以下、本発明の実施形態に係る検査装置10について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る検査装置10の外観を示す斜視図である。検査装置10は、バルブボデー1を検査対象のワークWとして、ワークWの油圧やオイル流量などの検査を行うものである。
ここで、検査装置10の説明に先立って、検査装置10の検査対象とされたバルブボデー1について簡単に説明する。検査装置10の検査対象とされたバルブボデー1は、CVT(無断変速機)のトランスミッション(図示を省略)に設けられるものである。バルブボデー1は、トランスミッションのオイルパンに配置されている。また、オイルパンには、所定量のオイルが貯留されている。バルブボデー1は、オイルパンの油面よりも下方に配置されている。
バルブボデー1は、オイル制御によりギアの切り替えを可能とされている。バルブボデー1の内部には、図示を省略した複数の油路が形成されている。バルブボデー1に形成された複数の油路は、シフトレバーのシフト位置にそれぞれ対応している。バルブボデー1は、油路の切り替えにより、トランスミッションのギア切り替えなどのためのオイル制御を行う。
バルブボデー1は、車両に搭載された状態では、少なくとも一部がオイルパンのオイルに油没した状態で作動する。検査装置10は、バルブボデー1を検査対象のワークWとして、ワークWの少なくとも一部を油没させた状態(油没状態)で検査を行うことにより、車両に搭載された状態を模擬してバルブボデー1の検査を行うことができる。なお、本発明の検査装置は、CVTのバルブボデーを検査対象のワークとして検査を行うもののほか、多段変速機のトランスミッションに設けられるバルブボデー等、車両において油没状態で作動する装置を検査対象のワークとすることができる。
図1に示すとおり、検査装置10は、本体部12、搬送機構60、検知装置90、及び制御部(図示を省略)を有する。検査装置10は、搬送機構60によりワークWを搬送しつつ、本体部12においてワークWの油圧やオイル流量等の検査を行うことができる。
搬送機構60は、後述するオイル槽20の昇降方向である上下方向Xと交差する第二方向Y(第二の方向)に沿って、ワークWの搬送経路Cを形成する。より具体的には、図3に示すとおり、搬送機構60は、ワークWが積載されたパレット62を第二方向Yのうち搬送方向y1(図3では左から右に向かう方向)に搬送することにより、第二方向に沿うようにワークWの搬送経路Cを形成する。以下、検査装置10の各構成について説明する。
本体部12は、ワークWの検査を行うための各種の構成を備えている。図4に示すとおり、本体部12は、オイル槽20、天板プレート30(天板部)、及び押圧装置40を有する。また、本体部12は、計測装置14(図1参照)を備えている。
図4及び図5に示すとおり、本体部12は、オイル槽20の上方に天板プレート30(天板部)が配置された構成とされている。また、オイル槽20の下方には、後述するメインシリンダ42が配置されている。
オイル槽20は、オイルを貯留する容器としての機能を備え、ワークWを油没させた状態を再現するために設けられている。オイル槽20には、ワークWを油没させるオイルが収容される。図5に示すとおり、オイル槽20は、上部に開口22を有する。また、オイル槽20には、オイル量調整部24が設けられている。
オイル量調整部24は、オイル槽20に収容されるオイルの量を調整しつつ、オイルを循環させるために設けられている。図5に示すとおり、オイル量調整部24は、オイル流入部26とオイル流出部28とを備える。オイル量調整部24は、図示を省略したオイル供給源よりオイル流入部26を介してオイル槽20にオイルを供給し、オイル槽20内で所定量を超えたオイルをオイル流出部28から流出させる。図5に示すとおり、オイル流出部28の流出口28aが設けられた位置を超えてオイル槽20内にオイルが流入すると、流出口28aからオイルが流出する(オーバーフロー)。言い換えれば、オイル槽20に貯留されたオイルの油面Foは、流出口28aの位置よりも上方にならないように維持される。これにより、検査装置10は、オイル槽20のオイルを所定量以上にならないように維持しつつ循環させることができる。
図5に示すとおり、天板プレート30(蓋部)は、オイル槽20の上方に配置されている。天板プレート30は、オイル槽20が上昇した際に、下方側の底面30aがオイル槽20の開口22の縁部22aと略密着してオイル槽20を上方から覆う蓋として機能する。また、天板プレート30の上方面30bには、後述する計測装置14が配置される。さらに、天板プレート30には、後述する移動装置70(図8参照)が取り付けられている。
