JP5951250B2 - セレン化水素ガス検知器のコンディショニング方法 - Google Patents

セレン化水素ガス検知器のコンディショニング方法 Download PDF

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Description

本発明は、セレン化水素ガス検知器のコンディショニング方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器を利用してセレン化水素ガスの定量分析を行う際に適用して好適な、セレン化水素ガス検知器のコンディショニング方法に関する。
本願発明者等は、非特許文献1において、水溶性セレン(亜セレン酸イオン(4価):SeO 2−、セレン酸イオン(6価):SeO 2−)を含む排水、例えば石炭火力発電所から排出される排煙脱硫排水等を対象として、水溶性セレンを簡易・迅速に定量分析する方法を提案している。具体的には、水溶性セレンを含む排水に過マンガン酸カリウムを添加して加熱(例えば、100℃で10分間)することにより分析妨害成分となる有機物を分解処理した後、濃塩酸を添加して加熱(例えば、100℃で10分間)することにより6価セレンを全て4価セレンに還元する。そして、4価セレンをテトラヒドロホウ酸ナトリウムと反応させることで、4価セレンをセレン化水素ガスに変換(気化)させて、このセレン化水素ガスをセレン化水素ガス検知器にて検出し、得られた信号値に基づいて排水中の水溶性セレンを定量分析するようにしている。つまり、セレン化水素ガス検知器によるセレン化水素ガスの定量分析結果に基づいて、排水中の水溶性セレンを定量分析するようにしている。
このように、セレン化水素ガス検知器を用いて排水中の水溶性セレンの定量分析を行うことで、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いる公定法と比較して、セレン化水素ガスの測定器のコンパクト化、低コスト化(初期設備費及びランニングコストを含めて)を図ることができる。また、コンパクト且つ簡便な測定器を利用することによって、排水中の水溶性セレン濃度を現場(石炭火力発電所の排水処理施設内等)で監視し続けて適切に管理するための自動分析装置(プロセスモニター)を構築することも容易となる。
ここで、非特許文献1において提案されている方法においては、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器を利用することが好ましいと考えられる。隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器は、センサ自身が電池を構成するため、検知対象ガスが存在しない場合には残余電流が極めて少ない。したがって、ゼロ点の安定性が高いと共にランニングコストも低いという利点を有している。
電力中央研究所報告V08018、「水中セレンの簡易モニターの開発(その3)」、平成21年8月発行
膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器が劣化して検出感度が低下した場合には、隔膜と電解液の交換によって検出感度を回復させるのが一般的である。しかしながら、隔膜と電解液を交換する作業は極めて煩雑である。特に、隔膜の交換作業は、隔膜の張り方次第でガス検知器の性能が左右されることがあり、熟練を要する。このような交換作業を、排水中の水溶性セレン濃度を監視する現場(石炭火力発電所の排水処理施設内等)にて実施することは極めて困難なものと考えられる。これらのことから、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器を利用して、排水中の水溶性セレンの定量分析のベースとなるセレン化水素ガスを高い信頼性をもって定量分析する上で、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器が劣化して検出感度が低下したときに、隔膜と電解液の交換作業を行うことなく、他の簡易な方法にて検出感度を回復させ、且つ検出感度を安定化させることのできる技術の確立が望まれる。
また、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器を利用したセレン化水素ガスの定量分析は、排水中の水溶性セレンの定量分析のみならず、大気中のセレン化水素ガスの変動をモニタリングするための定量分析等にも利用できるものと考えられる。このような定量分析等においても、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器が劣化して検出感度が低下したときに、隔膜と電解液の交換作業を行うことなく、他の簡易な方法にて検出感度を回復させ、且つ検出感度を安定化させることのできる技術の確立が望ましいものと考えられる。
