JP6992458B2 - コイル部品 - Google Patents
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Description
本発明はコイル部品に関し、特に、スパイラル状の平面導体を有するコイル部品に関する。
各種電子機器に用いられるコイル部品としては、磁性コアにワイヤ(被覆導線)を巻回したタイプのコイル部品の他、絶縁基板の表面にスパイラル状の平面導体を複数ターンに亘って形成したタイプのコイル部品が知られている。例えば、特許文献1には、絶縁基板の表面にスパイラル状の平面導体を形成し、この平面導体をスパイラル状のスリットによって径方向に3分割した構成が開示されている。このように、平面導体をスパイラル状のスリットによって径方向に分割すれば、電流密度の偏りが低減されることから、直流抵抗や交流抵抗を低減することが可能となる。しかしながら、特許文献1の平面導体は、内周側に位置する導体部分と外周側に位置する導体部分の電気長に大きな差が生じることから、これによって交流抵抗が増大するという問題があった。
これに対し、平面導体を用いたものではないが、特許文献2の図8には平面的に巻回された4本の導電線の径方向位置を適宜入れ替える構成が開示されている。このような入れ替えを行えば、内外周差がキャンセルされるため、各導電線の電気長を揃えることが可能となる。
しかしながら、絶縁基板の表裏にスパイラル状の平面導体を形成するタイプのコイル部品では、平面導体を2層しか用いることができないため、特許文献2の図8に記載されたレイアウトを実現することはできない。例えば、特許文献2の図8に記載された入れ替え位置45において導電線41と導電線44の径方向位置が入れ替えられているが、入れ替え位置45においては、導電線41と導電線44が交差するため、平面導体を用いた場合、この交差部分に残りの導電線42,43を通過させることは不可能である。
また、スパイラル状の平面導体のうち、最も内周側に位置する平面導体や、最も外周側に位置する平面導体は、他の平面導体に比べて強い磁界に晒されることから、交流抵抗が局所的に高くなるという傾向があった。このため、最も内周側に位置する平面導体や、最も外周側に位置する平面導体は、直流抵抗に比べて交流抵抗が大幅に高くなるという問題があった。
したがって、本発明は、スパイラル状の平面導体を複数備えるコイル部品において、平面導体をスパイラル状のスリットによって径方向に分割しつつ、導体部分の内外周差を低減し、且つ、直流抵抗と交流抵抗の差を低減することを目的とする。
本発明によるコイル部品は、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された第1のコイル部と、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された第2のコイル部と、を備え、第1のコイル部は、スパイラル状のスリットによって径方向に分離された4以上の導体部分を含み、第2のコイル部は、スパイラル状のスリットによって径方向に分離された4以上の導体部分を含み、第1のコイル部を構成する4以上の導体部分のうち、最も内周側に位置する導体部分の内周端は、第2のコイル部を構成する4以上の導体部分のうち、最も内周側に位置する導体部分及び最も外周側に位置する導体部分とは異なる所定の導体部分の内周端に接続され、第1のコイル部を構成する4以上の導体部分のうち、最も外周側に位置する導体部分の内周端は、第2のコイル部を構成する4以上の導体部分のうち、最も内周側に位置する導体部分、最も外周側に位置する導体部分及び所定の導体部分とは異なる別の導体部分の内周端に接続されることを特徴とする。
本発明によれば、第1のコイル部を構成する4以上の導体部分のうち、最も内周側に位置する導体部分を、第2のコイル部を構成する4以上の導体部分のうち、最も内周側に位置する導体部分ではない導体部分に接続していることから、導体部分の内外周差が低減される。しかも、第1のコイル部を構成する4以上の導体部分のうち、最も内周側に位置する導体部分を、第2のコイル部を構成する4以上の導体部分のうち、最も外周側に位置する導体部分ではない導体部分に接続していることから、磁界の影響によって交流抵抗が局所的に増大する導体部分同士の接続を避けることも可能となる。
