JP2023124048A - 研磨パッド及びその製造方法 - Google Patents

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堅一 小池
Kenichi Koike
真治 岡田
Shinji Okada
一恵 梶原
Kazue Kajiwara
克樹 永井
Katsuki Nagai
正孝 高木
Masataka Takagi
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Abstract

【課題】適切な崩壊性を有することにより、被研磨物の面品位を安定して維持することができる研磨パッド及びその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】 基材と、該基材上に配された研磨部と、を備え、該研磨部は、樹脂と、研磨粒子と、スペーサー粒子と、を含み、前記スペーサー粒子の平均粒子径D1が、3.5~15μmであり、前記スペーサー粒子の粒度分布におけるSD値が、3.0~10μmである、研磨パッド。【選択図】図1

Description

本発明は、研磨パッド及びその製造方法に関する。
ハードディスクドライブ等の磁気ディスク、EUV光を用いたリソグラフィの際に使用される反射型マスクの基材として使用されるガラス基板、スマートフォンやタブレットなど、モバイル端末の液晶基板やカバーガラス等の素材として使用されるガラス基板など、各種ガラス材料の表面は高い平滑性や微小欠陥が限りなく少ないことが求められる。このようなガラス材料の表面加工には一般に研磨粒子を有する研磨パッドが使用されている。
具体的には、平均粒子径の異なる2種の砥粒を含む研磨層をそなえる研磨材や(特許文献1)、研削砥粒と、研削砥粒を結合する結合材と、結合材よりも硬く研削砥粒よりも柔らかい分散粒と、を備える切削工具が提案されている(特許文献2)。
国際公開2017/163565号公報 特開2018-092697号公報
特許文献1に記載の研磨材では、平均粒子径の小さい砥粒が先に脱落することで、平均粒子径の大きい砥粒の脱落が促進され、研削力を維持することが記載されている。しかしながら、当該技術では研磨面の摩耗性が高く、研磨面が荒れやすくなるため、被研磨物表面の平坦性の向上に限界がある。
また、特許文献2記載の切削工具では、砥粒を脱落させて研磨性能の維持を図るのではなく、研削砥粒に係る力を分散粒によって分散することにより、加工速度と加工品質の両立を図ることが記載されている。しかしながら、当該技術では研削砥粒を脱落させないため、いずれ研磨レートが低下し得るという問題を内包する。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、適切な崩壊性を有することにより、被研磨物の面品位を安定して維持することができる研磨パッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、所定の平均粒子径D1と粒度分布を有するスペーサー粒子を用いることにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
基材と、該基材上に配された研磨部と、を備え、
該研磨部は、樹脂と、研磨粒子と、スペーサー粒子と、を含み、
前記スペーサー粒子の平均粒子径D1が、3.5~15μmであり、
前記スペーサー粒子の粒度分布において下記式(1)で表されるSD値が、3.0~10μmである、
研磨パッド。
式(1): SD値=(d84%-d16%)/2
(式(1)中、d16%は、体積基準の粒子径の累積分布において小径からの積算値が全体の16%に達したときの粒子径(μm)を表し、d84%は、体積基準の粒子径の累積分布において小径からの積算値が全体の84%に達したときの粒子径(μm)を表す。)
〔2〕
前記スペーサー粒子の含有量が、前記研磨部100質量部に対して、40~70質量部である、
〔1〕に記載の研磨パッド。
〔3〕
粒子径10μm以下の前記スペーサー粒子の含有量が、前記スペーサー粒子の総量に対して、50~80質量%である、
〔1〕又は〔2〕に記載の研磨パッド。
〔4〕
粒子径50μm以上の前記スペーサー粒子の含有量が、前記スペーサー粒子の総量に対して、1.0~3.0質量%である、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔5〕
前記スペーサー粒子が、針状形状を有する、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔6〕
前記研磨粒子の含有量が、前記研磨部100質量部に対して、1.5~20質量部である、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔7〕
前記研磨粒子の平均粒子径D2が、15~100μmである、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔8〕
前記スペーサー粒子の平均粒子径D1に対する前記研磨粒子の平均粒子径D2の比(D2/D1)が、1.5~10である、
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔9〕
前記研磨粒子が、研磨微粒子とマトリクス粒子とを含む複合粒子を含み、
前記マトリクス粒子がガラスフリットを含む、
〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔10〕
前記研磨粒子が、ダイヤモンド、酸化セリウム、炭化珪素、酸化珪素、ジルコニア、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、珪酸ジルコニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、炭酸バリウム、及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、
〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔11〕
前記研磨部が、平均粒子径D3が0.5~4.5μmである補助粒子をさらに含む、
〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔12〕
基材の上に、樹脂と、研磨粒子と、スペーサー粒子と、を含む硬化性組成物を付着させる付着工程と、
付着した前記硬化性組成物を硬化させて研磨部を得る硬化工程と、を有し、
前記スペーサー粒子の平均粒子径D1が、3.5~15μmであり、
前記スペーサー粒子の粒度分布において下記式(1)で表されるSD値が、3.0~10μmである、
研磨パッドの製造方法。
式(1): SD値=(d84%-d16%)/2
(式(1)中、d16%は、体積基準の粒子径の累積分布において小径からの積算値が全体の16%に達したときの粒子径(μm)を表し、d84%は、体積基準の粒子径の累積分布において小径からの積算値が全体の84%に達したときの粒子径(μm)を表す。)
本発明によれば、適切な崩壊性を有することにより、非研磨物の面品位を安定して維持することができる研磨パッド及びその製造方法を提供することができる。
本実施形態の研磨パッドを示す斜視図である。 本実施形態の研磨パッドを示す拡大断面図である。 実施例1において使用した珪灰石Aの電子顕微鏡写真である。 実施例2において使用した珪灰石Bの電子顕微鏡写真である。 比較例1において使用した珪灰石Cの電子顕微鏡写真である。 実施例及び比較例において使用した珪灰石の粒度分布を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
1.研磨パッド
本実施形態の研磨パッドは、基材と、該基材上に配された研磨部と、を備え、該研磨部は、樹脂と、研磨粒子と、スペーサー粒子と、を含み、スペーサー粒子の平均粒子径D1が、3.5~15μmであり、スペーサー粒子の粒度分布において下記式(1)で表されるSD値が、3.0~10μmである。
式(1): SD値=(d84%-d16%)/2
(式(1)中、d16%は、体積基準の粒子径の累積分布において小径からの積算値が全体の16%に達したときの粒子径(μm)を表し、d84%は、体積基準の粒子径の累積分布において小径からの積算値が全体の84%に達したときの粒子径(μm)を表す。)
図1に、本実施形態の研磨パッドを表す概略斜視図を示す。図1に示されるように、この研磨パッド10は、基材12と、該基材12上に配された研磨部11とを備える。図1では、基材12の表面上に研磨部11による複数の凸部が配置されて凹凸パターンが形成されている。
研磨部11は、図1に示すように基材12と共に凹凸パターンを構成するものであっても、基材表面上に形成された一様な層であってもよい。また、凹凸パターンは、凸部が配置されて凹凸パターンのほかに、一様な層がドット状に打ち抜かれるようにして形成された研磨部11によるパターン(ネガパターン)であってもよく、それ以外の任意のパターンであってもよい。
図2に、本実施形態の研磨パッドを表す概略断面図を示す。図2に示されるように、本実施形態の研磨パッド10の研磨部11は、スペーサー粒子と、研磨粒子14とを結合するマトリクス15含む。研磨部11は、所定の平均粒子径D1と粒度分布を有するスペーサー粒子を含むことにより崩壊性が制御されたものとなる。これにより、研磨が進むと共に研磨部11の研磨面が徐々に削れ、研磨部11に埋め込まれていた研磨粒子14が露出した新たな研磨面が形成される。マトリクス15には樹脂とスペーサー粒子が含まれる。
以下、本実施形態の研磨パッドの各構成について詳説する。
1.1.基材
基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム;ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、エチレン-プロピレン共重合体フィルム等のポリオレフィン系フィルム;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム、ポリカーボネートフィルムが挙げられる。
基材としては上面に後述する樹脂を形成可能なものであれば特に限定されない。このなかでも、耐薬品性・耐熱性・経済性などの観点からポリステル系フィルムが好ましい。
1.2.研磨部
研磨部は、樹脂と、研磨粒子と、スペーサー粒子と、を含み、必要に応じてその他の補助粒子を含んでいてもよい。研磨部は、基材表面上に一様な層として形成されていてもよいし、単独で又は基材と共に凹凸パターンを構成するように形成されていてもよい(図1,2参照)。
このなかでも、クーラント等の研磨時に使用する液体成分を研磨面に供給又は排出する観点から、研磨部は規則的な凹凸パターンを構成することが好ましい。規則的なパターンを有することにより、均質な研磨を可能とし、面品位に優れた研磨を達成し得る。なお、「規則的なパターン」とは、単位となる小パターンを複数並べて得られるパターンをいう。また、研磨部の基材と反対側の表面は、被研磨物を研磨するための研磨面となる。
凹凸パターンとしては、被研磨物に接触する部分(凸部)と、被研磨物に接触しない部分(凹部)とを有するパターンであれば特に限定されないが、例えば、図1に示すような研磨部11が基材12上に独立して形成されたポジパターン(ドット状の凸部を有するパターン);研磨部が基材上に連続して形成されたネガパターン(ドット状の凹部を有する