天板プレート30には、上方面30bから底面30aに貫通する貫通孔として、複数の第一油路接続部32が形成されている。第一油路接続部32は、後述するシールプレート34の第二油路接続部36を介して、ワークWの内部に形成された油路に連通される。
また、天板プレート30には、ワークW(バルブボデー1)の油路を切り替えるための切替スイッチ(図示を省略)が設けられている。言い換えれば、切替スイッチは、車両のシフトレバーの操作に応じてバルブボデー1に伝達される入力を再現する。これにより、検査装置10は、車両の各シフト操作に対応する動作を再現して、各シフト操作におけるバルブボデー1の作動について検査を行うことができる。
図5に示すとおり、天板プレート30の底面30aには、シールプレート34が取り付けられている。シールプレート34は、ワークWの上方側に配置される面と略密着して、ワークWの位置合わせを行うものである。シールプレート34には、ワークWの油路と天板プレート30の第一油路接続部32とを連通させる貫通孔として、第二油路接続部36が形成されている。
計測装置14は、ワークWの油路から吐出されるオイルの温度や流量、あるいは油圧を計測するために設けられている。計測装置14は、天板プレート30の第一油路接続部32に対して接続され、ワークWから吐出されるオイルの流量等を計測可能としている。
押圧装置40は、オイル槽20を下方から押圧して、オイル槽20を上昇させて変位させる変位装置としての機能を有する。また、押圧装置40は、ワークWを天板プレート30に向けて押圧可能とされている。押圧装置40は、ワークWをシールプレート34と略密着するように押圧して、ワークWを後述する変位領域Rdにおいて保持する保持装置としての機能を有する。
図4及び図5に示すとおり、押圧装置40は、メインシリンダ42、複数のサブシリンダ44(本実施形態では14個)、基台部46を有する。本実施形態では、メインシリンダ42及びサブシリンダ44は、油圧シリンダが用いられている。また、図13に示すとおり、押圧装置40は、オイル供給部48、オイル流路50、バッファシリンダ52、チェックバルブ54、切替装置56、及びポンプ58を備える。
基台部46は、複数のサブシリンダ44を配置させる台座として機能する。また、基台部46は、オイル槽20の下方側の面と接続されている。図5に示すとおり、基台部46は、複数のサブシリンダ44を略鉛直の姿勢となるよう支持する支持部46aを備える。支持部46aには、サブシリンダ44のストローク部44aを貫通させる貫通孔が形成されている。また、基台部46には、複数のサブシリンダ44にオイルを供給しつつ、複数のサブシリンダ44間のオイルを連通させる連通路47が設けられている。
メインシリンダ42は、基台部46及びオイル槽20を下方から上方に向けて押圧可能とされている。検査装置10は、メインシリンダ42のロッド部42aを上方にストロークさせることにより、オイル槽20及び基台部46を上昇させることができる(図6(b)参照)。
サブシリンダ44は、ワークWをシールプレート34に均等な推力で押し付けるために設けられている。図5に示すとおり、サブシリンダ44は、ストローク可能とされたストローク部44aを有している。複数のサブシリンダ44は、長手方向が相互に平行するように基台部46に配置されている。また、複数のサブシリンダ44のオイル流路は、基台部46に設けられた連通路47に対して接続され、相互に連通している。
<オイル槽の上昇動作及びワークの押圧動作について>
続いて、図6を参照しつつ、オイル槽20の上昇動作、及びワークWをシールプレート34に対して押し付けて保持する動作について説明する。
オイル槽20は、押圧装置40により押圧されて上下方向X(第一の方向)に変位可能とされている。より具体的には、図6(a)に示すとおり、オイル槽20は、下降した状態では開口22の縁部22aが後述する搬送経路Cより下方に外れた位置(下降位置Pd)に配置される。また、図6(b)に示すとおり、オイル槽20は、開口22の縁部22aが搬送経路Cより上方の位置であって、天板プレート30の底面30aと隣接する位置(上昇位置Pu)まで上昇可能とされている。
図6(b)に示すとおり、オイル槽20が上昇位置Puまで変位すると、オイル槽20に収容されたオイルの油面Foは、天板プレート30に近接する位置まで上昇して、搬送経路C上に配置されたワークWを油没させることができる。
