JPH11142387A - 溶液中の4価及び6価セレンの分別定量法 - Google Patents
溶液中の4価及び6価セレンの分別定量法Info
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- JPH11142387A JPH11142387A JP30238197A JP30238197A JPH11142387A JP H11142387 A JPH11142387 A JP H11142387A JP 30238197 A JP30238197 A JP 30238197A JP 30238197 A JP30238197 A JP 30238197A JP H11142387 A JPH11142387 A JP H11142387A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 簡単な操作で安定した定量結果が得られ、し
かもSe4+の含有量に対してSe6+の含有量が微量であ
る場合にも正確な測定値が得られる、溶液中の4価及び
6価セレンの分別定量法を提供すること。 【解決手段】 4価及び6価セレンが溶解した溶液中の
4価セレン濃度を測定し、別途4価及び6価セレンが溶
解した溶液に塩酸及び硝酸を添加して加熱することによ
って6価セレンを4価セレンに還元し、4価セレンと6
価セレンの合計量である全セレン濃度を測定し、得られ
た4価セレン濃度と全セレン濃度から4価及び6価セレ
ンの各々の濃度を算出する方法。
かもSe4+の含有量に対してSe6+の含有量が微量であ
る場合にも正確な測定値が得られる、溶液中の4価及び
6価セレンの分別定量法を提供すること。 【解決手段】 4価及び6価セレンが溶解した溶液中の
4価セレン濃度を測定し、別途4価及び6価セレンが溶
解した溶液に塩酸及び硝酸を添加して加熱することによ
って6価セレンを4価セレンに還元し、4価セレンと6
価セレンの合計量である全セレン濃度を測定し、得られ
た4価セレン濃度と全セレン濃度から4価及び6価セレ
ンの各々の濃度を算出する方法。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は4価及び6価セレン
が溶解した溶液中の4価及び6価セレンのそれぞれの濃
度を測定可能な4価及び6価セレンの分別定量法に関す
る。
が溶解した溶液中の4価及び6価セレンのそれぞれの濃
度を測定可能な4価及び6価セレンの分別定量法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】水道水などの上水や各種排水などの水質
基準においてはセレン濃度が規定されており、各種溶液
中のセレンの定量が必要で種々の方法が実施されてい
る。例えば、1993年12月に水道水水質基準が施行
されたが、この新省令では、セレンは0.01mg/リ
ットル以下、すなわち10ppb以下の基準値が設定さ
れ、検査方法についても水素化物生成−原子吸光法等に
よることとされている。溶液中に存在するセレンは通常
4価及び6価であるが、セレン水素化物として生成する
ものは4価のみである。したがって、この方法により溶
液中のセレンを定量するためには6価のセレンを4価の
セレンに還元する必要があり、JISのK102では、
6価から4価への還元方法としてKBrによる方法を用
いている。その処理においては、50℃の温度で約50
分間処理する必要があるうえ、加熱条件によっては、金
属セレンまで還元されてしまう可能性が示唆されてお
り、厳密な条件管理が必要である。以下、4価のセレン
はSe4+と示し、6価のセレンはSe6+と表示する。ま
た、金属セレンはSe0 と表示する。
基準においてはセレン濃度が規定されており、各種溶液
中のセレンの定量が必要で種々の方法が実施されてい
る。例えば、1993年12月に水道水水質基準が施行
されたが、この新省令では、セレンは0.01mg/リ
ットル以下、すなわち10ppb以下の基準値が設定さ
れ、検査方法についても水素化物生成−原子吸光法等に
よることとされている。溶液中に存在するセレンは通常
4価及び6価であるが、セレン水素化物として生成する