パターン);ドーナツ状の凸部を有するパターン;略C型の凸部を有するパターン;同心円状に、被研磨物に接触する部分と被研磨物に接触しない部分とを有するパターン;格子状に、被研磨物に接触する部分と被研磨物に接触しない部分とを有するパターン;放射状に、被研磨物に接触する部分と被研磨物に接触しない部分とを有するパターン;螺旋状に、被研磨物に接触する部分と被研磨物に接触しない部分とを有するパターン;又はこれらを組み合わせて構成されたパターンが挙げられる。このなかでも、ドット状の凸部を有するパターン、が好ましい。このような凹凸パターンを有することにより、研磨屑排出性がより向上する傾向にある。
なお、ドット状の凸部を有するパターンの場合のドットの立体形状は、特に制限されず、例えば半球状、略半球状、球帽状、略球帽状、球帯状、略球帯状、半楕円体状、略半楕円体状、柱状(円柱状、略円柱状、楕円柱状、略楕円柱状、多角柱状)、錐台状(円錐台状、略円錐台状、楕円錐台状、略楕円錐台状、多角錐台状)が挙げられる。上記のうち、錐台状は、基材側から研磨面側に向けて広がる錐台状であってもよく、研磨面側から基材側に向けて広がる錐台状であってもよい。また、ドット状の凹部を有するパターンの場合の凹部における空間の立体形状も、ドット状の凸部を有するパターンの場合の立体形状と同様のものを例示できる。また、型に流し込んで硬化させる場合は、脱型出来うる形状が望ましい。
1.2.1.樹脂
樹脂としては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂や光硬化性樹脂が好ましく、例えば、分子内にエーテル又はエステル結合を有するポリウレタン、ポリウレタンポリウレア等のポリウレタン系樹脂;単官能アクリレート、二官能アクリレート、多官能アクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルフェノール系樹脂、ポリアクリロニトリル等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のビニル系樹脂;ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等のポリサルホン系樹脂;アセチル化セルロース、ブチリル化セルロース等のアシル化セルロース系樹脂;ポリアミド系樹脂;及びポリスチレン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、アルキド樹脂、フェノール変性アルキド樹脂、セルロース系樹脂が挙げられる。
このなかでも、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール編成アルキド樹脂が好ましい。このような樹脂を用いることにより、研磨レートがより向上する傾向にある。なお、研磨部を構成する樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
1.2.2.研磨粒子
研磨粒子は、研磨に寄与する成分のみからなる粒子であってもよいし、研磨に寄与する成分とマトリクス成分とからなる複合粒子であってもよい。このなかでも、研磨粒子は、研磨微粒子とマトリクス粒子とを含む複合粒子を含むことが好ましい。これにより、マトリクス粒子の摩耗に従って内部から新しい研磨微粒子が露出してくるので研磨効率を高めることができる。
研磨粒子の平均粒子径D2は、好ましくは10~100μmであり、より好ましくは25~90μmであり、さらに好ましくは35~80μmである。平均粒子径D2が、上記範囲内であることにより、研磨粒子が研磨パッドから脱離しにくく被研磨物の面品位をより安定して維持することができる。
なお、本実施形態において、「平均粒子径」とは、体積基準の粒子径の累積分布において小径からの積算値が全体の50%に達したときのd50粒子径(μm)を意味する。また、本実施形態において、平均粒子径をはじめとする粒子径に関する値は、例えば実施例に記載のレーザー回折式粒子径分布計により測定することができる。
研磨粒子の含有量は、研磨部100質量部に対して、好ましくは1.5~20質量部であり、より好ましくは2.5~15質量部であり、さらに好ましくは5.0~10質量部である。研磨粒子の含有量が1.5質量部以上であることにより、研磨レートがより向上する傾向にある。また、研磨粒子の含有量が20質量部以下であることにより、研削力がより向上する傾向にある。
1.2.2.1.研磨微粒子
研磨微粒子を構成する成分としては、特に限定されないが、研磨パッドの中で最も硬質な材料であり、最も研削能力の高い成分からなる。例えば、ダイヤモンド、酸化セリウム、炭化珪素、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、珪酸ジルコニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、炭酸バリウム、及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられ、中でもダイヤモンドが最も研削能力に優れるため好ましい。なお、これら研磨に寄与する成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
研磨微粒子の平均粒子径D21は、被研磨物やプロセスにもよるが、好ましくは1.0~20μmであり、より好ましくは2.0~12.5μmであり、さらに好ましくは3.0~10μmである。平均粒子径D21が、上記範囲内であることにより、研磨微粒子により被研磨物へ深い傷が形成されてしまうことを抑制することができる。
研磨粒子の平均粒子径D2に対する研磨微粒子の平均粒子径D21の比(D21/D2)は、好ましくは0.01~0.40であり、より好ましくは0.03~0.30であり、さらに好ましくは0.05~0.20である。平均粒子径の比(D21/D2)が、上記範囲内であることにより、深い傷を与えることがない研磨微粒子が研磨パッドから脱離しにくくなり、研磨レートの安定性がより向上する傾向にある。
