JP6976629B2 - 層状複水酸化物結晶の製造方法 - Google Patents

層状複水酸化物結晶の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、層状複水酸化物結晶の製造方法に関し、特に、水中あるいは地中の有害アニオンを除去するための層状複水酸化物結晶の製造方法に関する。
本願は、2019年12月10日に、日本に出願された特願2019−223077号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
層状複水酸化物(Layered Double Hydroxides:LDHs)は、アニオン交換性の無機イオン交換体であり、金属酸化物(ホスト層)と、アニオン種や水分子(ゲスト層)とが交互に積層した構造からなる層状無機化合物である。ゲスト層のアニオン種は,層状構造を維持したまま,溶液中のアニオン種と交換できるため、層間(二次元空間)を利用した高選択的イオン交換性を示すことが分かっている。
従来、LDHsの選択的イオン交換性は多く議論されており、例えば、水溶液から硝酸イオン、リン及びヒ素を同時かつ選択的に吸着できる吸着剤として、Mg−Al系ハイドロタルサイトを有する吸着剤が考案されている(特許文献1参照)。
特開2009−178682号公報
現在、世界で11億人余りの人々が安全な飲料水を取得するのが困難な状況であり、また、近年大規模な天災地変が増加傾向にあることから、災害発生の際の緊急時における安全な水の確保が急務であるところ、未だ具体的な解決策が見出されていない。このような社会的問題が生じる背景としては、工業排水によって様々な国や地域で土壌の汚染が進行したり、あるいは、農業肥料の散布によってその農業肥料が地下水に混入してしまうといった実情がある。特に、工業排水や農業肥料から生じるフッ化物イオンやヒ化物イオンなどの有害アニオン種は、人体に蓄積して大きな影響を与えることから、有害アニオン種を十分に除去可能な層状複水酸化物が求められている。
しかしながら、上記のようなLDHs結晶の一般的な合成手法である沈殿法では、合成温度が室温〜80℃程度と比較的低温であり、結晶が十分に成長できず、nmサイズの結晶粒子が多数形成される。このため、水中や湿潤雰囲気中では結晶粒子同士が凝集し易く、その結果LDHsのイオン交換容量が低下し、十分なイオン交換能が得られないという問題がある。
また、安全な飲料水の取得が急務である新興国においては、LDHs結晶の原料となる金属が希少である場合、その金属の入手が困難であり、製造コストが増大することから、当該国でLDHs結晶を工業的に製造することは難しい。例えばアフリカのタンザニアではコバルトが希少で高価であることから、コバルトを用いたLDHs結晶を量産することは極めて困難である。そこで、コバルト等の入手困難な金属を、鉄などの入手容易な金属で代替して、低コストで製造することができるLDHs結晶が強く望まれている。
また、上記のような新興国では、後処理工程である加水分解処理で使用される強アルカリ水溶液や、塩化物イオン等への置換工程で使用される強酸水溶液の入手も困難である場合が多く、且つ高価であることから、LDHs結晶の原材料のみならず、製造時に使用される処理剤も入手が容易でより安価なものに代替することができる製法が望まれている。
本発明の目的は、特定アニオン種に対して高いイオン交換能を実現しつつ、低コストを実現することができる層状複水酸化物結晶の製造方法を提供することにある。
本発明者は、鋭意研究の結果、安価で入手容易なFe源物質を用い、Na源となるNa源物質を、前駆体結晶の化学量論比よりも多く含有する原料を加熱して、フラックス法で前駆体結晶を製造すると、従来とは異なる平板状の積層構造を有する前駆体結晶を形成できることを見出した。また、得られた前駆体結晶にイオン交換処理を施すと、前駆体結晶の平板状の積層構造が維持され、その結果、平板状の積層構造を有する層状複水酸化物結晶を高い分散性で得ることができることを見出した。特に、本発明者は、得られた層状複水酸化物結晶がフッ化物イオンなどの特定アニオン種に対して極めて高いイオン交換能を有することを見出した。
すなわち、本発明の要旨構成は以下の通りである。
[1]前駆体結晶の化学量論比に基づいて混合されたNi源物質、Fe源物質及びNa源物質の混合物に、更にNa源物質を加えて調製された原料を準備する工程と、
前記原料を600℃〜1000℃、1時間以上で加熱して、NaNi1−xFe結晶(0.25<x≦0.9)で構成される前駆体結晶を生成する工程と、
前記前駆体結晶のナトリウムイオンを塩化物イオンに置換するイオン置換工程と、
を有する、層状複水酸化物結晶の製造方法。
[2]前記前駆体結晶を生成する工程の後、かつ前記イオン置換工程の前に
前記前駆体結晶を加水分解する工程と、
前記前駆体結晶の加水分解によって得られた結晶を還元処理する工程と、を有し、
前記イオン置換工程は、前記還元処理によって得られた結晶の層間に位置する炭酸イオンを塩化物イオンに置換する、上記[1]に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
[3]化学量論比における前記Na源物質の含有量100mol%に対して過剰とするNa源物質の量が、1mol%以上50mol%以下である、上記[1]に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
