本発明は、ANGPTL3遺伝子のRNA転写物のRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)媒介切断をもたらす、iRNA組成物を提供する。ANGPTL3遺伝子は、例えば、ヒトなどの対象内の細胞などの細胞内にあってもよい。本発明は、ANGPTL3遺伝子の発現を阻害するために、および/または例えば、高脂血症または高トリグリセリド血症などの脂質代謝の障害などの、ANGPTL3遺伝子の発現を阻害するまたは減少させることから恩恵を受ける障害を有する対象を治療するために、本発明のiRNA組成物を使用する方法もまた提供する。
本発明のiRNAとしては、例えば15〜30、15〜29、15〜28、15〜27、15〜26、15〜25、15〜24、15〜23、15〜22、15〜21、15〜20、15〜19、15〜18、15〜17、18〜30、18〜29、18〜28、18〜27、18〜26、18〜25、18〜24、18〜23、18〜22、18〜21、18〜20、19〜30、19〜29、19〜28、19〜27、19〜26、19〜25、19〜24、19〜23、19〜22、19〜21、19〜20、20〜30、20〜29、20〜28、20〜27、20〜26、20〜25、20〜24,20〜23、20〜22、20〜21、21〜30、21〜29、21〜28、21〜27、21〜26、21〜25、21〜24、21〜23、または21〜22ヌクレオチド長などの約30ヌクレオチド以下の長さの領域を有するRNA鎖(アンチセンス鎖)を挙げることができ、その領域は、ANGPTL3遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部と実質的に相補的である。
その他の実施形態では、本発明の二本鎖RNAi剤の片方または双方の鎖は、例えば、36〜66、26〜36、25〜36、31〜60、22〜43、27〜53ヌクレオチド長など最大66ヌクレオチド長であって、少なくとも19連続ヌクレオチド領域を有し、それはANGPTL3遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部と実質的に相補的である。いくつかの実施形態では、センスおよびアンチセンス鎖は、18〜30連続ヌクレオチドの二本鎖を形成する。
本明細書に記載されるこれらのiRNA剤の使用は、哺乳類においてANGPTL3遺伝子のmRNAの標的化分解を可能にする。特に、非常に低投与量のANGPTL3 iRNAは、特異的かつ効率的にRNA干渉(RNAi)を媒介し得て、ANGPTL3遺伝子発現の著しい阻害がもたらされる。細胞ベースアッセイおよび生体内アッセイを用いて、本発明者らは、ANGPTL3を標的とするiRNAがRNAiを媒介し得て、ANGPTL3遺伝子の発現の顕著な阻害をもたらすことを実証した。したがって、これらのiRNAを含む方法および組成物は、高脂血症または高トリグリセリド血症などの脂質代謝の障害を有する対象などのANGPTL3タンパク質のレベルおよび/または活性の低下によって恩恵を受ける対象を治療するのに有用である。
いくつかの実施形態では、本発明のiRNA剤はRNA鎖(アンチセンス鎖)を含み、それは、例えば、36〜66、26〜36、25〜36、31〜60、22〜43、27〜53ヌクレオチド長など最大66ヌクレオチドヌクレオチド(nucleotides nucleotides)長であり得て、少なくとも19の連続ヌクレオチドの領域があり、それはANGPTL3遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部と実質的に相補的である。いくつかの実施形態では、より長いアンチセンス鎖を有するiRNA剤は、20〜60ヌクレオチド長の第2のRNA鎖(センス鎖)を含んでもよく、その中ではセンスおよびアンチセンス鎖が18〜30連続ヌクレオチドの二本鎖を形成する。
以下の詳細な説明は、ANGPTL3遺伝子発現を阻害するiRNAを含有する組成物を作成して利用する方法、ならびこの遺伝子の発現の阻害および/または低下から利益を受ける疾患および障害を有する対象を治療するための組成物、および方法を開示する。
I.定義
本発明がより容易に理解されるように、特定の用語を最初に定義する。これに加えて、パラメータの値または値範囲が列挙される場合は常に、列挙された値の中間の値および範囲もまた、本発明の一部であることが意図されることに留意すべきである。
冠詞「a」および「an」は、冠詞の1つまたは2つ以上(すなわち少なくとも1つ)の文法的目的に言及するために、本明細書で使用される。一例として「因子(an element)」は、1つの因子、または例えば複数の因子などの2つ以上の因子を意味する。
「含む」という用語は、本明細書では、「をはじめとするが、これに限定されるものではない」という用語を意味するために使用され、またそれと区別なく使用される。「または」という用語は、本明細書では、文脈上、明確に別の意味でない限り、「および/または」という用語を意味するために使用され、またそれと区別なく使用される。
「ANGPTL3」という用語は、特に断りのない限り、ヒト、ウシ、ニワトリ、齧歯類、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、霊長類、サル、およびモルモットをはじめとするが、これに限定されるものではない、任意の脊椎動物または哺乳類起源に由来するアミノ酸配列を有するアンギオポエチン様タンパク質3を指す。用語はまた、天然ANGPTL3の少なくとも1つの生体内または生体外活性を維持する、天然ANGPTL3の断片および変異体も指す。用語は、ANGPTL3の完全長未プロセス前駆体形態ならびにシグナルペプチドの翻訳後切断およびフィブリノーゲン様ドメインのタンパク質分解プロセシングから生じる成熟形態を包含する。ヒトANGPTL3 mRNA転写物の配列は、例えば、GenBank受入番号GI:452408443(NM_014495.3;配列番号1)にある。アカゲザルANGPTL3 mRNAの予測配列は、例えば、GenBank受入番号GI:297278846(XM_001086114.2;配列番号2)にある。マウスANGPTL3 mRNAの配列は、例えば、GenBank受入番号GI:142388354(NM_013913.3;配列番号3)にある。ラットANGPTL3 mRNAの配列は、例えば、GenBank受入番号GI:68163568(NM_001025065.1;配列番号4)にある。ANGPTL3 mRNA配列の追加的な例は、例えばGenBank、UniProt、およびOMIMなどの公的に利用可能なデータベースを用いて容易に入手できる。
「ANGPTL3」という用語は、本明細書の用法では、ANGPTL3遺伝子の一塩基多型などの、ANGPTL3遺伝子の自然発生的DNA配列多様性によって、細胞内で発現される特定のポリペプチドも指す。ANGPTL3遺伝子内の多数のSNPが同定されており、例えばNCBI dbSNPにある(例えばwww.ncbi.nlm.nih.gov/snpを参照されたい)。ANGPTL3遺伝子内のSNPの非限定的例は、NCBI dbSNP受入番号rs193064039;rs192778191;rs192764027;rs192528948;rs191931953;rs191293319;rs191171206;rs191145608;rs191086880;rs191012841;またはrs190255403にある。
本明細書の用法では、「標的配列」は、一次転写産物のRNAプロセシング産物であるmRNAをはじめとする、ANGPTL3遺伝子の転写中に形成される、mRNA分子のヌクレオチド配列の連続部分を指す。一実施態様(embodment)では、配列の標的部分は、ANGPTL3遺伝子の転写中に形成されるmRNA分子のヌクレオチド配列の部分またはその近辺における、iRNA指向切断のための基質としての役割を果たすのに、少なくとも十分長い。
標的配列は、例えば約15〜30ヌクレオチド長などの約9〜36ヌクレオチド長であってもよい。例えば、標的配列は、15〜29、15〜28、15〜27、15〜26、15〜25、15〜24、15〜23、15〜22、15〜21、15〜20、15〜19、15〜18、15〜17、18〜30、18〜29、18〜28、18〜27、18〜26、18〜25、18〜24、18〜23、18〜22、18〜21、18〜20、19〜30、19〜29、19〜28、19〜27、19〜26、19〜25、19〜24、19〜23、19〜22、19〜21、19〜20、20〜30、20〜29、20〜28、20〜27、20〜26、20〜25、20〜24,20〜23、20〜22、20〜21、21〜30、21〜29、21〜28、21〜27、21〜26、21〜25、21〜24、21〜23、または21〜22ヌクレオチドなど、約15〜30ヌクレオチド長であり得る。列挙された範囲および長さの中間の範囲および長さもまた、本発明の一部であることが意図される。
本明細書の用法では、「配列を含んでなる鎖」という用語は、標準ヌクレオチド命名法を使用して、言及される配列によって記載されるヌクレオチド鎖を含んでなる、オリゴヌクレオチドを指す。
「G」、「C」、「A」、「T」、および「U」は、通常、塩基としてそれぞれグアニン、シトシン、アデニン、チミジン、およびウラシルを含有するヌクレオチドをそれぞれ表す。しかし「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」という用語はまた、以下でさらに詳述されるような修飾ヌクレオチドにも、または代替置換部分にも言及し得るものと理解される(例えば表1を参照されたい)。当業者は、このような置換部分を有するヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチドの塩基対形成特性を実質的に変更することなく、グアニン、シトシン、アデニン、およびウラシルをその他の部分で置き換え得ることを十分承知している。制限を意図しない例として、塩基としてイノシンを含んでなるヌクレオチドは、アデニン、シトシン、またはウラシルを含有するヌクレオチドと塩基対形成し得る。したがってウラシル、グアニン、またはアデニンを含有するヌクレオチドは、本発明で取り上げるdsRNAのヌクレオチド配列中で、例えばイノシンを含有するヌクレオチドで置き換え得る。別の実施例では、アデニンおよびシトシンは、オリゴヌクレオチドのどこでも、それぞれグアニンおよびウラシルで置換され得て、標的mRNAとG−Uゆらぎ塩基対を形成する。このような置換部分を含有する配列は、本発明で取り上げる組成物および方法に適する。
「iRNA」、「RNAi剤」、「iRNA剤」、「RNA干渉剤」という用語は、本明細書で同義的に使用され、本明細書定義で定義されるRNAを含有して、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)経路を通じたRNA転写物の標的切断を媒介する薬剤を指す。iRNAは、RNA干渉(RNAi)として知られている過程を通じて、mRNAの配列特異的分解を誘発する。iRNAは、例えば哺乳類対象などの対象内の細胞などの細胞内で、ANGPTL3発現を調節し、例えば阻害する。
一実施形態では、本発明のRNAi剤としては、例えばANGPTL3標的mRNA配列などの標的RNA配列と相互作用して、標的RNAの切断を誘導する一本鎖RNAが挙げられる。理論による拘束は望まないが、細胞に導入された長い二本鎖RNAは、ダイサーとして知られているIII型エンドヌクレアーゼによって、siRNAに分解されると考えられる(Sharp et al.(2001)Genes Dev.15:485)。リボヌクレアーゼ−III様酵素であるダイサーは、dsRNAをプロセスして、特徴的な2塩基3’オーバーハングがある19〜23塩基対の短い干渉RNAにする(Bernstein,et al.,(2001)Nature 409:363)。次にsiRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に組み込まれ、1つまたは複数のヘリカーゼがsiRNA二本鎖を巻き戻し、相補的アンチセンス鎖が標的認識を誘導できるようにする(Nykanen,et al.,(2001)Cell 107:309)。適切な標的mRNAとの結合に際して、RISC内の1つまたは複数のエンドヌクレアーゼが標的を切断し、サイレンシングを誘発する(Elbashir,et al.,(2001)Genes Dev.15:188)。したがって、一態様では、本発明は、細胞内で生成されて、RISC複合体形成を促進し、標的遺伝子、すなわちANGPTL3遺伝子のサイレンシングをもたらす一本鎖RNA(sssiRNA)に関する。したがって「siRNA」という用語はまた、上述したようなRNAiに言及するために、本明細書で使用される。
別の実施形態では、RNAi剤は、標的mRNAを阻害するために、細胞または生物に導入された一本鎖RNAi剤であってもよい。一本鎖RNAi剤(ssRNAi)は、RISCエンドヌクレアーゼであるアルゴノート2に結合し、それは次に、標的mRNAを切断する。一本鎖siRNAは、一般に15〜30ヌクレオチドであり、化学的に修飾されている。一本鎖RNAi剤の設計および試験は、そのそれぞれの内容全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第8,101,348号明細書およびLima et al.,(2012)Cell 150:883−894に記載される。本明細書に記載される任意のアンチセンスヌクレオチド配列は、本明細書中に記載されるような一本鎖siRNAとして使用されてもよく、またはLima et al.,(2012)Cell 150;:883−894に記載の方法によって化学的に修飾されて使用されてもよい。
別の実施形態では、本発明の組成物および方法で使用される「iRNA」は、二本鎖RNAであり、本明細書で「二本鎖RNAi剤」、「二本鎖RNA(dsRNA)分子」、「dsRNA剤」または「dsRNA」と称される。「dsRNA」という用語は、標的RNA、すなわちANGPTL3遺伝子に関して「センス」および「アンチセンス」配向を有すると言及される、2本の逆平行で実質的に相補的な核酸鎖を含んでなる、二本鎖構造を有するリボ核酸分子複合体を指す。本発明のいくつかの実施形態では、二本鎖RNA(dsRNA)は、本明細書でRNA干渉またはRNAiと称される転写後遺伝子サイレンシング機序を通じて、例えばmRNAなどの標的RNA分解を引き起こす。
一般に、dsRNA分子の各鎖のヌクレオチドの大部分はリボヌクレオチドであるが、本明細書で詳細に記載されるように、片方または双方の鎖はまた、例えば、デオキシリボヌクレオチドおよび/または修飾ヌクレオチドなどの1つまたは複数の非リボヌクレオチドも含み得る。さらに、本明細書における用法では、「RNAi剤」は、化学修飾があるリボヌクレオチドを含んでもよく;RNAi剤は、複数のヌクレオチドにおける質的な修飾を含んでもよい。本明細書の用法では、「修飾ヌクレオチド」という用語は、独立して、修飾糖部分、修飾ヌクレオチド間結合、および/または修飾核酸塩基を有するヌクレオチドを指す。したがって、修飾ヌクレオチドという用語は、ヌクレオシド間結合、糖部分、または核酸塩基への、例えば、官能基または原子の置換、付加または除去を包含する。本発明の作用物質で使用するのに適した修飾は、本明細書で開示されるまたは当該技術分野で公知のあらゆる種類の修飾を含む。siRNAタイプの分子で使用されるようなこのような任意の修飾は、本明細書および特許請求の範囲の目的で、「RNAi剤」に包含される。
二本鎖領域は、RISC経路を通じた所望の標的RNA特異的分解を可能にするあらゆる長さであってもよく、約9〜36塩基対長さなどの範囲であってもよく、例えば約9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36塩基対長さなどの約15〜30塩基対長さ、例えば約15〜30、15〜29、15〜28、15〜27、15〜26、15〜25、15〜24、15〜23、15〜22、15〜21、15〜20、15〜19、15〜18、15〜17、18〜30、18〜29、18〜28、18〜27、18〜26、18〜25、18〜24、18〜23、18〜22、18〜21、18〜20、19〜30、19〜29、19〜28、19〜27、19〜26、19〜25、19〜24、19〜23、19〜22、19〜21、19〜20、20〜30、20〜29、20〜28、20〜27、20〜26、20〜25、20〜24,20〜23、20〜22、20〜21、21〜30、21〜29、21〜28、21〜27、21〜26、21〜25、21〜24、21〜23、または21〜22塩基対長さなどである。列挙された範囲および長さの中間の範囲および長さもまた、本発明の一部であることが意図される。
二本鎖構造を形成する2本の鎖は、より大型のRNA分子の異なる部分であってもよく、またはそれらは別のRNA分子であってもよい。2本の鎖が1つのより大型の分子の部分であり、したがって二本鎖構造を形成する1本の鎖の3’末端と、それぞれの他方の鎖の5’末端との間が中断されていないヌクレオチド鎖によって結合される場合、結合RNA鎖は「ヘアピンループ」と称される。ヘアピンループは、少なくとも1つの不対ヌクレオチドを含んでなり得て;いくつかの実施形態では、ヘアピンループは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも23以上の不対ヌクレオチドを含んでなり得る。
dsRNAの2本の実質的に相補的な鎖が、別のRNA分子によって構成されている場合、これらの分子は共有結合的に連結され得るが、必ずしもそうである必要はない。2本の鎖が、二本鎖構造を形成する1本の鎖の3’末端と、それぞれの他方の鎖の5’末端との間で、中断されていないヌクレオチド鎖以外の手段によって共有結合される場合、結合構造は「リンカー」と称される。RNA鎖は、同じまたは異なるヌクレオチド数を有してもよい。最大塩基対数は、dsRNAの最短鎖中のヌクレオチド数から、二本鎖中に存在するあらゆるオーバーハングを差し引いた数である。二本鎖構造に加えて、RNAiは、1つまたは複数のヌクレオチドオーバーハングを含んでなってもよい。
一実施形態では、本発明のRNAi剤はdsRNAであり、そのそれぞれの鎖は、例えば、ANGPTL3標的mRNA配列などの標的RNA配列と相互作用して標的RNAの切断を誘導する、19〜23ヌクレオチドを含んでなる。理論による拘束は望まないが、細胞に導入された長い二本鎖RNAは、ダイサーとして知られているIII型エンドヌクレアーゼによって、siRNAに分解される(Sharp et al.(2001)Genes Dev.15:485)。リボヌクレアーゼIII様酵素であるダイサーは、dsRNAをプロセシングして、特徴的な2塩基の3’オーバーハングを有する19〜23塩基対の短い干渉RNAにする(Bernstein,et al.,(2001)Nature 409:363)。次にsiRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に組み込まれ、1つまたは複数のヘリカーゼがsiRNA二本鎖を巻き戻し、相補的アンチセンス鎖が標的認識を誘導できるようにする(Nykanen,et al.,(2001)Cell 107:309)。適切な標的mRNAとの結合に際して、RISC内の1つまたは複数のエンドヌクレアーゼが標的を切断し、サイレンシングを誘発する(Elbashir,et al.,(2001)Genes Dev.15:188)。
本明細書の用法では、「ヌクレオチドオーバーハング」という用語は、例えばdsRNAなどのiRNAの二本鎖構造から突出する、少なくとも1つの不対ヌクレオチドを指す。例えばdsRNAの1本の鎖の3’末端が他方の鎖の5’末端を越えて伸びる、またはその逆の場合、ヌクレオチドオーバーハングがある。dsRNAは、少なくとも1つのヌクレオチドのオーバーハングを含んでなり得て;代案としては、オーバーハングは、少なくとも2つのヌクレオチド、少なくとも3つのヌクレオチド、少なくとも4つのヌクレオチド、少なくとも5つ以上のヌクレオチドを含んでなり得る。ヌクレオチドオーバーハングは、デオキシリボヌクレオチド/ヌクレオシドをはじめとする、ヌクレオチド/ヌクレオシド類似体を含んでなり得て、またはそれからなる。オーバーハングは、センス鎖、アンチセンス鎖、またはそのあらゆる組み合わせの上にあり得る。さらにオーバーハングのヌクレオチドは、dsRNAのアンチセンスまたはセンス鎖のいずれかの5’末端、3’末端、または双方の末端上に存在し得る。
一実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は、例えば3’末端および/または5’末端でオーバーハングする、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチドなどの1〜10ヌクレオチドを有する。一実施形態では、dsRNAのセンス鎖は、例えば3’末端および/または5’末端でオーバーハングする、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチドなどの1〜10ヌクレオチドを有する。別の実施形態では、オーバーハング中の1つまたは複数のヌクレオチドは、チオリン酸ヌクレオシドで置換されている。
特定の実施形態では、センス鎖またはアンチセンス鎖、またはその双方のオーバーハングは、10ヌクレオチドより長く、例えば10〜30ヌクレオチド、10〜25ヌクレオチド、10〜20ヌクレオチドまたは10〜15ヌクレオチドの拡張された長さを含み得る。特定の実施形態では、拡張オーバーハングは二本鎖のセンス鎖上にある。特定の実施形態では、拡張オーバーハングは、二本鎖のセンス鎖の3’末端に存在する。特定の実施形態では、拡張オーバーハングは、二本鎖のセンス鎖の5’末端に存在する。特定の実施形態では、拡張オーバーハングは二本鎖のアンチセンス鎖上にある。特定の実施形態では、拡張オーバーハングは、二本鎖のアンチセンス鎖の3’末端に存在する。特定の実施形態では、拡張オーバーハングは、二本鎖のアンチセンス鎖の5’末端に存在する。特定の実施形態では、拡張オーバーハング中の1つまたは複数のヌクレオチドは、チオリン酸ヌクレオシドで置換されている。
本明細書でdsRNAに関して用いられる「平滑化された」または「平滑末端化された」という用語は、dsRNAの所与の末端に不対ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体がない、すなわちヌクレオチドオーバーハングがないことを意味する。dsRNA末端の片方または双方が、平滑化され得る。dsRNAの双方の末端が平滑化されている場合、dsRNAは平滑末端化されたと言われる。明確化のために言うと、「平滑末端化された」dsRNAは、双方の末端が平滑化されたdsRNAであり、すなわち分子のいずれの末端にもヌクレオチドオーバーハングがない。ほとんどの場合、このような分子は、その全長にわたって二本鎖である。
「アンチセンス鎖」または「ガイド鎖」という用語は、例えばANGPTL3 mRNAなどの標的配列と実質的に相補的な領域を含む、dsRNAなどのiRNA鎖を指す。本明細書の用法では、「領域相補性」という用語は、例えば本明細書で定義されるようなANGPTL3ヌクレオチド配列のような標的配列などの配列と実質的に相補的な、アンチセンス鎖上の領域を指す。相補性領域が標的配列と完全に相補的でない場合、分子の内部または末端領域にミスマッチがあり得る。一般に、最も耐容されるミスマッチは、例えばiRNAの5’および/または3’末端の5、4、3、または2ヌクレオチド内などの末端領域にある。
「センス鎖」または「パッセンジャー鎖」という用語は、本明細書の用法では、本明細書で定義されるアンチセンス鎖の領域と実質的に相補的な領域を含む、iRNA鎖を指す。
本明細書の用法では、「切断領域」という用語は、切断部位に直接隣接して位置する領域を指す。切断部位は、そこで切断が起こる、標的上の部位である。いくつかの実施形態では、切断領域は、切断部位のいずれかの末端で切断部位に直接隣接して3つの塩基を含んでなる。いくつかの実施形態では、切断領域は、切断部位のいずれかの末端で切断部位に直接隣接して2つの塩基を含んでなる。いくつかの実施形態では、切断部位は、アンチセンス鎖のヌクレオチド10および11によって結合された部位で特異的に生じ、切断部位はヌクレオチド11、12、および13を含んでなる。
本明細書の用法では、特に断りのない限り、「相補的」という用語は、第2のヌクレオチド配列との関連で第1のヌクレオチド配列を記述するのに使用される場合、当業者に理解され得るように、第1のヌクレオチド配列を含んでなるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、特定条件下で、第2のヌクレオチド配列を含んでなるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとハイブリダイズして、二本鎖構造を生成する能力を指す。このような条件は、例えばストリンジェントな条件であり得て、ストリンジェントな条件としては、400mMのNaCl、pH6.4の40mMのPIPES、1mMのEDTA、50℃または70℃で12〜16時間と、それに続く洗浄が挙げられる(例えば“Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook,et al.(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい)。生物中で遭遇し得る生理学的に妥当な条件などのその他の条件が、適用され得る。当業者は、ハイブリダイズしたヌクレオチドの最終用途に従って、2つの配列の相補性試験に最適な条件の組を判定することができる。
例えば本明細書に記載されるdsRNA内などのiRNA内の相補配列は、片方または双方のヌクレオチド配列全長にわたる、第1のヌクレオチド配列を含んでなるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと、第2のヌクレオチド配列を含んでなるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとの塩基対合を含む。このような配列は、本明細書で互いに「完全に相補的」と称し得る。しかし本明細書で第1の配列が第2の配列に関して「実質的に相補的」と称される場合、2つの配列は完全に相補的であり得て、またはそれらは最大で30塩基対の二本鎖のハイブリダイゼーションに際して、例えばRISC経路を通じた遺伝子発現の阻害などのそれらの最終用途に最も妥当な条件下でハイブリダイズする能力を保ちながら、1つまたは複数であるが概して5、4、3または2以下のミスマッチ塩基対を形成し得る。しかしハイブリダイゼーションに際して、1つまたは複数の一本鎖オーバーハングを形成するように、2つのオリゴヌクレオチドがデザインされる場合、このようなオーバーハングは、相補性の判定に関してミスマッチと見なされないものとする。例えば21ヌクレオチド長の1つのオリゴヌクレオチドと、23ヌクレオチド長の別のオリゴヌクレオチドとを含んでなり、より長いオリゴヌクレオチドがより短いオリゴヌクレオチドと完全に相補的な21ヌクレオチドの配列を含んでなるdsRNAは、本明細書に記載される目的では、なおも「完全に相補的」と称される。
「相補的」配列は、本明細書の用法ではまた、それらのハイブリダイズ能力に関する上の要件が満たされる限りにおいて、非ワトソン・クリック塩基対および/または非天然および修飾ヌクレオチドから形成される塩基対も含み、またはそれから完全に形成され得る。このような非ワトソン・クリック塩基対としては、G:Uゆらぎ塩基対またはフーグスティーン型塩基対が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本明細書では、「相補的」、「完全に相補的」、および「実質的に相補的」という用語は、それらが使用される文脈から理解され得るように、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖間の、またはiRNA剤のアンチセンス鎖と標的配列間の塩基整合に関して使用し得る。
本明細書の用法では、メッセンジャーRNA(mRNA)の「少なくとも一部と実質的に相補的」なポリヌクレオチドは、対象mRNA(例えばANGPTL3をコードするmRNA)の連続部分と、実質的に相補的なポリヌクレオチドを指す。例えばポリヌクレオチドは、配列が、ANGPTL3をコードするmRNAの非中断部分と実質的に相補的であれば、ANGPTL3mRNAの少なくとも一部と相補的である。
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるアンチセンス鎖ポリヌクレオチドは、標的ANGPTL3配列と完全に相補的である。その他の実施形態では、本明細書で開示されるアンチセンス鎖ポリヌクレオチドは、標的ANGPTL3配列と実質的に相補的であり、配列番号1、または配列番号1の断片のヌクレオチド配列の対応する領域と、その全長にわたり、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約%91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%相補的など、少なくとも約80%相補的な連続ヌクレオチド配列を含んでなる。
一実施形態では、本発明のRNAi剤は、標的ANGPTL3配列と相補的なアンチセンスポリヌクレオチドと、実質的に相補的なセンス鎖を含み、センス鎖ポリヌクレオチドは、配列番号5、または配列番号5の断片のヌクレオチド配列の対応する領域と、その全長にわたり、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約%91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%相補的など、少なくとも約80%相補的な連続ヌクレオチド配列を含んでなる。「阻害する」という用語は、本明細書の用法では、「低下させる」、「サイレンシング」、「下方制御」、「抑制」、およびその他の類似した用語と同義的に使用され、あらゆるレベルの阻害を含む。
「ANGPTL3発現を阻害する」という語句は、本明細書の用法では、あらゆるANGPTL3遺伝子(例えばマウスANGPTL3遺伝子、ラットANGPTL3遺伝子、サルANGPTL3遺伝子、またはヒトANGPTL3遺伝子など)、ならびにANGPTL3タンパク質をコードするANGPTL3遺伝子の変種または変異体の発現の阻害を含む。
「ANGPTL3遺伝子発現の阻害」としては、少なくとも約20%の阻害などのANGPTL3遺伝子発現の少なくとも部分的抑制などのANGPTL3遺伝子のあらゆるレベルの阻害が挙げられる。ある実施形態においては、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%,少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の阻害が挙げられる。
