JP6994471B2 - 変性高分子ポリオールの製造方法 - Google Patents
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Description
[1]高分子ポリオールと、下記式(1)で示されるオレフィン含有エステル化合物とを、エステル交換触媒の存在下で反応させる工程を含む変性高分子ポリオールの製造方法であって、
エステル交換触媒が、第12族元素を有する金属化合物、および10質量%水溶液(飽和溶解度が10質量%未満の場合は飽和水溶液)の20℃におけるpHが7.5~10.5を示す塩からなる群より選択される少なくとも1種である、変性高分子ポリオールの製造方法;
[2]ASTM D1925にしたがって測定される変性高分子ポリオールのイエローインデックス(YI)が50以下である、[1]に記載の製造方法;
[3]前記エステル交換触媒が、亜鉛化合物、10質量%水溶液(飽和溶解度が10質量%未満の場合は飽和水溶液)の20℃におけるpHが7.5~10.5を示すアルカリ金属塩、および10質量%水溶液(飽和溶解度が10質量%未満の場合は飽和水溶液)の20℃におけるpHが7.5~10.5を示すアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の製造方法;
[4]前記エステル交換触媒が、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、一価以上のアルキルカルボン酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、一価以上のアルキルカルボン酸カリウム、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛、一価以上のアルキルカルボン酸亜鉛、一価以上の含フッ素アルキルカルボン酸亜鉛、亜鉛クラスターおよびアセチルアセトン亜鉛(II)塩からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法;
[5]前記高分子ポリオールがビニルアルコール系重合体または多糖類である、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法;
[6]前記高分子ポリオールがビニルアルコール系重合体である、[5]に記載の製造方法;
[7]前記エステル化合物がα、β-不飽和エステル化合物である、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]高分子ポリオールと、下記式(1)で示されるオレフィン含有エステル化合物とを、エステル交換触媒の存在下で反応させる工程を含む変性高分子ポリオールの製造方法であって、該工程前の高分子ポリオールの重量平均分子量(Mw1)に対する該工程後の変性高分子ポリオールの重量平均分子量(Mw2)の比(Mw2/Mw1)が0.9~1.6であり、ASTM D1925にしたがって測定される前記変性高分子ポリオールのイエローインデックス(YI)が50以下である、変性高分子ポリオールの製造方法;
を提供することにより解決される。
本発明において、反応中のポリマーの高分子量化や色相の悪化を防ぐ観点から、用いるエステル交換触媒の選択が特に重要である。すなわち、本発明において、エステル交換触媒が、第12族元素を有する金属化合物、および10質量%水溶液(飽和溶解度が10質量%未満の場合は飽和水溶液)の20℃におけるpHが7.5~10.5を示す塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが必要である。エステル交換触媒が、亜鉛化合物、10質量%水溶液(飽和溶解度が10質量%未満の場合は飽和水溶液)の20℃におけるpHが7.5~10.5を示すアルカリ金属塩、および10質量%水溶液(飽和溶解度が10質量%未満の場合は飽和水溶液)の20℃におけるpHが7.5~10.5を示すアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、エステル交換触媒が、亜鉛化合物、および10質量%水溶液(飽和溶解度が10質量%未満の場合は飽和水溶液)の20℃におけるpHが7.5~10.5を示すアルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。また、エステル交換触媒は、反応中のポリマーの高分子量化をより防ぐ観点からは、亜鉛化合物であることがさらに好ましく、入手容易性や工薬価格の面からは、10質量%水溶液(飽和溶解度が10質量%未満の場合は飽和水溶液)の20℃におけるpHが7.5~10.5を示すアルカリ金属塩であることがさらに好ましい。