[4]前記原料中の前記Na源物質は、NaNOで構成される、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
[5]前記原料中の前記Na源物質は、前記前駆体結晶の化学量論比に基づいて混合されたNaNOと、更に加えられたNaCOとで構成される、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
[6]前記原料中の前記Na源物質におけるNaNOの含有量は、5mol%以上15mol%以下であり、NaCOの含有量は、1mol%以上10mol%以下である、上記[4]に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
[7]前記前駆体結晶を生成する工程において、
700℃までは昇温速度120℃/h以上600℃/h以下、700℃を超え800℃までは昇温速度20℃/h以上180℃/h以下で加熱し、
保持温度750℃以上900℃以下、保持時間0.5時間以上12時間以下で保持し、300℃まで冷却速度50℃/h以上300℃/h以下で冷却する、上記[1]に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
[8]前記前駆体結晶を加水分解する工程において、水で前記前駆体結晶を加水分解する、上記[2]に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
[9]固液比30mL/g以上2L/g以下、撹拌時間10時間以上24時間以下、撹拌温度5℃以上50℃以下で、前記前駆体結晶を加水分解する、上記[8]に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
[10]前記水は、水道水、純水又は超純水である、上記[9]に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
[11]前記結晶を還元処理する工程において、前記結晶を塩の溶液に浸漬して1回のバッチ処理で還元処理する、上記[2]に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
[12]固液比30mL/g以上2L/g以下、撹拌時間10時間以上24時間以下、撹拌温度5℃以上50℃以下で、前記結晶を還元処理する、上記[11]に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
[13]前記塩は、強酸と強アルカリの塩である、上記[11]に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
[14]前記イオン置換工程において、前記還元処理によって得られた結晶を塩の水溶液に浸漬する、上記[2]に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
本発明によれば、特定アニオン種に対して高いイオン交換能を実現しつつ、低コストを実現する層状複水酸化物結晶の製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る層状複水酸化物結晶の製造方法の一例を示すフローチャートである。 図2(a)〜図2(d)は、図1の層状複水酸化物結晶の各工程を説明するための模式図である。 図3は、層状複水酸化物結晶を構成する一の結晶粒の構成を示す模式図である。 図4は、本発明の第2実施形態に係る層状複水酸化物結晶の製造方法の一例を示すフローチャートである。 図5は、図4の層状複水酸化物結晶の各工程を説明するための模式図である。 図6は、実施例1で得られた前駆体結晶、加水分解処理後の結晶、還元処理後の結晶及び塩化物イオン置換後の結晶を、粉末X線回折(XRD)法で回折強度を測定した結果を示すグラフである。 図7(a)及び図7(b)は、実施例1で得られた前駆体結晶の構成を示す電子顕微鏡画像である。 図8(a)及び図8(b)は、実施例1で得られた層状複水酸化物結晶の構成を示す電子顕微鏡画像である。 図9は、実施例1で得られた層状複水酸化物結晶の粒度分布の測定結果を示すグラフである。 図10は、実施例2で得られた前駆体結晶、加水分解処理後の結晶、還元処理後の結晶及び塩化物イオン置換後の結晶を、粉末X線回折(XRD)法で回折強度を測定した結果を示すグラフである。 図11(a)及び図11(b)は、実施例2で得られた前駆体結晶の結晶粒の構成を示す電子顕微鏡画像である。 図12(a)及び図12(b)は、実施例2で得られた層状複水酸化物結晶の構成を示す電子顕微鏡画像である。 図13は、実施例2で得られた層状複水酸化物結晶の粒度分布の測定結果を示すグラフである。 図14は、実施例1の加水分解処理後の結晶と、実施例3の加水分解処理後の結晶とを、粉末X線回折(XRD)法で回折強度を測定して比較した結果を示すグラフである。 図15は、実施例2の加水分解処理後の結晶を、粉末X線回折(XRD)法で回折強度を測定した結果を示すグラフである。 図16は、実施例1の塩化物イオン置換後の結晶と、実施例5の塩化物イオン置換後の結晶とを、粉末X線回折(XRD)法で回折強度を測定して比較した結果を示すグラフである。 図17は、実施例2の塩化物イオン置換後の結晶と、実施例6の塩化物イオン置換後の結晶とを、粉末X線回折(XRD)法で回折強度を測定して比較した結果を示すグラフである。 図18は、実施例7で得られた層状複水酸化物結晶を用いた際のフッ化物イオン濃度の経時変化を示すグラフである。 