発明は、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器を利用してセレン化水素ガスを定量分析するに際し、セレン化水素ガス検知器が劣化して検出感度が低下したときに、セレン化水素ガス検知器の検出感度を簡易に回復させると共に検出感度を安定化させることのできるセレン化水素ガス検知器のコンディショニング方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本願発明者等が鋭意検討を行った結果、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器のある特徴を知見するに至った。即ち、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器は通電開始(起動)初期には検出感度が大きく変動(低下)するが、通電開始(起動)から一定期間が経過すると、検出感度の変動が殆どなくなり、セレン化水素ガスの安定した定量分析を実施することが可能であることを知見するに至った
本願発明者等は、かかる知見に基づき、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器を利用してセレン化水素ガスの定量分析を行うに際し、セレン化水素ガス検知器の作用電極にセレン化水素ガスを還元し得る電圧が印加されるようにセレン化水素ガス検知器に通電を行い、通電をセレン化水素ガス検知器の検出感度が安定するまでの期間行うことを考えた
そして、上記課題を解決するため、本願発明者等がさらに鋭意検討を行った結果、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器の別の特徴をさらに知見するに至った。即ち、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器が劣化して検出感度が低下したときに、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器への通電を停止して検出感度を上昇させた後、セレン化水素ガス検知器の通電を開始(起動)して上記検出感度の安定化処理を実施することで、検出感度を劣化前の安定時の検出感度に近づけることが可能であることを知見するに至った。本願発明者等は、この知見に基づき、さらに種々検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
請求項に本発明のセレン化水素ガス検知器のコンディショニング方法は、かかる知見に基づくものであり、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器を利用してセレン化水素ガスの定量分析を行うに際し、セレン化水素ガス検知器が劣化して検出感度が低下したときに、セレン化水素ガス検知器への通電をセレン化水素ガス検知器の検出感度が上昇するまで停止した後、セレン化水素ガス検知器の作用電極にセレン化水素ガスを還元し得る電圧が印加されるようにセレン化水素ガス検知器に通電を行い、通電を前記セレン化水素ガス検知器の検出感度が安定するまでの期間行うようにしている。
求項に記載のセレン化水素ガス検知器のコンディショニング方法によれば、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器を利用してセレン化水素ガスを定量分析するに際し、セレン化水素ガス検知器が劣化して検出感度が低下したときに、セレン化水素ガス検知器の検出感度を簡易に回復させると共に検出感度を安定化させることが可能となる。したがって、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器が劣化して検出感度が低下した場合に、隔膜と電解液を交換するための煩雑な作業を行うことなく、検出感度を簡易に回復させながらも、検出感度を安定化させて、セレン化水素ガスの定量分析(セレン化水素ガスの定量分析を介した水溶性セレンの定量分析を含めて)を高い信頼性をもって連続して実施することが可能となる。
隔膜ガルバニ方式のセレン化水素ガス検知器の測定原理を示す図である。 実施例において使用したフロー方式の水溶性セレン分析システムの構成を示す図である。 セレン標準試料(0.1mg−Se/L)を隔膜ガルバニ方式のセレン化水素ガス検知器で測定した際の信号値の、通電停止期間と通電継続期間に対する変動を示す図である。 通電直後の信号値と安定化後の信号値を電源オフ時間に対してプロットした図である(実施例2)。 通電直後の信号値と安定化後の信号値を電源オフ時間に対してプロットした図である(実施例1)。
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
<第一の実施形態>
第一の実施形態にかかるセレン化水素ガス検知器のコンディショニング方法は、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器を利用してセレン化水素ガスの定量分析を行うに際し、セレン化水素ガス検知器の作用電極にセレン化水素ガスを還元し得る電圧が印加されるようにセレン化水素ガス検知器に通電を行い、通電をセレン化水素ガス検知器の検出感度が安定するまでの期間行うようにしている。