ANGPTL3遺伝子発現は、例えばANGPTL3mRNAレベル、ANGPTL3タンパク質レベルなどの、ANGPTL3遺伝子発現に伴うあらゆる変数のレベルに基づいて評価してもよい。ANGPTL3発現は、血清脂質、トリグリセリド、コレステロール(LDL−C、HDL−C、VLDL−C、IDL−Cおよび総コレステロールを含む)または遊離脂肪酸のレベルに間接的に基づいて評価してもよい。阻害は、対照レベルと比較した、これらの変数の1つまたは複数の絶対または相対レベルの低下によって評価してもよい。対照レベルは、例えば投与前基線レベル、または未処置のまたは対照(例えば緩衝液のみの対照または非活性薬剤対照など)で処置された同様の対象、細胞、またはサンプルから測定されたレベルなどの当該技術分野で利用される、あらゆるタイプの対照レベルであってもよい。
一実施形態では、ANGPTL3遺伝子発現の少なくとも部分的抑制は、第1の細胞または細胞群と実質的に同一であるが、しかるべく処理されていない第2の細胞または細胞群(対照細胞)と比較して、ANGPTL3遺伝子発現が阻害されるように処置されている、その中でANGPTL3遺伝子が転写される第1の細胞または細胞群から単離され、またはその中に検出され得る、ANGPTL3mRNAの量の低下によって評価される。阻害の程度は、
を用いて表してもよい。
本明細書の用法では、dsRNAなどの「RNAi剤に細胞を接触させる」という語句は、あらゆる可能な手段によって細胞を接触させるステップを含む。RNAi剤に細胞を接触させることは、試験管内でiRNAに細胞を接触させる、または生体内でiRNAに細胞を接触させるステップを含む。接触は、直接または間接的に実施してもよい。したがって、例えば方法を実施する者が、RNAi剤を細胞と物理的に接触させてもよく、または代案としては、引き続いて細胞との接触が可能になり、または引き起こされる状況に、RNAi剤を置いてもよい。
試験管内における細胞の接触は、例えば細胞をRNAi剤と共にインキュベートして実施してもよい。生体内における細胞の接触は、例えば細胞が位置する組織内にまたはその近辺にRNAi剤を注入して実施してもよく、または接触させる細胞が位置する組織に引き続いて薬剤が到達するように、例えば血流または皮下空隙などの別の領域にRNAi剤を注入して実施してもよい。例えばRNAi剤は、例えば肝臓などの対象部位にRNAi剤を誘導する、GalNAc3などのリガンドを含有し、および/またはそれと共役していてもよい。試験管内と生体内接触法の組み合わせもまた、可能である。例えば細胞を試験管内でRNAi剤と接触させて、引き続いて対象に移植してもよい。
一実施形態では、細胞をiRNAに接触させるステップは、細胞内への取り込みまたは吸収を容易にし、またはそれをもたらすことで、「iRNAを導入する」または「細胞に送達する」ステップを含む。iRNAの吸収または取り込みは、助力を受けない拡散性または活性細胞過程を通じて、または助剤または装置によって生じ得る。iRNAの細胞内への導入は、試験管内および/または生体内であってもよい。例えば生体内導入のために、iRNAを組織部位に注射し、または全身投与し得る。生体内送達はまた、その内容全体を参照によって本明細書に援用する、米国特許第5,032,401号明細書および米国特許第5,607,677号明細書、および米国特許出願公開第2005/0281781号明細書に記載されるものなどのβ−グルカン送達系によって実施し得る。細胞への生体外導入としては、電気穿孔およびリポフェクションなどの当該技術分野で公知の方法が挙げられる。さらなるアプローチは、本明細書で以下に記載され、および/または当該技術分野で公知である。
「脂質ナノ粒子」または「LNP」という用語は、例えばiRNAなどの核酸分子またはそれからiRNAが転写されるプラスミドなどの薬理的活性分子を封入する脂質層を含んでなる、小胞である。LNPは、例えばその内容全体を参照によって本明細書に援用する米国特許第6,858,225号明細書、米国特許第6,815,432号明細書、米国特許第8,158,601号明細書、および米国特許第8,058,069号明細書に記載される。
本明細書の用法では、「対象」は、霊長類(ヒト、例えばサルおよびチンパンジーなどの非ヒト霊長類など)、非霊長類(ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、マウス、ウマ、およびクジラなど)をはじめとする哺乳類、または鳥類(例えばアヒルまたはガチョウ)などの動物である。一実施形態では、対象は、ANGPTL3発現低下から利益を受ける、疾患、障害または病状を治療されまたは評価されるヒト;ANGPTL3発現低下から利益を受ける、疾患、障害または病状のリスクがあるヒト;ANGPTL3発現低下から利益を受ける、疾患、障害または病状を有するヒト;および/または本明細書に記載されるようにANGPTL3発現低下から利益を受ける、疾患、障害または病状を治療されるヒトなどのヒトである。
本明細書の用法では、「治療する」または「治療」という用語は、対象においてトリグリセリドレベルを低下させるなどの有益なまたは所望の結果に言及する。「治療する」または「治療」という用語としてはまた、例えば、発疹性黄色腫のサイズの減少などの脂質代謝の障害の1つまたは複数の症状の緩和または改善も挙げられるが、これに限定されるものではない。「治療」はまた、治療不在下の予測生存期間と比較した生存期間の長期化も意味し得る。
「低下させる」とは、疾病マーカまたは症状の文脈で、このようなレベルの統計的に有意な低下を意味する。低下は、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%以上であり得て、好ましくは、このような疾患がない個人の正常範囲内にあると一般に認められたレベルに低下する。
本明細書の用法では、ANGPTL3遺伝子の発現の低下から恩恵を受ける疾患、障害または病状に関して使用される場合、「予防」または「予防する」は、対象が、そのような疾患、障害、または病状に関連する、例えば、高トリグリセリドレベルまたは発疹性黄色腫などの症状を起こす可能性の低下を指す。例えば、高トリグリセリドレベルまたは発疹性黄色腫の1つまたは複数のリスク因子を有する個人が、高トリグリセリドレベルまたは発疹性黄色腫を発症せず、または同一リスク因子を有して本明細書に記載されるような治療を受けない集団と比較して、高トリグリセリドレベルまたは発疹性黄色腫をより低い重症度で発症する場合に、高トリグリセリドレベルまたは発疹性黄色腫を発症する可能性は減少する。疾患、障害または病状を発症しないこと、またはこのような疾患、障害または病状(condition i)に関連する症状発生の減少(例えばその疾患または障害の臨床的に認められた尺度で少なくとも約10%の)、または遅延症状呈示の遅延(例えば、数日間、数週間、数ヶ月または数年間)が、効果的予防と見なされる。
本明細書の用法では、「血清脂質」という用語は、血液中に存在するあらゆる主要な脂質を指す。血清脂質は、遊離形態として、または例えば、リポタンパク複合体などのタンパク質複合体の一部として、血液中に存在してもよい。血清脂質の非限定的例としては、トリグリセリドと、総コレステロール(TG)、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)、超低密度リポタンパク質コレステロール(VLDL−C)、および中密度リポタンパク質コレステロール(IDL−C)などのコレステロールとが挙げられる。
本明細書の用法では、「脂質代謝の障害」は、脂質代謝の妨害に関連する、またはそれによって引き起こされる、あらゆる障害を指す。例えば、この用語は、高脂血症をもたらし得る任意の障害、疾患または病状、または任意のまたは全ての血中脂質および/またはリポタンパクレベルの異常な上昇によって特徴付けられる病状を含む。この用語は、家族性高トリグリセリド血症や家族性部分型リポジストロフィー1型(FPLD1)などの遺伝性疾患、または疾患、障害または病状(例えば、腎不全)、食餌、または特定の薬物摂取の結果として(例えば、AIDSまたはHIVの治療に使用される高活性抗レトロウイルス療法(HAART)の結果として)誘発されまたは獲得された障害などの、誘発性または後天性障害を指す。例示的な脂質代謝の障害としては、アテローム性動脈硬化、異脂肪血症、高トリグリセリド血症(薬物誘発性高トリグリセリド血症、利尿薬誘発性高トリグリセリド血症、アルコール誘発性高トリグリセリド血症、β−アドレナリン作動性遮断剤誘発性高トリグリセリド血症、エストロゲン誘発性高トリグリセリド血症、グルココルチコイド誘発性高トリグリセリド血症、レチノイド誘発性高トリグリセリド血症、シメチジン誘発性高トリグリセリド血症、および家族性高トリグリセリド血症をはじめとする)、高トリグリセリド血症を伴う急性膵臓炎、カイロミクロン症候群(syndrom)、家族性カイロミクロン血症、アポE欠乏症または抵抗性、LPL欠乏症または機能低下、高脂血症(家族性複合型高脂血症をはじめとする)、高コレステロール血症、高コレステロール血症を伴う痛風、黄色腫症(皮下コレステロール沈着)、不均一LPL欠乏症を伴う高脂血症、および高LDLおよび不均一LPL欠乏症を伴う高脂血症が挙げられるが、これに限定されるものではない。
脂質代謝の障害に関連する心血管疾患もまた、本明細書で定義される「脂質代謝の障害」と考えられる。これらの疾患としては、冠動脈疾患(虚血性心疾患とも称される)、冠動脈疾患を伴う炎症、再狭窄、末梢血管の疾患、および脳卒中が挙げられる。
体重に関連する障害も、本明細書で定義される「脂質代謝の障害」と見なされる。このような障害としては、代謝症候群の独立構成要素(例えば、中心性肥満、FBG/前糖尿病/糖尿病、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、および高血圧)をはじめとする代謝症候群、甲状腺機能低下症、尿毒症、および(急速な体重増加をはじめとする)体重増加を伴うその他の病状、体重減少、体重減少の維持、または体重減少の後の体重回復のリスクが挙げられる。
血糖障害も、本明細書で定義される「脂質代謝の障害」とさらに見なされる。このような疾患としては、インスリン抵抗性に関連する、糖尿病、高血圧、および多嚢胞性卵巣症候群が挙げられる。その他の例示的な脂質代謝の障害としては、腎臓移植、ネフローゼ症候群、クッシング症候群、先端巨大症、全身性エリテマトーデス、異常グロブリン血症、リポジストロフィー、糖原病I型、およびアジソン病もまた挙げられる。
本明細書の用法では、「治療有効量」は、脂質代謝の障害を有する対象に投与されると、(例えば既存の疾患の、または1つまたは複数の疾患症状の低減、改善または維持によって)疾患の治療をもたらすのに十分なRNAi剤の量を含むことが意図される。「治療有効量」は、RNAi剤、薬剤投与方法、疾患とその重症度、および治療される対象の病歴、年齢、体重、家族歴、遺伝的体質、先行または併用治療薬のタイプ、もしあればその他の個人特性に応じて変動してもよい。
本明細書の用法では、「予防有効量」は、脂質代謝の障害を有する対象に投与されると、疾患の、または1つまたは複数の疾患症状を予防または改善するのに十分なiRNAの量を含むことが意図される。疾患の改善としては、疾患経過の減速、または後に発症する疾患の重症度の低下が挙げられる。「予防有効量」は、iRNA、薬剤投与方法、疾患リスクの程度、および治療される患者の病歴、年齢、体重、家族歴、遺伝的体質、先行または併用治療薬のタイプ、もしあればその他の個人特性に応じて変動してもよい。
「治療有効量」または「予防有効量」としてはまた、あらゆる治療薬に当てはまる妥当な利点/リスク比で、いくつかの所望の局所性または全身性効果を生じる、RNAi剤の量も挙げられる。本発明の方法で用いられるiRNAは、このような治療に当てはまる妥当な利点/リスク比を生じるのに十分な量で、投与されてもよい。
「薬学的に許容可能」という語句は、本明細書で、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー性応答がなく、またはその他の問題または合併症が、妥当な利点/リスク比で釣り合う、ヒト対象および動物対象の組織との接触で使用するのに適する、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために用いられる。
本明細書の用法では、「薬理的に許容可能な担体」という語句は、液体または固体増量剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば潤滑剤、滑石マグネシウム、カルシウムまたはステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸(steric acid)など)、または対象化合物を1つの臓器または身体の部分から、別の臓器または身体の部分に運搬または輸送するのに関与する溶媒封入材料などの、薬理的に許容可能な材料、組成物またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤のその他の成分と適合し、治療される対象に傷害性でないと言う意味で、「許容可能」でなくてはならない。薬理的に許容可能な担体の役割を果たし得る材料のいくつかの例としては、(1)乳糖、グルコースおよびスクロースなどの糖類;(2)コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースとその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)マグネシウム状態(magnesium state)、ラウリル硫酸ナトリウム、および滑石などの平滑剤;(8)カカオ脂および坐薬ワックスなどの賦形剤;(9)落花生油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、コーンオイル、および大豆油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびエチルラウレートなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱性物質非含有水;(17)等張生理食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ酸無水物;(22)ポリペプチドおよびアミノ酸などの増量剤;(23)血清アルブミン、HDL、およびLDLなどの血清成分;および(22)医薬製剤で用いられるその他の無毒の適合性物質が挙げられる。
本明細書の用法では、「サンプル」という用語は、対象から単離された同様の体液、細胞、または組織の採取物、ならびに対象内に存在する体液、細胞、または組織を含む。生体液の例としては、血液、血清および漿液(serosal fluids)、血漿、脳脊髄液、眼液、リンパ液、尿、唾液などが挙げられる。組織サンプルとしては、組織、臓器または局在性領域からのサンプルが挙げられる。例えばサンプルは、特定の臓器、臓器の部分、または体液またはこれらの臓器内の細胞に由来してもよい。特定の実施形態では、サンプルは、肝臓(例えば肝臓全体または肝臓の特定部分、または例えば肝実質細胞などの肝臓の特定タイプの細胞)に由来してもよい。いくつかの実施形態では、「対象に由来するサンプル」は、対象から採取された血液または血漿を指す。
II.本発明のiRNA
本明細書に記載されるのは、ANGPTL3遺伝子発現を阻害するiRNAである。一実施形態では、iRNA剤は、例えば家族性高脂血症などの脂質代謝の障害を有するヒトのような、哺乳類などの対象内の細胞などの細胞内で、ANGPTL3遺伝子発現を阻害する二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を含む。dsRNAは、ANGPTL3遺伝子発現中に形成されるmRNAの少なくとも一部と相補的である、相補性領域を有するアンチセンス鎖を含む。相補性領域は、約30ヌクレオチド以下の長さ(例えば約30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、または18ヌクレオチド以下の長さ)である。ANGPTL3遺伝子を発現する細胞との接触に際して、iRNAは、ANGPTL3遺伝子(例えばヒト、霊長類、非霊長類、または鳥類ANGPTL3遺伝子)の発現を、例えばPCRまたは分枝DNA(bDNA)ベースの方法による、または例えばウエスタンブロット法またはフローサイトメトリー技術を使用する免疫蛍光分析などのタンパク質ベースの方法によるアッセイで、少なくとも約10%阻害する。
dsRNAは相補的な2本のRNA鎖を含み、それらはその中でdsRNAが使用される条件下でハイブリダイズして二本鎖構造を形成する。dsRNAの1本の鎖(アンチセンス鎖)は相補性領域を含み、それは標的配列と実質的に相補的であり、一般に完全に相補的である。標的配列は、ANGPTL3遺伝子の発現中に形成されるmRNAの配列に由来し得る。他方の鎖(センス鎖)は、適切な条件下で組み合わせると、2本の鎖がハイブリダイズして二本鎖構造を形成するように、アンチセンス鎖と相補的な領域を含む。本明細書の他の箇所に記載されるように、そして当該技術分野で公知のように、dsRNAの相補配列はまた、別個のオリゴヌクレオチド上にあるものとは対照的に、単一核酸分子の自己相補領域として含有され得る。
一般に、二本鎖構造は、例えば15〜29、15〜28、15〜27、15〜26、15〜25、15〜24、15〜23、15〜22、15〜21、15〜20、15〜19、15〜18、15〜17、18〜30、18〜29、18〜28、18〜27、18〜26、18〜25、18〜24、18〜23、18〜22、18〜21、18〜20、19〜30、19〜29、19〜28、19〜27、19〜26、19〜25、19〜24、19〜23、19〜22、19〜21、19〜20、20〜30、20〜29、20〜28、20〜27、20〜26、20〜25、20〜24、20〜23、20〜22、20〜21、21〜30、21〜29、21〜28、21〜27、21〜26、21〜25、21〜24、21〜23、または21〜22塩基対長さなどの15〜30塩基対長さである。列挙された範囲および長さの中間の範囲および長さもまた、本発明の一部であることが意図される。
同様に、標的配列の相補性領域は、例えば15〜29、15〜28、15〜27、15〜26、15〜25、15〜24、15〜23、15〜22、15〜21、15〜20、15〜19、15〜18、15〜17、18〜30、18〜29、18〜28、18〜27、18〜26、18〜25、18〜24、18〜23、18〜22、18〜21、18〜20、19〜30、19〜29、19〜28、19〜27、19〜26、19〜25、19〜24、19〜23、19〜22、19〜21、19〜20、20〜30、20〜29、20〜28、20〜27、20〜26、20〜25、20〜24、20〜23、20〜22、20〜21、21〜30、21〜29、21〜28、21〜27、21〜26、21〜25、21〜24、21〜23、または21〜22ヌクレオチド長など15〜30ヌクレオチド長である。列挙された範囲および長さの中間の範囲および長さもまた、本発明の一部であることが意図される。
いくつかの実施形態では、dsRNAは、約15〜約23ヌクレオチド長、または約25〜約30ヌクレオチド長である。一般にdsRNAは、ダイサー酵素の基質の役割を果たすのに十分長い。例えば約21〜23ヌクレオチドより長いdsRNAが、ダイサーの基質の役割を果たしてもよいことは、当該技術分野で周知である。当業者が認識し得るように、切断標的とされるRNAの標的領域は、ほとんどの場合、より大型のRNA分子の一部であり、それはmRNA分子であることが多い。該当する場合、mRNA標的の「部分」は、RNAi指向切断(すなわちRISC経路を通じた切断)の基質となるのに十分長い、mRNA標的の連続配列である。
当業者は、例えば約10〜36、11〜36、12〜36、13〜36、14〜36、15〜36、9〜35、10〜35、11〜35、12〜35、13〜35、14〜35、15〜35、9〜34、10〜34、11〜34、12〜34、13〜34、14〜34、15〜34、9〜33、10〜33、11〜33、12〜33、13〜33、14〜33、15〜33、9〜32、10〜32、11〜32、12〜32、13〜32、14〜32、15〜32、9〜31、10〜31、11〜31、12〜31、13〜32、14〜31、15〜31、15〜30、15〜29、15〜28、15〜27、15〜26、15〜25、15〜24、15〜23、15〜22、15〜21、15〜20、15〜19、15〜18、15〜17、18〜30、18〜29、18〜28、18〜27、18〜26、18〜25、18〜24、18〜23、18〜22、18〜21、18〜20、19〜30、19〜29、19〜28、19〜27、19〜26、19〜25、19〜24、19〜23、19〜22、19〜21、19〜20、20〜30、20〜29、20〜28、20〜27、20〜26、20〜25、20〜24,20〜23、20〜22、20〜21、21〜30、21〜29、21〜28、21〜27、21〜26、21〜25、21〜24、21〜23、または21〜22塩基対などの約9〜36塩基対の二本鎖領域などの二本鎖領域が、dsRNAの主要機能部分であることもまた認識するであろう。したがって一実施形態では、それが例えば、所望のRNAを切断に標的化する15〜30塩基対の機能性二本鎖にプロセシングされる範囲内で、30塩基対を超える二本鎖領域を有するRNA分子またはRNA分子複合体は、dsRNAである。したがって当業者は、一実施形態では、miRNAがdsRNAであることを認識するであろう。別の実施形態では、dsRNAは、天然miRNAでない。別の実施形態では、ANGPTL3発現を標的化するのに有用なiRNA剤は、より大型のdsRNAの切断によって標的細胞内で生成されない。
本明細書に記載されるdsRNAは、例えば1、2、3、または4ヌクレオチドなどの1つまたは複数の一本鎖ヌクレオチドオーバーハングをさらに含み得る。少なくとも1つのヌクレオチドオーバーハングを有するdsRNAは、それらの平滑末端相当物と比較して、意外にも優れた阻害特性を有し得る。ヌクレオチドオーバーハングは、デオキシリボヌクレオチド/ヌクレオシドをはじめとする、ヌクレオチド/ヌクレオシド類似体を含んでなり得て、またはそれからなる。オーバーハングは、センス鎖、アンチセンス鎖、またはそのあらゆる組み合わせ上にあり得る。さらにオーバーハングのヌクレオチドは、dsRNAのアンチセンスまたはセンス鎖のいずれかの5’末端、3’末端、または双方の末端上に存在し得る。
dsRNAは、以下でさらに考察されるように、例えばBiosearch,Applied Biosystems,Inc.から市販されるものなどの自動DNA合成機を使用して、当該技術分野で公知の標準法によって合成し得る。
本発明のiRNA化合物は、二段階法を使用して調製されてもよい。最初に、二本鎖RNA分子の個々の鎖が、別々に調製される。次に、構成要素鎖がアニールされる。siRNA化合物の個々の鎖は、溶液相または固相有機または双方を使用して調製し得る。有機合成は、非天然または修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド鎖を容易に調製し得る利点を提供する。本発明の一本鎖オリゴヌクレオチドは、溶液相または固相有機合成または双方を使用して調製し得る。
一態様では、本発明のdsRNAは、センス配列とアンチセンス配列の少なくとも2つのヌクレオチド配列を含む。センス鎖配列は、表2A、2B、4A、4B、5、7A、7B、7C、8A、8B、10A、10B、13A、13B、14、15A、および15Bのいずれか1つに提供される配列群から選択され、センス鎖のアンチセンス鎖の対応するヌクレオチド配列は、表2A、2B、4A、4B、5、7A、7B、7C、8A、8B、10A、10B、13A、13B、14、15A、および15Bのいずれか1つの配列群から選択される。この態様では、2配列の一方は2配列の他方に相補的であり、配列の一方は、ANGPTL3遺伝子の発現中に生じるmRNA配列と実質的に相補的である。したがって、この態様では、dsRNAは2つのオリゴヌクレオチドを含み、第1のオリゴヌクレオチドは、表2A、2B、4A、4B、5、7A、7B、7C、8A、8B、10A、10B、13A、13B、14、15A、および15Bのいずれか1つのセンス鎖(パッセンジャー鎖)として記載され、第2のオリゴヌクレオチドは、表2A、2B、4A、4B、5、7A、7B、7C、8A、8B、10A、10B、13A、13B、14、15A、および15Bのいずれか1つのセンス鎖の対応するアンチセンス鎖(ガイド鎖)として記載される。一実施形態では、dsRNAの実質的に相補的な配列は、別々のオリゴヌクレオチド上に含有される。別の実施形態では、dsRNAの実質的に相補的な配列は、単一オリゴヌクレオチド上に含有される。
表2A、2B、4A、4B、5、7A、7B、7C、8A、8B、10A、10B、13A、13B、14、15A、および15Bの配列は、修飾、未修飾、非コンジュゲートおよび/または結合配列として記載されるが、例えば、本発明のdsRNAなどの本発明のiRNAのRNAは、未修飾、非結合、および/または記載されるのとは異なって修飾および/または結合された、表2A、2B、4A、4B、5、7A、7B、7C、8A、8B、10A、10B、13A、13B、14、15A、および15Bのいずれか1つに記載される配列のいずれか1つを含んでなってもよいものと理解される。
別の態様では、ANGPTL3の発現を阻害するための本発明の二本鎖リボ核酸(dsRNA)は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含んでなり、それから本質的になり、またはそれからなり、センス鎖は、ヌクレオチド配列5’−usgsucacUfuGfAfAfcucaacucaaL96−3’を含んでなり、アンチセンス鎖は、ヌクレオチド配列5’−asusUfsgagUfuGfAfguucAfaGfugacasusa−3’を含んでなり;またはセンス鎖は、ヌクレオチド配列5’−gsasauauGfuCfAfCfuugaacucaaL96−3’を含んでなり、アンチセンス鎖は、ヌクレオチド配列usUfsgagUfuCfAfagugAfcAfuauucsusuを含んでなる。
当業者は、例えば21塩基対などの約20〜23塩基対の二本鎖構造を有するdsRNAが、RNA干渉を誘発するのに特に効果的であるとして支持されていることを十分承知している(Elbashir et al.,(2001)EMBO J.,20:6877−6888)。しかし他の当業者らは、より短いまたはより長いRNA二本鎖構造もまた、同様に効果的であり得ることを見出している。(Chu and Rana(2007)RNA 14:1714−1719;Kim et al.(2005)Nat Biotech 23:222−226)。上述の実施形態では、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチド配列の性質のために、本明細書に記載されるdsRNAは、最低限21ヌクレオチド長の少なくとも1本の鎖を含み得る。片方または両方の末端の数個のヌクレオチドのみが抜けている短い二本鎖が、上で説明したdsRNAと比較して同様に効果的であり得ることは、合理的に予想され得る。したがって本明細書の配列の1つに由来する、少なくとも15、16、17、18、19、20以上の連続ヌクレオチドの配列を有して、ANGPTL3遺伝子発現を阻害する能力が、完全長配列を含んでなるdsRNAと、約5、10、15、20、25、または30%の以下異なるdsRNAは、本発明の範囲内であることが意図される。
さらに本明細書で提供されるRNAは、RISC媒介切断に対する感受性が高いANGPTL3転写物中の部位を同定する。したがって本発明は、この配列内を標的とするiRNAをさらに特徴とする。本明細書の用法では、iRNAが、特定部位内のどこかで転写物の切断を促進する場合、iRNAはRNA転写物のその特定部位内を標的にすると言われる。このようなiRNAは、一般に、ANGPTL3遺伝子中の選択配列に隣接する領域からの追加的なヌクレオチド配列と連結する、本明細書で提供される配列の1つからの約15個の連続ヌクレオチドを含む。
標的配列は、一般に約15〜30ヌクレオチド長であるが、この範囲内の特定の配列が、あらゆる所与の標的RNAの切断を誘導する適合性には、幅広い多様性がある。本明細書で提示される様々なソフトウェアパッケージおよびガイドラインは、あらゆる所与の遺伝子標的の最適標的配列を同定するためのガイダンスを提供するが、標的RNA配列に、所与のサイズの「ウィンドウ」または「マスク」(非限定的例として21個のヌクレオチド)を実際にまたは比喩的に(例えばコンピュータシミュレーションによるものをはじめとする)配置させて、標的配列の役割を果たし得るサイズ範囲の配列を同定する、経験的アプローチもまた取り得る。配列「ウィンドウ」を最初の標的配列位置の1ヌクレオチド上流または下流に連続的に移動することで、選択されたあらゆる所与の標的サイズについて完全な可能な配列の組が同定されるまで、次の潜在的標的配列が同定され得る。このプロセスは、同定された配列の系統的合成、および(本明細書に記載されまたは当該技術分野で公知のアッセイを使用した)至適に機能する配列を同定する試験と相まって、iRNA剤で標的化した場合に、標的遺伝子発現の最良の阻害を媒介するRNA配列を同定し得る。したがって本明細書で同定される配列が、効果的な標的配列を表す一方で、所与の配列の1ヌクレオチド上流または下流に、連続的に「ウィンドウを歩行させる」ことにより、同等またはより良い阻害特性がある配列を同定することで、阻害効率のさらなる最適化を達成し得ることが検討される。
さらにヌクレオチドを体系的に付加または除去して、より長いまたはより短い配列を作成し、その位置から、標的RNAよりも長いまたはより短いサイズのウィンドウを歩行させることで、これらの作成された配列を試験することにより、本明細書で同定されるあらゆる配列のさらなる最適化を達成し得ることが検討される。この場合もやはり、この新しい標的候補を作成するアプローチと、当該技術分野で公知のおよび/または本明細書に記載される阻害アッセイにおける、これらの標的配列に基づくiRNAの有効性の試験とを組み合わせることにより、阻害効率にさらなる改善をもたらし得る。なおもさらに、例えば本明細書に記載されまたは当該技術分野で公知の修飾ヌクレオチドの導入、オーバーハングの付加またはその変更、または当該技術分野で公知のおよび/または本明細書で考察されるその他の修飾によって、発現阻害物質として分子をさらに最適化する(例えば血清安定性または循環半減期増大、熱安定増大、膜貫通送達促進、特定位置または細胞型の標的化、サイレンシング経路酵素との相互作用増大、エンドソームからの放出増大など)ことで、このような最適化配列を調節し得る。