図19は、実施例1で得られたLDHs結晶にフッ化物イオンを繰り返して吸着させた場合の各サイクルにおけるフッ化物イオン除去率を示すグラフである。 図20は、実施例2で得られたLDHs結晶にフッ化物イオンを繰り返して吸着させた場合の各サイクルにおけるフッ化物イオン除去率を示すグラフである。 図21は、実施例8で得られたLDHs結晶にフッ化物イオンを繰り返して吸着させた場合の各サイクルにおけるフッ化物イオン除去率を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。このため、各構成要素の寸法比率などは、実際とは異なっている場合がある。また本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、異なる実施形態の特徴的な構成をそれぞれ組み合わせてもよい。
(第1実施形態)
[層状複水酸化物結晶の製造方法]
図1は、本発明の実施形態に係る層状複水酸化物結晶の製造方法の一例を示すフローチャートである。図2(a)〜図2(d)は、図1の層状複水酸化物結晶の各工程を説明するための模式図である。
本実施形態の層状複水酸化物結晶の製造方法は、原料準備工程、前駆体結晶生成工程、加水分解工程、還元処理工程、及びイオン置換工程、を有する。但し、本実施形態の製造方法の各工程の前後に、他の処理工程を有してもよい。
先ず、後述する前駆体結晶の化学量論比に基づいて混合されたNi源物質、Fe源物質及びNa源物質の混合物に、更にNa源物質を加えて調製した原料を準備する(ステップS11)。
Ni源物質としては、例えば、NiO、Ni(OH)、Ni(NO)、Ni(NO)・6HO、NiCO、NiSO、NiSO・6HO、NiClNiCl・6HO、(HCOO)Ni、(HCOO)Ni・2HO、CNi、CNi・2HO、(CHCOO)Ni、(CHCOO)Ni・4HO、Ni(CHCOCHCOCH)、Ni(CHCOCHCOCH)・xHO、NiCO、NiCO・xHO、(NHNi(SO)、(NHNi(SO)・6HO、Niを挙げることができる。
Fe源物質としては、例えば、Fe、FeO、Fe(OH)、Fe(OH)、Fe(NO、FeSO、Fe(SO、FeCl、FeCl、FeC、Fe(C、Fe(CHCOO)、Fe(CHCOO)、Fe(CHCOCHCOCH)、Fe(CHCOCHCOCH、FeCO、Fe(CO、(NHFe(SO)、(NHFe(SO)及びこれらの水和物、Feを挙げることができる。
Na源物質としては、例えば、NaNO、NaCO、NaSO、NaSO・10HO、NaSO、NaCl、CHCOONa、CHCOONa、CHCOONa・3HO、CNa、CNa、CNa・2HO、NaHCOを挙げることができる。上記原料中のNa源物質の含有量は、前駆体結晶の化学量論比に基づく含有量よりも過剰であるのが好ましく、化学量論比におけるNa源物質の含有量100mol%に対して過剰とする量は、1mol%以上50mol%以下であるのがより好ましく、3mol%以上25mol%倍以下であるのが更に好ましく、5mol%以上15mol%以下であるのが特に好ましい。
上記原料中のNa源物質は、上記化合物のうちの1種又は複数種で構成される。例えば、上記混合物中のNa源物質は、NaNOで構成されてもよい。この場合、前駆体結晶の化学量論比に基づいて混合されたNiNOを含む混合物に、更にNaNOを加えたものを原料とする。
また、上記原料中のNa源物質は、前駆体結晶の化学量論比に基づいて混合されたNaNOと、更に加えられたNaCOとで構成されてもよい。この場合、前駆体結晶の化学量論比に基づいて混合されたNOを含む混合物に、更にNaCOを加えたものを原料とする。上記原料中のNa源物質におけるNaNOの含有量は、1mol%以上50mol%以下であるのが好ましく、3mol%以上25mol%以下であるのがより好ましく、5mol%以上15mol%以下であるのが更に好ましい。また、上記原料中のNa源物質におけるNaCOの含有量は、1mol%以上10mol%以下であることが好ましい。
次に、前記原料を600〜1000℃、1時間以上で加熱して、NaNi1−xFe結晶(0.25<x≦0.9)で構成される前駆体結晶を生成する(ステップS12、図2(a))。このように高温溶融塩を用いて結晶育成する方法はフラックス法と称することができ、本実施形態ではフラックス法により前駆体結晶を生成する。また、前駆体結晶として、好ましくは0.5<x≦0.85、より好ましくは0.6<x≦0.80となるように、NaNi1−xFe結晶を生成することができる。これにより、自形の発達した高結晶性粒子をマイクロオーダーで育成することができ、複数の板状結晶が積層された積層構造を有する前駆体結晶を得ることができる。
この前駆体結晶生成工程では、具体的には、上記原料を昇温、保持及び冷却して、上記前駆体結晶を生成することができる。本前駆体結晶生成工程における昇温条件及び冷却条件は、例えば昇温速度45℃/h〜1600℃/h、保持温度700〜1000℃、保持時間0.1〜20時間、冷却速度0.1〜60000℃/h、停止温度500℃以下、放冷温度は例えば室温である。
この前駆体結晶生成工程において、例えば、(1)加熱開始から700℃までは昇温速度120℃/h以上600℃/h以下で加熱し、700℃を超え800℃までは昇温速度20℃/h以上180℃/h以下で加熱し、次いで(2)保持温度750℃以上900℃以下、保持時間0.5時間以上12時間以下で保持し、その後(3)300℃まで冷却速度50℃/h以上300℃/h以下で冷却することができる。