本発明において、第1のコイル部を構成する4以上の導体部分は、外周側から順に、第1乃至第6の導体部分を含み、第2のコイル部を構成する4以上の導体部分は、外周側から順に、第1乃至第6の導体部分を含み、第1のコイル部の第1の導体部分は、第2のコイル部の第3及び第4の導体部分の一方に接続され、第1のコイル部の第6の導体部分は、第2のコイル部の第3及び第4の導体部分の他方に接続され、第2のコイル部の第1の導体部分は、第1のコイル部の第3及び第4の導体部分の一方に接続され、第2のコイル部の第6の導体部分は、第1のコイル部の第3及び第4の導体部分の他方に接続されても構わない。これによれば、第1及び第2のコイル部が少なくとも6分割されることから、電流密度の偏りが効果的に低減される。これにより、直流抵抗や交流抵抗をより低減することが可能となる。
本発明において、第1のコイル部の第2の導体部分は、第2のコイル部の第2の導体部分に接続され、第1のコイル部の第5の導体部分は、第2のコイル部の第5の導体部分に接続されても構わない。これによれば、第1及び第2のコイル部を少なくとも6分割した場合において、各導体部分の内外周差をより低減することが可能となる。
本発明において、第1のコイル部を構成する4以上の導体部分は、外周側から順に、第1乃至第4の導体部分を含み、第2のコイル部を構成する4以上の導体部分は、外周側から順に、第1乃至第4の導体部分を含み、第1のコイル部の第1の導体部分は、第2のコイル部の第2及び第3の導体部分の一方に接続され、第1のコイル部の第4の導体部分は、第2のコイル部の第2及び第3の導体部分の他方に接続され、第2のコイル部の第1の導体部分は、第1のコイル部の第2及び第3の導体部分の一方に接続され、第2のコイル部の第4の導体部分は、第1のコイル部の第2及び第3の導体部分の他方に接続されても構わない。これによれば、第1及び第2のコイル部が少なくとも4分割されることから、電流密度の偏りが効果的に低減される。これにより、直流抵抗や交流抵抗をより低減することが可能となる。
本発明において、第1のコイル部の外周端と第2のコイル部の外周端は、平面視で互いに隣接する位置に設けられ、第1及び第2のコイル部を構成する複数ターンのそれぞれは、径方向における位置が変化しない円周領域と、径方向における位置が遷移する遷移領域を有し、遷移領域は、第1及び第2のコイルの中心点から放射状に延在し、第1のコイル部の外周端と第2のコイル部の外周端の間を通過する仮想線上に位置するものであっても構わない。これによれば、外形の大型化を防止しつつ、第1のコイル部の外周端と第2のコイル部の外周端を隣接させることが可能となる。
本発明において、第1及び第2のコイル部の内周端は、遷移領域に位置するものであっても構わない。これによれば、コイルの内径領域の減少を最小限に抑えることが可能となる。
本発明において、第1のコイル部のパターン形状と第2のコイル部のパターン形状が同一であっても構わない。これによれば、同一のマスクを用いて第1のコイル部と第2のコイル部を作製することが可能となる。
本発明において、第1のコイル部は絶縁基板の一方の表面に形成され、第2のコイル部は絶縁基板の他方の表面に形成されていても構わない。これによれば、1枚の絶縁基板の表裏に第1及び第2のコイル部を形成することによって、本発明によるコイル部品を作製することが可能となる。しかも、絶縁基板が透明又は半透明であっても、第1のコイル部と第2のコイル部の大部分が重なれば、外観検査が容易となる。
このように、本発明によれば、径方向に分割された複数の導体部分の内外周差を低減し、且つ、直流抵抗と交流抵抗の差を低減することが可能となる。これにより、直流抵抗及び交流抵抗に優れた発熱の少ないコイル部品を提供することが可能となる。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態によるコイル部品の構成を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態によるコイル部品は、絶縁基板10と、絶縁基板10の一方の表面11に形成された第1のコイル部100と、絶縁基板10の他方の表面12に形成された第2のコイル部200とを備えている。詳細については後述するが、第1のコイル部100の内周端と第2のコイル部200の内周端は、絶縁基板10を貫通して設けられた複数の接続部TH1~TH6を介して互いに接続されている。
