JP6976875B2 - 水溶性セレンの分析方法並びにそれを利用したセレン含有排水の排水処理システム - Google Patents

水溶性セレンの分析方法並びにそれを利用したセレン含有排水の排水処理システム Download PDF

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本発明は、セレン化水素ガス検知器を利用し水溶性セレンの定量分析方法並びにそれを利用したセレン含有排水の排水処理システムに関する。さらに詳述すると、本発明は、硫黄化合物を含む排水、例えば石炭火力発電所から排出される脱硫排水等に含まれる6価セレンを定量分析するに有用な水溶性セレンの分析方法並びにそれを利用したセレン含有排水の排水処理システムに関する。
排水中のセレン含有量については、排水基準によって厳しく規制されており、その排水基準値を遵守するために排水中のセレン濃度の継続的な監視及び管理が必要となる。例えば、電気事業においては、石炭火力発電所の排煙脱硫排水には石炭に含まれる微量のセレンに起因して水溶性セレン(4価セレン:SeO 2−、6価セレン:SeO 2−)が含まれ、その水溶性セレン濃度が使用する炭種等によって変動することから、水溶性セレン濃度を適切に現場で継続的に監視・管理し、水溶性セレン濃度を低減するための適切な対策等を講じる必要があり、セレン濃度を現場で自動監視するプロセスモニターが求められている。
一般に、水溶性セレンの分析に関しては、公定法で定められているが、公定法による分析には時間がかかり過ぎると共に大がかりな設備を必要とするため、現場での排水中のセレン濃度の継続的な監視及び管理には適していないという問題がある。セレン濃度を現場で監視する自動測定機(プロセスモニター)を実現するためには、排水基準値をカバーできる検出感度があり、使用する薬品の管理が容易であること、ランニングコストが低いこと、測定器およびユーティリティが大型・高価にならないことを兼ね備え、しかも、迅速かつ簡易にセレンの定量分析を行うことができる手法の確立が急務である。
そこで、本件出願人は、公定法に代わる簡易測定手法として、排水中の4価のセレンを水素化ホウ素ナトリウムと反応させてセレン化水素に還元気化させ、市販のガスセンサー・セレン化水素ガス検知器を用いて検出し、予め既知のセレン濃度から得られた検量線に基づいて分析用試料に溶存している4価のセレン濃度を定量分析する簡易な分析法を提案している(特許文献1参照)。
しかしながら、脱硫排水中には、4価セレンのみならず6価セレンも含まれる場合もあれば、硫黄化合物が含まれる場合もある。このような排水(採取した検査用の試料)に対して酸性条件下で水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を加えて水素化処理を行うと、4価セレンがセレン化水素になると同時に硫黄化合物に由来する硫化水素も発生してしまうこととなる。セレン化水素ガス検知器は、硫化水素にもセレン化水素と同等の感度を有することから、硫化水素が妨害成分(妨害物質)となってセレン化水素だけを測定することができない問題が生ずる。即ち、セレン化水素ガス検知器を利用したセレンモニターでは、排水中に硫黄化合物が存在すると、硫化水素の妨害によってセレン化水素を正確に測定できず、正確な分析値を得られない場合がある。しかも、排水に6価セレンが含まれていても、その濃度を求めることができない。
そこで、本件出願人は、排水に過マンガン酸カリウム(KMnO)と硫酸とを添加して加熱することにより、排水中の硫黄化合物を酸化分解して安定な硫酸イオンとすると共に、4価セレンを酸化して6価セレンとし、その後塩酸を添加して加熱し6価セレンを4価セレンに還元する還元処理で全セレンを4価セレンに揃え、その後排水に含まれる4価セレンを水素化ホウ素ナトリウムと反応させてセレン化水素ガスを発生させ、このセレン化水素ガスをセレン化水素ガス検知器に導いて、セレン化水素ガス検知器により検出された信号値に基づいて、排水の全セレン濃度を定量分析することを提案している(特許文献2参照)。
特開2009−8668号 特開2013−96876号
しかしながら、特許文献2記載のセレン化水素ガス検知器を利用したセレンモニターは、排水中の全セレン(4価セレンと6価セレンとが合算されたもの)の濃度を定量分析することはできるが、4価セレンだけあるいは6価セレンだけを定量分析することはできない。
ところが、4価セレンは通常の排水処理(凝集沈殿処理)によって除去できるのに対し、6価セレンは処理が難しく、専用の排水処理設備において6価セレンを4価セレンもしくは金属セレンに還元する必要がある。それにも拘わらず石炭火力発電所の排煙脱硫排水には、含まれる6価と4価のセレンの割合が定まっておらず、6価と4価のセレンが半分半分のケースもあれば、6価セレンが大部分を占めるケースもある。このことから、セレン処理設備を効率的に運用するためには、処理対象である6価セレンの濃度の精確なモニタリング(定量分析)が有効であり、排水のセレン濃度を化学形態別に自動測定する技術(化学形態別セレンモニター)が求められる。
そこで、本発明は、セレン化水素ガス検知器を利用して排水中の6価セレン濃度を簡易に定量分析し得る水溶性セレンの分析方法を提供することを目的とする。また、本発明は、セレン処理設備を効率的に運用し得るセレン含有排水の排水処理システムを提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本願発明の水溶性セレン分析方法は、脱硫排水から採取された分析用試料に水素化ホウ素ナトリウムと塩酸とを添加して常温で反応させ分析用試料中の4価セレンをセレン化水素ガスとして分析用試料中から離脱させると同時に分析用試料中の硫黄化合物も硫化水素ガスとして分析用試料中から離脱させる水素化除去工程と、セレン化水素ガス並びに硫化水素ガスを除去した分析用試料中にさらに塩酸を添加して加熱し分析用試料中に残存する6価のセレンを4価セレンに還元する塩酸還元工程と、さらに6価のセレンを4価セレンに還元させた分析用試料に水素化ホウ素ナトリウムを添加して常温下で反応させセレン化水素ガスを発生させるセレン水素化工程とを有し、セレン水素化工程で発生したセレン化水素ガスをセレン化水素ガス検知器に導いて等価6価セレン濃度を定量分析するようにしている。
また、本発明のセレン含有排水の排水処理システムは、6価セレン専用排水処理設備と4価セレンを処理する凝集沈殿排水処理設備とを備える排水処理ラインに、6価セレン濃度を定量化する6価セレン濃度定量化ラインと全セレン濃度を定量化する全セレン濃度定量化ラインとの2つのセレンモニター並びに排水の流路を切り替える制御部とを備え、6価セレン濃度定量化ラインは、排水から採取された分析用試料に対し、水素化ホウ素ナトリウムと塩酸とを添加して反応させ分析用試料中の4価セレンをセレン化水素ガスとして排水中から離脱させると同時に分析用試料中の硫黄化合物も硫化水素ガスとして分析用試料中から離脱させる水素化除去部と、セレン化水素ガス並びに硫化水素ガスを除去した分析用試料にさらに塩酸を添加して加熱し分析用試料中に残存する6価のセレンを4価セレンに還元する塩酸還元部と、さらに6価のセレンを4価セレンに還元させた分析用試料に水素化ホウ素ナトリウムを添加して常温で反応させセレン化水素ガスを発生させるセレン水素化部と、セレン化水素ガスを検知して等価6価セレン濃度を求めるセレン化水素ガス検知器とを有し、全セレン濃度定量化ラインは、排水から採取された分析用試料に対し、過マンガン酸カリウムと硫酸とを添加して加熱する酸化処理部と、塩酸を添加して加熱し6価セレンを4価セレンに還元する還元処理部と、分析用試料に含まれる4価セレンを水素化ホウ素ナトリウムと反応させてセレン化水素ガスを発生させるセレン水素化部と、このセレン化水素ガスを検知して分析用試料の全セレン濃度を求めるセレン化水素ガス検知器とを有し、制御部は、全セレン濃度定量化ラインで検出した全セレン濃度が排水基準を満たしていると判断したときには6価セレン専用排水処理設備をバイパスさせて排水し、全セレン濃度が排水基準を満たしておらず且つ6価セレン濃度定量化ラインで検出される等価6価セレン濃度が排水基準を満たさないときには6価セレン専用排水処理設備と凝集沈殿排水処理設備とでセレン除去処理を施してから排水し、全セレン濃度が排水基準を満たしていないが、等価6価セレン濃度が未検出のときあるいは検出された等価6価セレン濃度が排水基準を満たすときには6価セレン専用排水処理設備をバイパスさせて凝集沈殿排水処理設備で4価セレンを除去してから排水するようにしている。
