにより、研磨レートがより向上する傾向にある。
なお、ドット状の凸部を有するパターンの場合のドットの立体形状は、特に制限されず、例えば半球状、略半球状、球帽状、略球帽状、球帯状、略球帯状、半楕円体状、略半楕円体状、柱状(円柱状、略円柱状、楕円柱状、略楕円柱状、多角柱状)、錐台状(円錐台状、略円錐台状、楕円錐台状、略楕円錐台状、多角錐台状)が挙げられる。上記のうち、錐台状は、基材側から研磨面側に向けて広がる錐台状であってもよく、研磨面側から基材側に向けて広がる錐台状であってもよい。また、ドット状の凹部を有するパターンの場合の凹部における空間の立体形状も、ドット状の凸部を有するパターンの場合の立体形状と同様のものを例示できる。
〔接着層〕
本実施形態の研磨パッドは、基材の樹脂部とは反対側に、研磨機の研磨定盤に研磨パッドを貼着するための接着層をさらに備えてもよい。接着層は、従来知られている研磨パッドに用いられている接着剤又は粘着剤を含むものであってもよい。接着層の材料としては、例えば、アクリル系接着剤、ニトリル系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤等の各種熱可塑性接着剤が挙げられる。接着層は、例えば両面テープであってもよい。
〔アンカー層〕
本実施形態の研磨パッドは、基材と樹脂部との間にアンカー層を有していてもよい。アンカー層を有することにより、基材と樹脂部との密着性をより向上する傾向にある。アンカー層を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂コート剤が挙げられる。
〔研磨パッドの製造方法〕
本実施形態の研磨パッドの製造方法は、基材の上に、ロジン系化合物と、被研磨物の研磨に寄与する固定砥粒と、を含む硬化性組成物を付着させる付着工程と、付着した前記硬化性組成物を硬化させて樹脂部を得る硬化工程と、を有する。
〔付着工程〕
付着工程では、基材の上に、ロジン系化合物と、被研磨物の研磨に寄与する固定砥粒と、を含む硬化性組成物を付着させる。この際に、樹脂部が所望の凹凸パターンを形成するように、基材の上に硬化性組成物を付着させてもよい。また、硬化性組成物は、ロジン系化合物の樹脂と、被研磨物の研磨に寄与し難い充填材と、をさらに含んでいてもよい。
基材の上に硬化性組成物を付着させる方法としては、特に限定されないが、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等が挙げられる。これらの中では、複雑な凹凸パターンの形成のしやすさの観点から、スクリーン印刷法が好ましい。
(硬化性組成物)
硬化性組成物としては、ロジン系化合物と、被研磨物の研磨に寄与する固定砥粒と、を含むものであれば特に限定されないが、これに加えて、樹脂や被研磨物の研磨に寄与しない充填剤を含んでもよい。さらに、硬化性組成物は、光重合開始剤及び重合性化合物を含む光硬化性組成物、熱重合開始剤及び重合性化合物を含む熱硬化性組成物、熱硬化性樹脂、UV硬化樹脂、2液混合型の硬化樹脂を含む硬化性組成物等としてもよい。また、硬化性組成物は、必要に応じて、重合性官能基を2以上有する架橋剤等を含んでもよい。
重合性化合物としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、チオチサントン系化合物が挙げられる。また、熱重合性開始剤としては、特に限定されないが、例えば、2,2’-アゾビスブチロニトリルのようなアゾ化合物、過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレア樹脂、ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
UV硬化樹脂としては、特に限定されないが、例えば、数平均分子量1000~10000程度のプレポリマーが良く、材料としてはアクリル(メタクリル)系エステルやそのウレタン変性物、チオコール系等が挙げられ、適宜用途に応じて反応性希釈剤や有機溶剤を用いることができる。また、2液混合型の硬化樹脂としては、特に限定されないが、例えば、異なる物性のプレポリマーを用いることができる。