このように、オイル槽20は、下降位置Pdから上昇位置Puに至る領域(変位領域Rd)において上昇及び下降して変位可能とされている。また、検査装置10は、変位領域Rdを経由するように後述する搬送経路Cが形成される。検査装置10は、オイル槽20を上昇させて変位させることにより、変位領域Rdに配置されたワークWの少なくとも一部を油没させることができる。
上述のとおり、メインシリンダ42のロッド部42aを上方にストロークさせると、オイル槽20が上昇するとともに、基台部46が上方に押し上げられる。図6(b)に示すとおり、オイル槽20が下降位置Pdから上昇位置Puまで上昇すると、基台部46に取り付けられたサブシリンダ44は、やがてワークWと接触してワークWをシールプレート34及び天板プレート30側に押圧する。
図6(b)に示すとおり、ワークWが天板プレート30に取り付けられたシールプレート34と略密着するように押し付けられると、ワークWと第二油路接続部36とが隣接して接続された状態となる。検査装置10は、ワークWをシールプレート34と略密着する位置に保持して、ワークWの油路から吐出されるオイルを第二油路接続部36及び第一油路接続部32を経由させて計測装置14に送り込むことができる。このように、検査装置10は、ワークWがシールプレート34と略密着する位置を検査位置として、ワークの油圧や流量を計測して検査を行うことができる。
図6(b)に示すとおり、サブシリンダ44のストローク部44aがワークWの下方側の面に押し付けられると、ストローク部44aはワークWの下方側の面の起伏に合致するようにストローク量を変化させる。さらに、上述のとおり、複数のサブシリンダ44のオイル流路は、相互に連通するように形成されている。そのため、各サブシリンダ44は、ワークWの表面形状の起伏に沿って、同等の推力でワークWを押圧する。これにより、検査装置10は、ワークWの下方側の面に起伏がある場合など、ワークWとサブシリンダ44との片当たりを抑制して、ワークWをシールプレート34に対して略均一に押圧することができる。
このように、検査装置10は、オイル槽20を上昇させてワークWを油没させつつ、オイル中のワークWをサブシリンダ44により精度良く保持することができる。
続いて、搬送機構60について説明する。搬送機構60は、ワークWを搬送するために設けられている。図3に示すとおり、搬送機構60は、パレット62(搬送体)、運搬装置64、移動装置70、及び検知装置90を備えている。
搬送機構60は、上下方向Xと交差する第二方向Y(第二の方向)に沿って、ワークWの搬送経路Cを形成する。より具体的には、図3に示すとおり、搬送機構60は、ワークWをパレット62に積載させて、パレット62を第二方向Yに沿って搬送することにより、第二方向に沿うようにワークWの搬送経路Cを形成する。また、搬送機構60は、天板プレート30が配置された位置よりも下方であって、変位領域Rdを経由するように搬送経路Cを形成する。以下、搬送機構60の各構成について説明する。
パレット62(搬送体)は、ワークWを積載して搬送するためのものである。図7に示すとおり、パレット62は、略矩形の形状を有するプレート状の部材とされている。
図7に示すとおり、パレット62には、略矩形の開口とされた開口領域62aが形成されている。また、パレット62には、開口領域62aに向けて突出するように複数(本実施形態では5つ)の位置決め部材62bが設けられている。ワークWをパレット62に積置させると、ワークWは、位置決め部材62bにより周部を位置決めされつつ下方から支持される。これにより、ワークWは、パレット62の開口領域62aに配置され、所定の位置及び姿勢でパレット62に積載される。
なお、本実施形態では、上述のとおりパレット62(搬送体)をプレート状の部材とした例を示したが、本発明の検査装置において、搬送体はいかなる形状のものであってもよい。例えば、本発明の検査装置において用いられる搬送体は、トレー状のものであってもよいし、あるいは枠状の部材であってもよい。
運搬装置64は、パレット62に積置させた状態のワークWを運搬するために設けられている。図3に示すとおり、運搬装置64は、本体部12を第二方向Yの両側から挟むように配置される第一コンベア66及び第二コンベア68を備えている。第一コンベア66及び第二コンベア68は、パレット62等の積載物を、第一コンベア66から第二コンベア68に向かう搬送方向y1に沿って搬送可能とされている。本実施形態の運搬装置64は、ローラーコンベアが採用されている。なお、本発明の運搬装置は、ローラーコンベアのほか、ベルトコンベア等、種々の搬送装置を採用することができる。