請求項1記載の発明によれば、分析用試料に対し水素化ホウ素ナトリウムと塩酸とを添加して常温で反応させることにより、分析用試料中の4価セレンがセレン化水素ガスとなって分析用試料中から離脱し、同時にセレン化水素ガス検知器の測定妨害要因となる分析用試料中の不安定な硫黄化合物も硫化水素(ガス)となって分析用試料中から離脱する。結果、分析用試料中には6価セレンのみが残ることから、これを塩酸還元工程で四価セレンに還元してから、再び水素化ホウ素ナトリウムを添加して反応させセレン化水素ガスを発生させ、このセレン化水素ガスをセレン化水素ガス検知器に導いて、セレン化水素ガス検知器により検出された信号値に基づいて、等価6価セレン濃度を求めることができる。つまり、本発明にかかる方法によれば、6価セレン濃度を直接的に定量分析できる。
請求項2記載の発明によれば、分析用試料から採取された分析用試料の一部を使って6価セレン濃度を直接的に定量分析する一方で、分析用試料の一部を使って全セレン濃度を直接的に定量分析できるので、脱硫排水システムのセレン処理設備の適切な運用を可能とすることができる。つまり、6価セレン処理が不要である場合には、6価セレン専用排水処理設備をバイパスさせることで排水処理経費を節減できる。
本発明にかかる排水中の6価セレンを定量分析する水溶性セレンの化学形態別分析方法の工程の一実施形態を示す原理図である。 6価セレンを定量分析する水溶性セレンの分析方法を実施するセレンモニター(6価セレン定量化ライン)の一実施形態を示すブロック図である。 全セレンを定量分析する水溶性セレンの分析方法を実施するセレンモニター(全セレン定量化ライン)の一実施形態を示すブロック図である。 火力発電所の脱硫排水処理設備における水溶性セレンの測定箇所を示す説明図である。 本発明のセレン含有排水の排水処理システムの一実施形態を示すブロック図である。 セレンモニターの検量線(繰り返し数n=5、相関係数r2 = 0.990、センサ#16、膜厚200μmの隔膜)の一例を示すグラフである。 公定法による試験中の排水セレン濃度の経時変化を示すグラフである。 試験中の化学形態別セレン濃度(ICP-OES)の経時変化を示すグラフである。 試験中のセレンモニターの校正値信号出力(上)と、セレン濃度(下)の経時変化を示すグラフである。 セレンモニターによるセレン濃度と公定法(ICP-OES)によるセレン濃度との相関を示すグラフである。
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1に、本発明にかかる排水中の六価セレンを定量分析する水溶性セレンの分析方法の工程の一実施形態を示す。この実施形態にかかる水溶性セレン分析方法は、脱硫排水から採取された分析用試料Aに対し、水素化ホウ素ナトリウムと塩酸とを添加して常温で反応させることにより、分析用試料中の4価セレンをセレン化水素ガスとして分析用試料中から離脱させると同時にセレン化水素ガス検知器の測定妨害要因となる分析用試料中の不安定な硫黄化合物も硫化水素ガスとして分析用試料中から離脱させる水素化除去工程S1と、4価セレン及び硫黄化合物を除去した分析用試料(以下、水素化除去済み分析用試料Bと呼ぶ)中に塩酸を添加して加熱し残存する6価のセレンを4価セレンに還元させる塩酸還元工程S2と、さらに塩酸還元処理後の分析用試料(以下、還元処理済み分析用試料Cと呼ぶ)に水素化ホウ素ナトリウムを添加して反応させセレン化水素ガスを発生させるセレン水素化工程S3と、セレン水素化工程S3において得られたセレン化水素ガスを図示していないセレン化水素ガス検知器に導いてセレン化水素ガス検知器により検出された信号値に基づいて等価6価セレン濃度を定量分析する分析工程(図示省略)とを有している。尚、還元処理済み分析用試料Cに水素化ホウ素ナトリウムを添加してセレン化水素ガスを発生させた分析用試料を水素化済み分析用試料Dと呼ぶ。
脱硫排水例えば石炭火力発電所の排煙脱硫分析用試料Aには石炭に含まれる微量のセレンに起因して水溶性セレン(4価セレン:SeO 2−、6価セレン:SeO 2−)並びに硫黄化合物が含まれているが、4価セレン及び硫黄化合物の水素化除去処理において4価セレン及び硫黄化合物が水素化されてセレン化水素ガスと硫化水素ガスとして飛ばされ除去される結果、水素化除去済み分析用試料Bには6価セレンのみが残る。同時に、セレン化水素ガス検知器でセレン化ガスを測定する際の妨害物質となる不安定な硫黄化合物を予め硫化水素として除去しておくことでその影響を取り除くことができる。そこで、水素化除去済み分析用試料Bに塩酸を添加して加熱して分析用試料中に残存する6価セレンを塩酸還元工程で4価セレンに還元してから(還元処理済み分析用試料C)、再び水素化ホウ素ナトリウムを添加して反応させセレン化水素ガスを発生させる。そして、このセレン化水素ガスをセレン化水素ガス検知器に導いて、セレン化水素ガス検知器により検出された信号値に基づいて、予め求められている検量線(例えば図6参照)を利用して等価6価セレン濃度を求めることができる。つまり、本発明にかかる水溶性セレンの分析方法によれば、6価セレン濃度を直接的に定量分析できる。
これによって、本願出願人によって既に確立された全セレン濃度を定量分析できるセレンモニター(特許文献2)と併用することで、脱硫排水中のセレンを化学形態別に測定することが可能となる。即ち、セレン化水素ガス検知器(ガスセンサと呼ぶ。)を利用した化学形態別水溶性セレンの分析システムを、6価セレン濃度を定量化する処理工程と、全セレン濃度を定量化する処理工程とで構成すれば、6価セレン定量化処理工程で求められた等価6価セレン濃度と、全セレン定量化処理工程において求められた全セレン濃度とを求めることができる。したがって、この2系統のセレンモニターを利用して脱硫排水システムのセレン処理設備の適切な運用を可能とすることができる。
ここで、全セレン定量分析ラインは、脱硫排水から採取された分析用試料に対し過マンガン酸カリウムと硫酸とを添加して加熱し不安定な硫黄化合物を硫酸イオンとする酸化処理工程と、酸化処理済み分析用試料に塩酸を添加して加熱し6価セレンを4価セレンに還元して4価セレンに揃える還元処理工程と、還元処理済み分析用試料に水素化ホウ素ナトリウムを添加して反応させ4価セレンをセレン化水素ガスにするセレン水素化工程と、発生したセレン化水素ガスをセレン化水素ガス検知器に導いて得られた検出信号値に基づいて、予め求められている検量線を利用して全セレン濃度を求める定量分析工程とを有し、6価セレンを4価セレンに揃えてから全セレンとして定量するものである。
