以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、インジェクタ駆動システム1の構成を示す概略図である。インジェクタ駆動システム1は、インジェクタ10と、ECU(Engine Control Unit)20と、オルタネータ50と、バッテリ52とを有する。インジェクタ駆動システム1は、車両に搭載され、インジェクタ10から燃料をエンジンの燃焼室に噴射させるシステムである。
ECU20は、インジェクタ駆動回路30と、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと称する)40とを有する。マイコン40は、不図示のROMに記憶されたプログラムを実行することでインジェクタ駆動システム1の各部を制御する。インジェクタ駆動回路30は、マイコン40の制御の下、インジェクタ10を駆動するインジェクタ駆動電圧を出力する。
オルタネータ50は、エンジンのクランクシャフトに接続され、クランクシャフトの回転を動力源として利用して交流電力を発生し、交流電力を直流電力に変換してECU20およびバッテリ52に出力する。オルタネータ50には、マイコン40と通信を行うコントローラ(図示略)が含まれている。このコントローラは、オルタネータ50の出力電圧である直流の発電電圧が、マイコン40からの発電電圧指示に示される発電電圧になるように制御する。
バッテリ52の負極は、接地されている。バッテリ52の正極は、オルタネータ50の出力端に接続されている。バッテリ52の正極とオルタネータ50の出力端との共通ノードN1は、マイコン40およびインジェクタ駆動回路30に接続されている。バッテリ52およびオルタネータ50は、マイコン40およびインジェクタ駆動回路30に電力を供給する。オルタネータ50は、バッテリ52の充電率(SOC:State Of Charge)が低下した場合、バッテリ52にも電力を供給してバッテリ52を充電する。
インジェクタ10は、本体部11と、ソレノイド12と、プランジャロッド13と、スプリング14とを有する。
本体部11は、内部に空間を有する略筒状に形成されている。本体部11の先端には、本体部11の内外の空間を連通させる噴射口15が設けられている。インジェクタ10は、噴射口15をエンジンの燃焼室に向けて配される。略棒状のプランジャロッド13は、本体部11内に収容されている。スプリング14は、プランジャロッド13の後端に設けられている。本体部11内には、燃料ギャラリ(図示略)から高圧の燃料が供給される。プランジャロッド13の先端は、スプリング14の付勢力および燃料の圧力によって噴射口15に押し付けられ、噴射口15を本体部11の内側から塞ぐ。
ソレノイド12は、プランジャロッド13の後端付近に設けられている。ソレノイド12には、インジェクタ駆動電圧が印加される。ソレノイド12は、インジェクタ駆動電圧に従った電流が流れると磁力を発生し(励磁し)、プランジャロッド13を吸引する。ソレノイド12の吸引力により、プランジャロッド13は、スプリング14の付勢力および燃料の圧力に抗して持ち上げられ(リフトされ)、プランジャロッド13の先端が、噴射口15から離れる。これにより、噴射口15が開弁し、噴射口15から燃料が噴射される。
図2は、インジェクタ駆動回路30の構成を示す回路図である。インジェクタ駆動回路30は、昇圧回路32と、第1スイッチ34と、第2スイッチ35と、抵抗36と、電流検出回路37とを有する。
昇圧回路32の入力端は、バッテリ52の正極とオルタネータ50の出力端との共通ノードN1に接続されている。昇圧回路32には、この共通ノードN1の電圧VBが与えられる。昇圧回路32は、電圧VBを昇圧し、得られた昇圧電圧VHを出力する。昇圧回路32は、例えば、インダクタ、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、ダイオードおよびコンデンサから構成された昇圧チョッパである。昇圧回路32は、MOSFETがオン状態のときにインダクタに蓄えたエネルギーを、MOSFETがオフ状態のときに放出することで電圧VBを昇圧する。
