JP6991763B2 - 弾性波デバイスおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、弾性波デバイスおよびその製造方法に関し、例えば複数の電極指を有する弾性波デバイスおよびその製造方法に関する。
携帯電話を代表とする高周波通信用システムにおいて、通信に使用する周波数帯以外の不要な信号を除去するために高周波フィルタ等が用いられている。高周波フィルタ等には、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)共振器等の弾性波共振器が用いられている。弾性表面波共振器においては、ニオブ酸リチウム基板またはタンタル酸リチウム基板等の圧電基板上に複数の電極指を有するIDT(Interdigital Transducer)が設けられている。
電極指にはAl(アルミニウム)またはCu(銅)等の低抵抗な金属が用いられる。低抵抗な金属膜と圧電基板との間にTi(チタン)またはPt(白金)等の金属膜を設けることが知られている(例えば特許文献1から3)。また、電極指を保護膜で覆うことが知られている(例えば特許文献1、3)。
特開2002-26685号公報 特開2010-81086号公報 特開2001-217672号公報
IDTに大電力の高周波信号が入力すると、弾性表面波が励振され電極指が発熱する。熱膨張により電極指に応力が加わる。また、圧電基板の変形にともなう弾性応力が電極指に加わる。これにより、ストレスマイグレーションが生じ、弾性波デバイスの耐電力性能が劣化する。特許文献3では、電極指をTiN(窒化チタン)等の保護膜で覆うことによりストレスマイグレーションを緩和している。しかしながら、耐電力性の向上は十分でない。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、耐電力性を向上させることを目的とする。
本発明は、ニオブ酸リチウム基板またはタンタル酸リチウム基板である圧電基板と、前記圧電基板上に設けられたCuを主成分とする第1金属膜と、前記第1金属膜上に接して設けられ、Crを主成分とし酸素を含有する第2金属膜と、を有する弾性波を励振する複数の電極指と、前記圧電基板上に前記複数の電極指を覆い前記複数の電極指より厚い酸化シリコン膜と、を具備し、前記第2金属膜は、前記複数の電極指の最上層であり、前記第2金属膜における酸素の濃度は15原子%以上かつ30原子%以下である弾性波デバイスである。
上記構成において、前記第2金属膜は前記第1金属膜の側面の少なくとも一部を覆う構成とすることができる。
上記構成において、前記複数の電極指は、前記圧電基板と前記第1金属膜との間に設けられCuより融点が高い金属を主成分とする第3金属膜を具備する構成とすることができる。
上記構成において、前記圧電基板上に前記複数の電極指を覆い前記複数の電極指より厚い誘電体膜を具備する構成とすることができる。
上記構成において、前記圧電基板は回転Yカット角が120°以上かつ140°以下である回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である構成とすることができる。
上記構成において、前記複数の電極指を含むフィルタを具備する構成とすることができる。
上記構成において、前記フィルタを含むマルチプレクサを具備する構成とすることができる。
本発明は、ニオブ酸リチウム基板またはタンタル酸リチウム基板である圧電基板上にCuを主成分とする第1金属膜と、前記第1金属膜上に接して設けられ、Crを主成分とする第2金属膜と、を複数の電極指として形成する工程と、前記第2金属膜の酸素濃度を増加させ、前記酸素濃度を15原子%以上かつ30原子%以下にする工程と、前記圧電基板上に前記複数の電極指を覆い前記複数の電極指より厚い酸化シリコン膜を形成する工程と、を含み、前記第2金属膜は、前記複数の電極指の最上層である弾性波デバイスの製造方法である。
上記構成において、前記第2金属膜の酸素濃度を増加させる工程は、前記第2金属膜の表面を不活性ガスのプラズマに曝す工程である構成とすることができる。
本発明によれば、耐電力性を向上させることができる。