図2及び図3に、セレン化水素ガス検知器を利用した化学形態別水溶性セレンの分析システムの一実施形態を示す。本実施形態にかかる水溶性セレンの分析システムは、ガスセンサーの妨害物質となる硫黄化合物が混在する若しくは混在する虞のある水溶性セレン含有排水から採取された分析用試料に対して6価セレン濃度を定量化するライン(図2参照)と、全セレン濃度を定量化するライン(図3参照)とを逐次稼働しあるいは並行して稼働し、分析用試料中の6価セレン濃度と全セレン濃度とを求めるようにしたものである。
(6価セレンモニター)
図2に示す6価セレン定量化ライン1は、大きく分けて排水採取部3と、水素化除去処理部4と塩酸還元処理部5とセレン水素化処理部6及び分析部7とで構成されている。尚、図中の符号50,51は廃液ポンプ、52は低濃度廃液ライン、53高濃度廃液ラインである。
<排水採取部>
排水採取部3は、例えば調整槽11と標準試料貯留槽12とを有し、バルブの開閉によって、脱硫排水から採取された分析用試料Aまたは標準試料が排水送液装置14を備える排水送液ライン13並びに試料計量計15を経て所定量が第一処理槽16に送液されるものとされている。尚、本実施形態では、2つの調整槽11及び標準試料貯留槽12を備えることで、条件の異なる排水を採取して、これら分析用試料を連続測定することでセレン除去処理の状況を検討しやすくなる利点があるが、調整槽等を2つ備えることは必須条件ではない。また、採取された分析用試料の一部は分岐管8を経て全セレン分析ライン2へ供給される。
<水素化除去処理部>
水素化除去処理部4は、第一処理槽16内で分析用試料Aに対し、水素化ホウ素ナトリウムを含む溶液18と塩酸20とを添加して攪拌し混合液(以下、第一混合液と呼ぶ)を生成して常温で反応させ、セレン化水素ガス並びに硫化水素ガスを発生させて槽外に取り出すことで、分析用試料中から4価セレン及び硫黄化合物を除去する処理を行う。この処理によって得られる水素化除去済み分析用試料Bには、6価セレンのみが残留している。ここで、水素化ホウ素ナトリウム18と塩酸20との添加量は、分析用試料Aの4価セレンと硫黄化合物とを水素化して排出し得る量で且つ塩酸還元処理部5での還元を阻害しない量である。尚、図中の符号16は分析用試料を収容する第一処理槽、17は水素化ホウ素ナトリウムを貯留するタンク、19は塩酸を貯留するタンク、21,22は第一処理槽16内に水素化ホウ素ナトリウム18と塩酸20とを所定量ずつ供給するシリンジポンプ、24及び25は水素化除去済み分析用試料Bを塩酸還元処理部5に向けて送液する第一送液装置及び第一送液ライン、55は水素化ホウ素ナトリウム18を冷温貯蔵する冷蔵庫である。また、第一処理槽16中における分析用試料Aと水素化ホウ素ナトリウム18と塩酸20との攪拌は、本実施形態の場合、エアコンプレッサ54から噴気管23を介して供給されるキャリアガス(空気)によりバブリングで行われるようにしているが、これに特に限られず、攪拌翼などによる機械的攪拌やスターラーでの撹拌でも良い。
水素化ホウ素ナトリウムを含む溶液18は、水素化ホウ素ナトリウムのみを含むアルカリ性の溶液としてもよいが、例えば、エチレンジアミン四酢酸、水酸化ナトリウムを含むものとしてもよい。水素化ホウ素ナトリウムは、還元剤として広く用いられている安価で入手し易い物質である反面、分解し易い性質がある。そこで、エチレンジアミン四酢酸を加えることによって、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に溶解させて室温で30日間安定に保存できることが知られている(A. D.Idowu, P. K. Dasgupta, Z. Genfa, and K. Toda: “A Gas-Phase Chemiluminescence -Based Analyzer for Waterborne Arsenic”, Anal. Chem., 78, 7088-7097 (2006))。つまり、使用の簡便性と安定性とを兼ね備えた試薬であり、現場分析に用いる試薬として非常に好適である。また、水素化ホウ素ナトリウムを含む溶液を長期に亘って一定の場所に貯蔵して用いる場合には、0℃〜25℃、好適には0℃〜10℃に冷却可能な冷蔵庫55に入れて貯蔵することが好適である。これにより、水素化ホウ素ナトリウムを含む溶液20を分析環境に影響されることなく、保存することができ、分解劣化していない安定な水素化ホウ素ナトリウムを長期に亘って添加することができる。
<塩酸還元処理部>
塩酸還元処理部5は、水素化除去処理済み分析用試料Bに残る6価セレン(元々脱硫排水Aに含まれていた6価セレン)を4価セレンに還元する処理を行うものである。水素化ホウ素ナトリウム水溶液(NaBH)は、4価セレンと反応してセレン化水素ガスを生成させることはできるものの、6価セレンとは反応しない。そこで、還元剤として塩酸を添加することで、水素化除去処理済み分析用試料Bに含まれる6価セレンを4価セレンに還元して、水素化ホウ素ナトリウムとの反応を可能にする。
還元処理における塩酸の添加量は、水素化除去処理済み分析用試料の塩酸濃度が4mol/L〜6.7mol/Lとなる量とすることが好適であり、6.7mol/Lとなる量とすることがより好適である。塩酸濃度が低すぎると、6価セレンの全量を4価セレンに還元できないことがある。塩酸濃度を高め過ぎると、塩酸の添加量が多くなりすぎて、水素化除去処理済み分析用試料の総量が増加し、分析時間の長時間化を招くこととなる。具体例を挙げると、脱硫排水5mLを分析用試料とした場合、濃塩酸(12mol/L)を5mL程度添加することが好適である。
また、塩酸添加後の水素化除去処理済み分析用試料の加熱温度は、100℃以上とすることが好適である。これよりも低い温度だと、4価セレンに還元されない6価セレンが残り、分析精度が低下し得る。尚、加熱温度を高めすぎると、分析用試料が激しく沸騰することから、加熱温度は、100〜120℃とすることが好適である。さらに、加熱時間は、上記温度で10分以上とすることが好適である。これよりも短いと、4価セレンに還元されない6価セレンが残り、分析精度が低下することがある。尚、6価セレンを4価セレンに還元する時間を長くし過ぎても、特に有利な効果は見られず、むしろ分析時間の長時間化につながる。したがって、6価セレンを4価セレンに還元する時間は、上記温度で概ね10分〜15分程度とすればよい。
本実施形態の塩酸還元処理部5は、水素化除去処理済み分析用試料を収容する第二処理槽26と、第二処理槽26内に還元剤としての塩酸28を添加するシリンジポンプ30と、塩酸28を貯留するタンク27と、第二処理槽26の中で水素化除去処理済み分析用試料Bと塩酸28とを噴気管29を介して供給されるキャリアガス(空気)によるバブリングで攪拌する攪拌手段と、水素化除去処理済み分析用試料Bと塩酸28との混合液(以下、第二混合液と呼ぶ)を第三処理槽34に向けて送液する第二送液装置31及び第二送液ライン33、並びに第二送液ライン33を通過中の第二混合液を6価セレンの4価セレンへの還元反応が進行する温度に加熱する加熱装置32とで構成され、水素化除去処理済み分析用試料Bに残された6価セレンを4価セレンに還元してからセレン水素化処理部6に還元処理済み分析用試料Cとして供給するものである。尚、本実施例では、加熱反応器32は、水素化除去処理済み分析用試料Bに含まれる6価セレンを4価セレンに還元する還元処理時間を制御するようにした。例えば、キャピラリとして、内径1mm、長さ6mのPTFE製キャピラリを用い、流量は1.5mL/分に設定し、ヒーターの加熱温度を100℃として、第二混合液が100℃で10分間加熱されるようにした。