〔硬化工程〕
硬化工程は、付着した硬化性組成物を硬化させて樹脂部を得る工程である。硬化方法としては、特に限定されないが、例えば、光硬化、熱硬化等が挙げられる。得られる樹脂部は、一部の固定砥粒と充填材が表面に露出し、その他の固定砥粒が樹脂中に埋め込まれたものとなる。
〔その他の工程〕
本実施形態の研磨パッドの製造方法は、必要に応じて、その他の工程等を有してもよい。例えば、付着工程の後、硬化工程の前に硬化性組成物中の揮発成分の少なくとも一部を揮発除去する工程を有していてもよい。また、付着工程の後であって硬化工程の前、及び/又は、硬化工程の後に、所望の凹凸パターンを形成するために、硬化性組成物や樹脂部の一部を除去する工程を有していてもよい。除去する方法としては、例えば、切削が挙げられる。
〔研磨加工品の製造方法〕
本実施形態の研磨加工品の製造方法は、上記研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨する研磨工程を有する方法であれば、特に限定されない。研磨工程は、1次ラッピング研磨(粗ラッピング)であってもよく、2次ラッピング(仕上げラッピング)であってもよく、ポリッシング研磨であってもよく、これらのうち複数の研磨を兼ねるものであってもよい。
被研磨物としては、特に限定されないが、例えば、半導体デバイス、電子部品等の材料、特に、Si基板(シリコンウェハ)、SiC(炭化珪素)基板、GaAs(ガリウム砒素)基板、ガラス、ハードディスクやLCD(液晶ディスプレイ)用基板等の薄型基板(被研磨物)が挙げられる。このなかでも、本実施形態の研磨加工品の製造方法は、パワーデバイス、LEDなどに適用され得る材料、例えば、サファイア、SiC、GaN、及びダイヤモンドなど、研磨加工の困難な難加工材料の製造方法として好適に用いることができる。これらの中では、本実施形態の研磨パッドによる作用効果をより有効に活用できる観点から、半導体ウエハが好ましく、SiC基板、サファイア基板又はGaN基板が好ましい。その材質としては、SiC単結晶及びGaN単結晶等の難削材が好ましいが、サファイア、窒化珪素、窒化アルミニウムの単結晶などであってもよい。
〔研磨工程〕
研磨工程は、上記研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨する工程である。研磨方法としては、従来公知の方法を用いることができ、特に限定されない。研磨工程において用いるクーラント液のpHは、好ましくは7超過であり、より好ましくは7.5~11であり、さらに好ましくは8~10である。クーラント液のpHが上記範囲内であることにより、研磨レートと研磨レートの安定性の両立を図ることができる。クーラント液のpHは純水に溶解させる水酸化カリウム(KOH)の量により調整する。
研磨方法では、まず、研磨装置の所定位置に研磨パッドを装着する。この装着の際には、上述の接着層を介して、研磨パッドが研磨装置に固定されるよう装着される。そして、研磨定盤としての研磨パッドと対向するように配置された保持定盤に保持させた被研磨物を研磨面側へ押し付けると共に、外部からクーラント液を供給しながら、研磨パッド及び/又は保持定盤を回転させる。これにより、研磨パッドと被研磨物との間に供給された砥粒の作用で、被研磨物の加工面(被研磨面)に研磨加工を施す。
ルブリカントの分散媒としては、例えば、水及び有機溶媒が挙げられ、被研磨物の変質をより抑制する観点から、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、一般的に沸点110~300℃程度の有機溶媒が適する。有機溶媒の種類には、脂肪族及び芳香族、環状炭化水素やエステル、エーテル、アミン、アミド系、ケトン類等の市販の有機溶媒を樹脂や作業的性に応じて適宜選択できる。溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、溶媒には、必要に応じて、その他の添加剤が含まれていてもよい。そのような添加剤としては、例えば極性化合物が挙げられ、具体的には、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド及びカルボン酸が挙げられる。さらに、消泡剤、分散剤、レベリング剤、粘性改良材として、各種シリコーン、無機微粉末を添加することができる。