インジェクタ駆動回路30内において、昇圧回路32の出力端からインジェクタ駆動回路30の出力端N3に至る途中には、抵抗36と第1スイッチ34とが直列に挿入されている。インジェクタ駆動回路30の出力端N3は、インジェクタ10のソレノイド12に接続されている。
抵抗36の両端間には、昇圧回路32の出力電流を検出する電流検出回路37が接続されている。電流検出回路37は、抵抗36の両端間の電圧を測定し、その測定結果と抵抗36の抵抗値とから、抵抗36に流れる電流値を算出する。電流検出回路37は、算出した電流値を昇圧回路32の出力電流の検出結果としてマイコン40に送出する。
マイコン40は、電流検出回路37の検出結果に応じて昇圧回路32の故障を判断する。ここで、昇圧回路32(例えば、昇圧回路32を構成するMOSFET)に故障が発生した場合、昇圧回路32の昇圧動作が正常に行われず、昇圧回路32の出力電流値は、正常時の出力電流値とは異なる電流値(例えば、正常時の出力電流値よりも低い電流値)となる。マイコン40は、電流検出回路37の検出結果を所定の閾値と比較し、比較結果が当該所定の閾値以下の場合、昇圧回路32に故障があると判断する。なお、電流検出回路37の検出結果がECU20のサブマイコン(図示略)に送出され、サブマイコンが所定の閾値との比較および故障の判断を行い、故障の判断結果を示すフラグ情報がマイコン40に送出されるようにしてもよい。
第1スイッチ34は、例えば、MOSFETである。第1スイッチ34の主端子の一方(例えば、ドレイン)は、抵抗36に接続されており、他方(例えば、ソース)は、インジェクタ駆動回路30の出力端N3に接続されている。第1スイッチ34の制御端子(ゲート)には、当該第1スイッチ34の主端子間をオンおよびオフさせる制御信号が与えられる。
第2スイッチ35は、例えば、MOSFETである。第2スイッチ35の主端子の一方(例えば、ドレイン)は、共通ノードN1に接続されており、他方(例えば、ソース)は、インジェクタ駆動回路30の出力端N3に接続されている。第2スイッチ35の制御端子(ゲート)には、当該第2スイッチ35の主端子間をオンおよびオフさせる制御信号が与えられる。
マイコン40は、プログラムを実行することで、エンジンの各燃焼室に供給する燃料の目標噴射量を算出し、目標噴射量およびクランクシャフトのクランク角に基づいて、インジェクタ10から噴射させる燃料の噴射開始時期および噴射期間を算出する。マイコン40は、噴射開始時期および噴射期間に基づいて第1スイッチ34および第2スイッチ35の各制御端子に制御信号を与える。なお、クランクシャフトのクランク角は、クランク角センサ(図示略)によって検出される。
また、マイコン40は、バッテリ52のSOCおよび車載電装機器の動作状況に応じて、オルタネータ50の発電電圧のレベルを、制御可能な範囲である制御範囲内で切り替え制御する。オルタネータ50の発電電圧のレベルは、制御範囲内において複数設けられており、具体的には、制御範囲内においてオルタネータ50の発電電圧が最も高いハイレベルと、発電電圧がハイレベルより低いミドルレベルと、発電電圧がミドルレベルより低いローレベルとがある。例えば、マイコン40は、バッテリ52のSOCが所定値(例えば、94%)以上であり、かつ、車載電装機器が動作していない場合、ローレベルの発電電圧を示す発電電圧指示をオルタネータ50に出力する。マイコン40は、バッテリ52のSOCが所定値(例えば、94%)以上であり、かつ、特定の車載電装機器(例えば、ブロア)が動作している場合、ミドルレベルの発電電圧を示す発電電圧指示をオルタネータ50に出力する。マイコン40は、バッテリ52のSOCが所定値(例えば、94%)未満である場合、または、バッテリ52のSOCが所定値(例えば、94%)以上であり、かつ、特定の車載電装機器以外の車載電装機器が動作している場合、ハイレベルの発電電圧を示す発電電圧指示をオルタネータ50に出力する。これにより、オルタネータ50は、発電電圧指示に示される発電電圧で発電する。
マイコン40は、昇圧回路32に故障有りと判断した場合、制御範囲内における最も高い電圧(具体的には、上述のハイレベルの発電電圧)を示す発電電圧指示に固定してオルタネータ50に出力し、オルタネータ50の発電電圧を当該電圧(ハイレベルの発電電圧)に固定する。
