以下に添付図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態による空調装置の空気調和部の構造を模式的に示す側面図である。また、図2および図3は、それぞれ、図1に示す空気調和部のI-I線およびII-II線に沿った断面図である。また、図4は、図1に示す空気調和部のエアミックスドアとシャフトと駆動ギア機構とを示す分解斜視図である。図示の明確化のため、図2では、吹出通路ドアの図示は省略している。
なお、本明細書において、説明の便宜上、図1に示す側を空気調和部の左側と呼び、図1に示す側に対向する側(図2および図3参照)を空気調和部の右側と呼ぶ。また、本明細書においては、後述するギアやシャフトの回転方向に対する「時計回り」および「反時計回り」の用語は、特に指示がない場合、ギアやシャフトを、空気調和部の左側から右側に向かう向きに見た状況で判断される「時計回り」および「反時計回り」と意味する。
図1乃至図3に示すように、車両用の空調装置1の空気調和部1aは、空調ケース2を有している。空調ケース2は、内部に空気が流れる空気通路3を形成している。より具体的には、図2および図3に示すように、空調ケース2の上流側端部2aには、送風機(図示せず)と接続する接続口300が形成されており、送風機から吹き出された空気が接続口300を通じて空調ケース2の空気通路3に流れ込むようになっている。なお、送風機は空気調和部1aの左側に配置されてもよく、その場合に接続口300は、空気調和部1aの左側に形成される。また、空調ケース2の下流側端部2bには、複数の吹出通路301,302,303が形成されており、空気通路3に流れ込んだ空気が吹出通路301,302,303から流出するようになっている。
空調ケース2の複数の吹出通路は、デフロスト吹出通路301と、ベント吹出通路302と、フット吹出通路303とを含む。図1に示すように、デフロスト吹出通路301は、空調ケース2の天面2cに設けられている。デフロスト吹出通路301の下流端は、車室内のフロントガラスの内面に向けて空気を吹き出す図示しないデフロスト吹出口に接続されている。また、ベント吹出通路302は、空調ケース2の下流側端面2dの上側部分に設けられている。ベント吹出通路302の下流端は、運転席及び助手席(場合によっては後席も)に座っている乗員の上半身に向けて空気を吹き出す図示しないベント吹出口に接続されている。また、フット吹出通路303は、空調ケース2の下流側端面2dの下側部分に設けられている。フット吹出通路303の下流端は、運転席及び助手席(場合によっては後席も)に座っている乗員の足元に向けて空気を吹き出す図示しないフット吹出口に接続されている。
図1乃至図3に示すように、空調ケース2の空気通路3内には、冷却用熱交換器(エバポレータ)4、加熱用熱交換器(ヒータコア)5、及び、空気通路3を通流する空気の流れを変更する各種ドア(エアミックスドア6,8及び吹出通路ドア301D,302D,303D)が設けられている。また、空調ケース2の左側面2gには、エアミックスドア6,8を駆動する駆動ギア機構10が設けられている。
冷却用熱交換器(エバポレータ)4は、空調ケース2内に流入した空気の全てが冷却用熱交換器4を通過するように設けられている。具体的には、冷却用熱交換器4は、空気通路3の全断面積を占有するように設けられている。冷却用熱交換器4は、そこを通過する空気から熱を奪い、かつ、空気の湿度が高い場合には空気中の水分を凝縮させることにより空気の湿度を下げる。
加熱用熱交換器(ヒータコア)5は、空調ケース2が形成する空気通路3内において、冷却用熱交換器4の下流側に配置されている。加熱用熱交換器5は、そこを通過する空気を加熱する。
加熱用熱交換器5は、空気通路3の全断面積を占有してはいない。空調ケース2内において、加熱用熱交換器5の上方には上側迂回路3aが、下方には下側迂回路3bが形成されている。これらの迂回路3a,3bは、空気通路3内を流れる空気が加熱用熱交換器5を通過しないで(加熱用熱交換器5を迂回して)加熱用熱交換器5の下流側に流れることを可能にする。
エアミックスドア6,8は、空気の流れ方向における、冷却用熱交換器4と加熱用熱交換器5との間に設けられている。図示の例では、エアミックスドア6,8は、板状の部材であり、加熱用熱交換器5の上流側の面に概ね平行に配置されている。エアミックスドア6,8は、それぞれ、空気通路3の上側部分及び下側部分に設けられ、上側迂回路3aおよび下側迂回路3bの開口度を調整することができるようになっている。以下では、空気通路3の上側部分に配置されたエアミックスドア6を「上側エアミックスドア6」とも呼び、空気通路3の下側部分に配置されたエアミックスドア8を「下側エアミックスドア8」とも呼ぶ。
上側エアミックスドア6は、空気通路3の上側部分内を上下方向に沿ってスライドすることができるようになっている。そして、上側エアミックスドア6は、その位置に応じて、加熱用熱交換器5の上側部分5aに向かう空気と、上側迂回路3aに向かう空気との比率を調整する。また、下側エアミックスドア8は、空気通路3の下側部分内を上下方向に沿ってスライドすることができるようになっている。下側エアミックスドア8は、その位置に応じて、加熱用熱交換器5の下側部分5bに向かう空気と、下側迂回路3bに向かう空気との比率を調整する。
図2および図3に示すように、上側エアミックスドア6および下側エアミックスドア8は、それぞれ、空気通路3内を左右方向に沿って延びるシャフト7,9に連結されており、シャフト7,9を回転させることにより、空気通路3の上側部分内および下側部分内を上下方向に沿ってスライドすることができるようになっている。より具体的には、図4に示すように、各エアミックスドア6,8の一方の面には、その上端縁から下端縁に亘って、それぞれラック6r,8rが設けられている。また、各シャフト7,9の外周面には、このラック6r,8rと噛み合うギア7p,9pが設けられている。そして、シャフト7,9を周方向に回転させると、シャフト7,9の回転運動がギア7p,9pとラック6r,8rとによって上下方向の運動に変換され、エアミックスドア6,8が上下にスライドするようになっている。上側エアミックスドア6および下側エアミックスドア8は、対応するシャフト7,9の回転速度に応じた速度で移動する。以下では、上側エアミックスドア6に連結されたシャフト7を「上側シャフト7」とも呼び、下側エアミックスドア8に連結されたシャフト9を「下側シャフト9」とも呼ぶ。
図2に示すように、シャフト7,9は、その両端部において、空調ケース2の左側面2gと右側面2hとに回転可能に支持されている。図示の例では、シャフト7,9の左側の端部は、空調ケース2の外側に延び出しており、駆動ギア機構10に接続されている。
上述のように、上側エアミックスドア6は、空気通路3の上側部分内を上下方向に沿ってスライドすることにより、加熱用熱交換器5の上側部分5aに向かう空気と上側迂回路3aに向かう空気との比率を調整する。すなわち、上側エアミックスドア6が上下方向に沿ってスライドすることにより、上側迂回路3aの開口面積が変更され、また、空気の流れ方向に見て加熱用熱交換器5の上側部分5aの上側エアミックスドア6と重なる部分の面積が変更される。これにより、空気通路3の上側部分において上側迂回路3aに向かう空気と加熱用熱交換器5の上側部分5aに向かう空気との比率が変更される。図1に示す例では、上側エアミックスドア6は、上側迂回路3aの開口面積を最小にし、空気の流れ方向において加熱用熱交換器5の上側部分5aの上側エアミックスドア6と重なる部分の面積を最小にしている。この場合、空気通路3の上側部分において上側迂回路3aに向かう空気の割合が最小となる一方、加熱用熱交換器5に向かう空気の割合は最大となる。
以下では、上側エアミックスドア6の上側迂回路3aの開口面積を最小にする位置(図1に示す位置)を「上側第1位置」と呼び、上側迂回路3aの開口面積を最大にする位置を「上側第2位置」と呼ぶ。
また、上述のように、下側エアミックスドア8は、上下方向に沿ってスライドすることにより、加熱用熱交換器5の下側部分5bに向かう空気と下側迂回路3bに向かう空気との比率を調整する。すなわち、下側エアミックスドア8が上下方向に沿ってスライドすることにより、下側迂回路3bの開口面積が変更され、また、空気の流れ方向に見て加熱用熱交換器5の下側部分5bの下側エアミックスドア8と重なる部分の面積が変更される。これにより、空気通路3の下側部分において下側迂回路3bに向かう空気と加熱用熱交換器5に向かう空気との比率が変更される。図1に示す例では、下側エアミックスドア8は、下側迂回路3bの開口面積を最小にし、空気の流れ方向において加熱用熱交換器5の下側部分5bの下側エアミックスドア8と重なる部分の面積を最小にしている。この場合、空気通路3の下側部分において下側迂回路3bに向かう空気の割合が最小となる一方、加熱用熱交換器5に向かう空気の割合は最大となる。
以下では、下側エアミックスドア8の下側迂回路3bの開口面積を最小にする位置(図1に示す位置)を「下側第1位置」と呼び、下側迂回路3bの開口面積を最大にする位置を「下側第2位置」と呼ぶ。
上述のように、加熱用熱交換器5の下流側において、空調ケース2には、吹出通路301,302,303が形成されている(図1参照)。このうち、デフロスト吹出通路301およびベント吹出通路302は、空調ケース2の上側部分に設けられている。これらの吹出通路301,302には、加熱用熱交換器5の上側部分5aおよび/または上側迂回路3aを通過した空気が入りやすい傾向にある。また、フット吹出通路303は、空調ケース2の下側部分に形成されている。この吹出通路303には、加熱用熱交換器5の下側部分5bおよび/または下側迂回路3bを通過した空気が入りやすい傾向にある。
吹出通路ドア301D,302D,303Dは、それぞれ、デフロスト吹出通路301、ベント吹出通路302及びフット吹出通路303に設けられ、対応する吹出通路301,302,303の開口面積を調整する。以下では、デフロスト吹出口、ベント吹出口およびフット吹出口に続く吹出通路301,302,303を開閉するドアという意味において、吹出通路ドア301D,302D,303Dを、それぞれ、デフロストドア301D、ベントドア302D、フットドア303Dとも呼ぶ。
吹出通路ドア301D,302D,303Dは、空調ケース2内を左右方向に延びるシャフト301s,302s,303sから延出する板状の部材である。吹出通路ドア301D,302D,303Dは、シャフト301s,302s,303sが図示しない駆動ギア機構によって回転されることにより、対応する吹出通路301,302,303を開放または閉鎖する。これらのドア301D,302D,303Dの開度は、車載マイクロコンピュータなどからなる制御部により制御され、吹出通路301,302,303の開口面積を任意の開口面積にすることができる。
なお、図1に示す空調装置1の運転モードには、例えば、デフロストモード、デフフットモード、フットモード、ベントモード、バイレベルモード等がある。デフロストモードでは、デフロストドア301Dが開かれ、かつ、ベントドア302Dとフットドア303Dが閉じられて、デフロスト吹出口から調和空気が吹き出される。デフフットモードでは、デフロストドア301D及びフットドア303Dが開かれ、かつ、ベントドア302Dが閉じられて、デフロスト吹出口及びフット吹出口から調和空気が吹き出される。フットモードでは、デフロストドア301Dとベントドア302Dとが閉じられ、かつ、フットドア303Dが開かれて、フット吹出口から調和空気が吹き出される。ベントモードでは、ベントドア302Dが開かれ、かつ、デフロストドア301D及びフットドア303Dが閉じられて、ベント吹出口から調和空気が吹き出される。バイレベルモードでは、ベントドア302D及びフットドア303Dが開かれ、かつ、デフロストドア301Dが閉じられ、ベント吹出口とフット吹出口とから調和空気が吹き出される。
次に、図1乃至図8Cを参照して、上側シャフト7および下側シャフト9を回転駆動する駆動ギア機構10について説明する。
図5は、図1に示す駆動ギア機構の駆動ギアと上側従動ギアとラックと下側従動ギアとを示す側面図である。また、図6は、図5に示す駆動ギアと上側従動ギアとを示す側面図である。図7A~7Cは、駆動ギアと上側従動ギアの、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際の動作を示す図であり、図8A~8Cは、駆動ギアと上側従動ギアの、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際の動作を示す図である。