図1(a)は弾性表面波共振器の平面図、図1(b)は図1(a)のA-A断面図である。 図2は、実施例1における電極指付近の断面図である。 図3(a)から図3(d)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その1)である。 図4(a)から図4(d)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その2)である。 図5(a)および図5(b)は、実験1におけるそれぞれ酸素濃度および炭素濃度に対するCr膜の応力を示す図である。 図6(a)および図6(b)は、実験2におけるそれぞれ酸素濃度および炭素濃度に対する破壊電力を示す図である。 図7(a)および図7(b)は、実施例1における電極指の断面図である。 図8(a)は、実施例2に係るフィルタの平面図、図8(b)は、図8(a)のA-A断面図である。 図9は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。
[比較例]
図1(a)は弾性表面波共振器の平面図、図1(b)は図1(a)のA-A断面図である。図1(a)および図1(b)に示すように、弾性表面波共振器24は、IDT20と反射器22を有する。IDT20および反射器22は、圧電基板10上に形成された金属膜12により形成される。IDT20は、対向する一対の櫛型電極18を備える。櫛型電極18は、複数の電極指14と、複数の電極指14が接続されたバスバー16と、を備える。一対の櫛型電極18は、電極指14がほぼ互い違いとなるように、対向して設けられている。圧電基板10上に電極指14を覆うように誘電体膜15が設けられている。
IDT20が励振する弾性波は、主に電極指14の配列方向に伝搬する。同じ櫛型電極18に接続された電極指14のピッチがほぼ弾性波の波長λとなる。弾性波の伝搬方向をX方向、伝搬方向に直交する方向をY方向とする。X方向およびY方向は、圧電基板10の結晶方位のX軸方向およびY軸方向とは必ずしも対応しない。圧電基板10は、タンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板である。誘電体膜15は、弾性表面波共振器の周波数温度特性を抑制するための温度補償膜であり、例えば酸化シリコン膜または弗素等の元素が添加された酸化シリコン膜である。
金属膜12としては、Al膜またはCu膜が用いられている。例えば、誘電体膜15を設けない弾性表面波共振器では、金属膜12としてAl膜が用いられている。誘電体膜15を設けた弾性表面波共振器では、金属膜12としてCu膜が用いられている。
Alは音響インピーダンスが小さい。このため、誘電体膜15を設けると、誘電体膜15と電極指14との音響インピーダンスの差が小さくなる。これにより、電極指14における弾性波の反射係数が小さくなってしまう。一方、Cuは音響インピーダンスがAlより大きい。このため、誘電体膜15と電極指14との音響インピーダンスの差が大きくなり、電極指における弾性波の反射係数が大きくなる。これにより広帯域な弾性波デバイスを実現できる。
また、CuはAlに比べ低抵抗であることからCu膜を用いることで電極指14を低抵抗化できる。さらに、CuはAlに比べマイグレーション耐性が高い。さらに、CuはAlより密度が高いため、電極指14を薄くでき電極指14の弾性的な損失を低減できる。
低抵抗のAl膜またはCu膜を圧電基板10上に直接設けると、大電力の高周波信号が入力する動作時にAl膜またはCu膜に応力が加わるおよび/またはAl膜またはCu膜が発熱する。このため、AlまたはCuのマイグレーションが生じる。これにより、弾性波デバイスの耐電力性能が低下する。耐電力性能を向上させるため、Al膜またはCu膜と圧電基板10との間にAlまたはCuより耐熱性のある金属膜を設ける。これにより、弾性波デバイスの耐電力性能を向上できる。
図2は、実施例1における電極指付近の断面図である。図2に示すように、圧電基板10上に金属膜12が設けられている。金属膜12を覆うように誘電体膜15が設けられている。金属膜12は、積層された金属膜12a、12bおよび12cを含む。金属膜12aは、圧電基板10上に設けられている。金属膜12bは金属膜12a上に設けられている。金属膜12cは、金属膜12b上に設けられている。金属膜12aおよび12cは、耐電力性能を向上させるための膜である。金属膜12bは例えばAl膜またはCu膜である。金属膜12cは、電極指14以外において誘電体膜15にウェットエッチングで開口を設けるときのエッチングストッパとしても機能する。誘電体膜15の上面は平坦である。
[実施例1の製造方法]
図3(a)から図4(d)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。図3(a)に示すように、圧電基板10上にフォトレジスト40を塗布する。その後ベークする。フォトレジスト40は例えばポジ型である。図3(b)に示すように、フォトマスク42を介しフォトレジスト40に露光光43を照射する。フォトレジスト40内の領域40aが感光する。図3(c)に示すように、フォトレジスト40を現像することで領域40aが除去され開口41が形成される。図3(d)に示すように、真空蒸着法を用い、開口41内の圧電基板10上およびフォトレジスト40上に金属膜12を形成する。金属膜12はスパッタリング法を用い形成してもよい。金属膜12は、圧電基板10側からTi膜、Cu膜およびCr膜の積層膜である。