次に、インジェクタ駆動システム1の動作を説明する。まず、昇圧回路32に故障がない場合のマイコン40の制御(通常制御)を説明する。図3は、昇圧回路32に故障がない場合のインジェクタ駆動電圧の一例を示す概略図である。図3では、1回の噴射についてのインジェクタ駆動電圧が示されている。
燃料の噴射開始前、第1スイッチ34および第2スイッチ35は、それぞれオフ状態となっている。燃料の噴射開始時期になると、マイコン40は、まず、第1スイッチ34をオンさせる制御信号をその制御端子に与える。これにより、第1スイッチ34がオンし、ソレノイド12には、昇圧回路32によって昇圧された昇圧電圧VHがインジェクタ駆動電圧として印加される。昇圧電圧VHが印加されると、ソレノイド12は、プランジャロッド13を吸引してリフトし、噴射口15を開弁させる。
噴射開始時期から所定期間の経過後、マイコン40は、第1スイッチ34をオフさせる制御信号をその制御端子に与え、以後、第1スイッチ34をオフ状態に維持させる。第1スイッチ34のオフ開始から所定期間の経過後、マイコン40は、第2スイッチ35のオンおよびオフを所定間隔で繰り返し行わせる制御信号をその制御端子に与える。これにより、第2スイッチ35がオンおよびオフを繰り返し、ソレノイド12には、共通ノードN1の電圧VBがインジェクタ駆動電圧として印加される。電圧VBが印加されると、ソレノイド12は、プランジャロッド13を吸引した状態を維持し、噴射口15を開弁した状態で維持させる。
噴射期間の終了タイミングになると、マイコン40は、第2スイッチ35をオフ状態に維持させる制御信号をその制御端子に与える。第2スイッチ35がオフ状態に維持されると、ソレノイド12は、プランジャロッド13の吸引を維持できず、噴射口15は、プランジャロッド13によって閉じられる。これにより、通常制御における1回の噴射が終了する。
図4は、昇圧回路32の故障に関してマイコン40が実行する処理の流れを示すフローチャートである。マイコン40は、通常制御中において、昇圧回路32に故障があるか否かを判断する(ステップS100)。具体的には、マイコン40は、噴射開始時期においてステップS100の処理を行い、噴射開始時期における電流検出回路37の検出結果に応じて昇圧回路32の故障を判断する。
昇圧回路32に故障がない場合(ステップS100におけるNO)、マイコン40は、上述の通常制御を維持する(ステップS102)。
一方、昇圧回路32に故障がある場合(ステップS100におけるYES)、マイコン40は、インジェクタ10の駆動を、通常制御に代えて、ステップS104以降の処理にて行う。
図5は、昇圧回路32に故障がある場合のインジェクタ駆動電圧の一例を示す概略図である。図5では、1回の噴射についてのインジェクタ駆動電圧が示されている。図4および図5を参照しつつ、昇圧回路32に故障がある場合の処理を説明する。
まず、マイコン40は、第1スイッチ34をオフ状態に維持させる制御信号を出力する。これにより、第1スイッチ34は、以後、オフ状態を維持する(ステップS104)。
次に、マイコン40は、オルタネータ50の発電電圧についての制御範囲内における最も高い電圧(図4のフローチャートでは、発電電圧highと表記する)を示す発電電圧指示をオルタネータ50に出力し、その発電電圧指示を維持する。これにより、オルタネータ50の発電電圧(換言すると、共通ノードN1の電圧VB)は、当該制御範囲内における最も高い電圧に固定される(ステップS106)。
次に、マイコン40は、第2スイッチ35をオンおよびオフさせる制御信号を出力する(ステップS108)。
より詳細に説明すると、マイコン40は、噴射開始時期において、まず、第2スイッチ35をオンさせる制御信号をその制御端子に与える。これにより、第2スイッチ35がオンし、共通ノードN1の電圧VBがインジェクタ駆動電圧としてソレノイド12に印加される。電圧VBが印加されると、ソレノイド12は、プランジャロッド13を吸引し、噴射口15を開弁させる。