その後、NaNi1−xFe結晶で構成される前駆体結晶を加水分解する(ステップS13、図2(b))。加水分解処理の方法は、例えば、アルカリ溶液を用いて上記前駆体結晶を酸化的加水分解することができる。アルカリ溶液は、特に制限はないが、例えば、次亜塩素酸とナトリウム(NaClO)や、水酸化カリウム(KOH)を含むことができる。
また、アルカリ溶液に代えて、水を用いて前駆体結晶を加水分解処理することが好ましい。これにより、アルカリ溶液を用いる場合と比較して、容易に入手でき且つ安価な処理剤で加水分解処理を行うことができる。水で加水分解処理を行う場合、例えば、固液比30mL/g以上2L/g以下、撹拌時間10時間以上24時間以下、撹拌温度5℃以上50℃以下とすることができる。またこの固液比は、1L/g以下であってもよい。水に含まれる不純物が最終生成物である層状複水酸化物結晶の組成に影響を与えることから、加水分解処理に用いられる水は、純水又は超純水であるのが好ましいが、所望のイオン交換能を示す層状複水酸化物結晶が得られる限り、ある程度の不純物を含有する水道水等の水であってもよい。本加水分解処理工程により、前駆体結晶における複数の板状結晶の形状が維持された状態で、隣接する板状結晶同士の間隔が拡大する。
次いで、上記前駆体結晶の加水分解によって得られた結晶を還元処理する(ステップS14、図2(c))。還元処理の方法は、例えば、塩の溶液を用いて還元処理することができる。溶液は、例えば過酸化水素(H)を含むことができる。上記塩は、特に制限はないが、例えば塩酸(HCl)などの強酸と、水酸化ナトリウム(NaOH)などの強アルカリとの塩である。また、より簡便に処理を行う観点から、上記結晶を塩の溶液に浸漬して1回のバッチ処理で還元処理することができる。1回のバッチ処理で還元処理を行う場合、例えば固液比30mL/g以上2L/g以下、撹拌時間10時間以上24時間以下、撹拌温度5℃以上50℃以下とすることができる。またこの固液比は、1L/g以下であってもよい。これにより、上記結晶を塩の溶液に浸漬して3回のバッチ処理を行う場合と比較して、より簡便な工程、作業で還元処理を行うことができる。本還元処理工程により、加水分解処理後の複数の板状結晶の形状及び位置が維持された状態で、金属水酸化物層間に炭酸イオンが保持される。
その後、上記還元処理によって得られた結晶の層間に位置する炭酸イオンを塩化物イオンに置換処理する(ステップS15、図2(d))。この置換処理の方法は、例えば、上記還元処理によって得られた結晶を塩と強酸の水溶液に浸漬する。塩は、例えば、水酸化ナトリウムなどの強酸と、塩酸などの強アルカリとの塩である。強酸は、例えば塩酸である。また、より簡便に処理を行う観点から、上記還元処理によって得られた結晶を、強酸を含まない塩の溶液に浸漬して置換処理することができる。この置換処理を行う場合、例えば固液比30mL/g以上1L/g以下、撹拌時間10時間以上24時間以下、撹拌温度5℃以上50℃以下とすることができる。本イオン置換工程により、還元処理後の複数の板状結晶の形状及び位置が維持された状態で、金属水酸化物層間に塩化物イオンが保持され、これにより、後述する式(1)で表される層状複水酸化物結晶を有する結晶粒が得られる。
[層状複水酸化物結晶の構成]
図3は、層状複水酸化物結晶を構成する一の結晶粒の構成を示す模式図である。
層状複水酸化物結晶1(以下、LDHs結晶ともいう)は、下記式(1)で表され、また、図3に示すように、複数の板状結晶11,11,…が積層された積層構造を有する結晶粒10の複数で構成され、かつ、複数の結晶粒10,10,…の粒径が、マイクロスケールで揃っている。
[Ni2+ 1−xFe3+ (OH)]・[(ClX/2] …(1)
(ここで、0.25<x≦0.9)
層状複水酸化物結晶1は、無水物であってもよいし、あるいは、少量の水(HO)を含んでいる水和物であってもよい。
隣接する板状結晶11,11の間には層状空間12が形成されており、複数の板状結晶11,11,…と複数の層状空間12,12,…とが交互に配されている。
結晶粒10を拡大して観察すると、板状結晶11は、薄板状結晶あるいはシート状結晶とも称することができる。板状結晶11は、サブミクロンオーダーの厚みを有しており、層状空間12も、サブミクロンオーダーの間隔を有している。これら複数の板状結晶11,11,…が数〜数十層で積層されてなる積層構造によって結晶粒10が構成されている。板状結晶11の幅方向の粒径あるいは円相当径は、0.1μm〜300μmであり、好ましくは0.5μm〜100μm、より好ましくは1.0μm〜50μmである。
結晶粒10は、アニオン交換性の無機イオン交換体であり、ホスト層(金属水酸化物)とゲスト層(アニオン種や水分子)が交互に積層した構造からなる層状無機化合物とも称することができる。ゲスト層のアニオン種は、層状構造を維持したまま、溶液中のアニオン種と交換できるため、層間(二次元空間ともいう)を利用した高選択的なイオン交換性を示す。
上記(1)式のうち、Ni2+は全部置換に限らず、一部置換であってもよい。また、Fe3+も同様、全部置換に限らず、一部置換であってもよい。
また、上記(1)式におけるxの範囲は、0.5≦x≦0.85が好ましく、0.6≦x≦0.8がより好ましい。この場合、層状複水酸化物結晶におけるNi2+の含有量が更に減少する。よって、製造時に使用されるNi源物質を少量にすることができ、層状複水酸化物結晶1の製造コストを更に低減することができる。