なお、研磨加工時に研磨パッドと被研磨物との間の摩擦に伴う温度上昇を抑制する観点から、砥粒を含まず、添加剤を含んでもよい溶媒を研磨パッドの研磨面に適宜供給してもよい。その溶媒及び添加剤の例としては上記のものが挙げられる。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
〔研磨試験1〕
研磨パッドを研磨装置の所定位置に両面テープを介して設置し、被研磨物としての2インチのシリコンウエハに対して、下記条件にて研磨を施す研磨試験を行った。研磨試験1では、研磨時間が10分、20分、30分、40分、50分、60分、70分、80分、90分、100分、110分のときの研磨レートをそれぞれ算出した。
(研磨条件)
定盤回転数 :60rpm
面圧力 :150gf/cm2
クーラント液流量 :100cc/min
クーラント液 :溶媒純水にKOHを加えpHを調整
(研磨レート)
研磨レート(単位:μm/h)は、上記研磨試験1及び2の研磨前後の被研磨物の質量減少から求めた研磨量、被研磨物の研磨面積及び比重から、研磨により除去された厚さを算出し、時間当たりの除去された厚さとして評価した。なお、厚さは、加工前後の被研磨物の質量減少から求めた研磨量、被研磨物の研磨面積及び比重から算出した。なお、研磨試験は、3枚のシリコンウエハに対して行い、その加重平均を研磨レートとした。
〔実施例1〕
固定砥粒としてダイヤモンド砥粒(トラストウェル社製、平均粒径9μm)60質量部と、マレイン化ロジン(荒川化学工業社製、酸価90~110KOHmg/g)40質量部と混合し、硬化性組成物を調製した。
基材であるポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製、製品名コスモシャイン A4300、厚さ250μm)上に、スクリーン印刷にて、ドット状の凸部である略半球状のドットが凹凸パターンで規則的に配列されるように硬化性組成物を塗布した。その後、硬化性組成物を加熱することにより硬化させ、樹脂部を形成した。
最後に、基材の樹脂部とは反対側に、接着層として両面テープ(3M社製、製品名フィルム基材両面粘着テープ 442JS)を貼り付けて、実施例1の研磨パッドを得た。得られた研磨パッドにおいて、ドットの直径は2mm、隣接するドット同士の最近接距離は0.5mmであった。
実施例1においては、クーラント液のpHを初めの20分間は7とし、続く40分間は9とし、最後の10分間は11とした場合の研磨試験を行った。
〔実施例2〕
固定砥粒としてダイヤモンド砥粒(トラストウェル社製、平均粒径9μm)60質量部と、マレイン化ロジン(荒川化学工業社製、酸価90~110KOHmg/g)20質量部と、アクリルフェノール樹脂(荒川化学工業社製)20質量部とを混合し、硬化性組成物を調製した。その他の工程は実施例1と同様に行い、実施例2の研磨パッドを得た。
実施例2においては、クーラント液のpHを一律10とした場合の研磨試験を行った。
〔実施例3〕
固定砥粒としてダイヤモンド砥粒(トラストウェル社製、平均粒径9μm)60質量部と、マレイン化ロジン(荒川化学工業社製、酸価90~110KOHmg/g)12質量部と、アクリルフェノール樹脂(荒川化学工業社製)28質量部とを混合し、硬化性組成物を調製した。その他の工程は実施例1と同様に行い、実施例3の研磨パッドを得た。
実施例3においては、クーラント液のpHを一律9とした場合の研磨試験と、pHを一律10とした場合の研磨試験を行った。
〔比較例1〕
固定砥粒としてダイヤモンド砥粒(トラストウェル社製、平均粒径9μm)60質量部と、アクリルフェノール樹脂(荒川化学工業社製)40質量部とを混合し、硬化性組成物を調製した。その他の工程は実施例1と同様に行い、比較例1の研磨パッドを得た。