図4(a)に示すように、フォトレジスト40を除去することでフォトレジスト40上の金属膜12をリフトオフする。これにより、圧電基板10上に金属膜12が形成される。リフトオフを容易に行うためには、図3(d)において開口41内のフォトレジスト40の側面に金属膜12が形成されないことが好ましい。このため、図3(d)の工程には、原子の直進性の高い成膜方法として真空蒸着法を用いる。
図4(b)に示すように、金属膜12の表面をAr(アルゴン)プラズマに曝す(矢印46)。プラズマ中には、一般的に微量の酸素の残存ガスが含まれ、これにより金属膜12の最上層である金属膜12c(図2参照)内の酸素濃度が高くなるように制御できる。図4(c)に示すように、圧電基板10上に金属膜12を覆うように誘電体膜15を形成する。誘電体膜15はCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用い形成する。誘電体膜15はスパッタリング法を用い形成してもよい。図4(d)に示すように、誘電体膜15の上面を平坦化する。平坦化にはCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いる。
[実験1]
シリコン基板上にCr膜を形成し、図4(b)のArプラズマ処理を行った。Arプラズマ処理の条件は以下である。
Arガス流量:5ml/分
Arガス圧力:20Pa
高周波電力:200Wから500W
処理時間:4秒から20秒
高周波電力と処理時間を変えた複数のサンプルを作製し、Cr膜の残留応力とCr内の酸素濃度および炭素濃度を測定した。酸素濃度および炭素濃度は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)法を用い測定した。酸素濃度は、CrとOに対するOの濃度であり、例えばO濃度が15原子%のサンプルは、Crがほぼ85原子%でありOがほぼ15原子%である。
図5(a)および図5(b)は、実験1におけるそれぞれ酸素濃度および炭素濃度に対するCr膜の応力を示す図である。酸素濃度および炭素濃度は、Cr膜の表面から10nmの範囲における濃度である。Cr膜の応力は正を引張応力としている。図5(a)に示すようにCr膜内には、Crに対し10原子%以上のOが含まれている。酸素濃度が大きくなるとCr膜の応力が小さくなる。図5(b)に示すように、Cr膜内の炭素濃度は1原子%以下であり非常に小さい。炭素濃度とCr膜の応力には相関はない。
以上より、Arプラズマ処理によりCr膜中の酸素濃度が高くなることがわかる。これは、Cr膜がArプラズマ処理のチャンバ内の残存酸素により酸化されたためと考えられる。Cr膜が酸化すると体積が増加するため引張応力が小さくなる。Arプラズマ処理では、不活性ガスであるArはCrと反応しない。このため、反応でCr膜内へ導入されるAr原子は少ないと考えられる。また、高周波電力が小さいため、物理的にCr膜中へ打ち込まれるAr元素も少ないと考えられる。よって、Cr膜の酸化によりCr膜の引張応力が小さくなったと考えられる。
[実験2]
実験1のArプラズマ処理を用いて弾性表面波共振器を作製した。弾性表面波共振器の作製条件は以下である。
圧電基板10:128°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板
電極指14のピッチλ:4.17μm(動作周波数が850MHzに相当)
電極指14の対数:55対
開口長:35λ
共振器:アポダイズ型
金属膜12a:膜厚が78nmのTi膜
金属膜12b:膜厚が245nmのCu膜
金属膜12c:膜厚が10nmのCr膜
誘電体膜15:電極指14間における膜厚が927nmの酸化シリコン膜
耐電力性能を調べるため、弾性表面波共振器に周波数が850MHzの高周波信号を印加し、瞬時に破壊される瞬時破壊電力を測定した。図6(a)および図6(b)は、実験2におけるそれぞれ酸素濃度および炭素濃度に対する破壊電力を示す図である。図6(a)に示すように、酸素濃度が高くなると破壊電力が高くなる。図6(b)に示すように、炭素濃度は破壊電力に相関がない。
図5(a)のように、Cr膜内の酸素濃度が高くなると、Cr膜の引張応力が小さくなる。これにより、電極指14に加わる応力が低下しストレスマイグレーションの発生が抑制できる。よって、耐電力性能が向上するものと考えられる。
