JP6989722B1 - 耐熱性及び耐久性にすぐれたムライト焼結体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]以下の要件(1)〜(6)を満たすムライト焼結体。
(1)質量比で、Al2O3:SiO2が73:27〜77:23
(2)ムライト単相からなる
(3)理論密度に対する相対密度が95%以上
(4)平均結晶粒径が7〜15μm
(5)6μm以下の結晶粒子の含有率が20%以下
(6)1650℃、3MPaの負荷応力下で5時間保持後のたわみ量が5mm以下
[2]以下の要件(a)〜(c)を満たすムライト粉体を成形し、大気中1600〜1780℃で焼成するムライト焼結体の製造方法。
(a)質量比で、Al2O3:SiO2が73:27〜77:23
(b)Al2O3及びSiO2の合計量が99.9質量%以上
(c)比表面積が8〜15m2/g
本発明のムライト焼結体に含まれるAl2O3とSiO2の合計質量を100とした場合、Al2O3とSiO2との比率は、質量比でAl2O3:SiO2が73:27〜77:23である。Al2O3とSiO2の合計におけるAl2O3の比率が73質量%を下回ると、SiO2含有量が増加し、微量の不純物と反応して形成されるガラス相や第2相が焼結体内部の結晶粒界に多く形成され、これらが起点となって、高温下で結晶粒界が滑りやすくなり、耐クリープ性に劣り、耐熱性及び耐久性が低下する。一方、Al2O3の比率が77質量%を超えると、Al2O3含有量が増えることになり、焼結体内部にアルミナ粒子が析出しやすくなるため、このアルミナ結晶が起点となって耐クリープ性の劣化につながる。特に高温での長期間保持により、アルミナ結晶の析出がより加速するため好ましくない。また、Al2O3とSiO2との比率が、上記範囲を外れる場合には耐熱衝撃抵抗性及び耐熱疲労性が低下する。耐熱性及び耐久性をより向上させる観点から、Al2O3:SiO2は、質量比で74:26〜76:24が好ましい。ムライト焼結体におけるAl2O3とSiO2の含有量は、蛍光X線分析により測定することができる。
本発明のムライト焼結体は、結晶相がムライト単相からなる。ムライト焼結体が、結晶粒界に不純物とで形成されるガラス相、アルミナ相等の第2相を含有していると耐熱性及び耐久性が低下する。ムライト焼結体におけるガラス相、アルミナ相等の第2相は、次の方法で測定することができる。
(ガラス相)
焼結体表面を鏡面仕上げした試料を0〜5℃の1%HF水溶液に24時間浸漬した後、十分に洗浄、乾燥し、走査型電子顕微鏡でHF処理前後の試料を1000〜5000倍で観察する。HF処理後の試料では、ガラス相が存在していたところはHF処理によりガラス相の跡となりくさび状の空隙として観察される。観察した試料の面積をS、HF処理前の試料で観察された気孔及び空隙が占める面積をGBとし、HF処理後の試料で観察された気孔、空隙及びガラス相の跡が占める面積をGAとして、以下の式によりガラス相含有率を求める。
ガラス相含有率(%)=[(GA−GB)/S]×100
ガラス相は結晶粒界に形成されるが、高温下では軟化し、結晶粒界が滑りやすくなり、その結果、耐クリープ性の低下につながる。
(アルミナ相及びそれ以外の相)
ムライト焼結体がアルミナ相を含有しているか否かの同定は焼結体を指頭に感じないレベルまで粉砕し、粉砕した粉体を用いてX線回折により行う。X線回折条件はX線源がCuKα、出力40kV/40mA、発散スリットが1/2°、散乱スリットが1/2°、受光スリットが0.15mm、スキャンスピード:0.5°/min、走査軸が2θ/θ、モノクロ受光スリットが0.8mm、カウンタがシンチレーションカウンタ、及びモノクロメーターが自動モノクロメーターである。アルミナ相が定性された焼結体は、高温下での耐クリープ性は低負荷条件では大きな低下は見られないものの、負荷が大きくなると耐クリープ性の低下が見られる。これはムライト結晶粒子に比べて析出するアルミナ結晶粒子の大きさが小さいため、小さい結晶が高温特性の低下に大きく影響するためである。また、ある温度領域での長期間保持によりアルミナ結晶が析出してアルミナ相が増加し、特性劣化をきたしたり、室温まで冷却した際にムライト相とアルミナ相との熱膨張差により割れが発生したりする場合がある。アルミナ相の定量は得られた回折パターンを用いて以下の式により算出する。以下の式におけるIA(113)はアルミナ相(113)面の回折強度であり、IM(210)はムライト相(210)面の回折強度である。
アルミナ相量(容積%)=IA(113)/[IM(210)+IA(113)]×100
ムライト焼結体がガラス相及びアルミナ相以外の第2相を含有しているか否かの同定及び定量は、アルミナ相の場合と同様にX線回折により行う。X線回折によりアルミナ相以外の第2相が定性された場合は特性が長期間安定して維持できる温度域が低くなる。
(ムライト単相)
本発明においては、得られたX線回折パターンでムライト相以外の回折ピークが見られないことが必要である。ただし、本発明のムライト焼結体においては、アルミナ相を3容積%まで含有することが許容できる。好ましくは、アルミナ相の量は2容積%までである。本発明のムライト焼結体においては、ガラス相及びアルミナ相以外の第2相は検出量限界値以下である。また、本発明のムライト焼結体においては、ガラス相を3%まで含有することが許容できる。好ましくは、ガラス相は2%までである。上記のとおり、本発明のムライト焼結体におけるムライト単相とは、第2相としてはアルミナ相とガラス相であり、ガラス相含有率が3%以下であり、アルミナ相含有率が3容積%以下であり、それ以外の第2相は検出量限界値以下であるムライト相であることをいう。