移動装置70は、変位領域Rdに対してパレット62を送り出しするため、及び変位領域Rdからパレット62を払い出しするために設けられている。より具体的には、移動装置70は、第一コンベア66上に配置されたパレット62を変位領域Rdへと移動させるため、あるいは変位領域Rdに配置されたパレット62を変位領域Rdから第二コンベア68へと移動させるために設けられている。
なお、以下の説明において、変位領域Rdに対するパレット62の送り出し、及び変位領域Rdからのパレット62の払い出しを、単に「変位領域Rdへの搬出入」と記載する場合がある。
図8に示すとおり、移動装置70は、モーター72、伝動装置74、ガイド部76、被検知部材78、及びスライド部80(可動部)を備える。モーター72、伝動装置74、ガイド部76は、天板プレート30に取り付けられている。
モーター72(駆動部)は、スライド部80を移動させる動力源として設けられている。図8に示すとおり、モーター72は、天板プレート30に取り付けられ、変位領域Rdを外れた位置に配置されている。
伝動装置74は、モーター72の動力をスライド部80に伝達して、スライド部80を移動させるための動力伝達機構として設けられている。図8及び図10に示すとおり、伝動装置74は、駆動プーリ74a、従動プーリ74b、及びワイヤー74cを備えている。駆動プーリ74aはモーター72から回転トルクが伝達されて回転する。伝動装置74は、駆動プーリ74aと従動プーリ74bとを第二方向Yに離間するよう配置させ、駆動プーリ74aと従動プーリ74bとをワイヤー74cにより連結した構成とされている。
ガイド部76は、スライド部80の移動をガイドするために設けられている。ガイド部76は、スライド部80に取り付けられたガイドローラー86をガイドするレール部材として設けられている。ガイド部76は、第一レール76a、及び第二レール76bを備える。第一レール76aは、本体部12に配置されている。また、第二レール76bは、本体部12の外側であって第一コンベア66の上方に配置されている。
被検知部材78は、ワイヤー74cに取り付けられている。図8及び図10に示すとおり、被検知部材78は、ワイヤー74cに牽引されて、駆動プーリ74aと従動プーリ74bとの間において移動する。言い換えれば、被検知部材78は、スライド部80の移動と同期して、第二方向Yに移動する。
スライド部80(可動部)は、パレット62を第二方向Yに沿って移動させるための部材である。図9に示すとおり、スライド部80は、連結部82、一対の揺動爪84,85、及び6個のガイドローラー86を備える。
図9に示すとおり、スライド部80は、連結部82を介してワイヤー72cに取り付けられている。そのため、スライド部80は、モーター72から伝動装置74に動力が伝達され、ワイヤー74cが第二方向Yに牽引されると、ワイヤー74cの変位に沿って移動する。また、スライド部80には、複数(本実施形態では6個)のガイドローラー86が取り付けられている。ガイドローラー86は、ガイド部76を上下方向から挟みつつ回転する。これにより、スライド部80は、ガイド部76により第二方向Yにガイドされつつワイヤー74cに牽引され、往来可能とされている。
揺動爪84,85は、スライド部80の長手方向両端に取り付けられている。より具体的には、揺動爪84はスライド部80において搬送方向y1の進行方向側に設けられている。また、揺動爪85はスライド部80において搬送方向y1の後退方向側に設けられている。揺動爪84,85は、揺動軸84a,85aを支点として、所定の範囲内で揺動可能とされている。図9に示すとおり、揺動爪84,85は、先端部84b,85bが下方に向く姿勢でスライド部80に取り付けられている。揺動爪84,85は、先端部84b,85bが搬送方向y1に向く方向に揺動可能とされている。また、揺動爪84,85は、先端部84b,85bが搬送方向y1とは逆に向く方向への揺動が規制されている。
検知装置90は、被検知部材78を検知するためのセンサーとして設けられている。さらに詳細に説明すると、検知装置90は、被検知部材78を検知することにより、被検知部材78と同期して移動するパレット62及びワークWが、所定の位置に到達したことを間接的に検知するために設けられている。