本明細書に記載されるiRNA剤は、標的配列との1つまたは複数のミスマッチを含有し得る。一実施形態では、本明細書に記載されるiRNAは、3個以下のミスマッチを含有する。iRNAのアンチセンス鎖が、標的配列とのミスマッチを含有する場合、ミスマッチの範囲は、相補性領域の中心に位置しないことが好ましい。iRNAのアンチセンス鎖が標的配列とのミスマッチを含有する場合、ミスマッチは、相補性領域の5’または3’末端のいずれかから、最後の5ヌクレオチド内に限定されることが好ましい。例えばANGPTL3遺伝子領域に相補的な23ヌクレオチドiRNA剤鎖では、RNA鎖は、一般に、中心的な13ヌクレオチド内にいかなるミスマッチも含有しない。本明細書に記載される方法または当該技術分野で公知の方法を使用して、標的配列とのミスマッチを含有するiRNAが、ANGPTL3遺伝子の発現の阻害に効果的かどうかを判定し得る。ANGPTL3遺伝子の発現の阻害における、ミスマッチがあるiRNAの有効性の検討は、特にANGPTL3遺伝子の特定の相補性領域が、集団内で多型配列バリエーションを有することが知られている場合に、重要である。
III.発明の修飾iRNA
一実施形態では、例えばdsRNAなどの本発明のiRNAのRNAは、未変性であり、例えば当該技術分野で公知であり本明細書に記載される、化学修飾および/または結合を含まない。別の実施形態では、例えばdsRNAなどの発明のiRNAのRNAを化学的に修飾して、安定性またはその他の有益な特性を高める。本発明の特定の実施形態では、本発明のiRNAの実質的に全てのヌクレオチドが修飾されている。本発明の別の実施形態では、本発明のiRNAの全てのヌクレオチドが修飾されている。その中で「実質的に全てのヌクレオチドが修飾された」本発明のiRNAは、ほとんどが修飾されているが完全ではなく、5、4、3、2または1つ以下の非修飾ヌクレオチドを含み得る。
本発明で取り上げる核酸は、参照によって本明細書に援用する、“Current protocols in nucleic acid chemistry,”Beaucage,S.L.et al.(Edrs.),John Wiley & Sons,Inc.,New York,NY,USAに記載されるものなどの当該技術分野で確立された方法によって、合成および/または修飾し得る。例えば修飾としては、例えば5’末端修飾(リン酸化、共役結合、逆転結合)または3’末端修飾(共役結合、DNAヌクレオチド、逆転結合など)などの末端修飾;例えば安定化塩基での、不安定化塩基での、または拡大パートナーのレパートリーと塩基対形成する塩基での置換、塩基除去(脱塩基ヌクレオチド)、または共役結合塩基などの塩基修飾;糖修飾(例えば2’位または4’位における)または糖置換;リン酸ジエステル結合の修飾または置換をはじめとする主鎖修飾が挙げられる。本明細書に記載される実施形態で有用なiRNA化合物の特定の例としては、修飾主鎖を含有するRNA、または天然ヌクレオシド間結合を含有しないRNAが挙げられるが、これに限定されるものではない。修飾主鎖を有するRNAとしては、特に主鎖中にリン原子を有しないものが挙げられる。本明細書の目的では、そして当該技術分野で時に言及されるように、それらのヌクレオシド間主鎖中にリン原子を有しない修飾RNAもまた、オリゴヌクレオシドであると見なされる。いくつかの実施形態では、修飾iRNAは、そのヌクレオシド間主鎖中にリン原子を有する。
修飾RNA主鎖としては、例えばホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートをはじめとするメチルおよびその他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホロアミダートおよびアミノアルキルホスホルアミダートをはじめとするホスホロアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、およびノルマル3’−5’結合、それらの2’−5’連結アナログを有するボラノホスフェート、および隣接するヌクレオシド単位対が3’−5’から5’−3’、または2’−5’から5’−2’に連結する、逆転極性を有するボラノホスフェートが挙げられる。様々な塩、混合塩、および遊離酸形態もまた挙げられる。
上記リン含有結合の調製を教示する、代表的な米国特許としては、その全体がそれぞれ参照によって本明細書によりここに援用される、米国特許第3,687,808号明細書;米国特許第4,469,863号明細書;米国特許第4,476,301号明細書;米国特許第5,023,243号明細書;米国特許第5,177,195号明細書;米国特許第5,188,897号明細書;米国特許第5,264,423号明細書;米国特許第5,276,019号明細書;米国特許第5,278,302号明細書;米国特許第5,286,717号明細書;米国特許第5,321,131号明細書;米国特許第5,399,676号明細書;米国特許第5,405,939号明細書;米国特許第5,453,496号明細書;米国特許第5,455,233号明細書;米国特許第5,466,677号明細書;米国特許第5,476,925号明細書;米国特許第5,519,126号明細書;米国特許第5,536,821号明細書;米国特許第5,541,316号明細書;米国特許第5,550,111号明細書;米国特許第5,563,253号明細書;米国特許第5,571,799号明細書;米国特許第5,587,361号明細書;米国特許第5,625,050号明細書;米国特許第6,028,188号明細書;米国特許第6,124,445号明細書;米国特許第6,160,109号明細書;米国特許第6,169,170号明細書;米国特許第6,172,209号明細書;米国特許第6、239,265号明細書;米国特許第6,277,603号明細書;米国特許第6,326,199号明細書;米国特許第6,346,614号明細書;米国特許第6,444,423号明細書;米国特許第6,531,590号明細書;米国特許第6,534,639号明細書;米国特許第6,608,035号明細書;米国特許第6,683,167号明細書;米国特許第6,858,715号明細書;米国特許第6,867,294号明細書;米国特許第6,878,805号明細書;米国特許第7,015,315号明細書;米国特許第7,041,816号明細書;米国特許第7,273,933号明細書;米国特許第7,321,029号明細書;および米国特許第RE39464号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。
その中にリン原子を含まない修飾RNA主鎖は、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子およびアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1つまたは複数の短鎖ヘテロ原子または複素環式ヌクレオシド間結合によって形成された主鎖を有する。これらとしては、モルホリノ結合(一部はヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン主鎖;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン主鎖;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;アルケン含有主鎖;スルファメート主鎖;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ主鎖;スルホネートおよびスルホンアミド主鎖;アミド主鎖を有するもの;および混合N、O、S、およびCH2構成成分を有するその他のものが挙げられる。
上記オリゴヌクレオシドの調製を教示する、代表的な米国特許としては、その全体がそれぞれ参照によって本明細書によりここに援用される、米国特許第5,034,506号明細書;米国特許第5,166,315;5,185,444号明細書;米国特許第5,214,134号明細書;米国特許第5,216,141号明細書;米国特許第5,235,033号明細書;米国特許第5,64,562号明細書;米国特許第5,264,564号明細書;米国特許第5,405,938号明細書;米国特許第5,434,257号明細書;米国特許第5,466,677号明細書;米国特許第5,470,967号明細書;米国特許第5,489,677号明細書;米国特許第5,541,307号明細書;米国特許第5,561,225号明細書;米国特許第5,596,086号明細書;米国特許第5,602,240号明細書;米国特許第5,608,046号明細書;米国特許第5,610,289号明細書;米国特許第5,618,704号明細書;米国特許第5,623,070号明細書;米国特許第5,663,312号明細書;米国特許第5,633,360号明細書;米国特許第5,677,437号明細書;および米国特許第5,677,439号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。
別の実施形態では、適切なRNA模倣物がiRNA中での使用のために検討され、その中では、糖およびヌクレオシド間結合の双方、すなわち、ヌクレオチド単位の骨格が、新しいグループで置換されている。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。このような1つのオリゴマー化合物であり、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているRNA模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物中では、RNAの糖主鎖が、アミド含有主鎖、特にアミノエチルグリシン主鎖で置換されている。核酸塩基は保持されて、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子と直接または間接的に結合する。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許としては、そのそれぞれの内容全体を参照によって本明細書に援用する、米国特許第5,539,082号明細書;米国特許第5,714,331号明細書;および米国特許第5,719,262号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。さらに本発明のiRNA中で使用するのに適するPNA化合物は、例えばNielsen et al.,Science,1991,254,1497−1500に記載される。
本発明で取り上げるいくつかの実施形態は、ホスホロチオエート主鎖があるRNA、および特に先述の米国特許第5,489,677号明細書の−−CH2−−NH−−CH2−、−−CH2−−N(CH3)−−O−−CH2−−[メチレン(メチルイミノ)またはMMI主鎖として知られている]、−−CH2−−O−−N(CH3)−−CH2−−、−−CH2−−N(CH3)−−N(CH3)−−CH2−−、および−−N(CH3)−−CH2−−CH2−−[天然リン酸ジエステル主鎖は−−O−−P−−O−−CH2−−として表される]であるヘテロ原子主鎖がある、および先述の米国特許第5,602,240号明細書のアミド主鎖がある、オリゴヌクレオシドとを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で取り上げるRNAは、先述の米国特許第5,034,506号明細書のモルホリノ主鎖構造を有する。
修飾RNAはまた、1つまたは複数の置換糖部分を含有し得る。例えば本明細書で取り上げるdsRNAなどのiRNAは、2’位に、OH;F;O−、S−、またはN−アルキル;O−、S−、またはN−アルケニル;O−、S−、またはN−アルキニル;またはO−アルキル−O−アルキルの1つを含み得て、アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、置換または非置換C1〜C10アルキル、またはC2〜C10アルケニルおよびアルキニルであり得る。例示的な適切な修飾としては、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2).nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2(式中、nおよびmは1〜約10である)が挙げられる。別の実施形態では、dsRNAは、2’位に以下の1つを含む:C1〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O−アルカリールまたはO−アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカアリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、介入物、iRNAの薬物動態特性を改善する基、またはiRNAの薬力学的特性を改善する基、および同様の特性を有するその他の置換基。いくつかの実施形態では、修飾は、2’−メトキシエトキシ(2’−O−CH2CH2OCH3、2’−O−(2−メトキシエチル)または2’−MOEとしてもまた知られている)(Martin et al.,Helv.Chim.Acta,1995,78:486−504)、すなわちアルコキシ−アルコキシ基を含む。別の例示的な修飾は、以下に本明細書の実施例で記載されるように、2’−DMAOEとしてもまた知られている、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわちO(CH2)2ON(CH3)2基、および、2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術分野で2’−O−ジメチルアミノエトキシエチルまたは2’−DMAEOEとしても公知である)、すなわち2’−O−CH2−O−CH2−N(CH2)2である。さらに例示的な修飾としては、5’−Me−2’−Fヌクレオチド、5’−Me−2’−OMeヌクレオチド、5’−Me−2’−デオキシヌクレオチド(これら3つのファミリーのRおよびS異性体の双方);2’−アルコキシアルキル;2’−NMA(N−メチルアセトアミド)が挙げられる。
その他の修飾としては、2’−メトキシ(2’−OCH3)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCH2CH2CH2NH2)、および2’−フルオロ(2’−F)が挙げられる。同様の修飾はまた、具体的には3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位、または2’−5’結合dsRNA中、および5’末端ヌクレオチドの5’位など、iRNAのRNA上のその他の位置でも行い得る。iRNAはまた、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣体を有してもよい。上記修飾糖構造の調製を教示する、代表的な米国特許としては、特定のものは本出願と所有者が共通である、米国特許第4,981,957号明細書;米国特許第5,118,800号明細書;米国特許第5,319,080号明細書;米国特許第5,359,044号明細書;米国特許第5,393,878号明細書;米国特許第5,446,137号明細書;米国特許第5,466,786号明細書;米国特許第5,514,785号明細書;米国特許第5,519,134号明細書;米国特許第5,567,811号明細書;米国特許第5,576,427号明細書;米国特許第5,591,722号明細書;米国特許第5,597,909号明細書;米国特許第5,610,300号明細書;米国特許第5,627,053号明細書;米国特許第5,639,873号明細書;米国特許第5,646,265号明細書;米国特許第5,658,873号明細書;米国特許第5,670,633号明細書;および米国特許第5,700,920号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。上記のそれぞれの内容全体を参照によって本明細書によりここに援用する。
本発明のiRNAはまた、核酸塩基(当該技術分野では単に「塩基」と称されることが多い)修飾または置換を含み得る。本明細書の用法では、「未修飾」または「天然」核酸塩基としては、プリン塩基アデニン(A)およびグアニン(G)、およびピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が挙げられる。修飾核酸塩基としては、5−メチルシトシン(5−me−C);5−ヒドロキシメチルシトシン;キサンチン;ヒポキサンチン;2−アミノアデニン;アデニンおよびグアニンの6−メチルおよびその他のアルキル誘導体;アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよびその他のアルキル誘導体;2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン;5−ハロウラシルおよびシトシン;5−プロピニルウラシルおよびシトシン;6−アゾウラシル、シトシン、およびチミン;5−ウラシル(プソイドウラシル);4−チオウラシル;8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよびその他の8置換アデニンおよびグアニン;5−ハロ、具体的には5−ブロモ、5−トリフルオロメチル、およびその他の5置換ウラシルおよびシトシン;7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン;8−アザグアニンおよび8−アザアデニン;7−デアザグアニンおよび7−ダアザアデニン(daazaadenine);および3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンなどのその他の合成および天然核酸塩基が挙げられる。さらに核酸塩基としては、米国特許第3,687,808号明細書で開示されるもの、Modified Nucleosides in Biochemistry,Biotechnology and Medicine,Herdewijn,P.ed.Wiley−VCH,2008で開示されるもの;The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering,pages 858−859,Kroschwitz,J.L,ed.John Wiley & Sons,1990で開示されるもの、Englisch et al.,(1991)Angewandte Chemie,International Edition,30:613によって開示されるもの、およびSanghvi,Y S.,Chapter 15,dsRNA Research and Applications,pages 289−302,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,Ed.,CRC Press, 1993によって開示されるものが挙げられる。これらの核酸塩基のいくつかは、本発明で取り上げるオリゴマー化合物の結合親和性を増大させるのに特に有用である。これらとしては、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシル、および5−プロピニルシトシンをはじめとする、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン、およびN−2、N−6および0−6置換プリンが挙げられる。5−メチルシトシン置換は、核酸二重鎖安定性を0.6〜1.2℃増大させることが示されており(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,Eds.,dsRNA Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276−278)、模範的な塩基置換であり、なおもより特に、2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わされた場合にそうである。
上記の特定の修飾核酸塩基ならびにその他の修飾核酸塩基の調製を教示する、代表的な米国特許としては、その内容全体をそれぞれ参照によって本明細書によりここに援用する、上記の米国特許第3,687,808号明細書、米国特許第4,845,205号明細書;米国特許第5,130,30号明細書;米国特許第5,134,066号明細書;米国特許第5,175,273号明細書;米国特許第5,367,066号明細書;米国特許第5,432,272号明細書;米国特許第5,457,187号明細書;米国特許第5,459,255号明細書;米国特許第5,484,908号明細書;米国特許第5,502,177号明細書;米国特許第5,525,711号明細書;米国特許第5,552,540号明細書;米国特許第5,587,469号明細書;米国特許第5,594,121、5,596,091号明細書;米国特許第5,614,617号明細書;米国特許第5,681,941号明細書;米国特許第5,750,692号明細書;米国特許第6,015,886号明細書;米国特許第6,147,200号明細書;米国特許第6,166,197号明細書;米国特許第6,222,025号明細書;米国特許第6,235,887号明細書;米国特許第6,380,368号明細書;米国特許第6,528,640号明細書;米国特許第6,639,062号明細書;米国特許第6,617,438号明細書;米国特許第7,045,610号明細書;米国特許第7,427,672号明細書;および米国特許第7,495,088号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明のiRNAはまた、1つまたは複数のロックド核酸(LNA:locked nucleic acid)を含むように修飾され得る。ロックド核酸は、修飾リボース部分を有するヌクレオチドであり、その中でリボース部分は、2’および4’炭素を結合する追加の架橋を含んでなる。この構造は、リボースを3’−エンド立体構造内に効果的に「ロック」する。siRNAへのロックド核酸の追加は、血清中のsiRNA安定性を増大させ、非特異的効果を低下させることが示されている(Elmen,J.et al.,(2005)Nucleic Acids Research 33(1):439−447;Mook,OR.et al.,(2007)Mol Canc Ther 6(3):833−843;Grunweller,A.et al.,(2003)Nucleic Acids Research 31(12):3185−3193)。
本発明のiRNAはまた、1つまたは複数の二環式糖部分を含むようにも修飾され得る。「二環式糖」は、2つの原子の架橋によって修飾されるフラノシル環である。「二環式ヌクレオシド」(「BNA」)は、糖環の2つの炭素原子を連結する架橋を含んでなり、それによって二環式環系を形成する糖部分を有するヌクレオシドである。特定の実施形態では、架橋は、糖環の4’−炭素および2’−炭素を連結する。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の作用物質は、1つまたは複数のロックド核酸(LNA)を含んでもよい。ロックド核酸は、修飾されたリボース部分を有するヌクレオチドであり、その中でリボース部分は、2’および4’炭素を連結する追加の架橋を含んでなる。換言すれば、LNAは、4’−CH2−O−2’架橋を含んでなる二環式糖部分を含んでなる、ヌクレオチドである。この構造は、3’エンド立体構造内で、リボースを事実上「ロックする」。siRNAへのロックド核酸の付加は、血清中でsiRNAの安定性を増大させて、オフターゲット効果を低下させることが示されている(Elmen,J.et al.,(2005)Nucleic Acids Research 33(1):439−447;Mook,OR.et al.,(2007)Mol Canc Ther 6(3):833−843;Grunweller,A.et al.,(2003)Nucleic Acids Research 31(12):3185−3193)。本発明のポリヌクレオチド中で使用するための二環式ヌクレオシドの例としては、限定されるものではないが、4’および2’リボシル環原子の間の架橋を含んでなるヌクレオシドが挙げられる。特定の実施形態では、本発明のアンチセンスポリヌクレオチド剤は、4’から2’への架橋を含んでなる、1つまたは複数の二環式ヌクレオシドを含む。このような4’から2’への架橋二環式ヌクレオシドの例としては、4’−(CH2)−O−2’(LNA);4’−(CH2)−S−2’;4’−(CH2)2−O−2’(ENA);4’−CH(CH3)−O−2’(「拘束エチル」または「cEt」とも称される)および4’−CH(CH2OCH3)−O−2’(およびその類似体;例えば、米国特許第7,399,845号明細書を参照されたい);4’−C(CH3)(CH3)−O−2’(およびその類似体;例えば、米国特許第8,278,283号明細書を参照されたい);4’−CH2−N(OCH3)−2’(およびその類似体;例えば、米国特許第8,278,425号明細書を参照されたい);4’−CH2−O−N(CH3)−2’(例えば、米国特許公報第2004/0171570号明細書を参照されたい);4’−CH2−N(R)−O−2’(式中、Rは、H、C1−C12アルキル、または保護基である)(例えば、米国特許第7,427,672号明細書を参照されたい);4’−CH2−C(H)(CH3)−2’(例えば、Chattopadhyaya et al.,J.Org.Chem.,2009,74,118−134を参照されたい);および4’−CH2−C(=CH2)−2’(およびその類似体;例えば、米国特許第8,278,426号明細書を参照されたい)が挙げられるが、これに限定されるものではない。前述の内容全体は、参照により本明細書に援用される。
ロックド核酸ヌクレオチドの調製を教示する、追加的な代表的な米国特許および米国特許公報としては、そのそれぞれの内容全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第6,268,490号明細書;米国特許第6,525,191;6,670,461号明細書;米国特許第6,770,748号明細書;米国特許第6,794,499号明細書;米国特許第6,998,484号明細書;米国特許第7,053,207号明細書;米国特許第7,034,133;7,084,125号明細書;米国特許第7,399,845号明細書;米国特許第7,427,672号明細書;米国特許第7,569,686号明細書;米国特許第7,741,457号明細書;米国特許第8,022,193号明細書;米国特許第8,030,467号明細書;米国特許第8,278,425号明細書;米国特許第8,278,426号明細書;米国特許第8,278,283号明細書;米国特許公開第2008/0039618号明細書;および米国特許公開第2009/0012281号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。
前述の二環式ヌクレオシドのいずれでも、例えば、α−L−リボフラノースおよびβ−D−リボフラノースをはじめとする、1つまたは複数の立体化学的糖配置を有するように調製され得る(国際公開第99/14226号パンフレットを参照されたい)。
本発明のiRNAはまた、1つまたは複数の拘束エチルヌクレオチドを含むように修飾され得る。本明細書の用法では、「拘束エチルヌクレオチド」または「cEt」は、4’−CH(CH3)−0−2’架橋を含んでなる二環式糖部分を含んでなるロックド核酸である。一実施形態では、拘束エチルヌクレオチドは、本明細書で「S−cEt」と称されるS立体配座にある。
本発明のiRNAとしては、1つまたは複数の「立体構造的拘束ヌクレオチド」(「CRN」)もまた挙げられる。CRNは、リボースのC2’およびC4’炭素またはリボースのC3および−C5’炭素を連結するリンカーを有する、ヌクレオチド類似体である。CRNはリボース環を安定した立体配座にロックして、mRNAに対するハイブリダイゼーション親和性を増加させる。リンカーは、酸素を安定性および親和性のために最適な位置に配置させるのに十分な長さであり、リボース環パッカリングの減少がもたらされる。
上記のCRNのいくつかの調製を教示する代表的な文献としては、そのそれぞれの内容全体が参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2013/0190383号明細書;および国際公開第2013/036868号パンフレットが挙げられるが、これに限定されるものではない。
いくつかの実施形態では、本発明のiRNAは、UNA(アンロックド核酸)ヌクレオチドである、1つまたは複数のモノマーを含んでなる。UNAはアンロックド非環式核酸であり、その中では、糖の結合のいずれかが除去されて、アンロックド「糖」残基を形成する。一例では、UNAはまた、C1’−C4’間結合(すなわち、C1’およびC4’炭素の間の炭素−酸素−炭素の共有結合)が除去されている単量体も包含する。別の例では、糖のC2’−C3’結合(すなわち、C2’およびC3’炭素間の共有炭素−炭素結合)が除去されている。(本明細書に参照により援用される、Nuc.Acids Symp.Series,52,133−134(2008)およびFluiter et al.,Mol.Biosyst.,2009,10,1039を参照されたい)。
UNAの調製を教示する代表的な米国の刊行物としては、限定されるものではないが、そのそれぞれの内容全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第8,314,227号明細書;および米国特許出願公開第2013/0096289号明細書;米国特許出願公開第2013/0011922号明細書;および米国特許出願公開第2011/0313020号明細書が挙げられる。
RNA分子末端に対する潜在的安定化修飾としては、N−(アセチルアミノカプロイル)−4−ヒドロキシプロリノール(Hyp−C6−NHAc)、N−(カプロイル−4−ヒドロキシプロリノール(Hyp−C6)、N−(アセチル−4−ヒドロキシプロリノール(Hyp−NHAc)、チミジン−2’−0−デオキシチミジン(エーテル)、N−(アミノカプロイル)−4−ヒドロキシプロリノール(Hyp−C6−アミノ)、2−ドコサノイル−ウリジン−3”−リン酸、逆転塩基dT(idT)などが挙げられる。この修飾の開示は、国際公開第2011/005861号パンフレットにある。
本発明のiRNAのその他の修飾としては、例えば、RNAi剤のアンチセンス鎖上の5’末端リン酸塩またはリン酸塩模倣体などの5’リン酸塩または5’リン酸塩模倣体が挙げられる、適切なリン酸模倣体は、例えば、その内容全体が参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2012/0157511号明細書で開示される。
IV.リガンド共役iRNA