第一の実施形態におけるコンディショニング方法を実施する対象となる隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器の測定原理を図1に基づいて説明する。隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器は、図1に示すように、一部(底面)にセレン化水素ガスを透過可能な隔膜2が設けられた反応容器1に電解液6が充填され、隔膜2を透過したセレン化水素ガスが電解液薄層6aを介して接触可能に作用電極3が配置され、さらに対極4と参照電極5が電解液6に浸漬されているものである。セレン化水素ガス検知器に通電を行うと、作用電極3にセレン化水素ガスを還元し得る電圧が印加される。より詳細には、作用電極3と対極4において以下の化学反応が進行するように作用電極3と対極4の電位が制御される。そして、作用電極3でセレン化水素ガスが還元される際の電流値が測定され、この測定結果がセレン化水素ガス検知器の信号値として出力される。
作用電極 :HSe → Se4− + 2H + 2e
対極 :O + 4e → 2O2−
第一の実施形態にかかるコンディショニング方法を適用可能な隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器は、図1に示す測定原理と実質的に同様の原理でセレン化水素ガスを測定するものであれば、特に限定されるものではない。一例としては、バイオニクス機器製の1GWA/V70が挙げられるが、これに限定されるものではない。
第一の実施形態にかかるコンディショニング方法では、セレン化水素ガス検知器の作用電極にセレン化水素ガスを還元し得る電圧が印加されるようにセレン化水素ガス検知器に通電を行う。通常、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器を起動して(電源をオン状態として)通電を開始すれば、作用電極3にはセレン化水素ガスを還元し得る電圧が印加される。
通電は、セレン化水素ガス検知器の検出感度が安定するまでの期間、具体的には2時間以上、好適には3時間以上、より好適には3〜10時間、さらに好適には3〜5時間実施する。通電を行う期間が短すぎると検出感度が十分に安定化しない場合がある。逆に、通電を行う期間が長すぎると検出感度が十分に安定した状態で電力を消費してしまい、無駄が多くなる。
第一の実施形態にかかるコンディショニング方法により隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器の検出感度(信号値)を安定化することによって、セレン化水素ガス検知器の検出感度(信号値)に起因する測定ばらつきを抑えて、セレン化水素ガスを高い信頼性をもって定量分析することが可能となる。
<第二の実施形態>
第二の実施形態にかかるセレン化水素ガス検知器のコンディショニング方法は、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器を利用してセレン化水素ガスの定量分析を行うに際し、セレン化水素ガス検知器が劣化して検出感度が低下したときに、セレン化水素ガス検知器への通電をセレン化水素ガス検知器の検出感度が上昇するまで停止した後、セレン化水素ガス検知器の作用電極にセレン化水素ガスを還元し得る電圧が印加されるようにセレン化水素ガス検知器に通電を行い、通電を前記セレン化水素ガス検知器の検出感度が安定するまでの期間行うようにしている。
第二の実施形態にかかるコンディショニング方法は、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器が劣化して検出感度が低下したときに実施される。具体的には、同一濃度のセレン化水素ガスを分析対象としたときに、第一の実施形態にかかるコンディショニング方法によって得られる安定した検出感度における信号値が、劣化していないセレン化水素ガス検知器に対して第一の実施形態にかかるコンディショニング方法を実施して得られる安定した検出感度における信号値よりも低下している場合には、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器が劣化して検出感度が低下していると判断することができる。このような場合に、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器を第二の実施形態にかかるコンディショニング方法に供する。尚、第二の実施形態にかかるコンディショニング方法を適用可能な隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器は、第一の実施形態と同様、図1に示す測定原理と実質的に同様の原理でセレン化水素ガスを測定するものであれば、特に限定されるものではない。
第二の実施形態にかかるコンディショニング方法では、まず、劣化により検出感度が低下したと判断された隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器への通電を止める。これにより、セレン化水素ガス検知器の検出感度が上昇(回復)する。
セレン化水素ガス検知器への通電を止める期間については、具体的には30時間以上、好適には3日間以上、より好適には3.5日間以上、さらに好適には4日間以上である。セレン化水素ガス検知器への通電を止める期間が短すぎると、セレン化水素ガス検知器の検出感度が十分に上昇(回復)しない。また、セレン化水素ガス検知器への通電を止める期間が長すぎても、検出感度の上昇(回復)量は飽和してしまうので、通電停止期間は最大でも7日間、好適には6日間とすれば十分である。