図1乃至図3に示すように、駆動ギア機構10は、空調ケース2の外側に、空調ケース2の左側の側面2gに対向して配置されている。図1および図5に示すように、駆動ギア機構10は、回転駆動力を発生するアクチュエータ11と、アクチュエータ11により回転駆動される駆動ギア20と、駆動ギア20と噛み合う上側従動ギア30と、を有している。駆動ギア20は、アクチュエータ11の内部の図示しないギアと嵌合する駆動力伝達軸20Sを有し、アクチュエータ11から回転駆動力を受けて、回転軸Axを中心として、時計回りあるいは反時計回りに回転する。上側従動ギア30が駆動ギア20と噛み合っていることにより、上側従動ギア30には、駆動ギア20を介してアクチュエータ11の回転駆動力が伝達される。上側従動ギア30は、駆動ギア20が回転すると、駆動ギア20の回転方向とは反対の回転方向に回転する。また、図2に示すように、上側従動ギア30は、空調ケース2の外側に突出した上側シャフト7の左側の端部に連結されており、アクチュエータ11の回転駆動力を上側シャフト7に伝達する。アクチュエータ11による駆動ギア20の回転位相は、車載マイクロコンピュータなどからなる図示しない制御部により制御される。
図1に示すように、駆動ギア機構10は、また、概ね上下方向に延びるラック40と、ラック40と噛み合う下側従動ギア50と、を含む。図3に示すように、下側従動ギア50は、空調ケース2の外側に突出した下側シャフト9の左側の端部に連結されている。図5に示すように、ラック40には、駆動ギア20および下側従動ギア50と噛み合う歯が形成されている。ラック40は、その上側部分において駆動ギア20と噛み合い、その下側部分において下側従動ギア50と噛み合う。ラック40が駆動ギア20と噛み合っていることにより、ラック40には、アクチュエータ11の回転駆動力が駆動ギア20を介して伝達される。そして、ラック40は、駆動ギア20の回転に伴って、概ね上下方向に直線運動をする。また、ラック40が下側駆動ギア50と噛み合っていることにより、ラック40は、アクチュエータ11の回転駆動力を下側従動ギア50に伝達する。このようにして、下側シャフト9には、アクチュエータ11の回転駆動力が、駆動ギア20、ラック40および下側従動ギア50を介して伝達される。
図示の例では、ラック40は、駆動ギア20の回転軸Axと下側従動ギア50の回転軸Cxとを含む仮想面S1の一側から、駆動ギア20および下側従動ギア50に噛合している。したがって、下側従動ギア50は、駆動ギア20の回転方向と同じ方向に回転する。一方、上側従動ギア30は、上述のように、駆動ギア20の回転方向と逆方向に回転する。この結果、上側従動ギア30と下側従動ギア50とは、逆方向に回転する。これにより、上側シャフト7と下側シャフト9とが逆方向に回転し、上側エアミックスドア6と下側エアミックスドア8とは、上下方向において逆方向にスライドする。
なお、ラック40は、図示しない保持手段によって上下方向に移動可能に保持され、また、図示しない付勢手段によって駆動ギア20および下側従動ギア50に向けて付勢されている。これにより、ラック40と、駆動ギア20および下側従動ギア50との適切な噛み合いが維持される。
図示の例では、空調装置1において、エアミックスドア6,8、シャフト7,9および駆動ギア機構10は、上側エアミックスドア6が上側第1位置(図1参照)にあるとき、下側エアミックスドア8が下側第1位置(図1参照)にあり、且つ、上側エアミックスドア6が上側第2位置にあるとき、下側エアミックスドア8は下側第2位置にあるように構成され、空調ケース2に組み付けられる。上側エアミックスドア6および下側エアミックスドア8の各位置は、乗員により設定された空調装置1の運転モードおよび設定温度、車室内の実際の温度、車両が受ける日射量、車両の外気温度などを用いて演算された目標吹出温度に基づいて制御される。これにより、乗員により設定された空調装置1の運転モードや設定温度等に応じた温度の空気が、車室内に吹き出される。
なお、上述の説明から理解されるように、各ドア6,8の位置は、駆動ギア20の回転位相に対応している。したがって、各ドア6,8の位置は、駆動ギア20の回転位相を制御することにより制御される。
ところで、図示の例では、駆動ギア機構10は、駆動ギア20の回転速度に対する下側従動ギア50の回転速度が駆動ギア20の回転位相によらず一定である一方、駆動ギア20の回転速度に対する上側従動ギア30の回転速度が、駆動ギア20の回転位相によって変化するように構成されている。駆動ギア機構10がこのように構成されていることにより、駆動ギア20の回転位相に応じて、下側従動ギア50の回転速度に対する上側従動ギア30の回転速度が変化する。そして、駆動ギア20の回転位相に応じて、上側シャフトの回転位相の変位量が、下側シャフトの回転位相の変位量よりも大きくなったり小さくなったりする。駆動ギア機構10がこのように構成されていることにより、駆動ギア20の回転位相に応じて、上側迂回路3aの開口面積を、下側迂回路3bの開口面積よりも大きくしたり小さくしたりすることができる。その結果、駆動ギア20の回転位相に応じて、空調ケース2の上側部分に設けられた吹出通路301,302から吹き出される空気の温度を、空調ケース2のした側部分に設けられた吹出通路303から吹き出される空気の温度よりも低くしたり高くしたりすることができる。このような空調装置1は、例えば、各吹出口から車室内に吹き出される空気の温度を、各運転モードに適した温度とすることができるため、有利である。
以下、駆動ギア機構10について、さらに詳細に説明する。
図5および図6に示すように、駆動ギア20は、互いに基準円直径の異なる複数の駆動ギア部21,22を有している。各駆動ギア部21,22は、回転軸Axを中心として回転する歯車であり、図2に示すように、回転軸Axの延びる方向に沿って並んで配置されている。また、上側従動ギア30は、互いに基準円直径の異なる複数の従動ギア部31,32を有している。各従動ギア部31,32は、回転軸Bxを中心として回転する歯車であり、図2に示すように、複数の駆動ギア部21,22に対応して設けられている。
図4および図5に示す例では、駆動ギア20は、第1駆動ギア部21と、第2駆動ギア部22を有している。図6に示すように、第1駆動ギア部21および第2駆動ギア部22の基準円直径は、それぞれ基準円直径R21,R22である。
また、図5および図6に示すように、上側従動ギア30は、第1従動ギア部31および第2従動ギア部32を有している。図2に示すように、第1従動ギア部31は、第1駆動ギア部21と同一平面上に並んで配置され、また、図6に示すように、第1駆動ギア部21の基準円直径R21に対応する基準円直径R31を有している。また、第2従動ギア部32は、図2に示すように、第2駆動ギア部22と同一平面上に並んで配置され、また、図6に示すように、第2駆動ギア部22の基準円直径R22に対応する基準円直径R32を有している。
駆動ギア20と上側従動ギア30とは、駆動ギア20の回転位相に応じて、第1駆動ギア部21と第1従動ギア部31とが噛み合い、あるいは、第2駆動ギア部22と第2従動ギア部32とが噛み合うようになっている。図示の例では、第1駆動ギア部21の基準円直径R21は、第2駆動ギア部22の基準円直径R22より大きく、これに対応して、第1従動ギア部31の基準円直径R31は、第2従動ギア部32の基準円直径R32よりも小さい。したがって、駆動ギア20の回転位相に応じて、基準円直径の大きな駆動ギア部21と基準円直径の小さな従動ギア部31とが噛み合い、あるいは、基準円直径の小さな駆動ギア部22と基準円直径の大きな従動ギア部32とが噛み合う。これにより、駆動ギア20の回転位相に応じて、駆動ギア20の回転速度に対する上側従動ギア30の回転速度が変化するようになっている。以下では、第1駆動ギア部21と第1従動ギア部31とによる噛み合いを「第1の噛み合い」とも呼び、第2駆動ギア部22と第2従動ギア部32とによる噛み合いを「第2の噛み合い」とも呼ぶ。
図6に示すように、第1駆動ギア部21および第2駆動ギア部22は、それぞれ、駆動力伝達軸20Sと接続される円板状の本体部21a,22aと、本体部21a,22aの外周縁21ae,22aeに設けられた複数の歯21b,22bと、を有する。また、第1従動ギア部31および第2従動ギア部32は、それぞれ、上側シャフト7に接続される円板状の本体部31a,32aと、本体部31a,32aの外周縁31ae,32aeに設けられた複数の歯31b,32bと、を有する。
第1駆動ギア部21の複数の歯21bおよび第1従動ギア部31の複数の歯31bは、駆動ギア20の回転位相の全範囲(上側エアミックスドア6を上側第1位置から上側第2位置まで移動させ、また、下側エアミックスドア8を下側第1位置から下側第2位置まで移動させる際に駆動ギア20が回転する回転位相の全範囲)のうち、第1の回転位相範囲で互いに噛み合うように設けられている。一方、第2駆動ギア部22の複数の歯22bおよび第2従動ギア部32の複数の歯32bは、駆動ギア20の回転位相の全範囲のうち、第1の回転位相範囲とは異なる第2の回転位相範囲で互いに噛み合うように設けられている。
上述の第1の噛み合いは、第1駆動ギア部21の複数の歯21bと、第1従動ギア部31の複数の歯31bと、によってなされる。駆動ギア20が時計回りあるいは反時計回りに回転する際、第1駆動ギア部21の複数の歯21bから第1従動ギア部31の複数の歯31bに、アクチュエータ11の回転駆動力が駆動力伝達軸20Sを介して伝達される。以下では、駆動ギア20の時計回りおよび反時計回りの回転の少なくとも一方において、アクチュエータ11の回転駆動力の伝達に寄与する第1駆動ギア部21の複数の歯21bおよび第1従動ギア部31の複数の歯31bを、「第1の噛み合いに寄与する歯」とも呼ぶ。
また、上述の第2の噛み合いは、第2駆動ギア部22の複数の歯22bと、第2従動ギア部32の複数の歯32bと、によってなされる。駆動ギア20が時計回りあるいは反時計回りに回転する際、第2駆動ギア部22の複数の歯22bから第2従動ギア部32の複数の歯32bに、アクチュエータ11の回転駆動力が駆動力伝達軸20Sを介して伝達される。以下では、駆動ギア20の時計回りおよび反時計回りの回転の少なくとも一方において、アクチュエータ11の回転駆動力の伝達に寄与する第2駆動ギア部22の複数の歯22bおよび第2従動ギア部32の複数の歯32bを、「第2の噛み合いに寄与する歯」とも呼ぶ。
図4および図5に示すように、駆動ギア20は、更に、ラック用ギア部23を有している。ラック用ギア部23は、単一の歯車として構成され、回転軸Axを中心として回転する。図2に示すように、ラック用ギア部23は、回転軸Axの延びる方向に沿って駆動ギア部21,22と並んで配置されている。ラック用ギア部23は、駆動ギア20の回転位相の全範囲において、ラック40と噛合する。これにより、ラック40は、駆動ギア20の回転位相の全範囲において、一定の速度で上方または下方に移動する。
また、図4および図5に示すように、ラック40と噛み合う下側従動ギア50は、単一の歯車として構成される。下側従動ギア50は、下側従動ギア50の回転位相の全範囲(下側エアミックスドア8を下側第1位置から下側第2位置まで移動させる際に下側従動ギア50が回転する回転位相の全範囲)において、上述の一定の速度で移動するラック40と噛み合う。このため、下側従動ギア50は、下側従動ギア50の回転位相の全範囲において(したがって駆動ギア20の回転位相の全範囲において)、一定の回転速度で回転する。
駆動ギア機構10が上述のように構成されていることにより、下側従動ギア50の回転速度に対する上側従動ギア30の回転速度が、駆動ギア20の回転位相によって変化する。
ところで、このような駆動ギア機構10では、駆動ギア20がその回転位相の全範囲を回転する間、駆動ギア20および上側従動ギア30の噛み合いは、第1の噛み合いから第2の噛み合いに、または、第2の噛み合いから第1の噛み合いに変化する。すなわち、駆動ギア20および上側従動ギア30において噛み合う歯が、第1駆動ギア部21の複数の歯21bおよび第1従動ギア部31の複数の歯31bから、第2駆動ギア部22の複数の歯22bおよび第2従動ギア部32の複数の歯32bに変化する。あるいは、第2駆動ギア部22の複数の歯22bおよび第2従動ギア部32の複数の歯32bから、第1駆動ギア部21の複数の歯21bおよび第1従動ギア部31の複数の歯31bに変化する。
