JP4981749B2 - セレンの定量分析方法並びに定量分析システム - Google Patents

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Description

本発明は、セレンを定量的に分析する方法とそのシステムに関する。さらに詳述すると、本発明は、水中に溶存しているセレンの濃度の現場分析に好適な定量分析方法並びに定量分析システムに関する。
セレン(Se)は産業界で広く利用されている元素である。例えば、ガラスの着色剤や脱色剤等に用いられる他、金属セレンの半導体性・光伝導性を利用して、コピー機の感光ドラムや整流器等に利用されている。
かかる状況下においては、セレンを含む工業製品を製造する過程でセレンを含む排水が排出されたり、また、セレンを含む工業製品の使用や廃棄によって、環境中にセレンが溶出することがある。
また、電気事業の分野においても、石炭中に含まれる微量のセレンに起因して、石炭火力発電所排水や石炭灰処分場溶出水にセレンが含まれることがある。
ここで、セレンは人体の必須元素である一方、過剰摂取により神経障害や胃腸障害を引き起こす元素として知られている。セレン過剰症として、例えば、神経障害、胃腸障害、筋衰弱、低血圧等の症状が起き、最終的には循環虚脱や肺水腫を引き起こすことが知られている。
したがって、排水中にセレンが溶存していると、人体に悪影響を及ぼす虞がある。そこで、わが国では、平成5年にセレンの水質環境基準(0.01mg−Se/L)が制定された。そして、平成6年に水質汚濁防止法施行令の一部が改正されてセレンの排水基準(0.1mg−Se/L)が制定された。
排水基準値を遵守するためには、排水中のセレン濃度の継続的な監視及び管理が必要であることから、排水中のセレン濃度を定量分析するための様々な方法が利用されている。
先ず、排水中のセレンの公定分析法として、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)を用いた吸光分析法(JIS K0102 67.1)、水素化物発生−原子吸光分析法(JIS K0102 67.2)、水素化物発生−ICP発光分析法(JIS K0102 67.3)が利用されている(非特許文献1)。
DABを用いた吸光分析法は、酸性下・沸騰水浴中でDABを亜セレン酸イオン(SeO 2−)と反応させてピアズセレノール錯体を形成し(化1)、この錯体をトルエンに抽出して、波長420nmにおける吸収を測定するものである。
水素化物発生−原子吸光分析法及び水素化物発生−ICP発光分析法は、酸性溶液中で亜セレン酸イオンをテトラヒドロホウ酸ナトリウム(NaBH)と反応させて亜セレン酸イオンを還元し、気体のセレン化水素(HSe)を発生させて(化2)、これをICP発光分析装置あるいは原子吸光分析装置により測定して定量分析を行うものである。
また、高感度な分析手法として、2,3−ジアミノナフタレン(DAN)を蛍光試薬として用いる蛍光分析法が知られている(非特許文献2)。DANは亜セレン酸イオンと反応して蛍光性の4,5−ベンゾピアセレノール錯体を形成するが(化3)、この錯体は水中では発光が弱いため、クロロホルムやトルエン、シクロヘキサン等の有機溶媒に抽出した後に測定が行われる。この蛍光分析法は非常に感度が高く、抽出と同時に濃縮を行うことでpg〜ngレベルの4価セレンの測定も可能である。また、DANを蛍光試薬として用いる蛍光分析法として、界面活性剤を用いて液液抽出を簡略化した方法も知られている(非特許文献3)。
工業排水試験方法(JIS K 0102 67)、社団法人日本工業用水協会、1998年4月20日 C. A. Rarker and L. G. Harvey: "Luminescence of some piazselenols. A new fluorimetric reagent for selenium", Analyst, 87, 558-565 (1962). J. Pedro, F. Andrade, D. Magni, M. Tudino, A. Bonivardi: "On-line submicellar enhanced fluorometric determination of Se(IV) with 2,3- diaminonaphthalene", Anal. Chim. Acta, 516, 229-236 (2004).
セレンの排水基準(0.1mg−Se/L)が制定されたことに伴い、排水中のセレン濃度の継続的な監視及び管理をより適切に行うためのツールとして、セレン濃度を現場で監視する自動測定機(プロセスモニター)に対するニーズが高まりつつある。セレン濃度を現場で監視する自動測定機を実現するためには、排水基準値をカバーできる検出感度があり、使用する薬品の管理が容易であること、ランニングコストが低いこと、測定器およびユーティリティが大型・高価にならないことを兼ね備え、しかも、迅速かつ簡易にセレンの定量分析を行うことができる手法の確立が急務である。しかしながら、上述したセレンの定量分析方法では、これらの条件を全て兼ね備えたセレンの定量分析を行うことができない。
即ち、DABを用いた吸光分析法を採用した場合、4価セレン濃度の測定範囲が1.0〜7.0mg−Se/Lであるため、排水基準値である0.1mg−Se/Lの測定を行うことができない。そこで、排水基準値である0.1mg−Se/Lの測定を行うために、分析用試料に含まれている亜セレン酸イオンを水酸化鉄(III)で共沈させることで4価セレンの濃縮および夾雑物の分離を行う前処理が必要になる。しかしながら、このような前処理やピアズセレノール錯体をトルエンにより抽出する処理は非常に煩雑である。しかも、DAB水溶液は1週間程度で劣化してしまうと共に、DABそのものが高価であり、4価セレンの分析にかかるコストが上昇してしまう。
また、水素化物発生−原子吸光分析法や水素化物発生−ICP発光分析法は、測定に要する時間が20分程度と比較的短く、高感度測定も可能であるものの、吸光分析法に用いられる吸光光度計等の分析装置と比較して高価且つ大型な装置が必要であると共に、高圧ガスや排気設備といったユーティリティを必要とするため、現場分析で用いる簡易測定装置への適用は非常に難しい。
また、DANを用いる蛍光分析法は、4価セレン濃度の測定範囲は0.1〜1μg−Se/Lであることから、高感度な定量分析手法ではあるものの、錯体化するのに30分の時間を要すると共に、シクロヘキサンへ抽出する作業が必要であり、煩雑である。また、界面活性剤を用いて液液抽出を簡略化した方法を採用した場合、蛍光分析法では濁度を有する試料を分析することが困難なため、分析用試料中の懸濁物(SS)の分離処理を行う必要がある。しかも、蛍光試薬として用いるDANは高価であり、4価セレンの分析にかかるコストが上昇してしまう。
そこで、本発明は、排水中の4価セレン濃度の現場分析に好適な定量分析方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、排水中の4価セレン濃度の現場分析に好適な定量分析方法の実施するためのシステムを提供することを目的とする。
かかる課題を解決するための請求項1記載のセレンの定量分析方法は、4価セレンが溶存している分析用試料に塩酸及び硫酸の少なくともいずれか一方を添加して酸の規定度が0.13〜6.7N/Lの酸性分析用試料を得る工程と、酸性分析用試料1Lに対して5g/分以下でテトラヒドロホウ酸ナトリウムを添加し、4価セレンとテトラヒドロホウ酸ナトリウムを反応させてセレン化水素を発生させる工程と、セレン化水素を10〜20mL/分で吸引する工程と、吸引されたセレン化水素を定電位電解式センサで測定して測定値を得る工程と、測定値に基づいて分析用試料の4価セレン濃度を検量線法により分析する工程とを含み、検量線法に用いる検量線は4価セレン濃度が既知の複数の標準試料から予め求めた4価セレン濃度と定電位電解式センサの測定値との相関に基づいて作成されたものとしている。
また、かかる課題を解決するための請求項5記載のセレンの定量分析システムは、4価セレンが溶存している分析用試料に塩酸及び硫酸の少なくともいずれか一方が添加されて、酸の規定度が0.13〜6.7N/Lに調整された酸性分析用試料を入れる密閉構造の容器と、酸性分析用試料1Lに対して5g/分以下でテトラヒドロホウ酸ナトリウムを添加する手段と、セレン化水素を測定して測定値を出力する定電位電解式センサと、酸性分析用試料から発生したセレン化水素を10〜20mL/分で吸引して定電位電解式センサに供給する供給手段と、4価セレン濃度が既知の複数の標準試料から予め求めた4価セレン濃度と定電位電解式センサの測定値との相関に基づいて作成された検量線を有すると共に検量線に基づいて測定値から分析用試料の4価セレン濃度を分析する分析手段とを含むものである。
このように構成することで、水素の単位時間当たりの発生量を、定電位電解式センサによるセレン化水素の測定値に影響を及ぼさない量に抑えることができる。つまり、定電位電解式センサによるセレン化水素の測定を、水素の影響を十分に排除しながら行うことができる。
次に、請求項2記載のセレンの定量分析方法は、4価セレンが溶存している分析用試料に塩酸及び硫酸の少なくともいずれか一方を添加して酸の規定度が0.13〜6.7N/Lの酸性分析用試料を得る工程と、酸性分析用試料1Lに対して5〜10g/分でテトラヒドロホウ酸ナトリウムを添加し、4価セレンとテトラヒドロホウ酸ナトリウムを反応させてセレン化水素を発生させる工程と、セレン化水素にキャリアーガスを500〜700mL/分で添加する工程と、セレン化水素をキャリアーガスと共に400〜600mL/分で吸引する工程と、吸引されたセレン化水素を定電位電解式センサで測定して測定値を得る工程と、測定値に基づいて分析用試料の4価セレン濃度を検量線法により分析する工程とを含み、検量線法に用いる検量線は4価セレン濃度が既知の複数の標準試料から予め求めた4価セレン濃度と定電位電解式センサの測定値との相関に基づいて作成されたものとしている。
また、請求項6記載のセレンの定量分析システムは、4価セレンが溶存している分析用試料に塩酸及び硫酸の少なくともいずれか一方が添加されて、酸の規定度が0.13〜6.7N/Lに調整された酸性分析用試料を入れる密閉構造の容器と、酸性分析用試料1Lに対して5〜10g/分でテトラヒドロホウ酸ナトリウムを添加する手段と、容器にキャリアーガスを500〜700mL/分で供給する手段と、セレン化水素を測定して測定値を出力する定電位電解式センサと、酸性分析用試料から発生したセレン化水素をキャリアーガスと共に400〜600mL/分で吸引して定電位電解式センサに供給する供給手段と、4価セレン濃度が既知の複数の標準試料から予め求めた4価セレン濃度と定電位電解式センサの測定値との相関に基づいて作成された検量線を有すると共に検量線に基づいて測定値から分析用試料の4価セレン濃度を分析する分析手段とを含むものである。
このように、キャリアーガスを併用することによって、定量分析精度を高めることができ、キャリアーガスを併用しない場合と比較してさらに低濃度の領域まで定量分析を行うことが可能となる。
ここで、酸として硫酸が添加された酸性分析用試料に硝酸を添加し、これを加熱して硫酸白煙を生じさせることが好ましい。石炭火力発電所等から排出される脱硫排水には、有機物やヨウ化物イオンといった、セレン化水素の測定の妨害成分となる物質が含まれているが、この処理を行うことによって、有機物やヨウ化物イオンを除去でき、同時に酸性分析用試料を得ることもできる。
さらに、酸として硫酸が添加された酸性分析用試料に硝酸を添加し、これを加熱して硫酸白煙を生じさせた後、これに酸として塩酸を添加して、硫酸及び塩酸による酸の規定度を4.0〜6.7N/Lとすることが好ましい。この場合、有機物やヨウ化物イオンを除去でき、同時に酸性分析用試料を得ることができることに加えて、定電位電解式センサによるセレン化水素の定量精度を高めることができる。
請求項1記載のセレンの定量分析方法並びに請求項5記載の定量分析システムによれば、水素の単位時間当たりの発生量を、定電位電解式センサによるセレン化水素の測定値に影響を及ぼさない量に抑えることができる。つまり、定電位電解式センサによるセレン化水素の測定を、水素の影響を十分に排除しながら行うことができるので、分析用試料の4価セレン濃度を正確に定量分析することが可能となる。しかも、従来のセレンの定量分析方法のように煩雑な前処理や抽出処理を行うことなく、簡易且つ迅速に定量分析することができる。
また、測定に供されたセレン化水素のほとんどが定電位電解式センサの電解液中に亜セレン酸イオンとして溶け込むので、分析用試料に溶存していた4価セレンを回収して再利用することが可能となる。
請求項2記載のセレンの定量分析方法並びに請求項6記載の定量分析システムによれば、定量分析精度を高めることができ、キャリアーガスを併用しない場合と比較してさらに低濃度の領域まで定量分析を行うことが可能となる。
