JP6980183B2 - 結晶性酸化物半導体膜、半導体装置 - Google Patents

結晶性酸化物半導体膜、半導体装置 Download PDF

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Description

本発明は、新規な結晶性酸化物半導体膜および前記結晶性酸化物半導体膜を用いた半導体装置に関する。
高耐圧、低損失および高耐熱を実現できる次世代のスイッチング素子として、バンドギャップの大きな酸化ガリウム(Ga)を用いた半導体装置が注目されており、インバータなどの電力用半導体装置への適用が期待されている。当該酸化ガリウムは、非特許文献1によれば、インジウムやアルミニウムをそれぞれ、あるいは組み合わせて混晶とすることにより、バンドギャップを制御することが可能であり、中でも、InX1AlY1GaZ1(0≦X1≦2、0≦Y1≦2、0≦Z1≦2、X1+Y1+Z1=1.5〜2.5)で表されるInAlGaO系半導体は、極めて魅力的な材料である。
そして、InAlGaO系半導体の中でも、α−AlGaO系半導体の厚膜は、優れた絶縁破壊特性等が期待されている。
特許文献1には、アルミニウムおよびガリウムを含むコランダム構造酸化物結晶が記載されており、高温時の相転移が抑制されることが記載されている。しかしながら、AlGaO系半導体は、成膜自体が容易ではなく、さらに、厚さ50nm以上の厚い膜を得ることが困難であった。そのため、AlGaO系半導体の厚膜が待ち望まれていた。
特開2015−017027号公報
金子健太郎、「コランダム構造酸化ガリウム系混晶薄膜の成長と物性」、京都大学博士論文、平成25年3月
本発明は、膜厚が500nm以上のα−AlGaO系半導体の厚膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ミストCVD装置の改良により、旋回流を用いて成膜すると、膜厚500nm以上の結晶性AlGaO系半導体膜が得られることを知見し、この膜が、従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] アルミニウムおよびガリウムを少なくとも含有する酸化物半導体を主成分として含む結晶性酸化物半導体膜であって、
膜厚が500nm以上であることを特徴とする結晶性酸化物半導体膜。
[2] 酸化物半導体がコランダム構造を有する前記[1]記載の結晶性酸化物半導体膜。
[3] 膜厚が1μm以上であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の結晶性酸化物半導体膜。
[4] 酸化物半導体が、α−(AlGa1−x(但し、1>X>0)またはα−(AlZ1GaZ2InZ3(但し、1>Z1,Z2,Z3>0およびZ1+Z2+Z3=1)である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の結晶性酸化物半導体膜。
[5] 金属元素中のアルミニウム濃度が、1原子%以上である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の結晶性酸化物半導体膜。
[6] 原料溶液を霧化または液滴化して生成されるミストまたは液滴を、キャリアガスでもって成膜室内に設置されている基体まで搬送し、ついで該基体上で該ミストまたは該液滴を熱反応させて成膜されてなる前記[1]〜[5]のいずれかに記載の結晶性酸化物半導体膜。
[7] 前記成膜室内において、前記ミストまたは前記液滴を旋回させて旋回流を発生させる前記[6]記載の結晶性酸化物半導体膜。
[8] 前記[1]〜[7]のいずれかに記載の結晶性半導体膜を含む半導体装置。
[9] 半導体レーザ、ダイオードまたはトランジスタである前記[8]記載の半導体装置。
本発明によれば、膜厚が500nm以上の結晶性AlGaO系半導体の厚膜を提供できる。
本発明において用いられる成膜装置(ミストCVD)の概略構成図である。 本発明において用いられる霧化・液滴化部を説明する図である。 図2における超音波振動子を説明する図である。 本発明において用いられる成膜部の一態様を示す図である。 図4の成膜室における基板上のミストまたは液滴の流れを説明する模式図である。(a)は、円筒状の成膜室の断面を上面から見た模式図であり、(b)は、円筒状の成膜室の断面を側面から見た模式図である。 実施例1におけるXRD測定結果を示す。 実施例2におけるAFM像を示す。