絶縁基板10の材料については特に限定されないが、PET樹脂などの透明又は半透明なフレキシブル材料を用いることができる。また、絶縁基板10は、ガラスクロスにエポキシ系樹脂が含浸されたフレキシブル基板であっても構わない。絶縁基板10が透明又は半透明である場合、平面視で第1のコイル部100と第2のコイル部200が重なって見えることから、これらの重なり方によっては検査装置を用いた外観検査が困難となる。詳細については後述するが、本実施形態によるコイル部品は、検査装置を用いた外観検査を正しく実行できるよう、第1のコイル部100と第2のコイル部200の大部分が平面視で重なる位置に配置されている。
図2は、第1のコイル部100のパターン形状を説明するための平面図であり、絶縁基板10の一方の表面11側から見た状態を示している。
図2に示すように、第1のコイル部100は、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された平面導体によって構成される。図2に示す例では、第1のコイル部100がターン110~ターン160からなる6ターン構成であり、ターン110が最外周に位置し、ターン160が最内周に位置する。また、各ターン110~160は、スパイラル状の5本のスリットによって径方向に6分割されている。これにより、ターン110~160は、最も外周側に位置する導体部分111~161と、2番目に外周側に位置する導体部分112~162と、3番目に外周側に位置する導体部分113~163と、4番目に外周側に位置する導体部分114~164と、5番目に外周側に位置する導体部分115~165と、最も内周側に位置する導体部分116~166に分離される。
最外周に位置するターン110の導体部分111~116は、径方向に延在する引き出しパターン191を介して、端子電極E1aに接続される。また、引き出しパターン191に対して周方向に隣接する位置には、径方向に延在する引き出しパターン192が設けられており、その先端部は端子電極E2bに接続される。一方、最内周に位置するターン160の導体部分161~166の内周端は、それぞれ接続部TH1~TH6に接続される。
これにより、図3に示すように、最も外周側に位置する導体部分111~161は、端子電極E1aと接続部TH1との間に直列に接続された導体部分A1を構成し、2番目に外周側に位置する導体部分112~162は、端子電極E1aと接続部TH2との間に直列に接続された導体部分A2を構成し、3番目に外周側に位置する導体部分113~163は、端子電極E1aと接続部TH3との間に直列に接続された導体部分A3を構成し、4番目に外周側に位置する導体部分114~164は、端子電極E1aと接続部TH4との間に直列に接続された導体部分A4を構成し、5番目に外周側に位置する導体部分115~165は、端子電極E1aと接続部TH5との間に直列に接続された導体部分A5を構成し、最も内周側に位置する導体部分116~166は、端子電極E1aと接続部TH6との間に直列に接続された導体部分A6を構成する。
第1のコイル部100を構成する各ターン110~160は、径方向における位置が変化しない円周領域100aと、径方向における位置が遷移する遷移領域100bを有しており、この遷移領域100bを境界としてターン110~ターン160からなる6ターンが定義される。図2に示すように、本実施形態においては第1のコイル部100の外周端及び内周端がいずれも遷移領域100bに位置している。さらに、第1のコイル部100の中心点Cから放射状に延在し、引き出しパターン191と引き出しパターン192の間を通過する仮想線L0を引いた場合、遷移領域100bは仮想線L0上に位置している。また、接続部TH1と接続部TH3は、仮想線L0を軸として互いに対称となる位置に配置され、接続部TH4と接続部TH6は、仮想線L0を軸として互いに対称となる位置に配置されている。さらに、接続部TH2及び接続部TH5は、仮想線L0上に配置されている。
図4は、第2のコイル部200のパターン形状を説明するための平面図であり、絶縁基板10の他方の表面12側から見た状態を示している。
図4に示すように、第2のコイル部200のパターン形状は、第1のコイル部100のパターン形状と同一である。したがって、第1のコイル部100と第2のコイル部200は、同一のマスクを用いて作製することが可能であり、これによって製造コストを大幅に削減することが可能となる。第2のコイル部200は、ターン210~ターン260からなる6ターン構成であり、ターン210が最外周に位置し、ターン260が最内周に位置する。また、各ターン210~260は、スパイラル状の5本のスリットによって径方向に6分割されている。これにより、ターン210~260は、最も外周側に位置する導体部分211~261と、2番目に外周側に位置する導体部分212~262と、3番目に外周側に位置する導体部分213~263と、4番目に外周側に位置する導体部分214~264と、5番目に外周側に位置する導体部分215~265と、最も内周側に位置する導体部分216~266に分離される。