本発明において用いる「高分子ポリオール」とは、数平均分子量が4,000以上の高分子ポリオールを指す。数平均分子量が4,000以上の高分子ポリオールとしては、特に制限されるものではなく、広範の高分子ポリオールを用いることができる。例えば、ビニルアルコール系重合体や多糖類が好適に用いられ、特に、ビニルアルコール系重合体がより好適に用いられる。本発明において用いられる高分子ポリオールは単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において用いられるオレフィン含有エステル化合物は、下記式(1)で示される化合物である。
本発明におけるエステル交換反応の方法としては、本発明に記載のエステル交換触媒の存在下で行う限り特に制限はなく、目的とする変性高分子ポリオールの要求特性によって選択できる。例えば、溶融された高分子ポリオールに、式(1)で表されるエステル化合物及びエステル交換触媒を混合し反応させる方法、式(1)で表されるエステル化合物とエステル交換触媒が溶解し、且つ高分子ポリオールが溶解しない溶媒中で、スラリー状態で反応させる方法、高分子ポリオール、式(1)で表されるエステル化合物、及びエステル交換触媒が全て均一に溶解した溶液状態で反応させる方法などが挙げられる。これらの方法は、反応性や変性高分子ポリオールの単離性などを考慮した上で、適宜好適な手法を採用することが出来る。
本発明で得られる変性高分子ポリオールにおける、式(1)で示されるオレフィン含有エステル化合物で変性された構成単位の含有量は特に限定されないが、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは0.05モル%以上であり、より好ましくは0.1モル%以上であり、特に好ましくは0.3モル%以上である。また、上記式(1)で示されるオレフィン含有エステル化合物で変性された構成単位の含有量は、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは10モル%以下であり、より好ましくは7モル%以下であり、特に好ましくは5モル%以下である。含有量がこれらの好ましい範囲にある場合、高エネルギー線により架橋された皮膜の耐水性が発現しやすい。含有量が0.05モル%未満であると、式(1)で示されるオレフィン含有エステル化合物で変性することによる高分子ポリオールの改質効果が不十分となることがある。含有量が10モル%を超えると、変性高分子ポリオールの結晶性が低下し始める傾向にあり、架橋皮膜の耐水性が低下する場合があるだけでなく、疎水化されることで水溶性も悪化するおそれがある。本発明で得られる変性高分子ポリオールは、式(1)で示されるオレフィン含有エステル化合物で変性された構成単位を1種又は2種以上有していてもよい。2種以上の当該構成単位を有する場合、これら2種以上の構成単位の含有量の合計が上記範囲にあることが好ましい。式(1)で示されるオレフィン含有エステル化合物で変性された構成単位の含有量は、実施例の「変性率の算出」に記載の方法に従って、1H-NMR測定によって求められる。なお、本発明において重合体中の構成単位とは、重合体を構成する繰り返し単位のことをいう。例えば、ビニルアルコール単位や、ビニルエステル単位も構成単位である。
90質量部のイオン交換水にエステル交換触媒10質量部を溶解させ、東亜ディーケーケー株式会社製pHメーター「HM-30P」を用いて、20℃におけるpHを測定した。
日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「LAMBDA 500」を用い、室温で変性高分子ポリオールの1H-NMRを測定し、オレフィンプロトン由来のピーク(5.0~7.5ppm)の積分値から、変性率を算出した。例えば、実施例1においては、5.6ppmおよび6.0ppmに表れるオレフィンプロトン由来のピークの積分値から、変性率を算出した。
東ソー株式会社製サイズ排除高速液体クロマトグラフィー装置「HLC-8320GPC」を用い、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。測定条件は以下の通りである。
カラム:東ソー株式会社製HFIP系カラム「GMHHR-H(S)」2本直列接続
標準試料:ポリメチルメタクリレート
溶媒及び移動相:トリフルオロ酢酸ナトリウム-HFIP溶液(濃度20mM)