請求項3記載のセレンの定量分析方法並びに請求項7記載の定量分析システムによれば、有機物やヨウ化物イオンといったセレン化水素の測定の妨害成分となる物質が分析用試料に含まれている場合であっても、有機物やヨウ化物イオンを除去して、正確な測定値を得ることが可能となる。しかも、有機物やヨウ化物イオンの除去と同時に酸性分析用試料を得ることができるという利点を有する。
請求項4記載のセレンの定量分析方法並びに請求項8記載の定量分析システムによれば、有機物やヨウ化物イオンといったセレン化水素の測定の妨害成分となる物質が分析用試料に含まれている場合であっても、有機物やヨウ化物イオンを除去して、正確な測定値を得ることが可能となる。しかも、有機物やヨウ化物イオンの除去と同時に酸性分析用試料を得ることができるという利点を有する。さらに、定電位電解式センサによるセレン化水素の測定値(信号強度)を十分に高めることができるので、より正確且つ高精度な定量分析を行うことが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
(第一の実施形態)
第一の実施形態にかかる本発明のセレンの定量分析方法は、4価セレンが溶存している分析用試料に塩酸及び硫酸の少なくともいずれか一方を添加して酸の規定度が0.13〜6.7N/Lの酸性分析用試料を得る工程と、酸性分析用試料1Lに対して5g/分以下でテトラヒドロホウ酸ナトリウムを添加し、4価セレンとテトラヒドロホウ酸ナトリウムを反応させてセレン化水素を発生させる工程と、セレン化水素を10〜20mL/分で吸引する工程と、吸引されたセレン化水素を定電位電解式センサで測定して測定値を得る工程と、測定値に基づいて分析用試料の4価セレン濃度を検量線法により分析する工程とを含み、検量線法に用いる検量線は4価セレン濃度が既知の複数の標準試料から予め求めた4価セレン濃度と定電位電解式センサの測定値との相関に基づいて作成されたものとしている。
本発明のセレンの定量分析方法を実施するためのシステムの一例を図1に示す。このシステム1は、4価セレンが溶存している分析用試料に塩酸及び硫酸の少なくともいずれか一方が添加されて、酸の規定度が0.13〜6.7N/Lに調整された酸性分析用試料2aを入れる密閉構造の容器2と、酸性分析用試料1Lに対して5g/分以下でテトラヒドロホウ酸ナトリウム3aを添加する手段3(以下、添加手段3と呼ぶ)と、セレン化水素を測定して測定値を出力する定電位電解式センサ4と、酸性分析用試料2aから発生したセレン化水素を10〜20mL/分で吸引して定電位電解式センサ4に供給する供給手段と、4価セレン濃度が既知の複数の標準試料から予め求めた4価セレン濃度と定電位電解式センサ4の測定値との相関に基づいて作成された検量線が記憶され、検量線に基づいて測定値から分析用試料の4価セレン濃度を分析する分析手段5を含むものである。尚、本実施形態では、定電位電解式センサ4により容器2内で発生したセレン化水素が管体9を介して吸引される。つまり、定電位電解式センサ4自体が供給手段を兼ねている。
また、図1に示す定量分析システム1には、定電位電解式センサ4の電解液に溶け込まなかったセレン化水素を硫酸銅溶液6aに接触させて回収する手段6(以下、回収手段6と呼ぶ)をさらに含んでいる。
容器2には、添加手段3が管体8を介して連結され、定電位電解式センサ4が管体9を介して連結されている。当該連結部分以外は密閉されている。したがって、テトラヒドロホウ酸ナトリウム3aを酸性分析用試料2aに添加することにより発生するセレン化水素(HSe)の漏洩が防止される。
容器2を構成する材料としては、耐酸性を有する材料、例えば、ガラス、フッ素系樹脂が挙げられるがこれらに限定されない。
分析用試料としては、4価セレンが溶存している可能性のあるあらゆる種類の試料が包含される。例えば、工場並びに石炭火力発電設備などから排出される排水や石炭灰処分場溶出水が挙げられるが、これらに限定されない。尚、4価セレンとは、水に溶存して亜セレン酸イオン(SeO 2−)の形態で存在しているセレンを意味している。
酸性分析用試料2aは分析用試料に塩酸及び硫酸の少なくともいずれか一方を添加して得られる。即ち、塩酸単独、硫酸単独、塩酸と硫酸とを混合して添加することで得られる。尚、定電位電解式センサ4による測定の際の信号強度を高めるためには、塩酸を用いることが好ましい。
酸性分析用試料2aの酸の規定値は、分析用試料に添加された塩酸及び硫酸の少なくともいずれか一方により規定され、0.13〜6.7N/Lとすればよいが、0.67〜6.7N/Lとすることが好ましく、1.3〜6.7N/Lとすることがより好ましく、2.0〜6.7N/Lとすることがさらに好ましく、4.0〜6.7N/Lとすることが最も好ましい。酸の規定値を6.7N/L超とすると、定量分析終了後の酸性分析用試料に4価セレンが未反応のまま残留し易く、正確な定量分析結果が得られなくなる虞があると共に、酸の使用量も増加してしまい、好ましくない。酸の規定値を0.13N/L未満とすると、定電位電解式センサ4による測定の際の信号強度が十分なものとはならない。酸の規定値を4.0〜6.7N/Lの範囲に近づけるにつれて、定電位電解式センサ4による測定の際の信号強度が十分なものとなる。また、定量分析終了後の酸性分析用試料に4価セレンが未反応のまま残留する虞も無くなる。
添加する酸の濃度及び量は、例えば、分析用試料が中性でその容量が5mLの場合には、0.2〜10mol/L、好ましくは1.0〜10mol/L、より好ましくは2.0〜10mol/L、さらに好ましくは3.0〜10mol/L、最も好ましくは6.0〜10mol/Lの濃度の塩酸水溶液(0.2〜10N/L、好ましくは1.0〜10N/L、より好ましくは2.0〜10N/L、さらに好ましくは3.0〜10N/L、最も好ましくは6.0〜10N/Lの濃度の塩酸水溶液)を10mL添加すればよい。
ここで、工場並びに石炭火力発電設備などから排出される排水や石炭灰処分場溶出水には、有機化合物やヨウ化物イオンといったセレン化水素を定電位電解式センサ4で測定する際の妨害物質が含まれている場合がある。そこで、分析用試料をJIS法(JIS−K0102.67.3.)に準じて前処理することが好ましい。この前処理は、分析用試料に硫酸及び硝酸を添加し、加熱して白煙硫酸を発生させる手法である。これにより、有機化合物を除去することができることが知られているが、本願発明者等は、この手法によって、ヨウ化物イオンも同時に除去できることを見出した。しかも、分析用試料に硫酸を添加しているので、硫酸により規定される酸の既定値を0.13N/L以上とすれば、同時に酸性分析用試料を調整することも可能となり、好ましい。尚、JIS法に準じた場合、分析用試料の硫酸による酸の既定値は、0.34N/Lとなる。つまり、JIS法に準じた方法を採用するだけで、酸性分析用試料が得られることになる。勿論、硫酸の濃度をさらに高めて前処理を行うようにしてもよい。硝酸は、テトラヒドロホウ酸ナトリウムの還元剤としての作用を高める効果を有しないので、酸性分析用試料の酸による既定値は、あくまでも硫酸及び塩酸の少なくともいずれかにより規定する必要がある。尚、JIS法に準じた場合、分析用試料への硝酸の添加量は、試料50mLに対し、濃硝酸(13.5N/L)2mLである。
さらに、JIS法に準じた前処理により得られた酸性分析用試料に対し、硫酸及び塩酸の少なくともいずれか一方、好ましくは塩酸を添加し、酸の既定値を4.0〜6.7N/Lとすることが好ましい。この場合には、有機化合物やヨウ化物イオンといったセレン化水素を定電位電解式センサ4で測定する際の妨害物質を除去できると共に、定電位電解式センサ4による測定の際の信号強度を十分なものとすることができる。また、定量分析終了後の酸性分析用試料に4価セレンが未反応のまま残留する虞も無くなる。
尚、硝酸添加手段及び塩酸添加手段としては、後述する添加手段3と同様の機構を有するものを用いればよい。また、加熱装置としては、JIS法による前処理は170℃で行う必要があることから、酸性分析用試料を170℃程度に加熱することのできるヒーター等を用いればよい。
添加手段3からは、酸性分析用試料1Lに対してテトラヒドロホウ酸ナトリウム3aが5g/分以下で添加される。テトラヒドロホウ酸ナトリウム3aと酸性分析用試料2aは、化4に示す化学反応式により亜セレン酸イオンと反応してセレン化水素を発生する。
テトラヒドロホウ酸ナトリウム3aは吸湿性が強く、空気中の水分を吸収して徐々に劣化する。したがって、テトラヒドロホウ酸ナトリウム3aはこれを安定に保持しうる溶媒中に溶解させて用いる。テトラヒドロホウ酸ナトリウムを溶解する溶媒としては、弱アルカリ性の溶媒を用いることが好ましい。酸性の溶媒を用いるとテトラヒドロホウ酸ナトリウムが劣化してしまう虞がある。中性の溶媒を用いた場合にも、テトラヒドロホウ酸ナトリウムが徐々に劣化してしまう虞がある。強アルカリ性の溶媒を用いた場合には、酸性分析用試料2aに添加した際にpHがアルカリ側に変動し易くなり、テトラヒドロホウ酸ナトリウムの還元剤として機能が低下し、分析用試料に溶存している亜セレン酸イオンを十分に還元できなくなる虞がある。即ち、テトラヒドロホウ酸ナトリウムを劣化させることなく、また、酸性分析用試料2aに添加した際にpHをアルカリ側に変動させてテトラヒドロホウ酸ナトリウムの還元剤としての機能を低下させることのない溶媒を用いればよい。例えば、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液が挙げられるが、これに限定されるものではない。
尚、テトラヒドロホウ酸ナトリウムは還元剤として広く用いられている化合物であり、安価で入手し易い。また、エチレンジアミン四酢酸を加えることによって、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に溶解させて30日間安定に保存することができる(A. D. Idowu, P. K. Dasgupta, Z. Genfa, and K. Toda: “A Gas-Phase Chemiluminescence -Based Analyzer for Waterborne Arsenic”, Anal. Chem., 78, 7088-7097 (2006))。つまり、使用の簡便性と安定性とを兼ね備えた試薬であり、現場分析に用いる試薬として非常に好適である。
添加手段3としては、テトラヒドロホウ酸ナトリウム3aを溶解させた溶液の添加速度を制御しうるものが適宜用いられる。例えば、分液漏斗やビュレットのように、コック(バルブ)の開度の調節によって添加速度を制御可能なものを用いることもできるし、バルブが開状態の時にのみ一定の速度で添加可能なものを用いることもできる。また、添加手段3として、ペリスタルティックポンプのような制御性の高いものを用いることで、より正確な定量分析が可能となる。
酸性分析用試料2aに添加されるテトラヒドロホウ酸ナトリウム3aの添加速度は、酸性分析用試料1Lに対して5g/分以下とすればよいが、4g/分以下とすることが好ましい。この場合には、単位時間当たりの水素の発生を抑えながら分析用試料に溶存している亜セレン酸イオンをセレン化水素に還元することができる。つまり、定電位電解式センサ4によるセレン化水素の測定を妨害することのない水素発生量に抑えることができる。テトラヒドロホウ酸ナトリウム3aを酸性分析用試料1Lに対して5g/分を超える速度で添加すると、セレン化水素の測定に影響を及ぼす量の水素が発生する虞がある。
ここで、テトラヒドロホウ酸ナトリウムの添加速度の下限値については、定電位電解式センサにより測定されるセレン化水素の単位時間当たりの測定値(定電位電解式センサが出力する信号強度を意味する。以下、測定値を信号強度と呼ぶこともある。)が十分に確保され、定量分析の迅速性が確保される値が適宜選択される。例えば、酸性分析用試料1Lに対して0.01g/分以上とすればよいが、0.1g/分以上とすることが好ましく、0.2g/分以上とすることがより好ましい。
尚、定量分析の迅速性を最大限に発揮させるためには、セレン化水素の測定に影響を及ぼす量の水素を発生させることなく、添加速度を速めることが好ましい。即ち、酸性分析用試料1Lに対して1g/分以上とすることが好ましく、2g/分以上とすることがより好ましく、3g/分以上とすることがさらに好ましい。
テトラヒドロホウ酸ナトリウム3aの添加速度は、テトラヒドロホウ酸ナトリウム3aを溶解させた溶液のテトラヒドロホウ酸ナトリウム濃度並びに酸性分析用試料2aに対する添加速度により適宜制御される。