<セレン水素化処理部>
セレン水素化処理部6は、還元処理済み分析用試料Cに含まれる4価セレンを水素化ホウ素ナトリウムで水素化してセレン化水素ガスを生成するものであり、還元処理済み分析用試料Cが送液されて収容される密閉構造の反応槽34と、反応槽34内のヘッドスペース41に溜まるセレン化水素ガスをセレン化水素ガス検知器43に送り込むためのガス導入管42と、ガス導入管42にキャリアガスを供給してセレン化水素ガス検知器43までのガス流通経路をキャリアガスで置換するキャリアガス供給手段45と、セレン化水素ガス生成剤としての水素化ホウ素ナトリウムを含む溶液38を還元処理済み分析用試料Cに添加するセレン化水素ガス生成剤添加手段55とで構成されている。セレン化水素ガス生成剤添加手段55は、水素化ホウ素ナトリウムを含む溶液38を貯蔵するタンク36及びタンク36と共に溶液38を0℃〜10℃に冷却して貯蔵する冷蔵庫37と、水素化ホウ素ナトリウムを含む溶液38を供給するポンプ39とで構成されている。ここで、セレン化水素ガス生成剤添加手段55による水素化ホウ素ナトリウムの添加は、反応槽34内とガス導入管42内のガス流通経路をキャリアガスで置換した後に行われる。尚、セレンでも硫黄化合物でもNaBHで水素化するには、酸性条件(酸性溶液)でNaBHを添加する必要がある。前処理(4価セレンの水素化除去と硫酸以外の硫黄化合物の水素化除去)では、酸性条件にするために塩酸を添加している。一方、最後の工程の4価セレンの水素化では、水素化工程の前の6価セレンの(4価セレンへの)還元工程で、塩酸を添加している。したがって、還元工程後の試料は(塩酸は過剰に添加されているため)既に酸性溶液になっているため、塩酸を追加添加する必要はない。
キャリアガス供給手段45は、キャリアガスの加湿のために通過させる2つの水タンク46と、加湿済みキャリアガスをガス導入管42に供給する配管44と、エアコンプレッサ54から供給されるキャリアガスの流量を調整するマスコントローラ49及び配管48で構成されている。キャリアガスで置換することにより、セレン化水素ガス検知器43の信号のベースラインを安定させて、安定した信号値に基づいて精度良く分析を行うようにしている。また、ヒーティングライン47によって、ガス導入管42の内壁に結露が生じない温度(70〜80℃)に加熱すると共に、セレン化水素ガス検知器43のセンサ部の電解液が蒸発乾固しない温度(50℃)に加熱する図示しない加熱装置を備えることが好ましい。尚、図示していないが、必要に応じて還元処理済み分析用試料からの塩化水素ガスの発生を抑制し得る量の水を予めセル35に供給することにより塩化水素ガスの発生を抑えて、セレン化水素ガス検知器において異常ピークが生じることによる分析の妨害を排除することが好ましい。
水素化除去処理部4並びにセレン水素化処理部6における、それぞれの水素化ホウ素ナトリウムの添加量については、分析用試料に存在していると考えられる4価セレンの全量をセレン化水素に還元しうる量以上の量が適宜選択される。1molのHSeO(SeO 2−)を還元させてセレン化水素を発生させるためには、3/4molのNaBH(BH )が必要である。したがって、4価セレン1mgに対して最低でも0.38mgのNaBHが必要である。ここで、セレン水素化処理部6における水素化ホウ素ナトリウムの添加量については、分析用試料に存在している4価セレンの全量を確実にセレン化水素に還元するためには、前処理済み分析用試料に含まれていると考えられる4価セレンの全量に対して過剰量の水素化ホウ素ナトリウムの量を添加することが好ましい。即ち、塩酸還元処理済み分析用試料の4価セレン濃度が1mg/L以下であると仮定した場合には、塩酸還元処理済み分析用試料1Lに対して0.38mg〜6.7gの水素化ホウ素ナトリウムを添加することが好ましく、3.8mg〜3.4gとすることがより好ましく、38mg〜2.0gとすることがさらに好ましい。6.7gを超える量の水素化ホウ素ナトリウムを添加しても、セレン化水素の測定に影響を及ぼすことは無いが、セレン化水素発生反応には関与しないので、無駄である。
また、分析用試料への水素化ホウ素ナトリウムの添加開始時からセレン化水素ガス検知器による測定が終了するまでの間は、分析用試料を撹拌し続けることが好ましい。撹拌を十分に行わないと、分析用試料に添加した水素化ホウ素ナトリウムが十分に拡散することができずに、分析用試料中の4価セレン及び硫黄化合物をセレン化水素ガス並びに硫化水素ガスとして除去することが不完全となったり、還元処理済み分析用試料との間の反応が不均一となってセレン化水素ガス検知器によるセレン化水素の信号強度が低下する虞がある。そこで、反応槽34には、反応槽34内の還元処理済み分析用試料Cと水素化ホウ素ナトリウム38とを撹拌する第三撹拌装置(撹拌翼)35が備えられている。
<分析部>
分析部7は、反応槽34内のヘッドスペース41のセレン化水素ガスをガス導入管42を介してセレン化水素ガス検知器43に送り込み、セレン化水素ガス検知器43により測定された測定値(信号値)に基づいて、分析用試料の水溶性セレン濃度を検量線法により分析するものである。
セレン化水素ガス検知器43としては、セレン化水素ガスを検出することができる各種方式の検知器を用いることができるが、特に、隔膜ガルバニ方式又は濃淡電池方式のセンサ部を有するセレン化水素ガス検知器の使用が好適である。この方式の検知器は、センサ自身が電池を構成するために、検知対象ガスが存在しない場合には残余電流が極めて少なく、そのためゼロ点の安定性が高いと共に、ランニングコストも低いという利点を有している。このような検知器としては、例えばバイオニクス機器製の1GWA/V70等が挙げられるが、これに限定されるものではない。例えばセンサ部が定電位電解方式である新コスモス電機製PS−7(セレン化水素専用センサユニットCDS−7)等を用いるようにしてもよい。
セレン化水素ガスは、セレン化水素ガス検知器により随時測定され、測定値が出力される。ここで、発生したセレン化水素ガスには、キャリアガスを供給し、キャリアガスに同伴させてセレン化水素ガスをセレン化水素ガス検知器に導くのが好適である。さらには、セレン化水素ガス検知器のガス吸引機能を利用してセレン化水素ガスを単独であるいはキャリアガスと共に吸引することが好適である。キャリアガスとしては、窒素やアルゴンなどの不活性ガスだけでなく、空気を利用することもできる。また、センサ感度の低下抑制策としてキャリアガスは加湿しておくことが好ましい。
検量線法に用いる検量線は、水溶性セレン濃度が既知の複数の標準試料から予め求めた水溶性セレン濃度とセレン化水素ガス検知器により検出された信号値との相関に基づいて作成されたものである。さらに具体的に説明すると、水溶性セレン濃度が既知の複数の標準試料それぞれに対し、実際に分析用試料を分析する際と同じ条件で分析を行い、水溶性セレン濃度とセレン化水素ガス検知器により検出された信号値との相関を例えば最小二乗法などの公知の手法によりフィッティングして検量線を得ることで、分析用試料を分析した際の信号値から、この検量線を利用して、分析用試料の水溶性セレン濃度を求めることができる。例えば、セレン標準試料を用いた場合、0.01〜0.5mg-SeL−1の濃度範囲において直線性に優れた検量線が得られ、検出下限は0.003mg-SeL−1であった(排水基準値は0.1mg-SeL−1)。