比較例1においては、クーラント液のpHを一律7とした場合の研磨試験を行った。
Figure 0007002853000001
*1 ドット消失
*2 ドットが残っているものの研磨レートが15μm/hr以下に低下
比較例1では、樹脂部にロジン化合物を含まないため、崩壊性が低くすぐに研磨レートの低下が見られ、20分以降は樹脂部のドットが残っているにも関わらず研磨レートの向上が見られなかった。
一方、実施例1では、pHを変化しながら崩壊性を確認したところ、中性条件(pH7)である最初の20分は比較例1と同様の傾向を示したが、その後pHを9に上げると崩壊性が上がり研磨レートが15μm/hrより大きくなった。60分まで研磨すると研磨レートの低下が見られたため、pHを11まで上昇させると崩壊性がさらに上がり、高い研磨レートを示すとともに、樹脂部のドットが消失した。
実施例2では、pHを10に固定し崩壊性を確認したところ、研磨レートは徐々に低下するものの、比較例1よりも長い間研磨レートを維持でき、樹脂部のドットが消失した。
実施例3では、pHを9及び10に固定し崩壊性を確認したところ、さらに長い時間高い研磨レートを維持することができた。
本発明の研磨パッドは、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク用のガラス基板等のラッピングや研磨、特にサファイアやSiCなどのラッピングや研磨用の研磨パッドとして産業上の利用可能性を有する。
10…研磨パッド、11…樹脂部、12…基材、13…固定砥粒

Claims (10)

  1. 基材と、該基材上に配された樹脂部と、を備え、
    該樹脂部は、ロジン系化合物と、被研磨物の研磨に寄与する固定砥粒と、を有し、
    前記ロジン系化合物の酸価が、50~150KOHmg/gである
    研磨パッド。
  2. 前記樹脂部が、ロジン系化合物以外の樹脂をさらに含み、
    該樹脂が、アクリルフェノール系樹脂を含む、
    請求項に記載の研磨パッド。
  3. 前記固定砥粒が、ダイヤモンド砥粒、酸化セリウム砥粒、アルミナ砥粒、炭化珪素砥粒、酸化珪素砥粒、ジルコニア砥粒、酸化鉄砥粒、酸化マンガン砥粒、酸化マグネシウム砥粒、酸化カルシウム砥粒、酸化バリウム砥粒、酸化亜鉛砥粒、炭酸バリウム砥粒、及び炭酸カルシウム砥粒からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、
    請求項1又は2に記載の研磨パッド。
  4. 前記ロジン系化合物以外の樹脂の含有量が、前記樹脂部の総量に対して、5~45質量%である、
    請求項2又は3に記載の研磨パッド。
  5. 前記ロジン系化合物の含有量が、前記樹脂部の総量に対して、2.5~50質量%である、
    請求項1~のいずれか1項に記載の研磨パッド。
  6. 前記固定砥粒の含有量が、前記樹脂部の総量に対して、30~60質量%である、
    請求項1~のいずれか1項に記載の研磨パッド。
  7. 前記基材が、ポリエステル系フィルムを含む、
    請求項1~のいずれか1項に記載の研磨パッド。
  8. 前記基材の前記樹脂部とは反対側に、接着層をさらに備える、
    請求項1~のいずれか1項に記載の研磨パッド。
  9. 基材の上に、酸価が50~150KOHmg/gであるロジン系化合物と、被研磨物の研磨に寄与する固定砥粒と、を含む硬化性組成物を付着させる付着工程と、
    付着した前記硬化性組成物を硬化させて樹脂部を得る硬化工程と、を有する、
    研磨パッドの製造方法。
  10. 請求項1~のいずれか1項に記載の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨する研磨工程を有する、
    研磨加工品の製造方法。
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