つまり、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度を高めて酸性分析用試料2aに添加すれば、酸性分析用試料1Lに対するテトラヒドロホウ酸ナトリウム3aの添加速度を高めることができる。また、酸性分析用試料2aに対するテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加速度を高めれば、酸性分析用試料1Lに対するテトラヒドロホウ酸ナトリウム3aの添加速度を高めることができる。逆に、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度を低くして酸性分析用試料2aに添加すれば、酸性分析用試料1Lに対するテトラヒドロホウ酸ナトリウム3aの添加速度を低下させることができる。また、酸性分析用試料2aに対するテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加速度を低下させれば、酸性分析用試料1Lに対するテトラヒドロホウ酸ナトリウム3aの添加速度を低下させることができる。したがって、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度並びに酸性分析用試料2aに対する添加速度を適宜制御することによって、テトラヒドロホウ酸ナトリウム3aの添加速度を制御すればよい。
一例を挙げて説明すると、濃度が3g/L超5g/L以下のテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液であれば、酸性分析用試料15mLに対して5〜8mL/分とするのが好ましい。濃度が1g/L〜3g/Lのテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液であれば、酸性分析用試料15mLに対して5〜35mL/分とするのが好ましく、10〜15mL/分とするのがより好ましい。この場合には、単位時間当たりの水素の発生が抑えられ、セレン化水素の測定が妨害されない。しかも、セレン化水素の信号強度の十分な確保と定量分析の迅速性が確保される。
酸性分析用試料2aへのテトラヒドロホウ酸ナトリウム3aの添加量については、分析用試料に溶存していると考えられる4価セレンの全量をセレン化水素に還元しうる量以上の量が適宜選択される。化4に示されるように、1molのHSeO(SeO 2-)を還元させてセレン化水素を発生させるためには、3/4molのNaBH(BH -)が必要である。したがって、4価セレン1mgに対して最低でも0.38mgのNaBHが必要である。ここで、分析用試料に溶存している4価セレンの全量を確実にセレン化水素に還元するためには、分析用試料に含まれていると考えられる4価セレンの全量に対して過剰量のテトラヒドロホウ酸ナトリウムの量を添加することが好ましい。即ち、分析用試料の4価セレン濃度が1mg/L以下であると仮定した場合には、分析用試料1Lに対して0.38mg〜6.7gのテトラヒドロホウ酸ナトリウムを添加することが好ましく、3.8mg〜3.4gとすることがより好ましく、38mg〜2.0gとすることがさらに好ましい。6.7gを超える量のテトラヒドロホウ酸ナトリウムを添加しても、セレン化水素の測定に影響を及ぼすことは無いが、セレン化水素発生反応には関与しないので、無駄である。例えば、本発明者等の実験によれば、15mLの酸性分析用試料2aに対して3g/Lのテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液を10mL添加することで、少なくとも0.7mg/Se−Lの分析用試料であれば分析用試料に溶存している4価セレンの90%以上を10分以内にセレン化水素に還元できることが本願発明者等の実験により確認されている。しかしながら、この条件に限定されるものではない。
また、酸性分析用試料2aへのテトラヒドロホウ酸ナトリウム3aの添加開始時から定電位電解式センサ4による測定が終了するまでの間は、酸性分析用試料2aを撹拌し続けることが好ましい。撹拌を十分に行わないと、酸性分析用試料2aに添加したテトラヒドロホウ酸ナトリウム3aが十分に拡散せずに酸性分析用試料2aと不均一に反応しやすくなり、定電位電解式センサ4によるセレン化水素の信号強度が低下する虞がある。
酸性分析用試料2aにテトラヒドロホウ酸ナトリウム3aを添加することにより発生したセレン化水素は定電位電解式センサ4により吸引されて随時測定され、測定値が出力される。
定電位電解式センサ4によるセレン化水素の測定原理を図2に示す。セレン化水素はガス透過性膜を通じて電解液中に拡散吸収される。電解液中に拡散吸収されたセレン化水素は、電解液中で一定の電位で電解されると電流が発生する。定電位電解センサ4は、このときの電流を増幅器14で増幅させて測定するものである。電解時には、作用電極11において酸化反応が起こり(化学反応式A)、対極13では還元反応が進行する(化学反応式B)。作用電極11と対極13に流れる電流はセレン化水素濃度に比例する。照合電極12は照合電極用基準電源12aと接続され、照合電極に対する作用電極の電位を規制して電解を行う。
(化学反応式A)作用電極:HSe+3HO→HSeO+6H+6e
(化学反応式B)対極:O+4H+4e→2H
化学反応式Aに示されるように、定電位電解式センサ4の作用電極11表面における反応により、定電位電解式センサ4に吸引されて測定に供されたセレン化水素が電解液に取り込まれる。その結果、電解液には分析用試料に溶存していた4価セレンのほとんどが回収される。したがって、この電解液からセレンを回収して再利用することができる。つまり、本発明によれば、4価セレンの定量分析と、分析用試料に含まれている4価セレンの回収の両立を図ることができる。
本実施形態における定電位電解式センサ4は漏洩ガス検知器として市販されている半導体材料ガス検知器である新コスモス電機製XPS−7(セレン化水素専用センサユニットXDS−7Se)が挙げられるが、これに限定されるものではなく、これと機能的に類似するものを用いることができる。
ここで、容器2内で発生したセレン化水素を定電位電解式センサ4で測定するためには、セレン化水素を定電位電解式センサ4に供給する供給手段を備える必要がある。新コスモス電機製XPS−7はガス吸引機能を有しており、これを利用して容器2内で発生したセレン化水素を吸引する。つまり、定電位電解式センサ4のガス吸引機能が容器2内で発生したセレン化水素を定電位電解式センサ4に供給する供給手段として機能する。尚、新コスモス電機製XPS−7のガス吸引機能は15mL/分であり、上記分析条件は、この吸引速度に基づいて導出されたものであるが、上記分析条件は、ガス吸引速度が10〜20mL/分であっても適用できるものと考えられる。
次に、分析手段5では、定電位電解式センサ4から出力された測定値が入力され、当該測定値に基づいて分析用試料の4価セレン濃度が検量線法により分析される。
検量線法に用いる検量線は、4価セレン濃度が既知の複数の標準試料から予め求めた4価セレン濃度と定電位電解式センサ4の測定値(セレン化水素の信号強度)との相関に基づいて作成されたものである。さらに具体的に説明すると、4価セレン濃度が既知の複数の標準試料をそれぞれに対し、酸を添加して酸性分析用試料を得る工程と、酸性分析用試料1Lに対して5g/分以下でテトラヒドロホウ酸ナトリウムを添加し、4価セレンとテトラヒドロホウ酸ナトリウムを反応させてセレン化水素を発生させる工程と、セレン化水素を定電位電解式センサで測定して測定値を得る工程とを実行し、得られた測定値(セレン化水素の信号強度)と4価セレン濃度との関係から、最小二乗法などの公知の手法によりフィッティングして得ることが可能である。
検量線法による分析用試料の4価セレン濃度の分析は、例えば、コンピュータ上で実行することによって実現される。つまり、分析手段5として、例えば、コンピュータを用いる。
図3に分析手段5としてのコンピュータ15の全体構成を示す。コンピュータ15は、制御部16、記憶部17、入力部18、表示部19及びメモリ20を備え相互にバス等の信号回線21により接続されている。また、コンピュータ10にはデータサーバ22が通信回線等により接続されており、その通信回線等を介してデータや制御指令等の信号の送受信(出入力)が行われる。
制御部16は記憶部17に記憶されている検量線の係数(傾きと切片)により、分析用試料から得られた測定値(セレン化水素の信号強度)から分析用試料の4価セレン濃度の解析に係る演算を行うものであり、例えばCPUである。記憶部17は少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。入力部18は少なくとも作業者の命令をCPUに与えるためのインターフェイスであり、例えばキーボードである。表示部19は制御部16の制御により文字や図形等の表示を行うものであり、例えばディスプレイである。メモリ20は制御部16が各種制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となる。データサーバ22はデータを少なくとも記憶可能なサーバである。定電位電解式センサ4により出力される測定値(セレン化水素の信号強度)はデータサーバ22に一旦保存された後、コンピュータ15に送信される。尚、データサーバ22を備えることなく、定電位電解式センサ4により出力される測定値(セレン化水素の信号強度)を直接コンピュータ15に送信することも可能である。
ここで、定電位電解センサ4では、測定される信号強度は、図8に示すように、例えば0〜10分間の信号プロファイルとして出力される。測定開始初期では、定電位電解式センサ4により吸引されているのが容器2内の空気であるため、信号強度が0となっている。検量線を作成するための測定値及び分析用試料の測定値は、信号プロファイルのピーク強度としてもよいし、信号プロファイルの面積値としてもよい。いずれの場合にも4価セレン濃度が0.01〜0.7mg−Se/Lの範囲で極めて高い直線性が得られることが本願発明者等の実験により確認されている。即ち、0.01〜0.7mg−Se/Lの範囲においては、極めて高精度に分析用試料の4価セレン濃度の定量が可能である。
容器2内で発生したセレン化水素はガス透過性膜を通じてそのほとんどが電解液中に拡散吸収されるが、一部のセレン化水素がガス透過性膜を通過せず、電解液中に拡散吸収されずに定電位電解式センサ4から排出される場合がある。そこで、回収手段6では、このようなセレン化水素を硫酸銅溶液6aに接触させて回収する。硫酸銅溶液6aに接触したセレン化水素は硫酸銅溶液6aに吸収されて回収される。したがって、セレン化水素が環境中に飛散することがないだけでなく、産業上有用なセレンを再利用することができるという優れた利点を有する。尚、硫酸銅溶液に吸収されたセレン化水素は沈殿物として固定化され、回収される。ここで、回収手段に用いる溶液は硫酸銅溶液に限定されるものではなく、銅、亜鉛、銀、水銀、カドミウム、鉄などの重金属塩、例えば、硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物の他に、硝酸、塩酸などの強酸性溶液が挙げられるが(特開平11−50294、A. C. F. Gomes, A. A. Menegario, D. C. Pellegrinotti, M. F. Gine, V. F. N. Filho: “A hydride generation flow system for determination of arsenic and selenium by total reflection X-ray fluorescence spectrometry”, spctrochim. Acta B, 59,1481-1484 (2004))、これらに限定されるものではない。
(第二の実施形態)
第二の実施形態にかかる本発明のセレンの定量分析システムの一例を図24に示す。このセレンの定量分析システム1’は、4価セレンが溶存している分析用試料に酸が添加されて、酸濃度が0.13〜6.7N/Lに調整された酸性分析用試料2aを入れる密閉構造の容器2と、酸性分析用試料1Lに対して5〜10g/分以下でテトラヒドロホウ酸ナトリウム3aを添加する手段3(以下、添加手段3と呼ぶ)と、キャリアーガスを500〜700mL/分で供給する手段(以下、キャリアーガス供給手段7と呼ぶ)と、セレン化水素を測定して測定値を出力する定電位電解式センサ4と、酸性分析用試料2aから発生したセレン化水素をキャリアーガスと共に400〜600mL/分で吸引して定電位電解式センサ4に供給する供給手段と、4価セレン濃度が既知の複数の標準試料から予め求めた4価セレン濃度と定電位電解式センサ4の測定値との相関に基づいて作成された検量線が記憶され、検量線に基づいて測定値から分析用試料の4価セレン濃度を分析する分析手段5を含むものである。尚、本実施形態では、定電位電解式センサ4により容器2内で発生したセレン化水素が管体9を介して吸引される。つまり、定電位電解式センサ4自体が供給手段を兼ねている。