本発明のiRNAのRNAの別の修飾は、iRNAの活性、細胞分布、または細胞内取り込みを高める、1つまたは複数のリガンド、部分または複合体を、RNAに化学的に連結することを伴う。このような部分としては、コレステロール部分(Letsinger et al.,(1989)Proc.Natl.Acid.Sci.USA,86:6553−6556)などの脂質部分;コール酸(Manoharan et al.,(1994)Biorg.Med.Chem.Let.,4:1053−1060);例えばベリル−S−トリチルチオール(Manoharan et al.,(1992)Ann.N.Y.Acad.Sci.,660:306−309;Manoharan et al.,(1993)Biorg.Med.Chem.Let.,3:2765−2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al.,(1992)Nucl.AcidsRes.,20:533−538)などのチオエーテル;例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison−Behmoaras et al.,(1991)EMBO J,10:1111−1118;Kabanov et al.,(1990)FEBS Lett.,259:327−330;Svinarchuk et al.,(1993)Biochimie,75:49−54)などの脂肪族鎖;例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチル−アンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−ホスホネート(Manoharan et al.,(1995)Tetrahedron Lett.,36:3651−3654;Shea et al.,(1990)Nucl.Acids Res.,18:3777−3783)などのリン脂質;ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.,(1995)Nucleosides & Nucleotides,14:969−973);またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al.,(1995)Tetrahedron Lett.,36:3651−3654);パルミチル部分(Mishra et al.,(1995)Biochim.Biophys.Acta,1264:229−237);またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ−カルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al.,(1996)J.Pharmacol.Exp.Ther.,277:923−937)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
一実施形態では、リガンドは、それが組み込まれたiRNA剤の分布、標的化または寿命を変化させる。好ましい実施形態では、リガンドは、例えばこのようなリガンドが不在である化学種と比較して、例えば分子、細胞または細胞型、例えば細胞内または器官内区画などの区画、身体の組織または器官または領域などの選択された標的に対する、改善された親和性を提供する。好ましいリガンドは、二重鎖化核酸中の二本鎖対合形成に加わらない。
リガンドは、タンパク質(例えばヒト血清アルブミン(HSA:human serum albumin)、低密度リポタンパク質(LDL:low−density lipoprotein)、またはグロブリン);炭水化物(例えばデキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、またはヒアルロン酸);または脂質などの天然物質を含み得る。リガンドはまた、例えば合成ポリアミノ酸などの合成ポリマーなど、組換えまたは合成分子であり得る。ポリアミノ酸の例はポリアミノ酸を含み、ポリリジン(PLL)、ポリL−アスパラギン酸、ポリL−グルタミン酸、スチレン−マレイン酸無水物共重合体、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド(glycolied))共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド共重合体(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2−エチルアクリル酸)、N−イソプロピルアクリルアミドポリマー、またはポリホスファジンが挙げられる。ポリアミンの例としては、ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、擬ペプチド−ポリアミン、ペプチド模倣ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミン四級塩、またはαらせんペプチドである。
リガンドはまた、例えばレクチン、糖タンパク質、脂質またはタンパク質など、例えば腎細胞などの特定細胞型に結合する抗体である、細胞または組織標的化剤などの標的化基を含み得る。標的化基は、甲状腺刺激ホルモン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、界面活性剤プロテインA、ムチン炭水化物、多価乳糖、多価ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン、N−アセチルグルコサミン多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸、ビタミンB12、ビタミンA、ビオチン、またはRGDペプチドまたはRGDペプチド模倣体であり得る。
リガンドのその他の例としては、染料、挿入剤(例えばアクリジン)、架橋剤(例えばソラレン(psoralene)、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えばフェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えばEDTA)、例えばコレステロールなどの親油性分子、コール酸、アダマンタン酢酸、1−ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3−ビス−O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3−プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3−(オレオイル)リトコール酸、O3−(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)およびペプチド複合体(例えばアンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、ホスフェート、アミノ、メルカプト、PEG(例えばPEG−40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカ、酵素、ハプテン(例えばビオチン)、輸送/吸収促進薬(例えばアスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えばイミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン−イミダゾール複合体、テトラアザ大環状化合物のEu3+複合体)、ジニトロフェニル、HRP、またはAPが挙げられる。
リガンドは、例えば糖タンパク質などのタンパク質;または例えば共リガンドに特異的親和性を有する分子などのペプチド;または例えば肝臓細胞などの指定された細胞型に結合する抗体などの抗体であり得る。リガンドはまた、ホルモンおよびホルモン受容体を含んでもよい。それらはまた、脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補助因子、多価乳糖、多価ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン、N−アセチル−グルコサミン多価マンノース、または多価フコースなどの非ペプチド化学種を含み得る。リガンドは、例えばリポ多糖、p38 MAPキナーゼ活性化因子、またはNF−κB活性化因子であり得る。
リガンドは、例えば細胞の微小管、微小繊維、および/または中間径フィラメントを破壊することで、例えば細胞の細胞骨格を破壊することにより、細胞へのiRNA剤の取り込みを増大させ得る薬剤などの物質であり得る。薬剤は、例えばタキソン(taxon)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャプラキノリド(japlakinolide)、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホリドA、インダノシン、またはミオセルビンであり得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるiRNAに付着するリガンドは、薬物動態調節因子(PK調節因子)を指す。PK調節因子としては、親油性物質、胆汁酸、ステロイド、リン脂質類似体、ペプチド、タンパク質結合剤、PEG、ビタミンなどが挙げられる。例示的なPK調節因子としては、コレステロール、脂肪酸、コール酸、リトコール酸、ジアルキルグリセリド、ジアシルグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、ナプロキセン、イブプロフェン、ビタミンE、ビオチンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。いくつかのホスホロチオエート結合を含んでなるオリゴヌクレオチドもまた、血清タンパク質に結合することが、知られており、したがって例えば、主鎖中に複数のホスホロチオエート結合を含んでなる、約5塩基、10塩基、15塩基、または20塩基オリゴヌクレオチドなどの短鎖オリゴヌクレオチドもまた、リガンドとして(例えばPK調節リガンドとして)本発明に適している。これに加えて、血清成分(例えば血清タンパク質)に結合するアプタマーもまた、本明細書に記載される実施形態中で、PK調節リガンドとして使用するのに適する。
本発明のリガンド共役オリゴヌクレオチドは、結合分子のオリゴヌクレオチド上への付加から誘導されるものなどの、ペンダント反応性官能基を有するオリゴヌクレオチドの使用によって、合成してもよい(下述)。この反応性オリゴヌクレオチドは、市販のリガンド、多様な保護基のいずれかを有する合成されたリガンド、または付着する結合部分を有するリガンドと、直接反応させてもよい。
本発明の複合体で使用されるオリゴヌクレオチドは、好都合に、そして慣例的に、周知の固相合成技術を通じて生成されてもよい。このような合成のための装置は、Applied Biosystems(Foster City,Calif.)をはじめとする、いくつかの供給業者によって販売される。それに加えて、または代案として、当該技術分野で公知のこのような合成のためのその他のあらゆる手段を用いてもよい。同様の技術を使用して、ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体などのその他のオリゴヌクレオチドを調製することもまた知られている。
本発明のリガンド共役オリゴヌクレオチド、およびリガンド分子を保有する配列特異的結合ヌクレオシド中では、オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオシドは、標準ヌクレオチドまたはヌクレオシド前駆体、または既に結合部分を保有するヌクレオチドまたはヌクレオシド複合体前駆体、既にリガンド分子を保有するリガンド−ヌクレオチドまたはヌクレオシド−複合体前駆体、または非ヌクレオシドリガンドを保有する基本単位を使用して、適切なDNA合成機上で組み立ててもよい。
既に結合部分を有するヌクレオチド複合体前駆体を使用する場合、配列特異的結合ヌクレオシドの合成が典型的に完了し、次にリガンド分子が結合部分と反応されて、リガンド共役オリゴヌクレオチドが生成する。いくつかの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドまたは結合ヌクレオシドは、市販されて、慣例的にオリゴヌクレオチド合成で使用される、標準ホスホラミダイトおよび非標準ホスホラミダイトに加えて、リガンド−ヌクレオシド複合体から誘導されるホスホラミダイトを使用して、自動合成装置によって合成される。
A.脂質複合体
1つの実施形態では、リガンドまたは複合体は、脂質または脂質ベースの分子である。このような脂質または脂質ベースの分子は、好ましくは、例えばヒト血清アルブミン(HSA)などの血清タンパク質と結合する。HSA結合リガンドは、例えば身体の非腎臓標的組織などの標的組織への複合体の分布を可能にする。例えば標的組織は、肝臓の実質細胞をはじめとする肝臓であり得る。HSAに結合し得るその他の分子もまた、リガンドとして使用し得る。例えばネプロキシンまたはアスピリンを使用し得る。脂質または脂質ベースのリガンドは、(a)複合体の分解耐性を増大させ得て、(b)標的細胞または細胞膜の標的化またはそれへの輸送を増大させ得て、および/または(c)例えばHSAなどの血清タンパク質の結合を調節するのに使用し得る。
例えば複合体の標的組織への結合を制御するなど、阻害のために、脂質ベースのリガンドを使用し得る。例えばより強力にHSAに結合する脂質または脂質ベースのリガンドは、腎臓に標的化される可能性がより低く、したがって身体から除去される可能性がより低い。より弱くHSAに結合する脂質または脂質ベースのリガンドは、複合体を腎臓に標的化するのに使用し得る。
好ましい実施形態では、脂質ベースのリガンドはHSAに結合する。好ましくは、それは、複合体が好ましくは非腎臓組織に分布するように、十分な親和性でHSAと結合する。しかし親和性は、HSAリガンド結合が逆転され得ない程度にまで、強力ではないことが好ましい。
別の好ましい実施形態では、複合体が好ましくは腎臓に分布するように、脂質ベースのリガンドはHSAと弱く結合し、または全く結合しない。腎細胞を標的とするその他の部分もまた、脂質ベースのリガンドに代えて、またはそれに加えて使用し得る。
別の態様では、リガンドは、例えば増殖細胞などの標的細胞に取り込まれる、ビタミンなどの部分である。これらは、例えばがん細胞などの悪性または非悪性型などの望まれない細胞増殖によって特徴付けられる障害を治療するのに、特に有用である。例示的なビタミンとしては、ビタミンA、E、およびKが挙げられる。その他の例示的なビタミンとしては、例えば葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサールなどのBビタミン、または肝臓細胞などの標的細胞に取り込まれるその他のビタミンまたは栄養素が挙げられる。またHSAおよび低密度リポタンパク質(LDL)も挙げられる。
B.細胞透過剤
別の態様では、リガンドは細胞透過剤であり、好ましくはらせん細胞透過剤である。好ましくは、細胞透過剤は両親媒性である。例示的な細胞透過剤は、tatまたはアンテノペディア(antennopedia)などのペプチドである。細胞透過剤がペプチドである場合、それはペプチジル模倣薬、逆転異性体、非ペプチドまたは偽ペプチド結合、およびD−アミノ酸使用をはじめとする、修飾を受け得る。らせん剤は、好ましくは親油性および疎油性相を有するα−らせん剤である。
リガンドは、ペプチドまたはペプチド模倣体であり得る。ペプチド模倣薬(本明細書においてオリゴペプチド模倣薬とも称される)は、天然ペプチドに類似する定義された三次元構造に折り畳み可能な分子である。ペプチドおよびペプチド模倣薬のiRNA剤への付加は、細胞認識と吸収の促進などにより、iRNAの薬物動態分布に影響を及ぼし得る。ペプチドまたはペプチド模倣薬部分は、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸長など、約5〜50アミノ酸長であり得る。
ペプチドまたはペプチド模倣薬は、例えば細胞透過性ペプチド、カチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、または疎水性ペプチド(例えば主にTyr、TrpまたはPheからなる)であり得る。ペプチド部分は、デンドリマーペプチド、束縛ペプチドまたは架橋ペプチドであり得る。別の代案では、ペプチド部分は、疎水性膜移行配列(MTS)を含み得る。例示的な疎水性MTS含有ペプチドは、アミノ酸配列AAVALLPAVLLALLAP(配列番号13)を有するRFGFである。疎水性MTSを含有するRFGF類似体(例えばアミノ酸配列AALLPVLLAAP(配列番号10))もまた、標的部分であり得る。ペプチド部分は、細胞膜を越えて、ペプチド、オリゴヌクレオチド、およびタンパク質をはじめとする、多数の極性分子を輸送し得る「送達」ペプチドであり得る。例えばHIV Tatタンパク質(GRKKRRQRRRPPQ(配列番号11))およびショウジョウバエ(Drosophila)アンテナペディアタンパク質(RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号12))からの配列は、送達ペプチドとして機能できることが分かっている。ペプチドまたはペプチド模倣薬は、ファージ−ディスプレイライブラリー、または1ビーズ1化合物(OBOC)コンビナトリアルライブラリーから同定されるペプチドなどの、DNAのランダム配列によってコードされ得る(Lam et al.,Nature,354:82−84,1991)。細胞標的化目的のために、組み込まれたモノマー単位を通じて、dsRNA作用物質に係留されるペプチドまたはペプチド模倣体の例は、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)−ペプチド、またはRGD模倣体である。ペプチド部分は、約5アミノ酸〜約40アミノ酸長に及び得る。ペプチド部分は、安定性を増大させ、または立体構造特性を誘導するような、構造修飾を有し得る。下述の構造修飾のいずれかを使用し得る。
本発明の組成物および方法で使用されるRGDペプチドは、直鎖または環状であってもよく、例えばグリコシル化またはメチル化により修飾して、特定組織への標的化を容易にしてもよい。RGD含有ペプチドおよびペプチド模倣剤(peptidiomimemtics)としては、D−アミノ酸、ならびに合成RGD模倣体が挙げられる。RGDに加えて、インテグリンリガンドを標的にするその他の部分を使用し得る。このリガンドの好ましい複合体は、PECAM−1またはVEGFを標的にする。
「細胞透過性ペプチド」は、例えば細菌または真菌細胞などの微生物細胞、またはヒト細胞などの哺乳類細胞などの細胞に浸透できる。微生物細胞透過性ペプチドは、例えばα−らせん直鎖ペプチド(例えばLL−37またはセクロピン(Ceropin)P1)、ジスルフィド結合含有ペプチド(例えばα−デフェンシン、β−デフェンシンまたはバクテネシン)、または1つまたは2つの主要アミノ酸(例えばPR−39またはインドリシジン)のみを含有するペプチドであり得る。細胞透過性ペプチドはまた、核局在化シグナル(NLS)を含み得る。例えば細胞透過性ペプチドは、HIV−1 gp41の融合ペプチドドメインおよびSV40大型T抗原のNLSに由来する、MPGなどの二分両親媒性ペプチドであり得る(Simeoni et al.,Nucl.Acids Res.31:2717−2724,2003)。
C.炭水化物複合体
本発明の組成物および方法のいくつかの実施形態では、iRNAオリゴヌクレオチドは、炭水化物をさらに含んでなる。炭水化物共役iRNAは、本明細書に記載されるような、核酸ならびに生体内治療用途に適する組成物の生体内送達に、有利である。本明細書の用法では、「炭水化物」は、各炭素原子に結合する酸素、窒素またはイオウ原子がある、少なくとも6個の炭素原子(直鎖、分枝または環状であり得る)を有する、1つまたは複数の単糖単位で構成される炭水化物それ自体;各炭素原子に結合する酸素、窒素またはイオウ原子がある、少なくとも6個の炭素原子(直鎖、分枝または環状であり得る)をそれぞれ有する、1つまたは複数の単糖単位で構成される炭水化物部分をその一部として有する化合物のいずれかである化合物を指す。代表的な炭水化物としては、糖類(単糖類、二糖類、三糖類、および約4、5、6、7、8、または9個の単糖単位を含有するオリゴ糖類)、およびデンプン、グリコーゲン、セルロース、および多糖類ガムなどの多糖類が挙げられる。特定の単糖類としては、C5以上(例えばC5、C6、C7、またはC8)の糖類が挙げられ;二および三糖類としては、2または3個の単糖単位を有する糖類が挙げられる(例えばC5、C6、C7、またはC8)。
一実施形態では、本発明の組成物および方法で使用される炭水化物複合体は単糖である。一実施形態では、単糖は、
などのN−アセチルガラクトサミンである。
別の実施形態では、本発明の組成物および方法で使用される炭水化物複合体は、
からなる群から選択される。
本明細書に記載される実施形態で使用される別の代表的な炭水化物複合体としては、
(式中、
XまたはYの一方はオリゴヌクレオチドであり、他方は水素である)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明の特定の実施形態では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、一価のリンカーを介して本発明のiRNA剤に付着する。いくつかの実施形態では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、二価のリンカーを介して本発明のiRNA剤に付着する。本発明のなおも別の実施形態では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、三価のリンカーを介して本発明のiRNA剤に付着する。
一実施形態では、本発明の二本鎖RNAi剤は、iRNA剤に付着する1つのGalNAcまたはGalNAc誘導体を含んでなる。別の実施形態では、本発明の二本鎖RNAi剤は、それぞれ独立して複数の一価リンカーを介して二本鎖RNAi剤の複数のヌクレオチドに付着する、複数の(例えば、2、3、4、5、または6つの)GalNAcまたはGalNAc誘導体を含んでなる。
いくつかの実施形態では、例えば、本発明のiRNA剤の2つの鎖が、一方の鎖の3’末端とそれぞれの他方の鎖の5’末端との間の中断のないヌクレオチド鎖によって連結されて、複数の不対ヌクレオチドを含んでなるヘアピンループを形成する、1つのより大きな分子の一部である場合、ヘアピンループ内の各不対ヌクレオチドは、独立して、一価のリンカーを介して付着するGalNAcまたはGalNAc誘導体を含んでなってもよい。
いくつかの実施形態では、炭水化物複合体は、PK調節因子および/または細胞透過性ペプチドなどであるが、これに限定されるものではない、上述の1つまたは複数の追加的なリガンドをさらに含んでなる。
本発明で使用するのに適した追加的な炭水化物複合体(およびリンカー)としては、そのそれぞれの内容全体が参照により本明細書に援用される、国際公開第2014/179620号パンフレットおよび国際公開第2014/179627号パンフレットに記載されるものが挙げられる。
D.リンカー
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される複合体またはリガンドは、切断可能または切断不能であり得る、様々なリンカーによって、iRNAオリゴヌクレオチドに付着し得る。
「リンカー」または「連結基」という用語は、例えば化合物の2つの部分に共有結合するなどの、化合物の2つの部分を結合する有機部分を意味する。リンカーは、典型的に、直接結合、または酸素またはイオウなどの原子、NR8、C(O)、C(O)NH、SO、SO2、SO2NHなどの単位、または置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘレロシクリルアルキニル(alkylhererocyclylalkynyl)、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘレロアリール(alkynylhereroaryl)などであるが、これに限定されるものではない原子鎖を含んでなり、その1つまたは複数のメチレンは、O、S、S(O)、SO2、N(R8)、C(O)、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換複素環(式中、R8は水素、アシル、脂肪族または置換脂肪族である)によって中断されまたは終結され得る。一実施形態では、リンカーは、約1〜24個の原子、2〜24個の原子、3〜24個の原子、4〜24個の原子、5〜24個の原子、6〜24個の原子、6〜18個の原子、7〜18個の原子、7〜17個の原子、8〜17個の原子、6〜16個の原子、7〜17個の原子、または、8〜16個の原子である。
切断可能連結基は、細胞外で十分に安定しているが、標的細胞への侵入時に切断されて、リンカーがつなぎ止めている2つの部分を放出するものである。好ましい実施形態では、切断可能連結基は、標的細胞中で、または第1の標準状態下(例えば細胞内条件を模倣し、またはそれに相当するように選択し得る)で、対象の血中において、または第2の標準状態下(例えば血中または血清に見られる条件を模倣し、またはそれに相当するように選択し得る)よりも、少なくとも約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍以上、または少なくとも約100倍より迅速に切断される。
切断可能連結基は、例えばpH、酸化還元電位または分解性分子の存在などの切断作用物質の影響を受けやすい。一般に切断作用物質は、血清または血液中よりも細胞中でより一般的であり、またはより高いレベルまたは活性で見られる。このような分解性作用物質の例としては、例えば還元によって酸化還元切断可能連結基を分解し得る、細胞中に存在する、酸化または還元酵素またはメルカプタンなどの還元剤をはじめとする、特定の基質のために選択された、または基質特異性がない酸化還元剤;エステラーゼ;エンドソームまたは例えば5以下のpHをもたらすものなどの酸性環境をもたらし得る作用物質;一般酸、ペプチダーゼ(基質特異性であり得る)、およびホスファターゼとして作用することで、酸切断可能連結基を加水分解または分解し得る酵素が挙げられる。
ジスルフィド結合などの切断可能連結基は、pHに対する感受性が高くあり得る。ヒト血清のpHが7.4であるのに対し、細胞内平均pHはわずかにより低く、約7.1〜7.3の範囲にわたる。エンドソームは、5.5〜6.0の範囲のより酸性のpHを有し、リソソームは、約5.0のさらにより酸性のpHを有する。いくつかのリンカーは、好ましいpHで切断される切断可能連結基を有し、それによって細胞中のリガンドから、または細胞の所望の区画へ、カチオン性脂質が放出される。
リンカーは、特定の酵素によって切断可能な切断可能連結基を含み得る。リンカーに組み込まれる切断可能連結基のタイプは、標的とされる細胞に左右され得る。例えば肝臓を標的化するリガンドは、エステル基を含むリンカーを通じてカチオン性脂質に連結し得る。肝細胞はエステラーゼに富み、したがってリンカーは、エステラーゼが豊富でない細胞型よりも、肝細胞中でより効率的に切断される。エステラーゼに富むその他の細胞型としては、肺、腎皮質、および精巣の細胞が挙げられる。
ペプチド結合を含有するリンカーは、肝細胞および滑膜細胞などのペプチダーゼに富んだ細胞型を標的化する際に使用し得る。
一般に切断可能連結基の候補の適合性は、候補連結基を切断する分解性作用物質(条件)の能力を検査することで評価し得る。切断可能連結基の候補は、血中において、またはその他の非標的組織との接触時に、切断に抵抗する能力についてもまた検査することもまた望ましい。したがって第1の条件が標的細胞中での切断を示すように選択され、第2の条件がその他の組織または例えば血液または血清などの生体液中での切断を示すように選択される、第1および第2の条件間の切断の相対的感受性を判定し得る。評価は、無細胞系中、細胞中、細胞培養中、臓器または組織培養中、または全身の動物中で実施し得る。無細胞または培養条件で最初の評価を行い、全身の動物中でのさらなる評価によって確認することが有用なこともあり得る。好ましい実施形態では、有用な候補化合物は、血液または血清(または細胞外条件を模倣するように選択された生体外条件下)と比較して、細胞中(または細胞内条件を模倣するように選択された生体外条件下)で、少なくとも約2、4、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100倍より迅速に切断される。
i.酸化還元切断可能連結基
1つの実施形態では、切断可能連結基は、還元または酸化に際して切断される酸化還元切断可能連結基である。還元的切断可能連結基の一例は、ジスルフィド連結基(−S−S−)である。切断可能連結基候補が、適切な「還元的切断可能連結基」か、または例えば特定のiRNA部分および特定の標的作用物質と共に使用するのに適するかどうかを判定するために、本明細書に記載される方法に頼ることができる。例えば候補は、例えば標的細胞などの細胞中で観察される切断速度を模倣する、当該技術分野で公知の試薬を使用して、ジチオスレイトール(DTT)、またはその他の還元剤とのインキュベーションによって評価し得る。候補はまた、血液または血清条件を模倣するように選択される条件下で評価し得る。1つの候補化合物は、血中で最大で約10%切断される。他の実施形態では、有用な候補化合物は、血液(または細胞外条件を模倣するように選択された生体外条件下)と比較して、細胞中(または細胞内条件を模倣するように選択された生体外条件下)で、少なくとも約2、4、10、20、30、40、50、60、70、80、90または約100倍より迅速に分解される。候補化合物の切断速度は、細胞内媒体を模倣するように選択された条件下で標準酵素動態アッセイを使用して、細胞外媒体を模倣するように選択された条件と比較して判定し得る。
ii.リン酸ベースの切断可能連結基
別の実施形態では、切断可能なリンカーは、リン酸ベースの切断可能連結基を含んでなる。リン酸ベースの切断可能連結基は、リン酸基を分解または加水分解する作用物質によって切断され得る。細胞中でリン酸基を切断する作用物質の一例は、細胞内のホスファターゼなどの酵素である。リン酸ベースの連結基の例は、−O−P(O)(ORk)−O−、−O−P(S)(ORk)−O−、−O−P(S)(SRk)−O−、−S−P(O)(ORk)−O−、−O−P(O)(ORk)−S−、−S−P(O)(ORk)−S−、−O−P(S)(ORk)−S−、−S−P(S)(ORk)−O−、−O−P(O)(Rk)−O−、−O−P(S)(Rk)−O−、−S−P(O)(Rk)−O−、−S−P(S)(Rk)−O−、−S−P(O)(Rk)−S−、−O−P(S)(Rk)−S−である。好ましい実施形態は、−O−P(O)(OH)−O−、−O−P(S)(OH)−O−、−O−P(S)(SH)−O−、−S−P(O)(OH)−O−、−O−P(O)(OH)−S−、−S−P(O)(OH)−S−、−O−P(S)(OH)−S−、−S−P(S)(OH)−O−、−O−P(O)(H)−O−、−O−P(S)(H)−O−、−S−P(O)(H)−O、−S−P(S)(H)−O−、−S−P(O)(H)−S−、−O−P(S)(H)−S−である。好ましい実施形態は、−O−P(O)(OH)−O−である。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