研磨微粒子の含有量は、研磨粒子100質量部に対して、好ましくは3.0~30質量部であり、より好ましくは5.0~25質量部であり、さらに好ましくは10~20質量部である。研磨微粒子の含有量が、上記範囲内であることにより、研磨微粒子と被研磨物との接点が適度に多く、1つの研磨微粒子に加かかる負荷が大きくなりすぎないため研磨レートの安定性がより向上する傾向にある。
1.2.2.2.マトリクス粒子
マトリクス粒子を構成する成分としては、特に限定されないが、例えば、二酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化亜鉛、ホウ酸、テトラホウ酸ナトリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸銀、硝酸カリウム、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化銀、酸化ビスマス、及び酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むが挙げられる。このなかでも、二酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化亜鉛が好ましく、二酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化亜鉛を併用して主成分とするガラス材料を溶解成型後、粉末状にしたガラスフリットを使用することがより好ましい。このようなマトリクス粒子を用いることにより、コンディショニングによりマトリクス粒子の粉砕による研磨粒子の破砕が起きずに研磨微粒子を保持することのできる強度のある研磨粒子が得られ研磨をより安定して維持することができ、また得られる被研磨物の表面粗さがより低下する傾向にある。なお、これらマトリクス粒子は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
粉末状のマトリクス粒子の平均粒子径D22は、好ましくは1.0~20μmであり、より好ましくは2.0~12.5μmであり、さらに好ましくは3.0~10μmである。平均粒子径D22は研磨微粒子と同程度の大きさであると研磨粒子中の分布が均一になりやすく、研磨粒子間の研削能力のバラつきが小さくなり好ましい。
研磨粒子の平均粒子径D2に対するマトリクス粒子の平均粒子径D22の比(D22/D2)は、好ましくは0.01~0.40であり、より好ましくは0.03~0.30であり、さらに好ましくは0.05~0.20である。平均粒子径の比(D22/D2)が、上記範囲内であることにより、複合粒子化した際に、研磨微粒子の固定力に優れ研磨レートの安定性がより向上する傾向にある。
マトリクス粒子の含有量は、研磨粒子100質量部に対して、好ましくは40~97質量部であり、より好ましくは45~95質量部であり、さらに好ましくは50~90質量部である。マトリクス粒子の含有量が、上記範囲内であることにより、研磨微粒子と研磨微粒子の間隔が広がり、研磨加工時に研磨微粒子とワークとの接点が少なく、研磨微粒子1粒当たりにかかる負荷が大きく、研削力が上がり研磨レートが向上する傾向にある。
1.2.3.スペーサー粒子
スペーサー粒子としては、研磨微粒子よりモース硬度が小さい無機粒子が挙げられる。無機粒子の形状としては、特に限定されないが、例えば、ウイスカー状、柱状、薄片状、鱗片状の形状が挙げられる。また、このような無機粒子を構成する成分としては、特に限定されないが、例えば、硅酸カリウムアルミニウム(モース硬度6)、珪藻土(モース硬度6~7)、珪灰石(モース硬度4.5~5)等のケイ酸塩鉱物;酸化鉄(モース硬度6)、酸化チタン(モース硬度6.5)、酸化亜鉛(モース硬度4)、アルミナ(モース硬度9)等の金属酸化物;炭酸カルシウム(モース硬度3)、炭酸マグネシウム(モース硬度3.5)等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム(モース硬度3.5)、硫酸バリウム(モース硬度3~3.5)等の金属硫酸塩が挙げられる。このなかでも、研磨粒子の固定力とセルフドレス性の観点から珪灰石が好ましい。
珪灰石は、カルシウムケイ酸塩(CaSiO3)を含むケイ酸塩鉱物であり、ウォラストナイトとも呼称される。珪灰石には、カルシウムのほか、鉄、マンガン、ナトリウム、リチウムなど他の金属のケイ酸塩が含まれてもよい。珪灰石を用いることにより、被研磨物の面品位をより安定して維持することができる。
スペーサー粒子の平均粒子径D1は、3.5~15μmであり、好ましくは4.0~12.5μmであり、より好ましくは4.5~10μmである。平均粒子径D1が15μmよりも大きい場合、スペーサー粒子のアスペクト比が影響し、樹脂と混合した際に粘性が上がり成型性に劣る。上記範囲内であることにより、樹脂と混合した際に、粘性が低く流動性が高くなり成型性に優れる。
研磨パッド中のスペーサー粒子の平均粒子径D1は、公知の方法によって測定することができる。例えば、研磨パッドを550℃等に加熱処理し、試料を灰化させて、略球状の研磨粒子を取り除くことで研磨パッドからスペーサー粒子を抽出し、超音波分散機などで充分に分散して分散液を調製する。この分散液を用いて、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置により測定される粒度分布から、スペーサー粒子の平均粒子径を測定することができる。また、研磨パッド表面を走査型電子顕微鏡にて観察して画像解析することにより得られる体積基準の粒度分布から、スペーサー粒子の平均粒径を測定することができる。
スペーサー粒子の平均粒子径D1に対する研磨粒子の平均粒子径D2の比(D2/D1)は、好ましくは1.5~10であり、より好ましくは2.5~9.0であり、さらに好ましくは3.5~8.0である。比(D2/D1)が1.5以上であること複合砥粒の周囲に密にスペーサー粒子を充填させることでき複合砥粒を固定しやすくなる。10以下であると研磨時に複合砥粒をパッド側に押し込ませることなく研削力を上げることができる。上記範囲内であることにより、被研磨物の面品位をより安定して維持することができる。