金属膜の内部応力は一般的に引張応力である。そこで、金属膜12c内に酸素を含有させる(または金属膜12cを少し酸化させる)ことで、金属膜12cの内部応力を小さくできる。よって、金属膜12bおよび12cの材料としては、CuおよびCrに限られない。電極指14の抵抗を低くする観点から金属膜12bの抵抗率が金属膜12aおよび12cより低いことが好ましい。耐電力性能を向上させる観点から金属膜12aおよび12cの融点は金属膜12bより高いことが好ましい。また、金属膜12aおよび12cの膜厚は金属膜12bの膜厚より小さいことが好ましい。
図7(a)および図7(b)は、実施例1における電極指の断面図である。図7(a)に示すように、金属膜12をリフトオフ法を用い形成すると、金属膜12の側面は平面(断面視において直線)となる。例えば金属膜12aと12bとの界面が電極指14の側面に露出する領域54において、側面の傾きは連続している。これは、図3(d)において、フォトレジスト40に入射する様々な入射角の金属原子のうち、圧電基板10に対し垂直に近い入射角を有する金属原子のみが開口41内の圧電基板10の表面に達するためである。例えば、図3(d)において矢印44の範囲の入射角を有する金属原子のみが圧電基板10の上面に達する。それ以外の入射角の金属原子はフォトレジスト40の上に付着する。金属膜12の側面と圧電基板10の上面とのなす角度θ1は、ほぼ矢印44の入射角度となる。このため、金属膜12aから12cによらず、金属膜12の側面はほぼ平面となる。よって、金属膜12aと12bの界面における電極指14の側面の傾きはほぼ一定となる。角度θ1は、図3(d)におけるフォトレジスト40の膜厚と開口41の幅に依存するが、例えば70°から80°である。
図7(b)に示すように、電極指14の側面は基板側の電極指14の幅が広がるように傾斜している。金属膜12cは金属膜12bの側面を覆っている。その他の構成は図7(a)と同じであり説明を省略する。金属膜12cは金属膜12bの側面の少なくとも一部を覆うことが好ましい。これにより、金属膜12bの側面からのマイグレーションを抑制することができる。よって、耐電力性能をより向上できる。金属膜12cは金属膜12bの側面をすべて覆うことが好ましい。図4(d)において、金属膜12cを形成するときに金属原子の入射角を大きくすることで、金属膜12bの側面に金属膜12cを形成できる。例えば、ソースの温度を高くすることで、チャンバ内の真空度が悪くなり金属原子が散乱しやすくなるため、金属原子の入射角度を大きくできる。
耐電力性能を向上させるため、金属膜12aは、Ti、Ru(ルテニウム)、Pt(白金)、Rh(ロジウム)およびMo(モリブデン)を主成分とすることが好ましい。
電極指14の抵抗を低くするため、金属膜12bは、例えばAlまたはCuを主成分とすることが好ましい。金属膜12bは、AlおよびCu以外にマイグレーションを抑制する元素を含んでもよい。金属膜12bがCuを主成分とする場合、金属膜12bは、Ag(銀)、Al、Mg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、Sn(錫)、Zr(ジルコニウム)、In(インジウム)、Ta(タンタル)、TiおよびMoの少なくとも1つを含有してもよい。金属膜12bの膜厚は、金属膜12aおよび12cの各々の膜厚より厚いことが好ましく、2倍以上厚いことがより好ましく、3倍以上厚いことがさらに好ましい。
金属膜12cは、電極指14以外の領域において、誘電体膜15をエッチングするときのエッチングストッパである。金属膜12cはバッファード弗酸等の酸性のエッチング液に対し不溶であればよい。この観点から、金属膜12cは例えばCr、Ru、Pt、Rh、Au(金)、AgおよびMoの少なくとも1つを主成分とする。耐電力性能を向上させる観点(金属膜12bより融点が高い観点)から、金属膜12aはCr、Ti、Ru、Pt、Rh、Mo、Re(レニウム)およびIr(イリジウム)の少なくとも1つを主成分とする。例えばAlおよびCuの融点はそれぞれ660℃および1085℃である。Cr、Ru、Pt、Rh、Au、Ag、Mo、Ti、ReおよびIrの融点は、それぞれ1863℃、2334℃、1768℃、1964℃、1064℃、962℃、2623℃、1668℃、3816℃および2466℃である。金属膜12cの酸素濃度が高く抵抗が高い場合、金属膜12の上面に配線等を接触させる領域(例えばパッド領域)の金属膜12cを除去してもよい。
実施例1によれば、金属膜12b(第1金属膜)は、第1金属を主成分とする。金属膜12c(第2金属膜)は、金属膜12b上に接して設けられ、第1金属より融点が高い第2金属を主成分とし酸素を含有する。これにより、弾性波デバイスの耐電力性能を向上できる。