層状複水酸化物結晶1は、上記式(1)で表され、複数の板状結晶11が積層された積層構造を有する結晶粒10の複数で構成され、かつ複数の結晶粒10,10,…の粒径がマイクロスケールで揃っているので、従来よりも高い分散性を有し、これにより高いイオン交換能を実現することができる。したがって、例えば水中や湿潤雰囲気中でも結晶粒10同士が凝集し難く、その結果層状複水酸化物結晶1のイオン交換容量が増大し、十分なイオン交換能を得ることができる。特に、工業排水や農業肥料から生じるフッ化物イオンやヒ化物イオンなどの有害アニオン種を、簡便且つ十分に除去することができる。
上述したように、本実施形態によれば、前駆体結晶の化学量論比に基づいて混合されたNi源物質、Fe源物質及びNa源物質の混合物に、更にNa源物質を加えて調製された原料を、600℃〜1000℃、1時間以上で加熱して、NaNi1−xFe結晶(0.25<x≦0.9)で構成される前駆体結晶を生成するので、マイクロスケールで従来よりも高い分散性を有する前駆体結晶を育成することができ、その結果、従来よりも高いイオン交換能を有する層状複水酸化物結晶1を製造することができる。
また、前駆体結晶を生成する工程において、原料中のNa源物質の含有量が化学量論比通りである場合、前駆体結晶の粒子が硝酸系のガスの発生によって反応容器から飛び出したり、或いは結晶粒子の飛び出しを防止するための蓋が反応容器と固着してしまい、これらを分離しなければならないことから、前駆体結晶の収率が低下したり作業が煩雑となる場合がある。本発明によれば、原料中のNa源物質の含有量を化学量論比よりも多くすることで、Na源物質が溶媒としての作用を奏し、反応容器から結晶粒子が飛び出すのを抑制することができ、また、蓋の設置も不要となり、高い収率且つ簡便な作業で前駆体結晶を得ることができる。
(第2実施形態)
上記態様に係る層状複水酸化物結晶は、第2実施形態に係る層状複水酸化物結晶の製造方法でも製造できる。
図4は、第2実施形態に係る層状複水酸化物結晶の製造方法の一例を示すフローチャートである。図5は、図4の層状複水酸化物結晶の各工程を説明するための模式図である。
本実施形態の層状複水酸化物結晶の製造方法は、原料準備工程、前駆体結晶生成工程、浸漬工程及びイオン置換工程を有する。但し、本実施形態の製造方法の各工程の前後に、他の処理工程を有してもよい。
原料準備工程(ステップS21)及び前駆体結晶生成工程(ステップS22、図5(a))は、第1実施形態と同様の方法で行うことができる。
その後、例えば前駆体結晶生成工程で得られたNaNi1−xFe結晶で構成される前駆体結晶を水に浸漬する。水に含まれる不純物が最終生成物である層状複水酸化物結晶の組成に影響を与えることから、浸漬工程に用いられる水は、純水又は超純水であるのが好ましいが、所望のイオン交換能を示す層状複水酸化物結晶が得られる限り、ある程度の不純物を含有する水道水等の水であってもよい。
前駆体結晶を水に浸漬する場合、例えば、固液比25mL/g以上1.0L/g以下、撹拌時間10分間以上40時間以下とすることができる。本浸漬工程により、前駆体結晶における複数の板状結晶の形状が維持された状態で、隣接する板状結晶同士の間隔が拡大する。
次いで、得られた結晶の層間に位置するナトリウムイオンを塩化物イオンに置換処理する(ステップS23、図5(b))。この置換処理の方法は、例えば、得られた結晶を強酸の水溶液に浸漬する。強酸は、例えば塩酸である。この置換処理を行う場合、固液比50mL/g以上1.00L/g以下、撹拌時間10時間以上40時間以下、撹拌温度20℃以上40℃以下とすることができ、好ましくは、固液比100mL/g以上1.00L/g以下、撹拌時間10時間以上40時間以下、撹拌温度20℃以上40℃以下とすることができる。このように、加水分解工程および還元処理工程を有さない、本実施形態に係る層状複水酸化物結晶の製造方法であっても、前述の式(1)で表される層状複水酸化物結晶を有する結晶粒を得られる。
以下、本発明の実施例を説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例1〜7は上記第1実施形態に対応し、実施例8は第2実施形態に対応する。
(実施例1)
先ず、前駆体結晶であるNaNi0.7Fe0.3結晶をフラックス法で生成した。出発原料として、化学量論比通りに混合されたNiO2.316g、Fe1.061g及びNaNO4.015gを用いた。NaNOを目的結晶(前駆体結晶)である化学量論比よりも過剰に加え、セルフフラックスとして調合した場合をフラックス法(FLUX)とし、実施例1の原料とした。このとき、フラックスとしてのNaNOを、化学量論比における溶質(NiO、Fe及びNaNO)中のNaNOの含有量100mol%に対する過剰量が10Mol%となるように調製した。また、NiO及びFeは、ボールミルにて所望の粒径に調製したものを準備した。
上記のように調合された各原料を乾式混合して、容量30mLのアルミナるつぼ(SAC−999)に充填した後、マッフル炉にて700℃までは昇温速度500℃/h、昇温時間1時間24分、800℃までは昇温速度60℃/h、昇温時間1時間40分で加熱した。その後、保持温度800℃、保持時間10時間で保持し、その後300℃まで冷却速度200℃/h、冷却時間2時間30分で冷却し、NaNi0.7Fe0.3結晶を得た。得られた粉末を水道水を用い、固液比0.1L/g、撹拌時間24時間で酸化的加水分解処理した。その後、得られた結晶を溶液H0.02Mol/L、NaCl0.02Mol/L、固液比0.1L/g、撹拌時間48時間で、還元処理を1回のバッチ処理で行った。更に、溶液NaClaq.4.0Mol及びHClaq.3.2mMolを用い、固液比0.1L/g、反応時間24時間で置換処理し、上記式(1)で表される実施例1のLDHs結晶を得た。
