JP6729265B2 - 低合金鋼 - Google Patents

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本発明は、低合金鋼に関する。
薄鋼板、厚鋼板、鋼管、棒線などの種々の分野で、高強度化ならびに使用環境の過酷化に伴い、水素脆化が問題となっている。
bcc構造を有する炭素鋼や低合金鋼の耐水素脆化特性を改善する組織上の対策としては、例えばマルテンサイト系の材料では、焼戻し温度を高めることによる粒界炭化物の球状化や、水素トラップ効果を有する微細な合金炭化物の活用が知られている(非特許文献1および非特許文献2)。
上記の対策は、焼戻し時に生じる炭化物の作用に着目し、これを制御するものである。一方、Fe以外の合金元素を添加した場合には、その一部がbcc構造の母相中に固溶し、この固溶元素を活用すれば、熱処理に依存しなくても普遍的な耐水素脆化特性が得られることが期待される。
特許文献1には、固溶Mo量を0.4%以上として、Moを旧オーステナイト粒界に濃化させ、湿潤硫化水素環境中の耐水素脆化特性(耐硫化物応力割れ性)を改善する発明が開示されている。
ただし、Fe以外の固溶合金元素は一般には水素拡散係数を低下させ、使用環境中における吸蔵水素濃度を増加させ、水素脆化に対して悪影響を及ぼすと考えられている(非特許文献3および非特許文献4)。
特許文献2には、固溶窒素量が0.004〜0.03質量%に制限した冷間加工用鋼材に関する発明が開示されている。この冷間加工用鋼材によれば、冷間加工のみで高強度が得られるため、熱処理を省略することができる、としている。
特開2015−38247号公報 特開2016−56418号公報
櫛田隆弘、松本斉、倉富直行、津村輝隆、中里福和、工藤赳夫、鉄と鋼Vol.82、No.4(1996)297−302頁 山崎真吾、高橋稔彦、鉄と鋼Vol.83、No.7(1997)454−459頁 羽木秀樹、日本金属学会誌 第55巻 第12号(1991)1283−1290頁 櫛田隆弘、工藤赳夫、まてりあ 第33巻 第7号(1994)932−939頁
本発明者らは、純鉄系の材料を用いて、各種の合金元素を完全に固溶させた合金を用いて鋭意検討を行った結果、主として、NiおよびMoは、固溶状態でも水素拡散係数を低下させず、かつ耐水素脆化特性の改善効果を有することを見出した。上記改善効果の作用機構については、詳細は不明であるが、これらの元素は表面エネルギーを高めて腐食環境における水素侵入を抑制する効果がある。水素侵入の抑制機構は、金属表面に水素原子が吸着した状態を不安定化させ、水素分子に速やかに再結合させ、系外に逃散させることと推定されている。この効果と同様に、鉄中にNiやMoが固溶している場合、鉄中を拡散して近づいて来た水素原子を反発し、拡散を促進することで水素原子が脆化起点(応力集中部や介在物などの界面)に集積するのを防止し、水素脆化を抑制すると推定される。
ここで、特許文献1の発明は、焼入れ(省略可)処理の後に、焼戻し処理を行って、焼戻マルテンサイト相を主相とする組織を得るものであり、C:0.15〜0.50%の含有を必須としている。しかし、このような多量のCを含有する鋼材に焼戻しを行うと、Mo炭化物、もしくはCの一部がNによって置換されたMo炭窒化物が形成される。(以下、炭化物および窒化物の双方を包含する概念として、「炭窒化物」と総称する。)。その結果、固溶状態のMoを十分に残存させることができない。
特許文献2の発明は、Moを靭性向上の目的で含有させることが記載されているが、耐水素脆化特性について全く考慮されていない。また、NiおよびMoを含有することが想定されているが、これらの固溶状態については不明である。特に、調質のための熱処理、いわゆる焼入れ/焼戻し熱処理を省略することを前提としているが、製造工程においては熱間での圧延または鍛造は不可避であり、鋼材の冷却過程で炭窒化物が析出する。製造工程中に炭窒化物が生成すると、充分な量の固溶Ni量および固溶Mo量を確保できない。