最外周に位置するターン210の導体部分211~216は、径方向に延在する引き出しパターン292を介して、端子電極E2aに接続される。また、引き出しパターン292に対して周方向に隣接する位置には、径方向に延在する引き出しパターン291が設けられており、その先端部は端子電極E1bに接続される。引き出しパターン291は、接続部THaを介して、図2に示した引き出しパターン191に接続される。これにより、端子電極E1a,E1bが短絡される。同様に、引き出しパターン292は、接続部THbを介して、図2に示した引き出しパターン192に接続される。これにより、端子電極E2a,E2bが短絡される。本実施形態においては、接続部THa,THbをそれぞれ2個設けているが、これら接続部の個数については特に限定されるものではない。一方、最内周に位置するターン260の導体部分261~266の内周端は、それぞれ接続部TH3,TH2,TH1,TH6,TH5,TH4に接続される。
これにより、図5に示すように、最も外周側に位置する導体部分211~261は、端子電極E2aと接続部TH3との間に直列に接続された導体部分B1を構成し、2番目に外周側に位置する導体部分212~262は、端子電極E2aと接続部TH2との間に直列に接続された導体部分B2を構成し、3番目に外周側に位置する導体部分213~263は、端子電極E2aと接続部TH1との間に直列に接続された導体部分B3を構成し、4番目に外周側に位置する導体部分214~264は、端子電極E2aと接続部TH6との間に直列に接続された導体部分B4を構成し、5番目に外周側に位置する導体部分215~265は、端子電極E2aと接続部TH5との間に直列に接続された導体部分B5を構成し、最も内周側に位置する導体部分216~266は、端子電極E2aと接続部TH4との間に直列に接続された導体部分B6を構成する。
第2のコイル部200を構成する各ターン210~260は、径方向における位置が変化しない円周領域200aと、径方向における位置が遷移する遷移領域200bを有している。第1のコイル部100と第2のコイル部200は同一の平面形状を有しているため、仮想線L0は、第1のコイル部100の外周端と第2のコイル部200の外周端の間を通過することになる。
このような構成を有する第1のコイル部100と第2のコイル部200は、それぞれの中心点Cが一致し、且つ、端子電極E1a,E1bが重なり、端子電極E2a,E2bが重なるよう、絶縁基板10の表裏に形成される。これにより、第1のコイル部100のターン110~160の円周領域100aと、第2のコイル部200のターン210~260の円周領域200aは、その大部分が平面視で重なることになる。そして、第1のコイル部100を構成する導体部分A1~A6の内周端は、接続部TH1~TH6を介して、第2のコイル部200を構成する導体部分B3,B2,B1,B6,B5,B4の内周端に接続される。
これにより、第1のコイル部100と第2のコイル部200は、図6に示すように直列接続され、合計で12ターンのスパイラルコイルが構成されることになる。尚、図6に示す端子電極E1は短絡された端子電極E1a,E1bを示し、端子電極E2は短絡された端子電極E2a,E2bを示している。そして、図6に示すように、導体部分A1は接続部TH1を介して導体部分B3に接続され、導体部分A2は接続部TH2を介して導体部分B2に接続され、導体部分A3は接続部TH3を介して導体部分B1に接続され、導体部分A4は接続部TH4を介して導体部分B6に接続され、導体部分A5は接続部TH5を介して導体部分B5に接続され、導体部分A6は接続部TH6を介して導体部分B4に接続される。
このように、本実施形態によるコイル部品は、各ターンがスパイラル状のスリットによって径方向に6分割されていることから、このようなスリットを設けない場合と比べて、電流密度の偏りが低減される。その結果、直流抵抗や交流抵抗を低減することができる。しかも、第1のコイル部100と第2のコイル部200との間で導体部分の径方向位置が入れ替えられていることから、内外周差が低減される。
