JP3992881B2 - 火力プラント - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は発電用プラント等のボイラを含む密閉系の循環水の酸素を取り除くために、循環水へ脱酸素剤を添加する水処理手段を用いた火力プラントに関する。
【0002】
【従来の技術】
ボイラへの脱酸素剤の添加は、給水あるいはボイラ水の酸素濃度を測定しそれに必要な理論的な脱酸素剤量の数倍のを添加している。また、日本工業規格JIS-B8223はボイラ水の水質分析から酸素と未反応な脱酸素剤の濃度をある一定値以上で、循環水の水流が停止する保管時には運転時よりもはるかに高い脱酸素剤の濃度とするように推奨している。
【0003】
また、特開平10―325508号公報にはボイラ給水に特開平6―109207号公報には亜燐酸系の脱酸素剤を注入する方法の開示がある。特開平5―98476号公報には金属と水とが接触している系において、該金属の自然電位をモニタリングしてその値が孔食電位未満になるように該系に腐食抑制剤を添加する金属の腐食方法が開示されている。
【0004】
また、特開平6―109207号公報にはボイラ給水にヒドラジンを0.5〜1.5ppm注入する方法が開示されている。
【0005】
また、特開平6―109207号公報には亜燐酸塩又は次亜燐酸塩と、白金の錯体とからなる脱酸素剤が開示されているが、脱酸素剤を注入する時の濃度管理に関する開示はない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ボイラ運転時において脱酸素剤の添加量は過去の経験から理論的に必要な量の数倍を用いており、低価格化の一つの障害となっている。
【0007】
また、ボイラが運転停止した状態でのボイラ保管時には運転時以上に高い脱酸素剤の濃度でボイラの管理がなされている。それはボイラ保管時に循環水が静止した状態で、脱酸素剤の濃度の把握が難しくなるため、脱酸素剤の不足による事故予防のために多量の脱酸素剤を添加し酸素リークに対応している。 これはボイラ内に予想以上の酸素が混入する事態が発生した場合、理論上必要とされる一定量の脱酸素剤の添加では脱酸素剤が全て消費された後の残存酸素による腐食が発生することがあるためである。
【0008】
現在、脱酸素剤としてはヒドラジンが主に用いられている。ヒドラジンは毒性(ラットのLD50が59mg/kg)が強く安全衛生の観点からプラント設計等に制約を受ける。
【0009】
さらに、多量のヒドラジンを添加するとヒドラジンは高温で分解してアンモニアを生成し、復水経路に高濃度のアンモニアを含有することになりpHが上昇し、復水器の銅系材料の腐食が加速される。
【0010】
近年、該ヒドラジンに代わる各種の脱酸素剤が開発されている。しかし、それらの中には酸素との反応が複雑で、酸素と反応した後の物質濃度に基ずき、添加する脱酸素剤の濃度を管理することが困難な場合が多い。
【0011】
例えば、エルソルビン酸等は高温で分解し炭酸や硝酸等を生成しpHを低下させる。
【0012】
したがって、ヒドラジン代替えの脱酸素剤には安全衛生上の問題が少なく、かつ低価格で脱酸素剤の添加量を必要最小限にする管理方法が求められている。
【0013】
本発明の目的は、ボイラ循環水系への脱酸素剤の注入量を腐食電位を測定することで必要な脱酸素剤濃度を明らかにし、その結果を用いてより腐食の少ない火力プラントを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ボイラ、タービン、復水器及び脱気器を含み、前記復水器、脱気器及びボイラへと順次水が循環する水循環系を有する火力プラントにおいて、前記復水器の下流側で前記脱気器の手前、前記脱気器の下流側で前記ボイラの手前及び前記ボイラ内に設けられ、前記水と接している金属の腐食電位を測定する腐食電位測定手段と、前記各腐食電位測定手段の上流側で前記復水器の下流側、前記脱気器の下流側及び前記ボイラ内に設けられた脱気時の腐食電位を測定する脱気時腐食電位測定手段と、該脱気時腐食電位測定手段と前記腐食電位測定手段との間に脱酸素剤を注入する脱酸素剤注入手段とを有し、前記脱酸素剤はヒドラジンよりも低毒性であり、好ましくはラットのLD50が100mg/kg以上の脱酸素剤の濃度が前記金属の脱気時の腐食電位よりも低くすると共に、前記金属の腐食電位と未反応の前記脱酸素剤の濃度との関係から所定の前記脱酸素剤の濃度になるように前記脱酸素剤の添加量を調整する脱酸素剤濃度制御装置を有することを特徴とする火力プラントにある。