下記式(1)で表されるSD値は、スペーサー粒子の粒度分布の分散性を示す。SD値が小さいほど分散が狭く、SD値が大きいほど分散が広いことを意味する。本実施形態においては、SD値は、3.0~10μmであり、好ましくは4.0~9.5μmであり、より好ましくは5.0~9.0μmである。SD値が上記範囲内であることにより、スペーサー粒子の大きさのバラつきが小さく、研磨粒子の分散性が向上し、研磨面で削れやすいところ、削れにくいところの差が生じ難く、被研磨物の面品位をより安定して維持することができる。
式(1): SD値=(d84%-d16%)/2
(式(1)中、d16%は、体積基準の粒子径の累積分布において小径からの積算値が全体の16%に達したときの粒子径(μm)を表し、d84%は、体積基準の粒子径の累積分布において小径からの積算値が全体の84%に達したときの粒子径(μm)を表す。)
なお、d16%粒子径は、好ましくは0.5~5.0μmであり、より好ましくは0.8~3.0μmであり、さらに好ましくは1.0~2.5μmである。また、d84%粒子径は、好ましくは5~30μmであり、より好ましくは8~25μmであり、さらに好ましくは10~20μmである。
粒子径10μm以下のスペーサー粒子の含有量は、スペーサー粒子の総量に対して、好ましくは50~85質量%であり、より好ましくは55~80質量%であり、さらに好ましくは60~75質量%である。粒子径10μm以下のスペーサー粒子の含有量が上記範囲内であることにより、被研磨物の面品位をより安定して維持することができる傾向にある。
粒子径50μm以上のスペーサー粒子の含有量は、スペーサー粒子の総量に対して、好ましくは1.0~3.0質量%であり、より好ましくは1.2~2.7質量%であり、さらに好ましくは1.3~2.5質量%である。粒子径50μm以上のスペーサー粒子の含有量が上記範囲内であることにより、被研磨物の面品位をより安定して維持することができる傾向にある。
スペーサー粒子の含有量は、研磨部100質量部に対して、好ましくは40~70質量部であり、より好ましくは45~65質量部であり、さらに好ましくは50~60質量部である。スペーサー粒子の含有量が上記範囲内であることにより、スペーサー粒子のセルフドレス性により新たな研磨粒子が出現し続けることができ被研磨物の面品位をより安定して維持することができる傾向にある。
研磨粒子の含有量に対するスペーサー粒子の含有量の比は、好ましくは1.5~22.5であり、より好ましくは2.5~17.5であり、さらに好ましくは5.0~12.5である。研磨粒子の含有量に対するスペーサー粒子の含有量の比が上記範囲内であることにより、研磨粒子の間隔が適切となり、研磨粒子への負荷が均等化しやすく、被研磨物の面品位をより安定して維持することができる傾向にある。
1.2.4.その他の補助粒子
その他の補助粒子としては、特に限定されないが、例えば、平均粒子径D3が0.5~4.5μmである補助粒子が挙げられる。このような補助粒子を用いることにより、被研磨物の面品位をより安定して維持することができる傾向にある。
このような補助粒子を構成する成分としては、特に限定されないが、例えば、二酸化ケイ素、及び酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むが挙げられる。このような成分を含む補助粒子を用いることにより、セルフドレスを補助するためか、被研磨物の面品位をより安定して維持することができる傾向にある。なお、これら補助粒子は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
補助粒子の平均粒子径D3は、好ましくは0.5~4.5μmであり、より好ましくは0.7~4.0μmであり、さらに好ましくは0.9~3.5μmである。平均粒子径D3が、上記範囲内であることにより、被研磨物の面品位をより安定して維持することができる。
1.3.接着層
本実施形態の研磨パッドは、基材の研磨部とは反対側に、研磨機の研磨定盤に研磨パッドを貼着するための接着層をさらに備えてもよい。接着層は、従来知られている研磨パッドに用いられている接着剤又は粘着剤を含むものであってもよい。
接着層の材料としては、例えば、アクリル系接着剤、ニトリル系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤等の各種熱可塑性接着剤が挙げられる。また、接着層は、例えば両面テープであってもよい。
1.4.アンカー層
本実施形態の研磨パッドは、基材と研磨部との間にアンカー層を有していてもよい。アンカー層を有することにより、基材と研磨部との密着性をより向上する傾向にある。
アンカー層を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂コート剤が挙げられる。
2.研磨パッドの製造方法
本実施形態の研磨パッドの製造方法は、基材の上に、樹脂と、研磨粒子と、スペーサー粒子と、を含む硬化性組成物を付着させる付着工程と、付着した前記硬化性組成物を硬化させて研磨部を得る硬化工程と、を有し、前記スペーサー粒子の平均粒子径D1が、3.5~15μmであり、前記スペーサー粒子のアスペクト比(平均長軸直径/平均短軸直径)が、2.0~12である。
2.1.付着工程
付着工程は、基材の上に、樹脂と、研磨粒子と、スペーサー粒子と、を含む硬化性組成物を付着させる工程である。この際に、研磨部が所望の凹凸パターンを形成するように、基材の上に硬化性組成物を付着させてもよい。
基材の上に硬化性組成物を付着させる方法としては、特に限定されないが、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法、エンボスロール法、転写法等が挙げられる。これらの中では、複雑な凹凸パターンの形成のしやすさと生産性の観点から、スクリーン印刷法、もしくは転写法が好ましい。