例えば、導体部分A1と導体部分B1は互いに長さが同じであり、導体部分A3と導体部分B3は互いに長さが同じであり、且つ、導体部分A1,B1は導体部分A3,B3よりも長さが長い。しかしながら、本実施形態においては、導体部分A1と導体部分B3が接続され、且つ、導体部分A3と導体部分B1が接続されることから、両者の合計長さは完全に一致する。この長さは、導体部分A2と導体部分B2の合計長さともほぼ同等である。同様に、導体部分A4と導体部分B4は互いに長さが同じであり、導体部分A6と導体部分B6は互いに長さが同じであり、且つ、導体部分A4,B4は導体部分A6,B6よりも長さが長い。しかしながら、導体部分A4と導体部分B6が接続され、且つ、導体部分A6と導体部分B4が接続されることから、両者の合計長さは完全に一致する。この長さは、導体部分A5と導体部分B6の合計長さともほぼ同等である。これにより、内外周差が緩和されることから、直流抵抗や交流抵抗をより低減することが可能となる。
また、本実施形態によるコイル部品に電流を流すと、図7に示すように磁束φが発生する。磁束φは、第1及び第2のコイル部100,200の内径領域を通過するとともに、第1及び第2のコイル部100,200の外側を通過する。このため、第1及び第2のコイル部100,200のより最内周ターンに近い部分や、第1及び第2のコイル部100,200のより最外周ターンに近い部分は、磁界が強くなり、局所的に交流抵抗が増加する傾向がある。
図8は、導体部分の長さと磁界強度の関係を説明するための模式図である。
図8に示すように、ターン110を構成する導体部分111~116に着目すると、導体部分111が最も外周側に位置し、導体部分116が最も内周側に位置する。このため、導体部分111~116の長さは、矢印Lで示すように、導体部分111が最も長く、導体部分116が最も短くなる。同様に、ターン160を構成する導体部分161~166に着目すると、導体部分161が最も外周側に位置し、導体部分166が最も内周側に位置する。このため、導体部分161~166の長さは、矢印Lで示すように、導体部分161が最も長く、導体部分166が最も短くなる。要するに、導体部分A1が最も長く、導体部分A6が最も短い。上記の点は、第2のコイル部200においても同様であり、導体部分B1が最も長く、導体部分B6が最も短い。
一方、磁界については、上述の通り、より最内周ターンに近い部分やより最外周ターンに近い部分ほど、磁界が強くなる。このため、最外周に位置するターン110においては、矢印Fで示すように、外周側に位置する導体部分111において最も磁界が強く、内周側に位置する導体部分116において最も磁界が弱くなる。逆に、最内周に位置するターン160においては、矢印Fで示すように、内周側に位置する導体部分166において最も磁界が強く、外周側に位置する導体部分161において最も磁界が弱くなる。上記の点は、第2のコイル部200においても同様であり、最外周に位置するターン210においては、矢印Fで示すように、外周側に位置する導体部分211において最も磁界が強く、内周側に位置する導体部分216において最も磁界が弱くなる。逆に、最内周に位置するターン260においては、矢印Fで示すように、内周側に位置する導体部分266において最も磁界が強く、外周側に位置する導体部分261において最も磁界が弱くなる。
このため、内外周差が最も小さくなる組み合わせで第1のコイル部100と第2のコイル部200を接続すると、磁界の影響を強く受ける導体部分同士を接続することになり、交流抵抗が増大してしまう。つまり、内外周差を最も小さくするためには、最外周に位置する導体部分A1と最内周に位置する導体部分B6を接続し、最内周に位置する導体部分A6と最外周に位置する導体部分B1を接続すれば良いが、この場合、ターン110において最も磁界の強い導体部分111と、ターン260において最も磁界の強い導体部分266が接続されることから、当該組み合わせにおける交流抵抗が大幅に高くなってしまう。同様に、ターン160において最も磁界の強い導体部分166と、ターン210において最も磁界の強い導体部分211が接続されることから、当該組み合わせにおける交流抵抗が大幅に高くなってしまう。
この点を考慮し、本実施形態においては、最外周に位置する導体部分A1と最内周に位置する導体部分B6を接続するのではなく、最外周に位置する導体部分A1と最外周に位置する導体部分B1及び最内周に位置する導体部分B6以外の導体部分(つまり、B2~B5のいずれか)を接続することにより、内外周差を緩和しつつ、磁界の影響を強く受ける組み合わせを避けている。これにより、交流抵抗が特異的に高くなる組み合わせが生じず、磁界の影響がより均一化されることから、結果として交流抵抗が低減され、直流抵抗と交流抵抗の差を縮小することが可能となる。