尚、セレン化水素ガス検知器の検出感度が上昇(回復)する要因の一つとしては、セレン化水素ガス検知器への通電を停止することにより、隔膜2と作用電極3の間の電解液薄層6aに停滞している4価セレンが電解液6全体に拡散し、これにより隔膜2を透過したセレン化水素ガスが作用電極3においてより還元され易くなることが挙げられる。
セレン化水素ガス検知器への通電を止めて検出感度を上昇(回復)させた後、第一の実施形態と同様に、セレン化水素ガス検知器に継続して通電を行う。これにより、検出感度(信号値)は徐々に低下するものの、通電を止めた際に得られた検出感度の上昇(回復)効果によって、セレン化水素ガス検知器の検出感度をコンディショニング処理前よりも高い状態で安定化させることができる。換言すれば、セレン化水素ガス検知器の検出感度を、劣化前と同じかまたは近い状態として安定化させることができる。
上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。
(1)実験装置
図2に示すフロー方式の水溶性セレン分析システムを用いた。この水溶性セレン分析システムは、大まかには、試料水採取部と、試料水採取部から送液される試料水に含まれる分析妨害成分を分解する第一処理部と、第一処理部から送液される第一処理済み試料水に含まれる6価セレンを4価セレンに還元する第二処理を行う第二処理部と、第二処理部から送液される第二処理済み試料水に含まれる4価セレンをセレン化水素ガスに還元気化する還元気化部と、還元気化部からガス導入管を介して送り込まれるセレン化水素ガスをセレン化水素ガス検知器で検出して得られる信号値に基づいて試料水の水溶性セレン濃度を分析する分析部とを有するものとしている。以下、本実施例における図2に示す水溶性セレン分析システムの各構成及び稼働条件について、詳細に説明する。尚、本実施例では、水溶性セレンのみを含むセレン濃度が既知の標準試料を用いて実験を行ったことから、有機物分解処理と分析妨害成分となり得る硫黄化合物の分解処理は本来的には不要であったが、有機物及び分析妨害成分となり得る硫黄化合物を含む排水の水溶性セレンの定量分析を想定したフロー方式の水溶性セレン分析システムを用いた都合上、有機物分解処理と分析妨害成分となり得る硫黄化合物の分解処理と6価セレンの4価への還元処理を含めた一連の処理を行って実験を実施した。
試料水採取部は、2つの調整槽11及び12と、標準試料貯留槽13とを有し、バルブ11a、バルブ12a及びバルブ13aの開閉によって、いずれかの槽から試料水または標準試料が試料水送液装置15を備える試料水送液ライン16を介して第一処理槽21に送液されるものとした。本実施例では、バルブ11aとバルブ12aと閉じ、バルブ13aを開けて、標準試料貯留槽13から標準試料(セレン濃度0.1mg−Se/Lのセレン水溶液)を第一処理槽21に送液した。
<第一処理部>
第一処理部は、以下の(1a)〜(1g)を有するものとした。
(1a)試料水を収容する第一処理槽21
(1b)第一処理槽21内に有機物分解剤として有機物を分解し得る量で且つ第二処理部における還元を阻害しない量の過マンガン酸カリウムを添加する有機物分解剤添加手段22
(1c)第一処理槽21内の試料水と有機物分解剤とを撹拌混合して第一混合液とする第一撹拌装置24
(1d)第一混合液を第二処理部に向けて送液する第一送液装置25を備える第一送液ライン26
(1e)第一送液ライン26を通過中の第一混合液を、有機物が分解される温度に加熱する第一加熱装置27
(1f)第一混合液が通過した後の第一送液ライン26に、洗浄剤として塩酸を供給する洗浄剤供給手段28
(1g)第一処理槽21内に硫酸を添加する硫酸添加手段23
第一処理槽21には、試料水採取部から送液されたセレン標準試料を収容した。第一処理槽21の容量は30mLとした。
有機物分解剤添加手段22は、第一処理槽21内に、分析妨害成分である有機物を分解するための有機物分解剤として過マンガン酸カリウムを添加するものである。本実施例では、有機物分解剤添加手段22は、有機物分解剤貯蔵タンク22a内に2g/Lの過マンガン酸カリウム水溶液を貯留しておき、シリンジポンプにより、これが第一処理槽21内に1mL添加されるように制御した。また、過マンガン酸カリウム水溶液は、第一処理槽21に試料水を送液する前に添加した。
硫酸添加手段23は、第一処理槽21内に、分析妨害成分となり得る硫黄化合物を分解するための硫酸を添加するものである。テトラヒドロホウ酸ナトリウムとの反応によって硫化水素が発生する種類の硫黄化合物が試料水に含まれる場合、これが還元気化部においてテトラヒドロホウ酸ナトリウムと反応して硫化水素となり、硫化水素によりセレン化水素ガスの検出が妨害されて、分析精度が低下する要因となり得る。硫酸は、試料水に含まれる硫黄化合物を分解して硫化水素の発生を防ぎ、分析精度の低下を回避する役割を有する。硫黄化合物の分解についてより詳細に説明すると、ジチオン酸やヒドロキシルアミンスルホン酸化合物(NS化合物)などの硫黄化合物は、硫酸により酸化力が増強された過マンガン酸カリウムによって酸化分解され、最終的に硫酸イオンとなる。硫酸イオンは化学的に安定であり、テトラヒドロホウ酸ナトリウムを添加しても硫化水素ガスは発生しない。