JP6972722B2 - 低合金鋼 - Google Patents
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C:0.01%以下と、
Si:0.05〜10.0%およびAl:0.01〜10.0%の両方またはいずれか一方と、
P:0.025%以下、
S:0.010%以下、
O:0.005%以下、
N:0.008%以下、
Mn:0〜1.0%、
B:0〜0.003%、
Cr:0〜5.0%、
Mo:0〜5.0%、
V:0〜5.0%、
W:0〜5.0%、
Nb:0〜0.1%、
Ti:0〜0.1%、
Zr:0〜0.2%、
Hf:0〜0.2%、
Ta:0〜0.2%、
Cu:0〜3.0%、
Ni:0〜5.0%、
Co:0〜3.0%、
Ca:0〜0.01%、
Mg:0〜0.01%、
REM:0〜0.50%と、
残部:Feおよび不純物とである化学組成を有し、
下記(1)式から求められるFn1が1.0〜10.0であり、
下記(2)式から求められるFn2が1.0〜10.0である、
耐水素脆化特性に優れる低合金鋼。
Fn1 = Si+Al (質量%)(1)
Fn2 = Si+Al (固溶分の質量%)(2)
ただし、(1)式中の各元素記号は、低合金鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味し、(2)式中の各元素記号は、低合金鋼中に固溶状態で存在する各元素の含有量(質量%)を意味する。
Mn:0.1〜1.0%、
B:0.0003〜0.003%
Cr:0.01〜5.0%、
Mo:0.01〜5.0%、
V:0.01〜5.0%、
W:0.01〜5.0%、
Nb:0.001〜0.1%、
Ti:0.001〜0.1%、
Zr:0.001〜0.2%、
Hf:0.001〜0.2%、
Ta:0.001〜0.2%、
Cu:0.1〜3.0%、
Ni:0.1〜5.0%、
Co:0.1〜3.0%、
Ca:0.0001〜0.01%、
Mg:0.0001〜0.01%および
REM:0.0001〜0.50%から選択される一種以上を含有する、
上記〔1〕の低合金鋼。
上記〔1〕または〔2〕の低合金鋼。
本発明に係る低合金鋼は、下記の化学組成を有する。各元素の含有量の範囲および限定理由を説明する。各元素の含有量の%は、「質量%」を意味する。
Cは、固溶強化により鋼の強度を高めるのに有効であるが、0.01%を超えて含有させると、母相のフェライト地に固溶しきれなくなり、焼鈍時に粗大な炭化物を形成し、耐水素脆化特性を低下させる。この観点から、Cの含有量は0.01%以下とする。C含有量は、低ければ低いほど望ましい。
Al:0.01〜10.0%の両方またはいずれか一方
SiおよびAlは、鋼の脱酸に有効な元素であるが、本発明においては、耐水素脆化特性を向上させるために重要な元素である。脱酸の効果を得る観点ではSiは0.05%以上、Alは0.01%以上含有させれば十分であるが、優れた耐水素脆化特性を得るためには、SiおよびAlの合計含有量を1.0%以上とする必要がある。一方、耐水素脆化特性の効果は、過剰に含有させても飽和するので、それぞれの元素の含有量の上限および合計含有量の上限は10.0%とする。すなわち、下記(1)式から求められるFn1が1.0〜10.0であることが必要である。一方、耐水素脆化特性は、特に、鋼中に固溶したSiおよびAlによって得られるので、下記(2)式から求められるFn2が1.0〜10.0であることも必要である。
Fn1 = Si+Al (質量%)(1)
Fn2 = Si+Al (固溶分の質量%)(2)
ただし、(1)式中の各元素記号は、低合金鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味し、(2)式中の各元素記号は、低合金鋼中に固溶状態で存在する各元素の含有量(質量%)を意味する。
Pは、鋼中に不純物として存在する元素である。Pは、粒界に偏析し、耐水素脆化特性を低下させる元素であるため、その含有量は0.025%以下とする必要がある。Pの含有量はできるだけ少ない方が望ましい。