噴射開始時期から所定期間の経過後、マイコン40は、第2スイッチ35をオフさせる制御信号をその制御端子に与える。このとき、噴射開始時期から第2スイッチ35を最初にオフさせるまでに要する所定期間は、通常制御における噴射開始時期から第1スイッチ34をオフさせるまでに要する所要期間よりも、長くなっていてもよい。
第2スイッチ35の最初のオフから所定時間の経過後、マイコン40は、第2スイッチ35のオンおよびオフを所定の間隔で繰り返し行わせる制御信号を第2スイッチ35の制御端子に与える。これにより、第2スイッチ35がオンおよびオフを繰り返し、ソレノイド12には、共通ノードN1の電圧VBがインジェクタ駆動電圧として印加される。こうして、噴射口15は、開弁した状態で維持される。
噴射期間の終了タイミングになると、マイコン40は、第2スイッチ35をオフ状態に維持させる制御信号をその制御端子に与える。これにより、噴射口15は、プランジャロッド13によって閉じられ、昇圧回路32に故障がある場合における1回の噴射が終了する。
マイコン40は、噴射毎に(具体的には、噴射開始時期になる毎に)、昇圧回路32の故障判断(ステップS100)以降の処理を行う。修理交換などによって昇圧回路32に故障がなくなると、ステップS100において昇圧回路32に故障がないと判断され、マイコン40は、通常制御に復帰する。
なお、マイコン40は、一度、昇圧回路32に故障があると判断した場合、故障判断結果を保持し、以後の噴射時において、昇圧回路32の故障判断(ステップS100)を省略してステップS104以降を行ってもよい。また、マイコン40は、一度、ステップS104およびステップS106の処理を経由した場合、昇圧回路32に故障がある旨の故障判断結果、第1スイッチ34のオフ状態およびオルタネータ50の発電電圧を制御範囲内における最も高い電圧に固定した状態を保持し、以後の噴射時において、ステップS100、S104、S106を省略してステップS108を行ってもよい。昇圧回路32に故障が生じた後に少なくともステップS100を省略する態様では、保持していた昇圧回路32の故障判断結果等を、昇圧回路32の修理交換時にクリアすればよい。また、エンジンを始動して、マイコン40は、エンジン始動時に昇圧回路32に故障があると判断した場合、そのドライビングサイクル中はステップS104以降の処理を行うようにしてもよい。
次に、インジェクタ駆動システム1の効果を、比較例を挙げて説明する。比較例として、昇圧回路32に故障有りと判断した場合、マイコン40が、バッテリのSOCおよび車載電装機器の動作状況に応じて、オルタネータ50の発電電圧をハイレベルの電圧V1、ミドルレベルの電圧V2およびローレベルの電圧V3のいずれかに切り替えるインジェクタ駆動システムを挙げる。図6は、この比較例のインジェクタ駆動システムにおいて、昇圧回路32が故障した場合のインジェクタ駆動電圧の一例を示す概略図である。
オルタネータ50の発電電圧がハイレベルの電圧V1の場合、ソレノイド12には、当該ハイレベルの電圧V1がインジェクタ駆動電圧として与えられる。同様に、オルタネータ50の発電電圧がミドルレベルの電圧V2の場合、ソレノイド12には、当該ミドルレベルの電圧V2がインジェクタ駆動電圧として与えられ、オルタネータ50の発電電圧がローレベルの電圧V3の場合、ソレノイド12には、当該ローレベルの電圧V3がインジェクタ駆動電圧として与えられる。
図7は、インジェクタ駆動電圧(電圧V1〜V3)と、インジェクタ10に供給される燃料の圧力(以下、燃圧という)と、プランジャロッド13のリフトの可否との関係を示す概略図である。なお、燃圧は、エンジン回転数やエンジン負荷によって変動する。
インジェクタ駆動電圧がハイレベルの電圧V1である場合、ソレノイド12は、燃圧F1以下の領域A1の燃圧の燃料がインジェクタ10に供給されると、その燃圧およびスプリング14の付勢力に抗してプランジャロッド13をリフトすることができる。一方、ソレノイド12は、燃圧F1を超える領域A2の燃圧の燃料がインジェクタ10に供給されると、その燃圧およびスプリング14の付勢力に抗してプランジャロッド13をリフトすることができない。