金属膜12cは、Crを主成分とすることが好ましい。これにより、弾性波デバイスの耐電力性能を向上できる。図5(b)のように、耐電力性能をより向上させるため、金属膜12cにおける酸素の濃度は、15原子%以上が好ましく、17原子%以上がより好ましく、20原子%以上がさらに好ましい。金属膜12cの酸化が大きすぎると、電極指14の抵抗が高くなる。よって、金属膜12cにおける酸素の濃度は、30原子%以下が好ましく、25原子%以下がより好ましい。金属膜12bはCuを主成分とすることが好ましい。これにより、電極指14を低抵抗化できる。なお、ある元素を主成分とするとは、実施例1の効果が得られる程度にある元素を含む意味である。例えばある元素が50原子%以上(または例えば90原子%以上)含まれることである。
金属膜12aは設けられていなくてもよい。耐電力性能を向上させるため、圧電基板10と金属膜12bとの間に第1金属より融点が高い第3金属を主成分とする金属膜12a(第3金属膜)を設けることが好ましい。
金属膜12cは、複数の電極指14の最上層である。これにより、金属膜12cが金属膜12bを覆うためストレスマイグレーションを抑制し、耐電力性能を向上できる。図7(b)のように、金属膜12cは金属膜12bの側面の少なくとも一部を覆う。これにより、ストレスマイグレーションをより抑制し、耐電力性能をより向上できる。
誘電体膜15は、圧電基板10上に複数の電極指14を覆い複数の電極指14より厚い。このように、誘電体膜15が設けられている場合、電極指14から誘電体膜15への金属膜12bの金属のマイグレーションを抑制できる。また、電極指14の音響インピーダンスを高くするため、金属膜12bをCuを主成分とすることが好ましい。
圧電基板10がニオブ酸リチウム基板またはタンタル酸リチウム基板のときに、誘電体膜15を酸化シリコン膜または弗素等の元素を添加した酸化シリコン膜とする。これにより、弾性波デバイスの周波数温度係数を0に近づけることができる。
さらに、弾性表面波共振器を製造するときに、図3(d)および図4(a)のように、圧電基板10上に金属膜12を形成する。図4(b)のように、金属膜12cの酸素濃度を増加させる。これにより、弾性波デバイスの耐電力性能を向上できる。
金属膜12cの酸素濃度を向上させる方法としては、Arプラズマ処理以外に、例えば酸素プラズマ処理、ウェット洗浄または紫外線照射等を用いてもよい。金属膜12cを酸化しすぎないためには、金属膜12cの表面を不活性ガスのプラズマに曝すことが好ましい。これにより、チャンバ内の残留酸素により金属膜12cが適度に酸化される。不活性ガスとしては、窒素ガスまたは18族元素ガスを用いることができる。
回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板では、回転Yカット角が127.86°のときレイリー波の電気機械結合係数が最大となる。Campbell&Jones法を用いシミュレーションすると、回転Yカット角が120°から140°の範囲では、レイリー波の電気機械結合係数がリーキー波の電気機械結合係数より大きくなる。よって、レイリー波を主モードとし、リーキー波を不要波とする場合、回転Yカット角は120°以上かつ140°以下が好ましい。電気機械結合係数が最大となる回転Yカット角127.86°に対し製造上のばらつきを考慮し、回転Yカット角は126°以上かつ130°以下がより好ましい。
また、回転Yカット角が0°のときリーキー波の電気機械結合係数が最大となる。回転Yカット角が-10°から10°の範囲では、リーキー波の電気機械結合係数がレイリー波の電気機械結合係数より大きくなる。よって、リーキー波を主モードとし、レイリー波を不要波とする場合、回転Yカット角は-10°以上かつ10°以下が好ましい。製造上のばらつきを考慮し、回転Yカット角は-3°以上かつ3°以下がより好ましい。
回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板では、回転Yカット角が20°より小さいと電気機械結合係数が小さくなる。回転Yカット角が48°より大きいと、周波数の温度係数が大きくなる。よって、回転Yカット角は20°以上かつ48°以下が好ましい。
圧電基板10はニオブ酸リチウム基板であり、誘電体膜15は酸化シリコン膜であることが好ましい。これにより、電極指14内の歪エネルギーを小さくでき、損失を抑制できる。