また、図24に示す定量分析システム1’においても、定電位電解式センサ4の電解液に溶け込まなかったセレン化水素を硫酸銅溶液6aに接触させて回収する手段6をさらに含んでいる。さらに、容器2には、添加手段3が管体8を介して連結され、定電位電解式センサ4が管体9を介して連結され、キャリアーガス供給手段7が管体10を介して連結されている。当該連結部分以外は密閉されている。したがって、テトラヒドロホウ酸ナトリウム3aを酸性分析用試料2aに添加することにより発生するセレン化水素(HSe)の漏洩が防止される。
第二の実施形態にかかるセレンの定量分析システムは、酸性分析用試料を入れる密封構造の容器にキャリアーガスを供給する点において、第一の実施形態にかかるセレンの定量分析システムと相違している。そして、キャリアーガスを供給することに伴い、分析条件が第一の実施形態にかかるセレンの定量分析システムと相違している。以下、第二の実施形態のセレンの定量分析システムと、第一の実施形態のセレンの定量分析システムとの相違点について詳細に説明する。尚、以下に説明する相違点以外の構成については、第一の実施形態のセレンの定量分析システムと共通しており、説明は省略する。
酸性分析用試料2aに添加されるテトラヒドロホウ酸ナトリウム3aの添加速度は、酸性分析用試料1Lに対して5〜10g/分以下とすることが好ましい。この場合には、単位時間当たりの水素の発生を抑えながら分析用試料に溶存している亜セレン酸イオンをセレン化水素に還元することができる。つまり、定電位電解式センサ4によるセレン化水素の測定を妨害することのない水素発生量に抑えることができる。テトラヒドロホウ酸ナトリウム3aを酸性分析用試料1Lに対して10g/分を超える速度で添加すると、セレン化水素の測定に影響を及ぼす量の水素が発生する虞がある。
また、テトラヒドロホウ酸ナトリウムの添加速度の下限値については、定電位電解式センサにより測定されるセレン化水素の単位時間当たりの測定値(定電位電解式センサが出力する信号強度を意味する。以下、測定値を信号強度と呼ぶこともある。)が十分に確保され、定量分析の迅速性が確保される値が適宜選択される。例えば、酸性分析用試料1Lに対して5g/分以上とすることが好ましく、6g/分とすることがより好ましい。
ここで、テトラヒドロホウ酸ナトリウムの添加について、一例を挙げて具体的に説明すると、濃度が3g/Lのテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液であれば、酸性分析用試料15mLに対して25〜50mL/分とするのが好ましく、30mL/分とすることがより好ましい。この場合には、単位時間当たりの水素の発生が抑えられ、セレン化水素の測定が妨害されない。しかも、セレン化水素の信号強度の十分な確保と定量分析の迅速性が確保される。
容器2には、キャリアーガス供給手段7によりキャリアーガスが供給される。
キャリアーガスとしては、窒素やアルゴンなどの不活性ガスだけでなく、空気を利用することもできる。このように、空気をキャリアーガスとして利用することで、現場分析の際に容器2に大気中から空気を送り込むことによってキャリアーガスの供給が可能となるので、非常に便利である。
キャリアーガス供給手段7としては、キャリアーガスの容器2への供給量を制御しうるものであれば特に限定されるものではないが、例えばボンベ内に入れられたキャリアーガスをマスフローコントローラを介して供給するようにしてもよいし、ポンプ等により所定の流量の空気を送気するようにしてもよい。
キャリアーガスの供給速度は、500〜700mL/分以上とすることが好ましい。この場合には、セレンの定量分析の上限値を高めることができる。
ここで、キャリアーガスの供給速度の上限値については、定電位電解式センサ4のガス吸引能力を大きく超えない値とすることが好ましい。定電位電解式センサ4のガス吸引能力を大きく超えると、定電位電解式センサ4のガス吸引機能に負担がかかり、測定ができなくなる虞がある。したがって、キャリアーガスの供給速度は、500〜700mL/分とすることが好ましく、定電位電解式センサ4のガス吸引能力とほぼ同等の供給速度とすることがさらに好ましい。例えば、定電位電解式センサ4のガス吸引能力が500mL/分であれば、キャリアーガスの供給速度は500mL/分に近づけることが好ましい。
酸性分析用試料2aにテトラヒドロホウ酸ナトリウム3aを添加することにより発生したセレン化水素はキャリアーガス供給手段7により供給されたキャリアーガスと共に定電位電解式センサ4により吸引されて随時測定され、測定値が出力される。
本実施形態における定電位電解式センサ4は漏洩ガス検知器として市販されている半導体材料ガス検知器である新コスモス電機製PS−7(セレン化水素専用センサユニットCDS−7)が挙げられるが、これに限定されるものではなく、これと機能的に類似するものを用いることができる。
ここで、新コスモス電機製PS−7もまた、ガス吸引機能を有しており、これを利用して容器2内で発生したセレン化水素を吸引する。つまり、定電位電解式センサ4のガス吸引機能が容器2内で発生したセレン化水素を定電位電解式センサ4に供給する供給手段として機能する。尚、新コスモス電機製PS−7のガス吸引能力は500mL/分であり、上記分析条件は、この吸引速度に基づいて導出されたものであるが、上記分析条件は、ガス吸引速度が400〜600mL/分であっても適用できるものと考えられる。
以上、第二の実施形態のセレンの定量分析システムによれば、キャリアーガスを使用することによって、セレンの定量分析の精度を高めることができる。また、キャリアーガスを使用しない場合と比較して、非常に低濃度のセレンの定量分析を行うことも可能となる。
さらに、第一の実施形態で定電位電解式センサ4として挙げた新コスモス電機製XPS−7は、データ取得がデジタル方式で行われ、データ取得が10秒間隔で行われると共に、10秒間のうちの最大値が測定値として得られ、フルスケールに対する分解能が1.25%である。これに対し、新コスモス電機製PS−7は、データ取得がデジタル方式で行われ、データ取得が0.1秒間隔で行われ、フルスケールに対する分解能が0.4%である。このように、アナログ方式で、且つデータ取得間隔や分解能を向上させることによって、セレンの定量分析精度を向上させることができる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では、4価セレンが溶存している分析用試料に酸を添加して酸の既定値を予め調整してから容器2に入れるようにしているが、分析用試料と酸とを容器2内に添加するための添加手段を別途設け、容器2内で酸の既定値を調整するようにしてもよい。
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図4に示す実験装置を使用して実験を行った。尚、現場分析へのニーズを満たすことに鑑み、実験は全て常温常圧下で実施した。したがって、この実験結果により得られた条件は常温常圧下で適用可能である。
容器2として枝付き三角フラスコを用い、分析用試料に酸を添加してpHを調整した酸性分析用試料2aを入れた。添加手段3として分液漏斗を用い、分液漏斗の先端部3bをゴム栓に貫通させ、このゴム栓を枝部に嵌め込むことにより分液漏斗と枝付き三角フラスコとを接続した。枝付き三角フラスコと定電位電解式センサ4とは、管体9をゴム栓に貫通させ、このゴム栓を枝付き三角フラスコの開口部に嵌め込み、管体9の片端を定電位電解式センサ4と接続して、枝付き三角フラスコ内で発生したセレン化水素を定電位電解式センサ4に送ることを可能とした。
また、マグネチックスターラー26(8φ、長さ30mm)を枝付き三角フラスコ2内に入れ、撹拌装置25によりマグネチックスターラー26の回転数を制御可能とした。
本実施例において、定電位電解式センサ4には、新コスモス電機製の半導体材料ガス検知器(XPS−7)を用い、セレン化水素(HSe)専用センサユニットであるXDS−7Seを用いた。この装置のガス吸引量は15mL/分である。測定値は、電流値が定電位電解式センサ4内でAD変換されて、セレン化水素濃度に対応する信号強度として表示・記録される。XDS−7Seは出荷時に校正済みであり、セレン化水素測定における指示精度は10%以内である。また、セレン化水素の信号強度のデータ取得間隔(サンプリング間隔)は10秒間隔であり、信号強度間隔(プロット間隔)は1.25ppb間隔で小数点以下は切り捨てられる。セレン濃度の計算は、信号プロファイルのピーク強度、または信号プロファイルの面積値により行った。面積値の計算は表計算ソフトウェアOrigin(登録商標)を用いた。
分析用試料に溶存している亜セレン酸イオンは、容器2内に入れた酸性分析用試料2aに対してテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液を添加することで還元気化される。ここで、本実施例においては、分液漏斗3の開口部3cには蓋体を嵌め込まずに開放状態としているので、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加が完了した後に、容器2内で発生したセレン化水素ガスのほとんどが分液漏斗3から通気される空気によって定電位電解式センサ4に送られる。測定後のセレン化水素は硫酸銅溶液6aに吸収して除害した。
はじめに、排水基準値である0.1mg−Se/Lの4価セレンが溶存している亜セレン酸標準溶液サンプルを用いて、定電位電解式センサによりセレン化水素を測定可能か否かを検討した。
0.1mg−Se/Lの亜セレン酸イオン水溶液5mLと塩酸水溶液(6mol/L、1+1)10mLの混合溶液(酸性分析用試料)に、5g/Lのテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液を10mL(添加速度:10mL〜15mL/分)添加し、その直後から定電位電解式センサにより10分間継続して信号強度値を測定した。
一方、比較実験として、蒸留水5.0mLと塩酸水溶液(6mol/L、1+1)10mLの混合溶液(酸性試料)に、5g/Lのテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液を10mL(添加速度:10mL〜15mL/分)添加し、定電位電解式センサにより10分間継続して信号強度値を測定して、4価セレンを溶存していない試料(ブランク)についての信号強度値を調べた。
尚、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液は0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で希釈して調製した。また、実験中はマグネチックスターラーの回転数は0(撹拌なし)、150、300、450、600、750rpmとし、各条件で3回実験を行った。
また、得られた信号強度値のうち最も高い値を示したものをフルスケール値で換算して相対信号強度とした。
図5にマグネチックスターラーの回転数に対して相対信号強度をプロットしたグラフを示す。図5において、●は0.1mg−Se/Lの亜セレン酸イオン水溶液を用いた3回の実験の平均値を表しており、○は4価セレンを溶存していない試料(蒸留水)を用いた3回の実験の平均値を表している。また、エラーバーは3回の実験における最大値と最小値を表している。
0.1mg−Se/Lの亜セレン酸イオン水溶液を用いた場合の結果(図5中の●)から、マグネチックスターラーの回転数が0〜450rpmの範囲にある場合には、回転数の上昇に伴い、相対信号強度が徐々に増加する傾向が見られたが、回転数が600rpm以上になると相対信号強度が一定値になることがわかった。したがって、撹拌する溶液の容量が15mL(テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液添加前の三角フラスコ内の溶液の容量)〜25mL(テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液添加後の三角フラスコ内の溶液の容量)の範囲内であれば、600rpm前後で最も高い相対信号強度が得られることが明らかとなった。そして、この結果から、セレンの排水基準値である0.1mg−Se/Lの4価セレンが溶存している分析用試料の定量分析が可能であることが示唆された。
一方で、4価セレンを溶存していない試料(蒸留水)を用いた場合の結果(図5中の○)から、4価セレンが溶存していない場合であっても、相対信号強度がゼロにならない場合があることが確認された。この結果から、定電位電解式センサによるセレン化水素測定の際に水素が妨害成分となり、セレン化水素の測定値に影響を及ぼすことが懸念された。
そこで、水素の単位時間当たりの発生量を、セレン化水素の測定値に影響を与えない量に抑える条件について検討を行った。
はじめに、分析用試料に溶存している4価セレン(亜セレン酸イオン)と反応してセレン化水素を発生させるための試薬であるテトラヒドロホウ酸ナトリウム(NaBH)の溶液濃度について検討を行った。