ここで、上述のように駆動ギア20および上側従動ギア30が回転する間に噛み合うギア部の組み合わせが変わっても、空調ケース2に対する駆動ギア20および上側従動ギア30の組付け位置の距離が適切な距離であれば、駆動ギア20および上側従動ギア30は、所望のように回転を続けることができる。なお、適切な距離とは、第1の噛み合いがなされている間は、駆動ギア20の回転軸Axと上側従動ギア30の回転軸Bxとの距離が第1駆動ギア部21の基準円直径R21と第1従動ギア部31の基準円直径R31との和となる距離である。また、第2の噛み合いがなされている間は、駆動ギア20の回転軸Axと上側従動ギア30の回転軸Bxとの距離が第2駆動ギア部22の基準円直径R22と第2従動ギア部32の基準円直径R32との和となる距離である。ここで、図示の例では、第1駆動ギア部21の基準円直径R21と第1従動ギア部31の基準円直径R31との和と、第2駆動ギア部22の基準円直径R22と第2従動ギア部32の基準円直径R32との和とは、等しい。
また、駆動ギア機構10に寸法誤差や組み付け誤差が生じる等して空調ケース2に対する駆動ギア20および上側従動ギア30の組付け位置の距離が上記適切な距離よりも短くなっても、駆動ギア20と上側従動ギア30とが第1の噛み合いをなして第1駆動ギア部21の歯21bと第1従動ギア部31の歯31bとが複数の接触箇所で接触していれば(例えば2箇所以上で接触していれば)、駆動ギア20および上側従動ギア30は所望のように回転を続けることができる。これは、駆動ギア20の歯と上側従動ギア30の歯とが複数箇所で接触していれば、駆動ギア20と上側従動ギア30との間に互いに接近することを抑止する応力が十分に働いて、駆動ギア20の回転軸Axと上側従動ギア30の回転軸Bxとの距離が、駆動ギア20と上側従動ギア30とが回転を続けるのに適した距離に維持されるからである。同様に、駆動ギア20と上側従動ギア30とが第2の噛み合いをなして第2駆動ギア部22の歯22bと第2従動ギア部32の歯32bとが複数の接触箇所で接触していれば(例えば2箇所以上で接触していれば)、駆動ギア20および上側従動ギア30は所望のように回転を続けることができる。
なお、駆動ギア機構10に寸法誤差や組み付け誤差が生じる要因としては、駆動ギア10が配置される空調ケース2が一般に樹脂成型品であるために変形する場合があること、駆動ギア20や従動ギア30を軽量化するために樹脂材料が使用されて変形する場合があること、駆動ギア20の回転軸Axの位置がアクチュエータ11の取付け位置に影響を受けること、などが挙げられる。このような寸法誤差や組み付け誤差は、第1駆動ギア部21の歯21b、第1従動ギア部31の歯31b、第2駆動ギア部22の歯22b、第2従動ギア部32の歯32b、の各歯における寸法公差よりも相対的に大きい。
さて、駆動ギア20と上側従動ギア30との噛み合いが第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際、第1駆動ギア部21の歯21bと第1従動ギア部31の歯31bとの接触箇所が減少する。また、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際、第2駆動ギア部22の歯22bと第2従動ギア部32の歯32bとの接触箇所が減少する。
例えば、駆動ギア20と上側従動ギア30との噛み合いが第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する場合、駆動ギア20は時計回りに回転し、上側従動ギア30は反時計回りに回転する。これにより、第1駆動ギア部21の複数の歯21bおよび第1従動ギア部31の複数の歯31bは、順々に噛み合って接触しながら、駆動ギア20の回転軸Axと上側従動ギア30の回転軸Bxとを結ぶ軸間線L上を通過する。そして、軸間線L上を通過した後、これらの歯21b,31bは、順々に互いから離間する。軸間線L上を通過した歯21b,31bが互いから離間しても、第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31に新たに噛み合う歯21b,31bが存在すれば、第1駆動ギア部21と第1従動ギア部31との接触箇所は減少しない。しかしながら、第1駆動ギア部21の第1の噛み合いに寄与する複数の歯21bのうち最後に軸間線L上を通過する歯21bxが第1従動ギア部31の対応する歯と噛み合った(接触した)後は、第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31には新たに噛み合う歯21b,31bが存在しない。このため、第1駆動ギア部21と第1従動ギア部31との接触箇所は減少する。
また、駆動ギア20と上側従動ギア30との噛み合いが第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する場合、駆動ギア20は反時計回りに回転し、上側従動ギア30は時計回りに回転する。これにより、第2駆動ギア部22の複数の歯22bおよび第2従動ギア部32の複数の歯32bは、順々に噛み合って接触しながら、軸間線L上を通過する。そして、軸間線L上を通過した後、これらの歯21b,31bは、順々に互いから離間する。軸間線L上を通過した歯22b,32bが互いから離間しても、第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32に新たに噛み合う歯22b,32bが存在すれば、第2駆動ギア部22と第2従動ギア部32との接触箇所は減少しない。しかしながら、第2駆動ギア部22の第2の噛み合いに寄与する複数の歯22bのうち最後に軸間線L上を通過する歯22byが第2従動ギア部32の対応する歯と噛み合った(接触した)後は、第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32には新たに噛み合う歯22b,32bが存在しない。このため、第2駆動ギア部22と第2従動ギア部32との接触箇所は減少する。
このように、第1駆動ギア部21の歯21bと第1従動ギア部31の歯31bとの接触箇所、あるいは、第2駆動ギア部22の歯22bと第2従動ギア部32の歯32bとの接触箇所が減少すると、駆動ギア20および上側従動ギア30の組付け位置の距離が短い場合、駆動ギア20の歯21b,22bと上側従動ギア30の歯31b,32bとの間には、上述のような互いに接近することを抑止する応力が十分に働かない。このため、駆動ギア20と上側従動ギア30とが近づいてしまう。
駆動ギア20と上側従動ギア30とが近づきすぎてしまうと、次のような問題が生じる。すなわち、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際は、新たに噛み合おうとする第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32の歯22b,32bがぶつかって、第2の噛み合いがなされない。具体的には、駆動ギア20と上側従動ギア30とが近づくことで、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に、新たに噛み合おうとする第2駆動ギア部22の歯22bが、新たに噛み合おうとする第2従動ギア部32の歯32bの歯先(頂部)と接触する。そして、駆動ギア20の回転が停止して、第2の噛み合いに移行することができなくなる。このように、第1駆動ギア部21と第2駆動ギア部31とのそれぞれの歯21,31の連続した噛み合いおよび離間が、ギア同士の予定していない接触のために停止した状態を、ロック状態と呼ぶことがある。また、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際は、新たに噛み合おうとする第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31の歯21b,31bがぶつかって、第1の噛み合いがなされない。
以上のような事情を考慮して、図示の例では、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際、あるいは、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際に、駆動ギア20と上側従動ギア30とが近づきすぎることのないよう、駆動ギア20および上側従動ギア30は、次のように構成されている。そして、駆動ギア20および上側従動ギア30を次のような構成とすることで、ギア20,30がロック状態になることが防止される。
すなわち、第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31の複数の歯21b,31bのうち、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に軸間線L上を最後に通過する第1の端の歯31bxの歯先から当該第1の端の歯31bxを有するギア部31の回転軸Bxまでの半径方向距離Ltxと、第1の端の歯31bxの歯先と軸間線L上で対面するギア部21の本体部21aの表面21axから当該本体部21aを有するギア部21の回転軸Axまでの半径方向距離Lsxとの和が、第2駆動ギア部22の基準円直径R22と第2従動ギア部32の基準円直径R32との和以上となっている。
図6に示す例では、第1の端の歯31bxの歯先に対面する本体部21aの表面21axは、当該第1の端の歯31bxを有するギア部31の複数の歯31bのうち、第1の端の歯31bx以外の歯の歯先と軸間線L上で対面するギア部21の本体部21aの表面21asよりも、当該ギア部21の回転軸Axを中心とする円の半径方向外側に位置している。第1従動ギア部31の複数の歯31bを第1の端の歯31bxと同じ形状で構成しても、複数の歯31bの歯先が第1駆動ギア21の本体部21aの表面21asと接触することはなく、第1従動ギア部31の製造を容易化しつつ、ギア20,30がロック状態になることを防止することができる。
より具体的には、第1の端の歯31bxを有するギア部31と噛み合うギア部21の本体部21aは、第1の端の歯31bxの歯先に対面する位置に、当該本体部21aの回転軸Axを中心とする円の半径方外側に突出する突出部21azを有している。突出部21azが設けられていることにより、第1の端の歯31bxの歯先に対面する第1駆動ギア部21の本体部21aの表面21axは、当該ギア部21の本体部21aの上記表面21asよりも、回転軸Axを中心とする円の半径方向外側に位置している。
また、図6に示す例では、第1の端の歯31bxの歯先に対面する本体部21aの表面21axは、当該表面21axを有する本体部21aの外周縁21ae上の、回転軸Axまでの半径方向距離が最も短い点よりも、当該回転軸Axを中心とする円の半径方向外側に位置している。さらに具体的には、図6に示す例では、本体部21aの外周縁21aeの形状は略円形であり、本体部21aの外周縁21aeから回転軸Axまでの半径方向距離は、突出部21azが設けられた領域以外においては、当該外周縁21ae上のいずれの点においても等しい。したがって、第1の端の歯31bxの歯先に対面する本体部21aの表面21axは、本体部21aの外周縁21ae上の突出部21azが設けられた領域以外の領域における任意の点(例えば突出部21az近傍の点)よりも、回転軸Axを中心とする円の半径方向外側に位置している。
第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31がこのように構成されていることにより、駆動ギア20および上側従動ギア30の組付け位置の距離が第2の噛み合いに適した距離よりも短い場合であっても、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離が近づきすぎて第2の噛み合いを行うことができない、ということが防止される。つまり、ギア20,30がロック状態になることが防止される。すなわち、このような第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31によれば、上記組付け位置の距離が短い場合、第1の噛み合いに寄与する第1駆動ギア部21の複数の歯21bのうち最後に軸間線L上を通過する歯21bxが第1従動ギア部31の対応する歯と噛み合った後、第1の端の歯31bxの歯先が上記突出部21azの表面21axに当接することとなる。この結果、駆動ギア20の回転軸Axと上側従動ギア30の回転軸Bxとの距離が、第2駆動ギア部22の基準円直径R22と第2従動ギア部32の基準円直径R32との和よりも短くなることが防止される。すなわち、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離が、第2の噛み合いに適した距離よりも短くなることが防止される。この結果、第2駆動ギア部22の歯22bと第2従動ギア部32の歯32bとは、互いにぶつかることなく、第2の噛み合いを行うことができる。