本発明のムライト焼結体の理論密度に対する相対密度は95%以上である。本発明における相対密度は、JIS1634に準じて測定することができる。相対密度が低い場合は焼結体内部に存在する気孔が多くなることになり、相対密度が95%未満の場合は、高温下であっても低負荷条件では耐クリープ性の低下に大きな影響を与えないが、高負荷になると気孔が基点となってクラックの進展が顕著になり、短い時間で破損しやすくなる。相対密度の上限は特に制限されないが、実際に製造する観点から相対密度の上限は98%程度である。本発明のムライト焼結体の相対密度は95〜98%が好ましく、95〜97%がより好ましい。
本発明のムライト焼結体の平均結晶粒径は7〜15μmである。平均結晶粒径が7μm未満の場合は耐クリープ性及び耐食性の低下をきたし、15μmを越える場合は強度が低くなり、耐熱衝撃性の低下につながる。耐クリープ性及び耐熱衝撃性をより向上させる観点から、本発明のムライト焼結体の平均結晶粒径は8〜13μmが好ましい。本発明においては、焼結体を鏡面仕上げして熱エッチングしたサンプルを電子顕微鏡により観察して、一つの結晶粒子の長軸と短軸を測定し、この平均値を各結晶粒子の粒径とする。本発明における平均結晶粒径は、上記のとおり測定した任意の100個の結晶粒子の粒径の平均値である。
本発明のムライト焼結体における粒径が6μm以下の結晶粒子の含有率は20%以下である。本発明における6μm以下の結晶粒子の含有率とは、平均結晶粒径を算出するために測定した100個の結晶粒子における、粒径が6μm以下の結晶粒子数の割合(6μm以下の結晶粒子の数/100)を%で表したものである。結晶粒径は耐クリープ性に大きく影響を与え、平均結晶粒径が本発明の要件を満たしていても、小さい結晶粒子の含有率が高くなると小さい結晶粒子の影響を受けやすくなり、耐クリープ性の低下をきたす。6μm以下の結晶粒子の含有率が20%を超えると、耐クリープ性が低下する。耐クリープ性をより向上させる観点から、本発明のムライト焼結体における6μm以下の結晶粒子の含有率は15%以下が好ましい。
本発明のムライト焼結体は、1650℃、3MPaで5時間保持する負荷応力下でのたわみ量が5mm以下であり、3mm以下が好ましい。本発明におけるムライト焼結体のたわみ量は、ムライト焼結体を5×2×150mmに加工し、上スパンが31.3mm、下スパンが100mmの4点曲げで3MPaの応力で1650℃、5時間保持後のサンプルの下スパン50mmの位置で測定されるたわみ量である。
得られた焼結体を耐クリープ性の評価用サンプルとして5×2×150mmの短冊状に切断・加工した。耐クリープ性は、上スパンが31.3mm、下スパンが100mmの4点曲げにより1650℃、負荷荷重(P)を3MPaとして電気炉内で5時間保持し、室温まで冷却後のたわみ量(δmm)により評価した。評価用サンプルは、電気炉内で室温から1650℃まで昇温速度100℃/hで昇温し、5時間保持後、電気炉から取り出して室温まで自然冷却した。その結果を表1に示す。
(耐熱衝撃の評価)
得られた焼結体を耐熱衝撃テスト用サンプルとして10×10×50mmの角棒に加工し、耐熱衝撃テストをおこなった。テスト方法は、1450℃に加熱している電気炉の中へサンプルを投入し、1時間保持後、即座に炉外へ取り出す操作を3回おこなったときのクラック発生の有無で評価した。その結果を表1に示す。
Claims (2)
- 以下の要件(1)〜(6)を満たすムライト焼結体。
(1)質量比で、Al2O3:SiO2が73:27〜77:23
(2)ムライト単相からなり、前記ムライト単相は、第2相としてはアルミナ相とガラス相であり、ガラス相含有率が3%以下であり、アルミナ相含有率が3容積%以下であり、それ以外の第2相は検出量限界値以下である
(3)理論密度に対する相対密度が95%以上
(4)平均結晶粒径が7〜15μm
(5)6μm以下の結晶粒子の含有率が20%以下
(6)1650℃、3MPaの負荷応力下で5時間保持後のたわみ量が5mm以下 - 以下の要件(a)〜(c)を満たすムライト粉体を成形し、大気中1600〜1780℃で焼成するムライト焼結体の製造方法。
(a)質量比で、Al2O3:SiO2が73:27〜77:23
(b)前記ムライト粉体におけるAl2O3及びSiO2の合計量が99.9質量%以上
(c)比表面積が8〜15m2/g
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Title |
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大西宏司: "高性能焼成炉用ムライトの開発と製品化", 粉体および粉末冶金, vol. 67, no. 4, JPN6021034413, April 2020 (2020-04-01), JP, pages 191 - 199, ISSN: 0004586809 * |
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