したがって、硫酸により酸化力が増強された過マンガン酸カリウムによって、テトラヒドロホウ酸ナトリウムとの反応によって硫化水素ガスを発生し得る硫黄化合物、即ち、テトラヒドロホウ酸ナトリウムとは反応しない安定な硫黄化合物(硫酸やペルオキソ二硫酸等)以外の硫黄化合物によるセレン化水素ガスの測定の妨害を排除して、精度良く分析することが可能となる。ここで、硫酸は、第一混合液の硫酸濃度が1.3〜3.0mol/Lに調整される量で添加することが好適であり、2.3mol/Lに調整される量で添加することがより好適である。硫酸濃度が低すぎると、硫酸による過マンガン酸カリウムの酸化力を高める効果が低くなるため、有機化合物の分解を十分に行うことができず、分析精度が低下し得る。硫酸濃度が高めすぎると、硫酸の添加量が多くなりすぎて、第一混合液の総量が増加し、反応時間の増加を招くこととなる。具体例を挙げると、硫黄化合物を含む脱硫排水5mLを試料水とした場合、6〜18mol/Lの硫酸を1〜2mL添加して上記濃度とすればよく、9〜12mol/Lの硫酸を1〜2mL添加して上記濃度とすることが好適であり、9mol/Lの硫酸を2mL添加して上記濃度とすることがより好適である。本実施例では、硫酸添加手段23は、硫酸貯蔵タンク23a内に9mol/L(1+1)の硫酸を貯留しておき、シリンジポンプにより、これが第一処理槽21内に2mL添加されるように制御した。尚、本実施例では、第一処理槽21に試料水を収容する前に、過マンガン酸カリウム水溶液を第一処理槽21に添加した。また、硫酸は、第一処理槽21内に試料水が送液されて収容された後に添加した。
第一撹拌装置24は、試料水と有機物分解剤と硫酸とを撹拌混合して第一混合液とするためのものである。本実施例では、第一撹拌装置24を、第一処理槽21内にキャリアガス(空気)を供給してバブリングすることにより撹拌混合を行うキャリアガス供給手段とした。キャリアガス(空気)供給速度は500mL/分とした。
第一混合液は、第一処理槽21と第二処理槽31を接続する第一送液ライン26を介して、第一送液装置25により第一処理槽21から第二処理槽31に向けて送液されるようにし、その過程で第一加熱装置27により加熱されて分析妨害成分が分解処理されるようにした。これにより、フロー方式による分析妨害成分の分解処理を可能とした。本実施例では、第一加熱装置27を円柱状のヒーターとし、このヒーターに第一送液ライン26としてキャピラリの一部を螺旋状に巻き付けて備えるようにし、第一送液装置25(ペリスタルティックポンプ)により、第一混合液の流量を制御するようにした。これにより、第一送液装置25により設定された第一混合液の流量とヒーターに巻き付けられたキャピラリの長さとによって、第一混合液の分析妨害成分の分解処理時間を制御するようにした。本実施例では、キャピラリとして、内径1mm、長さ6mのPTFE製キャピラリを用い、流量は0.5mL/分に設定し、ヒーターの加熱温度を100℃として、第一混合液が100℃で20分間加熱されるようにした。
尚、第一混合液が通過した後の第一送液ライン26には、第一混合液に含まれる過マンガン酸カリウムに起因する二酸化マンガン等が析出して、第一送液ライン26を閉塞する、あるいは第一送液ライン26の径が狭まって、次回の分析の際に第一混合液のスムーズな流通が阻害され得る。そこで、本実施例では、第一混合液が通過した後の第一送液ライン26に、洗浄液として塩酸を供給する洗浄剤供給手段28を備えるようにした。具体的には、洗浄剤供給手段28は、洗浄剤貯蔵タンク28a内に塩酸を貯蔵しておき、シリンジポンプを用いて、2.5mLの濃塩酸(12mol/L)が第一処理槽21を介して第一送液ライン26内に添加されるように制御した。尚、塩酸を供給することで、以下に示す化学反応により、第一送液ライン26を閉塞し得る主要な析出物である二酸化マンガンが除去される。
MnO + 4HCl → MnCl + HO +Cl ・・・(1)
<第二処理部>
第二処理部は、以下の(2a)〜(2e)を有するものとした。
(2a)第一処理槽21と第一送液ライン26で接続され、第一処理済み試料水が送液されて収容される第二処理槽31
(2b)第二処理槽31内に6価セレンを4価セレンに還元する還元剤として塩酸を添加する還元剤添加手段32
(2c)第二処理槽31内の第一処理済み試料水と還元剤とを撹拌混合して第二混合液とする第二撹拌装置33
(2d)第二混合液を還元気化部に向けて送液する第二送液装置35を備える第二送液ライン36
(2e)第二送液ライン36を通過中の第二混合液を、6価セレンの4価セレンへの還元反応が進行する温度に加熱する第二加熱装置37
第二処理槽31には、第一処理部から送液された第一処理済み試料水、即ち試料水に含まれる有機物が分解処理された試料水を収容した。第二処理槽31の容量は30mLとした。
還元剤添加手段32は、第二処理槽31内に、第一処理済み試料水に含まれる6価セレン(第一処理部において酸化されて6価セレンとなった、試料水に元々含まれていた4価セレン、及び試料水に元々含まれていた6価セレン)を4価セレンに還元しうるための還元剤として塩酸を添加するものである。本実施例では、還元剤添加手段32は、洗浄剤貯蔵タンク28aから、シリンジポンプを用いて、5mLの塩酸(12mol/L)が第二処理槽31内に添加されるように制御した。尚、本実施例では、バルブ32aによって、洗浄剤貯蔵タンク28aからの塩酸の送液箇所を、第一処理槽21及び第二処理槽31のいずれか一方の槽に切り換え可能とした。