しかも、本実施形態によるコイル部品は、遷移領域100b,200bを除き、第1のコイル部100と第2のコイル部200の大部分が平面視で重なることから、絶縁基板10が透明又は半透明である場合であっても、第1のコイル部100と第2のコイル部200の視覚的な干渉を最小限に抑えることができる。つまり、第1のコイル部100を外観検査する際に第2のコイル部200が視覚的な障害とならず、逆に、第2のコイル部200を外観検査する際に第1のコイル部100が視覚的な障害とならない。これにより、検査装置を用いた外観検査を正しく実行することが可能となる。
さらに、本実施形態によるコイル部品は、第1及び第2のコイル部100,200の外周端及び内周端を遷移領域100b,200bに配置していることから、第1のコイル部100の外周端と第2のコイル部200の外周端を互いに隣接する位置に配置しているにもかかわらず、円周領域100a,200aの増大によるコイル部の外形の大型化や、コイルの内径領域の減少を防止することも可能となる。
以下、本実施形態のいくつかの変形例について説明する。
図9は、第1の変形例によるコイル部品の接続関係を説明するための等価回路図である。図9に示す例では、導体部分A1~A6がそれぞれ導体部分B4,B2,B6,B1,B5,B3に接続されている。このような接続方法においても、内外周差を緩和しつつ、磁界の影響を強く受ける組み合わせを避けることができる。図6及び図9に示す例のように、導体部分A1を導体部分B3及びB4の一方に接続し、導体部分A6を導体部分B3及びB4の他方に接続し、導体部分B1を導体部分A3及びA4の一方に接続し、導体部分B6を導体部分A3及びA4の他方に接続すれば、内外周差を効果的に緩和しつつ、磁界の影響による交流抵抗の増大を効果的に防止することが可能となる。
図10は、第2の変形例によるコイル部品の接続関係を説明するための等価回路図である。図10に示す例では、導体部分A1~A6がそれぞれ導体部分B5,B6,B4,B3,B1,B2に接続されている。この接続方法は、内外周差の緩和を優先する場合に好適である。
図11は、第3の変形例によるコイル部品の接続関係を説明するための等価回路図である。図11に示す例では、導体部分A1~A6がそれぞれ導体部分B2,B1,B4,B3,B6,B5に接続されている。この接続方法は、磁界の影響による交流抵抗の増大防止を優先する場合に好適である。
上述した実施形態及びその変形例では、第1及び第2のコイル部100,200を構成する各ターンを径方向に6分割しているが、分割数については4以上であれば特に限定されない。これは、分割数が大きくなるほど電流密度分布が均一化するためである。但し、分割数が多くなると、その分、スリットの専有面積が増大するため、1ターン当たりの導体面積が減少し、直流抵抗が増大する傾向がある。この点を考慮すれば、分割数を4~8に設定することが好ましい。実際の分割数は、当該コイル部品に流れる電流の周波数や、許容される発熱量などによって決定すればよく、周波数帯が低いほど分割数を小さくし、周波数帯が高いほど分割数を大きくすることが好ましい。特に、本発明によるコイル部品をワイヤレス電力伝送システムの送電コイルとして使用する場合、送信する交流電力の周波数は30~150kHzであり、この場合、分割数は6が最適である。一方、ワイヤレス電力伝送システムの受電コイルとして使用する場合、送電コイルに比べて発熱量が少ないことから、分割数は4が最適である。
図12は、第4の変形例によるコイル部品の接続関係を説明するための等価回路図である。図12に示す例では、第1及び第2のコイル部100,200を構成する各ターンの分割数が4であり、第1のコイル部100については導体部分A1~A4によって構成され、第2のコイル部200については導体部分B1~B4によって構成されている。そして、本例では、導体部分A1~A4がそれぞれ導体部分B2,B1,B4,B3に接続されている。この接続方法は、各ターンの分割数が4であって、磁界の影響による交流抵抗の増大防止を優先する場合に好適である。
図13は、第5の変形例によるコイル部品の接続関係を説明するための等価回路図である。図13に示す例では、第1及び第2のコイル部100,200を構成する各ターンの分割数が4であり、導体部分A1~A4がそれぞれ導体部分B3,B4,B1,B2に接続されている。この接続方法は、各ターンの分割数が4であって、内外周差の緩和を優先する場合に好適である。