iii.酸切断可能連結基
別の実施形態では、切断可能なリンカーは、酸切断可能連結基を含んでなる。酸切断可能連結基は、酸性条件下で切断される連結基である。好ましい実施形態では、酸切断可能連結基は、pH約6.5以下(例えば約6.0、5.75、5.5、5.25、5.0以下)の酸性環境内において、または一般酸として作用し得る酵素などの作用物質によって切断される。細胞内では、エンドソームおよびリソソームなどの特定の低pH細胞小器官が、酸切断可能連結基の切断環境を提供し得る。酸切断可能連結基の例としては、ヒドラゾン、エステル、およびアミノ酸エステルが挙げられるが、これに限定されるものではない。酸切断可能基は、一般式−C=NN−、C(O)O、または−OC(O)を有し得る。好ましい実施形態は、炭素がエステルの酸素に付着する場合(アルコキシ基)は、アリール基、置換アルキル基、またはジメチルペンチルまたはt−ブチルなどの三級アルキル基である。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
iv.エステルベースの連結基
別の実施形態では、切断可能なリンカーは、エステルベースの切断可能連結基を含んでなる。エステルベースの切断可能連結基は、細胞内でエステラーゼおよびアミダーゼなどの酵素によって切断される。エステルベースの切断可能連結基の例としては、アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレン基のエステルが挙げられるが、これに限定されるものではない。エステル切断可能連結基は、一般式−C(O)O−または−OC(O)−を有する。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
v.ペプチドベースの切断基
さらに別の実施形態では、切断可能なリンカーは、ペプチドベースの切断可能連結基を含んでなる。ペプチドベースの切断可能連結基は、細胞内で、ペプチダーゼおよびプロテアーゼなどの酵素によって切断される。ペプチドベースの切断可能連結基は、アミノ酸の間に形成されて、オリゴペプチド(例えばジペプチド、トリペプチドなど)およびポリペプチドを生じる、ペプチド結合である。ペプチドベースの切断可能基には、アミド基(−C(O)NH−)は含まれない。アミド基は、あらゆるアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレン(alkynelene)間に形成され得る。ペプチド結合は、アミノ酸の間に形成されて、ペプチドおよびタンパク質を生じる特殊なタイプのアミド結合である。ペプチドベースの切断基は、一般にアミノ酸の間に形成されて、ペプチドおよびタンパク質を生じるペプチド結合(すなわちアミド結合)に限定され、アミド官能基全体は含まない。ペプチドベースの切断可能連結基は、一般式−NHCHRAC(O)NHCHRBC(O)−を有し、式中、RAおよびRBは2つの隣接するアミノ酸のR基である。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
一実施形態では、本発明のiRNAは、リンカーを通じて炭水化物と共役する。本発明の組成物および方法のリンカーと共役するiRNA炭水化物の非限定的例としては、
(式中、
XまたはYの一方はオリゴヌクレオチドであり、他方は水素である)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明の組成物および方法の特定の実施形態では、リガンドは、二価または三価の分枝リンカーを通じて付着する1つまたは複数のGalNAc(N−アセチルガラクトサミン)誘導体である。
一実施形態では、本発明のdsRNAは、
式(XXXII)〜(XXXV)、
(式中、
q2A、q2B、q3A、q3B、q4A、q4B、q5A、q5B、およびq5Cは、独立して、0〜20の各出現を表し、反復単位は、同一であるかまたは異なり得て;
P
2A、P
2B、P
3A、P
3B、P
4A、P
4B、P
5A、P
5B、P
5C、T
2A、T
2B、T
3A、T
3B、T
4A、T
4B、T
4A、T
5B、T
5Cは、各出現についてそれぞれ独立して、不在、CO、NH、O、S、OC(O)、NHC(O)、CH
2、CH
2NHまたはCH
2Oであり;
Q
2A、Q
2B、Q
3A、Q
3B、Q
4A、Q
4B、Q
5A、Q
5B、Q
5Cは、各出現についてそれぞれ独立して、不在、アルキレン、置換アルキレンであり、1つまたは複数のメチレンは、O、S、S(O)、SO
2、N(R
N)、C(R’)=C(R’’)、C≡CまたはC(O)の1つまたは複数によって中断または終結され得て;
R
2A、R
2B、R
3A、R
3B、R
4A、R
4B、R
5A、R
5B、R
5Cは、各出現についてそれぞれ独立して、不在、NH、O、S、CH
2、C(O)O、C(O)NH、NHCH(R
a)C(O)、−C(O)−CH(R
a)−NH−、CO、CH=N−O、
またはヘテロシクリルであり;
L
2A、L
2B、L
3A、L
3B、L
4A、L
4B、L
5A、L
5BおよびL
5Cはリガンドを表し;すなわち各出現についてそれぞれ独立して、単糖(GalNAcなど)、二糖類、三糖、四糖、オリゴ糖、または多糖類であり;R
aは、Hまたはアミノ酸側鎖である)のいずれかで示される構造群から選択される、二価または三価の分枝リンカーと共役する。三価の共役GalNAc誘導体は、
式(XXXVI)、
(式中、
L
5A、L
5BおよびL
5Cは、GalNAc誘導体などの単糖を表す)などの標的遺伝子の発現を阻害するために、RNAi剤と共に使用するのに特に有用である。
GalNAc誘導体に共役する適切な二価および三価の分枝リンカー基の例としては、式II、VII、XI、X、およびXIIIとして、上で列挙された構造が挙げられるが、これに限定されるものではない。
RNA複合体の調製を教示する、代表的な米国特許としては、そのそれぞれの内容全体を参照によって本明細書によりここに援用する、米国特許第4,828,979号明細書;米国特許第4,948,882号明細書;米国特許第5,218,105号明細書;米国特許第5,525,465号明細書;米国特許第5,541,313号明細書;米国特許第5,545,730号明細書;米国特許第5,552,538号明細書;米国特許第5,578,717号明細書、米国特許第5,580,731号明細書;米国特許第5,591,584号明細書;米国特許第5,109,124号明細書;米国特許第5,118,802号明細書;米国特許第5,138,045号明細書;米国特許第5,414,077号明細書;米国特許第5,486,603号明細書;米国特許第5,512,439号明細書;米国特許第5,578,718号明細書;米国特許第5,608,046号明細書;米国特許第4,587,044号明細書;米国特許第4,605,735号明細書;米国特許第4,667,025号明細書;米国特許第4,762,779号明細書;米国特許第4,789,737号明細書;米国特許第4,824,941号明細書;米国特許第4,835,263号明細書;米国特許第4,876,335号明細書;米国特許第4,904,582号明細書;米国特許第4,958,013号明細書;米国特許第5,082,830号明細書;米国特許第5,112,963号明細書;米国特許第5,214,136号明細書;米国特許第5,082,830号明細書;米国特許第5,112,963号明細書;米国特許第5,214,136号明細書;米国特許第5,245,022号明細書;米国特許第5,254,469号明細書;米国特許第5,258,506号明細書;米国特許第5,262,536号明細書;米国特許第5,272,250号明細書;米国特許第5,292,873号明細書;米国特許第5,317,098号明細書;米国特許第5,371,241号明細書、米国特許第5,391,723号明細書;米国特許第5,416,203号明細書、米国特許第5,451,463号明細書;米国特許第5,510,475号明細書;米国特許第5,512,667号明細書;米国特許第5,514,785号明細書;米国特許第5,565,552号明細書;米国特許第5,567,810号明細書;米国特許第5,574,142号明細書;米国特許第5,585,481号明細書;米国特許第5,587,371号明細書;米国特許第5,595,726号明細書;米国特許第5,597,696号明細書;米国特許第5,599,923号明細書;米国特許第5,599,928および5,688,941号明細書;米国特許第6,294,664号明細書;米国特許第6,320,017号明細書;米国特許第6,576,752号明細書;米国特許第6,783,931号明細書;米国特許第6,900,297号明細書;米国特許第7,037,646号明細書、米国特許第8,106,022号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。
所与の化合物中の全ての位置が一様に修飾される必要はなく、事実上、前述の修飾の2つ以上が、単一化合物中に、またはiRNA内の単一ヌクレオシド中にさえ、組み込まれ得る。本発明は、キメラ化合物であるiRNA化合物もまた含む。
「キメラ(chimeric)」iRNA化合物または「キメラ(chimeras)」は、本発明の文脈で、それぞれ少なくとも1つのモノマー単位から、すなわちdsRNA化合物の場合はヌクレオチドから構成される、2つ以上の化学的に異なる領域を含有するiRNA化合物、好ましくはdsRNAである。これらのiRNAは、典型的に、iRNAに、ヌクレアーゼ分解に対する耐性の増大、細胞内取り込みの増大、および/または標的核酸に対する結合親和性の増大を与えるように、RNAが修飾される少なくとも1つの領域を含有する。iRNAの追加的な領域が、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断できる、酵素基質の役割を果たしてもよい。一例として、RNase Hは、RNA:DNA二本鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。したがってRNase Hの活性化はRNA標的の切断をもたらし、それによって遺伝子発現のiRNA阻害効率を大幅に高める。その結果、同一標的領域とハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシdsRNAと比較して、キメラdsRNAが使用される場合、より短いiRNAによって、比較できる結果が得られることが多い。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動、そして必要ならば当該技術分野で公知の関連核酸ハイブリダイゼーション技術によって、慣例的に検出し得る。
場合によっては、iRNAのRNAは、非リガンド基によって修飾し得る。iRNAの活性、細胞分布または細胞内取り込みを高めるために、いくつかの非リガンド分子がiRNAに共役結合されており、このような共役結合を実施する手順は、学術文献で入手できる。このような非リガンド部分は、コレステロールなどの脂質部分(Kubo,T.et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.,2007,365(1):54−61;Letsinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989,86:6553)、コール酸(Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,1994,4:1053)、例えばヘキシル−S−トリチルチオールなどのチオエーテル(Manoharan et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,1992,660:306;Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Let.,1993,3:2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al.,Nucl.Acids Res.,1992,20:533)、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基などの脂肪族鎖(Saison−Behmoaras et al.,EMBO J.,1991,10:111;Kabanov et al.,FEBS Lett.,1990,259:327;Svinarchuk et al.,Biochimie,1993,75:49)、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネートなどのリン脂質(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651;Shea et al.,Nucl.Acids Res.,1990,18:3777)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.,Nucleosides & Nucleotides,1995,14:969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651)、パルミチル部分(Mishra et al.,Biochim.Biophys.Acta,1995,1264:229)、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crooke et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,1996,277:923)を含む。このようなRNA複合体の調製を教示する代表的な米国特許は、上に列挙した。典型的な共役結合プロトコルは、配列の1つまたは複数の位置にアミノリンカーを有するRNAの合成を伴う。次に適切なカップリングまたは活性化試薬を使用して、アミノ基を共役結合する分子と反応させる。共役結合反応は、溶液相中で、RNAが固体支持体になおも結合する間に、またはRNA切断に続いて実施することができる。HPLCによるRNA複合体精製は、典型的に純粋な複合体を与える。
IV.発明のiRNAの送達
例えばヒト対象(例えば脂質代謝の障害を有する対象などのそれを必要とする対象)などの対象内の細胞などの細胞への本発明のiRNAの送達は、いくつかの異なる方法で達成し得る。例えば送達は、試験管内または生体内のどちらかで、細胞を本発明のiRNAに接触させることで実施してもよい。生体内送達はまた、例えばdsRNAなどのiRNAを含んでなる組成物を対象に投与することで直接実施してもよい。代案としては、生体内送達は、iRNAをコードして発現を誘導する、1つまたは複数のベクターを投与することで、間接的に実施してもよい。これらの代替案は、下でさらに考察される。
一般に、(試験管内または生体内で)核酸分子を送達するあらゆる方法が、本発明のiRNAで使用するために適応させ得る(例えば、その内容全体を参照によって本明細書に援用する、Akhtar S.and Julian RL.(1992)Trends Cell.Biol.2(5):139−144および国際公開第94/02595号パンフレットを参照されたい)。生体内送達では、iRNA分子を送達するために検討すべき要素としては、例えば、送達分子の生物学的安定性、非特異的効果の防止、および標的組織中の送達分子の蓄積が挙げられる。iRNAの非特異的効果は、例えば組織内への直接注射または移植または製剤を局所投与するなどの局所投与によって最小化し得る。治療部位への局所投与は、作用物質の局所濃度を最大化し、そうしなければ作用物質によって害を被り得る、または作用物質を分解し得る、全身組織の作用物質への曝露を限定し、iRNA分子のより低い総用量での投与を可能にする。いくつかの研究は、iRNAが局所的に投与された場合に、成功裏の遺伝子産物ノックダウン示している。例えばカニクイザルにおける硝子体内注射による(Tolentino,MJ.et al.,(2004)Retina 24:132−138)、およびマウスにおける網膜下注射による(Reich,SJ. et al.(2003)Mol.Vis.9:210−216)、VEGF dsRNAの眼内送達は、どちらも加齢黄斑変性の実験モデルで新血管形成を防止することを示した。これに加えて、マウスにおけるdsRNAの直接腫瘍内注射は、腫瘍体積を低下させ(Pille,J. et al.(2005)Mol.Ther.11:267−274)、腫瘍を有するマウスの生存期間を延長し得た(Kim,WJ.et al.,(2006)Mol.Ther.14:343−350;Li,S.et al.,(2007)Mol.Ther.15:515−523)。RNA干渉は、直接注射によるCNSへの(Dorn,G.et al.,(2004)Nucleic Acids 32:e49;Tan,PH.et al.(2005)Gene Ther.12:59−66;Makimura,H.et al(2002)BMC Neurosci.3:18;Shishkina,GT.,et al(2004)Neuroscience 129:521−528;Thakker,ER.,et al(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101:17270−17275;Akaneya,Y.,et al(2005)J.Neurophysiol.93:594−602)、および鼻腔内投与による肺への(Howard,KA.et al.,(2006)Mol.Ther.14:476−484;Zhang,X.et al.,(2004)J.Biol.Chem.279:10677−10684;Bitko,V.et al.,(2005)Nat.Med.11:50−55)局所性送達の成功が示されている。疾患を治療するために、iRNAを全身的に投与するために、RNAは修飾され、または代案としては薬物送達系を使用して送達され得て;どちらの方法も、生体内エンド−およびエキソ−ヌクレアーゼによるdsRNAの迅速な分解を防止するように作用する。RNAまたは薬学的担体の修飾はまた、標的組織へのiRNA組成物の標的化も可能にし得て、望ましくない非特異的効果が回避される。コレステロールなどの親油性基の化学的結合によってiRNA分子を修飾し、細胞内取り込みを高め分解を防止し得る。例えば親油性コレステロール部分に共役結合されたApoBに対抗するiRNAがマウスに全身注射され、肝臓および空腸の双方でapoB mRNAノックダウンがもたらされた(Soutschek,J.et al.,(2004)Nature 432:173−178)。iRNAのアプタマーへの共役結合は、前立腺がんのマウスモデルにおいて腫瘍増殖を抑制し、腫瘍退縮を媒介することが示されている。(McNamara,JO.et al.,(2006)Nat.Biotechnol.24:1005−1015)。代案の実施形態では、iRNAは、ナノ粒子、デンドリマー、ポリマー、リポソーム、またはカチオン性送達系などの薬物送達システムを使用して送達され得る。正に帯電したカチオン性送達系は、iRNA分子(負に帯電)の結合を容易にして、負に帯電した細胞膜における相互作用もまた高めて、細胞によるiRNAの効率的な取り込みを可能にする。カチオン性脂質、デンドリマー、またはポリマーは、iRNAに結合され、またはiRNAを包む小胞またはミセルを形成するように誘導され得る(例えばKim SH.et al.,(2008)Journal of Controlled Release 129(2):107−116を参照されたい)。小胞またはミセルの形成は、全身投与した際にiRNAの分解をさらに防止する。カチオン性iRNA複合体を作成して投与する方法は、十分に当業者の能力の範囲内である(例えばその内容全体を参照によって本明細書に援用する、Sorensen,DR.,et al(2003)J.Mol.Biol 327:761−766;Verma,UN.et al.,(2003)Clin.Cancer Res.9:1291−1300;Arnold,AS et al(2007)J.Hypertens.25:197−205を参照されたい)。iRNAの全身性送達に有用な薬物送達系のいくつかのの非限定的例としては、DOTAP(Sorensen,DR.,et al(2003),前出;Verma,UN.et al.,(2003),前出)、オリゴフェクトアミン(Oligofectamine)、“solid nucleicacid lipidparticles”(Zimmermann,TS.et al.,(2006)Nature 441:111−114)、カルジオリピン(Chien,PY.et al.,(2005)Cancer Gene Ther.12:321−328;Pal,A.et al.,(2005)Int J.Oncol.26:1087−1091)、ポリエチレンイミン(Bonnet ME.et al.,(2008)Pharm.Res.8月16日オンライン先行発表;Aigner,A.(2006)J.Biomed.Biotechnol.71659)、Arg−Gly−Asp(RGD)ペプチド(Liu,S.(2006)Mol.Pharm.3:472−487)、およびポリアミドアミン(Tomalia,DA.et al.,(2007)Biochem.Soc.Trans.35:61−67;Yoo,H.et al.,(1999)Pharm.Res.16:1799−1804)が挙げられる。いくつかの実施形態では、全身投与のために、iRNAはシクロデキストリンと複合体を形成する。iRNAおよびシクロデキストリンの投与方法および医薬組成物は、その内容全体を参照によって本明細書に援用する米国特許第7,427,605号明細書にある。
A.本発明のiRNAをコードするベクター
ANGPTL3遺伝子標的化iRNAは、DNAまたはRNAベクターに挿入された転写単位から発現され得る(例えばCouture,A,et al.,TIG.(1996),12:5−10;Skillern,A.,et al.国際公開第00/22113号パンフレット;Conrad、国際公開第00/22114号パンフレット;およびConrad、米国特許第6,054,299号明細書を参照されたい)。発現は、使用される特定のコンストラクトおよび標的組織または細胞型次第で、一過性(数時間から数週間程度)または持続性(数週間から数ヶ月以上)であり得る。これらの導入遺伝子は、組み込み型または非組み込み型ベクターであり得る、直鎖コンストラクト、環状プラスミド、またはウイルスベクターとして導入し得る。導入遺伝子はまた、それが染色体外プラスミドとして遺伝するのを可能にするよう構築し得る(Gassmann,et al.,(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA92:1292)。
個々のiRNA鎖または鎖群は、発現ベクター上のプロモータから転写され得る。2つの別個の鎖を発現させて、例えばdsRNAを生成させる場合、(例えば形質移入または感染によって)2つの別個の発現ベクターを標的細胞に同時導入し得る。代案としては、そのどちらも同一発現プラスミド上に位置するプロモータによって、dsRNAの個々の鎖を転写し得る。一実施形態では、dsRNAは、dsRNAがステムループ構造を有するように、リンカーポリヌクレオチド配列によって連結する逆位反復ポリヌクレオチドとして発現される。
iRNA発現ベクターは、一般にDNAプラスミドまたはウイルスベクターである。真核生物細胞に適合し、好ましくは脊椎動物細胞に適合する発現ベクターを使用して、本明細書に記載されるiRNA発現のための組換えコンストラクトを生成し得る。真核細胞発現ベクターは当該技術分野で周知であり、いくつかの商業的供給元から入手できる。典型的にこのようなベクターは、所望の核酸断片を挿入するための都合良い制限酵素認識部位を含有させて、提供される。iRNA発現ベクターの送達は、静脈内または筋肉内投与などによる全身投与、患者から外植された標的細胞への投与とそれに続く患者への再導入、または所望の標的細胞に導入できるようにするあらゆる別の手段などであり得る。
本明細書に記載される方法および組成物と共に利用し得るウイルスベクターシステムとしては、(a)アデノウイルスベクター;(b)レンチウイルスベクター、モロニーマウス白血病ウイルスなどをはじめとするが、これに限定されるものではないレトロウイルスベクター;(c)アデノ随伴ウイルスベクター;(d)単純ヘルペスウイルスベクター;(e)SV40ベクター;(f)ポリオーマウイルスベクター;(g)乳頭腫ウイルスベクター;(h)ピコルナウィルスベクター;(i)例えばワクシニアウイルスベクターなどのオルソポックス、または例えばカナリア痘または鶏痘などのアビポックスなどのポックスウイルスベクター;および(j)ヘルパー依存性またはガットレスアデノウイルスが挙げられるが、これに限定されるものではない。複製欠陥ウイルスもまた、有利であり得る。異なるベクターは、細胞のゲノムに組み込まれ、または組み込まれない。コンストラクトは、所望ならば、形質移入のためのウイルス配列を含み得る。代案としては、コンストラクトは、例えばEPVおよびEBVベクターなどのエピソーム複製ができるベクターに組み込まれ得る。iRNAの組換え発現のためのコンストラクトは、一般に、標的細胞中のiRNA発現を確実にするための、例えばプロモータ、エンハンサーなどの調節因子を必要とする。ベクターおよびコンストラクトについて検討されるその他の態様は、当該技術分野において既知である。
V.本発明の医薬組成物
本発明は、本発明のiRNAを含む医薬組成物および製剤もまた含む。一実施形態では、本発明で提供されるのは、本明細書に記載されるiRNAと、薬学的に許容できる担体とを含有する医薬組成物である。iRNAを含有する医薬組成物は、例えば、脂質代謝の障害、例えば、家族性高トリグリセリド血症や家族性部分型リポジストロフィー1型(FPLD1)などの(such as such)遺伝性疾患、または疾患、障害または病状(例えば、腎不全)、食餌、または特定の薬物摂取の結果として(例えば、AIDSまたはHIVの治療に使用される高活性抗レトロウイルス療法(HAART)の結果として)誘発されまたは獲得された障害などの、誘発性または後天性障害などのANGPTL3遺伝子の発現または活性に関連する疾患または障害を治療するのに有用である。
このような医薬組成物は、送達様式に基づいて調合される。一例は、例えば、静脈内(IV)などの非経口送達を通じた全身投与のために、または皮下送達のために調合される組成物である。別の例は、例えば連続ポンプ輸液などの脳内点滴による、肝臓内への直接送達のために調合される組成物である。
本発明の医薬組成物は、ANGPTL3遺伝子発現を阻害するのに十分な投与量で投与されてもよい。一般に、本発明のiRNAの適切な用量は、1日あたり受容者の体重1キログラムあたり約0.001〜約200.0ミリグラムの範囲、一般に、1日あたり体重1キログラムあたり約1〜50mgの範囲である。典型的に、本発明のiRNAの適切な用量は、約0.1mg/kg〜約5.0mg/kg、好ましくは約0.3mg/kgおよび約3.0mg/kgである。
反復用量レジメン(regimine)としては、隔日から1年に1回などの治療量のiRNAの定期的投与が挙げられる。特定の実施形態では、iRNAは、月に約1回、四半期に約1回(すなわち、3ヶ月毎に約1回)投与される。
最初の治療レジメンの後、治療はより少ない頻度で投与され得る。
当業者は、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の総体的な健康および/または年齢、および存在するその他の疾患をはじめとするが、これに限定されるものではない、特定の要因が、対象を効果的に治療するのに要求される用量およびタイミングに影響し得ることを理解するであろう。さらに治療有効量の組成物による対象の治療は、単回治療または一連の治療を含み得る。本発明に包含される個々のiRNAの有効投与量および生体内半減期は、本明細書の他の箇所で記載されるように、従来の手順を使用して、または適切な動物モデルを使用した生体内試験に基づいて、推定し得る。
マウス遺伝学における進歩は、ANGPTL3発現の低下から恩恵を受ける脂質代謝の障害などの、様々なヒト疾患研究のためのいくつかのマウスモデルを作り出した。このようなモデルは、iRNAの生体内試験のために、ならびに治療有効用量を判定するために、使用され得る。適切なマウスモデルは当該分野で公知であり、例えば、肥満(ob)遺伝子に変異を含む肥満(ob/ob)マウス(Wiegman et al.,(2003)Diabetes,52:1081−1089);LDL受容体のホモ接合型ノックアウトを含むマウス(LDLR−/−マウス;Ishibashi et al.,(1993)J Clin Invest 92(2):883−893);食餌誘発性アテローム性動脈硬化(artherosclerosis)マウスモデル(Ishida et al.,(1991)J.Lipid.Res.,32:559−568);およびヘテロ接合リポタンパク質リパーゼノックアウトマウスモデル(Weistock et al.,(1995)J.Clin.Invest.96(6):2555−2568)が挙げられる。
本発明の医薬組成物は、局所性または全身性の治療が所望されるかどうかに応じて、そして治療領域次第で、いくつかの方法で投与し得る。投与は、局所(例えば経皮パッチによる)、例えばネブライザーをはじめとする、粉末または煙霧剤の吸入または吹送による経肺;気管内、鼻腔内、経表皮および経皮、経口または非経口であってもよい。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射または点滴;例えば埋め込みデバイスを通じた真皮下投与;または例えば脳実質内、クモ膜下腔内または脳室内などの頭蓋内投与が挙げられる。
iRNAは、肝臓(例えば肝臓の実質細胞)などの特定組織を標的化する様式で、送達され得る。