第二撹拌装置33は、本実施例では、第二処理槽31内の第一処理済み試料水と還元剤にキャリアガス(空気)を供給してバブリングを行うキャリアガス供給手段とした。これにより、第一処理済み試料水と還元剤とを撹拌して第二混合液とした。また、第一処理済み試料水と塩酸を接触させると塩素ガスが発生するので、バブリングにより塩素ガスの除外を行うようにした。具体的には、空気500mL/分によるバブリングを2〜3分実施した。これにより、セレン化水素ガス検知器52において、塩素ガスに起因する負のピークの発生による分析の妨害を排除するようにした。
第二混合液は、第二処理槽31と反応槽41を接続する第二送液ライン36を介して、第二送液装置35により第二処理槽31から反応槽41に向けて送液されるようにし、その過程で第二加熱装置37により加熱されて6価セレンが4価セレンに還元処理されるようにした。これにより、フロー方式による6価セレンの4価セレンへの還元処理を可能とした。本実施例では、第二加熱装置37を円柱状のヒーターとし、このヒーターに第二送液ライン36としてキャピラリの一部を螺旋状に巻き付けて備えるようにし、第二送液装置35(ペリスタルティックポンプ)により、第二混合液の流量を制御するようにした。これにより、第二送液装置35により設定された第二混合液の流量とヒーターに巻き付けられたキャピラリの長さとによって、第二混合液に含まれる6価セレンを4価セレンに還元する還元処理時間を制御するようにした。本実施例では、キャピラリとして、内径1mm、長さ6mのPTFE製キャピラリを用い、流量は1.5mL/分に設定し、ヒーターの加熱温度を100℃として、第二混合液が100℃で10分間加熱されるようにした。
<還元気化部>
還元気化部は、以下の(3a)〜(3f)を有するものとした。
(3a)第二処理槽31と第二送液ライン36で接続され、第二処理済み試料水が送液されて収容される密閉構造の反応槽41
(3b)反応槽41内に第二処理済み試料水からの塩化水素ガスの発生を抑制し得る量の水を供給する水供給手段42
(3c)反応槽41内とガス導入管51内とガス導入管51からセレン化水素ガス検知器52のセンサ部に至るまでのガス流通経路とをキャリアガスで置換するキャリアガス供給手段43
(3d)反応槽41内の水が供給された第二処理済み試料水を撹拌する第三撹拌装置44
(3e)反応槽41内とガス導入管51内とガス流通経路とをキャリアガスで置換した後に、第三撹拌装置44により撹拌されている反応槽41内の水が供給された第二処理済み試料水に、テトラヒドロホウ酸ナトリウムを含む溶液を、セレン化水素ガス検知器52にて検出される信号値のピークが分裂する速度未満で添加するセレン化水素ガス生成剤添加手段45
(3f)テトラヒドロホウ酸ナトリウムを含む溶液を0℃〜25℃に冷却して貯蔵する冷蔵庫45a
反応槽41には、第二処理部から送液された第二処理済み試料水、即ち試料水に含まれる有機物さらには硫黄化合物が分解処理され、且つ6価セレンが4価セレンに還元処理された試料水を収容した。反応槽41の容量は50mLとした。また、反応槽41は密閉構造とした。
水供給手段42は、反応槽41内に、第二処理済み試料水からの塩化水素ガスの発生を抑制し得る量の水を供給するものである。これにより、第二処理済み試料水が水で希釈されて(以下、希釈された第二処理済み試料水と呼ぶこともある)、第二処理済み試料水からの塩化水素ガスの発生を抑えて、セレン化水素ガス検知器において異常ピークが生じることによる分析の妨害を排除するようにした。本実施例では、反応槽41に第二処理済み試料水が送液されて収容される前に、水供給手段42から反応槽41に蒸留水5mLを添加するようにし、希釈された第二処理済み試料水の塩酸濃度を3mol/Lとした。
キャリアガス供給手段43は、反応槽41内とガス導入管51内とガス導入管51からセレン化水素ガス検知器52のセンサ部に至るまでのガス流通経路とをキャリアガスで置換するものである。これにより、セレン化水素ガス検知器52の信号のベースラインを安定させて、安定した信号値に基づいて精度良く分析を行うようにした。本実施例では、希釈された第二処理済み試料水にキャリアガス(空気)を供給してバブリングすることにより、反応槽41内とガス導入管51内とガス導入管51からセレン化水素ガス検知器52のセンサ部に至るまでのガス流通経路とをキャリアガスで置換するようにした。キャリアガス流量は500mL/分とし、バブリング時間は7分とした。尚、バブリングを行う際には、バルブ49aは開とし、バルブ49bは閉とした。
第三撹拌装置44は、撹拌翼とし、反応槽41内とガス導入管51内とガス導入管51からセレン化水素ガス検知器52のセンサ部に至るまでのガス流通経路とをキャリアガスで置換した後、テトラヒドロホウ酸ナトリウムとの反応をスムーズに進行させるべく、希釈された第二処理済み試料水を撹拌した。