蒸留水5.0mLと塩酸水溶液(6mol/L、1+1)10mLの混合溶液(酸性試料)に、各種濃度のテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液をそれぞれ10mL(添加速度:5mL〜20mL/分)添加し、その直後から定電位電解式センサにより15分間継続して信号強度値を測定した。この実験条件においては、定電位電解式センサにより検出しうるガスが水素のみであると考えられることから、信号強度値により水素の発生量に関する知見が得られる。尚、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液は、テトラヒドロホウ酸ナトリウムを0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で希釈して調製した。また、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度は、1、3、4、5、10g/Lとし、各濃度条件について3回実験した。実験中はマグネチックスターラーの回転数を450rpmとした。
尚、得られた信号強度値のうち最も高い値を示したものをフルスケール値で換算して相対信号強度とした。
図6にテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液濃度に対して相対信号強度をプロットしたグラフを示す。図6において、●は3回の実験の平均値を表しており、エラーバーは3回の実験における最大値と最小値を表している。テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度が1及び3g/Lの場合には、相対信号強度がゼロであったが、4g/Lでは相対信号強度が0.005となり、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度がさらに高濃度になるにつれて相対信号強度の上昇が見られた。この結果から、添加速度を5mL〜20mL/分として、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度を4g/L以上とすると、セレン化水素の測定を妨害する量の水素が単位時間当たりに発生する虞があることが明らかとなった。一方で、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度が1及び3g/Lの場合には、単位時間当たりの水素発生量がセレン化水素の測定を妨害しない程度に十分に低くなることが明らかとなった。したがって、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度を3g/L以下とすることで、水素の単位時間当たりの発生量を、セレン化水素の測定値に影響を与えない量に抑えられることがわかった。
次に、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加速度と水素発生量との相関について検討を行った。
蒸留水5.0mLと塩酸水溶液(6mol/L、1+1)10mLの混合溶液(酸性試料)に、各種濃度のテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液をそれぞれ10mLを、各種添加速度で添加し、その直後から定電位電解式センサにより10分間継続して信号強度値を測定した。この実験条件においても、定電位電解式センサにより検出しうるガスが水素のみであると考えられることから、信号強度値により水素の発生量に関する知見が得られる。尚、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液は、上記と同様の方法で希釈して調製し、その濃度を、1、3、5、10g/Lとした。添加速度は、1.0〜40mL/分になるように分液漏斗の滴下速度を変化させながら滴下終了までの時間を計測して求めた。各条件について1回実験した。実験中はマグネチックスターラーの回転数を450rpmとした。
尚、得られた信号強度値のうち最も高い値を示したものをフルスケール値で換算して相対信号強度とした。
図7にテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加速度に対して相対信号強度をプロットしたグラフを示す。テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度を1g/Lとした場合には、検討した添加速度範囲において相対信号強度がゼロであった。テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度を3g/Lとした場合には、添加速度が2.9〜26mL/分の範囲では相対信号強度がゼロであったが、36mL/分とすると相対信号強度が0.022となり、水素の発生が確認された。テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度を5及び10g/Lとした場合には、添加速度を上げるにつれて相対信号強度が高まる傾向が見られた。したがって、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加速度は、酸性分析用試料15mLに対して、以下の(a)〜(c)の条件とすることで、水素の単位時間当たりの発生量を、セレン化水素の測定値に影響を与えない量に抑えられると判断された。
(a)テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液が1g/Lのときには38mL/分以下
(b)テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液が3g/Lのときには26mL/分以下
(c)テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液が5g/Lのときには8mL/分以下
そこで、(a)〜(c)の条件について、さらに検討する。まず、(a)〜(c)の条件を酸性分析用試料1Lに対する値に換算すると、以下の通りとなる。
(a’)テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液が1g/Lのときには2.5L/分以下
(b’)テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液が3g/Lのときには1.7L/分以下
(c’)テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液が5g/Lのときには0.5L/分以下
次に、(a’)〜(c’)の条件について、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加速度をテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液に溶解しているテトラヒドロホウ酸ナトリウムの添加速度に換算すると、以下の通りとなる。
(a’’)(1g/L)×(2.5L/分)=2.5g/分 :2.5g/分以下
(b’’)(3g/L)×(1.7L/分)=5g/分 :5g/分以下
(c’’)(5g/L)×(0.5L/分)=2.5g/分 :2.5g/分以下
つまり、(a’’)〜(c’’)の条件とすることで、水素の単位時間当たりの発生量を、セレン化水素の測定値に影響を与えない量に抑えることができる。
ここで、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液が5g/Lの場合には、酸性分析用試料15mLに対して13mL/分以上とすると信号強度がゼロにならない。テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液が5g/Lの場合の13mL/分の添加速度について、上記と同様の計算を行うと、4.3g/分となる。また、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液が10g/Lの場合には、酸性分析用試料15mLに対して添加速度を1mL/分とした場合にも信号強度がゼロとならなかったことから、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度を10g/Lとするのは好ましくない。一方で、4価セレンを迅速にセレン化水素に還元する観点からは、テトラヒドロホウ酸ナトリウムの添加速度を高めることが好ましい。
以上を勘案すると、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度が3g/L超5g/L以下の場合には、テトラヒドロホウ酸ナトリウムの添加速度を酸性分析用試料1Lに対して4g/分とすることが最も好ましいと考えられる。テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度が3g/L以下の場合には、酸性分析用試料1Lに対して5g/分とすることが最も好ましいと考えられる。
次に、分析用試料に溶存している4価セレンの何割程度がセレン化水素に還元されているか確認実験を行った。
亜セレン酸イオン濃度が0.5mg−Se/Lまたは1.0mg−Se/Lの標準液(溶媒:蒸留水)5.0mLと塩酸水溶液(6mol/L、1+1)10mLの混合溶液(酸性分析用試料)に、3g/Lのテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液を10mL(添加速度:10〜15mL/分)添加して、4価セレンをセレン化水素に還元した。そして、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液添加前後の酸性分析用試料を、JIS−K0102.67.3で規定された水素化物発生ICP発光分析法(HG−ICP−AES)により測定した。尚、各条件について3回実験を行い、実験中はマグネチックスターラーの回転数を600rpmとした。結果を表1に示す。
表1に示す結果から、未反応分の4価セレンは10%未満であることが明らかとなった。つまり、試料に溶存している4価セレンのうちの90%以上がセレン化水素に還元されていることが明らかとなった。
次に、酸性分析用試料のpHと信号強度との相関について検討を行った。
0.1mg−Se/Lの亜セレン酸イオン水溶液5mLに0.06、0.2、0.6、2、3または6mol/L(0.06、0.2、0.6、2、3または6N/L)の塩酸水溶液を10mLそれぞれ添加した酸性分析用試料に、3g/Lのテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液を10mL(添加速度:10mL〜15mL/分)添加し、その直後から定電位電解式センサにより10分間継続して信号強度値を測定した。尚、各条件について3回実験を行い、実験中はマグネチックスターラーの回転数を600rpmとした。
また、得られた信号強度値のうち最も高い値を示したものをフルスケール値で換算して相対信号強度とした。
結果を表2並びに図11に示す。分析用試料に酸として添加する塩酸水溶液の濃度が3mol/L及び6mol/Lの場合に、適正な相対信号強度が得られることが判明した。但し、分析用試料に酸として添加する塩酸水溶液の濃度が0.2mol/L以上であれば、適正な相対信号強度と比較して6割程度の信号強度が得られることが判明した。したがって、分析用試料に酸として添加する塩酸水溶液の濃度は、0.2mol/L以上とすればよいが、0.6mol/L以上とすることが好ましく、2mol/L以上とすることがより好ましく、3mol/L以上とすることがさらに好ましいことが分かった。
ここで、各条件において、測定終了後のpHを測定したところ、分析用試料に酸として添加する塩酸水溶液の濃度が3mol/L以上の場合には、pHが0.4以下となっていることが確認された。この結果から、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液添加後のpHが0.4以下となるように酸性分析用試料のpHを調整することで適正な相対信号強度が得られ易いことが明らかとなった。
ここで、分析用試料に酸として添加する塩酸水溶液の濃度が2mol/L以上になると、この水溶液そのもののpHと、これを用いて調整した酸性分析用試料のpHがマイナスの値を示すことが示された。したがって、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液添加前の酸性分析用試料のpHは正確に規定することができなかった。しかしながら、分析用試料5mLに対し濃度が3mol/L以上の塩酸水溶液10mLを添加した場合に、pHが0.4以下となっていることが確認されたことから、酸性分析用試料の塩酸濃度は少なくとも2mol/L以上とすればよいと考えられる。したがって、2mol/L以上の塩酸水溶液のpHと同程度に酸性分析用試料のpHを調整することで、測定終了後のpHが0.4以下となることが示された。