(全セレンモニター)
図3に全セレン分析システム2の一実施形態を示す。この全セレン分析システム2は、本実施形態では、図2に示す6価セレン分析ライン1の上流側の排水採取部3で分岐された分析用試料Aが供給され、分析用試料Aに対して全セレン濃度を定量分析するものであり、分析用試料Aに対し過マンガン酸カリウム68と硫酸70とを添加して加熱し不安定な硫黄化合物を硫酸イオンとする酸化処理部57と、酸化処理済み分析用試料Eに塩酸79を添加して加熱し6価セレンを4価セレンに還元して4価セレンに揃える還元処理部58と、還元処理済み分析用試料Fに水素化ホウ素ナトリウムを添加して反応させ4価セレンをセレン化水素ガスにするセレン水素化処理部59と、発生したセレン化水素ガスをセレン化水素ガス検知器93に導いて得られた検出信号値に基づいて、予め求められている検量線を利用して全セレン濃度を求める分析部60とで構成され、6価セレンを4価セレンに揃えてから全セレンとして定量するものである。尚、本全セレン分析ライン2には、排水送液装置64及び試料計量計65を備える排水送液ライン8を経て分析用試料Aが第一処理槽66に送液される。
<排水採取部>
排水採取部56は、6価セレン定量化ライン1から分岐された分析用試料Aを排水送液ライン8を経て第一処理槽66に送液するための排水送液装置64と試料計量計65とを備える。また、この排水採取部56には、標準試料貯留槽63が必要に応じて備えられている。
<酸化処理部>
酸化処理部57は、例えば分析用試料を収容する第一処理槽66と、この第一処理槽66内に硫黄化合物を硫酸イオンに分解し得る量で且つ還元処理部58における還元を阻害しない量の過マンガン酸カリウム68と硫酸70とをタンク67,69から供給して添加する硫黄化合物分解剤添加手段と、第一処理槽66内の排水と硫黄化合物分解剤とを撹拌混合して第一混合液とする第一撹拌手段と、第一混合液を還元処理部58に向けて送液する第一送液装置74を備える第一送液ライン76と、第一送液ライン76を通過中の第一混合液を、硫黄化合物が分解される温度に加熱する第一加熱装置75とで構成され、分析用試料A中の硫黄化合物を安定な硫酸イオンに変換して還元処理部58へ酸化処理済み分析用試料Eとして送り出すものである。分析用試料Aと過マンガン酸カリウム68と硫酸70との混合液(第一混合液E)は、還元処理部58の第二処理槽77へ向けて送液される過程で加熱されて硫黄化合物が安定な硫酸イオンに分解処理される。加熱反応器75内での加熱は、例えば第一混合液Eの流量を0.5mL/分に設定した場合、ヒーターの加熱温度を100℃として、20分間程度行われる。尚、分析用試料Aと過マンガン酸カリウム68と硫酸70との第一混合液Eが通過した後の第一送液ライン76には、過マンガン酸カリウム68に起因する二酸化マンガン等が析出して、内径を狭めたり閉塞させることから、図示していない洗浄剤供給手段によって洗浄剤として塩酸が供給される。また、過マンガン酸カリウム68と硫酸70との添加量はシリンジポンプ71,72により制御される。第一処理槽66内における分析用試料Aとマンガン酸カリウム68と硫酸70との攪拌は、本実施形態の場合、コンプレッサ54から供給される圧縮空気を噴気管73を通してバブリングさせることにより行なわれる。
過マンガン酸カリウム(KMnO4)と硫酸とを分析用試料に添加して加熱することによって、過マンガン酸カリウムの酸化力が増大して排水に含まれる硫黄化合物を酸化分解して安定な硫酸イオンにすると同時に、分析用試料に含まれる4価セレンが6価セレンに酸化されてしまうことが本発明者等によって明らかにされた。つまり、本実施形態の全セレン定量工程では、ガスセンサーの妨害成分となる硫化水素を発生させる排水中の前駆物質(不安定な硫黄化合物)を安定な硫酸イオンに変換することにより排除している。そして、4価セレンを酸化して6価セレンとし、排水中に存在していた水溶性セレン(4価セレン:SeO 2−、6価セレン:SeO 2−)を全て6価セレンに揃える。
硫黄化合物の分解についてより詳細に説明すると、ジチオン酸やヒドロキシルアミンスルホン酸化合物(NS化合物)などの硫黄化合物は、硫酸により酸化力が増強された過マンガン酸カリウムによって酸化分解され、最終的に硫酸イオンとなる。硫酸イオンは化学的に安定であり、水素化ホウ素ナトリウムを添加しても硫化水素ガスは発生しない。したがって、硫酸により酸化力が増強された過マンガン酸カリウムによって、水素化ホウ素ナトリウムとの反応によって硫化水素ガスを発生し得る硫黄化合物、即ち、水素化ホウ素ナトリウムとは反応しない安定な硫黄化合物(硫酸やペルオキソ二硫酸等)以外の硫黄化合物によるセレン化水素ガスの測定の妨害を排除して、精度良く分析することが可能となる。
過マンガン酸カリウムと硫酸の添加量は、分析用試料に含まれる硫黄化合物を安定な硫酸イオンに酸化分解し得る量で、且つ余剰分が還元処理における還元を阻害しない量である。過マンガン酸カリウムの添加量が多すぎると、余剰分が還元処理において還元剤である塩酸と反応し、塩酸の量が消費される結果、6価セレンの4価セレンへの還元反応が阻害することとなる。
過マンガン酸カリウムの具体的な添加量については、例えば分析用試料中に含まれると予想される硫黄化合物を酸化処理するのに必要とされる量の100〜1000倍量とすることが好適であり、500〜5000倍量とすることがより好適である。
硫酸の添加量は、例えば硫酸と過マンガン酸カリウム(水溶液)を添加した後の分析用試料の硫酸濃度が1.3〜3mol/Lに調整される量とすることが好適であり、2.3mol/Lに調整される量とすることがより好適である。硫酸濃度が低すぎると、硫酸による過マンガン酸カリウムの酸化力を高める効果が低くなるため、硫黄化合物の分解を十分に行うことができず、分析精度が低下し得る。硫酸濃度を高めすぎると、硫酸の添加量が多くなりすぎて、分析用試料の総量が増加し、反応時間の増加を招くこととなる。具体例を挙げると、硫黄化合物を含む分析用試料5mLを排水とした場合、6〜18mol/Lの硫酸を1〜2mL添加して上記濃度とすればよく、9〜12mol/Lの硫酸を1〜2mL添加して上記濃度とすることが好適であり、9mol/Lの硫酸を2mL添加して上記濃度とすることがより好適である。
ここで、過マンガン酸カリウムと硫酸の添加は、分析用試料と硫酸を十分に撹拌混合してから過マンガン酸カリウムを添加すること、または分析用試料と過マンガン酸カリウムを十分に撹拌混合してから硫酸を添加することが好ましい。これにより、硫酸の中和反応による分析用試料の沸騰を抑制でき、かつ過マンガン酸カリウムと硫酸とが直接接触して固体生成が生じることによる硫黄化合物の分解能の低下を防ぐことができる。
酸化処理における過マンガン酸カリウム及び硫酸添加済みの分析用試料の加熱温度は、100℃以上とすることが好適である。これよりも低い温度だと、硫黄化合物を分解しきれず、分析精度が低下し得る。尚、加熱温度を高めすぎると、分析用試料が激しく沸騰することから、加熱温度は、100〜120℃とすることが好適である。
酸化処理における加熱時間は、上記温度で15分以上とすることが好適である。これよりも短いと、硫黄化合物を分解しきれず、分析精度が低下し得る。尚、分解処理時間を長くし過ぎても、特に有利な効果は見られず、むしろ分析時間の長時間化に繋がる。したがって、分解処理時間は、上記温度で概ね15〜30分程度とすればよく、15分〜20分とすることが好適であり、分解処理の確実性を考慮すると、20分程度とすることがより好適である。