また、図6に示す例では、第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32の複数の歯22b,32bのうち、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際に軸間線L上を最後に通過する第2の端の歯22byの歯先から当該第2の端の歯22byを有するギア部22の回転軸Axまでの半径方向距離Ltyと、第2の端の歯22byの歯先と軸間線L上で対面するギア部32の本体部32aの表面32ayから当該本体部32aを有するギア部32の回転軸Bxまでの半径方向距離Lsyと、の和が、第1駆動ギア部21の基準円直径R21と第1従動ギア部31の基準円直径R31との和以上となっている。
図6に示す例では、第2の端の歯22byの歯先に対面する本体部32aの表面32ayは、当該第2の端の歯22byを有するギア部22の複数の歯22bのうち第2の端の歯22by以外の歯の歯先と軸間線L上で対面するギア部32の本体部32aの表面32asよりも、当該ギア部32の回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置している。第2駆動ギア部22の複数の歯22bを第2の端の歯22byと同じ形状で構成しても、複数の歯22bの歯先が第2従動ギア32の本体部31aの表面32asと接触することはなく、第2駆動ギア部22の製造を容易化しつつ、ギア20,30がロック状態になることを防止できる。
より具体的には、第2の端の歯22byを有するギア部22と噛み合うギア部32の本体部32aは、第2の端の歯22byの歯先に対面する位置に、当該本体部32aの回転軸Bxを中心とする円の半径方外側に突出する突出部32azを有している。突出部32azが設けられていることにより、第2の端の歯22byの歯先に対面する第2従動ギア部32の本体部32aの表面32ayは、当該ギア部32の本体部32aの上記表面32asよりも、回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置している。
また、図6に示す例では、第2の端の歯22byの歯先に対面する本体部32aの表面32ayは、当該表面32ayを有する本体部32aの外周縁32ae上の、回転軸Bxまでの半径方向距離が最も短い点よりも、当該回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置している。さらに具体的には、図6に示す例では、本体部32aの外周縁32aeの形状は略円形であり、本体部32aの外周縁32aeから回転軸Bxまでの半径方向距離は、突出部32azが設けられた領域以外においては、当該外周縁32ae上のいずれの点においても等しい。したがって、第2の端の歯22byの歯先に対面する本体部32aの表面32ayは、本体部32aの外周縁32ae上の突出部32azが設けられた領域以外の領域における任意の点(例えば突出部32az近傍の点)よりも、回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置している。
第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32がこのように構成されていることにより、駆動ギア20および上側従動ギア30の組付け位置の距離が第1の噛み合いに適した距離よりも短い場合であっても、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際に、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離が近づきすぎて第1の噛み合いを行うことができない、ということが防止される。すなわち、このような第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32によれば、上記組付け位置の距離が短い場合、第2の噛み合いに寄与する第2駆動ギア部22の複数の歯22bのうち最後に軸間線L上を通過する歯22by(図6に示す例では第2の端の歯22byと同じ歯)が第2従動ギア部32の対応する歯と噛み合った後、この第2の端の歯22byの歯先が上記突出部32azの表面32ayに当接することとなる。この結果、駆動ギア20の回転軸Axと上側従動ギア30の回転軸Bxとの距離が、第1駆動ギア部21の基準円直径R21と第1従動ギア部31の基準円直径R31との和よりも短くなることが防止される。すなわち、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離が、第1の噛み合いに適した距離よりも短くなることが防止される。この結果、第1駆動ギア部21の歯21bと第1従動ギア部31の歯31bとは、互いにぶつかることなく、第1の噛み合いを行うことができる。
なお、図6に示す例において、第1駆動ギア部21の複数の歯21bのうち第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に軸間線L上を最後に通過する歯と、第1の端の歯31bxとは、異なる歯である。しかしながら、第1の端の歯は、第1駆動ギア部21の複数の歯21bの一つであってもよい。この場合、第1駆動ギア部21の複数の歯21bのうち第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に軸間線L上を最後に通過する歯と、第1の端の歯とは、同一の歯となる。また、第2駆動ギア部22の複数の歯22bのうち、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際に軸間線L上を最後に通過する歯と、第2の端の歯22byとは同一の歯である。しかしながら、第2の端の歯は、第2従動ギア部32の複数の歯32bの一つであってもよい。この場合、第2駆動ギア部22の複数の歯22bのうち第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際に軸間線L上を最後に通過する歯と、第2の端の歯とは、異なる歯となる。
なお、このような駆動ドア機構10は、吹出通路ドア301D,302D,303Dのシャフト301s,302s,303sを駆動する駆動ドア機構としても、採用可能である。
次に、図7A乃至図8Cを参照して、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際、および、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際の駆動ギア20および上側従動ギア30の動作について説明する。ここでは、駆動ギア機構10に組み付け誤差が生じる等して駆動ギア20および上側従動ギア30の組付け位置の距離が、第1の噛み合いに適した距離よりも短く、且つ、第2の噛み合いに適した距離よりも短くなっている場合を例に挙げて、説明する。
最初に、図7A乃至図7Cを参照して、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際の駆動ギア20および上側従動ギア30の動作について説明する。図7A乃至図7Cにおいて、第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31の歯21b,31bの接触箇所を黒三角で示し、第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32の歯22b,32bの接触箇所を白三角で示す。
まず、図7Aに示すように、駆動ギア20と上側従動ギア30との間で第1の噛み合いがなされており、第1駆動ギア部21の歯21bと第1従動ギア部31の歯31bとが噛み合っている。この状態でアクチュエータ11を作動させて駆動ギア20を時計回りに回転させると、これに伴って上側従動ギア30が反時計回りに回転する。そして、第1の噛み合いに寄与する第1駆動ギア部21の複数の歯21bと第1従動ギア部31の複数の歯31bとが、交互に軸間線L上を通過する。この間、第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31の歯21b,31bは、複数の接触箇所(図示の例では二箇所)で接触している。このため、接触する歯21b,31bの間には、互いに押し合う力(接近することを抑止する応力)が十分に働いている。そして、この歯21bと歯31bが押し合う力によって、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離は、第1の噛み合いに適した距離(駆動ギア20の回転軸Axと上側従動ギア30の回転軸Bxとの距離が第1駆動ギア部21の基準円直径R21と第1従動ギア部31の基準円直径R31との和となる距離)に保たれている。
そして、駆動ギア20および上側従動ギア30が回転を続けることにより、第1駆動ギア部21の複数の歯21bのうち軸間線L上を最後に通過する歯21bxが、第1従動ギア部31の対応する歯と噛み合う(接触する)。この状態で、上記歯21bxは、軸間線Lに接近する。同時に、第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31の複数の歯21b,31bのうち、軸間線L上を最後に通過する第1の端の歯31bxが軸間線Lに接近する。ここで、上述のように、上記歯21bxが第1従動ギア部31の対応する歯と接触した後は、第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31には新たに噛み合う(接触する)歯21b,31bが存在しない。このため、図7Bに示すように、駆動ギア20および上側従動ギア30が回転を続けると、第1駆動ギア部21の歯21bと第1従動ギア部31の歯31bとの接触箇所が減少する。接触箇所が減少すると、第1駆動ギア部21の歯21bと第1従動ギア部31の歯31bとの間には、互いに押し合う力が十分に働かなくなる。
しかしながら、図7Bに示すように、上記歯21bxが第1従動ギア部31の対応する歯と接触した後、第1の端の歯31bxの歯先が、対面するギア部21の本体部21aの表面21axに当接する。これにより、駆動ギア20と上側従動ギア30とが互いに近づいて、その距離が第2の噛み合いに適した距離(回転軸Axと回転軸Bxとの距離が基準円直径R22と基準円直径R32との和となる距離)よりも小さくなる、ということが防止される。これにより、第2駆動ギア部22の歯22bと第2従動ギア部32の歯32bとは、互いにぶつかることなく噛み合う。
そして、図7Cに示すように、駆動ギア20および上側従動ギア30が回転を続けることにより、第2駆動ギア部22の歯22bと第2従動ギア部32の歯32とが複数の接触箇所(図示の例では二箇所)で接触するようになる。これにより、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離は、第2の噛み合いに適した距離(回転軸Axと回転軸Bxとの距離が基準円直径R22と基準円直径R32との和となる距離)に保たれる。
次に、図8A乃至図8Cを参照して、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際の駆動ギア20および上側従動ギア30の動作について説明する。図8A乃至図8Cにおいて、第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32の歯22b,32bの接触箇所を白三角で示し、第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31の歯21b,31bの接触箇所を黒三角で示す。
まず、図8Aに示すように、駆動ギア20と上側従動ギア30との間で第2の噛み合いがなされており、第2駆動ギア部22の歯22bと第2従動ギア部32の歯32bとが噛み合っている。この状態でアクチュエータ11を作動させて駆動ギア20を反時計回りに回転させると、これに伴って上側従動ギア30が時計回りに回転する。そして、第2の噛み合いに寄与する第2駆動ギア部22の複数の歯22bと第2従動ギア部32の複数の歯32bが、交互に軸間線L上を通過する。この間、第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32の歯22b,32bは、複数の接触箇所(図示の例では二箇所)で接触している。このため、接触する歯22b,32bの間には、互いに押し合う力(接近することを抑止する応力)が十分に働いている。そして、この歯22bと歯32bが押し合う力によって、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離は、第2の噛み合いに適した距離(回転軸Axと回転軸Bxとの距離が基準円直径R22と基準円直径R32との和となる距離)に保たれている。