以上の実験結果に基づいて、定量性評価の検討を行った。
亜セレン酸イオン濃度が、0.01、0.05、0.1、0.5または1.0mg−Se/Lの標準液(溶媒:蒸留水)5.0mLと塩酸水溶液(6mol/L、1+1)10mLの混合溶液(酸性分析用試料)に、3g/Lのテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液を10mL(添加速度:10〜15mL/分)添加して、定電位電解式センサにより10分間継続して信号強度値を測定した。尚、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液は、テトラヒドロホウ酸ナトリウムを0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で希釈して調製した。また、各濃度条件について1回実験し、実験中はマグネチックスターラーの回転数を600rpmとした。
図8に各種亜セレン酸イオン濃度の標準液における時間に対する相対信号強度をプロットした信号プロファイルを示す。この結果から、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液を添加しはじめてから測定終了までに要する時間は、面積強度で定量分析を行う場合には6分以内、ピーク強度で定量分析を行う場合には4分以内であり、いずれの場合にもテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液を添加しはじめてから10分以内に測定が完了すること明らかとなった。また、亜セレン酸イオン濃度が1.0mg−Se/Lの標準液を用いた場合の信号強度値は、定電位電解式センサの測定範囲外となった。図8に示す亜セレン酸イオン濃度の標準液における信号プロファイルを考慮すると、定電位電解式センサの水中セレンの最大検出濃度は、0.7mg−Se/L程度であると判断された。
次に、各種亜セレン酸イオン濃度の標準液を用いて検量線の作成を行った。
亜セレン酸イオン濃度が0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.5、0.7mg−Se/Lの標準液(溶媒:蒸留水)と塩酸水溶液(6mol/L、1+1)10mLの混合溶液(酸性分析用試料)に、3g/Lのテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液を10mL(添加速度:10〜15mL/分)添加して、定電位電解式センサにより10分間継続して信号強度値を測定した。尚、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液は、テトラヒドロホウ酸ナトリウムを0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で希釈して調製した。また、各濃度条件について3回実験し、実験中はマグネチックスターラーの回転数を600rpmとした。
得られた信号プロファイルのピーク値により作成した検量線を図9に示す。0.01〜0.7mg−Se/Lの範囲において、極めて直線性の高い検量線(相関係数0.999)が得られた。また、0.01〜0.1mg−Se/Lの低濃度範囲においても相関係数は0.988であり、低濃度範囲においても極めて高い直線性が得られることが確認された。検出下限(σ=3)は0.0035mg−Se/Lであり、定量下限(σ=10)は0.012mg−Se/Lであった。また、変動係数(RSD)は0.01mg−Se/Lにおいて14.0%、0.1mg−Se/Lにおいて3.85%であった。0.01mg−Se/Lにおいて変動係数が高いのは、セレン化水素の信号強度値の測定を1.25ppb間隔で整数記録して得たことから分解能が低いことに起因しており、信号強度値の測定をアナログ出力により行うことで、変動係数は抑えられると推定される。
次に、得られた信号プロファイルの面積強度を計算して作成した検量線を図10に示す。0.01〜0.7mg−Se/Lの範囲において、極めて直線性の高い検量線(相関係数0.994)が得られた。また、0.01〜0.1mg−Se/Lの低濃度範囲においても相関係数は0.964であり、低濃度範囲においても極めて高い直線性が得られることが確認された。検出下限(σ=3)は0.0026mg−Se/Lであり、定量下限(σ=10)は0.0087mg−Se/Lであった。また、変動係数(RSD)は0.01mg−Se/Lにおいて12.9%、0.1mg−Se/Lにおいて5.5%であった。図9の場合の相関係数よりも図10の場合の相関係数が低かったのは、信号強度値の測定間隔が10秒であったことに起因していると考えられ、測定間隔をさらに短くすることで相関係数が高まると推定される。
いずれにしても、0.01〜0.7mg−Se/Lの4価セレン濃度範囲では、極めて高い直線性が得られたことから、この濃度範囲内おいて、分析用試料の4価セレン濃度を極めて高い精度で定量分析できることが明らかとなった。したがって、本発明の定量分析方法によれば、現行のセレンの排水基準値である0.1mg−Se/Lの定量分析は勿論のこと、排水基準値がさらに低くなった場合でも分析用試料の4価セレン濃度の定量分析が可能である。
(実施例2)
図12に示す実験装置を使用して実験を行った。尚、本実験もまた、現場分析へのニーズを満たすことに鑑み、実験は全て常温常圧下で実施した。したがって、この実験結果により得られた条件は常温常圧下で適用可能である。
反応槽(容器)2に4価セレンを含む試料5.0mLと所定濃度の塩酸(HCl)水溶液10mLの混合溶液(酸性分析用試料)2aを導入した。還元剤であるテトラヒドロホウ酸ナトリウム(NaBH)水溶液を反応槽2に10mL送液し、撹拌機33で混合してセレン化水素(HSe)ガスを生成させた。所定濃度のテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液3aはペリスタルティックポンプ(添加手段)3で流量を制御した。反応槽2で生成したセレン化水素はキャリアーガスである純空気で定電位電解式センサ4に導入した。キャリアーガスはキャリアーガス供給手段7により供給した。キャリアーガス供給手段7は、純空気ボンベ7aと、圧力調整器7bと、圧力計7cと、マスフローコントローラー7dと、ストップバルブ7eにより構成し、マスフローコントローラー7dにより流量を制御した。定電位電解式センサ4として、セレン化水素ガス検知器(新コスモス電機製PS−7)を用い、セレン化水素(HSe)専用センサユニットであるCDS−7を併用した。この定電位電解式センサは、ガス吸引量が500mL/分であり、セレン化水素の測定範囲は1〜275ppb、指示精度はフルスケールに対して10%以内である。測定データはA/Dコンバータ32を介してパーソナルコンピュータ34に収録した。A/Dコンバータ32は、最小データ取得周期が10Hzで、最小分解能がフルスケールに対して0.4%のものを用いた。測定データの解析にはSmart Chrom(ケーワイテクノロジーズ製)を用いた。セレン化水素ガスは毒性が非常に高いので、測定後のセレン化水素ガスを除害槽6に流通させて除害した。セレン化水素の除害には硫酸銅水溶液6aを用いた。除害槽通過後のガスを除害確認用検知器31で測定し、セレン化水素の有無を確認した。除害確認用検知器31には、セレン化水素ガス検知器(新コスモス電機製PS−7)を用いた。
本実施例において、セレン化水素の信号取得は、実施例1のようなデジタル方式ではなく、アナログ方式で実施した。データの取得間隔は0.1秒とし、フルスケールに対する最小分解能は0.4%とした。即ち、信号強度間隔(プロット間隔)は0.4ppb間隔で小数点以下は切り捨てられるものとした。セレン濃度の計算は、実施例1と同様、信号プロファイルのピーク強度、または信号プロファイルの面積値により行った。面積値の計算は表計算ソフトウェアOrigin(登録商標)を用いた。
本実施例では、試験試料として、セレン標準液(4価セレン濃度1000mg/Lの水溶液)を蒸留水で希釈して所定の濃度に調製したものを用いた。また、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液は所定量のテトラヒドロホウ酸ナトリウムを0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に溶解したものを用いた。また、この水酸化ナトリウム水溶液には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を1.0mmol/Lとなるように溶解させた。
(1)分析条件の検討
(1−1)キャリアーガス流量の検討
キャリアーガス流量を変えて検量線(セレン濃度0.01〜0.5mg/L、n=3)を作成し、定量下限値(σ=10)および定量上限値について検討した。
キャリアーガス流量以外の条件は、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度は3.0g/L、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量は20mL/分、塩酸水溶液の塩酸濃度6.0mol/Lで実験を行った。定量上限値は定電位電解式センサ4の検出上限値(セレン化水素として275ppb)に対する水中セレン濃度を検量線から算出した。また、試験試料5mLと塩酸水溶液10mLを混合して酸性分析用試料とした。尚、検量線は、実施例1と同様、水中セレン濃度に対する信号強度データ(ピーク値、面積値)から作成した。
実験結果を図13に示す。定量下限値は検証した全てのキャリアーガス流量において0.02〜0.04mg/Lと大きな差は認められなかった。しかしながら、定量上限値については、キャリアーガス流量によって大きな差が認められ、キャリアーガス流量が400mL/分から500mL/分に増加することで、大幅に向上することが確認された。また、キャリアーガス流量800〜1000mL/分の範囲においても同様の実験を行ったが、測定できなかった。これは定電位電解式センサ4のガス吸引量である500mL/分に対して著しく多いキャリアーガスが負担を与えたためと推測された。
以上の結果から、キャリアーガス流量はセレンの測定範囲が広く、且つ定電位電解式センサ4に対して負担の少ない500〜700mL/分とすることが好ましく、500mL/分とすることがさらに好ましいことがわかった。
(1−2)テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度の検討
テトラヒドロホウ酸ナトリウム濃度の変化が信号強度に与える影響について検討した。
試験試料として、0.25mg/Lのセレン標準液および蒸留水(ブランク試料)を用いた。テトラヒドロホウ酸ナトリウム濃度以外の条件は、キャリアーガス流量500mL/分、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量20mL/分、塩酸水溶液の塩酸濃度6.0mol/Lで実験を行った。また、試験試料5mLと塩酸水溶液10mLを混合して酸性分析用試料とした。
結果を図14に示す。テトラヒドロホウ酸ナトリウム濃度が増加するにしたがってセレン標準液における信号強度が増加する傾向が見られた。テトラヒドロホウ酸ナトリウム濃度が4g/L 以上になると、ブランク試料において信号強度の増加が見られた。これはテトラヒドロホウ酸ナトリウム濃度を高くしたことで多量の水素ガスが生成し、セレン化水素の測定に妨害を与えたためであると考えられる。定電位電解式センサにおけるガス測定では、センサ膜表面に吸着した水素が電解されて水素イオンが増加し、測定時に干渉を及ぼすことが報告されている。
・T. Ishiji, T. Iijima, and K. Takahashi: “Electrochemical sensing of arsine and silane by the amperometric gas sensor by using gold electrode”, Denki Kagaku, 64(12), 1304-1310 (1996).
・石地 徹:「環境ガスモニタリングのための新規電気化学センサの開発」、Electrochem., 69(4), 285-288 (2001).、
・Y. Mizutani, H. Matsuda, T. Ishiji, N. Furuya, and K. Takahashi: “Improvement of electrochemical NO2 sensor by use of carbon-fluorocarbon gas permeable electrode”, Sens. Actuators B, 108, 815-819 (2005).