(実施例2)
NaNO及びNaCOを目的結晶(前駆体結晶)である化学量論比よりも過剰に加えて調合し、実施例2の原料とした。このとき、フラックスとしてのNaNO及びNaCOを、化学量論比における溶質(NiO、Fe及びNaNO)中のNaNOの含有量100mol%に対する過剰量が10Mol%となるように調製した。また、上記原料中のNa源物質におけるNaNOの含有量を97mol%、NaCOの含有量を3mol%とした。それ以外は、実施例1と同様にして、上記式(1)で表される実施例2のLDHs結晶を得た。
(実施例3)
得られたNaNi0.7Fe0.3結晶の粉末を、NaClO2.1Mol/L、KOH2.0Mol/Lの溶液を用いて酸化的加水分解処理したこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(1)で表される実施例3のLDHs結晶を得た。
(実施例4)
得られたNaNi0.7Fe0.3結晶の粉末を、NaClO2.1Mol/L、KOH2.0Mol/Lの溶液を用いて酸化的加水分解処理したこと以外は、実施例2と同様にして、上記式(1)で表される実施例4のLDHs結晶を得た。
(実施例5)
塩化物イオンへの置換処理を、HClを用いず、溶液NaClaq.4.0Molを用いて行ったこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(1)で表される実施例5のLDHs結晶を得た。
(実施例6)
塩化物イオンへの置換処理を、HClを用いず、溶液NaClaq.4.0Molを用いて行ったこと以外は、実施例2と同様にして、上記式(1)で表される実施例6のLDHs結晶を得た。
(実施例7)
得られたNaNi0.7Fe0.3結晶の粉末を、超純水(メルク社製、製品名「Direct−QUV」)を用いて酸化的加水分解処理したこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(1)で表される実施例7のLDHs結晶を得た。
(実施例8)
先ず、実施例1と同様の方法でNaNi0.7Fe0.3結晶を得た。次いで、得られた粉末を水道水を用い、固液比0.1L/gで撹拌しながら4時間浸漬した。その後、HClaq.0.12mol/Lを用い、固液比0.1L/g、反応時間18時間で置換処理し、上記式(1)で表される実施例1のLDHs結晶を得た。
上記で得られた実施例1〜8のLDHs結晶を、以下の方法で測定、評価した。
(LDHs結晶の構造)
実施例1〜2について、前駆体結晶、還元処理後の結晶、及び塩化物イオン置換後の結晶(LDHs結晶)の結晶構造それぞれを、粉末X線回折(XRD)法によるXRD装置(リガク社製、「MiniFlexII」)で同定した。
(前駆体結晶及びLDHs結晶の外観)
実施例1〜2について、前駆体結晶の外観、及び得られたLDHs結晶の外観を電子顕微鏡画像(リガク社製、装置名「JSM−7400F」)で確認した。
(LDHs結晶の粒度分布)
実施例1〜2のLDHs結晶を蒸留水で分散させ、粒度分布測定装置(島津製作所製、製品名「SALD−7100」)を用いてLDHs結晶の粒度分布を測定した。
先ず、実施例1の各工程で得られた結晶を粉末X線回折(XRD)法で回折強度を測定した結果を図6に示す。
実施例1では、プロファイル図形における回折線から、NaNOをフラックスとするフラックス法によって育成された前駆体結晶に、水道水による酸化的加水分解処理、過酸化水素及びNaClの水溶液による1回の還元処理及びHCl水溶液による塩化物イオンへの置換処理を施すことで、前駆体結晶の積層構造がほぼ維持されたLDHs結晶が得られたことを確認した。
また、実施例1の前駆体結晶の外観を図7(a)及び図7(b)に、得られたLDHs結晶の外観を図8(a)及び図8(b)に、LDHs結晶の粒度分布の測定結果を図9に示す。
実施例1では、図7(a)及び図7(b)に示す外観を有する前駆体結晶、並びに図8(a)及び図8(b)に示す外観を有するLDHs結晶の結晶粒が得られたことを確認した。また、実施例1では、図9のグラフに示すように、粒子径が2μm〜160μmの範囲で分布しており、粒子径17.5μm〜20.0μmの範囲で、相対粒子量qが最大値を示している。よって、実施例1のLDHs結晶を構成する結晶粒の粒径が、マイクロスケールで揃っていることを確認した。
実施例2の各工程で得られた結晶を粉末X線回折(XRD)法で回折強度を測定した結果を図10に示す。
実施例2では、プロファイル図形における回折線から、NaNO及びNaCO3をフラックスとするフラックス法によって育成された前駆体結晶に、水道水による酸化的加水分解処理、過酸化水素及びNaClの水溶液による1回の還元処理及びHCl水溶液による塩化物イオンへの置換処理を施すことで、前駆体結晶の積層構造がほぼ維持されたLDHs結晶が得られたことを確認した。
また、実施例2の前駆体結晶の外観を図11(a)及び図11(b)に、得られたLDHs結晶の外観を図12(a)及び図12(b)に、粒度分布の測定結果を図13にそれぞれ示す。
