<第1実施形態>
(1)電力変換装置の構成
図1には、第1実施形態に係る電力変換装置1の構成が示されている。電力変換装置1は、交流電源Gから印加される交流電源電圧Vsを直流電圧Vdに変換し、この直流電圧Vdを負荷H(インバータ、モータ等)に出力するコンバータである。電力変換装置1は、その入力側が交流電源Gに接続され、出力側が負荷Hに接続されている。具体的には、第1入力端子IT1と第2入力端子IT2が交流電源Gに接続されている。また、第1出力端子OT1と第2出力端子OT2が負荷Hに接続されている。
図1に示されているように、電力変換装置1は、ブリッジ整流回路10と、インダクタL1と、コンデンサC1と、電流検出部11と、交流電圧検出部12と、直流電圧検出部13と、負荷検出部14と、シャント抵抗R1と、コントローラ15と、を備えている。
ブリッジ整流回路10は、スイッチング要素Q1と、スイッチング要素Q2と、スイッチング要素Q3と、スイッチング要素Q4と、を備えている。ブリッジ整流回路10は、その入力側が交流電源Gに接続され、出力側が負荷Hに接続されている。また、ブリッジ整流回路10のスイッチング要素Q1〜Q4は、図1に示すように、ブリッジを構成している。
スイッチング要素Q1〜Q4は、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)であり、コントローラ15によってオン・オフが制御される。なお、スイッチング要素Q1〜Q4としてMOSFETを用いることで、スイッチング損失を低減できるとともに、スイッチングを高速で行えるという利点がある。
また、スイッチング要素Q1には、並列にダイオード要素D1が接続されている。スイッチング要素Q1に例えばMOSFETが用いられる場合には、MOSFETは、その内部に寄生ダイオードとしてのダイオード要素D1を有している。寄生ダイオードであるダイオード要素D1は、スイッチング要素Q1であるMOSFETのソースとドレインとの間に存在するpn接合の部分である。MOSFETは、ゲート電圧に応じてスイッチ動作を行うチャネル部と寄生ダイオード部からなる一つの素子であるため、後の説明においては「寄生ダイオード部」と対を成すチャネル部について、説明の簡単化のため「スイッチ部」または「スイッチ部(チャネル)」と表現する場合がある。
なお、スイッチング要素Q1であるMOSFETのスイッチ部(チャネル)の飽和電圧(オン状態におけるドレイン・ソース間電圧)は、ダイオード要素D1の寄生ダイオードの順方向の電圧降下よりも低いことが好ましい。これによって、ダイオード要素D1に電流を流したときの電圧降下よりも、スイッチング要素Q1に電流を流したときの電圧降下の方が小さくなり、ひいては、導通損失を低減できるからである。言い換えると、スイッチング要素Q1の飽和電圧がダイオード要素D1の順方向の電圧降下よりも低くなるように構成するということは、オフ状態のスイッチング要素Q1においてダイオード要素D1に電流を流すよりも、オン状態のスイッチング要素Q1に電流を流す方が、導通損失が小さくなるように構成している。なお、他のスイッチング要素Q2〜Q4についても同様のことがいえる。
図1に示されているように、ブリッジ整流回路10は、スイッチング要素Q1,Q2が直列接続されてなる第1レグJ1と、スイッチング要素Q3,Q4が直列接続されてなる第2レグJ2と、が並列接続された構成になっている。
第1レグJ1において、スイッチング要素Q1であるMOSFETのソースと、スイッチング要素Q2であるMOSFETのドレインとが接続され、それらの接続点N1は、配線haとインダクタL1を介して交流電源Gに接続されている。なお、インダクタL1の一方端が第1入力端子IT1に接続され、インダクタL1の他方端が配線haの一端に接続されている。配線haの他端は、接続点N1に接続されている。そして、第1入力端子IT1に交流電源Gの一端が接続されている。
第2レグJ2において、スイッチング要素Q3であるMOSFETのソースと、スイッチング要素Q4であるMOSFETのドレインとが接続され、それらの接続点N2は、配線hbを介して交流電源Gに接続されている。なお、配線hbは、その一端が第2入力端子IT2に接続され、他端が接続点N2に接続されている。そして、第2入力端子IT2に交流電源Gの他端が接続されている。
スイッチング要素Q1のドレインとスイッチング要素Q3のドレインとが互いに接続され、それらの接続点N3は、配線hcを介して負荷Hに接続されている。なお、配線hcは、その一端が第1出力端子OT1に接続され、他端が接続点N3に接続されている。そして、第1出力端子OT1に負荷Hの一端が接続されている。
スイッチング要素Q2のソースとスイッチング要素Q4のソースとが互いに接続され、それらの接続点N4は、配線hdを介して負荷Hに接続されている。なお、配線hdは、その一端が第2出力端子OT2に接続され、他端が接続点N4に接続されている。そして、第2出力端子OT2に負荷Hの他端が接続されている。
ここで、インダクタL1に接続されている第1レグJ1を構成するスイッチング要素Q1,Q2は、例えば、SiC−MOSFETである。SiC−MOSFETは、素子を構成する半導体の材料としてワイドバンドギャップ半導体であるSiC(炭化珪素)を用いて形成される。言い換えると、スイッチング要素Q1,Q2のバンドギャップが、SiC(ワイドバンドギャップ半導体)によって決まる構造を有している。SiC−MOSFETは、半導体材料としてSiを用いて作られた従来のMOSFETに比べて、「高耐圧」、「低オン抵抗」、「高速」といった長所を持ち、寄生ダイオードの逆回復特性が良い反面、バンドギャップが広いことから、寄生ダイオードの順方向電圧が非常に大きくなることが知られている。第2レグJ2を構成するスイッチング要素Q3,Q4は、例えば、Siを用いたMOSFETである。言い換えると、スイッチング要素Q3,Q4はシリコン半導体によってバンドギャップが決まる構造を有している。Si製MOSFETの寄生ダイオードの順方向電圧は、SiC−MOSFETの寄生ダイオードの順方向電圧よりも低い。言い換えると、SiC−MOSFETの寄生ダイオード要素D1,D2は、Si製MOSFETの寄生ダイオードD3,D4よりも順方向電圧が大きい。
インダクタL1は、交流電源Gから供給される電力をエネルギとして蓄え、このエネルギを放出することで昇圧や力率の改善を行うものである。インダクタL1は、交流電源Gとブリッジ整流回路10とを接続する配線haに挿入されている。言い換えると、インダクタL1は、交流電源Gとブリッジ整流回路10との間に直列に接続されている。
コンデンサC1は、ブリッジ整流回路10から印加される電圧を平滑化して直流電圧にするものであり、配線hc,hdを介してブリッジ整流回路10の出力側に接続されている。コンデンサC1に電解コンデンサを用いる場合には、コンデンサC1の正極が第1出力端子OT1に接続され、負極が第2出力端子OT2に接続される。言い換えると、コンデンサC1である電解コンデンサは、その正極が配線hcを介してスイッチング要素Q1,Q3のドレインに接続され、負極が配線hdを介してスイッチング要素Q2,Q4のソースに接続されている。ここでは、コンデンサC1に電解コンデンサを用いる場合を例に挙げて説明しているが、コンデンサC1として、フィルムコンデンサなどの他のコンデンサを用いることができる。
電流検出部11は、ブリッジ整流回路10に流れる電流を実効値として検出するものであり、配線hbに設けられている。電流検出部11として、例えば、カレントトランスを用いることができる。
交流電圧検出部12は、交流電源Gから印加される交流電源電圧Vsを検出するものであり、配線ha,hbに接続されている。
直流電圧検出部13は、コンデンサC1の直流電圧Vdを検出するものであり、その正(プラス)側が配線hcに接続され、負(マイナス)側が配線hdに接続されている。なお、直流電圧検出部13の検出値は、負荷Hに印加される電圧が所定の目標値に達しているか否かの判定に用いられる。
負荷検出部14は、負荷Hに供給される電流を検出するものであり、この負荷Hに設置されている。負荷検出部14として、例えば、シャント抵抗により検出された電流値から負荷を求めることができる。なお、負荷Hがモータである場合、負荷検出部14によってモータの回転速度を検出し、この回転速度から負荷を推定するようにしてもよい。あるいは、先に示した電流検出部11の検出値から負荷を推定してもよい。
シャント抵抗R1は、配線hdを介して回路を流れる電流の瞬時値(瞬時電流)を検出するものであり、この配線hdに設けられている。具体的には、接続点N4とコンデンサC1の負極の間に、シャント抵抗R1が直列に接続されている。
コントローラ15は、例えば、マイクロコンピュータ(Microcomputer:図示せず)であり、ROM(Read Only Memory)に記憶されたプログラムを読み出してRAM(Random Access Memory)に展開し、CPU(Central Processing Unit)が各種処理を実行するようになっている。コントローラ15は、スイッチング要素Q1〜Q4のオン・オフを制御する機能を有している。
図1に示されているように、コントローラ15は、ゼロクロス判定部15aと、昇圧比制御部15bと、ゲイン制御部15cと、コンバータ制御部15dとを備えている。
ゼロクロス判定部15aは、交流電圧検出部12の検出値に基づいて、交流電源電圧Vsの正負が切り替わったか(換言すれば、ゼロクロスに達したか)否かを判定する機能を有している。例えば、ゼロクロス判定部15aは、交流電源電圧Vsが正になる期間中にはコンバータ制御部15dに‘1’の信号を出力し、交流電源電圧Vsが負になる期間中にはコンバータ制御部15dに‘0’の信号を出力する。後の説明で、この‘1’‘0’で生成される信号をゼロクロス信号と呼ぶが、言い換えればこれは電源電圧の極性に同期した信号である。
昇圧比制御部15bは、負荷検出部14の検出値に基づいて、直流電圧Vdの昇圧比を設定し、その昇圧比をゲイン制御部15c及びコンバータ制御部15dに出力する機能を有している。
ゲイン制御部15cは、電流検出部11によって検出される回路電流isの実効値と、直流電圧Vdの昇圧比とに基づいて、電流制御ゲインを設定する機能を有している。