スクリーン印刷法では、例えば凸部に相当する開口パターンを有する版を用意し、基材層となるPETフィルム上に間隙を設け版を設置し、版の上に研磨層材料を載せスキージに適度な圧力を加え版の開口部の研磨層材料を押し付けながらスキージを移動させることで、研磨層材料が押し出され印刷される。その後、研磨層材料を硬化させることで基材層上にパターン付き研磨層からなる研磨パッドが得られる。転写法では、例えば凸部に相当する凹部を有する転写型を作製し、この転写型に研磨層材料を充填し、充填した研磨層材料と基材層となるPETフィルムとを接着剤を介して結合させる。この後、PETフィルムの上から光照射によって研磨層材料を硬化させ、フィルムを転写型から剥離し必要に応じて再度凸部に光照射を行い硬化させることで、基材層上にパターン付き研磨層からなる研磨パッドが得られる。
2.1.1.硬化性組成物
硬化性組成物としては、特に限定されないが、例えば、光重合開始剤及び重合性化合物を含む光硬化性組成物;熱重合開始剤及び重合性化合物を含む熱硬化性組成物;UV硬化樹脂;2液混合型の硬化樹脂を含む硬化性組成物等が挙げられる。また、硬化性組成物は、必要に応じて、重合性官能基を2以上有する架橋剤等を含んでもよい。
重合性化合物としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、チオチサントン系化合物が挙げられる。また、熱重合性開始剤としては、特に限定されないが、例えば、2,2’-アゾビスブチロニトリルのようなアゾ化合物、過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレア樹脂、ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
UV硬化樹脂としては、特に限定されないが、例えば、数平均分子量1000~10000程度のプレポリマーが良く、材料としてはアクリル(メタクリル)系エステルやそのウレタン変性物、チオコール系等が挙げられ、適宜用途に応じて反応性希釈剤や有機溶剤を用いることができる。また、2液混合型の硬化樹脂としては、特に限定されないが、例えば、異なる物性のプレポリマーを用いることができる。
2.2.硬化工程
硬化工程は、付着した前記硬化性組成物を硬化させて研磨部を得る工程である。硬化方法としては、特に限定されないが、例えば、光硬化、熱硬化等が挙げられる。得られる研磨部は、一部の研磨粒子とスペーサー粒子が表面に露出し、その他の研磨粒子とスペーサー粒子が樹脂中で結合されたものとなる。
2.3.その他の工程
本実施形態の研磨パッドの製造方法は、必要に応じて、その他の工程等を有してもよい。例えば、付着工程の後、硬化工程の前に硬化性組成物中の揮発成分の少なくとも一部を揮発除去する工程を有していてもよい。また、付着工程の後であって硬化工程の前、及び/又は、硬化工程の後に、所望の凹凸パターンを形成するために、硬化性組成物や研磨部の一部を除去する工程を有していてもよい。除去する方法としては、例えば、切削が挙げられる。
3.研磨加工品の製造方法
本実施形態の研磨加工品の製造方法は、クーラントの存在下、上記研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨する研磨工程を有する方法であれば、特に限定されない。研磨工程は、1次ラッピング研磨(粗ラッピング)であってもよく、2次ラッピング(仕上げラッピング)であってもよく、ポリッシング研磨であってもよく、これらのうち複数の研磨を兼ねるものであってもよい。
被研磨物としては、特に限定されないが、例えば、半導体デバイス、電子部品等の材料、特に、Si基板(シリコンウェハ)、SiC(炭化珪素)基板、GaAs(ガリウム砒素)基板、ガラス、ハードディスクやLCD(液晶ディスプレイ)用基板等の薄型基板(被研磨物)が挙げられる。このなかでも、本実施形態の研磨加工品の製造方法は、ハードディスクドライブ等の磁気ディスク、EUV光を用いたリソグラフィの際に使用される反射型マスクの基材として使用されるガラス基板、スマートフォンやタブレットなど、モバイル端末の液晶基板やカバーガラス等の素材としてガラスの製造方法として好適に用いることができる。
3.1.研磨工程
研磨工程は、クーラントの存在下、上記研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨する工程である。研磨方法としては、従来公知の方法を用いることができ、特に限定されない。
研磨方法では、まず、研磨装置の所定位置に研磨パッドを装着する。この装着の際には、上述の接着層を介して、研磨パッドが研磨装置に固定されるよう装着される。そして、研磨定盤としての研磨パッドと対向するように配置された保持定盤に保持させた被研磨物を研磨面側へ押し付けると共に、外部からクーラントを供給しながら、研磨パッド及び/又は保持定盤を回転させる。これにより、研磨パッドと被研磨物との間に供給されたクーラントの作用で研磨抵抗を下げ研磨屑を排出しながら、被研磨物の加工面(被研磨面)に研磨加工を施す。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
(複合粒子の調製)
12質量部のデキストリン(東海デキストリン製)、40質量部の精製水、1質量部の添加剤セルナD-735(中京油脂製)、33質量部のガラスフリット、及び14質量部の平均粒子径4μmダイヤモンドパウダー、を混合し、スラリーを調整した。その後、スプレードライヤーにより噴霧乾燥して複合粒子前駆体を形成した。続いて複合粒子前駆体と白色アルミナ(フジミ株式会社製,平均粒子径3μm)を6:4の割合で混合し、600℃で4時間焼成し、平均粒子径40μmの複合粒子を得た。