セレン化水素ガス生成剤添加手段45は、反応槽41内とガス導入管51内とガス導入管51からセレン化水素ガス検知器52のセンサ部に至るまでのガス流通経路とをキャリアガスで置換した後、第三撹拌装置44により撹拌されている希釈された第二処理済み試料水に、テトラヒドロホウ酸ナトリウムを含む溶液を添加して、4価セレンからセレン化水素ガスを生成するものである。本実施例では、セレン化水素ガス生成剤添加手段45は、セレン化水素ガス生成剤貯蔵タンク45aから、ペリスタルティックポンプを用いて、テトラヒドロホウ酸ナトリウムを含む溶液が反応槽41内に15mL/分で10mL添加されるように制御した。また、セレン化水素ガス生成剤貯蔵タンク45aは冷蔵庫とし、テトラヒドロホウ酸ナトリウムを含む溶液を0℃〜10℃に冷却して保存した。
テトラヒドロホウ酸ナトリウムを含む溶液は、テトラヒドロホウ酸ナトリウム濃度を3g/L、EDTA濃度1.0mmol/L、NaOH濃度を0.1mol/Lとした。
<分析部>
分析部は、以下の(4a)〜(4c)を有するものとした。
(4a)反応槽41内のヘッドスペース41aのセレン化水素ガスをガス導入管51を介してセレン化水素ガス検知器52に送り込むため同伴ガスとしてのキャリアガスをヘッドスペースに供給する同伴ガス供給手段53
(4b)ガス導入管51全体を、ガス導入管の内壁に結露が生じない温度に加熱する第三加熱装置54
(4c)セレン化水素ガス検知器により検出された信号値に基づいて試料水の水溶性セレン濃度を分析する分析手段55
(4d)ガス流通経路を、ガス流通経路の内壁に結露が生じない温度で且つセンサ部の電解液が蒸発乾固しない温度に加熱する第四加熱装置55
セレン化水素ガス検知器52は、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器であるバイオニクス機器製の1GWA/V70とした。
ガス導入管51は、管内径4mm、長さ2mとした。
同伴ガス供給手段53は、反応槽41のヘッドスペース41aに滞留するセレン化水素ガスを、キャリアガス(空気)に同伴させ、ガス導入管51を介してセレン化水素ガス検知器52に送り込むためのものである。本実施例では、同伴ガスとして、空気を250mL/分の流量で反応槽41のヘッドスペース41aに供給した。この際、バルブ53aを開、バルブ53bを閉とした。
第三加熱装置54は、コードヒーターとし、ガス導入管51の外周面全体を覆って、ガス導入管51の内壁に結露が生じない温度(90℃)に加熱した。これにより、ガス導入管51の内壁に生じた結露水にセレン化水素ガスが溶け込むことによる分析精度の低下を防止するようにした。
第四加熱装置55は、セレン化水素ガス検知器52のセンサ部に至るガス流通経路を加熱する装置である。ガス導入管51から送り込まれるセレン化水素ガスは、セレン化水素ガス検知器52の台座部52aに設けられた貫通孔(ガス流通経路)を介してセレン化水素ガス検知器52のセンサ部に導入される。分析環境が15℃を下回ると、この貫通孔の壁面に結露が生じて、結露水にセレン化水素ガスが溶け込むことにより分析精度が低下し得る。そこで、本実施例では、分析環境に依存することなく正確な分析を可能とするために、台座52aを加熱する第四加熱装置55を備えるようにして、ガス流通経路の内壁に結露が生じない温度で且つセンサ部の電解液が蒸発乾固しない温度(65℃)に加熱した。
尚、図2に示す水溶性セレン分析システムにおいて、符号61は廃液タンクであり、反応槽41内の液体を高濃度廃液として排出するためのものである。符号62は廃液ラインであり、第一処理部、第二処理部、還元気化部において試料水が送液された槽及びラインに送液された洗浄水を集めて低濃度廃液として排出するためのものである。
<実施例1>
セレン化水素ガス検知器の信号値の変動について、セレン化水素ガス検知器の電源オフ期間及び通電時間との関係について検討した。検討結果を表1と図3に示す。
尚、表1における「前回測定時からの時間」とは、図2に示す水溶性セレン分析システムにおいて、前回のセレン化水素ガス検知器52でのセレン化水素ガスの検出(測定)終了時から次回のセレン化水素ガス検知器52でのセレン化水素ガスの検出(測定)開始時までの時間を意味している。
また、セレン化水素ガス検知器は、「run1」を実施する約1週間前から通電を開始し、300回以上の連続して測定を行っていた。「run3」は6日間通電を停止した後、セレン化水素ガスの検出(測定)開始1時間前に通電を開始して実施した。「run6」は1日通電を停止した後、セレン化水素ガスの検出(測定)開始1時間前に通電を開始して実施した。
表1及び図3に示されるように、連続測定状態からの分析により得られる信号値(run1及びrun2)は、230mVで安定していた。また、セレン化水素ガス検知器への通電を6日間停止してから通電を再開した結果、通電開始直後では信号値が650mVまで上昇し(run3)、通電を継続したまま、さらに分析を連続して実施したところ(run4及びrun5)、通電開始から3時間経過後に信号値が400mV前後で安定した(run5)。さらに、セレン化水素ガス検知器への通電を1日停止してから通電を再開した結果、通電開始直後では信号値が480mVまで上昇し(run6)、通電を継続したまま、さらに分析を連続して実施したところ、通電開始から1時間経過後に信号値が400mV前後で安定した(run7)。
実施例1における検討結果から、セレン化水素ガス検知器への通電を一定期間停止してから通電を再開することによって通電直後の信号値が上昇する傾向が見られ(run3とrun6)、通電停止期間が長い程、信号値の上昇の度合いが大きくなる傾向が見られた(run3>run6)。