本発明者らは、さらには、V、WおよびCoについても、NiおよびMoと同様の作用があることを確認し、本発明を完成させた。
本発明は、Ni、Mo、V、WおよびCoを固溶状態で存在させることにより耐水素脆化特性の改善させた低合金鋼を提供することを目的とする。
本発明は、下記の低合金鋼を要旨とする。
〔1〕質量%で、
C:0.01%以下と、
Si:0.05〜1.0%およびAl:0.01〜0.10%の両方またはいずれか一方と、
P:0.025%以下、
S:0.010%以下、
O:0.005%以下、
N:0.008%以下、
Ni:0〜5.0%、
Mo:0〜5.0%、
Mn:0〜1.0%、
B:0〜0.003%、
Cr:0〜5.0%、
V:0〜5.0%、
W:0〜5.0%、
Nb:0〜0.1%、
Ti:0〜0.1%、
Zr:0〜0.2%、
Hf:0〜0.2%、
Ta:0〜0.2%、
Cu:0〜3.0%、
Co:0〜3.0%、
Ca:0〜0.01%、
Mg:0〜0.01%、
REM:0〜0.50%と、
残部:Feおよび不純物とである化学組成を有し、
下記(1)式から求められるFn1が0.5以上であり、
下記(2)式から求められるFn2が0.5以上である、
低合金鋼。
Fn1 = Ni+0.5Mo+V+0.25W+Co (質量%)(1)
Fn2 = Ni+0.5Mo+V+0.25W+Co (固溶分の質量%)(2)
ただし、(1)式中の各元素記号は、低合金鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味し、(2)式中の各元素記号は、低合金鋼中に固溶状態で存在する各元素の含有量(質量%)を意味する。
〔2〕質量%で、
Ni:0.1〜5.0%、
Mo:0.1〜5.0%、
Mn:0.1〜1.0%、
B:0.0003〜0.003%、
Cr:0.01〜5.0%、
V:0.01〜5.0%、
W:0.01〜5.0%、
Nb:0.001〜0.1%、
Ti:0.001〜0.1%、
Zr:0.001〜0.2%、
Hf:0.001〜0.2%、
Ta:0.001〜0.2%、
Cu:0.1〜3.0%、
Co:0.1〜3.0%、
Ca:0.0001〜0.01%、
Mg:0.0001〜0.01%および
REM:0.0001〜0.50%から選択される一種以上を含有する、
上記〔1〕の低合金鋼。
〔3〕炭窒化物量が0.10質量%以下である、
上記〔1〕または〔2〕の低合金鋼。
本発明によれば、耐水素脆化特性に優れた低合金鋼が得られる。
1.化学組成
本発明に係る低合金鋼は、下記の化学組成を有する。各元素の含有量の範囲および限定理由を説明する。各元素の含有量の%は、「質量%」を意味する。
C:0.01%以下
Cは、固溶強化により鋼の強度を高めるのに有効であるが、0.01%を超えて含有させると、母相のフェライト地に固溶しきれなくなり、焼鈍時に粗大な炭化物を形成し、耐水素脆化特性を低下させる。この観点から、Cの含有量は0.01%以下とする。C含有量は、低ければ低いほど望ましい。
Si:0.05〜1.0%および
Al:0.01〜0.10%の両方またはいずれか一方
SiおよびAlは、鋼の脱酸に有効な元素であり、両方またはいずれか一方を含有させる。脱酸効果を得るためには、Siは0.05%以上、Alは0.01%以上含有させる。一方、いずれの元素も過剰に含有させてもその効果が飽和するので、Siの含有量の上限は1.0%、Alの含有量の上限は0.10%とする。上記の効果を得るためには、Si含有量の下限は0.1%とするのが好ましく、Al含有量の下限は0.015%とするのが好ましい。
P:0.025%以下
Pは、鋼中に不純物として存在する元素である。Pは、粒界に偏析し、耐水素脆化特性を低下させる元素であるため、その含有量は0.025%以下とする必要がある。Pの含有量はできるだけ少ない方が望ましい。