そして、駆動ギア20および上側従動ギア30が回転を続けることにより、第2駆動ギア部22の複数の歯21bのうち軸間線L上を最後に通過する歯22byが、第2従動ギア部32の対応する歯と噛み合う(接触する)。この状態で、上記歯22byは、軸間線Lに接近する。この歯22byは、第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32の複数の歯22b,32bのうち、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際に軸間線L上を最後に通過する第2の端の歯22byでもある。ここで、上述のように、歯22byが第2従動ギア部32の対応する歯と接触した後は、第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32には新たに噛み合う(接触する)歯22b,32bが存在しない。このため、図8Bに示すように、駆動ギア20および上側従動ギア30が回転を続けると、第2駆動ギア部22の歯22bと第2従動ギア部32の歯32bとの接触箇所が減少する。接触箇所が減少すると、第2駆動ギア部22の歯22bと第1従動ギア部32の歯32bとの間には、互いに押し合う力が十分に働かなくなる。
しかしながら、図8Bに示すように、歯22byが第2従動ギア部32の対応する歯と接触した後、この歯(第2の端の歯)22byの歯先が、対面するギア部32の本体部32aの表面32ayに当接する。これにより、駆動ギア20と上側従動ギア30とが互いに近づいて、その距離が第1の噛み合いに適した距離(回転軸Axと回転軸Bxとの距離が基準円直径R21と基準円直径R31との和となる距離)よりも小さくなる、ということが防止される。これにより、第1駆動ギア部21の歯21bと第1従動ギア部31の歯31bとは、互いにぶつかることなく噛み合う。
そして、図8Cに示すように、駆動ギア20および上側従動ギア30が回転を続けることにより、第1駆動ギア部21の歯21bと第1従動ギア部31の歯31とが複数の接触箇所(図示の例では二箇所)で接触するようになる。これにより、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離は、第1の噛み合いに適した距離(回転軸Axと回転軸Bxとの距離が基準円直径R21と基準円直径R31との和となる距離)に保たれる。
<変形例1>
次に、図9乃至図11を参照して、上述の第1の実施形態における駆動ギア機構10の変形例1について説明する。図9は、変形例1による駆動ギア機構10の駆動ギア20と上側従動ギア30とを示す側面図である。また、図10は、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際の駆動ギア20および上側従動ギア30の動作を説明するための部分拡大図であり、図11は、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際の駆動ギア20および上側従動ギア30の動作を説明するための部分拡大図である。
図9乃至図11に示す変形例1では、図1乃至図8Cに示す駆動ギア機構10と比較して、第1の端の歯31bxを有するギア部31と噛み合うギア部21の本体部21aに突出部21azが設けられていない点、および、第1の端の歯31bxが、当該第1の端の歯31bxを有するギア部31のその他の歯31bよりも半径方向外側に延び出している点で異なっている。また、第2の端の歯22byを有するギア部22と噛み合うギア部32の本体部32aに突出部32azが設けられていない点、および、第2の端の歯22byが、当該第2の端の歯22byを有するギア部22のその他の歯22bよりも半径方向外側に延び出している点で異なっている。他の構成は、図1乃至図8Cに示す空調装置1と略同一である。図9乃至図11に示す変形例1において、図1乃至図8Cに示す一実施の形態と同様の部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。なお、図10において、第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31の歯21b,31bの接触箇所を黒三角で示す。また、図11において、第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32の歯22b,32bの接触箇所を白三角で示す。
図9に示す例では、第1の端の歯31bxの歯先は、第1の端の歯31bxを有するギア部31の複数の歯31bのうち、第1の端の歯31bx以外の歯の歯先よりも、当該ギア部31の回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置している。これにより、第1の端の歯31bxの歯先から当該第1の端の歯31bxを有するギア部31の回転軸Bxまでの半径方向距離Ltxと、第1の端の歯31bxの歯先と軸間線L上で対面するギア部21の本体部21aの表面21axから当該本体部21aを有するギア部21の回転軸Axまでの半径方向距離Lsxとの和が、第2駆動ギア部22の基準円直径R22と第2従動ギア部32の基準円直径R32との和以上となっている。
より具体的には、第1の端の歯31bxの歯先と軸間線L上で対面するギア部21の本体部21aの表面21axは、第1駆動ギア部21の本体部21aの上記表面21asと同じ回転軸Axを中心とする円上に位置している。その一方で、第1の端の歯31bxは、当該第1の端の歯31bxを有するギア部31の複数の歯31bのうち、第1の端の歯31bx以外の歯の歯先よりも、当該ギア部31の回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に延出する延出部31bzを有している。延出部31bzが設けられていることにより、第1の端の歯31bxの歯先は、第1の端の歯31bxを有するギア部31の複数の歯31bのうち、第1の端の歯31bx以外の歯の歯先よりも、当該ギア部31の回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置している。
第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31がこのように構成されていることにより、駆動ギア20および上側従動ギア30の組付け位置の距離が第2の噛み合いに適した距離よりも短い場合であっても、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離が近づきすぎて第2の噛み合いを行うことができない、ということが防止される。すなわち、このような第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31によれば、図10に示すように、上記組付け位置の距離が短い場合、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に、第1の噛み合いに寄与する第1駆動ギア部21の複数の歯21bのうち最後に軸間線L上を通過する歯21bxが第1従動ギア部31の対応する歯と噛み合った後、第1の端の歯31bxの歯先が上記本体部21の表面21axに当接することとなる。この結果、駆動ギア20の回転軸Axと上側従動ギア30の回転軸Bxとの距離が、第2駆動ギア部22の基準円直径R22と第2従動ギア部32の基準円直径R32との和よりも短くなることが防止される。すなわち、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離が、第2の噛み合いに適した距離よりも短くなることが防止される。この結果、第2駆動ギア部22の歯と第2従動ギア部32の歯とは、互いにぶつかることなく、第2の噛み合いを行うことができる。
また、図9に示す例では、第2の端の歯22byの歯先は、当該第2の端の歯22byを有するギア部22の複数の歯22bのうち第2の端の歯22by以外の歯の歯先よりも、当該ギア部22の回転軸Axを中心とする円の半径方向外側に位置している。これにより、第2の端の歯22byの歯先から第2の端の歯22byを有するギア部22の回転軸Axまでの半径方向距離Ltyと、第2の端の歯22byの歯先と軸間線L上で対面するギア部32の本体部32aの表面32ayから当該本体部32aを有するギア部32の回転軸Bxまでの半径方向距離Lsyとの和が、第1駆動ギア部21の基準円直径R21と第1従動ギア部31の基準円直径R31との和以上となっている。
より具体的には、第2の端の歯22byの歯先と軸間線L上で対面するギア部32の本体部32aの表面32ayは、当該本体部32aの上記表面32asと同じ回転軸Bxを中心とする円上に位置している。その一方で、第2の端の歯22byは、第2の端の歯22byを有するギア部22の複数の歯22bのうち、第2の端の歯22by以外の歯の歯先よりも、当該ギア部22の回転軸Axを中心とする円の半径方向外側に延出する延出部22bzを有している。延出部22bzが設けられていることにより、第2の端の歯22byの歯先は、第2の端の歯22byを有するギア部22の複数の歯22bのうち、第2の端の歯22by以外の歯の歯先よりも、当該ギア部22の回転軸Axを中心とする円の半径方向外側に位置している。
第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32がこのように構成されていることにより、駆動ギア20および上側従動ギア30の組付け位置の距離が第1の噛み合いに適した距離よりも短い場合であっても、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際に、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離が近づきすぎて第1の噛み合いを行うことができない、ということが防止される。すなわち、このような第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32によれば、図11に示すように、上記組付け位置の距離が短い場合、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際に、第2の噛み合いに寄与する第2駆動ギア部22の複数の歯22bのうち最後に軸間線L上を通過する歯22byが第2従動ギア部32の対応する歯と噛み合った後、第2の端の歯22byの歯先が上記本体部32aの表面32ayに当接することとなる。この結果、駆動ギア20の回転軸Axと上側従動ギア30の回転軸Bxとの距離が、第1駆動ギア部21の基準円直径R21と第1従動ギア部31の基準円直径R31との和よりも短くなることが防止される。すなわち、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離が、第1の噛み合いに適した距離よりも短くなることが防止される。この結果、第1駆動ギア部21の歯と第1従動ギア部31の歯とは、互いにぶつかることなく、第1の噛み合いを行うことができる。
<変形例2>
次に、図12を参照して、上述の一実施の形態における駆動ギア機構10の変形例2について説明する。図12は、変形例2による駆動ギア機構10の駆動ギア20と上側従動ギア30とを示す側面図である。
図12に示す変形例2では、図1乃至図8Cに示す駆動ギア機構10と比較して、第1の端の歯が駆動ギア20に設けられており、第1の端の歯を有するギア部と噛み合うギア部が上側従動ギア30である点、及び、駆動ギア20の各ギア部21,22の全周にわたって歯が設けられている点で異なっている。他の構成は、図1乃至図8Cに示す空調装置1と略同一である。図12に示す変形例2において、図1乃至図8Cに示す一実施の形態と同様の部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図12に示す変形例では、第1駆動ギア部21の本体部21aの全周にわたって歯21b,21cが設けられている。また、第2駆動ギア部22の本体部22aの全周にわたって歯22b,22cが設けられている。このような駆動ギア20によれば、駆動ギア20および上側従動ギア30を空調ケース2に対して組み付ける際、互いに対する角度位置を考慮する必要がない。このため、駆動ギア20および上側従動ギア30の組み付けが容易になる。
なお、第1駆動ギア部21の複数の歯21b,21cのうち、歯21bのみが第1の噛み合いに寄与する。すなわち、歯21bのみが、駆動ギア20が時計回りまたは反時計回りに回転する際に第1従動ギア部31の複数の歯31bに接触して第1従動ギア部31にアクチュエータ11の回転駆動力を伝達する。その他の歯21cは、第1従動ギア部31への上記回転駆動力の伝達に寄与しない。また、第2駆動ギア部22の複数の歯22b,22cのうち、歯22bのみが第2の噛み合いに寄与する。すなわち、歯22bのみが、駆動ギア20が時計回りまたは反時計回りに回転する際に第2従動ギア部32の複数の歯32bに接触して第2従動ギア部32にアクチュエータ11の回転駆動力を伝達する。その他の歯22cは、第2従動ギア部32への上記回転駆動力の伝達に寄与しない。