(スペーサー粒子の調製)
珪灰石C(K-400、啓和ファインマテリアル株式会社製)を、ボールミルを用いて、390rpmで24時間粉砕した。その後、所定の粒度分布のふるいを用いてふるい分けを行い、表1に示すような、平均粒子径、SD値、10μm以下の粒子の含有量、及び50μm以上の粒子の含有量を有する珪灰石Aを得た。なお、ふるいは、例えばJIS Z8801に記載の標準ふるいによって所定の平均径にふるい分けすることができる。
(硬化性組成物の調製)
96.9質量部の(トリメチロールプロパントリアクリレート:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート=70:30(質量比)の混合物(サートマー社製SR368D)、1.6質量部の分散剤(日本ルーブリゾール社製ソルスパース 32000)、1質量部の光重合開始剤(イルガキュア819(BASFジャパン社製)、0.5質量部の光重合開始剤(アントラキュア(登録商標)UVS-581川崎化成工業株式会社製)を混合して、前駆体組成物を調製した。
次いで、7.2質量部の上記複合粒子、3.6質量部の白色アルミナ(フジミ株式会社製,平均粒子径3μm)、34.6質量部の上記前駆体組成物、及び54.6質量部の上記珪灰石A(平均粒子径13.5μm,アスペクト比6)を混合して、硬化性組成物を調製した。
(研磨パッドの作製)
そして、得られた硬化性組成物を、深さ2mm、空洞開口部の寸法が2.6mm×2.6mm、隣接する開口の間隔が1mmの四角柱の凹部からなる成形用シリコン凹版に流し込み、硬化性組成物の上面と接触するようにPET基材を配置した。そして、紫外線照射機で硬化性組成物に紫外線を照射することで硬化性組成物を硬化した。その後、得られた硬化体(研磨部)を成形型より取り外し、乾燥機で90度12時間加熱して、実施例1の研磨パッドを得た。
〔実施例2〕
珪灰石Cを、ボールミルを用いて、250rpmで24時間粉砕し、ふるい分けを行って、表1に示すような、平均粒子径、SD値、10μm以下の粒子の含有量、及び50μm以上の粒子の含有量を有する珪灰石Bを得た。珪灰石Aに代えて珪灰石Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の研磨パッドを得た。
〔比較例1〕
珪灰石Aに代えて珪灰石Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の研磨パッドを得た。
〔比較例2〕
珪灰石(啓和ファインマテリアル製KF-6)を、ボールミルを用いて、250rpmで24時間粉砕し、ふるい分けを行って、表1に示すような、平均粒子径、SD値、10μm以下の粒子の含有量、及び50μm以上の粒子の含有量を有する珪灰石Dを得た。珪灰石Aに代えて珪灰石Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の研磨パッドを得た。
〔比較例3〕
珪灰石(啓和ファインマテリアル製KF-330)を、ボールミルを用いて、250rpmで24時間粉砕し、ふるい分けを行って、表1に示すような、平均粒子径、SD値、10μm以下の粒子の含有量、及び50μm以上の粒子の含有量を有する珪灰石Eを得た。珪灰石Aに代えて珪灰石Eを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の研磨パッドを得た。
〔粒度分布〕
マイクロトラック・ベル株式会社製レーザー回折式粒子径分布計測定装置「マイクロトラックMT3300EXII」を用いて、測定時間10秒で、体積基準の粒子径の累積分布を測定した。体積基準の粒子径の累積分布において小径からの積算値が全体の50%に達したときの粒子径を平均粒子径とし、体積基準の粒子径の累積分布において小径からの積算値が全体の16%に達したときの粒子径をd16%とし、体積基準の粒子径の累積分布において小径からの積算値が全体の84%に達したときの粒子径(μm)をdとした。そして下記式により、SD値を算出した。なお、測定時の屈折率は1.61、媒体(脱イオン水)の屈折率は1.333を用いた。
式(1): SD値=(d84%-d16%)/2
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM-5500LV)を使用して珪灰石を撮影した。図3~5に、珪灰石A~Cの走査型電子顕微鏡写真を示し、図6に、粒度分布の測定結果を示す。
〔研削試験〕
各実施例及び比較例の研磨パッドについて、以下の試験条件でガラス研削試験を行い、試験後のガラスの表面粗さと、研磨レートを測定した。
(研削条件)
試験機 :摩擦摩耗試験機Speedfam卓上研磨機(定盤サイズ305mmφ)
ドレッサー :WA砥石#1000
ドレス時間 :5~20分間
荷重 :200g/cm
回転数 :80rpm
時間 :10分間/バッチ×7バッチ
ルブリカント:サブレルブ9016(Chemetall社製)10倍希釈水溶液
液量 :30mL/min
被研削物 :ガラス(50mm×50mm)
(非研磨物の表面粗さRa)
研削後の被研磨物の表面について、表面粗さRaを、光干渉計(キャノン製、商品名「Zygo NewView 5010」)を用いて測定した。
(評価基準)
×:ガラスの表面粗さRaが3μm以上
△:ガラスの表面粗さRaが1μm以上3μm未満
〇:ガラスの表面粗さRaが1μm未満
(研磨レート安定性)
研磨レート安定性は、7バッチ目の研磨レートを1バッチ目の研磨レートで除して算出した値より、以下の基準で評価した。なお、研磨レートは上記研磨前後のガラスの質量減少から求めた研磨量、ガラスの研磨面積及び比重から、研磨により除去された厚さを算出し、時間当たりの除去された厚さとして評価した。厚さは、加工前後のガラスの質量減少から求めた研磨量、ガラスの研磨面積及び比重から算出した。
(評価基準)
〇:40%以上
△:20%以上40%未満