図8に示すとおり、本実施形態の検知装置90は、4つのセンサー94a,94b,94c,94dを有する。図8に示すとおり、センサー94a,94b,94c,94dは、変位領域Rdを外れた位置である天板プレート30の上方面30bに第二方向Yに沿って直線的に配置されている。
図10に示すとおり、移動装置70は、スライド部80を第二方向Yに沿って所定の範囲内で往来させることができる。具体的には、移動装置70は、変位領域Rdから退避した位置(退避位置P1)から変位領域Rdに進入した位置(進入位置P2)に至る範囲内で、スライド部80を往来させることができる。なお、スライド部80が退避位置P1に配置された状態では、揺動爪84,85の双方が変位領域Rdの外側であって、第一コンベア66側に位置する。また、スライド部80が進入位置P2に配置された状態では、揺動爪85が変位領域Rd内に位置し、揺動爪84が変位領域Rdの外側であって第二コンベア68側に位置する。
また、搬送機構60は、上述のとおりスライド部80の移動に同期して変位する被検知部材78を検知装置90により検知することで、スライド部80の位置を間接的に検知することができる。例えば、図10(a)に示すとおり、スライド部80が退避位置P1に到達した場合には、搬送機構60は、駆動プーリ74aの近傍に配置されたセンサー94aにより被検知部材78を検知して、スライド部80が退避位置P1に到達したことを検知する。また、図10(b)に示すとおり、スライド部80が進入位置P2に到達した場合には、搬送機構60は、従動プーリ74b側に配置されたセンサー94dにより被検知部材78を検知して、スライド部80が進入位置P2に到達したことを検知する。
制御部(図示を省略)は、検知装置90による検知に基づいて、オイル槽20の変位動作や、搬送機構60の搬送動作を制御する。制御部は、センサー94dが被検知部材78を検知することに基づいて、ワークWが変位領域Rdに到達したと判断して、オイル槽20を上昇させる制御を行う。また、制御部は、センサー94b,94cが被検知部材78を検知すると、スライド部80の移動速度を変化させる制御等を行う。
<ワークの搬送動作について>
続いて、図11及び図12を参照しつつ、ワークWの搬送動作について説明する。以下の説明では、変位領域Rdにパレット62を配置させ、第一コンベア66にパレット62’を配置させた状態から、二つのパレット62,62’を搬送方向y1に向けて搬送する一連の動作について説明する。
図11(a-1)及び図11(a-2)に示す状態では、パレット62は変位領域Rdに配置され、パレット62’は第一コンベア66に配置されている。この状態において、スライド部80は退避位置P1に配置されている。また、パレット62’は揺動爪84と揺動爪85との間に配置される。さらに、被検知部材78は、センサー94aと隣接して配置される。
図11(b)に示すとおり、スライド部80が搬送方向y1に牽引されると、揺動爪84がパレット62と接触し、揺動爪85がパレット62’と接触する。パレット62,62’は、揺動爪84,85に押されながら搬送方向y1に移動する。
図12(a)に示すとおり、スライド部80が進入位置P2に到達すると、第一コンベア66に配置されていたパレット62’は、揺動爪85に押されながらスライド部80の移動に伴って移動し、やがて変位領域Rd内に到達する。また、パレット62は、変位領域Rd内から変位領域Rdの外側へと払い出され、第二コンベア68に到達する。さらに、スライド部80が進入位置P2に到達すると、被検知部材78はセンサー94dと隣接して配置される。
図12(b)に示すとおり、パレット62’が変位領域Rdに到達すると、スライド部80は移動方向を搬送方向y1から逆向きの後退方向y2へと変化させ、変位領域Rdから退避するように移動する。スライド部80が変位領域Rdから退避する際に、揺動爪84がパレット62’の前方端(図12において右側の端部)と接触する。揺動爪84は、パレット62’の前方端に押されて揺動し、姿勢を変化させる。これにより、スライド部80は、後退方向y2に移動する際(変位領域Rdから退避する際)にはパレット62の位置を維持しつつ変位領域Rdから退避する。また、揺動爪85についても、第一コンベア66に配置されたパレット62’’の前方端に押されて姿勢を変化させる(図12(b)の拡大図参照)。
なお、第二コンベア68に到達したパレット62は、第二コンベア68により搬送方向y1に向けて順次搬送される。このように、搬送機構60は、パレット62にワークWを積載させ、ワークWを搬送方向y1に順送りする搬送経路Cを形成する。