ものは4価のみである。したがって、この方法により溶
液中のセレンを定量するためには6価のセレンを4価の
セレンに還元する必要があり、JISのK102では、
6価から4価への還元方法としてKBrによる方法を用
いている。その処理においては、50℃の温度で約50
分間処理する必要があるうえ、加熱条件によっては、金
属セレンまで還元されてしまう可能性が示唆されてお
り、厳密な条件管理が必要である。以下、4価のセレン
はSe4+と示し、6価のセレンはSe6+と表示する。ま
た、金属セレンはSe0 と表示する。
【0003】また、石炭火力発電所から多量に排出され
る灰にはセレンが含まれている。セレンそのものは硫黄
とよく似た性質から水と接触した場合、Se4+及びSe
6+として溶液側に溶け出してしまう。そのため、セレン
を含む灰をそのまま投棄するとセレンが溶出し環境基準
を満足しなくなるので、灰の投棄に際しては洗浄等の処
理が必要である。このような洗浄水中のセレン濃度が高
ければ、さらに排水処理も必要となる。このようなセレ
ンを含む排水の処理方法として、様々な処理法が検討さ
れているが、Se4+とSe6+とでは最適処理条件が異な
る場合が多く、適切な処理方法の確立のためには溶液中
におけるSe4+とSe6+との分別定量が必要である。
る灰にはセレンが含まれている。セレンそのものは硫黄
とよく似た性質から水と接触した場合、Se4+及びSe
6+として溶液側に溶け出してしまう。そのため、セレン
を含む灰をそのまま投棄するとセレンが溶出し環境基準
を満足しなくなるので、灰の投棄に際しては洗浄等の処
理が必要である。このような洗浄水中のセレン濃度が高
ければ、さらに排水処理も必要となる。このようなセレ
ンを含む排水の処理方法として、様々な処理法が検討さ
れているが、Se4+とSe6+とでは最適処理条件が異な
る場合が多く、適切な処理方法の確立のためには溶液中
におけるSe4+とSe6+との分別定量が必要である。
【0004】前記JISのK102の方法でも還元処理
前のSe4+の測定値と還元処理後の全セレン量から、S
e4+とSe6+のそれぞれの値を算出することはできる
が、Se4+とSe6+の存在割合が、Se6+と比べてSe
4+の割合が非常に多い場合については、全セレン量の測
定値はSe4+に支配されることとなり、全セレン量−S
e4+はそれぞれの測定誤差範囲となり、極微量のSe6+
の測定が困難となる。
前のSe4+の測定値と還元処理後の全セレン量から、S
e4+とSe6+のそれぞれの値を算出することはできる
が、Se4+とSe6+の存在割合が、Se6+と比べてSe
4+の割合が非常に多い場合については、全セレン量の測
定値はSe4+に支配されることとなり、全セレン量−S
e4+はそれぞれの測定誤差範囲となり、極微量のSe6+
の測定が困難となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような従
来技術の実状に鑑み、簡単な操作で安定した定量結果が
得られ、しかもSe4+の含有量に対してSe6+の含有量
が微量である場合にも正確な測定値が得られる、溶液中
の4価及び6価セレンの分別定量法を提供しようとする
ものである。
来技術の実状に鑑み、簡単な操作で安定した定量結果が
得られ、しかもSe4+の含有量に対してSe6+の含有量
が微量である場合にも正確な測定値が得られる、溶液中
の4価及び6価セレンの分別定量法を提供しようとする
ものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決
する手段として次の(1)及び(2)の構成を有するも
のである。 (1)4価及び6価セレンが溶解した溶液中の4価セレ
ン濃度を水素化物生成−ICP−AES法により測定
し、別途4価及び6価セレンが溶解した溶液に還元剤を
添加して6価セレンを4価セレンに還元し、水素化物生
成−ICP−AES法により4価セレンと6価セレンの
合計量である全セレン濃度を測定し、得られた4価セレ
ン濃度と全セレン濃度から4価及び6価セレンの各々の
濃度を算出する方法であって、前記6価セレンを4価セ