本発明の結晶性酸化物半導体膜は、アルミニウムおよびガリウムを少なくとも含有する酸化物半導体を主成分として含む結晶性酸化物半導体膜であって、膜厚が500nm以上であることを特徴とする。
酸化物半導体は、アルミニウムおよびガリウムを少なくとも含有していれば特に限定されないが、好適には例えば、α−(AlGa1−x(但し、1>X>0)、α−(AlZ1GaZ2InZ3(但し、1>Z1,Z2,Z3>0およびZ1+Z2+Z3=1)などが挙げられる。また、前記酸化物半導体は、コランダム構造を有していてもよく、また、βガリア構造を有していてもよいが、コランダム構造を有しているのが好ましい。
「主成分」とは、例えば酸化物半導体がα−(AlGa1−xである場合、前記層の金属元素中のアルミニウムおよびガリウムの原子比の合計が0.5以上の割合でα−(AlGa1−xが含まれていればそれでよい。本発明においては、前記層中の金属元素中のアルミニウムおよびガリウムの原子比の合計が0.7以上であることが好ましく、0.8以上であるのがより好ましい。
また、本発明においては、膜中の金属元素中のアルミニウムの濃度が1原子%以上であるのが、回転ドメインと反りとをより低減できるので好ましく、2原子%以上であるのがより好ましい。なお、アルミニウム濃度の上限は、特に限定されないが、通常、99原子%以下であり、好ましくは80原子%以下であり、より好ましくは50原子%以下であり、最も好ましくは30原子%以下である。
また、結晶性酸化物半導体薄膜の厚さは、500nm以上であれば特に限定されないが、本発明においては、700nm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることが最も好ましい。なお、前記酸化物半導体は、通常、単結晶であるが、多結晶であってもよい。
前記結晶性酸化物半導体膜の形成手段は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されないが、基体上にミストを用いて結晶成長することにより製造することが好ましく、基体上に、バッファ層を介して結晶成長させるのがより好ましい。また、前記バッファ層は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、コランダム構造を有する酸化物半導体であるのが好ましく、第1の層と、第1の層とは異なる材料を主成分とする第2の層とが、少なくとも1層ずつ交互に積層されている量子井戸構造を有するのがより好ましい。前記量子井戸構造については、前記第1の層の主成分が、コランダム構造を有する酸化物であり、第2の層の主成分が、アルミニウムを含む酸化物であるのが好ましく、第1の層の主成分がガリウム含有酸化物半導体であり、かつ第2の層の主成分がアルミニウム含有酸化物半導体であるのがより好ましい。また、本発明においては、前記第2の層が、アルミニウムを少なくとも含む場合、前記バッファ層の金属元素中のアルミニウム濃度が1原子%以上であるのが好ましく、2原子%以上であるのがより好ましい。なお、アルミニウム濃度の上限は、特に限定されないが、通常、99原子%以下であり、好ましくは80原子%以下であり、より好ましくは50原子%以下であり、最も好ましくは30原子%以下である。
前記結晶性酸化物半導体膜の好ましい形成手段としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、原料溶液を霧化または液滴化して生成されるミストまたは液滴を、キャリアガスでもって成膜室内に設置されている基体まで搬送し、ついで該基体上で該ミストまたは該液滴を熱反応させて成膜する手段が好ましく、前記成膜室内において、前記ミストまたは前記液滴を旋回させて旋回流を発生させるのがより好ましい。
以下、旋回流を発生させる成膜装置について、図面を用いて説明するが、本発明は、これら図面等に限定されるものではない。
図1は、旋回流を発生させる成膜装置の一例を示している。成膜装置1は、キャリアガスを供給するキャリアガス源2aと、キャリアガス源2aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁3aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)源2bと、キャリアガス(希釈)源2bから送り出されるキャリアガス(希釈)の流量を調節するための流量調節弁3bと、原料溶液4aが収容されるミスト発生源4と、水5aが入れられる容器5と、容器5の底面に取り付けられた超音波振動子6と、成膜室7と、ミスト発生源4から成膜室7までをつなぐ供給管9と、成膜室7内に設置されたホットプレート8と、排気管17と排気ファン11とを備えている。ホットプレート8上には、基板10が設置されている。