図12に示す変形例では、第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31の複数の歯21b,31bのうち、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に軸間線L上を最後に通過する第1の端の歯は、第1駆動ギア部21の歯21bxである。また、第1の端の歯21bxの歯先と軸間線L上で対面するギア部の本体部の表面は、第1従動ギア部31の本体部31aの表面31axである。
図12に示す例では、第1の端の歯21bxの歯先に対面する本体部31aの表面31axは、第1の端の歯21bxを有するギア部21の第1の噛み合いに寄与する複数の歯21bのうち、第1の端の歯21bx以外の歯の歯先と軸間線L上で対面するギア部31の本体部31aの表面31asよりも、当該ギア部31の回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置している。これにより、第1の端の歯21bxの歯先から第1の端の歯21bxを有するギア部21の回転軸Axまでの半径方向距離Ltxと、第1の端の歯21bxの歯先と軸間線L上で対面するギア部31の本体部31aの表面31axから当該本体部31aを有するギア部31の回転軸Bxまでの半径方向距離Lsxとの和が、第2駆動ギア部22の基準円直径R22と第2従動ギア部32の基準円直径R32との和以上となっている。
より具体的には、第1の端の歯21bxを有するギア部21と噛み合うギア部31の本体部31aは、第1の端の歯21bxの歯先に対面する位置に、当該本体部31aの回転軸Bxを中心とする円の半径方外側に突出する突出部31azを有している。突出部31azが設けられていることにより、第1の端の歯21bxの歯先に対面する第1従動ギア部31の本体部31aの表面31axは、当該ギア部31の本体部31aの上記表面31axよりも、当該ギア部31の回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置している。
また、図12に示す例では、第1の端の歯21bxの歯先に対面する本体部31aの表面31axは、当該表面31axを有する本体部31aの外周縁31ae上の、回転軸Bxまでの半径方向距離が最も短い点よりも、当該回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置している。さらに具体的には、図12に示す例では、本体部31aの外周縁31aeの形状は略円形であり、本体部31aの外周縁31aeから回転軸Bxまでの半径方向距離は、突出部31azが設けられた領域以外においては、当該外周縁31ae上のいずれのいずれの点においても等しい。したがって、第1の端の歯21bxの歯先に対面する本体部31aの表面31axは、本体部31aの外周縁31ae上の突出部31azが設けられた領域以外の領域における任意の点(例えば突出部31az近傍の点)よりも、回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置している。
このような第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31においても、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際、第1駆動ギア部21の第1の噛み合いに寄与する歯21bのうち軸間線Lを最後に通過する歯21bxが第1従動ギア部31の対応する歯31bと噛み合った後、この歯(第1の端の歯)21bxの歯先が、対面するギア部31の本体部31aの表面31axに当接する。このため、駆動ギア20と上側従動ギア30とが互いに近づいて、駆動ギア20の回転軸Axと上側従動ギア30の回転軸Bxとの距離が第2駆動ギア部22の基準円直径R22と第2従動ギア部32の基準円直径R32との和よりも小さくなる、ということが防止される。すなわち、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離が、第2の噛み合いに適した距離よりも小さくなることが防止される。これにより、第2駆動ギア部22の歯22bと第2従動ギア部32の歯32bとは、互いにぶつかることなく噛み合うことができる。
このように、第1の端の歯は第1駆動ギア部21に設けられてもよいし、第1従動ギア部31に設けられてもよい。言い換えると、第1の端の歯の歯先と軸間線L上で当接する突出部は、第1駆動ギア部21に設けられてもよいし、第1従動ギア部に設けられてもよい。
同様に、第2の端の歯は、第2駆動ギア部22に設けられてもよいし、第2従動ギア部32に設けられてもよい。言い換えると、第2の端の歯の歯先と軸間線L上で当接する突出部は、第2駆動ギア部22に設けられてもよいし、第2従動ギア部32に設けられてもよい。
なお、図12に示す例では、上記突出部31az,32azは、いずれも上側従動ギア30に設けられている。このように駆動ギア20および上側従動ギア30の距離を適切な距離に保つための突出部を一方のギアのみに設ける場合、突出部を設けるための加工や処理を当該一方のギアのギア部のみに施せばよい。例えば、突出部を上側従動ギア30に設ける場合、駆動ギア20として汎用性の高いギアを用い、駆動ギア20の寸法に応じた寸法の突出部31az,32azを、上側従動ギア30に設ければよい。このことは、駆動ギア機構10の生産性の向上に繋がる。
<変形例3>
次に、図13を参照して、上述の一実施の形態における駆動ギア機構10の変形例3について説明する。図13は、変形例3による駆動ギア機構10の駆動ギア20と上側従動ギア30とを示す側面図である。
図13に示す変形例3では、図9乃至図11に示す駆動ギア機構10と比較して、第2の端の歯が第2従動ギア部32に設けられており、第2の端の歯を有するギア部と噛み合うギア部が第2駆動ギア部22である点で異なっている。他の構成は、図9乃至図11に示す空調装置1と略同一である。図13に示す変形例3において、図9乃至図11に示す一実施の形態と同様の部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図13に示す変形例では、第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32の複数の歯21b,31bのうち、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際に軸間線L上を最後に通過する第2の端の歯は、第2従動ギア部32の歯32byである。また、第2の端の歯32byの歯先と軸間線L上で対面するギア部の本体部の表面は、第2駆動ギア部22の本体部22aの表面22ayである。
図13に示す例では、第2の端の歯32byの歯先は、第2の端の歯32byを有するギア部32の複数の歯32bのうち第2の端の歯32by以外の歯の歯先よりも、当該ギア部32の回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置している。これにより、第2の端の歯32byの歯先から第2の端の歯32byを有するギア部32の回転軸Bxまでの半径方向距離Ltyと、第2の端の歯32byの歯先と軸間線L上で対面するギア部22の本体部22aの表面22ayから当該本体部22aを有するギア部22の回転軸Axまでの半径方向距離Lsyとの和が、第1駆動ギア部21の基準円直径R21と第1従動ギア部31の基準円直径R31との和以上となっている。
より具体的には、第2の端の歯32byの歯先と軸間線L上で対面するギア部22の本体部22aの表面22axは、第2駆動ギア部22の本体部22aの上記表面22asと同じ回転軸Axを中心とする円上に位置している。その一方で、第2の端の歯32byは、第2の端の歯32byを有するギア部32の複数の歯32bのうち、第2の端の歯32by以外の歯の歯先よりも、当該ギア部32の回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に延出する延出部32bzを有している。延出部32bzが設けられていることにより、第2の端の歯32byの歯先は、第2の端の歯32byを有するギア部32の複数の歯32bのうち、第2の端の歯32by以外の歯の歯先よりも、当該ギア部32の回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置している。
このような第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32においても、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際、第2駆動ギア部22の複数の歯22bのうち最後に軸間線Lを通過する歯22byが第2従動ギア部32の対応する歯と噛み合った後、第2の端の歯32byの歯先が、対面するギア部22の本体部22aの表面22ayに当接する。このため、駆動ギア20と上側従動ギア30とが互いに近づいて、駆動ギア20の回転軸Axと上側従動ギア30の回転軸Bxとの距離が、第1駆動ギア部21の基準円直径R21と第1従動ギア部31の基準円直径R31との和よりも小さくなる、ということが防止される。すなわち、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離が、第1の噛み合いに適した距離よりも小さくなることが防止される。これにより、第1駆動ギア部21の歯21bと第1従動ギア部31の歯31bとは、互いにぶつかることなく噛み合うことができる。
このように、延出部を有する第2の端の歯は、第2駆動ギア部22に設けられてもよいし、第2従動ギア部32に設けられてもよい。同様に、延出部を有する第1の端の歯は、第1駆動ギア部21に設けられてもよいし、第1従動ギア部31に設けられてもよい。
なお、図13に示す例では、上記延出部31bz,32bzは、いずれも上側従動ギア30に設けられている。このように駆動ギア20および上側従動ギア30の距離を適切な距離に保つための延出部を一方のギアのみに設ける場合、延出部を設けるための加工や処理を当該一方のギアのギア部のみに施せばよい。例えば、延出部を上側従動ギア30に設ける場合、駆動ギア20として汎用性の高いギアを用い、駆動ギア20の寸法に応じた寸法の延出部31bz,32bzを、上側従動ギア30に設ければよい。このことは、駆動ギア機構10の生産性の向上に繋がる。
以上に説明してきた上述の第1の実施形態および変形例において、駆動ギア機構10は、内部に空気が流れる空気通路3を形成する空調ケース2を有する車両用の空調装置1において、空気通路3を通流する空気の流れを変更するドア6,8を駆動する駆動ギア機構10である。駆動ギア機構10は、回転駆動力を発生するアクチュエータ11と、アクチュエータ11により回転駆動される駆動ギア20と、ドア6,8を駆動するシャフト7に連結され、駆動ギア20と噛み合ってアクチュエータ11の回転駆動力をシャフト7に伝達する従動ギア30と、を備えている。駆動ギア20は、互いに基準円直径R21,R22の異なる第1駆動ギア部21および第2駆動ギア部22を有している。また、従動ギア30は、それぞれ、第1駆動ギア部21および第2駆動ギア部22に対応して設けられた互いに基準円直径R31,R32の異なる第1従動ギア部31および第2従動ギア部32を有している。そして、駆動ギア20と従動ギア30との噛み合いが、駆動ギア20の回転位相に応じて、第1駆動ギア部21と第1従動ギア部31とによる第1の噛み合い、あるいは、第2駆動ギア部22と第2従動ギア部32とによる第2の噛み合いによってなされる。第1駆動ギア部21および第2駆動ギア部22は、それぞれ、アクチュエータ11に接続される本体部21a,22aと、当該本体部21a,22aに設けられた、第1従動ギア部31との第1の噛み合いまたは第2従動ギア部32との第2の噛み合いに寄与する複数の歯21b,22bと、を有している。また、第1従動ギア部31および第2従動ギア部32は、それぞれ、シャフト7に接続される本体部31a,32aと、当該本体部31a,32aに設けられた、第1駆動ギア部21との第1の噛み合いまたは第2駆動ギア部22との第2の噛み合いに寄与する複数の歯31b,32bと、を有している。そして、第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31の複数の歯21b,31bのうち、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に駆動ギア20の回転軸Axと従動ギア30の回転軸Bxとを結ぶ軸間線L上を最後に通過する第1の端の歯21bx,31bxの歯先から当該第1の端の歯21bx,31bxを有するギア部21,31の回転軸Ax,Bxまでの半径方向距離Ltxと、第1の端の歯21bx,31bxの歯先と軸間線L上で対面するギア部31,21の本体部の表面31ax,21axから当該本体部31a,21aを有するギア部31,21の回転軸Bx,Axまでの半径方向距離Lsxとの和が、第2駆動ギア部22の基準円直径R22と第2従動ギア部32の基準円直径R32との和以上である。