図14は、第6の変形例によるコイル部品の接続関係を説明するための等価回路図である。図14に示す例では、第1及び第2のコイル部100,200を構成する各ターンの分割数が8であり、第1のコイル部100については導体部分A1~A8によって構成され、第2のコイル部200については導体部分B1~B8によって構成されている。そして、本例では、導体部分A1,A2が短絡されて導体部分B3,B4に共通に接続され、導体部分A3,A4が短絡されて導体部分B1,B2に共通に接続され、導体部分A5,A6が短絡されて導体部分B7,B8に共通に接続され、導体部分A7,A8が短絡されて導体部分B5,B6に共通に接続される。本例が例示するように、本発明においては、第1のコイル部100を構成する複数の導体部分の一部を短絡し、第2のコイル部200を構成する複数の導体部分の一部を短絡しても構わない。これによれば、接続部の数を減らすことが可能となる。或いは、接続部の数を維持する場合、同じ導体パターンに2個の接続部を割り当てることができるため、信頼性を高めることが可能となる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態においては、2つのコイル部を絶縁基板の表裏に形成しているが、本発明においてこの点は必須でない。また、上記の各実施形態においては、2つのコイル部のパターン形状が互いに同一であるが、本発明においてこの点も必須ではない。
また、上記実施形態においては、第1及び第2のコイル部100,200を構成する各ターンがスパイラル状のスリットによって全て径方向に分離されているが、全てのターンがスパイラル状のスリットによって径方向に分離されている必要はない。
10 絶縁基板
11 絶縁基板の一方の表面
12 絶縁基板の他方の表面
100 第1のコイル部
100a 円周領域
100b 遷移領域
110~160 ターン
111~116,121~126,131~136,141~146,151~156,161~166 導体部分
191,192 引き出しパターン
200 第2のコイル部
200a 円周領域
200b 遷移領域
210~260 ターン
211~216,221~226,231~236,241~246,251~256,261~266 導体部分
291,292 引き出しパターン
A1~A8,B1~B8 導体部分
C 中心点
E1,E1a,E1b 端子電極
E2,E2a,E2b 端子電極
L0 仮想線
TH1~TH6 接続部
THa,THb 接続部
φ 磁束
11 絶縁基板の一方の表面
12 絶縁基板の他方の表面
100 第1のコイル部
100a 円周領域
100b 遷移領域
110~160 ターン
111~116,121~126,131~136,141~146,151~156,161~166 導体部分
191,192 引き出しパターン
200 第2のコイル部
200a 円周領域
200b 遷移領域
210~260 ターン
211~216,221~226,231~236,241~246,251~256,261~266 導体部分
291,292 引き出しパターン
A1~A8,B1~B8 導体部分
C 中心点
E1,E1a,E1b 端子電極
E2,E2a,E2b 端子電極
L0 仮想線
TH1~TH6 接続部
THa,THb 接続部
φ 磁束
Claims (9)
- 複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された第1のコイル部と、
複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された第2のコイル部と、を備え、
前記第1のコイル部は、スパイラル状のスリットによって径方向に分離された4以上の導体部分を含み、
前記第2のコイル部は、スパイラル状のスリットによって径方向に分離された4以上の導体部分を含み、
前記第1のコイル部を構成する前記4以上の導体部分のうち、最も内周側に位置する導体部分の内周端は、前記第2のコイル部を構成する前記4以上の導体部分のうち、最も内周側に位置する導体部分及び最も外周側に位置する導体部分とは異なる所定の導体部分の内周端に接続され、