レンに還元する方法が4価及び6価セレンが溶解した溶
液に塩酸及び硝酸を添加して加熱する方法であることを
特徴とする溶液中の4価及び6価セレンの分別定量法。
する手段として次の(1)及び(2)の構成を有するも
のである。 (1)4価及び6価セレンが溶解した溶液中の4価セレ
ン濃度を水素化物生成−ICP−AES法により測定
し、別途4価及び6価セレンが溶解した溶液に還元剤を
添加して6価セレンを4価セレンに還元し、水素化物生
成−ICP−AES法により4価セレンと6価セレンの
合計量である全セレン濃度を測定し、得られた4価セレ
ン濃度と全セレン濃度から4価及び6価セレンの各々の
濃度を算出する方法であって、前記6価セレンを4価セ
レンに還元する方法が4価及び6価セレンが溶解した溶
液に塩酸及び硝酸を添加して加熱する方法であることを
特徴とする溶液中の4価及び6価セレンの分別定量法。
【0007】(2)4価及び6価セレンが溶解した溶液
中の4価セレン濃度を水素化物生成−ICP−AES法
により測定し、別途4価及び6価セレンが溶解した溶液
にビスムチオールIIの水溶液を添加してビスムチオー
ルIIと4価セレンとの錯体を生成させ、生成した錯体
を抽出除去した後、6価セレンが溶解した抽出残液に塩
酸及び硝酸を添加して加熱することにより6価セレンを
4価セレンに還元し、水素化物生成−ICP−AES法
により生成した4価セレンの濃度を測定することによっ
て6価セレンの定量を行うことを特徴とする溶液中の4
価及び6価セレンの分別定量法である。
中の4価セレン濃度を水素化物生成−ICP−AES法
により測定し、別途4価及び6価セレンが溶解した溶液
にビスムチオールIIの水溶液を添加してビスムチオー
ルIIと4価セレンとの錯体を生成させ、生成した錯体
を抽出除去した後、6価セレンが溶解した抽出残液に塩
酸及び硝酸を添加して加熱することにより6価セレンを
4価セレンに還元し、水素化物生成−ICP−AES法
により生成した4価セレンの濃度を測定することによっ
て6価セレンの定量を行うことを特徴とする溶液中の4
価及び6価セレンの分別定量法である。
【0008】
【発明の実施の形態】前記(1)の発明においては、迅
速かつ確実な前処理法により溶液中に存在するSe4+及
びSe6+を全てSe4+に還元して溶液中に存在する全セ
レン量を測定し、還元処理を行わずに測定したSe4+の
量との差からSe6+量を算出する。還元方法としてはS
e6+及びSe4+を含有する溶液に還元剤として塩酸を添
加し、加熱処理することによってSe6+をSe4+に還元
する。この時、還元処理条件が強すぎるとSe4+がさら
にSe0 にまで還元され、定量困難となる。そのため、
還元処理時に還元剤である塩酸に加えて還元抑制効果の
ある硝酸を添加し還元反応を抑制する。
速かつ確実な前処理法により溶液中に存在するSe4+及
びSe6+を全てSe4+に還元して溶液中に存在する全セ
レン量を測定し、還元処理を行わずに測定したSe4+の
量との差からSe6+量を算出する。還元方法としてはS
e6+及びSe4+を含有する溶液に還元剤として塩酸を添
加し、加熱処理することによってSe6+をSe4+に還元
する。この時、還元処理条件が強すぎるとSe4+がさら
にSe0 にまで還元され、定量困難となる。そのため、
還元処理時に還元剤である塩酸に加えて還元抑制効果の
ある硝酸を添加し還元反応を抑制する。
【0009】還元処理時に添加する塩酸の量は、通常の
分析においては試料液37.5ミリリットルに対し塩酸
(35%)12.5〜37.5ミリリットル程度の範囲
とする。塩酸の量が少なすぎると還元が十分進行せず、
また、多すぎると還元が進みすぎてSe0 が生成するお
それがあるので好ましくない。還元抑制剤として添加す
る硝酸の量は試料液50ミリリットルに対し硝酸(61
%)1〜5ミリリットル程度の範囲とする。硝酸の量が
少なすぎるとSe0 が生成して回収率が低下するおそれ
があり、また、多すぎると分析時の水素化物の生成を妨
害するので好ましくない。
分析においては試料液37.5ミリリットルに対し塩酸
(35%)12.5〜37.5ミリリットル程度の範囲
とする。塩酸の量が少なすぎると還元が十分進行せず、