このような駆動機構10によれば、駆動機構10に寸法誤差や組み付け誤差が生じる等して、駆動ギア20および従動ギア30の組付け位置の距離が短くなっても、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際、第2駆動ギア部22の歯22bと第2従動ギア部32の歯32bとは、互いにぶつかることなく噛み合うことができる。
例えば、第1の端の歯21bx,31bxの歯先に対面する本体部31a,21aの表面31ax,21axは、当該第1の端の歯21bx,31bxを有するギア部21,31の複数の歯21b,31bのうち、第1の端の歯21bx,31bx以外の歯の歯先と軸間線L上で対面するギア部31,21の本体部31a,21aの表面31as,21asよりも、当該ギア部31,21の回転軸Bx,Axを中心とする円の半径方向外側に位置している。第1の端の歯21bx,31bxを有するギア部21,31と噛み合うギア部31,21をこのように構成することにより、上記半径方向距離Ltxと上記半径方向距離Lsxとの和を、第2駆動ギア部22の基準円直径R22と第2従動ギア部32の基準円直径R32との和以上とすることができる。
また、例えば、第1の端の歯21bx,31bxの歯先に対面する本体部31a,21aの表面31ax,21axは、当該表面31ax,21axを有する本体部31a,21aの外周縁31ae,21ae上の、当該本体部31a,21aを有するギア部31,21の回転軸Bx,Axまでの半径方向距離が最も短い点よりも、当該回転軸Bx,Axを中心とする円の半径方向外側に位置している。第1の端の歯21bx,31bxを有するギア部21,31と噛み合うギア部31,21をこのように構成することによっても、上記半径方向距離Ltxと上記半径方向距離Lsxとの和を、第2駆動ギア部22の基準円直径R22と第2従動ギア部32の基準円直径R32との和以上とすることができる。
また、第1の実施形態または変形例において、第1の端の歯21bxは、第1駆動ギア部21に設けられている。
あるいは、第1の端の歯31bxの歯先は、当該第1の端の歯31bxを有するギア部31の複数の歯31bのうち、第1の端の歯31bx以外の歯の歯先よりも、当該ギア部31の回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置している。第1の端の歯21bx,31bxを有するギア部21,31をこのように構成することにより、上記半径方向距離Ltxと上記半径方向距離Lsxとの和を、第2駆動ギア部22の基準円直径R22と第2従動ギア部32の基準円直径R32との和以上とすることができる。
また、第1の実施形態または変形例において、第1の端の歯31bxは、第1従動ギア部31に設けられている。
また、第1の実施形態または変形例において、第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32の複数の歯22b,32bのうち、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際に軸間線L上を最後に通過する第2の端の歯22by,32byの歯先から当該第2の端の歯22by,32byを有するギア部22,32の回転軸Ax,Bxまでの半径方向距離Ltyと、第2の端の歯22by,32byの歯先と軸間線L上で対面するギア部32,22の本体部32a,22aの表面32ay,22ayから当該本体部32a,22aを有するギア部32,22の回転軸Bx,Axまでの半径方向距離Lsyとの和が、第1駆動ギア部21の基準円直径R21と第1従動ギア部31の基準円直径R31との和以上である。
このような駆動機構10によれば、駆動機構10に寸法誤差や組み付け誤差が生じる等して、駆動ギア20および従動ギア30の組付け位置の距離が短くなっても、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際、第1駆動ギア部21の歯21bと第1従動ギア部31の歯31bとは、互いにぶつかることなく噛み合うことができる。
例えば、第2の端の歯22byの歯先に対面する本体部32aの表面32ayは、当該第2の端の歯22byを有するギア部22の複数の歯22bのうち第2の端の歯22by以外の歯の歯先と軸間線L上で対面するギア部32の本体部32aの表面32asよりも、当該ギア部32の回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置している。第2の端の歯22byを有するギア部22と噛み合うギア部32をこのように構成することにより、上記半径方向距離Ltyと上記半径方向距離Lsyとの和を、第1駆動ギア部21の基準円直径R21と第1従動ギア部31の基準円直径R31との和以上とすることができる。
また、例えば、第2の端の歯22byの歯先に対面する本体部32aの表面32ayは、当該表面32ayを有する本体部32aの外周縁32ae上の、当該本体部32aを有するギア部32の回転軸Bxまでの半径方向距離が最も短い点よりも、当該回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置している。第2の端の歯22byを有するギア部22と噛み合うギア部32をこのように構成することによっても、上記半径方向距離Ltyと上記半径方向距離Lsyとの和を、第1駆動ギア部21の基準円直径R21と第1従動ギア部31の基準円直径R31との和以上とすることができる。
第1の実施形態または変形例において、第2の端の歯22byは、第2駆動ギア部22に設けられている。
あるいは、第2の端の歯22by,32byの歯先は、当該第2の端の歯22by,32byを有するギア部22,32の複数の歯22b,32bのうち第2の端の歯22by,32by以外の歯の歯先よりも、当該ギア部22,32の回転軸Ax,Bxを中心とする円の半径方向外側に位置している。第2の端の歯22byを有するギア部22をこのように構成することにより、上記半径方向距離Ltyと上記半径方向距離Lsyとの和を、第1駆動ギア部21の基準円直径R21と第1従動ギア部31の基準円直径R31との和以上とすることができる。
また、第1の実施形態および変形例において、第2の端の歯32byは、第2従動ギア部32に設けられている。
<第2の実施形態>
次に、図14乃至図16を参照して、第2の実施形態による駆動ギア機構10の駆動ギア20および上側従動ギア30について説明する。図14は、第2の実施形態による駆動ギア機構10の駆動ギア20と上側従動ギア30とを示す側面図である。図15および図16は、図14に示す駆動ギア20および上側従動ギア30の部分拡大図である。
図14乃至図16に示す例では、図1乃至図8Cに示す駆動ギア機構10と比較して、第2駆動ギア部が第1の追加の歯を有しており、第1の追加の歯と、第1の追加の歯の歯先に対面するギア部の本体部の表面とによって、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際、駆動ギアと上側従動ギアとの距離が第2の噛み合いに適した距離よりも小さくなることが防止される点で異なっている。また、第1従動ギア部が第2の追加の歯を有しており、第2の追加の歯と、第2の追加の歯の歯先に対面するギア部の本体部の表面とによって、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際、駆動ギアと上側従動ギアとの距離が第1の噛み合いに適した距離よりも小さくなることが防止される点で異なっている。他の構成は、図1乃至図8Cに示す空調装置1と略同一である。図14乃至図16に示す例において、図1乃至図8Cに示す第1の実施形態と同様の部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
なお、以下では、第1の噛み合いに寄与する第1駆動ギア部21の複数の歯21bのうち、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に軸間線L上を最後に通過する歯21bpを「第3の端の歯」とも呼ぶ。第3の端の歯21bpは、第1の噛み合いに寄与する第1駆動ギア部21の複数の歯21bのうち、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際に軸間線L上を最初に通過する歯でもある。
また、第2駆動ギア部22の第2の噛み合いに寄与する複数の歯22bのうち、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に、軸間線L上を最初に通過する歯22bqを「第4の端の歯」とも呼ぶ。第4の端の歯22bqは、第2駆動ギア部22の第2の噛み合いに寄与する複数の歯22bのうち、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際に軸間線L上を最後に通過する歯でもある。
図14に示す例では、第2駆動ギア部22は、上記複数の歯22bの他に、第1の追加の歯22crを有する。第1の追加の歯22crは、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に軸間線L上を、第4の端の歯22bqよりも先に通過するよう、設けられている。具体的には、第1の追加の歯22crは、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に第3の端の歯21bpが第1従動ギア部31の複数の歯31bのいずれかと接触を開始してから、第4の端の歯22bqが軸間線Lに到達するまでの間に、軸間線Lを通過するように設けられている。
そして、第1の追加の歯22crの歯先から当該第1の追加の歯22crを有するギア部22の回転軸Axまでの半径方向距離Ltrと、第1の追加の歯22crの歯先と軸間線L上で対面するギア部32の本体部32aの表面32arから当該本体部32aを有するギア部32の回転軸Bxまでの半径方向距離Lsrとの和が、第2駆動ギア部22の基準円直径R22と第2従動ギア部32の基準円直径R32との和以上となっている。
より具体的には、第1の追加の歯22crを有するギア部22と噛み合うギア部32の本体部32aは、第1の追加の歯22crの歯先に対面する位置に、当該本体部32aの回転軸Bxを中心とする円の半径方外側に突出する突出部32awを有している。突出部32awが設けられていることにより、第1の追加の歯22crの歯先に対面する第2従動ギア部32の本体部32aの表面32arは、当該ギア部32の本体部32aの上記表面32asよりも、回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置している。
第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32がこのように構成されていることによっても、駆動ギア20および上側従動ギア30の組付け位置の距離が第2の噛み合いに適した距離よりも短い場合であっても、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に、駆動ギア20と上側従動ギア30とが近づきすぎて第2の噛み合いを行うことができない、ということが防止される。すなわち、図15に示すように、このような第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32によれば、上記組付け位置の距離が上記第2の噛み合いに適した距離よりも短い場合、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に、第3の端の歯21bpが第1従動ギア部31の対応する歯31bと噛み合った(接触した)後、第1の追加の歯22crの歯先が、対面するギア部32の本体部32aの表面32arに当接することとなる。この結果、駆動ギア20の回転軸Axと上側従動ギア30の回転軸Bxとの距離が、第2駆動ギア部22の基準円直径R22と第2従動ギア部32の基準円直径R32との和よりも小さくなることが防止される。すなわち、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離が、第2の噛み合いに適した距離よりも短くなることが防止される。この結果、第2駆動ギア部22の歯22bと第2従動ギア部32の歯32bとは、互いにぶつかることなく、第2の噛み合いを行うことができる。