前記成膜装置1は、原料溶液を霧化または液滴化する霧化・液滴化部を備えている。図2は、霧化・液滴化部の一態様を示している。原料溶液4aが収容されている容器からなるミスト発生源4が、水5aが収容されている容器5に、支持体(図示せず)を用いて収納されている。容器5の底部には、超音波振動子6が備え付けられており、超音波振動子6と発振器16とが接続されている。そして、発振器16を作動させると、超音波振動子6が振動し、水5aを介して、ミスト発生源4内に超音波が伝播し、原料溶液4aが霧化または液滴するように構成されている。
図3は、図2に示されている超音波振動子6の一態様を示している。図2の超音波振動子は、支持体6e上の円筒状の弾性体6d内に、円板状の圧電体素子6bが備え付けられており、圧電体素子6bの両面に電極6a、6cが設けられている。そして、電極に発振器を接続して発振周波数を変更すると、圧電振動子の厚さ方向の共振周波数及び径方向の共振周波数を持つ超音波が発生されるように構成されている。
上記したとおり、霧化・液滴化部では、原料溶液を調整し、前記原料溶液を霧化または液滴化してミストまたは液滴を発生させる。霧化または液滴化手段は、前記原料溶液を霧化または液滴化できさえすれば特に限定されず、公知の霧化手段または液滴化手段であってよいが、本発明においては、超音波振動により行う霧化手段または液滴化手段であるのが好ましい。
搬送部では、キャリアガスおよび所望により供給管等を用いて前記ミストまたは前記液滴を基体まで搬送する。キャリアガスの種類としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが好適な例として挙げられる。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、キャリアガス濃度を変化させた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、例えば30mm角基板上に成膜する場合には、0.01〜20L/分であるのが好ましく、1〜10L/分であるのがより好ましい。
成膜部では、前記ミストまたは前記液滴を熱処理して、熱反応を生じさせて、前記基体表面の一部または全部に成膜する。前記熱反応は、加熱でもって前記ミストまたは前記液滴が反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程において、熱反応を行う際の条件等については特に制限はないが、通常、加熱温度は120〜600℃の範囲であり、好ましくは120℃〜350℃の範囲であり、より好ましくは130℃〜300℃の範囲である。また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、大気圧下で行われるのが好ましい。
図4は、成膜部の一態様を示している。図4の成膜室7は、円筒状であり、ホットプレート8上に設けられている。そして、成膜室7は、ミスト発生源4と供給管9を介して接続されており、ミスト発生源4で発生したミストまたは液滴4bが、キャリアガスによって供給管9を通って成膜室7内に流れ込み、ホットプレート上に載置された基板10上で、熱反応するように構成されている。また、成膜室7は、天井面(上面)の中心に排気口を有しており、前記搬入口よりも前記基体から離れているところに、前記ミストまたは前記液滴の排気口が設けられている。そして、成膜室7は、排気口から排気管19aと接続されており、熱反応後のミスト、液滴もしくは排気ガスが、排気管19aへと運ばれるように構成されている。本発明においては、熱反応後のミスト、液滴もしくは排気ガスがトラップ処理に付されるように、トラップ手段をさらに備えていてもよい。成膜室7に、ミストまたは液滴4bが搬送されると、図4において矢印で表されるように、基板に向かってミストまたは液滴4bが流れ出す。このとき、内向きの旋回流が発生する。そして、ミストまたは液滴4bが旋回しながら、基板上で熱反応する。ついで、熱反応後のミスト、液滴もしくは排気ガスは、図4において矢印で表されるように、排気口へと流れていき、そして、排気管19aへと運ばれていく。