以上の結果から、セレン化水素の測定において水素ガスが妨害を起こさないようにするためには、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量20mL/分とする場合には、テトラヒドロホウ酸ナトリウム濃度を3g/L以下とすることが好ましく、最も高い信号強度が得られる3g/Lとすることがさらに好ましいことがわかった。
(1−3)テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量の検討
テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量の変化が信号強度に与える影響について検討した。
試験試料として、0.25mg/Lのセレン標準液を用いた。テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量以外の条件は、キャリアーガス流量500mL/分、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度3.0g/L、塩酸濃度6.0mol/Lで実験を行った。また、試験試料5mLと塩酸水溶液10mLを混合して酸性分析用試料とした。
まず、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量が、信号プロファイルのピーク高さ値に与える影響について検討した結果を図15Aに示す。添加流量が25mL/分までは信号強度が増加傾向にあったが、25〜90mL/分まではほぼ一定であった。これは、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量が大きくなると短時間でセレン化水素が生成されてピークがシャープになるためと考えられる。また、添加流量が25mL/分以上で信号強度が一定になったのは、単位時間に添加されるテトラヒドロホウ酸ナトリウムの絶対量がセレン化水素生成に必要な量を満たしたためと考えられる。
次に、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量が、信号プロファイルの面積値に与える影響について検討した結果を図15Bに示す。添加流量が増加するにつれて面積値は減少傾向となった。添加流量が小さい場合にはセレン化水素の生成に時間を要し、ピークの幅が広がることで面積値は大きくなると考えられる。
そこで、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量が、信号プロファイルの半値幅に与える影響について検討した。結果を図15Cに示す。添加流量が増加するにつれて半値幅が減少傾向となり、ピークがシャープになる傾向があることがわかった。また、添加流量が過大の場合にはセレン化水素が短時間で生成され、再現性が悪くなる傾向が見られた。
以上の結果から、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量が25〜50mL/分の場合に、高さ値におけるプロットで信号強度が高く、ピークがシャープとなり、且つ再現性も良好となることがわかった。したがって、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量は25〜50mL/分に設定することが好ましく、30mL/分に設定することがさらに好ましいことがわかった。
ここで、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度は3.0g/Lであったことから、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量を、実施例1と同様、酸性分析用試料1Lに対するテトラヒドロホウ酸ナトリウムそのものの添加速度に換算すると以下の結果となる。
25〜50mL/分 → 5〜10g/分
30mL/分 → 6g/分
(1−4)塩酸濃度の影響
試験試料を酸性化するための塩酸水溶液の塩酸濃度の変化が信号強度に与える影響について検討した。
試験試料として、0.25mg/Lのセレン標準液を用いた。塩酸濃度以外の条件は、キャリアーガス流量500mL/分、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度3.0g/L、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量30mL/分で実験を行った。また、試験試料5mLと塩酸水溶液10mLを混合して酸性分析用試料とした。
実験結果を図16に示す。塩酸濃度が6.0〜10.0mol/Lにおいて信号強度が最も高くなったが、全実験範囲においてセレンの定量分析を行うのに足りる信号強度が得られることが判明した。しかしながら、反応終了後に反応槽2内の水溶液中に残存したセレンを測定したところ、塩酸濃度12.0mol/Lの場合には0.03mg/Lのセレンが検出された。このことから、塩酸濃度を10.0mol/L超とすることは、反応槽2に未反応のセレンを残存させる虞があり、且つ塩酸の使用量も増加することから、好ましくないと判断した。
また、塩酸濃度1.0、3.0mol/Lの場合にも、反応終了後に反応槽2内の水溶液中にセレンが残存していたが、その量は、0.01mg/Lと極僅かなものであった。
尚、実施例1において、塩酸濃度が0.2mol/Lの場合には、適正な相対信号強度の6割程度の信号強度が得られたことから、塩酸濃度が0.2mol/L以上の場合には、セレンの定量分析を行うのに足りる信号強度が得られる。
したがって、塩酸濃度は、0.2〜10mol/Lとすればよいが、1.0〜10mol/Lとすることが好ましく、2.0〜10mol/Lとすることがより好ましく、3.0〜10mol/Lとすることがさらに好ましく、6.0〜10mol/Lとすることがなお好ましいことがわかった。ここで、塩酸使用量に対して得られる信号強度値を考慮した場合、6.0mol/Lとすることが最も好ましいと考えられた。
尚、本実施例においては、試験試料5mLに対し、塩酸水溶液を10mL混合したことから、酸性分析用試料の塩酸による酸の既定値で表すと、酸性分析用試料の塩酸による酸の既定値は、0.13〜6.7N/Lとすればよいが、0.67〜6.7N/Lとすることが好ましく、1.3〜6.7N/Lとすることがより好ましく、2.0〜6.7N/Lとすることがさらに好ましく、4.0〜6.7N/Lとすることがなお好ましく、4.0N/Lとすることが最も好ましい。特に、4.0〜6.7N/Lとすることで、十分な信号強度値が得られると共に、分析用試料に溶存しているセレンを効率よく水素化できる。
(1−5)定量性評価
上記(1)〜(4)において得られた条件、即ち、キャリアーガス流量500mL/分、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度3.0g/L、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量30mL/分、塩酸濃度6.0mol/Lとした場合の定量性評価を行った。また、試験試料5mLと塩酸水溶液10mLを混合して酸性分析用試料とした。
上記分析条件で、セレン濃度0.01〜0.5mg/Lの範囲で検量線を作成した。その結果を図18A及び図18Bに示す。また、検量線の作成に使用した測定プロファイルを図19に示す。
セレン濃度に対する信号プロファイルのピーク高さでプロットして得られた検量線(図18A)において、検出下限(σ=3)は0.002mg/Lであり、定量下限(σ=10)は0.005mg/Lであった。
セレン濃度に対する信号プロファイルの面積値でプロットして得られた検量線(図18B)において、検出下限(σ=3)は0.01mg/Lであり、定量下限(σ=10)は0.04mg/Lであった。
高さ値と面積値による検量線を比較した結果、定量下限値は高さ値が面積値の10分の1以下であった。また、各セレン濃度で再現性を求めた結果を表3に示す。再現性は相対標準偏差(RSD: Relative Standard Deviation)によって評価した。セレン濃度0.01mg/Lの再現性は面積値で19.9%、高さ値で4.6%であった。
以上の結果から、面積値よりも高さ値でプロットした方が定量性は高く、高さ値で評価した方が適当であると判断した。また、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加開始から測定終了までに要する時間は3分以内であり、迅速かつ高感度に4価セレンを測定できた。
また、セレン濃度に対する信号プロファイルのピーク高さでプロットして得られた検量線に関し、実施例1で得られた検量線(図9)と比較すると、検量線の相関係数は同程度であったが、セレン濃度0.01mg/Lにおける信号出力の安定性(再現性)が14.0%から4.6%に向上した(表3)。
再現性の向上は、キャリアーガスの使用、分析パラメータの設定、また、図20に示すように、定電位電解式センサ4の分解能が実施例1で用いた定電位電解センサ4よりも高かったことに起因しているものと考えられる。
(2)石炭火力発電所から排出される脱硫排水への適用の検討
(2−1)脱硫排水試料
実排水への適用性を評価するために石炭火力発電所の脱硫排水3種を入手した。排水組成の測定にはICP発光分析装置(ICP−AES、セイコーインスツルメンツ製 SPS−5000)及びイオンクロマトグラフィー(IC、ダイオネックス製DX−320)を用いた。
公定法(JIS K0102 67.3)では、セレンの化学形態別測定は明確には規定されていない。そこで、セレンの形態別測定は神田らの方法(神田 裕、秋保 広幸、白井 裕三、伊藤 茂男:「石炭火力発電所脱硫装置におけるセレンの化学形態」、電力中央研究所報告、M04015、(2005).)に従った。この分析方法の概略を図17に示す。まず、排水試料50mLをろ過して夾雑物を除いた後、硫酸および硝酸を添加して硫酸白煙が生じるまで加熱(170℃)することで有機物を分解した(酸分解)。次に、酸分解した試料を放冷し、蒸留水で50mLとした後に水素化合物発生ICP−AES(HG−ICP−AES)で4価セレン濃度を測定した。また、同試料を酸分解した後に塩酸を添加し、120℃で10分間加熱することで6価セレンを還元し(還元処理)、HG−ICP−AESで全セレン濃度を測定した。6価セレン濃度は、全セレン濃度と4価セレン濃度との差から求めた。
表4に使用した脱硫排水の化学組成を示す。脱硫排水Aは他の2種と比べ塩濃度が高く、4価セレン0.275mg/Lと6価セレン0.267mg/Lを含有した。また、脱硫排水Bは4価セレン0.057mg/Lと6価セレン0.049mg/Lを、脱硫排水Cは4価セレン0.003mg/Lと6価セレン0.027mg/Lを含有した。
(2−2)脱硫排水の測定
脱硫排水A、B及びCを、キャリアーガス流量500mL/分、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度3.0g/L、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量30mL/分、塩酸濃度6mol/Lとして測定を行ったところ、いずれの脱硫排水においても信号値が負の値を示し、正確な信号値が得られなかった。
そこで、脱硫排水Bについて、まず、反応槽2に脱硫排水Bのみを導入し、塩酸を添加しながら、キャリアーガスを500mL/分流して信号値を測定したところ、塩酸の添加直後に信号値が負の値を示し、その後信号値が徐々に増加して0付近まで回復した。そこで、信号値が回復した後、濃度3.0g/Lのテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液を添加流量30mL/分で添加し、キャリアーガスを500mL/分流して信号値を測定したが、正の値の信号値は得られなかった(図21)。尚、この結果は、脱硫排水A及びCについても同様であった。
このことから、塩酸の添加によって脱硫排水中の共存物質が気化し、セレン化水素ガス検知器の信号出力を妨害することがわかった。また、信号が回復した後にセレン化水素の信号値が得られなかったことから、セレン化水素の測定における妨害はセレン化水素ガスの生成阻害と定電位電解式センサ4(PS−7)の信号出力の妨害とに大別されることがわかった。
(2−3)セレン化水素の生成阻害要因の検討
セレンの水素化反応を阻害する物質を確認するため、所定濃度の排水成分(表4の全成分24種)を0.1mg/Lのセレン標準液に添加してHG−ICP−AESで4価セレン濃度を測定した。
その結果、銅(2)を除いてはセレン化水素生成を阻害しないことが確認された。銅(2)は4価セレンに対して10倍以上の濃度(重量比)で存在すると4価セレンの水素化を阻害した。これは以下の反応により、セレン化水素と銅(2)からセレン化銅を生成するためである(M. Thompson, B Pahlavanpour, S. J. Walton: “Simultaneous determination of trace concentration of arsenic, antimony, bismuth, selenium and tellurium in aqueous solution by introduction of the gaseous hydride into an inductively plasma source for emission spectrometry”, Analyst, 103, 568- 579 (1978))。
4SeO3 2− + 3BH4 + 11H→ 4H2Se + 3H3BO3 + 3H2O
H2Se + Cu2+ → CuSe↓ + H2