実施例2では、図11(a)及び図11(b)に示す外観を有する前駆体結晶、並びに図12(a)及び図12(b)に示す外観を有するLDHs結晶の結晶粒が得られたことを確認した。また、実施例2では、図13のグラフに示すように、粒子径が1.6μm〜46μmの範囲で分布しており、粒子径9μm〜11μmの範囲で、相対粒子量qが最大値を示している。よって、実施例2のLDHs結晶を構成する結晶粒の粒径が、マイクロスケールで揃っていることを確認した。
(酸化的加水分解処理の違いによる影響)
実施例1の加水分解処理後の結晶と、実施例3の加水分解処理後の結晶とを、粉末X線回折(XRD)法で回折強度を測定して比較した結果を、図14に示す。また、実施例2の加水分解処理後の結晶を、粉末X線回折(XRD)法で回折強度を測定した結果を、図15に示す。
図14の結果から、水道水で加水分解処理を行った実施例1では、結晶中に、未反応成分であるNiOのピーク強度が若干検出されており、NaClO及びKOH溶液で加水分解処理を行った実施例3よりも若干多い程度であった。よって、酸化的加水分解処理を水道水で行っても、上記式(1)で表されるLDHs結晶の生成量への影響は非常に小さく、実施例1においてアニオン種のイオン交換能が実施例3と同等のLDHs結晶が得られると推察される。
また、図15の結果から、水道水で加水分解処理を行った実施例2では、結晶中に、未反応成分であるNiOのピーク強度が若干検出されているものの、実施例1よりも若干多い程度であった。よって、酸化的加水分解処理を水道水で行っても、上記式(1)で表されるLDHs結晶の生成量への影響は非常に小さく、実施例2においても、アニオン種のイオン交換能が実施例4と同等のLDHs結晶が得られると推察される。
(塩化物イオンへの置換処理の違いによる影響)
実施例1の塩化物イオン置換後の結晶と、実施例5の塩化物イオン置換後の結晶とを、粉末X線回折(XRD)法で回折強度を測定して比較した結果を図16に示す。また、実施例2の塩化物イオン置換後の結晶と、実施例6の塩化物イオン置換後の結晶とを、粉末X線回折(XRD)法で回折強度を測定して比較した結果を図17に示す。
図16の結果から、HClを用いずにNaCl溶液のみで置換処理を行った実施例5では、プロファイル図形における回折線から、実施例1よりもピーク強度が若干低いものの、実施例1と同様、前駆体結晶の積層構造がほぼ維持されたLDHs結晶が得られたことを確認した。
また、図17の結果から、HClを用いずにNaCl溶液のみで置換処理を行った実施例6でも、プロファイル図形における回折線から、実施例2よりもピーク強度が若干低いものの、実施例2と同様、前駆体結晶の積層構造がほぼ維持されたLDHs結晶が得られたことを確認した。
(イオン交換能の評価)
実施例7のLDHs結晶のアニオン交換性能を、フッ化物イオンを用いて、以下の条件で評価した。得られたLDHs結晶をNaF水溶液に浸漬し、クールスターラーを用いて25℃、24時間で撹拌した。このとき、フッ化物イオンの初期濃度を8ppm、pH6以下、固液比1.0g/L、吸着時間180分間以下、吸着温度を室温とした。浸漬後、上記水溶液から粉末を分離し、上澄み液のフッ化物イオン濃度をサプレッサ型イオンクロマトグラフ(島津製作所製、「HIC−SP」)で定量した。このときのフッ化物イオン濃度の除去率の経時変化を測定した。
(繰り返し使用の評価)
実施例1〜2、8のLDHs結晶を用いてアニオン交換する際の繰り返し使用を、フッ化物イオンを用いて、以下の条件で評価した。得られたLDHs結晶をNaF水溶液に浸漬し、クールスターラーを用いて25℃、24時間で撹拌した。このとき、吸着条件として、フッ化物イオンの初期濃度を8ppm、pH約8、固液比1.0g/L、吸着時間60分間、吸着温度を室温とした。また、再生にはNaClaq.を用いた。再生条件として、塩化物イオンの初期濃度を5Mol/L、固液比1.0g/L、反応時間24時間、反応温度を室温とした。吸着及び再生のサイクルを5回繰り返し、1回目〜5回目の各サイクルにおける吸着後に、上記水溶液から粉末を分離し、上澄み液のフッ化物イオン濃度をサプレッサ型イオンクロマトグラフ(島津製作所製、「HIC−SP」)で定量し、初期濃度の値から各サイクルにおけるフッ化物イオンの除去率を求めた。
実施例7のLDHs結晶を用いた際のフッ化物イオン濃度の経時変化を測定した結果を図18に示す。
実施例7のLDHs結晶では、開始から10分経過後のフッ化物イオン濃度の除去率は約97%であった。また、開始から60分経過後のフッ化物イオン濃度の除去率は約97%、開始から1日経過後のフッ化物イオン濃度の除去率は約99%であった。このことから、実施例5のLDHs結晶は、アニオン種であるフッ化物イオンに対して優れたイオン交換能を有し、フッ化物イオンの高い除去特性を発現することが分かった。
実施例1で得られたLDHs結晶にフッ化物イオンを繰り返して吸着させた場合の各サイクルにおけるフッ化物イオン除去率を図19に示す。
実施例1のLDHs結晶では、初回のフッ化物イオン除去率は99.0%であり、LDHs結晶を5回繰り返して用いた場合にも、フッ化物イオン除去率は99.3%であった。よって、繰り返しの使用によっても実施例1のLDHs結晶の吸着性能は低下せず、高い吸着性能(繰り返し性能)を維持していることが分かった。
また、実施例2で得られたLDHs結晶にフッ化物イオンを繰り返して吸着させた場合の各サイクルにおけるフッ化物イオン除去率を図20に示す。
実施例2のLDHs結晶では、初回のフッ化物イオン除去率は98.0%であり、LDHs結晶を5回繰り返して用いた場合にも、フッ化物イオン除去率は99.1%であった。よって、繰り返しの使用によっても実施例2のLDHs結晶の吸着性能は低下せず、高い吸着性能(繰り返し性能)を維持していることが分かった。