前記旋回流は、内向きでも外向きでもいずれの向きに流れてもよいが、本発明においては、内向きに流れるのが好ましい。図5は、図4の成膜室における基板上のミストまたは液滴の流れを説明する模式図である。図5(a)は、円筒状の成膜室7の断面を上面から見た図であり、成膜室7内には、基板10が設置されており、ミストまたは液滴の流れが矢印で表されている。図4の成膜室においては、図5(a)の矢印方向に旋回流が生じ、ミストまたは液滴が内向きに旋回して基板中心へと流れる。図5(b)は、円筒状の成膜室7の断面を側面から見た模式図であり、成膜室7内に基板10が設置されている。図5(b)において矢印で表されるように、外側から内側に向かってミストまたは液滴が流れる。そして、基板中心付近上に到達したミストまたは液滴は、上方の排気口に向かって流れる。なお、本発明においては、基体を成膜室上面に設置するなどして、フェイスダウンとしてもよいし、図4のように、基体を底面に設置して、フェイスアップとしてもよい。なお、前記旋回流の発生手段は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の手段を用いてもよい。例えば、成膜室を円筒状にして、底面または上面に基体を配置し、側面からミストまたは液滴を導入し、基体が配置されている面の対称となる面(好ましくは箇所)に排出口を設けて、旋回流を発生させる手段等が挙げられる。なお、旋回流の流速は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、好ましくは10〜100cm/秒であり、より好ましくは20〜70cm/秒である。
以下、図1を用いて、前記成膜装置の使用態様を説明する。
まず、原料溶液4aをミスト発生源4内に収容し、基板10をホットプレート8上に設置させ、ホットプレート8を作動させる。次に、流量調節弁3(3a、3b)を開いてキャリアガス源2(2a、2b)からキャリアガスを成膜室7内に供給し、成膜室7の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量とキャリアガス(希釈)の流量をそれぞれ調節する。次に、超音波振動子6を振動させ、その振動を、水5aを通じて原料溶液4aに伝播させることによって、原料溶液4aを霧化または液滴化させてミストまたは液滴4bを生成する。ついで、ミストまたは液滴4bが、キャリアガスによって成膜室7内に導入される。成膜室7の上面真ん中には、排気口が設けられており、排気管17と接続されている。また、排気管17は排気ファン11に接続されており、排気ファン17によって、成膜室7内の排気ガス等が排気口から吸気されるように構成されている。また、円筒状の成膜室7の側面には、ミストまたは液滴の搬入口が設けられており、成膜室7内に導入されたミストまたは液滴が旋回して、内向きに流れる旋回流が生じるように構成されている。そして、旋回しながら、ミストまたは液滴が、成膜室7内でホットプレート8の加熱により熱反応して、基板10上に成膜することができる。
なお、前記成膜室の形状は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、円筒状または略円筒状であってもよいし、角柱状(例えば立方体、直方体、五角柱、六角柱もしくは八角柱等)または略角柱状であってもよいが、本発明においては、円筒状または略円筒状が好ましい。
また、前記基体は成膜時に回転されてもよく、回転方向は、前記旋回流の向きと逆向きにするのが好ましい。
本発明においては、上記のような成膜装置等を用いて、原料溶液を霧化または液滴化して生成されるミストまたは液滴を、キャリアガスでもって成膜室内に設置されている基体まで搬送し、ついで該基体上で該ミストまたは該液滴を熱反応させて成膜する。また、本発明では、上記のような旋回流を発生させる成膜装置以外にも、例えば、図6に示されるような成膜装置も好適に用いることができる。
(原料溶液)
原料溶液は、アルミニウムまたはガリウムの金属を少なくとも含有し、霧化または液滴化が可能であれば特に限定されない。なお、原料溶液は、1種でもよいし、2種以上の溶液を原料溶液として用いてもよい。前記原料溶液は、上記金属を霧化できるものであれば特に限定されないが、前記原料溶液として、前記金属を錯体または塩の形態で有機溶媒または水に溶解または分散させたものを好適に用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩の形態としては、例えば、有機金属塩(例えば金属酢酸塩、金属シュウ酸塩、金属クエン酸塩等)、硫化金属塩、硝化金属塩、リン酸化金属塩、ハロゲン化金属塩(例えば塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩等)などが挙げられる。