また、多すぎると還元が進みすぎてSe0 が生成するお
それがあるので好ましくない。還元抑制剤として添加す
る硝酸の量は試料液50ミリリットルに対し硝酸(61
%)1〜5ミリリットル程度の範囲とする。硝酸の量が
少なすぎるとSe0 が生成して回収率が低下するおそれ
があり、また、多すぎると分析時の水素化物の生成を妨
害するので好ましくない。
【0010】還元処理の温度及び処理時間は、測定対象
試料溶液の性状、溶液中のSe6+及びSe4+の含有量、
添加する塩酸及び硝酸の濃度、添加量等によって適宜定
めればよいが、一般的には温度95〜100℃、加熱時
間0.5〜1時間程度とすればよい。
試料溶液の性状、溶液中のSe6+及びSe4+の含有量、
添加する塩酸及び硝酸の濃度、添加量等によって適宜定
めればよいが、一般的には温度95〜100℃、加熱時
間0.5〜1時間程度とすればよい。
【0011】前記発明(1)の具体的手法の1例を以下
に示す。 (イ)試料液37.5ミリリットルに塩酸(35%)1
2.5ミリリットルを加え50ミリリットルとする。こ
の液について水素化物発生−ICP−AES法(高周波
誘導結合プラズマ発光分光分析: Inductively Coupled
Plasma Atomic Emission Spectrometry)によりSe4+
濃度を測定することにより試料中のSe4+が定量でき
る。 (ロ)同じ試料液37.5ミリリットルに塩酸(35
%)12.5ミリリットル及び硝酸1ミリリットルを加
え、ビーカに移し、サンドバス上にて20ミリリットル
まで加熱濃縮する。冷却後50ミリリットルに定容す
る。この操作により試料液中のSe6+はSe4+に還元さ
れ、この処理液中のSe4+濃度を測定することにより全
セレンが定量できる。 (ハ)(ロ)の測定結果から(イ)の測定結果を差し引
いた結果がSe6+となる。
に示す。 (イ)試料液37.5ミリリットルに塩酸(35%)1
2.5ミリリットルを加え50ミリリットルとする。こ
の液について水素化物発生−ICP−AES法(高周波
誘導結合プラズマ発光分光分析: Inductively Coupled
Plasma Atomic Emission Spectrometry)によりSe4+
濃度を測定することにより試料中のSe4+が定量でき
る。 (ロ)同じ試料液37.5ミリリットルに塩酸(35
%)12.5ミリリットル及び硝酸1ミリリットルを加
え、ビーカに移し、サンドバス上にて20ミリリットル
まで加熱濃縮する。冷却後50ミリリットルに定容す
る。この操作により試料液中のSe6+はSe4+に還元さ
れ、この処理液中のSe4+濃度を測定することにより全
セレンが定量できる。 (ハ)(ロ)の測定結果から(イ)の測定結果を差し引
いた結果がSe6+となる。
【0012】測定対象溶液中のSe4+とSe6+の存在割
合が、Se6+に比べてSe4+の割合が非常に多い場合に
は、前記発明(1)の手法においても、以下に示す不具
合が生じる。発明(1)のSe4+とSe6+の分別定量法
においては、Se4+は水素化物として生成するのでその
まま酸濃度を調整し測定し定量する。そしてSe6+は溶
液を還元処理し、すべてSe4+としたうえで、セレン水
素化物として生成させ全セレンを定量し、全セレン量か
らSe4+を差し引くことによりSe6+を定量するもので
あるが、Se4+が非常に多い場合、全セレン量の測定値
はSe4+に支配されることとなり、全セレン量−Se4+
はそれぞれの測定誤差範囲となり、極微量のSe6+の測
定が困難となる。
合が、Se6+に比べてSe4+の割合が非常に多い場合に
は、前記発明(1)の手法においても、以下に示す不具
合が生じる。発明(1)のSe4+とSe6+の分別定量法
においては、Se4+は水素化物として生成するのでその
まま酸濃度を調整し測定し定量する。そしてSe6+は溶
液を還元処理し、すべてSe4+としたうえで、セレン水
素化物として生成させ全セレンを定量し、全セレン量か
らSe4+を差し引くことによりSe6+を定量するもので
あるが、Se4+が非常に多い場合、全セレン量の測定値
はSe4+に支配されることとなり、全セレン量−Se4+