×:20%未満
以上のように、本発明の研磨パッドは、スペーサー粒子である珪灰石の粒子径分布の分布幅(SD値)が大きすぎず、珪灰石が適切な粒子径を有するため、適度な崩壊性を持ち凹凸が研磨時に維持され、研磨レートの低下が抑制されていた。また、珪灰石の平均粒子径D1に対する研磨粒子の平均粒子径D2の比が適切であるため、研磨粒子の保持性に優れ、表面粗さにも優れることが示された。
一方で、比較例1では、珪灰石の粒子径分布の分布幅(SD値)が大きいため、大小さまざまな珪灰石が研磨面に露出し、研削領域ごとに削れやすさが不均一となった。また、珪灰石の平均粒子径D1に対して研磨粒子の平均粒子径D2が小さいため、珪灰石の脱落とともに無秩序に研磨粒子が脱落し、研磨レートの変動が大きく、表面粗さも実施例に劣る結果となったものと考えられる。
また、比較例2では、珪灰石の粒子径分布の分布幅(SD値)が小さいものの、珪灰石の平均粒子径も小さいため、研磨面に形成される凹凸が小さく、研磨初期の凹凸が目詰まりしたためか研磨レートが低下し研磨安定性に欠け、表面粗さも実施例に劣る結果となった。
さらに、比較例3では、珪灰石の粒子径分布の分布幅(SD値)が小さいものの、珪灰石の平均粒子径が大きいため、研磨中に珪灰石が脱離しやすく、それによる凹凸が生じ、摩耗量が増大し、結果として製品寿命が短くなった。また、珪灰石の平均粒子径D1に対して研磨粒子の平均粒子径D2が小さいため、珪灰石の脱落とともに無秩序に研磨粒子が脱落し、研磨レートの変動が大きく、表面粗さも実施例に劣る結果となったものと考えられる。
本発明の研磨パッドは、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク用のガラス基板等のラッピングや研磨に適した研磨パッドとして産業上の利用可能性を有する。
10…研磨パッド、11…研磨部、12…基材、14…研磨粒子、15…マトリクス

Claims (13)

  1. 基材と、該基材上に配された研磨部と、を備え、
    該研磨部は、樹脂と、研磨粒子と、スペーサー粒子と、を含み、
    前記スペーサー粒子の平均粒子径D1が、3.5~15μmであり、
    前記スペーサー粒子の粒度分布において下記式(1)で表されるSD値が、3.0~10μmである、
    研磨パッド。
    式(1): SD値=(d84%-d16%)/2
    (式(1)中、d16%は、体積基準の粒子径の累積分布において小径からの積算値が全体の16%に達したときの粒子径(μm)を表し、d84%は、体積基準の粒子径の累積分布において小径からの積算値が全体の84%に達したときの粒子径(μm)を表す。)
  2. 前記スペーサー粒子の含有量が、前記研磨部100質量部に対して、40~70質量部である、
    請求項1に記載の研磨パッド。
  3. 粒子径10μm以下の前記スペーサー粒子の含有量が、前記スペーサー粒子の総量に対して、50~80質量%である、
    請求項1又は2に記載の研磨パッド。
  4. 粒子径50μm以上の前記スペーサー粒子の含有量が、前記スペーサー粒子の総量に対して、1.0~3.0質量%である、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨パッド。
  5. 前記スペーサー粒子が、針状形状を有する、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の研磨パッド。
  6. 前記研磨粒子の含有量が、前記研磨部100質量部に対して、1.5~20質量部である、
    請求項1~5のいずれか一項に記載の研磨パッド。
  7. 前記研磨粒子の平均粒子径D2が、10~100μmである、
    請求項1~6のいずれか一項に記載の研磨パッド。
  8. 前記スペーサー粒子の平均粒子径D1に対する前記研磨粒子の平均粒子径D2の比(D2/D1)が、1.5~10である、
    請求項1~7のいずれか一項に記載の研磨パッド。
  9. 前記研磨粒子が、研磨微粒子とマトリクス粒子とを含む複合粒子を含む、
    請求項1~8のいずれか一項に記載の研磨パッド。
  10. 前記マトリクス粒子が、ガラスフリットを含む、
    請求項9に記載の研磨パッド。
  11. 前記研磨粒子が、ダイヤモンド、酸化セリウム、炭化珪素、酸化珪素、ジルコニア、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、珪酸ジルコニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、炭酸バリウム、及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、
    請求項1~10のいずれか一項に記載の研磨パッド。
  12. 前記研磨部が、平均粒子径D3が0.5~4.5μmである補助粒子をさらに含む、
    請求項1~11のいずれか一項に記載の研磨パッド。
  13. 基材の上に、樹脂と、研磨粒子と、スペーサー粒子と、を含む硬化性組成物を付着させる付着工程と、
    付着した前記硬化性組成物を硬化させて研磨部を得る硬化工程と、を有し、
    前記スペーサー粒子の平均粒子径D1が、3.5~15μmであり、
    前記スペーサー粒子の粒度分布において下記式(1)で表されるSD値が、3.0~10μmである、
    研磨パッドの製造方法。
    式(1): SD値=(d84%-d16%)/2
    (式(1)中、d16%は、体積基準の粒子径の累積分布において小径からの積算値が全体の16%に達したときの粒子径(μm)を表し、d84%は、体積基準の粒子径の累積分布において小径からの積算値が全体の84%に達したときの粒子径(μm)を表す。)

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