コンバータ制御部15dは、電流検出部11、直流電圧検出部13、シャント抵抗R1、ゼロクロス判定部15a、昇圧比制御部15b、及びゲイン制御部15cから入力される情報に基づいて、スイッチング要素Q1〜Q4のオン・オフを制御する。なお、コンバータ制御部15dが実行する処理については後述する。
(2)電力変換装置の制御モード
次に、負荷(例えば、負荷検出部14の検出値や電流検出部11の検出値)の大きさに基づいて切り替えられる制御モードについて説明する。制御モードには、「ダイオード整流制御」、「同期整流制御」、「部分スイッチング制御」、及び「高速スイッチング制御」が含まれる。
(2−1)ダイオード整流制御
ダイオード整流制御は、4つのダイオード要素D1〜D4を用いて全波整流を行う制御
モードである。ダイオード整流制御は、例えば、負荷の大きさが比較的小さいときに実行
されるが、これに限定されるものではない。
図2(a)〜図2(f)は、それぞれ、ダイオード整流制御における交流電源電圧vs、回路電流is、及びスイッチング要素Q1〜Q4の駆動パルスの時間的変化を示す説明図である。なお、図2(a)には、交流電源電圧vs(瞬時値)の波形が示されており、図2(b)には、回路電流is(瞬時値)の波形が示されている。図2(c)、図2(d)、図2(e)及び図2(f)には、コントローラ15のコンバータ制御部15dからスイッチング要素Q1〜Q4に出力される駆動パルスが示されている。
図2(c)乃至図2(f)に示されているように、コンバータ制御部15dは、スイッチング要素Q1〜Q4の全てをオフ状態で維持することで、次に説明するように、ダイオード要素D1〜D4を介して回路電流isを流す。
図3には、ダイオード整流制御において、交流電源電圧vsが正になる半サイクルのときの回路電流isの流れが示されている。交流電源電圧vsが正になる半サイクルの期間では、図3の破線矢印で示されているように、交流電源G→インダクタL1→ダイオード要素D1→コンデンサC1→シャント抵抗R1→ダイオード要素D4→交流電源Gの順に回路電流isが流れる。
また、交流電源電圧vsが負になる半サイクルの期間では、図示はしないが、交流電源G→ダイオード要素D3→コンデンサC1→シャント抵抗R1→ダイオード要素D2→インダクタL1→交流電源Gの順に回路電流isが流れる。なお、回路電流isの波形は、図2(b)に示されている通りである。
このようなダイオード整流制御を低負荷時に行うことで、スイッチング要素Q1〜Q4においてスイッチング損失は発生せず、ダイオード要素でのみ損失が発生するため、損失を低減できる。
なお上記においては、簡単のため電流はコンデンサC1にのみ流れるものとして説明したが、実際にはこの時コンデンサC1から負荷に対して電流が供給されている。これは以降の説明においても、同様である。
(2−2)同期整流制御
同期整流制御は、コンデンサC1を介した電流経路に含まれるスイッチング要素のうち、インダクタL1に接続されている第1スイッチング要素を交流電源電圧vsの極性に同期させてオン状態にし、インダクタL1に接続されていない第2スイッチング要素をブリッジ整流回路10に電流が流れている期間の少なくとも一部でオン状態にし、電流経路に含まれないスイッチング要素をオフ状態で維持する制御モードである。
図4(a)〜図4(f)には、それぞれ、同期整流制御における交流電源電圧vs、回路電流is、及びスイッチング要素Q1〜Q4の駆動パルスの時間的変化が示されている。
同期整流制御においては、交流電源電圧vsの極性に同期させてスイッチング要素Q2,Q1のオン・オフを切り替えるとともに(図4(d)及び図4(f)参照)、回路電流isが流れているか否かによってスイッチング要素Q4,Q3のオン・オフを切り替えるようにする(図4(c)及び図4(e)参照)のが理想的である。なお、同期整流制御は、例えば、負荷(電流検出部11の検出値等)が比較的小さいときに実行されるが、これに限定されるものではない。
なお、交流電源電圧vsが正になる半サイクルの期間において、第1電流経路は、図5の破線矢印で示されている経路である。同期整流制御において、第1電流経路は、交流電源G→インダクタL1→スイッチング要素Q1→コンデンサC1→シャント抵抗R1→スイッチング要素Q4→交流電源Gの順に回路電流isが流れる経路である。また、第2電流経路は、交流電源G→スイッチング要素Q3→コンデンサC1→シャント抵抗R1→スイッチング要素Q2→インダクタL1→交流電源Gの順に回路電流isが流れる経路である。
第1電流経路に電流を流すときには、インダクタL1に接続されているスイッチング要素Q1(第1スイッチング要素)を交流電源電圧vsの極性に同期させてオン状態にし、第1電流経路に含まれるスイッチング要素Q4(第2スイッチング要素)をブリッジ整流回路10に電流が流れている期間の少なくとも一部でオン状態にし、電流経路に含まれないスイッチング要素Q2,Q3をオフ状態で維持する。
第2電流経路に電流を流すときには、インダクタL1に接続されているスイッチング要素Q2(第3スイッチング要素)を交流電源電圧vsの極性に同期させてオン状態にし、第2電流経路に含まれるスイッチング要素Q3(第4スイッチング要素)をブリッジ整流回路10に電流が流れている期間の少なくとも一部でオン状態にし、電流経路に含まれないスイッチング要素Q1,Q4をオフ状態で維持する。
同期整流制御においてコンバータ制御部15dは、シャント抵抗R1によって検出される回路電流isに同期させて、スイッチング要素Q4,Q3のオン・オフを切り替える。交流電源電圧vsが正になる半サイクルの期間について説明すると(図4(a)参照)、コンバータ制御部15dは、回路電流isが流れているときには(図4(b)参照)、スイッチング要素Q4をオン状態とし(図4(c)参照)、回路電流isが流れていないときには、スイッチング要素Q4をオフ状態にする。なお、交流電源電圧vsが正になる半サイクルの期間において、スイッチング要素Q3はオフ状態で維持される(図4(e)参照)。
また、コンバータ制御部15dは、交流電源電圧vsの極性の変化に同期させて、スイッチング要素Q2,Q1のオン・オフを切り替える。例えば、交流電源電圧vsが正になる半サイクルの期間では(図4(a)参照)、コンバータ制御部15dは、スイッチング要素Q2をオフ状態にし(図4(d)参照)、スイッチング要素Q1をオン状態にする(図4(f)参照)。なお、交流電源電圧vsの極性は、ゼロクロス判定部15aによって判定(特定)される。
このように、スイッチング要素Q4,Q3は、回路電流isが流れているか否かによってオン・オフが切り替えられ、スイッチング要素Q2,Q1は、交流電源電圧vsの極性に同期させてオン・オフが切り替えられる。これは、次に説明するように、コンデンサC1から交流電源G側への逆流電流を防ぐためである。
仮に、交流電源電圧vsが正になる半サイクルの期間において、直流電圧Vdが交流電源電圧vs(ここでは厳密にはブリッジ整流回路の電源側の接続点N1・N2間の電圧を指す)よりも高いときに、回路電流isが流れていない状態でスイッチング要素Q1,Q4を両方ともオン状態にすると、コンデンサC1から交流電源G側に逆流電流が流れてしまう。
これに対して本実施形態では、前記した状態においてスイッチング要素Q4をオフにするため(図4(c)参照)、ダイオード要素D4も導通していない状態であることから、逆流電流が流れることが防止できる。また、例えば、交流電源電圧vsが正になる半サイクルでは、スイッチング要素Q2がオフ状態で維持されるため(図4(d)参照)、スイッチング要素Q2,Q1を介して逆流電流がループすることもない。
なお、交流電源電圧vsが直流電圧Vdよりも低くなった直後の所定時間dt(図4(b)参照)では、インダクタL1のインダクタンスによって回路電流isが流れ続ける。なおこの時、ブリッジ整流回路の電源側の接続点N1と接続点N2の間の電圧は、インダクタL1の両端間の電位差により直流電圧Vdよりも高くなっている。
所定時間dtは、以下の(式1)で表される。
本実施形態では、図4(b)、図4(c)、図4(e)に示されているように、交流電源電圧vsの絶対値がコンデンサC1の電圧(直流電圧Vd)よりも小さくなってからも所定時間dtは、コンデンサC1の正極に接続されているスイッチング要素Q1(交流電源電圧vsが負の半サイクルでは、スイッチング要素Q3)をオン状態で維持するようにしている。これによって、所定時間dtにおいてもスイッチング要素Q1のスイッチ部(チャネル)を介して回路電流isを流すことができる。したがって、ダイオード要素D1を介して回路電流isを流す場合よりも損失が小さくなるため、高効率で電力変換を行うことができる。なお、所定時間dtは、事前の実験に基づいて計算してもよいし、また、リアルタイムで計算してもよい。
図5は、同期整流制御において、交流電源電圧vsが正になる半サイクルに含まれるときの電流の流れを示す説明図である。交流電源電圧Vsが正の半サイクルの期間では、図5の破線矢印で示されているように、交流電源G→インダクタL1→スイッチング要素Q1(第1スイッチング要素)のスイッチ部(チャネル)→コンデンサC1→シャント抵抗R1→スイッチング要素Q4(第2スイッチング要素)のスイッチ部(チャネル)→交流電源Gの第1電流経路において回路電流isが流れる。このとき、スイッチング要素Q2,Q3は、オフ状態で維持される(図4(d)及び図4(e)参照)。
また、交流電源電圧vsが負になる半サイクルの期間では、図示はしないが、交流電源G→スイッチング要素Q3(第2スイッチング要素)のスイッチ部(チャネル)→コンデンサC1→シャント抵抗R1→スイッチング要素Q2(第1スイッチング要素)のスイッチ部(チャネル)→インダクタL1→交流電源Gの電流経路において回路電流isが流れる。このとき、スイッチング要素Q1,Q4は、オフ状態で維持される(図4(c)及び図4(f)参照)。
このように同期整流制御では、スイッチング要素Q1,Q4のスイッチ部(チャネル)には積極的に電流を流し、ダイオード要素D1,D4にはほとんど電流を流さないようにしている。これによって、高効率で電力変換を行うことができる。また、後述する部分スイッチング制御や高速スイッチング制御と比較して、同期整流制御ではスイッチングの回数が少なくて済む。したがって、適度な力率を保ちながらもスイッチング損失を低減できるため、高効率で電力変換を行うことができる。