また、前記原料溶液には、ハロゲン化水素酸や酸化剤等の添加剤を混合してもよい。前記ハロゲン化水素酸としては、例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸などが挙げられるが、中でも、臭化水素酸またはヨウ化水素酸が好ましい。前記酸化剤としては、例えば、過酸化水素(H)、過酸化ナトリウム(Na)、過酸化バリウム(BaO)、過酸化ベンゾイル(CCO)等の過酸化物、次亜塩素酸(HClO)、過塩素酸、硝酸、オゾン水、過酢酸やニトロベンゼン等の有機過酸化物などが挙げられる。
前記原料溶液には、ドーパントが含まれていてもよい。前記ドーパントは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。前記ドーパントとしては、例えば、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウムまたはニオブ等のn型ドーパント、またはp型ドーパントなどが挙げられる。ドーパントの濃度は、通常、約1×1016/cm〜1×1022/cmであってもよいし、また、ドーパントの濃度を例えば約1×1017/cm以下の低濃度にしてもよい。また、さらに、本発明によれば、ドーパントを約1×1020/cm以上の高濃度で含有させてもよい。
(基体)
前記基体は、前記膜を支持できるものであれば特に限定されない。前記基体の材料も、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基体であってよく、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。前記基体の形状としては、どのような形状のものであってもよく、あらゆる形状に対して有効であり、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状などが挙げられるが、本発明においては、基板が好ましい。基板の厚さは、本発明においては特に限定されない。
前記基板は、板状であって、前記結晶膜の支持体となるものであれば特に限定されない。絶縁体基板であってもよいし、半導体基板であってもよいし、導電性基板であってもよいが、前記基板が、絶縁体基板であるのが好ましく、また、表面に金属膜を有する基板であるのも好ましい。前記基板としては、例えば、コランダム構造を有する基板材料を主成分として含む下地基板、またはβ−ガリア構造を有する基板材料を主成分として含む下地基板、六方晶構造を有する基板材料を主成分として含む下地基板などが挙げられる。ここで、「主成分」とは、前記特定の結晶構造を有する基板材料が、原子比で、基板材料の全成分に対し、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上含まれることを意味し、100%であってもよいことを意味する。
基板材料は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のものであってよい。前記のコランダム構造を有する基板材料としては、例えば、前記のコランダム構造を有する材料として例示したものと同じものなどが挙げられるが、本発明においては、α−Alまたはα−Gaが好ましい。そして、コランダム構造を有する基板材料を主成分とする下地基板としては、サファイア基板(好ましくはc面サファイア基板)や、α型酸化ガリウム基板などが好適な例として挙げられる。β−ガリア構造を有する基板材料を主成分とする下地基板としては、例えばβ−Ga基板、又はGaとAlとを含みAlが0wt%より多くかつ60wt%以下である混晶体基板などが挙げられる。また、六方晶構造を有する基板材料を主成分とする下地基板としては、例えば、SiC基板、ZnO基板、GaN基板などが挙げられる。なお、六方晶構造を有する基板材料を主成分とする下地基板上には、直接または別の層(例:緩衝層)を介して、各層を積層してもよい。
本発明においては、前記基体が、コランダム構造を有する基板材料を主成分とする下地基板であるのが好ましく、サファイア基板またはα型酸化ガリウム基板であるのがより好ましく、c面サファイア基板であるのが最も好ましい。
(積層手段)
結晶性酸化物半導体膜の積層は、ミストCVD法により行うのが好ましく、上記のような旋回流を発生させる成膜装置を用いるのがより好ましい。前記ミストCVD法では、前記原料溶液を霧化または液滴化し(霧化・液滴化工程)、生成されるミストまたは液滴をキャリアガスによって前記基体に供給し(ミスト・液滴供給工程)、供給されたミストまたは液滴を反応させて、前記基体上に成膜する(成膜工程)。