S:0.010%以下
Sは、鋼中に不純物として存在する元素である。SもPと同様に粒界に偏析し,耐水素脆化特性を低下させる元素であるため、その含有量は0.01%以下とする必要がある。Sの含有量はできるだけ少ない方が望ましい。
O:0.005%以下
O(酸素)は,鋼中に不純物として存在する元素である。その含有量が0.005%を超えると、粗大な酸化物を形成し、靭性等の機械的特性を低下させる。従って、O(酸素)は0.005%以下とする。O(酸素)の含有量はできるだけ低い方が望ましい。その上限は望ましくは0.004%、さらに望ましくは0.003%である。
N:0.008%以下
N(窒素)は、鋼中に不純物として存在する元素である。その含有量が0.008%を超えると、粗大な窒化物を形成し、靭性等の機械的特性を低下させる。従って、N(窒素)は0.008%以下とする。N(窒素)の含有量はできるだけ低い方が望ましい。その上限は望ましくは0.006%、さらに望ましくは0.005%である。
Ni:0〜5.0%
Mo:0〜5.0%
NiおよびMoは、本発明において重要な元素であり、母相のフェライト地に固溶することにより、耐水素脆化特性を向上させる。よって、NiおよびMoの両方または一方を含有させてもよい。しかし、過剰に含有させてもその効果は飽和するため、NiおよびMoそれぞれの含有量の上限を5.0%とする。上記の効果を得るためには、Ni含有量の下限は0.1%とするのが好ましく、Mo含有量の下限は0.1%とするのが好ましい。また、Fn1およびFn2の規定を満足する必要があるが、これらの規定については後段で説明する。
Mn:0〜1.0%
Mnは、固溶強化の効果を有するので、含有させてもよい。ただし、過剰に含有させても効果が飽和するので、含有させる場合の上限を1.0%とする。上記の効果を得るためには、0.1%以上含有させるのが好ましい。
B:0〜0.003%
Bは、Cと同様に鋼の強度を高めるのに有効であるので、含有させてもよい。ただし、0.003%を超えて含有させてもその効果は飽和するため、含有させる場合の上限を0.003%とする。上記の効果を得るためには、0.0003%以上含有させるのが好ましい。
Cr:0〜5.0%
V:0〜5.0%
W:0〜5.0%
Nb:0〜0.1%
Ti:0〜0.1%
Zr:0〜0.2%
Hf:0〜0.2%
Ta:0〜0.2%
Cr、V、W、Nb、Ti、Zr、HfおよびTa(以下、これらの元素を「第1群元素」ともいう。)は、フェライト生成元素であり、かつ固溶強化能を有する。また、Nb、Ti、Zr、HfおよびTaは、炭窒化物の生成能が強く、焼鈍時に微細な炭窒化物を形成し、固溶Cや固溶Nを低減する効果を有する。VおよびWについては、前述のNiおよびMoと同様の耐水素脆化特性の改善効果も有する。このため、これらの元素の一種以上を含有させてもよい。ただし、それぞれの元素の含有量が過剰な場合には効果が飽和するので、これらの元素を含有させる場合には、Crは5.0%以下、Vは5.0%以下、Wは5.0%以下、Nbは0.1%以下、Tiは0.1%以下、Zrは0.2%以下、Hfは0.2%以下、Taは0.2%以下とする。また、上記の効果を得るためには、Crは0.1%以上、Vは0.01%以上、Wは0.01%以上、Nbは0.001%以上、Tiは0.001%以上、Zrは0.001%以上、Hfは0.001%以上、Taは0.001%以上含有させるのが好ましい。
なお、VおよびWの両方またはいずれか一方を含有させる場合には、Fn1およびFn2の規定を満足する必要があるが、これらの規定については後段で説明する。
Cu:0〜3.0%
Co:0〜3.0%
CuおよびCoは、いずれも鋼の固溶強化に有効である。Coについては、前述のNiおよびMoと同様の耐水素脆化特性の改善効果も有する。このため、これらの元素の両方またはいずれか一方を含有させてもよい。ただし、過剰に含有させてもその効果は飽和するので、いずれの元素もその上限を3.0%とする。また、上記の効果を得るためには、いずれの元素も0.1%以上含有させるのが好ましい。