流量:0.2mL/min
温度:40℃
試料溶液濃度:0.1質量%(開口径0.45μmフィルターでろ過)
注入量:10μL
検出器:RI
実施例または比較例で得られた変性高分子ポリオールの粉体のYI(ASTM D1925)を、下記の方法により、コニカミノルタ株式会社製分光測色計「CM-8500d」を用いて測定した(光源:D65、CM-A120白色校正板、CM-A126シャーレセット使用、正反射測定SCE、測定径φ30mm)。シャーレに試料5gを添加し、粉体を押さえつけないようにして軽く側面をたたいて振とうし、まんべんなく均一に粉体を敷き詰めた。この状態で合計10回の測定を行い(各回でシャーレを一度振とうしてから再測定)、その平均値を樹脂のYIとした。
セパラブルフラスコにジメチルスルホキシド(超脱水)(DMSO、和光純薬工業株式会社製、型番:044-32813)を36質量部、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、「PVA 5-88」、数平均分子量(Mn):37500、重合度:500)を9質量部加え、攪拌しながら100℃に昇温することで、均一溶液を得た。そこへ、メタクリル酸メチル(MMA、和光純薬工業株式会社製、型番:139―02726)を6.0質量部、フェノチアジン(和光純薬工業株式会社製、型番:165-24142)を0.1質量部加え、均一になるまで攪拌した。均一になった後、エステル交換触媒として硝酸亜鉛六水和物(和光純薬工業株式会社製、型番:265-01032)を1.8質量部加え、5時間反応させた後、室温に放冷した。反応溶液にDMSOを100質量部加え希釈した後、1000質量部のメタノールに滴下することで、変性高分子ポリオールを析出させた。析出させた変性高分子ポリオールを1000質量部のメタノールで2回洗浄したのち、真空乾燥させた。
実施例1において、「PVA 5-88」に代えて「PVA 60-98」(数平均分子量(Mn):141000、重合度2400)を用い、エステル化合物としてMMAに代えて3,3-ジメチル-4-ペンテン酸メチル(東京化成工業株式会社製、型番:D2153)11.6質量部を用い、反応温度を120℃とし、反応時間を8時間とし、エステル交換触媒として硝酸亜鉛六水和物に代えてアセチルアセトン亜鉛(II)塩(東京化成工業株式会社製、型番:Z0002)0.27質量部を用いた以外は、実施例1と同様に反応、後処理および分析をおこなった。変性率は1.3mol%、YIは27.5であり、Mw1は310000、Mw2は340000、Mw2/Mw1=1.1であった。結果を表1に示す。
実施例1において、「PVA 5-88」に代えて「PVA 29-99」(数平均分子量(Mn):89600、重合度:1700)を用い、エステル化合物としてMMAに代えて10-ウンデセン酸メチル(東京化成工業株式会社製、型番:U0036)20.3質量部を用い、反応温度を110℃とし、反応時間を3時間とし、エステル交換触媒として硝酸亜鉛六水和物に代えて塩化亜鉛(和光純薬工業株式会社製、型番:268-01022)0.28質量部を用いた以外は、実施例1と同様に反応、後処理および分析をおこなった。変性率は0.6mol%、YIは13.2であり、Mw1は197000、Mw2は220000、Mw2/Mw1=1.1であった。結果を表1に示す。
実施例1において、「PVA 5-88」に代えて「Elvanol(登録商標) 71-30」(数平均分子量(Mn):94000、重合度:1700)を用い、MMA添加量を18質量部とし、エステル交換触媒として硝酸亜鉛六水和物に代えて酢酸亜鉛(和光純薬工業株式会社製、型番:268-01882)0.37質量部を用いた以外は、実施例1と同様に反応、後処理および分析をおこなった。変性率は2.3mol%、YIは9.0であり、Mw1は206000、Mw2は236000、Mw2/Mw1=1.1であった。結果を表1に示す。
実施例1において、「PVA 5-88」に代えて「PVA 28-98」(数平均分子量(Mn):73600、重合度:1700)を用い、MMA添加量を4.0質量部とし、反応温度を120℃とし、エステル交換触媒として硝酸亜鉛六水和物に代えて炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業株式会社製、型番:199-05985)0.09質量部を用いた以外は、実施例1と同様に反応、後処理および分析をおこなった。炭酸水素ナトリウムの10質量%水溶液は調製できなかったため、飽和水溶液の20℃におけるpHを測定したところ、pHは7.9であった。得られた変性高分子ポリオールの変性率は1.4mol%、YIは26.4であり、Mw1は185000、Mw2は225000、Mw2/Mw1=1.2であった。結果を表1に示す。