【0016】
前記の火力プラントはボイラの運転時あるいは循環水流が停止した保管時水質を管理することができる。
【0017】
前述の発明において、前記ボイラ水あるいは給水と接している金属の腐食電位を参照電極と電位差計を用いて測定し、該腐食電位と未反応な該脱酸素剤の濃度の関係から所定の該脱酸素剤の濃度に相当する腐食電位になるように該脱酸素剤の添加量を制御、あるいは監視すること、
前記金属の脱気時の腐食電位は、ボイラ水あるいは給水と接している金属の脱酸素剤を注入しない状態で定期的に測定すること、又は常時脱気時の腐食電位は脱塩器出口又は脱気器出口の脱酸素剤を含まない給水と接する部分を測定すること、又は脱塩器出口の給水にアンモニアを注入し、ボイラ水又は給水と接している金属の腐食電位を参照電極と電位差計を用いて測定する部分と同等の温度に制御し測定すること、
前記脱酸素剤は、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜リン酸塩、メチルエチルケトオキシム、エリソルビン酸、ジエチルヒドロキシルアミン、ハイドロキノン、カルボン酸アミン塩、糖類、カルボヒドラジド、グルコース、ジヒドロキシルアミンの中から選ばれる化合物であって、該化合物はヒドラジンより分子量が大きく、タンニンよりも分子量が小さく水中で酸素と反応する化合物とすることが好ましい
【0020】
【発明の実施の形態】
図2は本発明の火力プラントにおける腐食電位の測定位置を示す系統図である。
【0021】
本発明において、腐食電位を測定する場合、腐食電位の測定位置は給水系では脱酸素剤の添加位置より下流側に設けることが好ましく、脱気器4がるボイラでは3箇所の腐食電位測定位置5、6、7に設けるものである
【0022】
すなわち、復水器3より下流で脱酸素剤が添加された下流側で脱気器4手前の腐食電位測定位置5にて測定する方法、脱気器4より下流でボイラ1手前の腐食電位測定位置6で測定する方法、ボイラ1内の腐食電位測定位置7で測定する方法がある。
【0023】
また、各腐食電位測定位置の手前には脱気時の腐食電位測定位置8,9,10がありその下流側に脱酸素剤の注入ラインに取り付けられた脱酸素剤注入用バルブ11,12,13があり、その場所それぞれに脱酸素剤濃度制御装置14,15,16を設置し脱酸素剤の注入量を制御する。
【0024】
また、ボイラ1は運転時と同様に保管時にも脱酸素剤の添加がなされる。一般に保管時は水の循環がない静止保管となるが、腐食電位の測定は水の流動がなくても測定は可能であり、ボイラ停止保管時にも脱酸素剤の濃度の制御や監視も可能である。
【0025】
上記の腐食電位測定位置5、6、7のそれぞれの位置において腐食電位あるいは脱気時の腐食電位を測定する場合には、例えば次の方法がある。プラントの配管等の電位を直接測定する方法、給水等を採取し所定の水質や温度に調整した後に測定する方法である。
【0026】
図3は循環水経路の配管17の腐食電位を直接測定する方法の概略図である。
【0027】
配管17などに参照電極18を取り付け近傍の配管等17の腐食電位を電位差計19で測定する方法である。参照電極18には外部参照電極や内部参照電極があり、水素標準電位に変換できる標準電極ならどれでも良い。測定した腐食電位の信号は脱酸素剤の添加量を制御する制御装置や監視する場所へ送られる。この方法は運転時及び保管時に適用可能である。
【0028】
図4は給水等のサンプル水を採取し所定の環境に制御し測定する方法の概略図である。
【0029】
図4は測定箇所のサンプル水を取り出し圧力容器20内で金属の腐食電位を測定する方法である。図3の方法が不可能な場合は、測定したいボイラ水あるいは給水を抽出し圧力容器20に導き試験片22の腐食電位を参照電極21と電位差計23を用いて測定する。電位差計23で測定した信号は脱酸素剤の添加量の制御や監視する制御装置へ送られる。この方法はボイラ運転時及び保管時に適用可能である。ボイラの停止保管時に適用するには圧力容器20内のサンプル水をボイラ水と同様な水質にするため、ポンプ等をとりつけサンプル水を循環させる必要がある。ここで、試験片22の材質は高温水中で腐食電位が測定できるものであればよく、特に限定されない。