実際には、逆流電流の発生を確実に防止するためには、電流検出のばらつきや電流ゼロ付近での不安定動作を回避するため、スイッチング要素Q3、Q4をオンする期間を、回路電流の絶対値が所定値以上流れる期間とし、スイッチング要素Q3、Q4のオン期間を、実際に回路電流が流れる期間よりも短くすることが有効である。このようにコントローラ15が制御するときの同期整流制御における交流電源電圧vs、回路電流is、及びスイッチング要素Q1〜Q4の駆動パルスの時間的変化を、図6(a)〜図6(f)に示す。
先の理想的な例においては、回路電流が流れる期間の全てにおいてスイッチング要素Q3、Q4をオンしていた。しかし、図6(b)に示されているように、電流値の絶対値が所定値以上となる判定レベルを設け、回路電流がその判定値レベル以上の場合のみ、スイッチング要素Q3,Q4をオンすることで、逆流電流の発生を確実に防止することができる。
このような制御を行なうことにより、スイッチング要素Q3,Q4のオン期間である、図6(b)及び図6(e)の区間t1においては、スイッチング要素のスイッチ部(チャネル)に電流が流れ、区間t2においてはダイオード要素D3,D4に電流が流れることになる。
ここで、区間t2における損失について考えると、スイッチング要素Q1、Q2については、電源電圧の極性に同期した電気角半周期の期間中ずっとオンしているためスイッチ部(チャネル)に電流が流れる。しかし、その一方で、スイッチング要素Q3,Q4については、ダイオード要素D3,D4に電流が流れるので、スイッチング要素Q3,Q4には、ダイオード要素D3,D4に通電される期間の発生損失が小さい素子、言い換えると、ダイオード要素D3,D4の順方向電圧が低い素子を選定するのが好ましい。本実施形態では、スイッチング要素Q1,Q2には、素子の半導体材料としてワイドバンドギャップ半導体であるSiC(炭化珪素)を用いたSiC−MOSFETを、また、スイッチング要素Q3,Q4には、素子の半導体材料としてSiを用いたMOSFETを用いることで、その効果を得ている。
なお、同期整流制御において、交流電源電圧vsの極性に同期させてスイッチング要素Q1,Q2をオン・オフする制御に代えて、回路電流isが流れているか否かに応じてスイッチング要素Q1,Q2をオン・オフする制御を行ってもよい。あるいは、回路電流isが流れている期間よりも若干長めの期間だけスイッチング要素Q1,Q2がオンするようにコントローラ15が制御してもよい。
(2−3)部分スイッチング制御
部分スイッチング制御は、スイッチング要素Q1〜Q4のうち、インダクタL1に接続されている2つのスイッチング要素Q1,Q2を交互にオン・オフする動作を所定回数行う制御モードである。部分スイッチング制御は、例えば、負荷Hの定格運転中に実行されるが、これに限定されるものではない。
図7(a)〜図7(f)には、それぞれ、部分スイッチング制御における交流電源電圧vs、回路電流is・短絡電流isp、及びスイッチング要素Q1〜Q4の駆動パルスの時間的変化が示されている。
交流電源電圧vsが正になる半サイクルの期間について説明すると(図7(a)参照)、コンバータ制御部15dは、スイッチング要素Q1,Q2をそれぞれ所定回数だけ所定パルス幅で交互にオン・オフする。より詳しく説明すると、コンバータ制御部15dは、交流電源電圧vsの正・負が切り替わった直後に(図7(a)参照)、スイッチング要素Q1,Q2を交互にオン・オフする動作を所定回数(1回もしくは複数回)行う(図7(c)及び図7(d)参照)。また、コンバータ制御部15dは、交流電源電圧vsの極性に同期して、スイッチング要素Q3,Q4のオン・オフを制御する(図7(e)及び図7(f)参照)。
以下では、部分スイッチング制御を「力率改善動作」と「同期整流動作」とに分けて説明する。「力率改善動作」とは、スイッチング要素Q1またはスイッチング要素Q2を一時的にオン状態にすることで、インダクタL1を介して電源を短絡する短絡電流isp(図8参照)を流す動作である。
「同期整流動作」とは、交流電源電圧vsの極性に基づいてスイッチング要素Q1〜Q4を制御し、コンデンサC1を介して回路電流isを流す動作である。ちなみに、前記した同期整流モード(図4及び図5参照)は、部分スイッチング制御における「同期整流動作」を継続的に行う制御モードである。
詳細については後述するが、部分スイッチング制御では、「同期整流動作」と「力率改善動作」とが交互に所定回数行われる。
まず、「力率改善動作」について説明する。
例えば、交流電源電圧vsが正になる半サイクルの期間においてコンバータ制御部15dは、スイッチング要素Q3をオフ状態で維持するとともに(図7(e)参照)、スイッチング要素Q4をオン状態で維持する(図7(f)参照)。また、コンバータ制御部15dは、ブリッジ整流回路10に電流を流し始める所定の区間tfにおいて、スイッチング要素Q2をオン(図7(d)参照)、スイッチング要素Q1をオフにする(図7(c)参照)。このときに流れる短絡電流ispの経路について、図8を参照して説明する。
図9(a)〜図9(e)には、交流電源電圧vsが正の極性を持つ半サイクルにおける力率改善動作を行ったときの電流の流れを説明するため、それぞれ、交流電源電圧vs、回路電流isと短絡電流isp、スイッチング要素Q2,Q4,Q1の駆動パルスの時間的変化が示されている。
交流電源電圧vsが正の極性を持つときに力率改善動作を行うと、図8の破線矢印で示されている短絡経路において、交流電源G→インダクタL1→スイッチング要素Q2のスイッチ部(チャネル)→スイッチング要素Q4のスイッチ部(チャネル)→交流電源Gの順に、短絡電流isp(力率改善電流)が流れる。このときインダクタL1には、以下の(式2)で表されるエネルギが蓄えられる。なお、(式2)において、Ispは、短絡電流ispの実効値である。
このように短絡電流ispを流すことで、交流電源Gに流れる電流波形の歪みを小さくし、電流波形を正弦波に近づけることができる(図7(b)参照)。したがって、電力変換装置1の力率を改善できるとともに、高調波電流に伴う高調波を抑制できる。
なお、交流電源電圧vsが負の極性である期間では、図示はしないが、短絡経路において、交流電源G→スイッチング要素Q3のスイッチ部(チャネル)→スイッチング要素Q1のスイッチ部(チャネル)→インダクタL1→交流電源Gの順に、短絡電流isp(力率改善電流)が流れる。
次に、「同期整流動作」について説明する。図7(d)に示す所定の区間tfにおいて「力率改善動作」を行った後、コンバータ制御部15dは、所定の区間tgにおいて「同期整流動作」を行う。さらに詳細には、コンバータ制御部15dは、スイッチング要素Q2をオンからオフに切り替える(図7(d)参照)とともに、スイッチング要素Q1をオフからオンに切り替える(図7(c)参照)。スイッチング要素Q2がオフされると、インダクタL1に蓄えられたエネルギにより、電流はダイオード要素D1を通ってコンデンサC1に流れようとするが、スイッチング要素Q1がオンされることで、電流はスイッチング要素Q1を流れる同期整流動作を行うことになる。なお、区間tgにおいてもスイッチング要素Q3はオフ状態で維持され(図7(e)参照)、スイッチング要素Q4はオン状態で維持される(図7(f)参照)。
スイッチング要素Q2をオンからオフに切り替えるとともに、スイッチング要素Q1をオフからオンに切り替える際には、スイッチング要素Q1,Q2を通じてコンデンサ間が短絡されることを防止するため、スイッチング要素Q1,Q2のいずれもがオフ状態となるデッドタイムを設ける。デッドタイム期間中は、ダイオード要素D1,D2を通して電流が流れることになるが、逆回復電流が流れることによる損失増加を避けるためには、逆回復特性の良いデバイスを選定することが好ましい。ここでは、先に述べたように、スイッチング要素Q1,Q2としてSiC−MOSFETを用いることで、損失の低い電力変換装置1を実現している。ここで言う「逆回復特性の良いデバイス」とは、並列に接続されているダイオード要素(例えばスイッチング要素Q1,Q2に並列に接続されているダイオード要素D1,D2)に印加される電圧が順方向電圧から逆方向電圧に切り替わった瞬間に流れる電流、換言すると「逆回復電流」が小さく、かつ「逆回復電流」が流れる時間である「逆回復時間」が短いデバイスのことである。
このようにスイッチング要素Q1〜Q4が制御されることで、インダクタL1に蓄えられたエネルギがコンデンサC1に放出され、コンデンサC1の直流電圧が昇圧される。先に述べた同期整流動作における電流経路については、前述の同期整流モードにおける電流経路(図5の破線矢印を参照)と同様であるため、図示を省略する。
このようにして「力率改善動作」と「同期整流動作」とを所定回数、交互に行った後、コンバータ制御部15dは、回路電流isが流れている区間thにおいて、スイッチング要素Q1をオン状態(図7(c)参照)、スイッチング要素Q2をオフ状態(図7(d))で維持する。言い換えると、コンバータ制御部15dは、交流電源電圧vsの絶対値がコンデンサC1の電圧(直流電圧Vd)よりも小さくなってからも所定時間dtは、インダクタL1に接続されているスイッチング要素Q1をオン状態で維持する。この期間は、インダクタL1の両端間の電位差によりブリッジ整流回路10の電源側の接続点N1と接続点N2の間の電圧が直流電圧Vdよりも高くなっているため、電流が流れつづけている。これによって、交流電源電圧vsが直流電圧Vdよりも低くなってからも、図5に示す電流経路で回路電流isを流すことができる。したがって、ダイオード要素D1を介して回路電流isを流す場合よりも、スイッチング要素Q1の導通損失を低減し、高効率化を図ることができる。
例えば、負荷Hがモータである場合、回転速度の上昇に伴ってモータの誘起電圧が高くなり、モータが駆動し難くなることがあるが、前記した「力率改善動作」及び「同期整流動作」を交互に行って昇圧することで、モータの回転速度の許容限度を高めることができる。
補足すると、図7(c)に示すように、スイッチング要素Q1は、1ショット目の前の区間ta、及び、同期整流動作が継続される区間thの後の区間tbでは、オフ状態にされる。このようにスイッチング要素Q1をオフ状態にするのは、コンデンサC1から逆流電流が流れることを防止するためである。なお、スイッチング要素Q1,Q2を交互にオン・オフする際のタイミングや回数は、必要とされる電源力率や高調波発生量、必要とされる直流電圧Vdに応じて適宜設定される。