実施例1において、「PVA 5-88」に代えて「PVA 28-98」(数平均分子量(Mn):73600、重合度:1700)を用い、エステル交換触媒として硝酸亜鉛六水和物に代えて酢酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製、型番:192-01075)0.17質量部を用いた以外は、実施例1と同様に反応、後処理および分析をおこなった。酢酸ナトリウムの10質量%水溶液の25℃におけるpHは8.7であった。変性率は3.5mol%、YIは16.5であり、Mw1は185000、Mw2は249000、Mw2/Mw1=1.3であった。結果を表1に示す。
実施例1において、「PVA 5-88」に代えて「PVA 60-98」(数平均分子量(Mn):141000、重合度:2400)を用い、エステル化合物としてMMAに代えて10-ウンデセン酸メチル40質量部を用い、反応温度を120℃とし、反応時間を10時間とし、エステル交換触媒を添加せずに反応を行った以外は、実施例1と同様の操作、後処理および分析をおこなったところ、反応は全く進行していない結果であった。
実施例1において、「PVA 5-88」に代えて「Elvanol(登録商標) 71-30」(数平均分子量(Mn):94000、重合度:1700)を用い、MMA添加量を2.0質量部とし、反応時間を3時間とし、エステル交換触媒として硝酸亜鉛六水和物に代えてナトリウムメトキシドメタノール溶液(水酸化ナトリウム15質量部をメタノール85質量部に溶解したもの)0.5質量部を用いた以外は、実施例1と同様に反応、後処理および分析をおこなった。上記ナトリウムメトキシドメタノール溶液の10質量%水溶液の25℃におけるpHは12.8であった。得られた変性高分子ポリオールの変性率は2.6mol%、YIは35.4であり、Mw1は206000、Mw2は385000、Mw2/Mw1=1.9であった。結果を表1に示す。
実施例1において、「PVA 5-88」に代えて「PVA 29-99」(数平均分子量(Mn):89600、重合度:1700)を用い、MMAに代えて3,3-ジメチル-4-ペンテン酸メチル2.9質量部を用い、反応温度を120℃とし、反応時間を10時間とし、エステル交換触媒として硝酸亜鉛六水和物に代えて硫酸(和光純薬工業株式会社製、型番:195-04706)0.2質量部を用いた以外は、実施例1と同様に反応、後処理および分析をおこなった。硫酸の10質量%水溶液の25℃におけるpHは-0.3であった。得られた変性高分子ポリオールの変性率は0.2mol%、YIは80.2であり、Mw1は197000、Mw2は203000、Mw2/Mw1=1.0であった。結果を表1に示す。
Claims (4)
- 高分子ポリオールと、下記式(1)で示されるオレフィン含有エステル化合物とを、エステル交換触媒の存在下でエステル交換反応させる工程を含む変性高分子ポリオールの製造方法であって、
前記高分子ポリオールがビニルアルコール系重合体であり、
前記エステル交換触媒が、亜鉛化合物、10質量%水溶液(飽和溶解度が10質量%未満の場合は飽和水溶液)の20℃におけるpHが7.5~10.5を示すアルカリ金属塩、および10質量%水溶液(飽和溶解度が10質量%未満の場合は飽和水溶液)の20℃におけるpHが7.5~10.5を示すアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種である、変性高分子ポリオールの製造方法。
- ASTM D1925にしたがって測定される変性高分子ポリオールのイエローインデックス(YI)が50以下である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記エステル化合物がα、β-不飽和エステル化合物である、請求項1または2に記載の製造方法。
- 該工程前の高分子ポリオールの重量平均分子量(Mw1)に対する該工程後の変性高分子ポリオールの重量平均分子量(Mw2)の比(Mw2/Mw1)が0.9~1.6であり、ASTM D1925にしたがって測定される前記変性高分子ポリオールのイエローインデックス(YI)が50以下である、請求項1に記載の変性高分子ポリオールの製造方法。
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