前記霧化・液滴化工程は、原料溶液を調整し、前記原料溶液を霧化または液滴化してミストを発生させる。前記金属の配合割合は、特に限定されないが、原料溶液全体に対して、0.0001mol/L〜20mol/Lが好ましい。霧化または液滴化手段は、前記原料溶液を霧化または液滴化できさえすれば特に限定されず、公知の霧化手段または液滴化手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化手段または液滴化手段であるのが好ましい。前記ミストまたは前記液滴は、初速度がゼロで、空中に浮遊するものが好ましく、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、空間に浮かびガスとして搬送することが可能なミストであるのがより好ましい。液滴サイズは、特に限定されず、数mm程度の液滴であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは1〜10μmである。
前記ミスト・液滴供給工程では、前記キャリアガスによって前記ミストまたは前記液滴を基体へ供給する。キャリアガスの種類としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが好適な例として挙げられる。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、キャリアガス濃度を変化させた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、反応炉内での線速(より具体的には、反応炉は高温になっており、環境に依存して変化してしまうため、室温を仮定して換算される線速)で、0.1m/s〜100m/sが好ましく、1m/s〜10m/sがより好ましい。
成膜工程では、前記ミストまたは前記液滴を反応させて、前記基体表面の一部または全部に成膜する。前記反応は、前記ミストまたは前記液滴から膜が形成される反応であれば特に限定されないが、本発明においては、熱反応が好ましい。前記熱反応は、熱でもって前記ミストまたは前記液滴が反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、通常、溶媒の蒸発温度以上の温度で行うが、高すぎない温度以下が好ましい。また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、大気圧下で行われるのが蒸発温度の計算が簡単になる等の点で好ましい。なお、真空の場合には、蒸発温度を下げることができる。また、膜厚は成膜時間を調整することにより、設定することができる。
前記結晶性酸化物半導体膜は、前記基体とともに、積層構造体として、半導体装置等に用いることができる。また、本発明においては、前記結晶性酸化物半導体膜を、前記基体等から剥離する等の公知の手段を用いた後に、半導体装置等に用いてもよい。
前記結晶性酸化物半導体膜を用いて形成される半導体装置としては、例えば、半導体レーザ、ダイオードまたはトランジスタなどが挙げられ、より具体的には例えば、MISやHEMT等のトランジスタやTFT、半導体‐金属接合を利用したショットキーバリアダイオード、他のP層と組み合わせたPN又はPINダイオード、受発光素子等が挙げられる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
1.製造装置
まず、図1を用いて、本実施例で用いた成膜装置1を説明する。成膜装置1は、キャリアガスを供給するキャリアガス源2aと、キャリアガス源2aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁3aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)源2bと、キャリアガス(希釈)源2bから送り出されるキャリアガス(希釈)の流量を調節するための流量調節弁3bと、原料溶液4aが収容されるミスト発生源4と、水5aが入れられる容器5と、容器5の底面に取り付けられた超音波振動子6と、成膜室7と、ミスト発生源4から成膜室7までをつなぐ石英製の供給管9と、成膜室7内に設置されたホットプレート8と、排気管17および排気ファン11とを備えている。ホットプレート8上には、基板10が設置されている。
2.原料溶液の作製
ガリウムアセチルアセトナートとアルミニウムアセチルアセトナートとがモル比で1:6となり、かつ塩酸が体積比で2%となるように水溶液を調整し、これを原料溶液とした。
3.成膜準備