はそれぞれの測定誤差範囲となり、極微量のSe6+の測
定が困難となる。
【0013】そこで、前記(2)の発明においては、S
e4+をあらかじめ分離除去し、Se 6+単独としたうえ
で、このSe6+を前記発明(1)の還元処理によりSe
4+に還元したのち、水素化物発生−ICP−AES法に
より微量のSe6+を測定するようにしている。Se4+の
分離除去法は、Se4+及びSe6+を含有する溶液にビス
ムチオールIIを添加してビスムチオールIIとSe4+
の錯体を生成させ、このビスムチオールII−Se4+錯
体をクロロホルム等の溶剤により抽出分離するものであ
る。この抽出分離によりSe4+は溶剤層へ抽出され、S
e6+は水層へ残ることになり、極微量のSe6+の定量が
可能となる。
e4+をあらかじめ分離除去し、Se 6+単独としたうえ
で、このSe6+を前記発明(1)の還元処理によりSe
4+に還元したのち、水素化物発生−ICP−AES法に
より微量のSe6+を測定するようにしている。Se4+の
分離除去法は、Se4+及びSe6+を含有する溶液にビス
ムチオールIIを添加してビスムチオールIIとSe4+
の錯体を生成させ、このビスムチオールII−Se4+錯
体をクロロホルム等の溶剤により抽出分離するものであ
る。この抽出分離によりSe4+は溶剤層へ抽出され、S
e6+は水層へ残ることになり、極微量のSe6+の定量が
可能となる。
【0014】ビスムチオールIIの化学式はC8 H5 N
2 S3 K(分子量:264.42)であり、Se4+との
当量反応によりビスムチオールII−セレン錯体を生成
する。ここでSe4+1ppm溶液50ミリリットルに必
要なビスムチオールIIの量は0.05mg÷78.9
6×264.42=0.167mgである。したがっ
て、0.1%ビスムチオールII水溶液を1ミリリット
ル添加すればビスムチオールII−セレン錯体は完全に
生成される。すなわち、ビスムチオールIIの添加量は
試料50ミリリットルに対し0.1〜1mg程度で十分
である。
2 S3 K(分子量:264.42)であり、Se4+との
当量反応によりビスムチオールII−セレン錯体を生成
する。ここでSe4+1ppm溶液50ミリリットルに必
要なビスムチオールIIの量は0.05mg÷78.9
6×264.42=0.167mgである。したがっ
て、0.1%ビスムチオールII水溶液を1ミリリット
ル添加すればビスムチオールII−セレン錯体は完全に
生成される。すなわち、ビスムチオールIIの添加量は
試料50ミリリットルに対し0.1〜1mg程度で十分
である。
【0015】
【実施例】以下、実施例により本発明の方法をさらに具
体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定され
るものではない。 (実施例1)前記発明(1)のSe4+とSe6+の分別定
量法のキーポイントは、Se6+をいかに確実にSe4+に
還元することができるかということである。したがっ
て、還元条件について種々検討したので、得られた結果
を以下に示す。
体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定され
るものではない。 (実施例1)前記発明(1)のSe4+とSe6+の分別定
量法のキーポイントは、Se6+をいかに確実にSe4+に
還元することができるかということである。したがっ
て、還元条件について種々検討したので、得られた結果
を以下に示す。
【0016】先ず、還元試薬として塩酸を使用しSe6+
をSe4+へ還元する際の、塩酸濃度と加熱時間の関係を
調べた。試験は2.5μg/50ミリリットルのSe6+
を含む試料溶液50ミリリットルに所定量の塩酸を添加
して塩酸濃度をそれぞれ0.5N、1.0N、3.0N
及び6.0Nとし所定時間煮沸した後、水素化物発生−
原子吸光法によりSe4+の定量を行い、Se4+への還元
率を算出した。結果を表1に示す。表1の結果から、S
e6+からSe4+への還元時の塩酸濃度は3Nであれば煮
沸時間は10分以上30分以下、6Nであれば5分以上
10分以下とする必要があることがわかる。