<還元処理部>
還元処理部58は、図2の六価セレン分析システム1の還元処理部5と同様の構成であり、図2の六価セレン分析ライン1と異なるのは、第二処理槽77に供給される前段の酸化処理済み分析用試料Eには硫黄化合物が分解処理された安定な硫酸イオンと元々存在する6価セレンと酸化により4価セレンから6価セレンとなったものとを含んでいることである。したがって、酸化処理済み分析用試料Eを還元処理することで、分析用試料に含まれていた全セレン(6価セレンと4価セレン)が全て4価セレンとされる。尚、図中の符号78は塩酸79を貯留するタンク、80は所定量の塩酸79を第二処理槽77に供給するシリンジポンプ、81は第二処理槽77内の酸化処理済み分析用試料Eと塩酸79とをバブリングにより攪拌する攪拌手段を構成する噴気管、82及び84は酸化処理済み分析用試料Eと塩酸79との混合液Fを第三処理槽85に向けて送液する第二送液装置及び第二送液ライン、83は第二送液ライン84を通過中の酸化処理済み分析用試料Eと塩酸79との混合液(第二混合液F)の6価セレンを4価セレンへの還元反応が進行する温度に加熱する加熱装置である。
<セレン水素化処理部>
セレン水素化処理部59は、図2の六価セレン分析システムにおけるセレン化水素化処理部と同様の構成である。図中の符号85は還元処理済み分析用試料が収容される密閉構造の反応槽、92はガス導入管、95はキャリアガス供給手段、86は撹拌翼(第三撹拌装置)、61はセレン化水素ガス生成剤添加手段である。セレン化水素ガス生成剤添加手段61は、水素化ホウ素ナトリウムを含む溶液89を貯蔵するタンク87及び冷蔵庫88と、水素化ホウ素ナトリウムを含む溶液89をセレン化水素ガス検知器93にて検出される信号値のピークが分裂する速度未満で供給するポンプ90とで構成されている。また、キャリアガス供給手段95は、キャリアガスの加湿のための2つの水タンク96と、加湿済みキャリアガスをガス導入管42に供給する配管94と、エアコンプレッサ54から供給されるキャリアガスの流量を調整するマスコントローラ49及び配管98で構成されている。また、ヒーティングライン97によって、ガス導入管42の内壁に結露が生じない温度に加熱すると共に、セレン化水素ガス検知器43のセンサ部の電解液が蒸発乾固しない温度に加熱する図示しない加熱装置を備えられている。
<分析部>
分析部は、図2の六価セレン分析システムにおけるセレン化水素ガス生成部と同様の構成であるので、詳細な説明は省略する。
(セレン含有排水の排水処理システム)
上述の6価セレン定量化ライン1で求められる等価6価セレン濃度と全セレン定量分析ライン2で求められる全セレン濃度とは、例えば図5に示すセレン含有排水処理システムにおいて、セレン処理設備の運用に用いることができる。
セレン含有排水処理システムは、6価セレン専用排水処理設備101と凝集沈殿排水処理設備102とを備える排水処理ライン100において、例えば制御部103からの指示に基づいて制御可能な切り替え弁104と、6価セレン専用排水処理設備101をバイパスする迂回路105とを備えて、6価セレン専用排水処理設備101と凝集沈殿排水処理設備102とを経由して排水されるラインと、6価セレン専用排水処理設備101を迂回して凝集沈殿排水処理設備102のみを経て排水されるラインとに切り替え可能とされている。尚、制御部103は、例えばプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)や、記憶装置上にあるプログラムを読み込んで以下の比較演算、判断、制御対象物の制御処理を実行する中央処理装置(CPU)などによって構成される。
ここで、排水処理設備においては一般に4価セレン専用の排水処理設備はなく、重金属イオンを処理する通常の凝集沈殿装置で4価セレンは処理される。他方、6価セレンは通常の凝集沈殿装置では処理できないことから、6価セレンを4価セレン(さらに還元度が高い0価セレンになることもある)に還元する専用排水処理設備を必要とする。したがって、排水中に6価セレンが含まれている場合には、6価セレン専用排水処理設備で6価セレンを4価セレンにしてから、元々排水中に存在した4価セレンと6価から4価に変換された4価セレンとを含めた全セレンを、重金属イオンを処理する通常の凝集沈殿装置(既に発電所には設置済みのもの)で処理する。
そこで、制御部103は、セレンの排水基準を閾値とし、各セレンモニター1,2からの等価6価セレン濃度と全セレン濃度との各々の出力値を例えば比較演算素子あるいは中央演算素子などで比較演算し、全セレン濃度定量化ライン2で検出した全セレン濃度が排水基準を満たしていると判断したときには6価セレン専用排水処理設備101をバイパスさせて排水し、全セレン濃度が排水基準を満たしておらず且つ6価セレン濃度定量化ラインで検出される等価6価セレン濃度が排水基準を満たさないときには6価セレン専用排水処理設備101と凝集沈殿排水処理設備102とでセレン除去処理を施してから排水し、全セレン濃度が排水基準を満たしていないが、等価6価セレン濃度が未検出のときあるいは検出された等価6価セレン濃度が排水基準を満たすときには6価セレン専用排水処理設備102をバイパスさせて凝集沈殿排水処理設備102で4価セレンを除去してから排水するように制御する。これによって、6価セレン専用排水処理設備102と凝集沈殿排水処理設備102とを併用している場合に、各々の排水処理設備の運転の最適化が図れる。
勿論、セレン処理設備を効率的に運用するためには、6価セレン専用の排水処理設備102において、6価セレンを4価セレンもしくは金属セレンに還元する必要があるので、6価セレンの濃度の精確なモニタリング(定量分析)が有効である。他方、通常の排水処理(凝集沈殿処理)によって除去できる4価セレンの濃度は、6価セレンと区別して独自に求めなくとも、元々排水中に存在した6価セレンであったものが還元された分を含めた全セレン濃度として定量分析されたもので足りる。通常の凝集沈殿では、4価セレンと同時に他の高濃度の金属イオンも除去するので、余裕をみて薬剤を過剰添加(添加量固定)しているため、他の金属イオンに比べて低濃度の4価セレン濃度に合わせて薬剤の添加量を変えることはない。したがって、排水のセレン濃度を化学形態別に自動測定する化学形態別セレンモニターは、少なくとも6価セレン濃度を定量化するラインと、全セレン濃度を定量化するラインとの2つの系統を有していれば足りる。
尚、上述の制御部による自動制御に代えて、等価6価セレン濃度と全セレン濃度とはセレン形態別モニターで表示され、その値を読み取った操業者自身が流路の切り替えを行うようにしても良い。この場合においても、6価セレン専用排水処理設備101をバイパスさせることで排水処理経費を節減できる。
上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
本発明にかかる水溶性セレン分析方法を実施する水溶性セレン分析システム(セレンモニターと呼ぶ。)を用いて脱硫排水中に含まれる全セレンの化学形態別セレン濃度を求めた。
まず、図3に示す構成のセレンモニター使用して排水中の全セレンを定量分析する試験を行った。尚、これまでの経験から、(硫酸イオン以外の)硫黄化合物を硫酸イオンまで酸化せずに水素化した場合には硫化水素が生成することがわかっている。そこで、硫黄化合物を添加した実験は行っていない。
このセレンモニターによる全セレン定量分析測定フローは、