次に、部分スイッチング制御におけるスイッチング要素Q1〜Q4の駆動パルスの設定について、さらに詳しく説明する。図9(a)〜図9(e)を用いて、交流電源電圧vsが正になる半サイクルにおける部分スイッチング制御を説明する。なお、図9(a)〜図9(f)の横軸は、時間軸である。
図9(a)には、電圧が正になる半サイクルにおける交流電源電圧vsが示されている。図9(b)には、回路電流is、短絡電流isp、及び正弦波状の理想電流が示されている。図9(c)、図(d)及び図9(e)には、スイッチング要素Q2,Q4,Q1の駆動パルスが示されている。図9(b)に示されている「理想電流」のように、正弦波状の回路電流isが交流電源電圧vsに対して同相で流れることが、力率や高調波の観点から理想的である。この理想電流は、例えば、電流検出部11(図8参照)の検出値と、ゼロクロス判定部15a(図8参照)の判定結果と、に基づいて、ゲイン制御部15c(図8参照)によって求められる。
例えば、理想電流上の点P1(図9(b)参照)に関して、この点P1での電流の傾きをdi(P1)/dtとおく。回路電流isがゼロの状態から、スイッチング要素Q2を時間ton1_Q2に亘ってオンする力率改善動作を行ったときの短絡電流ispの傾きをdi(ton1_Q2)/dtとおく。また、その後に時間toff1_Q2に亘ってオフして同期整流動作を行ったときの回路電流isの傾きをdi(toff1_Q2)/dtとおく。ここで、傾きdi(ton1_Q2)/dtと、傾きdi(toff1_Q2)/dtとの平均値が、点P1における傾きdi(P1)/dtと等しくなるようにスイッチング要素Q1,Q2のオン・オフが制御される。
また、点P1と同様に、点P2での電流の傾きをdi(P2)/dtとおく。そして、スイッチング要素Q2を時間ton2_Q2に亘ってオンする力率改善動作を行ったときの短絡電流ispの傾きをdi(ton2_Q2)/dtとおく。また、その後に時間toff2_Q2に亘ってスイッチング要素Q2をオフして同期整流動作を行ったときの回路電流isの傾きをdi(toff2_Q2)/dtとおく。点P1の場合と同様に、傾きdi(ton2_Q2)/dtと、傾きdi(toff2_Q2)/dtと、の平均値が、点P2における傾きdi(P2)/dtと等しくなるようにスイッチング要素Q1,Q2のオン・オフが制御される。交流電源電圧vsが正になる半サイクルにおいて、このような動作が所定回数繰り返される。なお、スイッチング要素Q2のスイッチング回数が多いほど、回路電流isを理想的な正弦波状の波形に近づけることができるが、スイッチング回数を多くするとスイッチング損失が増加するため、スイッチング損失を考慮してスイッチング回数を設定することが好ましい。
なお、交流電源電圧vsが負になる半サイクルについても、交流電源電圧vsが正になる半サイクルの場合と同様にスイッチング要素Q1,Q2の駆動パルスが設定される。
半サイクル期間オンさせ続けるスイッチング要素は、前述の同期整流時にはスイッチング要素Q1,Q2(図6(f)及び図6(d)参照)であるが、部分スイッチング時にはスイッチング要素Q3,Q4(図6(e)及び図6(d)参照)と異なっている。これは、同期整流時においてはダイオード要素D3、D4に電流が流れる期間の損失を重視しているが、それに対して、部分スイッチング時においてはダイオード要素D1,D2の逆回復特性を重視しているためである。
さらに言えば、スイッチング要素Q1,Q2の逆回復時間は、スイッチング要素Q3,Q4よりも短いことが好ましい。前述のように、同期整流制御、及び部分スイッチング制御では、スイッチング要素Q1,Q2のオン・オフが、交流電源電圧vsの半サイクルごとに所定回数行われる。したがって、スイッチング要素Q1,Q2として逆回復時間の短いものを用いることで、逆回復電流が流れる時間が短くなるため、スイッチング損失を低減できる。スイッチング要素Q3,Q4については、オン・オフする頻度がスイッチング要素Q1,Q2に比べて少ない(電気角半周期にオン・オフそれぞれ1回)ため、逆回復時間が比較的長い安価な素子を用いても効率にそれほど影響はない。
なお、部分スイッチング制御において、交流電源電圧vsの極性に同期させてスイッチング要素Q3,Q4をオン・オフする制御に代えて、回路電流isが流れているか否かに応じてスイッチング要素Q3,Q4をオン・オフする制御を行ってもよい。あるいは、回路電流isが流れている期間よりも若干長めの期間だけスイッチング要素Q3,Q4をオンするような制御をコントローラ15が行ってもよい。
(2−4)高速スイッチング制御
高速スイッチング制御は、スイッチング要素Q1〜Q4のうち、インダクタL1に接続されている2つのスイッチング要素Q1,Q2を交互にオン・オフする動作を所定周期で繰り返す制御モードである。高速スイッチング制御は、例えば、負荷(電流検出部11の検出値等)が比較的大きい高負荷時に実行されるが、これに限定されるものではない。
図10(a)〜図10(f)には、高速スイッチング制御における交流電源電圧vs、回路電流is・短絡電流isp、及びスイッチング要素Q1〜Q4の駆動パルスの時間的変化が示されている。
高速スイッチング制御では、部分スイッチング制御で説明した「力率改善動作」と「同期整流動作」とが所定周期で交互に繰り返される。
力率改善動作について、交流電源電圧vs(図10(a)参照)が正になる半サイクルを例に説明すると、コンバータ制御部15dは、所定の区間tkにおいてスイッチング要素Q2をオン状態(図10(d)参照)、スイッチング要素Q1をオフ状態(図10(c)参照)にする。また、コンバータ制御部15dは、交流電源電圧vsが正になる半サイクルにおいて、スイッチング要素Q3をオフ状態(図10(e)参照)、スイッチング要素Q4をオン状態(図9(f)参照)で維持する。これによって、インダクタL1を介して短絡電流isp(図8参照)が流れるため、力率を改善できるとともに、高調波を抑制できる。
次に、同期整流動作について、交流電源電圧vs(図10(a)参照)が正になる半サイクルを例に説明すると、コンバータ制御部15dは、例えば、前記した区間tkの後の区間tmにおいて、スイッチング要素Q1をオン状態、スイッチング要素Q2をオフ状態にする。これによって、インダクタL1に蓄えられたエネルギがコンデンサC1に放出されるため、コンデンサC1の直流電圧Vdが昇圧される。また、ダイオード要素D1を介して回路電流isを流す場合と比べて導通損失が低減されるため、電力変換を高効率で行うことができる。なお、同期整流動作時における電流経路は、図5と同様である。
また、交流電源電圧vsが負になる半サイクルにおいても、同様にして、スイッチング要素Q1,Q2が交互にオン・オフされる(図10(c)及び図10(d)参照)。また、交流電源電圧vsの極性に同期して、スイッチング要素Q3がオン状態(図10(e)参照)、スイッチング要素Q4がオフ状態(図10(f)参照)にされる。なお、スイッチング要素Q1,Q2のオンデューティは、回路電流isを正弦波に近づけるように適宜設定される。
また、交流電源電圧vsが正になる半サイクルの初期において、交流電源電圧vsが直流電圧Vdよりも低い区間tj(図10(c)参照)では、逆流電流を防止するためにスイッチング要素Q1がオフ状態で維持される。
また、交流電源電圧vsが直流電圧Vdを下回ってから所定時間dtが経過するまでは、スイッチング要素Q1,Q2のスイッチングが継続される(図10(c)及び図10(d)参照)。これによってダイオード要素D1,D2に流れる電流を抑制し、高効率で電力変換を行うことができる。そして、所定時間dtが経過した後の区間tnでは、逆流電流が流れないように、スイッチング要素Q1がオフ状態にされる(図10(c)参照)。
なお、高負荷時には比較的大きな回路電流isが流れるため、それに伴って高調波が発生しやすくなる。本実施形態では、高負荷時に高速スイッチング制御を行うことで、回路電流isを正弦波に近づけるようにしている。これによって、高調波を抑制できるとともに、力率を改善できる。
以下では、部分スイッチング制御と、高速スイッチング制御と、を含めて「スイッチング制御」という。この「スイッチング制御」は、スイッチング要素Q1〜Q4のうち、インダクタL1に接続されている2つのスイッチング要素Q1,Q2を交互にオン・オフする制御である。
次に、部分スイッチング制御及び高速スイッチング制御におけるデューティの設定について説明する。
電力変換装置1における回路電流is(瞬時値)は、以下の(式3)で表される。(式3)において、Vsは交流電源電圧vsの実効値であり、Kpは電流制御ゲインであり、Vdは直流電圧であり、ωは角周波数である。
上述の(式3)を整理すると、以下の(式4)になる。
また、回路電流is(瞬時値)と、回路電流Is(実効値)との関係は、以下の(式5)で表される。既に述べたように、回路電流is(瞬時値)はシャント抵抗R1によって検出され、回路電流Is(実効値)は電流検出部11によって検出される。
電流制御ゲインKpは、(式4)を変形して(式5)に代入して得られる(式6)で表される。なお、(式6)において、aは昇圧比である。
ここで、(式6)において、昇圧比aの逆数を右辺に移項すると、以下の(式7)の関係が導かれる。
また、交流電源電圧vsが正になる半サイクルにおいて、スイッチング要素Q2のオンデューティd(通流率)は、以下の(式8)で表される。なお、交流電源電圧vsが負になる半サイクルにおけるスイッチング要素Q1のオンデューティdについても同様である。
以上より、(式7)に示したKp・Isを制御することで、直流電圧Vdを交流電源電圧Vs(実効値)のa倍に昇圧できることが分かる。そのときのスイッチング要素Q2(または、スイッチング要素Q1)のオンデューティdが、(式8)で与えられる。
なお、昇圧比aは、負荷検出部14によって検出される負荷に基づき、昇圧比制御部15b(図8参照)によって設定される。例えば、負荷が大きいほど、昇圧比aも大きな値に設定される。
図11は、交流電源電圧vsが正になる半サイクルにおいて、高速スイッチング制御でのスイッチング要素Q1,Q2のオンデューティを示す説明図である。