上記2.で得られた原料溶液4aをミスト発生源4内に収容した。次に、基板10として4インチのc面サファイア基板を用いて、c面サファイア基板をホットプレート8上に設置し、ホットプレート8を作動させて成膜室7内の温度を500℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁3(3a、3b)を開いてキャリアガス源2(2a、2b)からキャリアガスを成膜室7内に供給し、成膜室7の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を8L/minに、キャリアガス(希釈)の流量を0.5L/minにそれぞれ調節した。なお、キャリアガスとして酸素を用いた。
4.単層膜形成
次に、超音波振動子6を2.4MHzで振動させ、その振動を、水5aを通じて原料溶液4aに伝播させることによって、原料溶液4aを微粒子化させて原料微粒子4bを生成した。この原料微粒子4bが、キャリアガスによって成膜室7内に導入され、成膜室7内でミストが旋回して、旋回流が発生した。そして、大気圧下、600℃にて、成膜室7内で旋回流のミストが反応して、基板10上に薄膜が形成された。なお、成膜時間は3時間であった。
5.評価
上記4.にて得られた膜につき、アルミニウムの含有率をX線にて測定した。XRD測定結果を図6に示す。XRD測定結果から、得られた膜は、今まで成膜が困難とされてきたコランダム構造のアルミニウム62.8%含有AlGaO系半導体膜であった。また、得られたコランダム構造のAlGaO系半導体膜につき、膜厚を測定したところ、720nmであった。
今まではコランダム構造のAlGaO系半導体膜が得られたとしても、50nm以上の厚い膜を得ることは困難であったが、本発明によれば、700nm以上もの厚いコランダム構造のAlGaO系半導体膜を得ることができた。
(実施例2)
旋回流の旋回速度を低速化した条件で、成膜室内のノズルを基板に近づけて成膜したこと以外は、実施例1と同様にして、コランダム構造のAlGaO系半導体膜を成膜した。得られた膜につき、X線回折装置を用いて測定したところ、コランダム構造のアルミニウム77%含有AlGaO系半導体膜であった。また、得られたコランダム構造のAlGaO系半導体膜につき、膜厚を測定したところ、2.4μmであった。なお、AFM像を図7に示す。AFMにより測定された1μm×1μmにおけるRMS値は13.85nmであった。そのため、アルミニウムを70%以上も含む高濃度アルミニウム含有AlGaO系半導体膜でも、つまり、アルミニウムの濃度が高くても、表面の荒れが抑制された良質な膜が得られたことがわかった。
本発明の結晶性酸化物半導体膜は、半導体(例えば化合物半導体電子デバイス等)、電子部品・電気機器部品、光学・電子写真関連装置、工業部材などあらゆる分野に用いることができるが、特に、半導体装置に有用である。
1 成膜装置
2a キャリアガス源
2b キャリアガス(希釈)源
3a 流量調節弁
3b 流量調節弁
4 ミスト発生源
4a 原料溶液
4b 原料微粒子
4c 排気ガス
5 容器
5a 水
6 超音波振動子
6a 電極
6b 圧電体素子
6c 電極
6d 弾性体
6e 支持体
7 成膜室
8 ホットプレート
9 供給管
10 基板
11 排気ファン
16 発振器
17 排気管

Claims (6)

  1. 結晶性半導体膜を含む半導体装置であって、
    前記結晶性半導体膜は、アルミニウムおよびガリウムを少なくとも含有する酸化物半導体を主成分として含み、
    膜中の金属元素中のアルミニウム濃度が62.8原子%以上80原子%以下であり、
    膜厚が500nm以上であることを特徴とする半導体装置。
  2. 膜中の金属元素中のアルミニウム濃度が77原子%以下である請求項1記載の半導体装置。
  3. 酸化物半導体がコランダム構造を有する請求項1または2に記載の半導体装置。
  4. 膜厚が1μm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
  5. 酸化物半導体が、α−(AlGa1−x(但し、1>X>0)またはα−(AlZ1GaZ2InZ3(但し、1>Z1,Z2,Z3>0およびZ1+Z2+Z3=1)である請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置。
  6. 半導体装置は、半導体レーザ、ダイオードまたはトランジスタである請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置。
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