をSe4+へ還元する際の、塩酸濃度と加熱時間の関係を
調べた。試験は2.5μg/50ミリリットルのSe6+
を含む試料溶液50ミリリットルに所定量の塩酸を添加
して塩酸濃度をそれぞれ0.5N、1.0N、3.0N
及び6.0Nとし所定時間煮沸した後、水素化物発生−
原子吸光法によりSe4+の定量を行い、Se4+への還元
率を算出した。結果を表1に示す。表1の結果から、S
e6+からSe4+への還元時の塩酸濃度は3Nであれば煮
沸時間は10分以上30分以下、6Nであれば5分以上
10分以下とする必要があることがわかる。
【0017】
【表1】
【0018】表1の結果から還元条件が強すぎるとSe
6+からSe4+への還元率が低下するが、これはSe4+が
さらにSe0 にまで還元されるためであり、安定して還
元率100%を得るためにはSe4+からSe0 への還元
反応を抑制する必要がある。そのため、還元抑制剤とし
て硝酸(HNO3 )を選定し、還元操作時に硝酸を添加
させることによりその抑制効果を確認した。試験はそれ
ぞれ10μg/50ミリリットルのSe6+又はSe4+を
含む試料溶液50ミリリットルに35%塩酸50ミリリ
ットルを添加し、硝酸をそれぞれ1、3又は5ミリリッ
トル添加して45分間煮沸した後、水素化物発生−原子
吸光法によりSe4+の定量を行い、Se4+の回収量を求
めた。結果を表2に示す。
6+からSe4+への還元率が低下するが、これはSe4+が
さらにSe0 にまで還元されるためであり、安定して還
元率100%を得るためにはSe4+からSe0 への還元
反応を抑制する必要がある。そのため、還元抑制剤とし
て硝酸(HNO3 )を選定し、還元操作時に硝酸を添加
させることによりその抑制効果を確認した。試験はそれ
ぞれ10μg/50ミリリットルのSe6+又はSe4+を
含む試料溶液50ミリリットルに35%塩酸50ミリリ
ットルを添加し、硝酸をそれぞれ1、3又は5ミリリッ
トル添加して45分間煮沸した後、水素化物発生−原子
吸光法によりSe4+の定量を行い、Se4+の回収量を求
めた。結果を表2に示す。
【0019】
【表2】
【0020】表2から、Se6+からSe4+への還元操作
時にHClを添加すると同時に硝酸を添加することによ
り、Se6+→Se0 及びSe4+→Se0 のような反応を
抑制する効果が認められ安定したSe6+からSe4+への
還元結果が得られた。このことは、HCl濃度6Nで4
5分間煮沸した場合、表1に示したように還元率が38
%に低下していた現象を、硝酸を添加することによって
抑制する効果が認められる。
時にHClを添加すると同時に硝酸を添加することによ
り、Se6+→Se0 及びSe4+→Se0 のような反応を
抑制する効果が認められ安定したSe6+からSe4+への
還元結果が得られた。このことは、HCl濃度6Nで4
5分間煮沸した場合、表1に示したように還元率が38
%に低下していた現象を、硝酸を添加することによって
抑制する効果が認められる。
【0021】(実施例2)前記発明(2)においては、
多量のSe4+と少量のSe6+とを含む溶液中のSe6+量
を精度よく測定するために、先ずSe4+を分離除去し、
残留するSe6+のみを定量するようにしている。そこ
で、その効果を確認するための実験例を以下に示す。S
e4+1.0ppmの溶液にSe6+をそれぞれ0.00p
pm、0.02ppm、0.05ppm、0.1ppm
添加した液を各々50ミリリットル用意した。
多量のSe4+と少量のSe6+とを含む溶液中のSe6+量
を精度よく測定するために、先ずSe4+を分離除去し、
残留するSe6+のみを定量するようにしている。そこ
で、その効果を確認するための実験例を以下に示す。S
e4+1.0ppmの溶液にSe6+をそれぞれ0.00p
pm、0.02ppm、0.05ppm、0.1ppm
添加した液を各々50ミリリットル用意した。
【0022】この溶液を100ミリリットルの分液漏斗
に移し、HClを15ミリリットル添加した。さらにビ
スムチオールIIの0.1%水溶液を1ミリリットル添
加し、軽く攪拌した後、1分間静置し、ビスムチオール
II−Se4+錯体を生成させた。この錯体をクロロホル