【0030】
本発明によれば、ボイラ水あるいは給水に接する金属の腐食電位を測定し、その電位を脱気時の腐食電位よりも低く管理する。詳しくは、脱気時と脱酸素剤添加時の電位差の関係から、脱酸素剤を適切な濃度でボイラの運転管理することでボイラの酸素による腐食を抑制するボイラの運転管理方法である。
【0031】
また、脱酸素剤を過多なく脱酸素剤を添加し、余剰な脱酸素剤のコストを抑制、脱酸素剤と酸素の反応が複雑な場合や、異なる種類の脱酸素剤を混合して添加した場合などに、未反応物質濃度の管理が難しい場合も脱気時と脱酸素剤添加時の電位差の関係から、未反応の脱酸素剤濃度を腐食電位で管理することができる。
【0032】
さらに、ボイラ静止保管時に脱酸素剤濃度の把握が従来困難であったが、配管等の腐食電位を停止時に測定することで可能となり、従来非常に高濃度な脱酸素剤が添加されていたが、それを削減することができ脱酸素剤による価格を抑制できる。この時、使用される脱酸素剤は水中で酸素と反応し脱気時よりも腐食電位が低下する物質は全て適用できる。
【0033】
これらに対し、本発明である腐食電位を脱気時の腐食電位よりも低くし運転することで、脱酸素剤の反応が複雑であっても腐食電位で脱酸素剤の濃度を制御して対応できる。
【0034】
また、何かの原因でボイラ内に酸素のリークが発生しボイラ水の酸素濃度が高くなっても、腐食電位を管理することによりすぐに脱酸素剤の添加量を増すことで対応でき、酸素による腐食を回避できる。
【0035】
金属の腐食電位を測定することで循環水系の水の酸化雰囲気あるいは還元雰囲気を検知することができる。純水を不活性なガスで置換した環境で測定した腐食電位と酸素などの酸化作用のある物質が存在する場合、腐食電位は貴側に変化する。逆にヒドラジンなどの還元作用のある物質が存在する場合は卑側に変化する。
【0036】
ボイラの水処理に酸素除去を目的として使用されているあらゆる脱酸素剤は金属の腐食電位を脱気時の腐食電位よりも低くする効果がある。
【0037】
本発明で脱酸素剤濃度と脱気時と脱酸素剤添加時の腐食電位差の関係から、目的とする脱酸素剤濃度に腐食電位を監視して添加量を制御することができる。
【0038】
さらに、酸化剤となる溶存酸素が微量でも存在すると著しく腐食電位は上昇し、脱酸素剤が不足していることが瞬時に検知可能でより安全な運転管理が可能となる。つまり、ボイラの運転時及び保管時にボイラ水あるいは給水に接する配管等の腐食電位を測定することで、適正な脱酸素濃度に制御あるいは監視できる ボイラ運転管理方法を提供できる。
【0039】
本発明において、ヒドラジンよりも低毒性であるラットのLD50が100mg/kg以上の脱酸素剤としては、例えばメチルケチルオキシム:LD50が3100mg/kg、ジヒドロキシルアミン:LD50が2190mg/kg及び亜硫酸ナトリウム:毒性無し、等が挙げられる。
【0040】
【実施例1〜6】及び【比較例1〜12】
表1は脱酸素剤(化合物)の種類と添加条件および100時間経過後の炭素鋼の腐食電位を示す。
【0041】
【表1】
Figure 0003992881
【0042】
腐食電位測定試験は、試験部の水質を制御できる循環式のオートクレーブ装置を用いた。試験片は炭素鋼(STB−35)を用いた。試験温度は300℃、給水のpHはアンモニアを用いてpH9.5に調整し溶存酸素濃度は<1ppbとした。 表1の結果を図1に示す。
【0043】
図1は炭素鋼の脱酸素剤添加時における腐食電位変化を示す。比較例1は他の測定値の基準となる値で、給水の酸素濃度1ppb以下で脱酸素剤未添加の条件である。その値は100時間経過後では−481mV(vs SHE)でほぼ安定していた。図中では基準となる腐食電位の差は0である。
【0044】
実施例1、2は亜硫酸ナトリウムを添加した場合である。酸素濃度400ppbと理論的に反応する濃度を添加した実施例2の腐食電位は、脱気時の比較例1と比較し約180mV低い。
【0045】
比較例2、3はヒドラジンを添加した場合である。酸素濃度400ppbと理論的に反応する濃度を添加した比較例3の場合は、比較 1に比較し約93mV低い。
【0046】