局所投与のための医薬組成物および製剤としては、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、スプレー、液体、および粉末が挙げられる。従来の薬学的担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤などが、必要でありまたは望ましい可能性もある。被覆コンドーム、手袋などもまた、有用であり得る。適切な局所製剤としては、その中で、本発明で取り上げるiRNAが、脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート化作用物質、および界面活性剤などの局所送達作用物質との混和材料中にあるものが挙げられる。適切な脂質およびリポソームとしては、中性(例えばジオレオイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロリホスファチジル(distearolyphosphatidyl)コリン)、陰性(例えばジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)およびカチオン性(例えばジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)が挙げられる。本発明で取り上げるiRNAは、リポソーム内にカプセル化されることができ、またはそれと、特にカチオン性リポソームと、複合体形成することができる。代案としては、iRNAは、脂質、特にカチオン性脂質と複合体形成することができる。適切な脂肪酸およびエステルとしては、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはC1〜20アルキルエステル(例えばイソプロピルミリスチン酸IPM)、モノグリセリド、ジグリセリド、または薬学的に許容可能なその塩)が挙げられるが、これに限定されるものではない。局所製剤は、参照によって本明細書に援用する、米国特許第6,747,014号明細書に詳述される。
経口投与のための組成物および製剤としては、粉末または顆粒、微小粒子、ナノ微粒子、水または非水性媒体中の懸濁液または溶液、カプセル、ゲルカプセル、サッシェ剤、錠剤またはミニ錠剤が挙げられる。増粘剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤またはバインダーが望ましい可能性がある。いくつかの実施形態では、経口製剤は、その中で本発明で取り上げるDsRNAが、1つまたは複数の浸透促進界面活性剤およびキレート化剤と併せて投与されるものである。適切な界面活性剤としては、脂肪酸および/またはエステルまたはそれらの塩、胆汁酸および/またはそれらの塩が挙げられる。適切な胆汁酸/塩としては、ケノデオキシコール酸(CDCA:chenodeoxycholic acid)およびウルソデオキシケノデオキシコール酸(UDCA:ursodeoxychenodeoxycholic acid)、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロ−24,25−ジヒドロ−フシジン酸ナトリウム、およびグリコジヒドロフシジン酸ナトリウムが挙げられる。適切な脂肪酸としては、アラキドン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはモノグリセリド、ジグリセリド、または薬学的に許容可能なその塩(例えばナトリウム)が挙げられる。いくつかの実施形態では、例えば胆汁酸/塩と組み合わされた脂肪酸/塩などの浸透促進剤の組み合わせが使用される。1つの例示的組み合わせは、ラウリン酸、カプリン酸、およびUDCAのナトリウム塩である。浸透促進剤としては、さらにポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−20−セチルエーテルが挙げられる。本発明で取り上げるDsRNAは、噴霧乾燥粒子をはじめとする顆粒形態で、経口的に送達されてもよく、または複合体化してマイクロまたはナノ粒子を形成してもよい。DsRNA複合化剤としては、ポリアミノ酸;ポリイミン;ポリアクリレート;アクリル酸ポリアルキル、ポリオキセタン、ポリアルキルシアノアクリル酸;カチオン化ゼラチン、アルブミン、デンプン、アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)およびデンプン;ポリアルキルシアノアクリル酸;DEAE誘導体化ポリイミン、プルラン(pollulans)、セルロースおよびデンプンが挙げられる。適切な複合化剤としては、キトサン、N−トリメチルキトサン、ポリ−L−リジン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノメチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えばp−アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリル酸)、ポリ(エチルシアノアクリル酸)、ポリ(ブチルシアノアクリル酸)、ポリ(イソブチルシアノアクリル酸)、ポリ(イソヘキシルシナオアクリル酸(isohexylcynaoacrylate))、DEAE−メタクリレート、DEAE−ヘキシルアクリレート、DEAE−アクリルアミド、DEAE−アルブミンおよびDEAE−デキストラン、ポリアクリル酸メチル、ポリヘキシルアクリレート、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(DL−乳酸‐コ‐グリコール酸(PLGA)、アルギン酸塩、およびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。dsRNAの経口製剤およびそれらの調製は、そのそれぞれを参照によって本明細書に援用する、米国特許第6,887,906号明細書、米国特許出願公開第20030027780号明細書、および米国特許第6,747,014号明細書に詳細に記載される。
非経口、脳実質内(脳内)、クモ膜下腔内、脳室内または肝臓内投与のための組成物および製剤は無菌水溶液を含むことができ、それはまた、緩衝液と、希釈剤と、浸透促進剤、担体化合物、およびその他の薬学的に許容可能な担体または賦形剤などをはじめとするが、これに限定されるものではないその他の適切な添加剤とを含有し得る。
本発明の医薬組成物としては、溶液、エマルション、およびリポソーム含有製剤.が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの組成物は、既製液体、自己乳化固体および自己乳化半固体をはじめとするが、これに限定されるものではない、多様な成分から生成され得る。肝臓がんなどの肝臓の障害を治療する場合、特に好ましいのは、肝臓を標的とする製剤である。
好都合には単位剤形で提示され得る本発明の医薬製剤は、製薬産業で周知の従来の技術に従って調製され得る。このような技術は、活性成分を薬学的担体または賦形剤に組み合わせるステップを含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体または超微粒子固体担体またはその双方と一様に密接に組み合わせ、次に、必要ならば生成物を整形することで調製される。
本発明の組成物は、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、液体シロップ、軟質ゲル、坐薬、および浣腸などであるが、これに限定されるものではない、多数の可能な剤形のいずれかに調合され得る。本発明の組成物は、また、水性、非水性または混合媒体中の懸濁液として調合され得る。水性懸濁液は、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランをはじめとする、懸濁液の粘度を増大させる物質をさらに含有し得る。懸濁液は、安定剤もまた含有し得る。
A.追加的な製剤
i.エマルション
本発明の組成物は、エマルションとして調製し調合し得る。エマルションは、典型的に、通常、直径が0.1μmを超える小滴形態で、別の液体中に分散する1つの液体の不均一系である(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199;Rosoff,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Volume 1,p.245;Block in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 2,p.335;Higuchi et al.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1985,p.301を参照されたい)。エマルションは、密接に混合して互いに分散する、2つの不混和性液体相を含んでなる、二相性システムであることが多い。一般にエマルションは、油中水型(w/o)または水中油型(o/w)のいずれかであり得る。水性相がバルク油性相中に微細分散して、微小滴として分散される場合、得られた組成物は、油中水型(w/o)エマルションと称される。代案としては、油性相がバルク水性相中に微細分散して、微小滴として分散される場合、得られた組成物は、水中油型(o/w)エマルションと称される。エマルションは、分散相と、水性相および油性相いずれかの中の溶液として、またはそれ自体が別個の相として存在し得る、活性薬剤とに加えて、追加的な成分を含有し得る。乳化剤、安定剤、染料、および抗酸化物質などの医薬品賦形剤はまた、必要に応じてエマルション中に存在し得る。医薬品エマルションはまた、例えば油中水中油(o/w/o)および水中油中水型(w/o/w)エマルションなどの場合、2つを超える相を含んでなる複数エマルションであり得る。このような複合体製剤は、単純な二成分エマルションが提供しない、特定の利点を提供することが多い。その中でo/wエマルションの個々の油滴が小さな水滴を囲い込む複数エマルションは、w/o/wエマルションを構成する。同様に、水の小球中に封入されて、油性連続相内で安定化される油滴システムは、o/w/oエマルションを提供する。
エマルションは、熱力学的安定性がわずかまたは皆無であることによって、特徴付けられる。頻繁に、エマルションの分散または不連続相は、外部または連続相内に良く分散し、乳化剤または製剤粘度の手段を通じて、この形態に保たれる。エマルション様式の軟膏基剤およびクリームの場合のように、エマルション相のいずれかが、半固体または固体であり得る。エマルションを安定化する別の手段は、エマルション相のいずれかに組み込まれ得る、乳化剤の使用を伴う。乳化剤は、広義に4つのカテゴリー分類され得る:合成界面活性剤、天然乳化剤、吸収基剤、および微細分散固体(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199を参照されたい)。
表面活性剤としてもまた知られている合成界面活性剤は、エマルション製剤において幅広い用途があり、文献で概説されている(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Rieger,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.285;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,volume 1,p.199を参照されたい)。界面活性剤は典型的に両親媒性であり、親水性および疎水性部分を含んでなる。親水性と疎水性の比率は、界面活性剤の親水性/親油性バランス(HLB)と称され、製剤の調製において界面活性剤を分類し選択する上での有益な手段である。界面活性剤は、親水性基の性質に基づいて、異なるクラスに分類され得る:非イオン性、アニオン性、カチオン性、および両性(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY Rieger,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.285を参照されたい)。
エマルション製剤で使用される天然乳化剤としては、ラノリン、蜜蝋、リン脂質、レシチン、およびアカシアが挙げられる。無水ラノリンおよび親水性ペトロラタムなどの、水を吸い上げてw/oエマルションを形成し得るような親水特性を有する吸収基剤は、なおもそれらの半固体粘稠度を維持する。微細分散固体はまた、優れた乳化剤として、特に界面活性剤と組み合わされて、粘稠な調製品中で使用されている。これらとしては、重金属水酸化物などの極性無機固体、ベントナイトなどの非膨張性粘土、アタパルガイト、ヘクトライト、カオリン、モンモリロナイト、ケイ酸アルミニウムのコロイドおよびケイ酸アルミニウムマグネシウムのコロイド、顔料、および炭素またはトリステアリン酸グリセリルなどの非極性固形分が挙げられる。
多岐にわたる非乳化材料もまたエマルション製剤に含まれて、エマルションの特性に寄与する。これらとしては、脂肪、油、ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、湿潤剤、親水性コロイド、保存料、および抗酸化剤が挙げられる(Block,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.335;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199)。
親水性コロイドまたは親水コロイドとしては、多糖類(例えばアカシア、寒天、アルギン酸、カラゲナン、グアーガム、カラヤガム、およびトラガカント)、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシプロピルセルロース)、および合成ポリマー(例えばカルボマー、セルロースエーテル、およびカルボキシビニルポリマー)などの天然ガムおよび合成ポリマーが挙げられる。これらは水中に分散しまたは水中で膨張して、分散相小滴周囲に強力な界面膜を形成することで、および外部相の粘度を増大させることで、エマルションを安定化するコロイド溶液を形成する。
エマルションは、微生物の増殖を容易に支持し得る、炭水化物、タンパク質、ステロール、およびリン脂質などのいくつかの成分を含有することが多いので、これらの製剤には保存料が組み込まれることが多い。エマルション製剤に含まれる一般に使用される保存料としては、メチルパラベン、プロピルパラベン、四級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、p−ヒドロキシ安息香酸のエステル、およびホウ酸が挙げられる。抗酸化剤もまた、一般にエマルション製剤に添加されて、製剤の劣化を防止する。使用される抗酸化剤は、トコフェロール、没食子酸アルキル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなどのフリーラジカルスカベンジャー;またはアスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤;およびクエン酸、酒石酸、およびレシチンなどの抗酸化剤共力剤であり得る。
皮膚、経口、および非経口経路を通じたエマルション製剤の適用と、それらを製造する方法については、文献で概説されている。(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199を参照されたい)。経口送達のためのエマルション製剤は、調合の容易さ、ならびに吸収および生物学的利用能の観点からの効率のために、非常に広く使用されている(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Rosoff,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245;Idson,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199を参照されたい)。鉱物油ベースの緩下剤、油溶性ビタミン、および高脂肪栄養剤は、一般にo/wエマルションとして経口投与されている材料の一つである。
ii.マイクロエマルション
本発明の一実施形態では、iRNAと核酸の組成物は、マイクロエマルションとして調合される。マイクロエマルションは、単一の光学的に等方性で熱力学的に安定している溶液である、水、油、および両親媒性物質のシステムと定義され得る(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Rosoff,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245を参照されたい)。典型的に、マイクロエマルションは、最初に油を水性界面活性剤溶液に分散して、次に一般に中間鎖長のアルコールである、十分な量の第4の成分を添加し、透明なシステムを形成することで、調製されるシステムである。したがって、マイクロエマルションは、界面活性分子の界面膜によって安定化された、2つの不混和性液体の熱力学的に安定した等方的に透明な分散体として記述されている(Leung and Shah,Controlled Release of Drugs:Polymers and Aggregate Systems,Rosoff,M.,Ed.,1989,VCH Publishers,New York,pages 185−215)。マイクロエマルションは、通常、油、水、界面活性剤、共界面活性剤、および電解質をはじめとする、3〜5成分の組み合わせを通じて調製される。マイクロエマルションが、油中水型(w/o)または水中油型(o/w)であるかどうかは、使用される油および界面活性剤の特性と、界面活性剤分子の極性頭部および炭化水素尾部の構造および幾何学的充填とに左右される(Schott,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1985,p.271)。
状態図を利用した現象学的アプローチは、広範に研究されており、マイクロエマルションの調合法に関する包括的知識が、当業者にもたらされている(例えばAnsel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams & Wilkins(8th ed.),New York,NY;Rosoff,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245;Block,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.335を参照されたい)。従来のエマルションと比較して、マイクロエマルションは、水不溶性薬剤を自然発生的に形成される熱力学的に安定した小滴の配合物に可溶化する利点を提供する。
マイクロエマルションの調製で使用される界面活性剤としては、単独のまたは共界面活性剤と組み合わされた、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、Brij 96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、テトラグリセロールモノラウレート(ML310)、テトラグリセロールモノオレアート(MO310)、ヘキサグリセロールモノオレアート(PO310)、ヘキサグリセロールペンタオレアート(PO500)、デカグリセロールモノカプレート(MCA750)、デカグリセロールモノオレエート(MO750)、デカグリセロールセキオレアート(sequioleate)(SO750)、デカグリセロールデカオレアート(DAO750)が挙げられるが、これに限定されるものではない。通常、エタノール、1−プロパノール、および1−ブタノールなどの短鎖アルコールである共界面活性剤は、界面活性剤塗膜に浸透することにより界面流動性を増大させるのに役立ち、その結果、界面活性剤分子間に生じる隙間に起因する不規則塗膜を作り出す。しかしマイクロエマルションは、共界面活性剤の使用なしに調製され得、アルコール非含有自己乳化マイクロエマルション系は、当該技術分野で公知である。水性相は、典型的に、水、薬剤水溶液、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコール、およびエチレングリコール誘導体であり得るが、これに限定されるものではない。油相としては、Captex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル、中鎖(C8〜C12)モノ、ジ、およびトリ−グリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ポリグリコール化(polyglycolized)グリセリド、飽和ポリグリコール化(polyglycolized)C8−C10グリセリド、植物油、およびシリコーン油などの材料が挙げられるが、これに限定されるものではない。
マイクロエマルションは、薬剤可溶化と薬剤吸収改善の観点から、特に興味深い。脂質ベースのマイクロエマルション(o/wおよびw/oの双方)が、ペプチドをはじめとする薬剤の経口バイオアベイラビリティを高めるために、提案されている(例えば米国特許第6,191,105号明細書;米国特許第7,063,860号明細書;米国特許第7,070,802号明細書;米国特許第7,157,099号明細書;Constantinides et al.,Pharmaceutical Research,1994,11,1385−1390;Ritschel,Meth.Find.Exp.Clin.Pharmacol.,1993,13,205を参照されたい)。マイクロエマルションは、薬剤可溶化改善、酵素加水分解からの薬剤保護、界面活性剤が誘発する膜の流動性と透過度の変化に起因する予想される薬剤吸収増強、調製の容易さ、固体剤形に比べた経口投与の容易さ、臨床効力改善、および毒性低下の利点をもたらす(例えば米国特許第6,191,105号明細書;米国特許第7,063,860号明細書;米国特許第7,070,802号明細書;米国特許第 7,157,099号明細書;Constantinides et al.,Pharmaceutical Research,1994,11,1385;Ho et al.,J.Pharm.Sci.,1996,85,138−143を参照されたい)。マイクロエマルションは多くの場合、それらの成分を周囲温度で一緒に合わせた場合に、自然発生的に形成することができる。これは、熱不安定性薬剤、ペプチドまたはiRNAを調合する場合に、特に有利となり得る。マイクロエマルションは、美容および医薬用途の双方で、活性成分の経皮送達に効果的であった。本発明のマイクロエマルション組成物および製剤は、iRNAおよび核酸の胃腸管からの全身性吸収の増大を容易にし、ならびにiRNAおよび核酸の局所性細胞内取り込みを改善することが期待される。
本発明のマイクロエマルションは、ソルビタンモノステアレート(Grill 3)、Labrasol、および浸透促進剤などの追加的な成分および添加剤もまた含有して、製剤の特性を改善し、本発明のiRNAおよび核酸の吸収を高め得る。本発明のマイクロエマルション中で使用される浸透促進剤は、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化剤、および非キレート化非界面活性剤の5つの広義のカテゴリーの1つに属すると分類され得る(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92)。これらの各クラスについては、上で論じた。
iii.微粒子
本発明のRNAi剤は、例えば微粒子などの粒子に組み込まれてもよい。微粒子は、噴霧乾燥によって製造し得るが、それはまた、凍結乾燥、蒸発、流動床乾燥、真空乾燥、またはこれらの技術の組み合わせをはじめとする、その他の方法によって製造してもよい。
iv.浸透促進剤
一実施形態では、本発明は、様々な浸透促進剤を用いて、核酸、特にiRNAの動物皮膚への効率的な送達をもたらす。ほとんどの薬剤は、イオン化および非イオン化形態の双方で、溶液中に存在する。しかし通常、脂質可溶性または親油性薬剤のみが、細胞膜を容易に通過する。通過する膜が浸透促進剤で処理されれば、非親油性薬剤でさえも細胞膜を通過し得ることが発見されている。細胞膜横切る非親油性薬剤の拡散を助けるのに加えて、浸透促進剤はまた、親油性薬剤の透過性を高める。
浸透促進剤は、5つの広義のカテゴリー、すなわち界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化作用物質、および非キレート化非界面活性剤の1つに属すると、分類され得る(例えばMalmsten,M.Surfactants and polymers in drug delivery,Informa Health Care,New York,NY,2002;Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92を参照されたい)。前述の浸透促進剤の各クラスについては、以下でより詳しく説明される。
界面活性剤(または「表面活性剤」)は、水溶液に溶解すると、溶液の表面張力、または水溶液と別の液体との界面張力を低下させて、粘膜を通じたiRNA吸収の改善をもたらす、化学物質である。胆汁塩と脂肪酸に加えて、これらの浸透促進剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−20−セチルエーテル)(例えばMalmsten,M.Surfactants and polymers in drug delivery,Informa Health Care,New York,NY,2002;Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92を参照されたい);およびFC−43などのペルフルオロ化合物エマルション.Takahashi et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1988,40,252)が挙げられる。
浸透促進剤として作用する様々な脂肪酸およびそれらの誘導体としては、例えばオレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸(n−デカン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン(1−モノオレオイル−rac−グリセロール)、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、グリセロール1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、そのC1〜20アルキルエステル(例えばメチル、イソプロピル、およびt−ブチル)、およびそのモノ−およびジ−グリセリド(すなわちオレアート、ラウレート、カプレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、リノレアートなど)が挙げられる。(例えばTouitou,E.,et al.Enhancement in Drug Delivery,CRC Press,Danvers,MA,2006;Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92;Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1−33;El Hariri et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1992,44,651−654を参照されたい)。
胆汁の生理学的役割としては、脂質および脂溶性ビタミンの分散および吸収の促進が挙げられる(例えばMalmsten,M.Surfactants and polymers in drug delivery,Informa Health Care,New York,NY,2002;Brunton,Chapter 38,Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,9th Ed.,Hardman et al.Eds.,McGraw−Hill,New York,1996,pp.934−935を参照されたい)。様々な天然胆汁酸塩、およびそれらの合成誘導体が、浸透促進剤として作用する。したがって「胆汁酸塩」という用語は、胆汁の天然成分のいずれかならびにそれらの合成誘導体のいずれかを含む。適切な胆汁酸塩としては、例えばコール酸(またはその薬学的に許容可能なナトリウム塩、コール酸ナトリウム)、デヒドロコール酸(デヒドロコール酸ナトリウム)、デオキシコール酸(デオキシコール酸ナトリウム)、グルコール酸(グルコール酸ナトリウム)、グリコール酸(グリココール酸ナトリウム)、グリコデオキシコール酸(グリコデオキシコール酸ナトリウム)、タウロコール酸(タウロコール酸ナトリウム)、タウロデオキシコール酸(タウロデオキシコール酸ナトリウム)、ケノデオキシコール酸(ケノデオキシコール酸ナトリウム)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、タウロ−24,25−ジヒドロ−フシジン酸ナトリウム(STDHF:sodium tauro−24,25−dihydrofusidate)、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウム、およびポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(POE)が挙げられる。(例えばMalmsten,M.Surfactants and polymers in drug delivery,Informa Health Care,New York,NY,2002;Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,page 92;Swinyard,Chapter 39,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Gennaro,ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1990,pages 782−783;Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1−33;Yamamoto et al.,J.Pharm.Exp.Ther.,1992,263,25;Yamashita et al.,J.Pharm.Sci.,1990,79,579−583を参照されたい)。
本発明との関連で使用されるキレート化剤は、金属イオンと複合体を形成することによって、それを溶液から除去して、粘膜を通したiRNA吸収の改善をもたらす化合物と定義され得る。本発明における浸透促進剤としてのそれらの使用に関して、ほとんどのDNAヌクレアーゼは、触媒作用のために二価の金属イオンを要し、キレート化剤によって阻害されるので、キレート化作用物質は、デオキシリボヌクレアーゼ阻害物質の役割も果たすという追加的利点を有する(Jarrett,J.Chromatogr.,1993,618,315−339)。 適切なキレート化作用物質としては、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA:ethylenediaminetetraacetate)、クエン酸、サリチル酸塩(例えばサリチル酸ナトリウム、5−メトキシサリチル酸、およびホモバニレート(homovanilate))、コラーゲンのN−アシル誘導体、ラウレス−9、およびβ−ジケトン(エナミン)のN−アミノアシル誘導体が挙げられるが、これに限定されるものではない。(例えばKatdare,A.et al.,Excipient development for pharmaceutical,biotechnology,and drug delivery,CRC Press,Danvers,MA,2006;Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,page 92;Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1−33;Buur et al.,J.Control Rel.,1990,14,43−51を参照されたい)。