図12(c)に示すとおり、スライド部80が変位領域Rdから退避して退避位置P1に到達すると、被検知部材78は再びセンサー94aと隣接して配置される。センサー94aにより被検知部材78が検知されると、制御部によりメインシリンダ42のロッド部42aを上方にストロークさせて、オイル槽20を上昇させる制御が行われる。
このように、検査装置10は、ワークWを積載させたパレット62を第二方向Yに沿って搬送させる搬送経路Cを形成する。また、検査装置10は、変位領域Rdに搬送されたワークWをオイル槽20の上昇により油没させ、オイル量や油圧等の検査を行うことができる。その結果、検査装置10は、搬送機構60及びオイル槽20の昇降について複雑な構造や制御となることを抑制しつつ、ワークWが車両に搭載された状態を模擬した検査により検査精度を向上させることができる。
また、上述のように、移動装置70の駆動源であるモーター72や、センサー94a等の検知装置90は、変位領域Rdから外れた位置に設けられている。そのため、検査装置10は、電気系部品を油没させずにパレット62を搬送することができる。
<押圧装置によるワーク保持、及びオイル回路について>
続いて、押圧装置40の動作及び油圧回路について、さらに詳細に説明する。図13は、押圧装置40及び押圧装置40の油圧回路OCの模式図である。
上述のとおり、押圧装置40は、メインシリンダ42、複数のサブシリンダ44、及び基台部46を備えている。また、図13に示すとおり、押圧装置40は、上述の構成に加え、オイル供給部48、オイル流路50、バッファシリンダ52、チェックバルブ54、切替装置56、及びポンプ58を有する。押圧装置40は、これらの構成により油圧回路OCを構成している。
図13に示すとおり、オイル供給部48は、メインシリンダ42及びサブシリンダ44の双方にオイルを供給する。言い換えれば、本実施形態の押圧装置40は、メインシリンダ42及びサブシリンダ44に対して単一のオイル供給源によりオイルを供給する1系統の油圧回路OCを有する。
オイル流路50は、オイル供給部48から供給されるオイルの流路を形成する。オイル流路50は、メインシリンダ42側のオイル流路を形成する第一流路50aと、サブシリンダ44側のオイル流路を形成する第二流路50bとを備える。また、オイル流路50は、オイル供給部48から、第一流路50a及び第二流路50bの分岐部分までの主流路50cを備える。
ポンプ58は、主流路50cに配置されている。ポンプ58は、所定の圧力、例えばメインシリンダ42内の油圧が[n1]となるようにオイルを搬送する。
切替装置56は、メインシリンダ42へのオイル供給を切り替えるために設けられている。なお、本実施形態の切替装置56は、ソレノイドバルブが採用されている。切替装置56は、第一流路50aに配置され、メインシリンダ42内にオイルを供給する状態やオイルを排出する状態等の切り替えを行う。
バッファシリンダ52(蓄圧装置)は、サブシリンダ44内のオイルを流入させつつ、サブシリンダ44へオイルを供給可能とされている。バッファシリンダ52は、所定量のオイルが収容され、複数のサブシリンダ44のストローク量を許容するオイル受入可能領域が設けられている。バッファシリンダ52は、複数のサブシリンダ44が連通される連通路47と接続されている。バッファシリンダ52は、サブシリンダ44のストローク部44aが後退するようにストロークする際には、サブシリンダ44のオイルを一時的に流入させる。また、バッファシリンダ52は、サブシリンダ44のストローク部44aが突出するようにストロークする際には、サブシリンダ44へオイルを供給する。これにより、バッファシリンダ52は、ストローク部44aのストロークを許容しつつサブシリンダ44内のオイルを所定量に維持する。
また、バッファシリンダ52は、ポンプ58を介してオイル供給部48と接続されている。そのため、バッファシリンダ52には、オイル供給部48から常時オイルが供給され、収容されるオイルが所定量に維持される。サブシリンダ44からオイルが漏れてサブシリンダ44内のオイル量が低下した場合、バッファシリンダ52は低下した分のオイル量をサブシリンダ44に流入させることができる。そのため、バッファシリンダ52は、サブシリンダ44がストロークする度にサブシリンダ44へと適切な量のオイルを供給して、サブシリンダ44のオイル量が低下することを抑制することができる。