前記第1のコイル部を構成する前記4以上の導体部分のうち、最も外周側に位置する導体部分の内周端は、前記第2のコイル部を構成する前記4以上の導体部分のうち、最も内周側に位置する導体部分、最も外周側に位置する導体部分及び前記所定の導体部分とは異なる別の導体部分の内周端に接続されることを特徴とするコイル部品。 - 前記第1のコイル部を構成する前記4以上の導体部分は、外周側から順に、第1乃至第6の導体部分を含み、
前記第2のコイル部を構成する前記4以上の導体部分は、外周側から順に、第1乃至第6の導体部分を含み、
前記第1のコイル部の前記第1の導体部分は、前記第2のコイル部の前記第3及び第4の導体部分の一方に接続され、
前記第1のコイル部の前記第6の導体部分は、前記第2のコイル部の前記第3及び第4の導体部分の他方に接続され、
前記第2のコイル部の前記第1の導体部分は、前記第1のコイル部の前記第3及び第4の導体部分の一方に接続され、
前記第2のコイル部の前記第6の導体部分は、前記第1のコイル部の前記第3及び第4の導体部分の他方に接続されることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。 - 前記第1のコイル部の前記第2の導体部分は、前記第2のコイル部の前記第2の導体部分に接続され、
前記第1のコイル部の前記第5の導体部分は、前記第2のコイル部の前記第5の導体部分に接続されることを特徴とする請求項2に記載のコイル部品。 - 前記第1のコイル部を構成する前記4以上の導体部分は、外周側から順に、第1乃至第4の導体部分を含み、
前記第2のコイル部を構成する前記4以上の導体部分は、外周側から順に、第1乃至第4の導体部分を含み、
前記第1のコイル部の前記第1の導体部分は、前記第2のコイル部の前記第2及び第3の導体部分の一方に接続され、
前記第1のコイル部の前記第4の導体部分は、前記第2のコイル部の前記第2及び第3の導体部分の他方に接続され、
前記第2のコイル部の前記第1の導体部分は、前記第1のコイル部の前記第2及び第3の導体部分の一方に接続され、
前記第2のコイル部の前記第4の導体部分は、前記第1のコイル部の前記第2及び第3の導体部分の他方に接続されることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。 - 前記第1のコイル部の外周端と前記第2のコイル部の外周端は、平面視で互いに隣接する位置に設けられ、
前記第1及び第2のコイル部を構成する前記複数ターンのそれぞれは、径方向における位置が変化しない円周領域と、径方向における位置が遷移する遷移領域を有し、
前記遷移領域は、前記第1及び第2のコイルの中心点から放射状に延在し、前記第1のコイル部の前記外周端と前記第2のコイル部の前記外周端の間を通過する仮想線上に位置することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコイル部品。 - 前記第1及び第2のコイル部の前記内周端は、前記遷移領域に位置することを特徴とする請求項5に記載のコイル部品。
- 前記第1のコイル部のパターン形状と前記第2のコイル部のパターン形状が同一であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコイル部品。
- 前記第1のコイル部は絶縁基板の一方の表面に形成され、前記第2のコイル部は前記絶縁基板の他方の表面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のコイル部品。
- 前記絶縁基板は、透明又は半透明であることを特徴とする請求項8に記載のコイル部品。
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JPH08203739A (ja) * | 1995-01-30 | 1996-08-09 | Murata Mfg Co Ltd | 空芯コイル装置 |
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-
2017
- 2017-12-05 JP JP2017233608A patent/JP6992458B2/ja active Active
Patent Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2003510806A (ja) | 1999-09-17 | 2003-03-18 | インフィネオン テクノロジース アクチエンゲゼルシャフト | モノリシック集積化トランス |
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