Sは、鋼中に不純物として存在する元素である。SもPと同様に粒界に偏析し,耐水素脆化特性を低下させる元素であるため、その含有量は0.01%以下とする必要がある。Sの含有量はできるだけ少ない方が望ましい。
O(酸素)は,鋼中に不純物として存在する元素である。その含有量が0.005%を超えると、粗大な酸化物を形成し、靭性等の機械的特性を低下させる。従って、O(酸素)は0.005%以下とする。O(酸素)の含有量はできるだけ低い方が望ましい。その上限は望ましくは0.004%、さらに望ましくは0.003%である。
N(窒素)は、鋼中に不純物として存在する元素である。その含有量が0.008%を超えると、粗大な窒化物を形成し、靭性等の機械的特性を低下させる。従って、N(窒素)は0.008%以下とする。N(窒素)の含有量はできるだけ低い方が望ましい。その上限は望ましくは0.006%、さらに望ましくは0.005%である。
Mnは、固溶強化の効果を有するので、含有させてもよい。ただし、過剰に含有させても効果が飽和するので、含有させる場合の上限を1.0%とする。上記の効果を得るためには、0.1%以上含有させるのが好ましい。
Bは、Cと同様に鋼の強度を高めるのに有効であるので、含有させてもよい。ただし、0.003%を超えて含有させてもその効果は飽和するため、含有させる場合の上限を0.003%とする。上記の効果を得るためには、0.0003%以上含有させるのが好ましい。
Mo:0〜5.0%
V:0〜5.0%
W:0〜5.0%
Nb:0〜0.1%
Ti:0〜0.1%
Zr:0〜0.2%
Hf:0〜0.2%
Ta:0〜0.2%
Cr、Mo、V、W、Nb、Ti、Zr、HfおよびTa(以下、これらの元素を「第1群元素」ともいう。)は、フェライト生成元素であり、かつ固溶強化能を有する。また、Nb、Ti、Zr、HfおよびTaは、炭窒化物の生成能が強く、焼鈍時に微細な炭窒化物を形成し、固溶Cや固溶Nを低減する効果を有する。このため、これらの元素の一種以上を含有させてもよい。ただし、それぞれの元素の含有量が過剰な場合には効果が飽和するので、これらの元素を含有させる場合には、Crは5.0%以下、Moは5.0%以下、Vは5.0%以下、Wは5.0%以下、Nbは0.1%以下、Tiは0.1%以下、Zrは0.2%以下、Hfは0.2%以下、Taは0.2%以下とする。また、上記の効果を得るためには、Crは0.01%以上、Moは0.01%以上、Vは0.01%以上、Wは0.01%以上、Nbは0.001%以上、Tiは0.001%以上、Zrは0.001%以上、Hfは0.001%以上、Taは0.001%以上含有させるのが好ましい。
Ni:0〜5.0%
Co:0〜3.0%
Cu、NiおよびCoは、いずれも鋼の固溶強化に有効である。このため、これらの元素から選択される一種以上を含有させてもよい。ただし、過剰に含有させてもその効果は飽和するので、CuおよびCoはその上限を3.0%とし、Niはその上限を5.0%とする。また、上記の効果を得るためには、いずれの元素も0.1%以上含有させるのが好ましい。
Mg:0〜0.01%
REM:0〜0.50%
Ca、MgおよびREMは、鋼中のSと結合して硫化物を形成し、介在物の形状を改善して靭性等の機械的特性を改善するので、含有させてもよい。過剰に含有させてもこの効果は飽和するため、CaおよびMgの上限は、0.01%、REMの上限は0.50%とする。上記の効果を得るためには、いずれの元素も0.0001%以上含有させるのが好ましい。
本発明鋼は、体積率で99%以上がフェライトである、フェライト単相組織を対象とする。フェライト以外の組織については、特に制約がないが、水素脆化の起点および進展経路として働くので、その量はできるだけ少ないことが好ましい。このため、析出物、介在物および金属間化合物(以下、「析出物等」という。)の合計量は0.5質量%以下とするのが好ましい。
本発明鋼は、通常の方法で溶製(溶解および鋳造)し、熱間鍛造し、必要に応じてさらに熱間圧延することにより製造することができる。ただし、偏析を除去し、金属間化合物の生成を抑えるために、熱間鍛造後に1200〜1300℃で1時間以上保持のソーキング熱処理を行うのが望ましい。最終熱処理の焼鈍温度は、フェライトの単相組織が得られる条件であればよいが、通常は、750〜850℃の温度で、5分以上均熱し、その後に水冷するのがよい。析出物等の生成を低減するためには、単にSiおよびAlの含有量を調整するだけでは足りず、水冷工程の800〜500℃間の冷却速度を10℃/s以上するのがよい。必要に応じて、焼鈍後に冷間圧延等を施し、強度を高めてもよい。