(1)分析用試料の採取・計量、
(2)酸化分解試薬(過マンガン酸カリウム(KMnO4)溶液と硫酸(H2SO4)溶液)の添加、
(3)酸化分解(105℃)、
(4)Se還元試薬(塩酸(HCl)溶液)の添加、
(5)Seの還元(105℃)、
(6)Seの水素化(水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)溶液の添加)、
(7)Seの検出・定量、
の各工程から成る。
尚、Se水素化で発生したH2Seの検出、定量には、バイオニクス機器(株)の隔膜ガルバニ電池式電気化学センサGT-3260Hを用いた。また、センサの電解液は、バイオニクス機器が提供する市販品(E-3260-1)を使用した。ガスセンサのテフロン(登録商標)製隔膜は膜厚200 μmのものを使用した。
国内の石炭火力発電所にセレンモニターを3ヶ月間設置し、セレンを対象とする化学的排水処理工程の還元塔供給槽排水(セレン処理前排水)のセレン濃度を測定した(図4参照)。セレンモニターは空調設備を備えたコンテナハウス内に設置した。
試験の諸元を以下に示す。
試験期間:2016年9月26日〜2016年12月26日
分析用試料:セレンを対象とする排水処理工程における還元塔供給槽排水
(セレン処理入口)
測定頻度:3時間毎
試料採取量:5.0 mL
キャリヤガスの加湿:あり(室温でのバブリング)
定量計算:測定時センサ信号の最大出力値による(ピーク高計算)
校正:ブランク試料とセレン標準試料による2点校正。
校正頻度:24時間毎
セレン標準試料:SeO3 2-溶液0.200 mg-Se/L
試料の前処理温度:105℃
使用試薬および1測定あたり使用量:9.0 mol/L H2SO4溶液 2 mL
6.0 g/L KMnO4溶液 1 mL
12 mol/L HCl溶液 5 mL
3.0 g/L NaBH4溶液 10 mL
セレンモニターの測定値を検証するため、セレンモニターに供給される排水250 mLをセレンモニター側面のサンプリング貯槽から一日一回採取した。分析用試料のセレン濃度は、公定法(工場排水試験法JIS K0102)に従ってICP発光分光法(ICP-OES)により確定した。セレンモニターの定期メンテナンスは、月1回の頻度で実施した。ガスセンサは、2個のセンサ(#17および#18)を交互に使用し、メンテナンス時に交換した。使用後センサは電解液と隔膜を交換した後、乾電池による課電状態で待機させ(エージング)、次回使用に備えた。
(結果と考察)
(標準試料による定量性)
図3に示すセレンモニターを用いて、SeO3 2-標準試料を測定し、定量性を評価した。標準試料のSe濃度は、0.00、0.05、0.10、0.20 mg/Lとした。その結果を図6と表1に示す。セレン濃度0〜0.2 mg/Lの範囲において直線性の高い検量線(図6参照)が得られ(繰り返し数n=5、相関係数r2 = 0.990)、各濃度の相対標準偏差は3〜9%であった。
0.00〜0.50 mg/L(0.00、0.05、0.10、0.20、0.40、0.50 mg/L)の範囲において直線性の高い検量線(繰り返し数n=3、相関係数r2 = 0.992)が得られ、各濃度の相対標準偏差は3〜14%であった。ガスセンサ隔膜(200μm)の膜厚である。
Figure 0006976875
(排水セレン濃度の経時変化)
図7に公定法による排水セレン濃度の経時変化を示す。セレンモニターに供給されるセレン処理入口排水のセレン濃度は0.02〜0.16 mg/Lの範囲で概ね緩やかに変動した。グラフ中の濃いグレーは、セレンモニターに対する排水供給が停止した期間を示す。試験中にセレン濃度が不連続に変化する箇所もあったが、これは、セレンモニターに供給する還元塔供給槽(排水系統1、排水系統2)の切替など、排水処理設備の運転状況を反映していると考えられた。なお、排水中のセレンをICP-OESにて化学形態別に定量した結果、セレンの化学形態はほぼ6価だった(図8)。
(セレンモニターによるモニタリング)
図8にセレンモニターによる排水セレン濃度のモニタリング結果を示す。グラフには校正時のガスセンサの信号出力(図9、上グラフ)とモニターによるセレン濃度測定値(図9、下グラフ)を示した。濃度グラフには公定法による測定値も示した。
因みに、試験期間中、セレンモニターは、構成部品の動作不良とセンサ寿命に起因して断続的に測定不良が16日間(図9の薄く網掛けした部分)発生した。濃い網掛け部分はセレンモニターの排水供給が停止された期間を示す。
本試験中に発生したトラブルは以下の通りである。
(1)2016年10月23〜25日に、電磁弁故障による測定不良(塩酸無添加)が発生した。
(2)2016年10月31日〜11月2日に、反応槽の撹拌機の停止による測定不良が発生した。
(3)2016年12月15日未明より、センサ寿命と推測される不具合により、1流路切替時の信号出力(ベースライン)低下と2信号出力超過(スケールオーバー)が発生した。
なお、流路切替時の信号出力低下は12月20日以降も解消されず、測定不良が継続した。試験終了後の検討により、流路切替時の信号出力低下は、反応槽内のHClガスの置換不足によることを確認した。一方、12月20日のトラブル対応においては、電磁弁3個、排液用ダイヤフラムポンプ1個の動作不良も確認した。
セレンモニター測定値も公定法測定値と同様に試験中にセレン濃度が不連続に変化する場合があった。これは、セレンモニターに供給する還元塔供給槽(排水系統1、排水系統2)の切替の影響に加え、供給槽からセレンモニターに排水を供給する送液ポンプの停止(および起動)の影響も反映していると考えられた。送液ポンプの停止時にはモニター側面の試料供給槽の液面の低下により排水試料の採取不可となるためである。
図10にセレンモニターの測定値と公定法による測定値との相関を示す。測定不良データを除くと、傾き0.949、決定係数r2 = 0.978の相関(データ数69)が得られた。因みに、11月11日のセレンモニター測定値(0.075 mg/L)は公定法濃度(0.016 mg/L)と著しく異なった(外れ値)。濃度検証用の公定法試料を試験終了後にモニターで再測定したところ、濃度0.026 mg/Lであり、公定法との相関性を確認した。当該試料の試験中の濃度相違は、モニターが公定法と同一の試料を測定していないことに起因すると考えられた。
この実験の結果、本発明にかかる水溶性セレン分析方法を実施するセレンモニターを用いて公定法と同程度の精度で排水のセレン濃度を監視できることがわかった。
また、6価セレンの定量分析について実験した。この実験は、簡便なものとするため、図2に示すセレンモニターによらず、テフロン製ビーカ等を用いた簡易なものとした。まず、4価セレンの水素化除去について実験した。
セレン含有水溶液(4価セレンと6価セレンを含有)に水素化ホウ素ナトリウム水溶液(NaBH)と塩酸を添加して常温で反応させることにより、試料中の4価セレンをセレン化水素(HSe)に変換(水素化)して溶液から除去した。セレン含有酸性溶液にNaBHを添加すると4価セレンのみが水素化され、6価セレンは水素化されない現象を活用している。
この水素化除去後の試料には6価セレンのみが残存すると仮定し、公定法(JIS K0102)で求めた除去後試料の全セレン濃度を6価セレン濃度とみなした(図1)。
測定試料には、脱硫排水2種(表2、脱硫排水AおよびB)、および、これに所定濃度の6価セレン、もしくは4価セレンと6価セレンの両方を標準添加したものを用いた。
Figure 0006976875