しかしながら、表4に示すように、脱硫排水中において、銅(2)濃度は低いため(表1)、これがセレンの水素化を阻害する可能性は小さい。また、D’Ulivoらによるとセレンに対して銅(2)が10倍、鉄(3)が5000倍、ニッケル(2)が200倍、コバルト(2)が5000倍、金(3)が5倍、白金(4)が150倍、銀(1)が30倍、パラジウム(2)が20倍の存在比で共存すると水素化が阻害されるとの報告があるが(A. D’Ulivo, L. Ganfranceschi, L. Lampugnani, R. Zamboni: “Masking agents in the determination of selenium by hydride generation technique”, Spectro. Acta B, 57, 2081-2094 (2002).)、これらは脱硫排水中の濃度が低いため、セレンの水素化を阻害しないことがわかった。以上より、脱硫排水中の主要な共存成分はセレン化水素の生成を阻害しないことがわかった。
(2−4)セレン化水素ガス検知器信号出力の妨害
定電位電解式センサ4の信号出力を妨害する排水成分を検討した。上記と同様、所定濃度の排水成分(表4の全成分24種)を0.1mg/Lのセレン標準液に添加して定電位電解式センサ4で測定を行った。
その結果、定電位電解式センサ4の信号出力を妨害したのはヨウ化物イオンのみであった。ヨウ化物イオンは0.1mg/L以上で塩酸添加時にセレン化水素ガス検知器の信号出力を妨害した。
0.1mg/Lのセレン標準液に対して、ヨウ化物イオンを0.1〜10mg−I/Lの範囲で混合した試料に塩酸を添加しながら測定した結果を図22に示す。試料に塩酸を添加すると信号強度は負の値を示した。また、ヨウ化物イオンの濃度を高くすると、負の信号値を示す時間が長くなった。
さらに、脱硫排水に塩酸を添加し20分間撹拌した後に試料中のヨウ化物イオンを測定したところ、脱硫排水BとCのヨウ化物イオン濃度は5.6mg−I/Lから1.5mg−I/Lに、4.3mg−I/Lから1.4mg−I/Lに低下していた。これは、脱硫排水中のヨウ化物イオンが塩酸と反応して生成された物質が気化し、セレン化水素ガス検知器に負の信号値を与えることを示唆している。
(2−5)妨害物質の除去の検討
JIS法では、セレンのHG−ICP−AES分析におけるセレンの前処理法として硫酸と硝酸による有機物の酸分解を規定している(JIS−K0102.67.3.)。酸分解後の脱硫排水成分をICP−AESで測定し、濃度変化が認められた化学成分を表5に示す。
酸分解後には、ヨウ素、臭素、塩素の濃度が低下した。脱硫排水B、脱硫排水Cのヨウ化物イオンはそれぞれ5.6mg−I/Lから0.5mg−I/Lに、4.3mg−I/Lから0.4mg−I/Lに低下した。また、脱硫排水B、脱硫排水CのCOD値はそれぞれ9.0mg−O/Lから2.4mg−O/Lに、26.4mg−O/Lから18.0mg−O/Lに低下した。
酸分解を行った後の脱硫排水中のセレンをセレン化水素ガス検知器で測定した結果を図23に示す。脱硫排水Cの4価セレン濃度は本装置の定量限界以下であったため、酸分解処理前に0.1mg/Lのセレンを添加した試料を用いた。測定条件はキャリアーガス流量500mL/分、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液濃度3.0g/L、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液添加流量30mL/分、塩酸濃度6.0mol/Lとした。その結果、脱硫排水A〜CについてHG−ICP−AES測定結果とセレン化水素ガス検知器の測定結果との間に良好な相関が得られた。以上より、酸分解処理はセレン化水素ガス検知器を用いる測定において有効な前処理法であることがわかった。
ここで、上記実験では、JIS法による前処理を行った後に塩酸を添加したが、塩酸を添加することなく、JIS法による前処理を行った後に塩酸を添加することなく、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液を添加して同様の実験を行ったところ、塩酸を添加する場合よりも信号強度は7割程度に低下するものの、セレン化水素の定量分析は可能であることが明らかとなった。
さらに、分析用試料に6mol/L(6N/L)の塩酸を添加する代わりに、3mol/L(6N/L)の硫酸あるいは6mol/L(6N/L)の硝酸を添加して酸性分析用試料を調整し、実験を行ったところ、硫酸については、塩酸を用いた場合と比較して信号強度が6割程度に低下するものの、セレン化水素の定量分析は可能であることが明らかとなった。しかしながら、硝酸については、信号強度が得られなかった。
これらの結果から、JIS法による前処理を行った後に塩酸を添加せずとも、セレン化水素の定量分析は可能な程度の信号強度が得られた理由が、前処理の際に用いた硫酸によるものであることが明らかとなった。つまり、酸性分析用試料を調整するための酸として、塩酸だけでなく、硫酸も使用可能であることが明らかとなった。
また、JIS法による前処理だけで、セレン化水素の定量分析は可能な程度の信号強度が得られたことから、JIS法による前処理によって、有機化合物とヨウ化物イオンの除去と同時に分析用試料を酸性化処理できることも明らかとなった。
但し、セレンの定量分析精度を高める上では、JIS法による前処理を行った後に、塩酸を添加して酸性度を高めることが好ましいことがわかった。
第一の実施形態にかかるセレンの定量分析システムの一例を示す図である。 定電位電解式センサによるセレン化水素の測定原理を示す図である。 分析手段の全体構成の一例を示す図である。 第一の実施形態にかかるセレンの定量分析方法を実施するための実験装置を示す図である。 実施例1において、マグネチックスターラーの回転数に対して相対信号強度をプロットしたグラフである。 実施例1において、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度に対して相対信号強度をプロットしたグラフである。 実施例1において、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加速度に対して相対信号強度をプロットしたグラフである。 実施例1において、各種亜セレン酸イオン濃度の標準液における時間に対する相対信号強度をプロットした信号プロファイルを示す図である。 実施例1において、信号プロファイルのピーク値により作成した検量線を示す図である。 実施例1において、信号プロファイルの面積強度を計算して作成した検量線を示す図である。 実施例1において、テトラヒドロホウ酸ナトリウム添加後の酸性分析用試料のpHに対する相対信号強度をプロットしたグラフである。 第二の実施形態にかかるセレンの定量分析方法を実施するための実験装置を示す図である。 実施例2において、キャリアーガス流量による定量下限値及び定量上限値の変化を示す図である。 実施例2において、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の濃度が信号強度に与える影響を示す図である。 実施例2において、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量が信号プロファイルのピーク高さ値に与える影響について検討した結果を示す図である。 実施例2において、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量が信号プロファイルの面積値に与える影響について検討した結果を示す図である。 実施例2において、テトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液の添加流量が信号プロファイルの半値幅に与える影響について検討した結果を示す図である。 実施例2において、塩酸濃度が信号強度に与える影響について検討した結果を示す図である。 セレンの形態別定量分析方法の概略を示す図である。 実施例2において、信号プロファイルのピーク値により作成した検量線を示す図である。 実施例2において信号プロファイルの面積強度を計算して作成した検量線を示す図である。 実施例2において、検量線作成に用いた信号プロファイルを示す図である。 実施例1で得られた信号プロファイルと実施例2で得られた信号プロファイルとを比較した図である。 脱硫排水に塩酸とテトラヒドロホウ酸ナトリウムを添加したときの信号強度の経時変化を示す図である。 実施例2において、セレン標準液に対してヨウ化物イオンを混合した試料に塩酸を添加しながら信号強度を測定した結果を示す図である。 酸分解を行った後の脱硫排水中のセレンをセレン化水素ガス検知器で測定した結果を示す図である。 第二の実施形態にかかるセレンの定量分析システムの一例を示す図である。
符号の説明
1、1’ セレン定量分析システム
2 容器(反応槽)
2a 酸性分析用試料
3 添加手段
3a テトラヒドロホウ酸ナトリウム
4 定電位電解式センサ
5 分析手段
6 回収手段
6a 硫酸銅溶液
7 キャリアーガス供給手段

Claims (8)

  1. 4価セレンが溶存している分析用試料に塩酸及び硫酸の少なくともいずれか一方を添加して酸の規定度が0.13〜6.7N/Lの酸性分析用試料を得る工程と、前記酸性分析用試料1Lに対して5g/分以下でテトラヒドロホウ酸ナトリウムを添加し、前記4価セレンと前記テトラヒドロホウ酸ナトリウムを反応させてセレン化水素を発生させる工程と、前記セレン化水素を10〜20mL/分で吸引する工程と、前記吸引されたセレン化水素を定電位電解式センサで測定して測定値を得る工程と、前記測定値に基づいて前記分析用試料の4価セレン濃度を検量線法により分析する工程とを含み、前記検量線法に用いる検量線は4価セレン濃度が既知の複数の標準試料から予め求めた4価セレン濃度と前記定電位電解式センサの測定値との相関に基づいて作成されたものであることを特徴とするセレンの定量分析方法。
  2. 4価セレンが溶存している分析用試料に塩酸及び硫酸の少なくともいずれか一方を添加して酸の規定度が0.13〜6.7N/Lの酸性分析用試料を得る工程と、前記酸性分析用試料1Lに対して5〜10g/分でテトラヒドロホウ酸ナトリウムを添加し、前記4価セレンと前記テトラヒドロホウ酸ナトリウムを反応させてセレン化水素を発生させる工程と、前記セレン化水素にキャリアーガスを500〜700mL/分で添加する工程と、前記セレン化水素を前記キャリアーガスと共に400〜600mL/分で吸引する工程と、前記吸引されたセレン化水素を定電位電解式センサで測定して測定値を得る工程と、前記測定値に基づいて前記分析用試料の4価セレン濃度を検量線法により分析する工程とを含み、前記検量線法に用いる検量線は4価セレン濃度が既知の複数の標準試料から予め求めた4価セレン濃度と前記定電位電解式センサの測定値との相関に基づいて作成されたものであることを特徴とするセレンの定量分析方法。
  3. 前記酸として硫酸が添加された前記酸性分析用試料に硝酸を添加し、これを加熱して硫酸白煙を生じさせることを特徴とする請求項1または2に記載のセレンの定量分析方法。
  4. 前記酸として硫酸が添加された前記酸性分析用試料に硝酸を添加し、これを加熱して硫酸白煙を生じさせた後に、塩酸を添加して、前記硫酸及び前記塩酸による酸の規定度を4.0〜6.7N/Lとすることを特徴とする請求項1または2に記載のセレンの定量分析方法。
  5. 4価セレンが溶存している分析用試料に塩酸及び硫酸の少なくともいずれか一方が添加されて、酸の規定度が0.13〜6.7N/Lに調整された酸性分析用試料を入れる密閉構造の容器と、前記酸性分析用試料1Lに対して5g/分以下でテトラヒドロホウ酸ナトリウムを添加する手段と、セレン化水素を測定して測定値を出力する定電位電解式センサと、前記酸性分析用試料から発生した前記セレン化水素を10〜20mL/分で吸引して前記定電位電解式センサに供給する供給手段と、4価セレン濃度が既知の複数の標準試料から予め求めた4価セレン濃度と前記定電位電解式センサの測定値との相関に基づいて作成された検量線を有すると共に前記検量線に基づいて前記測定値から前記分析用試料の4価セレン濃度を分析する分析手段とを含むものであるセレンの定量分析システム。
  6. 4価セレンが溶存している分析用試料に塩酸及び硫酸の少なくともいずれか一方が添加されて、酸の規定度が0.13〜6.7N/Lに調整された酸性分析用試料を入れる密閉構造の容器と、前記酸性分析用試料1Lに対して5〜10g/分でテトラヒドロホウ酸ナトリウムを添加する手段と、前記容器にキャリアーガスを500〜700mL/分で供給する手段と、セレン化水素を測定して測定値を出力する定電位電解式センサと、前記酸性分析用試料から発生した前記セレン化水素を前記キャリアーガスと共に400〜600mL/分で吸引して前記定電位電解式センサに供給する供給手段と、4価セレン濃度が既知の複数の標準試料から予め求めた4価セレン濃度と前記定電位電解式センサの測定値との相関に基づいて作成された検量線を有すると共に前記検量線に基づいて前記測定値から前記分析用試料の4価セレン濃度を分析する分析手段とを含むものであるセレンの定量分析システム。
  7. 請求項5または6に記載のセレンの定量分析システムにおいて、前記酸として硫酸が添加された酸性分析用試料に硝酸を添加する硝酸添加手段と、前記硝酸が添加された前記酸性分析用試料を加熱して硫酸白煙を発生させる加熱装置とさらに備えることを特徴とするセレンの定量分析システム。
  8. 請求項5または6に記載のセレンの定量分析システムにおいて、前記酸として硫酸が添加された酸性分析用試料に硝酸を添加する硝酸添加手段と、前記硝酸が添加された前記酸性分析用試料を加熱して硫酸白煙を発生させる加熱装置と、前記加熱装置により加熱された後の前記酸性分析用試料に塩酸を添加して前記硫酸及び前記塩酸による酸の規定度を4.0〜6.7N/Lとする塩酸添加手段とをさらに備えることを特徴とするセレンの定量分析システム。
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