本明細書の用法では、非キレート化非界面活性剤浸透促進化合物は、キレート化作用物質としてまたは界面活性剤として有意でない活性を実証するが、それでもなお消化器粘膜を通じてiRNAの吸収を高める化合物と定義し得る(例えばMuranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1−33を参照されたい)。このクラスの浸透促進剤としては、例えば不飽和環式尿素、1−アルキル−および1−アルケニルアザシクロ−アルカノン誘導体(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,page 92);およびジクロフェナクナトリウム、インドメタシンおよびフェニルブタゾンなどの非ステロイド性抗炎症剤(Yamashita et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1987,39,621−626)が挙げられる。
細胞レベルのiRNA取り込みを高める作用物質もまた、本発明医薬およびその他の組成物に添加し得る。例えばリポフェクチンなどのカチオン性脂質(Junichiらに付与された米国特許第5,705,188号明細書)、カチオン性グリセロール誘導体、およびポリリジンなどのポリカチオン性分子(Lolloらに付与された国際公開第97/30731号パンフレット)もまた、dsRNAの細胞内取り込みを高めることが知られている。市販される形質移入試薬の例としては、例えば特に、Lipofectamine(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Lipofectamine 2000(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、293fectin(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Cellfectin(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、DMRIE−C(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、FreeStyle(商標)MAX(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Lipofectamine(商標)2000 CD(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Lipofectamine(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、RNAiMAX(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Oligofectamine(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、Optifect(商標)(Invitrogen;Carlsbad,CA)、X−tremeGENE Q2 Transfection Reagent(Roche;Grenzacherstrasse,Switzerland)、DOTAP Liposomal Transfection Reagent(Grenzacherstrasse,Switzerland)、DOSPER Liposomal Transfection Reagent(Grenzacherstrasse,Switzerland)、またはFugene(Grenzacherstrasse,Switzerland)、Transfectam(登録商標)Reagent(Promega;Madison,WI)、TransFast(商標)Transfection Reagent(Promega;Madison,WI)、Tfx(商標)−20 Reagent(Promega;Madison,WI)、Tfx(商標)−50 Reagent(Promega;Madison,WI)、DreamFect(商標)(OZ Biosciences;Marseille,France)、EcoTransfect(OZ Biosciences;Marseille,France)、TransPassa D1 Transfection Reagent(New England Biolabs;Ipswich,MA,USA)、LyoVec(商標)/LipoGen(商標)(Invitrogen;San Diego,CA,USA)、PerFectin Transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、NeuroPORTER Transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、GenePORTER Transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、GenePORTER 2 Transfection reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、Cytofectin Transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、BaculoPORTER Transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、TroganPORTER(商標)transfection Reagent(Genlantis;San Diego,CA,USA)、RiboFect(Bioline;Taunton,MA,USA)、PlasFect(Bioline;Taunton,MA,USA)、UniFECTOR(B−Bridge International;Mountain View,CA,USA)、SureFECTOR(B−Bridge International;Mountain View,CA,USA)、またはHiFect(商標)(B−Bridge International,Mountain View,CA,USA)が挙げられる。
エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのグリコール;2−ピロールなどのピロール;アゾン;およびリモネンおよびメントンなどのテルペンをはじめとするその他の作用物質が、投与された核酸の浸透を高めるのに利用され得る。
v.担体
本発明の特定の組成物は、また配合中に担体化合物が組み込まれる。本明細書の用法では、「担体化合物」または「担体」は、不活性(すなわちそれ自体は生物学的活性を有しない)であるが、例えば生物学的に活性の核酸を分解し、またはその循環からの除去を促進することで、生物学的活性を有する核酸の生物学的利用能を低下させる、生体内過程によって、核酸と認識される、核酸、またはその類似体を指し得る。核酸および担体化合物の、典型的に後者の物質の過剰量での同時投与は、恐らく通常の受容体に対する担体化合物と核酸間の競合のために、肝臓、腎臓またはその他の循環外貯蔵所で回収される核酸量の実質的低下をもたらし得る。例えば肝臓組織内の部分的ホスホロチオエートdsRNAの回収は、それが、ポリイノシン酸、硫酸デキストラン、ポリシチジック(polycytidic)または4−アセトアミド−4’−イソチオシアノ−スチルベン−2,2’−ジスルホン酸と同時投与された場合に、低下し得る(Miyao et al.,DsRNA Res.Dev.,1995,5,115−121;Takakura et al.,DsRNA & Nucl.Acid Drug Dev.,1996,6,177−183。
vi.賦形剤
担体化合物とは対照的に、「薬学的担体」または「賦形剤」は、1つまたは複数の核酸を動物に送達するための、薬学的に許容可能な溶媒、懸濁剤またはあらゆるその他の薬理学的に不活性なビヒクルである。賦形剤は液体または固体であり得、核酸および所与の医薬組成物のその他の成分と組み合わせた際に、所望の嵩、粘稠度などを提供するように、計画される投与様式を念頭に置いて選択される。典型的な薬学的担体としては、結合剤(例えばα化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);増量剤(例えば乳糖およびその他の糖類、微結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレートまたはリン酸水素カルシウムなど);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、滑石、シリカ、二酸化ケイ素のコロイド、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、水素化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど);崩壊剤(例えばデンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなど);および湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウムなど)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
核酸と有害反応しない、経口投与に適する、薬学的に許容可能な有機または無機賦形剤を使用して、本発明の組成物を調合し得る。適切な薬学的に許容可能な担体としては、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、滑石、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
核酸の局所投与のための製剤は、無菌および非無菌水性溶液、アルコールなどの共通溶剤中の非水性溶液、または液体または固体油基剤中の核酸溶液を含み得る。溶液はまた、緩衝液、希釈剤、およびその他の適切な添加剤も含有し得る。核酸有害反応しない、経口投与に適する、薬学的に許容可能な有機または無機賦形剤を使用し得る。
適切な薬学的に許容可能な賦形剤としては、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、滑石、ケイ酸、粘稠なパラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
vii.その他の成分
本発明の組成物は、医薬組成物中に従来法で見られるその他の補助剤成分を、技術分野で確立されたそれらの使用レベルで、さらに含有し得る。したがって例えば組成物は、例えば、止痒剤、渋味剤、局所麻酔薬または抗炎症剤などの追加的な適合性薬理的活性材料を含有することができ、または染料、着香剤、保存料、抗酸化剤、乳白剤、増粘剤、および安定剤などの本発明の組成物の様々な剤形を物理的に調合する上で有用な追加的材料を含有し得る。しかしこのような材料は、添加した場合に、本発明の組成物の成分の生物学的活性に過度に干渉すべきでない。製剤は滅菌され得て、所望ならば、製剤の核酸と有害に相互作用しない、例えば、潤滑剤、保存料、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧圧力に影響を及ぼす塩、緩衝液、着色料、着香料および/または芳香族物質などなどの助剤と混合される。
水性懸濁液は、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランをはじめとする、懸濁液の粘度を増大させる物質を含有し得る。懸濁液は、安定剤もまた含有し得る。
いくつかの実施形態では、本発明で取り上げる医薬組成物は、(a)1つまたは複数のiRNA化合物、および(b)非RNAi機序によって機能し、脂質代謝の障害の治療に有用な1つまたは複数の薬剤を含む。このような薬剤の例としては、抗炎症剤、抗脂肪症薬、抗ウイルス、および/または抗線維症薬が挙げられるが、これに限定される(lmited)ものではない。それに加えて、シリマリンなどの肝臓を保護するのに一般に使用されるその他の物質もまた、本明細書に記載されるiRNAと併用し得る。肝臓疾患の治療に有用なその他の薬剤としては、テルビブジンと、エンテカビルと、テラプレビルおよび例えばTungらに付与された米国特許出願公開第2005/0148548号明細書、米国特許出願公開第2004/0167116号明細書、および米国特許出願公開第2003/0144217号明細書;およびHaleらに付与された米国特許出願公開第2004/0127488号明細書で開示されたものなどのプロテアーゼインヒビターが挙げられる。
このような化合物の毒性および治療効果は、例えばLD50(集団の50%に致死性の用量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を判定するための細胞培養物または実験動物中などで、標準薬学的手順によって判定し得る。毒性および治療効果間の用量比が治療指数であり、それはLD50/ED50比として表し得る。高い治療指数を示す化合物が、好ましい。
細胞培養アッセイと動物実験から得られるデータは、ヒトで使用するための投与範囲を策定するのに使用し得る。本発明で取り上げる組成物の投与量は、一般に、毒性がわずかまたは皆無であるED50をはじめとする、循環濃度の範囲内にある。投与量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。本発明で取り上げる方法で使用されるあらゆる化合物について、最初に、治療有効用量を細胞培養アッセイから推定し得る。用量は、細胞培養中で判定される、IC50(すなわち症状の最大半量阻害を達成する試験化合物濃度)をはじめとする、化合物の、または適切な場合には標的配列のポリペプチド産物の、循環血漿濃度範囲を達成する(例えばポリペプチド濃度の低下を達成する)ように、動物モデル中で策定されてもよい。このような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に判定し得る。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定し得る。
本明細書で取り上げるiRNAは、上で考察されるそれらの投与に加えて、ANGPTL3発現によって媒介される病理過程の治療に効果的なその他の既知の作用物質と組み合わせて、投与し得る。いずれにしても処置を行う医師は、当該技術分野で公知のまたは本明細書に記載される、有効性の標準的手段を使用して観察される結果に基づいて、iRNA投与の量およびタイミングを調節し得る。
VI.発明の方法
本発明はまた、本発明のiRNA、および/または本発明のiRNAを含有する組成物を使用して、細胞内でANGPTL3発現を低下させおよび/または阻害する方法も提供する。方法は、細胞を本発明のdsRNAに接触させるステップと、ANGPTL3遺伝子のmRNA転写物の分解を得るのに十分な時間にわたり細胞を維持し、それによって細胞内でANGPTL3遺伝子の発現を阻害するステップとを含む。遺伝子発現の低下は、当該技術分野で公知の任意の方法によって評価され得る。例えば、ANGPTL3発現の低下は、例えば、ノーザンブロット法、qRT−PCRなどの当業者には通例の方法を使用してANGPTL3のmRNA発現レベルを判定することで;ウエスタンブロット法、免疫学的技術などの当業者には通例の方法を使用してANGPTL3のタンパク質レベルを判定することで、判定されてもよい。ANGPTL3の発現の低下は、例えば、血清脂質、トリグリセリド、コレステロールおよび/または遊離脂肪酸のレベルの低下などの、ANGPTL3の生物学的活性の低下を測定することによって、間接的に評価されてもよい。
本発明の方法では、細胞は、試験管内または生体内で接触させてもよく、すなわち細胞は対象内にあってもよい。
本発明の方法を使用した治療に適する細胞は、ANGPTL3遺伝子を発現するあらゆる細胞であってもよい。本発明の方法で使用するのに適した細胞は、例えば、霊長類細胞(ヒト細胞または例えばサル細胞またはチンパンジー細胞などの非ヒト霊長類細胞など)、非霊長類細胞(ウシ細胞、ブタ細胞、ラクダ細胞、ラマ細胞、ウマ細胞、ヤギ細胞、ウサギ細胞、ヒツジ細胞、ハムスター、モルモット細胞、ネコ細胞、イヌ細胞、ラット細胞、マウス細胞、ライオン細胞、トラ細胞、クマ細胞、またはバッファロー細胞など)などの哺乳類細胞、鳥類細胞(例えばアヒル細胞またはガチョウ細胞)、またはクジラ細胞であってもよい。一実施形態では、細胞は、例えばヒト肝細胞などのヒト細胞である。
ANGPTL3発現は、細胞中で、少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、および21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または約100%阻害される。好ましい実施形態では、ANGPTL3発現は少なくとも20%阻害される。
本発明の生体内における方法は、iRNAを含有する組成物を対象に投与するステップを含んでもよく、iRNAは、治療される哺乳類のANGPTL3遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部と相補的なヌクレオチド配列を含む。ヒトなどの哺乳類などの生物が治療される場合、組成物は、経口;腹腔内;または頭蓋内(例えば心室内、実質内、およびクモ膜下腔内)、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、気道(煙霧剤)、経鼻、直腸をはじめとする非経口経路、および局所(バッカルおよび舌下をはじめとする)投与をはじめとするが、これに限定されるものではない、当該技術分野で公知の任意の手段によって投与し得る。特定の実施形態では、組成物は、静脈輸液または注射によって投与される。特定の実施形態では、組成物は皮下注射によって投与される。
いくつかの実施形態では、投与は、蓄積注射による。蓄積注射は、長期にわたり、一貫性を持ってiRNAを放出してもよい。したがって蓄積注射は、例えば所望のANGPTL3阻害、または治療的または予防的効果などの所望の効果を得るのに、必要な投薬頻度を低下させてもよい。蓄積注射はまた、より一貫した血清濃度を提供してもよい。蓄積注射としては、皮下注射または筋肉内注射が挙げられる。好ましい実施形態では、蓄積注射は皮下注射である。
いくつかの実施形態では、投与は、ポンプによる。ポンプは、外部ポンプ、または外科的に埋め込まれたポンプであってもよい。特定の実施形態では、ポンプは、皮下移植浸透圧ポンプである。別の実施形態では、ポンプは、点滴ポンプである。点滴ポンプは、静脈内、皮下、動脈、または硬膜外輸液のために使用してもよい。好ましい実施形態では、点滴ポンプは、皮下点滴ポンプである。別の実施形態では、ポンプは、iRNAを肝臓に送達する、外科的に埋め込まれたポンプである。
投与様式は、局所性または全身性の治療が所望されるかどうかに基づいて、および治療領域に基づいて、選択されてもよい。投与経路および部位は、標的化を向上させるように選択してもよい。
一態様では、本発明は、哺乳類においてANGPTL3遺伝子の発現を阻害する方法もまた提供する。方法は、哺乳類の細胞内でANGPTL3遺伝子を標的とするdsRNAを含んでなる組成物を哺乳類に投与するステップと、ANGPTL3遺伝子のmRNA転写物の分解を得るのに十分な時間にわたり哺乳類を維持し、それによって細胞内でANGPTL3遺伝子の発現を阻害するステップとを含む。遺伝子発現の低下は、当該技術分野で公知のあらゆる方法によって、そして例えばqRT−PCRなどの本明細書に記載される方法によって、評価され得る。タンパク質産生の低下は、当該技術分野で公知のあらゆる方法によって、そして例えばELISAなどの本明細書に記載される方法によって、評価され得る。一実施形態では、穿刺肝臓生検サンプルが、ANGPTL3遺伝子および/またはタンパク質発現の低下をモニターするための組織材料の役割を果たす。
本発明は、それを必要とする対象を治療する方法をさらに提供する。本発明の治療方法は、ANGPTL3遺伝子を標的とするiRNA、またはANGPTL3遺伝子を標的とするiRNAを含む薬学的組成物を治療有効量で、ANGPTL3発現の低下および/または阻害から恩恵を受ける対象などの対象に、投与することを含む。
本発明のiRNAは、「遊離iRNA」として投与されてもよい。遊離iRNAは、医薬組成物不在下で投与される。裸のiRNAは、適切な緩衝溶液中にあってもよい。緩衝溶液は、酢酸エステル、クエン酸塩、プロラミン、炭酸、またはリン酸、またはそれらのあらゆる組み合わせを含んでなってもよい。一実施形態では、緩衝溶液は、リン酸緩衝食塩水(PBS)である。iRNAを含有する緩衝溶液のpHおよびモル浸透圧濃度は、対象への投与に適するように調節され得る。
代案としては、本発明のiRNAは、dsRNAリポソーム製剤などの医薬組成物として投与されてもよい。
ANGPTL3遺伝子発現の低下および/または阻害の恩恵を受ける対象は、例えば、脂質代謝の遺伝性障害または脂質代謝の後天的障害などの脂質代謝の障害を有する対象である。一実施形態では、脂質代謝の障害を有する対象は、高脂血症を有する。別の実施形態では、脂質代謝の障害を有する対象は、高トリグリセリド血症を有する。ANGPTL3遺伝子発現の低下および/または阻害から恩恵を受ける対象の治療としては、治療的処置(例えば、対象は発疹性黄色腫を有する)および予防的処置(例えば、対象は発疹性黄色腫を有しておらず、または対象は発疹性黄色腫を発症するリスクがある)が挙げられる。
本発明は、例えばこれらの障害を治療するために目下用いられているような、既知の医薬品および/または既知の治療法などのその他の医薬品および/またはその他の治療法と組み合わせて、例えば脂質代謝の障害を有する対象などのANGPTL3発現の低下および/または阻害から恩恵を受ける対象を治療するための、iRNAまたはその医薬組成物を使用する方法をさらに提供する。例えば、特定の実施形態では、ANGPTL3を標的とするiRNAは、例えば、本明細書の他の箇所に記載されるような脂質代謝の障害の治療に有用な薬剤と組み合わせて投与される。例えば、脂質代謝の障害を有する対象などのANGPTL3発現低下(reducton)の恩恵を受ける対象を治療するのに適した追加的な薬剤は、1つまたは複数の血清脂質を低下させる薬剤を含んでもよい。このような作用剤の非限定的例としては、例えば、スタチンのようなHMG−CoA還元酵素阻害剤などのコレステロール合成阻害剤が挙げられる。スタチンとしては、アトルバスタチン(Lipitor)、フルバスタチン(Lescol)、ロバスタチン(Mevacor)、持続放出ロバスタチン(Altoprev)、ピタバスタチン(Livalo)、プラバスタチン(Pravachol)、ロスバスタチン(Crestor)、およびシムバスタチン(Zocor)が挙げられる。脂質代謝の障害の治療において有用なその他の薬剤としては、コレスチラミンおよびその他の樹脂などの胆汁封鎖剤;ナイアシンなどのVLDL分泌阻害剤;プロブコールなどの親油性抗酸化剤;アシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤;ファルネソイドX受容体拮抗薬;ステロール調節結合タンパク質切断活性化タンパク質(SCAP)賦活剤;ミクロソームトリグリセリド転送タンパク質(MTP)阻害剤;ApoE関連ペプチド;およびANGPTL3に対する治療用抗体が挙げられる。追加的な治療薬としては、コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害剤などの高密度リポタンパク質(HDL)上昇させる薬剤もまた挙げられる。さらに、追加的な治療薬としては、例えば、魚油などの健康補助食品もまた挙げられる。iRNAおよび追加的な治療薬は、例えば非経口的に同時におよび/または同一配合中で投与してもよく、または追加的な治療薬は、別の組成物の一部として、または別の時点で、および/または当該技術分野で公知のまたは本明細書に記載される、別の方法によって投与され得る。
一実施形態では、方法は、標的ANGPTL3遺伝子の発現が、約1、2、3、4、5、6、7、8、12、16、18、24、28、32、または約36時間などにわたって低下するように、本明細書で取り上げる組成物を投与するステップを含む。一実施形態では、標的ANGPTL3遺伝子の発現は、例えば約1週間、2週間、3週間、または4週間以上など、少なくとも約2、3、4日間以上などの長期間にわたって低下する。
好ましくは、本明細書で取り上げる方法および組成物で有用なiRNAは、標的ANGPTL3遺伝子の(一次またはプロセシングされた)RNAを特異的に標的とする。これらの遺伝子の発現を阻害するための、iRNAを使用した組成物および方法は、本明細書に記載されるように調製して実施し得る。
本発明の方法に従ったdsRNAの投与は、脂質代謝の障害を有する患者中で、このような疾患または障害の重症度、徴候、症状、および/またはマーカの低下をもたらしてもよい。「低下」とは、この文脈で、このようなレベルの統計的に有意な低下を意味する。低下は、例えば、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または約100%であり得る。
疾患の治療または予防の効能は、例えば、疾患進行、疾患寛解、症状重症度、疼痛減少、生活の質、治療効果維持に必要な薬剤用量、疾病マーカレベルまたは治療されるまたは予防目標である、所与の疾患に適した、あらゆるその他の測定可能パラメータレベルを測定することで評価し得る。このようなパラメータのいずれか1つ、またはパラメータの任意の組み合わせを測定することで、治療または予防有効性をモニターすることは、十分に当業者の能力の範囲内である。例えば脂質代謝の障害治療の効能は、例えば1つ以上の脂質リンパレベルを周期的にモニターすることで、評価してもよい。最初の読み取りと後からの読み取りの比較は、治療が効果的かどうかの指標を医師に提供する。このようなパラメータのいずれか1つ、またはパラメータの任意の組み合わせを測定することで、治療または予防有効性をモニターすることは、十分に当業者の能力の範囲内である。ANGPTL3を標的にするiRNAまたはその医薬組成物投与との関連で,脂質代謝の障害「に対して効果的」とは、臨床的に適切な様式での投与が、少なくとも統計学的に有意な割合の患者に、症状改善、治癒、疾患低減、延命、生活の質改善、または脂質代謝の障害および関連原因の治療に精通している医者によって、好ましいと一般に認められているその他の効果などの有益な効果をもたらすことを意味する。
病態の1つまたは複数のパラメータに統計的に有意な改善がある場合、または処置がなければ予期される症状悪化または発症の欠如によって、治療または予防効果は明らかである。一例として、疾患の測定可能なパラメータの少なくとも10%の、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%以上の好ましい変化は、効果的な治療を示唆し得る。所与のiRNA薬剤またはその薬剤の配合物の有効性はまた、当該技術分野で公知の所与の疾患のための実験動物モデルを使用して、判定し得る。実験動物モデルを使用する場合、治療の有効性は、マーカまたは症状の統計的に有意な低下が観察される場合に、証明される。
代案としては、効能は、一例としてChild−Pughスコア(時にChild−Turcotte−Pughスコアとも)などの、臨床的に認められた疾患重症度評価尺度に基づく、診断当業者による判定で、疾患重症度の低下によって評価され得る。例えば適切な尺度を使用して評価された、疾患重症度の低下をもたらすあらゆる好ましい変化は、本明細書に記載されるiRNAまたはiRNA調合物を使用した適切な治療を示す。
対象には、約0.01mg/kg〜約50mg/kgなどの治療量のdsRNAが投与され得る。典型的に、本発明のiRNAの適切な用量は、約0.1mg/kg〜約5.0mg/kg、好ましくは約0.3mg/kgおよび約3.0mg/kgの範囲であろう。
iRNAは、定期的に一定期間にわたり静脈内点滴によって投与され得る。特定の実施形態では、最初の治療レジメンの後に、治療がより低い頻度で投与され得る。iRNAの投与は、例えば、患者の細胞、組織、血液、尿またはその他の区画において、ANGPTL3レベルを少なくとも約5%、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、39、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または少なくとも約99%以上低下させ得る。好ましい実施形態では、iRNAの投与は、例えば、患者の細胞、組織、血液、尿またはその他の区画において、ANGPTL3レベルを少なくとも20%低下させ得る。
iRNAの総用量の投与前に、5%輸液反応などのより少ない用量を患者に投与して、アレルギー反応などの悪影響についてモニターし得る。別の実施例では、サイトカイン(例えばTNF−αまたはINF−α)レベル増大などの望まれない免疫賦活性効果について、患者をモニターし得る。
代案としては、iRNAは、皮下投与、すなわち皮下注射によって投与され得る。1回または複数回の注射を使用して、所望の1日用量のiRNAが対象に送達されてもよい。注射は、一定期間にわたり繰り返されてもよい。投与は、定期的に繰り返されてもよい。特定の実施形態では、最初の治療レジメンの後に、治療がより低い頻度で投与され得る。反復用量レジメン(regimine)としては、隔日または1年に1回までなどの治療量のiRNAの定期的投与が挙げられる。特定の実施形態では、iRNAは、月に約1回、四半期に約1回(すなわち、3ヶ月毎に約1回)投与される。
特に断りのない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似したまたは同等の方法および材料を、本発明で取り上げるiRNAおよび方法の実施または試験で使用し得るが、適切な方法および材料は下述のとおりである。本明細書で言及される、全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、その内容全体を参照によって援用する。矛盾する場合は、定義を含めて本明細書が優先される。これに加えて、材料、方法、および実施例は、例証のみを意図し、制限は意図されない。