なお、図11の横軸は、交流電源電圧vsが正の半サイクルにおける時間(正の半サイクルの開始時からの経過時間)を表しており、縦軸は、スイッチング要素Q1,Q2のオンデューティd_Q1,d_Q2を表している。
また、図11において、破線は、デッドタイムdtxを考慮しない場合のスイッチング要素Q1のオンデューティd_Q1のグラフである。実線は、デッドタイムdtxを考慮した場合のスイッチング要素Q1のオンデューティd_Q1のグラフである。二点鎖線は、スイッチング要素Q2のオンデューティd_Q2のグラフである。
破線で示すスイッチング要素Q1のオンデューティd_Q1は、例えば、交流電源電圧Vsに比例するように設定されている。二点鎖線で示すスイッチング要素Q2のオンデューティd_Q2は、1.0からスイッチング要素Q1のオンデューティd_Q1を減算した値で設定される。
(式8)で説明したように、回路電流isが大きいほど、スイッチング要素Q2のオンデューティd_Q2は小さな値に設定され、スイッチング要素Q1のオンデューティd_Q1は大きな値に設定される。言い換えると、同期整流動作でオンされるスイッチング要素Q1のオンデューティd_Q1は、力率改善動作でオンされるスイッチング要素Q2のオンデューティd_Q2に対して逆特性になっている。
なお、ブリッジ整流回路10における上下短絡を回避するために、図11の実線で示すように、デッドタイムdtxを考慮した制御を行うことが好ましい。所定のデッドタイムdtx(図示せず)を付与すると、スイッチング要素Q1のオンデューティd_Q1は、このデッドタイムdts分だけ小さくなる。
図12は、高速スイッチング制御における交流電源電圧vsと回路電流isとの関係を示す説明図である。図12の横軸は、交流電源電圧vsが正になる半サイクルが開始された時点からの経過時間(時間)を表しており、縦軸は、交流電源電圧vs(瞬時値)及び回路電流is(瞬時値)を表している。
図12に示されているように、高速スイッチング制御を行うことで、交流電源電圧vs及び回路電流isが正弦波状の波形になっており、また、交流電源電圧vsと回路電流isとが同相になっている。高速スイッチング制御を行うことで、力率が改善されていることがわかる。このような正弦波状の回路電流isを流すために、スイッチング要素Q2のオンデューティd_Q2は、例えば、以下の(式9)を用いて設定することができる。また、スイッチング要素Q1のオンデューティd_Q1は、例えば、以下の(式10)を用いて設定することができる。
図13は、高速スイッチング制御において、インダクタL1による電流位相の遅れ分を考慮しない場合と電流位相の遅れ分を考慮した場合におけるスイッチング要素Q2のオンデューティd_Q2を示す説明図である。図13の横軸は、交流電源電圧vsが正になる半サイクルが開始された時点からの経過時間(時間)を表し、縦軸は、高速スイッチング制御におけるスイッチング要素Q2のオンデューティを表している。
また、図13において、実線は、インダクタL1による電流位相の遅れを考慮しない場合のスイッチング要素Q2のオンデューティのグラフである。破線は、インダクタL1による電流位相の遅れを考慮した場合のスイッチング要素Q2のオンデューティのグラフである。図13の破線で示すように、スイッチング要素Q2のオンデューティを設定することで、インダクタL1のインダクタンスが大きい場合であっても、正弦波状の回路電流isを流すことができる。
<制御モードの切替えについて>
コンバータ制御部15d(図1参照)は、例えば、負荷が比較的小さい低負荷領域では同期整流制御を行い、定格運転領域では部分スイッチング制御を行い、負荷が比較的大きい高負荷領域では高速スイッチング制御を行う。なお、負荷が非常に小さいときにダイオード整流制御を行ってもよいし、また、ダイオード整流を行わないようにしてもよい。
図14(a)は、部分スイッチング制御における正の半サイクルでの交流電源電圧vs及び回路電流isの説明図である。なお、図14(a)に示すピーク値is1は、部分スイッチング制御における回路電流isのピーク値である。
図14(b)は、高速スイッチング制御における正の半サイクルでの交流電源電圧vs
及び回路電流isの説明図である。
なお、図14(b)に示すピーク値is2は、高速スイッチング制御における回路電流
isのピーク値である。図14(b)に示されているように、高速スイッチング制御における回路電流isのピーク値is2は、部分スイッチング制御における回路電流isのピーク値is2よりも小さくなっている。
仮に、ピーク値is1,is2が略同一となるように制御すると、部分スイッチング制御の力率よりも高速スイッチング制御の力率が高いため、高速スイッチング制御において直流電圧Vdが昇圧しすぎてしまう。これに対して本実施形態では、ピーク値is1>ピーク値is2となるように、スイッチング要素Q1,Q2のオンデューティが調整される。そのために、コンバータ制御部15dは、部分スイッチング制御及び高速スイッチング制御の一方から他方に切り替える際、コンデンサC1の直流電圧Vdの変動を抑制するように、スイッチング要素Q1,Q2のオンデューティを調整する。これによって、部分スイッチング制御及び高速スイッチング制御の一方から他方に移行する際、直流電圧Vdの変動を抑制できる。
また、コンバータ制御部15dは、交流電源電圧vsのゼロクロス(正・負の切り替わり)のタイミングで、制御モードの切替えを行うように構成されることが好ましい。例えば、コンバータ制御部15dは、交流電源電圧vsのゼロクロスのタイミングで、同期整流制御から部分スイッチング制御に、あるいは部分スイッチング制御から高速スイッチング制御に切り替える。これによって、制御モードの切替え時に、制御が不安定になったり、直流電圧Vdが変動することや電流が変動したりすることを抑制できる。
高速スイッチング時においても、半サイクル期間オンし続けるのはスイッチング要素Q3,Q4(図7参照)であり、スイッチング要素Q3,Q4の動作は前述の同期整流時のスイッチング要素Q1,Q2(図6参照)の動作とは異なっている。これは、高速スイッチング時においても部分スイッチング時と同様に、ダイオード要素D1,D2の逆回復特性を重視しているためである。高速スイッチングにおいては、部分スイッチングよりもスイッチング回数が多いため、この逆回復特性が更に重要となる。
また、部分スイッチングと同様に、スイッチング要素Q1,Q2の逆回復時間は、スイッチング要素Q3,Q4の逆回復時間よりも短いことが好ましく、スイッチング要素Q3,Q4については、逆回復時間が比較的長い安価な素子を用いても効率にそれほど影響はない。特に、同期整流制御と、部分スイッチング制御・高速スイッチング制御とでは、半サイクル期間(あるいはパルスが長い側の期間)オンさせ続けるスイッチング要素が、異なっている(同期整流時にオンさせ続けるのはスイッチング要素Q1,Q2、部分スイッチング時と高速スイッチング時にオンさせ続けるのはスイッチング要素Q3及びQ4)ため、ゼロクロスのタイミングで各スイッチング要素へのオン・オフ信号の切替えを行なうことで、先に述べた不具合が起こりにくくなる。
(3)特徴
本実施形態よれば、低負荷時には同期整流制御を行うことで、スイッチング要素Q1〜Q4のスイッチ部(チャネル)に積極的に電流を流すようにしている。さらには、スイッチング要素Q3、Q4のオン期間を実際に回路電流が流れる期間よりも短くする場合において、スイッチング要素Q3,Q4に対して、順方向電圧が低いダイオード要素D3,D4を選定する。これによって、ダイオード要素D1〜D4での損失を抑制し、電力変換を高効率で行うことができる。
また、定格運転時には部分スイッチング制御が行われ、スイッチング要素Q1,Q2が所定回数、交互にスイッチングされる。これによって、昇圧、力率の改善、及び高調波の抑制を行うことができる。更には、スイッチング要素Q1、Q2としてSiC−MOSFETを用いることで、損失の低い電力変換器を実現している。また、高速スイッチング制御と比べてスイッチング回数が少ないため、スイッチング損失を低減できる。
また、高負荷時には高速スイッチング制御を行って、スイッチング要素Q1,Q2を所定周期で交互にスイッチングするようにしている。これによって、昇圧、力率の改善、及び高調波の抑制を行うことができる。ここでも、スイッチング要素Q1、Q2としてSiC−MOSFETを用いることで、損失の低い電力変換器を実現している。高速スイッチング制御では、回路電流isが正弦波状になるため(図10(b)参照)、特に力率の改善や高調波の抑制に効果がある。
スイッチング要素Q1〜Q2がMOSFETであるときにMOSFETをオンさせない場合に寄生ダイオードであるダイオード要素D1〜D4がオンせず電流が流れない期間、言い換えるとダイオード要素D1〜D4のカソード側よりアノード側の電圧が低い期間に、MOSFETをオンしてしまうと、寄生ダイオードのカソード側からアノード側に向かう方向でMOSFETのチャネルを通して、コンデンサ側から電源側に回生する方向で逆流電流が流れてしまう。このような逆流電流を避けるためには、第1レグJ1と第2レグJ2のうちの少なくとも片側のパルス幅を、寄生ダイオードのみでも電流が流れるであろうパルス幅よりも短くすることが有用である。このように構成することで、電流を検出せずに電源電圧のゼロクロス信号のみを用いて電源電圧の極性に同期させたスイッチングを行なう場合も含め、特に電流の流れ始めと流れ終わりでの逆流電流を避けることができる。
また、SiC−MOSFETのようなワイドバンドギャップ半導体を用いたスイッチング要素は、その製造工程のために、Siを用いた従来のスイッチング要素と比べて高価であり、家電機器に適用するにはコスト面でも課題が大きいという現状がある。そこで、ブリッジを構成するスイッチング要素Q1〜Q4の全てにSiC−MOSFETを用いずに、スイッチング要素Q1〜Q4としてSiC−MOSFETとSi−MOSFETとを混在させてブリッジを構成することにより、コストの増加を抑制することができる。
<第2実施形態>
(4)第2実施形態の概要
第2実施形態では、電力変換装置1の負荷Hが、空気調和機W(図16参照)の圧縮機41のモータ41aである点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他の構成(図1に示す電力変換装置1の構成や、各制御モードの内容)については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。また、第2実施形態は、電流検出部11(図1参照)で検出した電流実効値の検出値Iと所定の閾値I1,I2との大小を比較し、その比較結果に基づいて制御モードを切り替える点が、第1実施形態とは異なっている。