実施例3、4はカルボヒドラジドを添加した場合の結果である。酸素消費可能濃度400ppbと理論的に反応する濃度を添加した実施例4 腐食電位は比較例1に比較し205mV低い。
【0047】
実施例5、6はグルコースを添加したときの結果である。酸素消費可能濃度500ppbと理論的に反応する濃度を添加した実施例6ときの腐食電位は、比較例1に比較し107mV低い。比較例4は酸素濃度35ppb添加し測定した結果である。腐食電位は比較例1に比較し217mV高い。
【0048】
以上の結果から脱酸素剤が添加されると脱気時の腐食電位よりも低くなり、添加量と低下する電位は脱酸素剤により異なる。 したがって、未反応な脱酸素剤が存在すると脱気時の腐食電位よりも低い値を示し、脱酸素剤の濃度と脱酸素剤の添加時と未添加時の腐食電位差には相関性があり、この腐食電位差を測定し脱酸素剤の濃度を制御あるいは監視することができる。
【0049】
さらに、比較例2のように溶存酸素が存在すると著しく腐食電位は上昇し、脱酸素剤が不足している場合も直ちに検知可能である。
【0050】
以上の手法は脱気時の腐食電位が経時変化する場合である。この手法以外に、制御したい水の水質が常に一定で脱気時の腐食電位に変化がない場合は、一定の電位になるように脱酸素剤の添加を制御することもできる。
【0051】
表2は炭素鋼(STB−35),低合金鋼(STBA−22), ステンレス鋼(SUS304)を用いて脱酸素剤の有無による腐食電位の変化を測定した実験条件とその結果である。
【0052】
【表2】
Figure 0003992881
【0053】
試験は温度300℃、給水のpHはアンモニアを用いてpH9.5に調整し溶存酸素は<1ppbとした。
【0054】
脱酸素剤にはヒドラジンを用い消費可能な酸素濃度200ppb相当を添加し、100時間経過後の腐食電位を測定した。脱酸素剤の未添加の腐食電位を比較すると、比較例5の低合金鋼は比較例1の炭素鋼の腐食電位よりも約28mV高い、−4610mV(VS SHE)であった。
【0055】
比較例7のス テ ン レ ス鋼は比較例1の炭素鋼より約130mV高い−351mV( VS SHE)であった。同じ材質で脱酸素剤の有無で比較すると、炭素鋼である比較例2は比較例1と比較し70mV低くなっている。低合金鋼である比較例6は比較例5と比較し63mV低くなっている。ステンレス鋼である比較例8は比較例7と比較し75mV低くなっている。以上のことから、どの材質でも未添加時と比較し63〜75mV低い値となりあまり差がないことがわかる。また、材質が異なり脱気時の腐食電位が異なっても、脱酸素剤が添加されるとその腐食電位は低下する。
【0056】
表3は炭素鋼を用いて脱酸素剤の有無による腐食電位の変化を温度を変えて調べた実験条件とその結果である。
【0057】
【表3】
Figure 0003992881
【0058】
試験温度は100,200,300℃、給水のpHはアンモニアを用いてpH9.5に調整し溶存酸素は<1ppbとした。脱酸素剤にはヒドラジンを用い消費可能な酸素濃度200ppb相当を添加し、100時間経過後の腐食電位を測定した。試験温度が100℃である比較例10は未添加の比較例9に比較し腐食電位が55mV低い。試験温度200℃でる比較例12と未添加の比較例11と比べると腐食電位が62mV低い。試験温度が300℃である実施例2は未添加の比較例1と比較し腐食電位が70mV低くい。以上から何れの温度領域でも脱酸素剤を添加すると腐食電位は低下するが、温度が低いほど脱酸素剤の添加時における腐食電位の低下は小さい。
【0059】
表4は炭素鋼を用いて脱酸素剤の有無による腐食電位の変化をpHを変えて調べた実験条件とその結果である。
【0060】
【表4】
Figure 0003992881
【0061】
試験温度は300℃、給水のpHはアンモニアを用いてpHを調整し溶存酸素は<1ppbとした。試験は脱酸素剤のヒドラジンを消費可能な酸素濃度200ppb 相当を添加し100時間経過後の腐食電位を測定した。試験pH8.0である比較例14を未添加の比較例13と比較すると腐食電位が72mV低い。試験pH9.5である比較例2は比較例1と比較し腐食電位が70mV低い。以上から弱アルカリ領域において脱酸素剤を添加すると腐食電位は低下し、その傾向は中性付近ほど大きい。