実施例1.iRNAの設計、合成、選択、および生体外評価
本実施例は、ANGPTL3iRNA剤を設計、合成、選択、および生体外評価する方法を記載する(その内容全体が参照により本明細書に援用される(incoportated)国際公開第2012/177784号パンフレットもまた参照されたい)。
試薬の供給元
試薬の供給元が本明細書で具体的に示されない場合、このような試薬は、分子生物学用途の品質/純度規格の分子生物学用試薬のあらゆる供給業者から得られてもよい。
ヒトANGPTL3である「アンギオポエチン様3」(ヒト:NCBI refseqID NM_014995;NCBI GeneID:27329)、ならびに毒性試験に用いた動物種であるANGPTL3オルソログ(カニクイザル:XM_005543185;マウス:NM_013913;ラット、NM_001025065)を標的とするsiRNAのセットは、カスタムRおよびPythonスクリプトを使用して設計した。ヒトANGPTL3 REFSEQ mRNAは、2951塩基の長さを有する。siRNAのセットの設計の理論的根拠および方法は次のとおりである。多数の脊椎動物遺伝子を標的とする20,000を超える別個のsiRNA設計からのmRNAノックダウンの直接測定から導かれた(derived the direct measure)線形モデルを用いて、位置81〜位置2951(コード領域および3’UTR)からのあらゆる潜在的な19量体siRNAについて、予測効率を判定した。ANGPTL3siRNAのサブセットは、ヒト、カニクイザル、およびアカゲザルの間で、完全にまたはほぼ完全に一致するように設計した。さらなるサブセットは、マウスおよびラットのANGPTL3オルソログに完全にまたはほぼ完全に一致するように設計した。siRNAの各鎖について、総当たり検索においてカスタムPythonスクリプトを使用して、標的種トランスクリプトームにおけるsiRNAと全ての潜在的なアライメントとの間のミスマッチの数および位置を測定した。アンチセンスオリゴヌクレオチドの位置2〜9として本明細書で定義されるシード領域中のミスマッチ、ならびに(as well)アンチセンスオリゴヌクレオチドの位置10〜11として本明細書で定義されるsiRNAの切断部位に、追加の加重を与えた。シードミスマッチ、切断部位、およびアンチセンス位置19までのその他の位置のミスマッチに対する相対加重は、2.8;1.2:1であった。第1位のミスマッチは無視した。各加重ミスマッチの値を合計することにより、各鎖について特異性スコアを計算した。ヒトおよびカニクイザルにおいて、そのアンチセンススコアが≧3.0であり、予測効率が≧ANPTL3転写物ノックダウンの70%であるsiRNAに、優先度を与えた。
ANGPTL3配列の合成
ANGPTL3の一本鎖および二本鎖の合成
ANGPTL3 siRNA配列は、固体支持体媒介ホスホルアミダイト化学反応を用いて、Mermade 192合成機(BioAutomation)上で、1μモル規模で合成した。固体支持体は、カスタムGalNAcリガンドまたは汎用固体担体が充填された、制御孔ガラス(500°A)であった(AM biochemical)。補助的合成試薬である2’−Fおよび2’−O−メチルRNAおよびデオキシホスホラミダイトは、Thermo−Fisher(Milwaukee,WI)およびHongene(中国)から入手した。2’F、2’−O−メチル、RNA、DNA、およびその他の修飾ヌクレオシドは、対応するホスホラミダイトを用いて配列中に導入した。3’GalNAc結合一本鎖の合成は、GalNAc修飾CPG支持体上で実施した。アンチセンス一本鎖の合成では、カスタムCPG汎用固体支持体を使用した。全てのホスホルアミダイト(アセトニトリル中の100mM)のカップリング時間は、賦活剤として5−エチルチオ−1H−テトラゾール(ETT)(アセトニトリル中の0.6M)を用いて5分間であった。ホスホロチオエート結合は、無水アセトニトリル/ピリジン(1:1v/v)中の50mMの3−((ジメチルアミノ−メチリデン)アミノ)−3H−1、2、4−ジチアゾール−3−チオン(DDTT、Chemgenes(Wilmington,MA,USAから入手される)溶液を使用して作製された。酸化時間は3分間であった。全ての配列は、最終的DMT基除去(「DMT off」)によって合成した。
固相合成の完了時に、密封96深型ウェルプレート内で、200μL水性メチルアミン試薬を使用して、一本鎖を固体支持体から切断して60℃で20分間脱保護した。tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)基で保護された2’リボ残基(2’−OH)を含む配列については、TEA.3HF(トリエチルアミン三フッ化水素酸塩)試薬を使用して、第2段階の脱保護を実施した。メチルアミン脱保護溶液に、200μLのジメチルスルホキシド(DMSO)および300μLのTEA.3HF試薬を添加し、溶液を60℃でさらに20分間インキュベートした。切断および脱保護工程の終了時に合成プレートを室温にして、1mLのアセトン:エタノール混合物(9:1)の添加によって沈殿させた。プレートを−80℃で2時間冷却し、マルチチャンネルピペットの助けを借りて、上清を注意深くデカントした。オリゴヌクレオチドペレットを20mMのNaOAc緩衝液に再懸濁し、A905オートサンプラーおよびFrac950フラクションコレクターを備えたAKTA Purifier System上で、5mL HiTrapサイズ排除カラム(GE Healthcare)を用いて脱塩した。脱塩サンプルを96ウェルプレート内に収集した。各配列からのサンプルをLC−MSで分析して同一性を確認し、UV(260nm)で分析して定量化し、選択されたサンプルセットをIEXクロマトグラフィーで分析して純度を判定した。
ANGPTL3一本鎖アニーリングは、Tecan液体取り扱いロボット上で実施した。等モルの混合物センスおよびアンチセンス一本鎖を合わせて、96ウェルプレート内でアニールした。相補的な一本鎖を結合させた後、96ウェルプレートを厳密に密閉して100℃のオーブンで10分間加熱し、2〜3時間かけて緩慢に室温に戻した。各二本鎖の濃度を1×PBS中で10μMに規準化し、次に生体外スクリーニングアッセイに供した。
実施例2.リードの選択と評価
修飾およびさらなる生体内評価のために、様々な生体外および生体内分析の結果(その内容全体が参照により本明細書に援用される(incoportated)、国際公開第2012/177784号パンフレットを参照されたい)に基づいて、AD−52981(センス配列:ACAUAUUUGAUCAGUCUUUUU(配列番号20);アンチセンス配列:AAAAAGACUGAUCAAAUAUGUUG)(配列番号21)の親配列を選択した。
したがって、AD−52981の親配列を使用して、AD−57927(センス配列:AfscsAfuAfuUfuGfAfUfcAfgUfcUfuUfuUfL96(配列番号70);アンチセンス配列:asAfsaAfaGfaCfuGfaucAfaAfuAfuGfususg)(配列番号:71)を上述されたように合成した。
生体内におけるD−57927の効果は、単回30、10、または3mg/kg用量のAD−52981(センス配列:AfcAfuAfuUfuGfAfUfcAfgUfcUfuUfuUfL96(配列番号72);アンチセンス配列:aAfaAfaGfaCfuGfaucAfaAfuAfuGfusUfsg)(配列番号73)、AD−57927、またはPBS対照をC57BL/6メスマウスに皮下投与することで評価した。投与の72時間後に動物を殺処分し、肝臓ANGPTL3 mRNAレベルを判定した。驚くことに、図1に示されるように、AD−57927(「ANG−GalNAc最適化」)はANGPTL3 mRNAレベルを親iRNA剤であるAD−52981(「ANG−GalNAc」)よりも約10倍低下させた。
AD−57927が、生体内において、ANGPTL3タンパク質の発現を抑制し、トリグリセリド(tryglycerides)、LDLコレステロール、および総コレステロールのレベルを低下させる能力もまた、多回用量レジメンを使用して評価した。ob/obメスマウスに、1週目に毎日3mg/kgのAD−57927を5日間皮下投与し、それに続いて2〜4週目に3mg/kgの用量で週2回皮下投与した(qd×5;qw×6)。動物は、0、4、8、11、15、18、22、および25日目に採血し、29日目に殺処分した。ANPTL3タンパク質レベルは、ELISAによって測定した。トリグリセリド、LDLコレステロール、および総コレステロールは、オリンパス血清分析器を用いて測定した。図2に示されるように、AD−57927によるANGPTL3タンパク質の最大のノックダウンは99%であった。AD−57927によるトリグリセリド低下の最大レベルは98%(図3)であり、AD−57927による最大LDL低下は88%(図4)であり、AD−57927による最大総コレステロール低下は64%であった(図5)。図2〜5に提示される全てのデータは、投与前レベルとの比較である。
要約すると、AD−57927は、ANGPTL3 mRNAレベルを親配列よりも約10倍低下させることが実証された。AD−57927は、ANGPTL3を用量反応性様式で低下させることが実証され(図1を参照されたい)、AD−57927の有効性は多回用量投与時にさらに改善され、混合高脂血症のob/obマウスモデルにおいて血清ANPTL3タンパク質の95%以上の低下がもたらされた。さらに、3mg/kgのAD−57927の多回用量投与は、ANGPTL3特異的ELISAアッセイによる測定で、循環血清ANGPLT3タンパク質を除去し、それは高脂血症のob/obマウスモデルにおいて、TGの>95%低下、LDLコレステロールの>85%低下、および総コレステロールの>60%低下をもたらした。
実施例3.iRNAの設計、合成、選択、および生体外評価
本実施例は、追加的なANGPTL3iRNA剤を設計、合成、選択、および生体外評価する方法を記載する。
生体外スクリーニング:
細胞培養および形質移入:
Hep3b細胞(ATCC,Manassas,VA)は、10%FBS(ATCC)が添加されたイーグル最少必須培地(Gibco)中において、5%CO2雰囲気内で、37℃でコンフルエント近くまで増殖させた後、トリプシン処理によってプレートから遊離させた。384ウェルプレートの個々のウェル内で、各5μlのsiRNA二本鎖に、ウェルあたり4.9μlのOpti−MEMと0.1μlのリポフェクタミンRNAiMax(Invitrogen,Carlsbad CA;カタログ番号13778−150)を添加することで形質移入を実施した。次に混合物を室温で20分間インキュベートした。次に、5,000個のHep3b細胞を含有する40μlの完全増殖培地をsiRNA混合物に添加した。RNA精製に先だって、細胞を24時間培養した。単回用量実験は、10nMおよび0.1nMの最終二重鎖濃度で実施した。
DYNABEADS mRNA単離キット(Invitrogen;パーツ番号610−12)を使用した全RNA単離:
ウェルあたり3μLのビーズを含有する75μlの溶解/結合緩衝液中で細胞を溶解し、静電式振盪器上で10分間混合した。洗浄工程は、磁気プレート支持体を用いて、Biotek EL406上で自動化された。ビーズを緩衝液Aで1回、緩衝液Bで1回、緩衝液Eで2回洗浄し(90μL)、その間に吸引工程を入れた。最後の吸引に続いて、完全な10μLのRT混合物を下述するように各ウェルに添加した。
ABI高容量cDNA逆転写キットを使用したcDNA合成(Applied Biosystems,Foster City,CA;カタログ番号4368813):
反応あたり1μlの10×緩衝液、0.4μlの25×dNTP、1μlのランダムプライマー、0.5μlの逆転写酵素、0.5μlのRNase阻害剤、および6.6μlのH2Oのマスター混合物を作製した。プレートを密封して静電式振盪器上で10分間撹拌し、次に、37℃で2時間インキュベートした。これに続いて、プレートを80℃で8分間撹拌した。
リアルタイムPCR:
384ウェルプレート(Rocheカタログ番号04887301001)内で、ウェル当たり0.5μlのヒトGAPDH TaqManプローブ(4326317E)、0.5μlのヒトAngptl3(Hs00205581_m1)、2μlのヌクレアーゼ非含有水、および5μlのLightcycler 480プローブマスター混合物(Rocheカタログ番号04887301001)を含有するマスター混合物に、2μlのcDNAを添加した。ΔΔCt(RQ)アッセイを使用して、LightCycler480リアルタイムPCRシステム(Roche)内で、リアルタイムPCRを実施した。各二本鎖は、要約表に特に断りのない限り、少なくとも2回の独立した形質移入で試験した。
相対的倍数変化を計算するために、ΔΔCt法を使用してリアルタイムデータを分析し、10nMの非特異的siRNAで形質移入された細胞または模擬形質移入細胞で実施したアッセイに、正規化した。
センス配列5’−ACAUAUUUGAUCAGUCUUUUU−3’(配列番号20)およびアンチセンス配列5’−AAAAAGACUGAUCAAAUAUGUUG−3’(配列番号21)に基づく様々な化学修飾を含有する、一連のANGPLT3 iRNAを試験した。配列の化学修飾は、表2Aおよび2Bに示される。アッセイの結果は、表3に示される。
ANGPTL3遺伝子を標的とする追加的なiRNA剤は、上述されたようにして合成した。追加的な修飾ANGPTL3センスおよびアンチセンス鎖配列の詳細な一覧は、表4A、4B、7A、および7Bに示され、未修飾ANGPTL3センスおよびアンチセンス鎖配列の詳細な一覧は、表5および7Cに示される。
実施例4.野生型マウスにおける生体内ANGPTL3サイレンシング
上に記載された追加的な薬剤のサブセットの生体内効力および持続時間を、野生型(C57BL/6)マウスにおいて評価した。6〜8週齢のメスマウスに、単回3mg/kgの用量の薬剤を皮下(subcutaneoulsy)投与して、投与前、投与後0日目、および4、10、17、27、38、および52日目に、動物の血清中でマウスANGPTL3のレベルを判定した。これらのアッセイでは、群当たり3匹のマウスを使用した。ANGPTL3レベルは、ELISAアッセイである、R&D Systemsマウスアンギオポエチン様3Quantikine ELISAキット(カタログ番号MANL30)を用いてアッセイした。
これらのアッセイの結果は、図6Aおよび6Bに提供される。図6Aに実証されるように、全ての薬剤は、ANGPTL3の発現を強力かつ持続的に阻害し、投与後約4日目に最下点に達する。図6Bに実証されるように、投与後10日目に、ANGPTL3のレベルは、アッセイされたその他の薬剤と比較して、AD−63174およびAD−63175を投与された動物において最も低い。
上に記載された追加的な薬剤の第2のサブセットもまた、野生型(C57BL/6)マウスにおいて評価した。6〜8週齢のメスマウスに、単回1mg/kgの用量または単回3mg/kgの用量の薬剤のいずれかを皮下(subcutaneoulsy)投与して、投与前、投与後0日目、および5日目、14日目、21日目、28日目および42日目に、動物の血清中でマウスANGPTL3のレベルを判定した。(AD−65695を投与された動物群では、試験されたその他の薬剤の応答と比較して、この薬剤に対する延長された奏効持続期間のために、マウスANGPTL3のレベルを投与後55日目にもAD−65695を投与された動物の血清中で判定した)。これらのアッセイでは、群当たり3匹のマウスを使用した。ANGPTL3レベルは、上述されたようにELISAアッセイを用いてアッセイした。
これらのアッセイの結果は図7Aおよび7Bに提供され、全ての薬剤が強力かつ持続的にANGPTL3の発現を阻害して、投与後約5日目に最下点に達し(図7A)、アッセイされたその他の薬剤と比較して、AD−65695を投与された動物が、1mg/kgおよび3mg/kgの用量で最も低いANGPTL3レベルを有した(図7B)ことが実証される。
実施例5.Ob/Obマウスにおける生体内ANGPTL3サイレンシング
上に記載された追加的な薬剤のサブセットの生体内効力および持続時間を、ob/obマウスにおいて評価した。6〜8週齢のメスob/obマウスに、単回3mg/kgの用量の薬剤を皮下(subcutaneoulsy)投与して、投与前、投与後0日目、および5、13、24、および38日目に、動物の血清中でマウスANGPTL3のレベルを判定した。これらのアッセイでは、群当たり4匹のマウスを使用した。ANGPTL3レベルは、上述されたようにELISAアッセイを用いてアッセイした。
これらのアッセイの結果は図8Aおよび8Bに提供され、全ての薬剤が強力かつ持続的にANGPTL3の発現を阻害して、投与後約5日目に最下点に達し(図8A)、アッセイされたその他の薬剤と比較して、AD−63175またはAD−65695を投与された動物が、3mg/kgの用量でANGPTL3レベルの最も高いサイレンシングを有した(図8B)ことが実証される。
動物に0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、または9mg/kgの単回用量を皮下投与して、AD−65695の用量応答をob/obマウスにおいてアッセイし、マウスANGPTL3を投与前および投与後5日目および13日目の動物の血清中で判定した。ANGPTL3レベルは、上述されたようにELISAアッセイを用いてアッセイし、血清トリグリセリド(TG)、低密度リポタンパク質コレステロール(LDLc)、高密度リポタンパク質コレステロール(HDLc)、および総コレステロール(TC)レベルもまた、オリンパス分析器を用いて測定した。
図9は、5日目に、AD−65695の0.3mg/kgの用量を投与された動物の血清中にANGPTL3タンパク質の58%のサイレンシングがあり、AD−65695の1mg/kgの用量を投与された動物の血清中にANGPTL3タンパク質の82%のサイレンシングがあり、AD−65695の3mg/kgの用量を投与された動物の血清中にANGPTL3タンパク質の98%のサイレンシングがあり、AD−65695の9mg/kgの用量を投与された動物の血清中にANGPTL3タンパク質の99%のサイレンシングがあることを実証する。
図10Aに示されるのは、ob/obマウスにおける、PBS対照またはAD−65695の投与後のTGのレベルであり;図10Bに示されるのは、PBSコントロールまたはAD−65695の投与後のob/obマウスにおいて測定された、TCのレベルである。図10Cに示されるのは、ob/obマウスにおける、PBS対照またはAD−65695の投与後のLDLのレベルであり;図10Dに示されるのは、PBS対照またはAD−65695の投与に続く、ob/obマウスにおけるHDLc対TC比である。データは、AD−65695の投与が、評価された全ての用量で、対照と比較してob/obマウスのTG、LDLc、およびTCを低下させることを実証している(血清LDLcおよびTGの80%の低下は、AD_65695の単回3mg/kg用量を用いて観察された)。
実施例6.AAV−TBG−ANGPTL3マウスにおける生体内ANGPTL3サイレンシング
ヒトAngptl3タンパク質レベルを低下させる、上に記載された追加的な薬剤のサブセットの単回用量の持続性を判定するために、投与の14日前に、200μl中の肝臓特異的チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモータ(AAV8−TBG−ANGPTL3)によって駆動されるヒトAngptl3遺伝子(コード領域)をコードするアデノ随伴ウイルス8(AAV8)ベクターの1×1011個のウイルス粒子の静脈内投与によって、野生型マウス(C57BL/6)を感染させた。0日目に、マウスに単回3mg/kgの薬剤を皮下投与して、投与前および投与後5、14、28、および42日目の動物の血清中で、ANGPTL3のレベルを判定した(図11を参照されたい)。血清サンプル中のマウスANGPTL3のレベルを上に記載されたELISAアッセイを用いて判定し、血清サンプル中のヒトANGPTL3のレベルを、ヒトおよびカニクイザル(Cynomologous)ANGPTL3を検出するが、マウスANGPTL3と交差反応しない抗体を用いるELISAアッセイによって判定した(R&D systemsヒトアンギオポエチン様3Quantikine ELISAキット)]。未感作マウス(AAVに曝露されていないマウス)からの血清は、これらのアッセイの陰性対照の役割を果たした。投与された2つの薬剤、AD−57927およびAD−65695は、マウス、ラット、カニクイザル(Cynomologous)およびヒト(m/r/cy/h)ANGPTL3 mRNAと交差反応する。投与された他の2つの薬剤、AD−62865およびAD−62866は、カニクイザル(Cynomologous)およびヒト(cy/h)ANGPTL3 mRNAとのみ交差反応する。
薬剤またはPBS対照の投与に続くヒトANGPTL3タンパク質のレベルが図12Aに示され、薬剤またはPBS対照の投与に続くマウスANGPTL3のレベルが図12Bに示され、予測されたように、cy/h因子であるAD−62865およびAD−62866の投与(adminsitration)に続いて、マウスANGPTL3のサイレンシングはなかった。結果は、ヒトANGPTL3の最大80%のノックダウンが薬剤の投与に続いて達成され、ANGPTL3の約60%のノックダウンが少なくとも4週間持続したことを実証する。このデータはまた、交差反応性m/r/cy/h剤AD−65695の投与に続いて、マウスANGPTL3の>90%のノックダウンがあり、ANGPTL3の約75%のノックダウンが、AD−65695の単回3mg/kg投与後に続いて少なくとも4週間持続したことを実証する。さらに、データは、m/r/cy/h剤であるAD−65695、およびcy/h剤であるAD−62865の投与(adminsitration)に続いて、ANGPTL3ノックダウンの同等の有効性および持続期間があることを実証する。
単回用量持続性分析もまた、AD−65695、AD−62865、およびAD−62866を用いて実施した。図13に示されるように、AAV8−TBG−ANGPTL3感染マウスに、単回0.3mg/kg、1mg/kg、または3mg/kg用量のAD−65695を投与し、またはAAV8−TBG−ANGPTL3感染マウスに、単回1mg/kgまたは3mg/kg用量のAD−62865を投与し、またはAAV8−TBG−ANGPTL3感染マウスに、単回0.3mg/kg用量のAD−62866を投与した。投与前および投与後11、25、および39日目に動物から血清を採取して、マウスおよびヒトANGPTL3のレベルを上述されたようにしてELISAアッセイによって判定した。
これらの分析からのデータは、図14A、14B、15A、および15Bに示される。図14Aおよび14Bは、薬剤の投与(adminsitartion)に続く投与後11日目の、ヒトANGPTL3およびマウスANGPTL3のレベルをそれぞれ示す。図15Aおよび15Bは、単回0.3mg/kg、1mg/kg、または3mg/kg用量のAD−65695の投与前および投与後11、25、および39日目の、ヒトおよびマウスANGPTL3のレベルをそれぞれ提供する。データは、AD−65695(m/r/cy/h剤)がヒトANGPTL3について、3mg/kgの動物の80%における有効用量(ED80)を有し、1mg/kgのED40を有することを実証する。データはまた、AD−65695がマウスANGPTL3について、3mg/kgのED90、1mg/kgのED70、および0.3mg/kgのED50を有することも実証する。さらに、データは、AD−62865(cy/h剤)がヒトANGPTL3について、3mg/kgのED80を有することを実証する。
単回1mg/kg用量の薬剤投与によって、AAV8−TBG−ANGPTL3感染マウスにおいて、それが由来する(上の表4Aおよび4Bに記載される)親配列と比較して、より少ない2’−フルオロ修飾ヌクレオチドを有する追加的な薬剤の有効性をアッセイした。投与前および投与後9日目に動物から血清を採取して、マウスおよびヒトANGPTL3のレベルを上述されたようにしてELISAアッセイによって判定した。これらのアッセイの結果は下の表6に提供され、図16は、親配列であるAD−66920、AD−66921、およびAD−66922と比較して、より少ない2’−フルオロ修飾ヌクレオチドを有する薬剤の内3つが、cy/h特異剤であるAD−62865よりもヒトANGPTL3ノックダウンの持続時間を改善したことを実証する。
実施例7.AAV−TBG−ANGPTL3マウスにおける生体内ANGPTL3サイレンシング
表7A、7B、および7Cに列挙される追加的な薬剤の第2のサブセットを、AAV8−TBG−ANGPTL3感染マウスにおいてアッセイした。これらの配列のセンスおよびアンチセンス鎖の修飾ヌクレオチド配列は、表8Aおよび8Bに提供される。簡潔に述べると、上述されたようにして、投与の14日前に、1×1011個のウイルス粒子の静脈内投与によって、野生型マウス(C57BL/6)を感染させた。0日目に、単回1mg/kgまたは3mg/kg用量の薬剤をマウスに投与した(adminsitered)。投与前および投与後14および28日目に動物から血清を採取して、マウスおよびヒトANGPTL3のレベルを上述されたようにしてELISAアッセイによって判定した。
これらのアッセイの結果は、下の表9および図17Aおよび17Bに提供される。結果は、薬剤AD−67173、AD−67174、AD−66922、AD−67007、およびAD−66920が、ヒトANGPTL3ノックダウンの持続時間を改善したことを実証する。
別の実験において、表7A、7B、および7Cに列挙される追加的な薬剤のさらなるサブセットを、AAV8−TBG−ANGPTL3感染マウスにおいてアッセイした。これらの配列のセンスおよびアンチセンス鎖の修飾ヌクレオチド配列は、表10Aおよび10Bに提供される。簡潔に述べると、上述されたようにして、投与の14日前に、1×1011個のウイルス粒子の静脈内投与によって、野生型マウス(C57BL/6)を感染させた。0日目に、単回1mg/kgまたは3mg/kg用量の薬剤をマウスに投与した(adminsitered)。投与前および投与後14および28日目に動物から血清を採取して、マウスおよびヒトANGPTL3のレベルを上述されたようにしてELISAアッセイによって判定した。
投与後14日目のこれらのアッセイの結果は、下の表11、および図18Aに提供され、投与後28日目のこれらのアッセイの結果は、下の表12、および図18Bに提供される。結果は、薬剤AD−66921、AD−66916、およびAD−67042が、ヒトAngptl3ノックダウンの持続時間を改善したことを実証する。
実施例8.非ヒト霊長類における生体内ANGPTL3サイレンシング
1日目に、単回1mg/kg用量のAD−65695またはAD−66920、または単回3mg/kg用量のAD−66920をオスカニクイザル(n=3/群)に皮下投与した。絶食時血清を投与後4、8、11、15、および22日目に採取して、Angplt3のタンパク質レベルおよび血清脂質レベルを測定した。
これらのアッセイの結果は図19Aおよび19Bに提供され、AD−66920(h/cy)の単回3mg/kg用量に続く、血清ANGPTL3タンパク質の最大80%のノックダウン、および血清トリグリセリドレベルの約50%の低下があることが実証される。単回1mg/kg用量のAD−66920は、血清トリグリセリドのレベルに軽微な効果を有した。驚くことに、単回1mg/kg用量のAD−65695の投与は、ANGPTL3タンパク質レベルを単回1mg/kg用量のAD−66920と同様のレベルにまで低下させたが、AAV8−TBG−ANGPTL3マウスモデルにおいては、単回1mg/kg用量のAD−65695は、単回1mg/kg用量ofAD−66920よりも約3倍より弱く、血清トリグリセリドに影響を及ぼさなかった。
実施例9.AAV−TBG−ANGPTL3マウスにおける生体内ANGPTL3サイレンシング
ANGPTL3を標的とする追加的な薬剤セットの生体内効力を、AAV8−TBG−ANGPTL3感染マウスにおいてアッセイした。これらの配列のセンスおよびアンチセンス鎖の修飾ヌクレオチド配列は、表13Aおよび13Bに提供される。簡潔に述べると、上述されたようにして、投与の21日前に、1×1011個のウイルス粒子の静脈内投与によって、野生型マウス(C57BL/6;n=3)を感染させた。0日目に、1mg/kg用量の薬剤をマウスに単回投与した(adminsitered)。投与前および投与後28日目に動物から血清を採取して、ヒトANGPTL3のレベルを上述されたようにしてELISAアッセイによって判定した。
これらのアッセイの結果は図20に提供され、これらの薬剤がヒトANGPTL3タンパク質レベルを効果的にノックダウンすることを実証する。
表13Aおよび13Bに列挙されたANGPTL3を標的とするさらなる薬剤セットを、生体内効力についてAAV8−TBG−ANGPTL3感染マウスにおいてアッセイした。上述されたようにして、投与の21日前に、1×1011個のウイルス粒子の静脈内投与によって、野生型マウス(C57BL/6;n=3)を感染させた。0日目に、1mg/kg用量の薬剤をマウスに単回投与した(adminsitered)。投与前および投与後28日目に動物から血清を採取して、ヒトおよびマウスANGPTL3のレベルを上述されたようにしてELISAアッセイによって判定した。
これらのアッセイの結果は図21Aおよび21Bに提供され、これらの薬剤がマウスおよびヒトANGPTL3タンパク質レベルを効果的にノックダウンすることが実証される。
実施例10.AAV−TBG−ANGPTL3マウスにおける生体外ANGPTL3サイレンシング
ANGPTL3遺伝子を標的とするさらなるiRNA剤は、上述されたようにして合成した。追加的な未修飾ANGPTL3センスおよびアンチセンス鎖配列の詳細な一覧は、表14に示され、これらの追加的な薬剤の修飾センスおよびアンチセンス鎖配列の詳細な一覧は、表13A、13B、15A、および15Bに示される。
これら追加的な薬剤は、10nMおよび0.1nMの最終二重鎖濃度での薬剤の単回用量形質移入によって、Hep3bおよび初代カニクイザル肝細胞内の生体外アッセイで評価した。(表16を参照されたい)。
Hep3b細胞を培養し、上述されたようにして形質移入した(tranfected)。初代カニクイザル肝細胞内の自由取り込みサイレンシングを、ANGPTL3剤との24時間のインキュベーションに続いて評価した。この方法は、5μLの完全増殖培地で、リポフェクタミンRNAiMaxおよびOptimemを含有する5μLを置き換えたことを除いて、上に記載されたものと同様であった。これらのアッセイの結果(表16に提供される)は、二重鎖の多くが、ANGPTL3 mRNA発現を強力に阻害することを例証する。