(5)空気調和機の構成
図15は、第2実施形態に係る空気調和機の構成の一例を示す正面図である。図15には、空気調和機Wが備える室内機U1、室外機U2、及びリモコンReを正面から見た状態が示されている。
空気調和機Wは、冷媒回路4(図16参照)において蒸気圧縮式冷凍サイクルで冷媒を循環させることによって、空調(冷房、暖房、除湿等)を行う機器である。図16に示されている空気調和機Wは、四方弁45で冷媒が流れる向きを変えることにより、冷房運転と暖房運転を切替えられるように構成されている。しかし、本開示の技術が適用できる空気調和機には、冷房運転と暖房運転を切替えられる機能を有する空気調和機Wだけでなく、冷房専用の空気調和機または暖房専用の空気調和機が含まれ、空気調和機は、さらに除湿機能及び/または加湿機能を有していてもよい。
図15に示すように、空気調和機Wは、室内機U1と、室外機U2と、リモコンReとを備えている。室内機U1は、室内熱交換器44(図16参照)及び室内ファンF2を備えている。また、室外機U2は、圧縮機41(図16参照)、室外熱交換器42、膨張弁43、四方弁45及び室外ファンF1を備えている。なお、室内機U1と室外機U2とは、冷媒が通流する配管kを介して接続されるとともに、図示はしないが、通信線を介して接続されている。リモコンReは、空気調和機Wを遠隔操作するための機器であり、室内機U1との間で所定の信号(運転/停止指令、設定温度の変更、タイマの設定、運転モードの変更を指示する信号等)を送受信する機能を有している。
図15に示されているように、空気調和機Wは、電力変換装置1と、インバータ2と、冷媒回路4とを備えている。なお、第2実施形態の電力変換装置1には、第1実施形態の電力変換装置1の構成(図1参照)と同様の構成を適用することができる。
インバータ2は、電力変換装置1から印加される直流電圧を、例えば、PWM制御(Pulse Width Modulation)に基づいて交流電圧に変換する電力変換器である。
冷媒回路4は、圧縮機41と、室外熱交換器42と、膨張弁43と、室内熱交換器44と、四方弁45が配管kを介して環状に接続された構成になっている。冷房運転時には、四方弁45が実線で示されている接続状態になり、冷媒が、圧縮機41、室外熱交換器42、膨張弁43、室内熱交換器44、圧縮機41の順に流れる。冷房運転時には、圧縮機41で冷媒が圧縮され、室外熱交換器42で冷媒から室外空気に熱が放出され、膨張弁43で冷媒が低温低圧に変化し、室内熱交換器44で室内空気から熱が奪われて冷媒に熱が与えられる。暖房運転時には、四方弁45が破線で示されている接続状態になり、冷媒が、圧縮機41、室内熱交換器44、膨張弁43、室外熱交換器42、圧縮機41の順に流れる。暖房運転時には、圧縮機41で冷媒が圧縮され、室内熱交換器44で冷媒から室内空気に熱が放出され、膨張弁43で冷媒が低温低圧に変化し、室外熱交換器42で室外空気から熱が奪われて冷媒に熱が与えられる。
圧縮機41は、モータ41aの駆動によって冷媒を、吸入し、圧縮し、吐出する機器である。なお、モータ41aは、インバータ2から印加される交流電圧によって駆動する。室外熱交換器42は、室外ファンF1から送り込まれる室外空気と、冷媒回路4を循環する冷媒との間で熱交換を行わせる機器である。膨張弁43は、室外熱交換器42または室内熱交換器44から流れ込む冷媒を膨張させて、冷媒を低温低圧にする弁である。膨張弁43は、弁開度を変化させることにより、流れ込む冷媒の流量及び圧力を調整することができる調整弁としても機能する。室内熱交換器44は、室内ファンF2から送り込まれる室内空気と、冷媒回路4を循環する冷媒との間で熱交換を行わせる機器である。
次に、電力変換装置1が備える電流検出部11(図1参照)で検出した電流実効値(言い換えると負荷に応じて変化する値)に基づいて、電力変換装置1の制御モードを切り替える処理について説明する。
図17は、負荷の大きさと動作モード及び機器の運転領域の関係を説明するための模式図である。図17に示されている「中間運転領域」は、負荷(ここでは、電流検出部11で検出した電流実効値:図1参照)が比較的小さい領域である。本実施形態では、負荷の大きさが閾値I1未満である場合に「同期整流制御」を行うことで、電力変換装置1の高効率化を図るようにしている。
図17に示す「定格運転領域」は、「中間運転領域」よりも負荷が大きく、圧縮機41のモータ41a(言い換えると、図1に示す負荷H)を定格運転できる領域である。本実施形態では、負荷の大きさが閾値I1以上かつ閾値I2未満である場合に「部分スイッチング制御」を行うことで、昇圧、力率の改善、及び高調波の抑制を行うようにしている。
図17に示す「高負荷領域」は、負荷の大きさが比較的大きい領域である。例えば、外気温が非常に低いときに暖房運転を行う場合または、外気温が非常に高いときに冷房運転を行う場合の運転領域が「高負荷領域」に相当する。本実施形態では、負荷の大きさが閾値I2以上である場合に「高速スイッチング制御」を行うことで、昇圧、力率の改善、及び高調波の抑制を行うようにしている。なお、閾値I1,I2の大きさは、事前の実験及び/またはシミュレーションに基づいて適宜設定される。
(6)電力変換装置の動作
図18は、電力変換装置1のコントローラ15が実行する処理を示すフローチャートである。なお、図18の「START」時において、モータ41a(図16参照)が駆動しているものとする。
ステップS101において、コントローラ15は、電流検出部11の検出値I(負荷)を読み込む。
ステップS102において、コントローラ15は、ステップS101で読み込んだ検出値Iが閾値I1(第1閾値)未満であるか否かを判定する。言い換えると、コントローラ15は、電流の検出値Iが「中間運転領域」(図17参照)に含まれるか否かを判定する。
電流の検出値Iが閾値I1未満である場合、ステップS102において電流の検出値Iに対応する運転領域が「中間運転領域」に含まれると判定され(Yes)、コントローラ15は、次にステップS103の処理を行う。
ステップS103において、コントローラ15は、同期整流制御を実行する。このように中間運転領域において同期整流制御を行うことで、第1実施形態で説明したように、電力変換を高効率で行うことができる。
電流の検出値Iが閾値I1以上である場合には、ステップS102において電流の検出値Iに対応する運転領域が「中間運転領域」に含まれないと判定され(No)、コントローラ15は、次にステップS104の処理を行う。
ステップS104において、コントローラ15は、電流検出部11の検出値Iが閾値I2(第2閾値)未満であるか否かを判定する。言い換えると、コントローラ15は、電流の検出値Iが「定格運転領域」(図17参照)に含まれるか否かを判定する。なお、閾値I2は、閾値I1よりも大きな値である(図17参照)。
電流の検出値Iが閾値I2未満である場合には、ステップS104において電流の検出値Iに対応する運転領域が「定格運転領域」に含まれると判定され(Yes)、コントローラ15は、次にステップS105の処理を行う。
ステップS105において、コントローラ15は、部分スイッチング制御を実行する。このように定格運転領域において部分スイッチング制御を行うことで、第1実施形態で説明したように、昇圧、力率の改善、及び高調波の抑制を行うことができる。
ステップS104において、電流検出部11の検出値Iが閾値I2以上である場合には、ステップS104において電流の検出値Iに対応する運転領域が「定格運転領域」に含まれないと判定され(No)、コントローラ15は、次にステップS106の処理を行う。
ステップS106において、コントローラ15は、高速スイッチング制御を実行する。これによって、高負荷運転領域で大きな回路電流isが流れたとしても、力率を改善できるとともに、高調波を抑制できる。
ステップS103,S105,S106のいずれかの処理を行った後、コントローラ15は、「START」に戻って上述の処理を繰り返す(RETURN)。なお、ここでは、ステップS101からステップS106を含むルーチンから抜け出すかまたは終了させるための処理については記載を省いている。
なお、電流の検出値Iが非常に小さい場合に、第1実施形態で説明したダイオード整流制御(図2及び図3参照)を行うようにしてもよい。
(7)特徴
本実施形態によれば、負荷の大きさに応じて制御モードを切り替えることで、電力変換装置1の高効率化を図るとともに、高調波を抑制できる。このような電力変換装置1を備えることで、エネルギ効率(言い換えると、APF:Annual Performance Factor)が高く、省エネ化を図った空気調和機Wを提供できる。
(8)変形例
(8−1)変形例A
図19は、変形例Aに係る電力変換装置1Aの構成の一例を示す回路図である。図19に示されている電力変換装置1Aは、第1実施形態で説明した電力変換装置1(図1参照)にインダクタL2を追加した構成になっている。インダクタL2は、接続点N2と交流電源Gとを接続する配線hbに設けられている。さらに具体的に説明すると、インダクタL2の一方端が配線hbを介して接続点N2に接続され、インダクタL2の他方端が第2入力端子IT2に接続されている。このようにインダクタL2を設けることで、第1実施形態で説明した「力率改善動作」に伴うノイズを低減できる。
(8−2)変形例B
スイッチング要素Q1、Q2として、SiC−MOSFETの代わりにオン抵抗の小さいスーパージャンクションMOSFET(SJMOSFET)を用いてもよい。SJMOSFETを用いる場合には、特に、寄生ダイオードの逆回復時間(time of reverse recovery:trr)が比較的短い高速trrタイプのものを用いることが好ましい。
このような高速trrタイプのスイッチング要素は、その性能を得るために寄生ダイオード(ダイオード要素)の順方向電圧が高くなってしまうという短所をもつため、SiC−MOSFETと同様の思想での適用が可能である。例えば、逆回復時間が300nsec以下のSJMOSFETをスイッチング要素Q1、Q2として用いることで損失を低減し、同様の効果を得ることができる。SiC同様にワンドバンドギャップを持つGaNを用いたGaN−HEMTデバイスや、ダイヤモンド、酸化ガリウムを用いたMOSFETなどでも、同様の効果が期待できる。