【0062】
また、脱酸素剤を薬液タンクから注入する場合、常温で反応が速い物質はタンクの酸素リークにより薬液タンク内で反応が進み脱酸素剤が消費されるため、有効に働く脱酸素剤の濃度が低下している場合がある。このような状態でもボイラ水あるいは給水に接している金属の腐食電位を測定することで脱酸素剤の濃度を適切に制御できる。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、ボイラ水あるいは給水に接している金属の腐食電位を酸素が存在しない脱気環境で腐食電位を測定し、その腐食電位よりも低い腐食電位になるように脱酸素剤の濃度を制御できる。
【0064】
各脱酸素剤の濃度と腐食電位の関係は、測定する金属及びその温度pHやその他に水に溶解している物質に左右される。
したがって、実機に適用する場合は実機と同一の環境で脱気時の腐食電位を測定し、その後脱酸素剤を添加し脱酸素剤と腐食電位の関係を明らかにし調整したい脱酸素剤の濃度に対応する腐食電位になるように脱酸素剤を添加する。この脱酸素剤と腐食電位の関係を実機で行う場合は、脱酸素剤の分析値と照らし合わせて行うか、あるいは実際に脱気時の腐食電位を測定し、その後脱酸素剤を添加し腐食電位と脱酸素濃度の関係を求めることより達成できる。
【0065】
本発明は、従来経験に頼っていた脱酸素剤の注入量を腐食電位を測定することで簡便に必要な脱酸素剤濃度を明らかにし、その結果を用いて適切に脱酸素剤の注入量を決定できるボイラの管理方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】炭素鋼の脱酸素剤添加時における腐食電位変化を示す。
【図2】実機ボイラにおける腐食電位の測定位置を示す火力プラントの系統図。
【図3】配管等の腐食電位を直接測定する方法を示す概略図。
【図4】ボイラ水および給水を抽出して測定する方法を示す概略図。
【符号の説明】
1…ボイラ、2…タービン、3…復水器、4…脱気器、5腐食電位測定位置、6…腐食電位測定位置、7…腐食電位測定位置、8…脱気時の腐食電位測定位置、9…脱気時の腐食電位測定位置、10…脱気時の腐食電位測定位置、11…脱酸素剤注入用バルブ、12…脱酸素剤注入用バルブ、13…脱酸素剤注入用バルブ、14…脱酸素剤濃度制御装置、15…脱酸素剤濃度制御装置、16…脱酸素剤濃度制御装置、17…配管、18…参照電極、19…電位差計、20…圧力容器、21…参照電極、22…電位を測定する試験片、23…電位差計。

Claims (3)

  1. ボイラ、タービン、復水器及び脱気器を含み、前記復水器、脱気器及びボイラへと順次水が循環する水循環系を有する火力プラントにおいて、前記復水器の下流側で前記脱気器の手前、前記脱気器の下流側で前記ボイラの手前及び前記ボイラ内に設けられ、前記水と接している金属の腐食電位を測定する腐食電位測定手段と、前記各腐食電位測定手段の上流側で前記復水器の下流側、前記脱気器の下流側及び前記ボイラ内に設けられた脱気時の腐食電位を測定する脱気時腐食電位測定手段と、該脱気時腐食電位測定手段と前記腐食電位測定手段との間に脱酸素剤を注入する脱酸素剤注入手段とを有し、前記脱酸素剤はヒドラジンよりも低毒性であり、その濃度を前記金属の脱気時の腐食電位よりも低くすると共に、前記金属の腐食電位と未反応の前記脱酸素剤の濃度との関係から所定の前記脱酸素剤の濃度になるように前記脱酸素剤の添加量を調整する脱酸素剤濃度制御装置を有することを特徴とする火力プラント。
  2. 請求項1において、前記各腐食電位測定手段が参照電極と電位差計とを有することを特徴とする火力プラント。
  3. 請求項1又は2において、前記脱酸素剤は、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜リン酸塩、メチルエチルケトオキシム、エリソルビン酸、ジエチルヒドロキシルアミン、ハイドロキノン、カルボン酸アミン塩、糖類、カルボヒドラジド、グルコース、ジヒドロキシルアミンの中から選ばれる化合物であって、該化合物はヒドラジンより分子量が大きく、タンニンよりも分子量が小さく水中で酸素と反応する化合物であることを特徴とする火力プラント。
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