もちろん、第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32の構成としては、これに限られない。例えば、上記表面32arは、第2従動ギア部32の本体部32aの上記表面32asよりも外側に突出していなくてもよい。この場合、第1の追加の歯22crが第2駆動ギア部22の第2の噛み合いに寄与する複数の歯22bよりも外側に延び出して、第1の追加の歯22crの歯先が上記複数の歯22bの歯先よりも、第2駆動ギア部22の回転軸Axを中心とする円の半径方向外側に位置していればよい。このような第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32によっても、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離が、第2の噛み合いに適した距離よりも小さくなることが防止される。
また、第1の追加の歯は、第2従動ギア部32に設けられていてもよい。この場合、第1の追加の歯と軸間線L上で対面する第2駆動ギア部22の表面は、第2従動ギア部32の複数の歯32bの歯先と軸間線L上で対面する第2駆動ギア部22の本体部22aの表面22asよりも、第2駆動ギア部22の回転軸Axを中心とする円の半径方向外側に位置していればよい。あるいは、第1の追加の歯と軸間線L上で対面する第2駆動ギア部22の表面は第2駆動ギア部22の本体部22aの上記表面22asよりも外側に突出しておらず、第1の追加の歯が第2従動ギア部32の第2の噛み合いに寄与する複数の歯32bよりも外側に延び出していればよい。すなわち、第1の追加の歯の歯先が上記複数の歯32bの歯先よりも、第2従動ギア部32の回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置していればよい。このような第2駆動ギア部22および第2従動ギア部32によっても、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離が、第2の噛み合いに適した距離よりも小さくなることが防止される。
さらに、図14に示す例では、第1従動ギア部31は、上記複数の歯31bの他に、第2の追加の歯31cuを有する。第2の追加の歯31cuは、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際に軸間線L上を、第3の端の歯21bpよりも先に通過するよう、設けられている。具体的には、第1の追加の歯22crは、第4の端の歯22bqが第1従動ギア部31の複数の歯31bのいずれかと接触を開始してから、第3の端の歯21bpが軸間線Lに到達するまでの間に、軸間線Lを通過するように設けられている。
そして、第2の追加の歯31cuの歯先から当該第2の追加の歯31cuを有するギア部31の回転軸Bxまでの半径方向距離Ltuと、第2の追加の歯31cuの歯先と軸間線L上で対面するギア部21の本体部21aの表面21auから当該本体部21aを有するギア部21の回転軸Axまでの半径方向距離Lsuとの和が、第1駆動ギア部21の基準円直径R21と第1従動ギア部31の基準円直径R31との和以上となっている。
より具体的には、第2の追加の歯31cuを有するギア部31と噛み合うギア部21の本体部21aは、第2の追加の歯31cuの歯先に対面する位置に、当該本体部21aの回転軸Axを中心とする円の半径方外側に突出する突出部21awを有している。突出部21awが設けられていることにより、第2の追加の歯31cuの歯先に対面する第1駆動ギア部21の本体部21aの表面21auは、当該ギア部21の本体部21aの上記表面21asよりも、回転軸Axを中心とする円の半径方向外側に位置している。
第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31がこのように構成されていることによっても、駆動ギア20および上側従動ギア30の組付け位置の距離が第1の噛み合いに適した距離よりも短い場合であっても、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際に、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離が近づきすぎて第1の噛み合いを行うことができない、ということが防止される。すなわち、図16に示すように、このような第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31によれば、上記組付け位置の距離が短い場合、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際に、第4の端の歯22bqが第2従動ギア部32の対応する歯と噛み合った(接触した)後、第2の追加の歯31cuの歯先が、対面するギア部21の本体部21aの表面21auに当接することとなる。この結果、駆動ギア20の回転軸Axと上側従動ギア30の回転軸Bxとの距離が、第1駆動ギア部21の基準円直径R21と第1従動ギア部31の基準円直径R31との和よりも小さくなることが防止される。すなわち、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離が、第1の噛み合いに適した距離よりも短くなることが防止される。この結果、第1駆動ギア部21の歯21bと第2従動ギア部31の歯31bとは、互いにぶつかることなく、第1の噛み合いを行うことができる。
もちろん、第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31の構成としては、これに限られない。例えば、上記表面21auは、第1駆動ギア部21の本体部21aの上記表面21asよりも外側に突出していなくてもよい。この場合、第2の追加の歯31cuが第1従動ギア部31の第1の噛み合いに寄与する複数の歯31bよりも外側に延び出して、第2の追加の歯31cuの歯先が上記複数の歯31bの歯先よりも、第1従動ギア部31の回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置していればよい。このような第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31によっても、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際に、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離が、第1の噛み合いに適した距離よりも小さくなることが防止される。
また、第2の追加の歯は、第1駆動ギア部21に設けられていてもよい。この場合、第2の追加の歯と軸間線L上で対面する第1従動ギア部31の表面は、第1駆動ギア部21の複数の歯21bの歯先と軸間線L上で対面する第1従動ギア部31の本体部31aの表面31asよりも、第1従動ギア部31の回転軸Bxを中心とする円の半径方向外側に位置していればよい。あるいは、第2の追加の歯と軸間線L上で対面する第1従動ギア部31の表面は第1従動ギア部31の本体部31aの上記表面31asよりも外側に突出しておらず、第2の追加の歯が第1駆動ギア部21の第1の噛み合いに寄与する複数の歯21bよりも外側に延び出していればよい。すなわち、第2の追加の歯の歯先が上記複数の歯21bの歯先よりも、第1駆動ギア部21の回転軸Axを中心とする円の半径方向外側に位置していてもよい。このような第1駆動ギア部21および第1従動ギア部31によっても、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際に、駆動ギア20と上側従動ギア30との距離が、第1の噛み合いに適した距離よりも小さくなることが防止される。
以上に説明してきた上述の第2の実施形態において、駆動ギア機構10は、内部に空気が流れる空気通路3を形成する空調ケース2を有する車両用の空調装置1において、空気通路を通流する空気の流れを変更するドア6,8を駆動する。駆動ギア機構10は、回転駆動力を発生するアクチュエータ11と、アクチュエータ11により回転駆動される駆動ギア20と、ドアを駆動するシャフト7に連結され、駆動ギア20と噛み合ってアクチュエータ11の回転駆動力をシャフト7に伝達する従動ギア30と、を備えている。駆動ギア20は、互いに基準円直径R21,R22の異なる第1駆動ギア部21および第2駆動ギア部22を有している。また、従動ギア30は、それぞれ、第1駆動ギア部21および第2駆動ギア部22に対応して設けられた互いに基準円直径R31,R32の異なる第1従動ギア部31および第2従動ギア部32を有している。そして、駆動ギア20と従動ギア30との噛み合いが、駆動ギア20の回転位相に応じて、第1駆動ギア部21と第1従動ギア部31とによる第1の噛み合い、あるいは、第2駆動ギア部22と第2従動ギア部32とによる第2の噛み合いによってなされる。第1駆動ギア部21および第2駆動ギア部22は、それぞれ、アクチュエータ11に接続される本体部21a,22aと、当該本体部21a,22aに設けられた、第1従動ギア部31との第1の噛み合いまたは第2従動ギア部32との第2の噛み合いに寄与する複数の歯21b,22bとを有している。第1従動ギア部31および第2従動ギア部32は、それぞれ、シャフト7に接続される本体部31a,32aと、当該本体部31a,32aに設けられた、第1駆動ギア部21との第1の噛み合いまたは第2駆動ギア部22との第2の噛み合いに寄与する複数の歯31b,32bとを有している。第1駆動ギア部21の複数の歯21bは、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に、駆動ギア20の回転軸Axと従動ギア30の回転軸Bxとを結ぶ軸間線L上を、第1駆動ギア部21の複数の歯21bの中で最後に通過する第3の端の歯21bpを有している。第2駆動ギア部22の複数の歯22bは、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際に、軸間線L上を、第2駆動ギア部22の複数の歯22bの中で最初に通過する第4の端の歯22bqを有している。第2駆動ギア部22または第2従動ギア部32は、第3の端の歯21bpが第1従動ギア部31の複数の歯31bのいずれかと接触を開始してから第4の端の歯22bqが軸間線L上に到達するまでの間に軸間線L上を通過する第1の追加の歯22crを更に有している。第1の追加の歯22crの歯先から当該第1の追加の歯22crを有するギア部22の回転軸Axまでの半径方向距離Ltrと、第1の追加の歯22crの歯先と軸間線L上で対面するギア部32の本体部32aの表面32arから当該本体部32aを有するギア部32の回転軸Bxまでの半径方向距離Lsrとの和が、第2駆動ギア部22の基準円直径R22と第2従動ギア部32の基準円直径R32との和以上である。
このような駆動機構10によれば、駆動機構10に寸法誤差や組み付け誤差が生じる等して、駆動ギア20および従動ギア30の組付け位置の距離が短くなっても、第1の噛み合いから第2の噛み合いに移行する際、第2駆動ギア部22の歯22bと第2従動ギア部32の歯32bとは、互いにぶつかることなく噛み合うことができる。
また、第2の実施形態において、第1駆動ギア部21または第1従動ギア部31は、第4の端の歯22bqが第2従動ギア部32の複数の歯32bのいずれかと接触を開始してから第3の端の歯21bpが軸間線L上に到達するまでの間に軸間線L上を通過する第2の追加の歯31cuを更に有している。そして、第2の追加の歯31cuの歯先から当該第2の追加の歯31cuを有するギア部31の回転軸Bxまでの半径方向距離Ltuと、第2の追加の歯31cuの歯先と軸間線L上で対面するギア部21の本体部21aの表面21auから当該本体部21aを有するギア部21の回転軸Axまでの半径方向距離Lsuとの和が、第1駆動ギア部21の基準円直径R21と第1従動ギア部31の基準円直径R31との和以上である。
このような駆動機構10によれば、駆動機構10に寸法誤差や組み付け誤差が生じる等して、駆動ギア20および従動ギア30の組付け位置の距離が短くなっても、第2の噛み合いから第1の噛み合いに移行する際、第1駆動ギア部21の歯21bと第1従動ギア部31の歯31bとは、互いにぶつかることなく噛み合うことができる。