チェックバルブ54は、オイル供給部48からサブシリンダ44に向けたオイルの搬送方向を形成するために設けられている。図13に示すとおり、チェックバルブ54は、オイル供給部48からサブシリンダ44へオイルが供給される方向へのオイルの搬送を許容して、サブシリンダ44からオイル供給部48に向けたオイルの流れを規制する。そのため、ポンプ58により搬送されたオイルをサブシリンダ44に供給しつつ、サブシリンダ44のストローク部44aが後退する方向にストロークする場合に、サブシリンダ44からオイル供給部48へとオイルが逆流することを抑制している。
続いて、押圧装置40によりワークWを押し付ける動作、及びオイルの流れについて説明する。
図13に示すとおり、メインシリンダ42を上昇させる前では、サブシリンダ44はストローク部44aが突出した状態で準備される。
図14に示すとおり、切替装置56をメインシリンダ42へオイルを供給する開状態となるように切り替えされると、メインシリンダ42のロッド部42aが突出する方向にストロークする。また、基台部46及びサブシリンダ44は、ロッド部42aのストロークに伴って、ワークWに近接する方向に変位する。
図15に示すとおり、基台部46及びサブシリンダ44が上方に変位すると、サブシリンダ44がワークWと接触し、ワークWをシールプレート34と接触する位置まで変位させる。
図15に示すとおり、メインシリンダ42の上昇に伴って、サブシリンダ44がワークWをシールプレート34に向けて押圧する。さらにメインシリンダ42が上昇すると、サブシリンダ44のストローク部44aは、ワークWに押し戻されるように後退する。なお、メインシリンダ42のシリンダ径の面積Saは、サブシリンダ44のシリンダ径の面積Sbよりも大きい(Sa>Bb)。そのため、サブシリンダ44内の油圧[n2]は、メインシリンダ42内の油圧[n1]よりも大きい(n1>n2)。そのため、ストローク部44aは、ワークWに接触したまま後退する。
また、上述のとおり、複数のサブシリンダ44は、連通路47においてオイル流路が連通する。そのため、サブシリンダ44は、ストローク部44aのストローク量に差異が生じた場合であっても、均等な推力でワークWをシールプレート34に対して押し付けることができる。
ストローク部44aが後退してサブシリンダ44から押し出されたオイルは、チェックバルブ54によりオイル供給部48への流入が規制されるため、バッファシリンダ52に流入する。
図16に示すとおり、メインシリンダ42のロッド部42aを後退させて基台部46及びサブシリンダ44をワークWから離間させると、サブシリンダ44のストローク部44aは、バッファシリンダ52からオイルが供給されて突出するようストロークする。また、サブシリンダ44のストローク部44aが元の位置までストロークする際に、オイル供給部48からチェックバルブ54を経由してサブシリンダ44にオイルが供給される。さらに、バッファシリンダ52からサブシリンダ44にオイルが供給されるとともに、オイル供給部48からバッファシリンダ52へとオイルが供給される。
このように、サブシリンダ44のストローク部44aが後退するようにストロークし、再び突出するようにストロークする一連の動作ごとに、サブシリンダ44及びバッファシリンダ52へとオイルが供給される。そのため、検査装置10は、バッファシリンダ52のオイルを所定量に維持しつつ、バッファシリンダ52からサブシリンダ44へと適切な量のオイルを充填することができる。その結果、検査装置10は、サブシリンダ44のオイル量管理に要する作業負担をさらに低減しつつ、サブシリンダ44内のオイル量が低下することに起因してサブシリンダ44のストローク部44aが作動しなくなるなどの不具合を低減することができる。
このように、検査装置10は、複数のサブシリンダ44のストローク部44aがワークWの表面形状に接触してストロークすることにより、ワークWを均一に押圧することができる。そのため、検査装置10によれば、ワークWの被押圧面に起伏がある場合や、シールプレート34とワークWとの間に隙間がある場合などでも、ワークWの片当たりを抑制してワークWを精度良く検査位置(シールプレート34と略密着する位置)に保持することができる。
<保持装置の変形例>
上述の実施形態では、サブシリンダ44を基台部46に配置させた例を示したが、本発明の検査装置は上記の実施形態に限定されない。例えば、図17に示すとおり、本発明の検査装置は、サブシリンダ144をパレット162に設けたものとしてもよい。