水素化除去は以下の手順で実施した。
(1)分析用試料25mLを100mLのテフロン製ビーカに分取した(溶液A)。
(2)塩酸(HCl、12mol/L)25mLを分取し、溶液Aに添加した(溶液B)。
(3)溶液Bをスターラーで撹拌しながら所定濃度(3.0、6.0、12.0g/L)のNaBH溶液(0.1mol/L NaOHと1mmol/L EDTAを含有)を所定量(3.0g/L NaBHは50mL、6.0g/L NaBHは25mL、12.0g/L NaBHは12.5mL)添加し、5分撹拌した。
(4)回収率は次式から算出した。
回収率(%)=(C −C)/C×100
:試料中セレンの設定濃度
(mg/L、排水セレン濃度の実測値に標準添加濃度を加算したもの)
:試料のセレン濃度測定値(mg/L)
なお、水素化除去した分析用試料の全セレンおよび6価セレンの設定濃度は、水素化除去前試料の6価セレン濃度設定値とした。
( 結果と考察)
分析用試料にHClとNaBH溶液を添加して、分析用試料中の4価セレンをHSeに水素化して気化除去させた。水素化除去によって、分析用試料中の4価セレンは全て除去され、水素化除去後試料に残存するセレンは全て6価セレンであると仮定した。このため、水素化除去後の分析用試料の全セレン濃度を6価セレン濃度と読み替えた。
表3に分析用試料Aを3.0 g/LのNaBH溶液で4価セレンを水素化除去した結果を示す。水素化除去後試料の6価セレン設定濃度0.06〜0.26 mg/Lに対して、測定値は0.07〜0.31 mg/L、回収率は100〜120%となり、やや過大評価する傾向を示した。6価セレン回収率が過大評価される要因として、4価セレンの水素化除去の際に、4価セレンの一部が水素化されずに残存することが考えられる。
Figure 0006976875
表4には分析用試料Bを3.0 g/LのNaBH溶液で4価セレンを水素化除去した結果を示す。水素化除去後分析用試料の6価セレン設定濃度0.04〜0.24 mg/Lに対して、測定値は0.04〜0.28mg/L、回収率は100〜112%であった。
Figure 0006976875
表5には分析用試料Aおよび分析用試料Bを6.0 g/LのNaBH溶液で4価セレンを水素化除去した結果を示す。水素化除去後分析用試料の6価セレン濃度回収率は105〜114%であった。
Figure 0006976875
表6には分析用試料Aを6.0 g/Lおよび12.0 g/LのNaBH溶液で4価セレンを水素化除去した結果を示す。水素化除去後試料の6価セレン濃度回収率は6.0 g/LのNaBH溶液を用いた場合で106〜110%、12.0 g/LのNaBH溶液を用いた場合で104〜112%であった。6.0 g/LのNaBH溶液を用いた場合と12.0 g/LのNaBH溶液を用いた場合の回収率は同等であった。
Figure 0006976875
以上より、6.0 g/Lもしくは12.0 g/LのNaBH溶液を用いて測定試料中の4価セレンを水素化除去すれば、回収率100〜110%の精度で分析用試料中の6価セレン濃度を得られることがわかった。また、全セレン濃度と6価セレン濃度の差分から4価セレン濃度が得られるため、分析用試料のセレン濃度を4価セレンと6価セレンに分離できる。分別性能を最大化する条件においては、最大10%程度の誤差で4価セレンと6価セレンの濃度を測定できることがわかった。
このことから、本実施形態にかかるセレン分析方法を実施するオンラインセレンモニターによれば、排水のセレン管理に必要な濃度データをリアルタイムで提供でき、プロセスモニターとして利用可能であることが実証された。
S1 4価セレン及び硫黄化合物の水素化除去工程
S2 塩酸還元工程
S3 セレン水素化工程
A 分析用試料
B 水素化除去済み分析用試料
C 還元処理済み分析用試料
D 水素化済み分析用試料
1 6価セレンモニター(6価セレン定量化ライン)
2 全セレンモニター(全セレン定量分析ライン)
100 排水処理ライン
101 6価セレン専用排水処理設備
102 凝集沈殿排水処理設備
103 制御部
104 切り替え弁
105 迂回路

Claims (2)

  1. 脱硫排水から採取された分析用試料に水素化ホウ素ナトリウムと塩酸とを添加して常温で反応させ前記分析用試料中の4価セレンをセレン化水素ガスとして前記分析用試料中から離脱させると同時に前記分析用試料中の硫黄化合物も硫化水素ガスとして前記分析用試料中から離脱させる水素化除去工程と、セレン化水素ガス並びに硫化水素ガスを除去した前記分析用試料中にさらに塩酸を添加して加熱し前記分析用試料中に残存する6価のセレンを4価セレンに還元する塩酸還元工程と、さらに6価のセレンを4価セレンに還元させた前記分析用試料に水素化ホウ素ナトリウムを添加して常温下で反応させセレン化水素ガスを発生させるセレン水素化工程とを有し、前記セレン水素化工程で発生した前記セレン化水素ガスをセレン化水素ガス検知器に導いて等価6価セレン濃度を求めることを特徴とする水溶性セレン分析方法。
  2. 6価セレン専用排水処理設備と4価セレンを処理する凝集沈殿排水処理設備とを備える排水処理ラインに、6価セレン濃度を定量化する6価セレン濃度定量化ラインと全セレン濃度を定量化する全セレン濃度定量化ラインとの2つのセレンモニター並びに排水の流路を切り替える制御部とを備え、
    前記6価セレン濃度定量化ラインは、排水から採取された分析用試料に対し、水素化ホウ素ナトリウムと塩酸とを添加して反応させ分析用試料中の4価セレンをセレン化水素ガスとして排水中から離脱させると同時に前記分析用試料中の硫黄化合物も硫化水素ガスとして分析用試料中から離脱させる水素化除去部と、セレン化水素ガス並びに硫化水素ガスを除去した前記分析用試料にさらに塩酸を添加して加熱し前記分析用試料中に残存する6価のセレンを4価セレンに還元する塩酸還元部と、さらに6価のセレンを4価セレンに還元させた前記分析用試料に水素化ホウ素ナトリウムを添加して常温で反応させセレン化水素ガスを発生させるセレン水素化部と、セレン化水素ガスを検知して等価6価セレン濃度を求めるセレン化水素ガス検知器とを有し、
    前記全セレン濃度定量化ラインは、排水から採取された分析用試料に対し、過マンガン酸カリウムと硫酸とを添加して加熱する酸化処理部と、塩酸を添加して加熱し6価セレンを4価セレンに還元する還元処理部と、前記分析用試料に含まれる4価セレンを水素化ホウ素ナトリウムと反応させてセレン化水素ガスを発生させるセレン水素化部と、このセレン化水素ガスを検知して前記分析用試料の全セレン濃度を求めるセレン化水素ガス検知器とを有し、
    前記制御部は、前記全セレン濃度定量化ラインで検出した全セレン濃度が排水基準を満たしていると判断したときには前記6価セレン専用排水処理設備をバイパスさせて排水し、前記全セレン濃度が排水基準を満たしておらず且つ前記6価セレン濃度定量化ラインで検出される等価6価セレン濃度が排水基準を満たさないときには前記6価セレン専用排水処理設備と凝集沈殿排水処理設備とでセレン除去処理を施してから排水し、前記全セレン濃度が排水基準を満たしていないが、前記等価6価セレン濃度が未検出のときあるいは検出された等価6価セレン濃度が排水基準を満たすときには前記6価セレン専用排水処理設備をバイパスさせて前記凝集沈殿排水処理設備で4価セレンを除去してから排水することを特徴とするセレン含有排水の排水処理システム。
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