また、スイッチング要素Q1〜Q4として、オン抵抗が0.1Ω程度以下のものを用いることが好ましい。これによって、スイッチング要素Q1〜Q4における導通損失を低減できる。
(8−3)変形例C
図20(a)には、変形例Cに係る電力変換装置において、同期整流制御における交流電源電圧vsの時間的変化が示され、図20(b)には回路電流isが示され、図20(c)にはスイッチング要素Q4の駆動パルスの時間的変化が示され、図20(d)にはスイッチング要素Q2の駆動パルスの時間的変化が示され、図20(e)にはスイッチング要素Q3の駆動パルスの時間的変化が示され、図20(f)にはスイッチング要素Q1の駆動パルスの時間的変化が示されている。なお、変形例Cに係る電力変換装置の構成は、第1実施形態の電力変換装置1の構成と同じである。
変形例Cでは、同期整流制御において、ゼロクロス信号(図20(b)参照)を用いてスイッチング要素Q4,Q3(図20(c)及び図20(e)参照)のオン・オフタイミングを求めるとともに、それらをオン状態にする期間が、第1実施形態(図4(c)及び図4(e)参照)よりも短くなっている。具体的には、ゼロクロス信号の立ち上がりのタイミングからtdelay後にスイッチング要素Q4をオンした後、ton期間はオンし続け、その後オフさせる。また同様に、ゼロクロス信号の立ち下りのタイミングからtdelay後にスイッチング要素Q3をオンした後、ton期間はオンし続け、その後オフさせる。このようにスイッチング要素Q4,Q3を制御しても、同期整流制御を適切に行うことができる。この場合も、図6(a)〜図6(f)に示した場合と同様に、スイッチング要素Q3,Q4がオンしている区間t3ではスイッチ部(チャネル)に電流が流れ、スイッチング要素Q3,Q4がオフする区間t4では寄生ダイオードであるダイオード要素D3,D4に電流が流れるので、スイッチング要素Q3,Q4を含むMOSFETに、寄生ダイオード(ダイオード要素D3,D4)の順方向電圧が低い素子を選定することで、先に示したのと同様の効果を得ることができる。
なお、同期整流制御において、交流電源電圧vsの極性に同期させてスイッチング要素Q3,Q4をオン・オフさせる制御に代えて、回路電流isが流れているか否かに応じてスイッチング要素Q3,Q4をオン・オフするように制御してもよい。あるいは、回路電流isが流れている期間よりも若干長めの期間になるよう、ゼロクロス信号からオン・オフタイミングを決定してもよい。
(8−4)変形例D
図21(a)には、変形例Dに係る電力変換装置において、部分スイッチング制御における交流電源電圧vsの時間的変化が示され、図21(b)には回路電流isと短絡電流ispが示され、図21(c)にはスイッチング要素Q1の駆動パルスの時間的変化が示され、図21(d)にはスイッチング要素Q2の駆動パルスの時間的変化が示され、図21(e)にはスイッチング要素Q3の駆動パルスの時間的変化が示され、図21(f)にはスイッチング要素Q4の駆動パルスの時間的変化が示されている。なお、変形例Dに係る電力変換装置の構成は、第1実施形態の電力変換装置1の構成と同じである。
変形例Dでは、部分スイッチング制御においてスイッチング要素Q3,Q4(図22(e)及び図21(f)参照)をオン状態にする期間が、第1実施形態(図7(e)及び図7(f)参照)よりも短くなっている。例えば、交流電源電圧vsが正になる半サイクルでは、回路電流isが流れている期間の一部でスイッチング要素Q4をオン状態にしている。このようにスイッチング要素Q3,Q4を制御しても、部分スイッチング制御を適切に行うことができる。この場合も図20(a)〜図20(f)に示した同期整流の変形例Cのように、ゼロクロス信号(図示せず)を用いてスイッチング要素Q3,Q4のオン・オフタイミングを求めることができ、変形例Cと同様に、スイッチング要素Q3,Q4がオンしている区間t5ではスイッチ部(チャネル)に電流が流れ、スイッチング要素Q3,Q4がオフする区間t6では寄生ダイオードであるダイオード要素D3,D4に電流が流れるので、スイッチング要素Q3,Q4を含むMOSFETに、寄生ダイオード(ダイオード要素D3,D4)の順方向電圧が低い素子を選定することで、先に示したのと同様の効果を得ることができる。
(8−5)変形例E
図22(a)は、変形例Eに係る電力変換装置において、部分スイッチング制御における交流電源電圧vsの時間的変化が示され、図22(b)には回路電流isと短絡電流ispが示され、図22(c)にはスイッチング要素Q1の駆動パルスの時間的変化が示され、図22(d)にはスイッチング要素Q2の駆動パルスの時間的変化が示され、図22(e)にはスイッチング要素Q3の駆動パルスの時間的変化が示され、図22(f)にはスイッチング要素Q4の駆動パルスの時間的変化が示されている。なお、変形例Eに係る電力変換装置の構成は、第1実施形態の電力変換装置1の構成と同じである。
変形例Eでは、部分スイッチング制御においてスイッチング要素Q1,Q2(図22(c)及び図22(d)参照)をオン状態にする期間が、第1実施形態(図7(c)及び図7(d)参照)よりも短くなっている。例えば、交流電源電圧vsが正になる半サイクルでは、回路電流が流れている期間の一部でスイッチング要素Q1をオン状態にしている。この場合は、図20(a)〜図20(f)に示すようなゼロクロス信号(図示せず)からスイッチング要素Q1,Q2のオン・オフのタイミングを求めることができる。このようにスイッチング要素Q1,Q2を制御しても、部分スイッチング制御を適切に行うことができる。ここでも先の例と同様に、交流電源電圧vsの極性に同期させてスイッチング要素Q3,Q4をオン・オフする制御に代えて、回路電流isが流れているか否かに応じてスイッチング要素Q3,Q4をオン・オフする制御を行ってもよい。あるいは、回路電流isが流れている期間よりも若干長めの期間だけオンするようにしてもよい。
特に、図21(a)〜図21(f)に示したように、回路電流が流れている期間の一部でスイッチング要素Q3,Q4をオンさせ、且つスイッチング要素Q3,Q4として用いられるMOSFETに、寄生ダイオード(ダイオード要素D3,D4)の順方向電圧が低い素子を選定することで、先に示したのと同様の効果を得ることができる。
(8−6)変形例F
図23(a)は、変形例Fに係る電力変換装置において、部分スイッチング制御における交流電源電圧vsの時間的変化が示され、図23(b)には回路電流isと短絡電流ispが示され、図23(c)にはスイッチング要素Q1の駆動パルスの時間的変化が示され、図23(d)にはスイッチング要素Q2の駆動パルスの時間的変化が示され、図23(e)にはスイッチング要素Q3の駆動パルスの時間的変化が示され、図23(f)にはスイッチング要素Q4の駆動パルスの時間的変化が示されている。なお、変形例Fに係る電力変換装置の構成は、第1実施形態の電力変換装置1の構成と同じである。
変形例Fは、部分スイッチング制御において、交流電源電圧vsが正になる半サイクルではスイッチング要素Q1がオフ状態で維持され(図26(c)参照)、交流電源電圧vsが負になる半サイクルではスイッチング要素Q2がオフ状態で維持される点が(図26(d)参照)、第1実施形態(図7(c)及び図7(d)参照)とは異なっている。このようにしても、例えば、交流電源電圧vsが正になる半サイクルではダイオード要素D1を介して回路電流isが流れるため、部分スイッチング制御を適切に行うことができる。
ここでも先の例と同様に、交流電源電圧vsの極性に同期させてスイッチング要素Q3,Q4をオン・オフする制御に代えて、回路電流isが流れているか否かに応じてスイッチング要素Q3,Q4をオン・オフする制御を行ってもよいし、回路電流isが流れている期間よりも若干長めの期間だけオンするように制御してもよい。
特に、図21(a)〜図21(f)に示したように、回路電流isが流れている期間の一部でスイッチング要素Q3,Q4をオンさせ、且つスイッチング要素Q3,Q4として用いられるMOSFETに、寄生ダイオード(ダイオード要素D3,D4)の順方向電圧が低い素子を選定することで、先に示したのと同様の効果を得ることができる。
(8−7)変形例G
図24(a)は、変形例Gに係る電力変換装置において、高速スイッチング制御における交流電源電圧vsの時間的変化が示され、図24(b)には回路電流isと短絡電流ispが示され、図24(c)にはスイッチング要素Q1の駆動パルスの時間的変化が示され、図24(d)にはスイッチング要素Q2の駆動パルスの時間的変化が示され、図24(e)にはスイッチング要素Q3の駆動パルスの時間的変化が示され、図24(f)にはスイッチング要素Q4の駆動パルスの時間的変化が示されている。なお、変形例Gに係る電力変換装置の構成は、第1実施形態の電力変換装置1の構成と同じである。
変形例Gは、高速スイッチング制御において、交流電源電圧vsが正になる半サイクルではスイッチング要素Q1がオフ状態で維持され(図24(c)参照)、交流電源電圧vsが負になる半サイクルではスイッチング要素Q2がオフ状態で維持される点が(図24(d)参照)、第1実施形態(図10(c)及び図10(d)参照)とは異なっている。このようにしても、高速スイッチング制御を適切に行うことができる。ここでも先の例と同様に、交流電源電圧vsの極性に同期させてスイッチング要素Q3,Q4をオン・オフする制御に代えて、回路電流isが流れているか否かに応じてスイッチング要素Q3,Q4をオン・オフする制御を行ってもよいし、回路電流isが流れている期間よりも若干長めの期間だけオンするように制御してもよい。
特に、図21(a)〜図21(f)に示したように、回路電流isが流れている期間の一部でスイッチング要素Q3,Q4をオンさせ、且つスイッチング要素Q3,Q4として用いられるMOSFETに、寄生ダイオード(ダイオード要素D3,D4)の順方向電圧が低い素子を選定することで、先に示したのと同様の効果を得ることができる。
その他、例えば、交流電源電圧vsが正の極性の場合、スイッチング要素Q1,Q3,Q4をオフ状態で維持し、スイッチング要素Q2によって高速スイッチングを行うように制御してもよい(交流電源電圧vsが負の極性の場合も同様)。このように制御しても、力率を改善できるとともに、高調波を抑制できる。