ム15ミリリットルを添加し、30秒間振とうすること
により水溶液相からクロロホルム相へ抽出した。クロロ
ホルム相を捨て、念のため、再度ビスムチオールIIの
水溶液を添加して、攪拌した後にクロロホルム15ミリ
リットルを添加して、抽出操作を行いSe4+の全てをク
ロロホルム相へ移行させ、水溶液相にはSe6+のみが残
留するようにした。水溶液相を分液漏斗からビーカに移
し、さらに塩酸35ミリリットル及び硝酸を1ミリリッ
トル添加して30分間煮沸してSe6+をSe4+へと還元
した。この一連の前処理を実施後、水素化物発生−IC
P−AES法によりセレン濃度を測定し、表3に示す結
果が得られた。
に移し、HClを15ミリリットル添加した。さらにビ
スムチオールIIの0.1%水溶液を1ミリリットル添
加し、軽く攪拌した後、1分間静置し、ビスムチオール
II−Se4+錯体を生成させた。この錯体をクロロホル
ム15ミリリットルを添加し、30秒間振とうすること
により水溶液相からクロロホルム相へ抽出した。クロロ
ホルム相を捨て、念のため、再度ビスムチオールIIの
水溶液を添加して、攪拌した後にクロロホルム15ミリ
リットルを添加して、抽出操作を行いSe4+の全てをク
ロロホルム相へ移行させ、水溶液相にはSe6+のみが残
留するようにした。水溶液相を分液漏斗からビーカに移
し、さらに塩酸35ミリリットル及び硝酸を1ミリリッ
トル添加して30分間煮沸してSe6+をSe4+へと還元
した。この一連の前処理を実施後、水素化物発生−IC
P−AES法によりセレン濃度を測定し、表3に示す結
果が得られた。
【0023】
【表3】
【0024】表3に示す結果より、Se4+はビスムチオ
ールII−セレン錯体としてクロロホルム相へ分離除去
され、Se6+は水溶液中に残留し、この水溶液中に残存
するSe6+を実施例1に示した方法によりSe4+に還元
後、測定することにより、比較的Se4+が高濃度で存在
する溶液においても、極微量のSe6+の分析定量ができ
ることがわかる。
ールII−セレン錯体としてクロロホルム相へ分離除去
され、Se6+は水溶液中に残留し、この水溶液中に残存
するSe6+を実施例1に示した方法によりSe4+に還元
後、測定することにより、比較的Se4+が高濃度で存在
する溶液においても、極微量のSe6+の分析定量ができ
ることがわかる。
【0025】
【発明の効果】本発明(1)の方法によれば、Se4+及
びSe6+を含有する溶液中のSe4+及びSe6+のそれぞ
れの濃度を簡単な操作で測定することができ、しかも操
作条件に作用されず、安定した定量結果が得られる。ま
た、本発明(2)の方法によれば、Se4+の含有量に対
してSe6+の含有量が微量である場合にも、それぞれの
濃度を精度よく測定することができる。
びSe6+を含有する溶液中のSe4+及びSe6+のそれぞ
れの濃度を簡単な操作で測定することができ、しかも操
作条件に作用されず、安定した定量結果が得られる。ま
た、本発明(2)の方法によれば、Se4+の含有量に対
してSe6+の含有量が微量である場合にも、それぞれの
濃度を精度よく測定することができる。
Claims (2)
- 【請求項1】 4価及び6価セレンが溶解した溶液中の
4価セレン濃度を水素化物生成−ICP−AES法によ
り測定し、別途4価及び6価セレンが溶解した溶液に還
元剤を添加して6価セレンを4価セレンに還元し、水素
化物生成−ICP−AES法により4価セレンと6価セ
レンの合計量である全セレン濃度を測定し、得られた4
価セレン濃度と全セレン濃度から4価及び6価セレンの
各々の濃度を算出する方法であって、前記6価セレンを
4価セレンに還元する方法が4価及び6価セレンが溶解
した溶液に塩酸及び硝酸を添加して加熱する方法である
ことを特徴とする溶液中の4価及び6価セレンの分別定
量法。 - 【請求項2】 4価及び6価セレンが溶解した溶液中の
4価セレン濃度を水素化物生成−ICP−AES法によ
り測定し、別途4価及び6価セレンが溶解した溶液にビ
スムチオールIIの水溶液を添加してビスムチオールI
Iと4価セレンとの錯体を生成させ、生成した錯体を抽
出除去した後、6価セレンが溶解した抽出残液に塩酸及