インジェクタ駆動電圧がミドルレベルの電圧V2である場合、ソレノイド12は、燃圧F1よりも低い燃圧F2以下の領域A1の燃圧の燃料がインジェクタ10に供給されると、その燃圧およびスプリング14の付勢力に抗してプランジャロッド13をリフトすることができる。一方、ソレノイド12は、燃圧F2を超える領域A2の燃圧の燃料がインジェクタ10に供給されると、その燃圧およびスプリング14の付勢力に抗してプランジャロッド13をリフトすることができない。
インジェクタ駆動電圧がローレベルの電圧V3である場合、ソレノイド12は、燃圧F2よりも低い燃圧F3以下の領域A1の燃圧の燃料がインジェクタ10に供給されると、その燃圧およびスプリング14の付勢力に抗してプランジャロッド13をリフトすることができる。一方、ソレノイド12は、燃圧F3を超える領域A2の燃圧の燃料がインジェクタ10に供給されると、その燃圧およびスプリング14の付勢力に抗してプランジャロッド13をリフトすることができない。
すなわち、この比較例のインジェクタ駆動システムは、昇圧回路32が故障した際に、燃圧が高く、かつ、インジェクタ駆動電圧が低い状態(例えば、ローレベルの電圧V3)に制御されていると、プランジャロッド13のリフトができず、インジェクタ10から燃料を噴射することができないおそれがある。
一方、本実施形態のインジェクタ駆動システム1のマイコン40は、昇圧回路32に故障有りと判断した場合、オルタネータ50の発電電圧を制御範囲内における最も高い電圧(例えば、比較例の電圧V1〜V3のうちのハイレベルの電圧V1)に固定する。このため、インジェクタ駆動システム1は、制御範囲内における最も高い電圧以外の電圧(例えば、ミドルレベルの電圧V2およびローレベルの電圧V3)でインジェクタ10を駆動した場合に比べ、プランジャロッド13をリフトすることができなくなることを低減することができる。
具体的には、インジェクタ駆動システム1は、ミドルレベルの電圧V2でインジェクタ10を駆動した場合に比べ、燃圧が燃圧F1と燃圧F2との間であったとしても、プランジャロッド13をリフトして燃料を噴射することができる。同様に、インジェクタ駆動システム1は、ローレベルの電圧V3でインジェクタ10を駆動した場合に比べ、燃圧が燃圧F1と燃圧F3の間であったとしても、プランジャロッド13をリフトして燃料を噴射することができる。
従って、インジェクタ駆動システム1によれば、インジェクタ駆動回路30の昇圧回路32が故障した場合のインジェクタ駆動の安定性を向上させることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
インジェクタ駆動システム1は、昇圧回路32の故障を車両の搭乗者に知らせる報知部を有してもよい。この態様において、マイコン40は、昇圧回路32に故障有りと判断した場合、その旨の情報を報知部に出力すればよい。
インジェクタ駆動システム1のマイコン40は、昇圧回路32に故障有りと判断した場合、燃圧を低下させる燃圧制御を行ってもよい。燃圧が下がれば、プランジャロッド13のリフトができなくなるのを低減することができるからである。ここで、燃圧制御を行ったとしても、燃圧が高い状態から下がるには、時間がかかる。インジェクタ駆動システム1は、昇圧回路32に故障有りと判断した直後にオルタネータ50の発電電圧を制御範囲内における最も高い電圧に固定するため、昇圧回路32に故障有りと判断した直後から、燃圧制御によって燃圧が低い状態に移るまでの間も、プランジャロッド13のリフトができなくなることを低減することができる。
実施形態のマイコン40は、昇圧回路32に故障有と判断した場合、オルタネータ50の発電電圧を制御範囲内における最も高い電圧に固定していた。しかし、マイコン40は、制御範囲内における最も高い電圧に限らず、制御範囲内における所定の電圧に固定してもよい。例えば、マイコン40は、オルタネータ50の発電電圧をミドルレベルの電圧に固定しても良い。この態様では、オルタネータ50の発電電圧がローレベルに切り替わる場合に比べ、インジェクタ駆動を安定化させることができる。ただし、制御範囲内における最も高い電圧に固定する態様が、最も効果が高く最も好ましい。