また、継続して通電を行うことによって、徐々に信号値が低下し安定することも明らかとなった(run5とrun7)。
さらに、run1及びrun2では、信号値は安定していたものの、セレン化水素ガス検知器の劣化によって信号値が通常の安定時よりも低下している傾向が見られたが、セレン化水素ガス検知器への通電を一定期間停止してから通電を再開し、その後継続して通電を行うことによって、信号値を回復させつつ安定させることができることも明らかとなった(run5とrun7)。
<実施例2>
実施例1における検討を、さらに条件を細かく振って実施した。検討結果を表2と図4に示す。尚、実施例2では、実施例1とはロット番号の異なるセレン化水素ガス検知器を用いて実験を行った。
尚、表2における「前回測定時からの時間」の意味は、実施例1と同様である。
また、図4は、実施例2の実験結果に基づき、通電直後の信号値と安定化後の信号値を電源オフ時間に対してプロットしたものである。図5は、実施例1の実験結果に基づき、図4と同様の手法でプロットしたものである。
また、セレン化水素ガス検知器は、「run1」においてセレン化水素ガス検知器によりセレン化水素ガスを測定する1時間前に起動(購入後、初めて通電)した。「run6」は2.7日間通電を停止した後、セレン化水素ガスの検出(測定)開始1時間前に通電を開始して実施した。「run14」は15時間通電を停止した後、セレン化水素ガスの検出(測定)開始1時間前に通電を開始して実施した。「run17」は3.5日間通電を停止した後、セレン化水素ガスの検出(測定)開始1時間前に通電を開始して実施した。「run22」は5.6日間通電を停止した後、セレン化水素ガスの検出(測定)開始1時間前に通電を開始して実施した。「run27」は30時間通電を停止した後、セレン化水素ガスの検出(測定)開始1時間前に通電を開始して実施した。
実施例2における検討結果からも、実施例1と同様、セレン化水素ガス検知器への通電を一定期間停止してから通電を再開することによって通電直後の信号値が上昇する傾向が見られた(run6、run17、run22、run27)。但し、通電停止期間が15時間の場合には、通電直後の信号値の上昇はほとんど見られなかった。また、信号値の上昇の度合いについては、通電停止期間を3.5日間(run17)とするまでは大きくなる傾向が見られたが、その後は信号値の上昇の度合いはほぼ一定になる傾向が見られた(run22)。
また、実施例1と同様、継続して通電を行うことによって、徐々に信号値が低下し安定することも明らかとなった(run1〜5におけるrun3以降、run6〜13におけるrun8以降、run14〜16、run17〜21におけるrun19以降、run22〜26におけるrun24以降、run27〜31におけるrun29以降)。
尚、実施例2では、セレン化水素ガス検知器の劣化による信号値の低下は見られなかったことから、実施例1のような信号値の回復と安定化は見られなかった。
<まとめ>
実施例1と実施例2における検討結果から、隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器の検出感度(信号値)の安定化を図る上では、2時間以上、好適には3時間以上、通電を行うことが望ましいと考えられた。また、通電を行う期間が長すぎると検出感度が十分に安定した状態で電力を消費してしまい、無駄が多くなると考えられることから、通電期間は、最大でも10時間、好適には5時間とすることが望ましいと考えられた。尚、実施例1と実施例2における安定化後の信号値の違いは、セレン化水素ガス検知器のロットの違いによるものである。
また、劣化した隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器の検出感度(信号値)を回復させつつ安定化を図る上では、セレン化水素ガス検知器への通電を30時間以上、好適には3日間以上、より好適には3.5日間以上、さらに好適には4日間以上停止させて検出感度(信号値)を上昇(回復)させた後、上記と同様の条件でセレン化水素ガス検知器の検出感度(信号値)の安定化を図ることが望ましいと考えられた。また、通電停止期間の上限値は特に限定されるものではないが、4日間以上通電を停止させても、検出感度(信号値)の上昇(回復)効果は大きくはならないので、7日間以下、好適には6日間以下とすれば十分である。
3 作用電極
52 セレン化水素ガス検知器

Claims (1)

  1. 隔膜ガルバニ電池式のセレン化水素ガス検知器を利用してセレン化水素ガスの定量分析を行うに際し、前記セレン化水素ガス検知器が劣化して検出感度が低下したときに、前記セレン化水素ガス検知器への通電を前記セレン化水素ガス検知器の検出感度が上昇するまで停止した後、前記セレン化水素ガス検知器の作用電極にセレン化水素ガスを還元し得る電圧が印加されるように前記セレン化水素ガス検知器に通電を行い、前記通電を前記セレン化水素ガス検知器の検出感度が安定するまでの期間行うことを特徴とするセレン化水素ガス検知器のコンディショニング方法。
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