び硝酸を添加して加熱することにより6価セレンを4価
セレンに還元し、水素化物生成−ICP−AES法によ
り生成した4価セレンの濃度を測定することによって6
価セレンの定量を行うことを特徴とする溶液中の4価及
び6価セレンの分別定量法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP30238197A JPH11142387A (ja) | 1997-11-05 | 1997-11-05 | 溶液中の4価及び6価セレンの分別定量法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP30238197A JPH11142387A (ja) | 1997-11-05 | 1997-11-05 | 溶液中の4価及び6価セレンの分別定量法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11142387A true JPH11142387A (ja) | 1999-05-28 |
Family
ID=17908230
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP30238197A Withdrawn JPH11142387A (ja) | 1997-11-05 | 1997-11-05 | 溶液中の4価及び6価セレンの分別定量法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH11142387A (ja) |
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006337036A (ja) * | 2005-05-31 | 2006-12-14 | Central Res Inst Of Electric Power Ind | セレンの化学形態別定量法 |
JP2008076253A (ja) * | 2006-09-21 | 2008-04-03 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | セレン分析装置及びセレン分別定量方法 |
JP2009008668A (ja) * | 2007-05-29 | 2009-01-15 | Central Res Inst Of Electric Power Ind | セレンの定量分析方法並びに定量分析システム |
JP2011047780A (ja) * | 2009-08-27 | 2011-03-10 | Hitachi High-Technologies Corp | ヒ素、セレン及びアンチモンの分別定量分析方法並びに分別定量分析システム |
JP2015007545A (ja) * | 2013-06-24 | 2015-01-15 | 国立大学法人 熊本大学 | 水溶性セレンの化学発光分析方法 |
WO2019126519A1 (en) * | 2017-12-21 | 2019-06-27 | Southern Research Institute | Continuous monitoring of selenium in water |
JP2019132702A (ja) * | 2018-01-31 | 2019-08-08 | 一般財団法人電力中央研究所 | 水溶性セレンの分析方法並びにそれを利用したセレン含有排水の排水処理システム |
JP2019203764A (ja) * | 2018-05-23 | 2019-11-28 | 一般財団法人電力中央研究所 | 重金属類の還元方法及びそれを利用した重金属類溶出量の測定方法 |
-
1997
- 1997-11-05 JP JP30238197A patent/JPH11142387A/ja not_active Withdrawn
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---|---|---|---|
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