実施例2は、実施例1に係る弾性表面波共振器を有するフィルタの例である。図8(a)は、実施例2に係るフィルタの平面図、図8(b)は、図8(a)のA-A断面図である。図8(a)および図8(b)に示すように、圧電基板10上に弾性表面波共振器24、配線26、パッド27が設けられている。弾性表面波共振器24および配線26を覆うように誘電体膜15が設けられている。パッド27上の誘電体膜15に開口(不図示)が形成され、開口内にバンプ28が設けられている。弾性表面波共振器24は、IDT20および反射器22を備えている。
複数の弾性表面波共振器24は、直列共振器S1からS3および並列共振器P1およびP2を含む。バンプ28は、端子T1、T2およびTgを含む。端子T1は、高周波信号が入力する入力端子に対応する。端子T2は、高周波信号が出力する出力端子に対応する。端子Tgはグランド電位が供給されるグランド端子に対応する。端子T1とT2との間に、直列共振器S1からS3が直列に接続され、並列共振器P1およびP2が並列に接続されている。
実施例2のように、実施例1の弾性表面波共振器をフィルタの少なくとも1つの共振器に用いる。これにより、フィルタの特性を向上できる。ラダー型フィルタの直列共振器および並列共振器の個数は任意に設定できる。実施例1の弾性表面波共振器は多重モードフィルタに用いてもよい。
図9は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。図9に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ60が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ62が接続されている。送信フィルタ60は送信端子Txから入力した高周波信号のうち送信帯域の信号を共通端子Antに通過させ、他の信号を抑圧する。受信フィルタ62は、共通端子Antに入力した高周波信号のうち受信帯域の信号を通過させ、他の信号を抑圧する。
送信フィルタ60および受信フィルタ62の少なくとも一方に実施例2のフィルタを用いることができる。マルチプレクサとしてデュプレクサの例を説明したが、トリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
10 圧電基板
12、12a-12c 金属膜
14 電極指
15 誘電体膜
20 IDT
22 反射器
24 弾性表面波共振器
60 送信フィルタ
62 受信フィルタ

Claims (8)

  1. ニオブ酸リチウム基板またはタンタル酸リチウム基板である圧電基板と、
    前記圧電基板上に設けられたCuを主成分とする第1金属膜と、前記第1金属膜上に接して設けられ、Crを主成分とし酸素を含有する第2金属膜と、を有する弾性波を励振する複数の電極指と、
    前記圧電基板上に前記複数の電極指を覆い前記複数の電極指より厚い酸化シリコン膜と、
    を具備し、
    前記第2金属膜は、前記複数の電極指の最上層であり、
    前記第2金属膜における酸素の濃度は15原子%以上かつ30原子%以下である弾性波デバイス。
  2. 前記第2金属膜は前記第1金属膜の側面の少なくとも一部を覆う請求項記載の弾性波デバイス。
  3. 前記複数の電極指は、前記圧電基板と前記第1金属膜との間に設けられCuより融点が高い金属を主成分とする第3金属膜を具備する請求項1または2記載の弾性波デバイス。
  4. 前記圧電基板は回転Yカット角が120°以上かつ140°以下である回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である請求項1からのいずれか一項記載の弾性波デバイス。
  5. 前記複数の電極指を含むフィルタを具備する請求項1からのいずれか一項記載の弾性波デバイス。
  6. 前記フィルタを含むマルチプレクサを具備する請求項記載の弾性波デバイス。
  7. ニオブ酸リチウム基板またはタンタル酸リチウム基板である圧電基板上にCuを主成分とする第1金属膜と、前記第1金属膜上に接して設けられ、Crを主成分とする第2金属膜と、を複数の電極指として形成する工程と、
    前記第2金属膜の酸素濃度を増加させ、前記酸素濃度を15原子%以上かつ30原子%以下にする工程と、
    前記圧電基板上に前記複数の電極指を覆い前記複数の電極指より厚い酸化シリコン膜を形成する工程と、
    を含み、
    前記第2金属膜は、前記複数の電極指の最上層である弾性波デバイスの製造方法。
  8. 前記第2金属膜の酸素濃度を増加させる工程は、前記第2金属膜の表面を不活性ガスのプラズマに曝す工程である請求項記載の弾性波デバイスの製造方法。
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