(8−8)変形例H
図25は、変形例Hに係る電力変換装置の制御モードの切替えを説明するための模式図である。
図25に示す「部分スイッチング制御(同期整流動作を含む)」は、部分スイッチング制御に、同期整流動作が含まれること、言い換えると、力率改善動作と同期整流動作とを交互に行うことを意味している。図25において、「高速スイッチング制御(同期整流動作を含む)」とは、高速スイッチング制御に同期整流動作が含まれることを意味し、「部分スイッチング制御(ダイオード整流動作を含む)」とは、部分スイッチング制御にダイオード整流動作が含まれることを意味し、「高速スイッチング制御(ダイオード整流動作を含む)」とは、高速スイッチング制御にダイオード整流動作が含まれることを意味している。「ダイオード整流動作」とは、ダイオード要素D1等を介して回路電流isを流す動作である。従って、「部分スイッチング制御(ダイオード整流動作を含む)」とは、力率改善動作とダイオード整流動作とを交互に行うことで、部分スイッチング制御を行うことを意味している。
電力変換装置1の制御方法として、例えば、図25に示されている制御方法X1〜制御方法X8のいずれかを採用することができる。
制御方法X1では、負荷が大きい(例えば、電流検出部11の検出値が閾値I1以上である)場合には、同期整流動作を含む部分スイッチング制御を行い、負荷が小さい(例えば、電流検出部11の検出値が閾値I1未満である)場合には、同期整流制御を行う。
制御方法X2では、負荷が大きい(例えば、電流検出部11の検出値が閾値I1以上である)場合には、同期整流動作を含む高速スイッチング制御を行い、負荷が小さい(例えば、電流検出部11の検出値が閾値I1未満である)場合には、同期整流制御を行う。
図25に示す制御方法X3は、第2実施形態で説明した制御方法(図16、図17参照
)と同一である。
制御方法X4では、負荷が大きい(例えば、電流検出部11の検出値が閾値I1以上である)場合には、ダイオード整流動作を含む部分スイッチング制御を行い、負荷が小さい(例えば、電流検出部11の検出値が閾値I1未満である)場合には、同期整流制御を行うようにしてもよい。このようにダイオード整流動作を行うことで、交流電源電圧vsの半サイクルにおいて、オン状態にするスイッチング要素が1つで済むため、制御の簡略化を図ることができる。
他の制御方法X5〜X8については説明を省略するが、効率・高調波の抑制・昇圧等を考慮して、制御方法を適宜設定すればよい。例えば、高効率化、高調波電流の抑制、及び昇圧が主目的である場合には、制御方法X1〜X3のいずれかを選択すればよい。また、高効率化は主目的でなく、高調波電流の抑制及び昇圧が主目的である場合には、制御方法X4〜X6のいずれかを選択すればよい。
また、各実施形態及び/または各変形例は、適宜組み合わせることができる。例えば、制御方法X1〜X8(図25参照)のいずれかを用いて電力変換を行うことで、第2実施形態で説明した圧縮機41(図16参照)のモータ41aを駆動するようにしてもよい。
また、上記実施形態及び上記変形例では、負荷の大きさに応じて制御モードを切り替える制御について説明したが、電力変換装置1の用途や仕様によっては、負荷の大きさに関わらず、所定の制御モード(例えば、部分スイッチング制御)を実行するようにしてもよい。
(8−9)変形例I
図26(a)には、変形例Iに係る電力変換装置において、同期整流制御における交流電源電圧vsの時間的変化が示され、図26(b)には回路電流isが示され、図26(c)にはスイッチング要素Q1の駆動パルスの時間的変化が示され、図26(d)にはスイッチング要素Q2の駆動パルスの時間的変化が示され、図26(e)にはスイッチング要素Q3の駆動パルスの時間的変化が示され、図26(f)にはスイッチング要素Q4の駆動パルスの時間的変化が示されている。なお、変形例Iに係る電力変換装置の構成は、第1実施形態の電力変換装置1の構成と同じである。
変形例Iでは、同期整流制御において、ゼロクロス信号(図26(b)参照)を用いてスイッチング要素Q1,Q3(図26(c)及び図26(e)参照)のオン・オフタイミングを求めるとともに、それらをオン状態にする期間が、第1実施形態(図4(c)及び図4(e)参照)よりも短くなっている。具体的には、ゼロクロス信号の立ち上がりのタイミングからtdelay後にスイッチング要素Q1をオンした後、ton期間はオンし続け、その後オフさせる。また同様に、ゼロクロス信号の立ち下りのタイミングからtdelay後にスイッチング要素Q3をオンした後、ton期間はオンし続け、その後オフさせる。このようにスイッチング要素Q1,Q3を制御しても、同期整流制御を適切に行うことができる。この場合も、図6(a)〜図6(f)に示した場合と同様に、スイッチング要素Q1,Q3がオンしている区間t7ではスイッチ部(チャネル)に電流が流れ、スイッチング要素Q1,Q3がオフする区間t8では寄生ダイオードであるダイオード要素D1,D3に電流が流れるので、スイッチング要素Q1,Q3を含むMOSFETに、寄生ダイオード(ダイオード要素D1,D3)の順方向電圧が低い素子を選定することで、先に示したのと同様の効果を得ることができる。
なお、同期整流制御において、交流電源電圧vsの極性に同期させてスイッチング要素Q1,Q3をオン・オフさせる制御に代えて、回路電流isが流れているか否かに応じてスイッチング要素Q1,Q3をオン・オフするように制御してもよい。あるいは、回路電流isが流れている期間よりも若干長めの期間になるよう、ゼロクロス信号からオン・オフタイミングを決定してもよい。
この場合には、スイッチング要素Q2が第1スイッチング要素に対応し、スイッチング要素Q3が第2スイッチング要素に対応する。
(8−10)変形例J
上記実施形態及び上記変形例では、電流検出部11(図1参照)の検出値に基づいて制御モードを切り替える場合について説明したが、これに限らない。例えば、配線ha,hb(図1参照)に流れる電流と正の相関を有する「負荷」を、負荷検出部14(図1参照)によって検出し、この負荷検出部14によって検出された「負荷」の大きさに基づいて制御モードを切り替えるようにしてもよい。例えば、直流電圧検出部13の検出値(出力電圧)に基づいて、制御モードを切り替えるようにしてもよい。なお、負荷が大きくなるにつれて出力電圧も大きくなるため、複数の閾値によって分けられる負荷領域と出力電圧との関係は、図17と同様になる。
また、コンデンサC1(図1参照)の出力側に接続されるインバータ2(図16参照)の電流値や、このインバータ2に接続されるモータ41a(図16参照)の回転速度、モータ41aの変調率に基づいて、制御モードを切り替えるようにしてもよい。「変調率」とは、インバータ2の直流電圧に対するモータ41aの印加電圧(線間電圧)の実効値の比である。なお、負荷が大きくなるにつれてインバータ2に流れる電流(モータ41aの回転速度、変調率)も大きくなる。したがって、複数の閾値によって分けられる負荷領域と、インバータ2に流れる電流(モータ41aの回転速度、変調率)との関係は、図17と同様になる。
(8−11)変形例K
上記実施形態及び上記変形例では、シャント抵抗R1(図1参照)によって回路電流isを検出する構成について説明したが、これに限らない。例えば、シャント抵抗R1に代えて、高速の電流トランスを用いてもよい。
また、上記実施形態及び上記変形例では、ダイオード要素が寄生ダイオードである場合について説明している。しかし、スイッチング要素Q1〜Q4とダイオード要素D1〜D4には別々の部品を用いてもよい。例えばスイッチング要素であるMOSFETとダイオード要素である寄生ダイオードをひとつの部品の中につくり込むのに代えて、ダイオード要素D1〜D4として整流ダイオード(図示せず)を用いて整流ダイオードを逆並列にスイッチング要素Q1〜Q4にそれぞれ接続してもよい。この場合、整流ダイオード(ダイオード要素)とMOSFET(スイッチング要素)が別々の部品になる。
(8−12)変形例L
また、第2実施形態では、電力変換装置1が空気調和機W(図16参照)に搭載される場合について説明したが、これに限らない。例えば、電車、自動車、電車及び自動車以外の乗り物、冷蔵庫、給湯機、洗濯機、バッテリへの充電設備等に電力変換装置1を搭載してもよい。
(8−13)変形例M
上記実施形態及び上記変形例では、交流電源Gが二相交流である場合について説明したが、三相交流などであってもよく、電力変換装置が適用できる交流電源Gは二相交流には限られない。例えば、三相交流に対応させるには、第3入力端子を追加して、第3入力端子に対応する第3レグを追加すればよい。
(8−14)変形例N
上記実施形態及び上記変形例では、コントローラ15が、メモリに格納された実行可能なプログラム及びデータをCPUによって解釈実行することで制御を行う場合について説明した。このプログラム及びデータは、記録媒体を介してメモリ内に導入されてもよいし、記録媒体上から直接実行されてもよい。また、記録媒体からメモリへのプログラム及びデータの導入は、電話回線や搬送路等を介して行ってもよい。しかし、コントローラ15は、CPUとメモリを用いて行うのと同様の制御を行うことができる集積回路(IC)を用いて構成されてもよい。ここでいうICには、LSI(large-scale integrated circuit)、ASIC(application-specific integrated circuit)、ゲートアレイ、FPGA(field programmable gate array)等が含まれる。また、集積回路には、ブリッジ整流回路10を含めてもよい。
また、上記実施形態及び上記変形例に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
(8−15)変形例O
上記実施形態では、交流電圧検出部12を配線ha,hbに接続する場合について説明している。しかし、交流電圧検出部12は、第1入力端子IT1と第2入力端子IT2に接続してもよい。また、交流電圧検出部12は、交流電圧検出部12が接続されている箇所の電圧を補正して用いるように構成されてもよい。
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。