また、実施例8で得られたLDHs結晶にフッ化物イオンを繰り返して吸着させた場合の各サイクルにおけるフッ化物イオン除去率を図21に示す。
実施例8のLDHs結晶では、初回のフッ化物イオン除去率は98.7%であり、LDHs結晶を5回繰り返して用いた場合にも、フッ化物イオン除去率は98.9%であった。よって、繰り返しの使用によっても実施例8のLDHs結晶の吸着性能は低下せず、高い吸着性能(繰り返し性能)を維持していることが分かった。
本発明の製造方法で得られた層状複水酸化物結晶は、アニオンを吸着するアニオン吸着用物質として用いることができる。よって、様々な工業分野で使用されるアニオン吸着剤に本発明の製造方法で得られた層状複水酸化物結晶を適用することができる。
1 層状複水酸化物結晶
10 結晶粒
11 板状結晶
12 層状空間

Claims (14)

  1. 前駆体結晶の化学量論比に基づいて混合されたNi源物質、Fe源物質及びNa源物質の混合物に、更にNa源物質を加えて調製された原料を準備する工程と、
    前記原料を600℃〜1000℃、1時間以上で加熱して、NaNi1−xFexO2結晶(0.25<x≦0.9)で構成される前駆体結晶を生成する工程と、
    前記前駆体結晶のナトリウムイオンを塩化物イオンに置換するイオン置換工程と、
    を有し
    前記前駆体結晶を生成する工程の後、かつ前記イオン置換工程の前に、
    前記前駆体結晶を加水分解する工程と、前記前駆体結晶の加水分解によって得られた結晶を還元処理する工程とを有するか、又は、前記前駆体結晶を水に浸漬する工程を有する、層状複水酸化物結晶の製造方法。
  2. 前記前駆体結晶を生成する工程の後、かつ前記イオン置換工程の前に、
    前記前駆体結晶を加水分解する工程と、
    前記前駆体結晶の加水分解によって得られた結晶を還元処理する工程と、を有し、
    前記イオン置換工程では、前記還元処理によって得られた結晶の層間に位置する炭酸イオンを塩化物イオンに置換する、請求項1に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
  3. 化学量論比における前記Na源物質の含有量100mol%に対して過剰とするNa源物質の量が、1mol%以上50mol%以下である、請求項1に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
  4. 前記原料中の前記Na源物質は、NaNOで構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
  5. 前記原料中の前記Na源物質は、前記前駆体結晶の化学量論比に基づいて混合されたNaNOと、更に加えられたNaCOとで構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
  6. 前記原料中の前記Na源物質におけるNaNOの含有量は、5mol%以上15mol%以下であり、NaCOの含有量は、1mol%以上10mol%以下である、請求項5に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
  7. 前記前駆体結晶を生成する工程において、
    700℃までは昇温速度120℃/h以上600℃/h以下、700℃を超え800℃までは昇温速度20℃/h以上180℃/h以下で加熱し、
    保持温度750℃以上900℃以下、保持時間0.5時間以上12時間以下で保持し、300℃まで冷却速度50℃/h以上300℃/h以下で冷却する、請求項1に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
  8. 前記前駆体結晶を加水分解する工程において、水で前記前駆体結晶を加水分解する、請求項2に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
  9. 固液比30mL/g以上2L/g以下、撹拌時間10時間以上24時間以下、撹拌温度5℃以上50℃以下で、前記前駆体結晶を加水分解する、請求項8に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
  10. 前記水は、水道水、純水又は超純水である、請求項9に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
  11. 前記結晶を還元処理する工程において、前記結晶を塩の溶液に浸漬して1回のバッチ処理で還元処理する、請求項2に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
  12. 固液比30mL/g以上2L/g以下、撹拌時間10時間以上24時間以下、撹拌温度5℃以上50℃以下で、前記結晶を還元処理する、請求項11に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
  13. 前記塩は、強酸と強アルカリの塩である、請求項11に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
  14. 前記イオン置換工程において、前記還元処理によって得られた結晶を塩の水溶液に浸漬する、請求項2に記載の層状複水酸化物結晶の製造方法。
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