SiおよびAlの合計固溶量、析出物等の合計含有量は、下記の手順により求めた。
試験材(焼鈍材)の中心部から、直径が1〜10mmで長さが50mmの寸法の抽出分析用丸棒試験片を採取した。この試験片を陽極電解してマトリックスを溶解させ、析出物等を抽出し、抽出された残渣を用いてICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分析を行い、残渣中のSiおよびAlの合計含有量を測定する。陽極電解は、1質量%の酒石酸を含む電解液を用いて定電流電解により行った。この合計含有量を、陽極電解によるマトリックス溶解前後での試験片の質量差(つまり、試験片の溶解量)で除して、マトリックス中に析出したSiおよびAlの合計含有量(質量%)を算出した。鋼材のSiおよびAlの合計含有量から、析出したSiおよびAlの合計含有量を差し引いて、固溶したSiおよびAlの合計含有量を計算した。また、マトリックスを溶解させ得られた残渣の合計量を、陽極電解によるマトリックス溶解前後での試験片の質量差(試験片の溶解量)で除して、析出物等の合計含有量(質量%)を求めた。
試験材(焼鈍材)および試験材(冷間圧延材)の板厚中心部から平行部の幅2mm×厚さ2mm、もしくは幅2mm×厚さ1mmの板状引張試験片を採取し、水溶液中での陰極チャージ下での低ひずみ速度引張試験により、耐水素脆化特性を評価した。溶液には常温の3%NaCl+3g/Lチオシアン酸アンモニウム水溶液を用いて、飽和カロメル電極に対して−1.2(V)で陰極水素チャージを行いつつ引張試験を行った。ひずみ速度は3×10−4(s−1)とした。陰極チャージ下の破断伸びを測定し、これを大気中で測定した破断伸びで除して、相対破断伸び(%)を算出した。相対破断伸びが大きい材料ほど、耐水素脆化特性に優れる。本実施形態においては、相対破断伸びが50%以上の試験材を耐水素脆化特性に優れると判断した。
試験材(焼鈍材)および試験材(冷間圧延材)から試験部の厚さが1〜2mm、試験部の幅が6mmの板状引張試験片を採取し、JIS Z 2241:2011に従って引張試験を行い、TS(引張強さ)を求めた。
Claims (2)
- 質量%で、
C:0.01%以下、
Si:0.05〜10.0%およびAl:0.01〜10.0%の両方またはいずれか一方と、
P:0.025%以下、
S:0.010%以下、
O:0.005%以下、
N:0.008%以下とを含有し、さらに、
Mn:0.1〜1.0%、
B:0.0003〜0.003%、
Cr:0.01〜5.0%、
Mo:0.01〜5.0%、
V:0.01〜5.0%、
W:0.01〜5.0%、
Nb:0.001〜0.1%、
Ti:0.001〜0.1%、
Zr:0.001〜0.2%、
Hf:0.001〜0.2%、
Ta:0.001〜0.2%、
Cu:0.1〜3.0%、
Ni:0.1〜5.0%、
Co:0.1〜3.0%、
Ca:0.0001〜0.01%、
Mg:0.0001〜0.01%および
REM:0.0001〜0.50%から選択される一種以上を含有し、
残部:Feおよび不純物である化学組成を有し、
下記(1)式から求められるFn1が1.0〜10.0であり、
下記(2)式から求められるFn2が1.0〜10.0である、
耐水素脆化特性に優れる低合金鋼。
Fn1 = Si+Al (質量%)(1)
Fn2 = Si+Al (固溶分の質量%)(2)
ただし、(1)式中の各元素記号は、低合金鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味し、(2)式中の各元素記号は、低合金鋼中に固溶状態で存在する各元素の含有量(質量%)を意味する。 - 析出物、介在物および金属間化合物の合計量が0.5質量%以下である、
請求項1に記載の低合金鋼。
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