なお、Coを含有させる場合には、Fn1およびFn2の規定を満足する必要があるが、これらの規定については後段で説明する。
Ca:0〜0.01%
Mg:0〜0.01%
REM:0〜0.50%
Ca、MgおよびREMは、鋼中のSと結合して硫化物を形成し、介在物の形状を改善して靭性等の機械的特性を改善するので、含有させてもよい。過剰に含有させてもこの効果は飽和するため、CaおよびMgの上限は、0.01%、REMの上限は0.50%とする。上記の効果を得るためには、いずれの元素も0.0001%以上含有させるのが好ましい。
なお、REMとは、Sc、Y、およびランタノイドの合計17元素を指し、「REMの含有量」とは、REMが1種の場合はその含有量、2種以上の場合はそれらの合計含有量を指す。また、REMは一般的には複数種のREMの合金であるミッシュメタルとしても供給されている。このため、個別の元素を1種または2種以上添加してREMの量が上記の範囲となるように含有させてもよいし、例えば、ミッシュメタルの形で添加して、REMの量が上記の範囲となるように含有させてもよい。
本発明の化学組成は、上記の各元素をそれぞれ規定される範囲で含有し、残部は、Feおよび不純物である。不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料その他の要因により混入する成分を意味する。
ここで、Ni、Mo、V、WおよびCoについては、上記の各元素の規定を満足するとともに、下記(1)式から求められるFn1が0.5以上であり、下記(2)式から求められるFn2が0.5以上であることが必要である。
Fn1 = Ni+0.5Mo+V+0.25W+Co (質量%)(1)
Fn2 = Ni+0.5Mo+V+0.25W+Co (固溶分の質量%)(2)
ただし、(1)式中の各元素記号は、低合金鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味し、(2)式中の各元素記号は、低合金鋼中に固溶状態で存在する各元素の含有量(質量%)を意味する。
これは、Ni、Mo、V、WおよびCoは、固溶状態でも水素拡散係数を低下させず、かつ耐水素脆化特性の改善効果を有するからである。このため、Fn1では、低合金鋼中のこれらの元素の含有量の総量を示し、Fn2では、耐水素脆化特性の改善に寄与する低合金鋼中の固溶状態で存在するこれらの元素の含有量を示している。そして、Fn1およびFn2がともに0.5以上であれば、耐水素脆化特性の改善効果が顕著となる。
なお、Ni、Mo、V、WおよびCoを複合して含有させる場合には、合金コストを考慮して、その合計含有量を10質量%以下とするのが好ましい。特に、合金コストの観点からは、これらの元素のうち、NiおよびMoの両方またはいずれか一方を含有させるのが好ましい。
Ni、Mo、V、WおよびCoの炭窒化物が析出していない場合には、Fn1とFn2とは同一の値を示すことになる。このため、これらの炭窒化物がほとんど析出しないような条件で製造する場合には、基本的にはFn1からFn2を推測することができる。
2.金属組織
本発明鋼は、体積率で99%以上がフェライトである、フェライト単相組織を対象とする。フェライト以外の組織については、特に制約がないが、炭窒化物は、水素脆化の起点および進展経路として働く。このため、炭窒化物量は、0.10%以下とするのが好ましい。
3.製造方法
本発明鋼は、通常の方法で溶製(溶解および鋳造)し、熱間鍛造し、必要に応じてさらに熱間圧延することにより製造することができる。しかし、熱間鍛造および熱間圧延においては、それぞれの冷却過程で鋼材中に炭窒化物が析出する。また、通常、鋼材に対して実施される調質熱処理、いわゆる焼入れ/焼戻し熱処理においては、焼戻し時の冷却過程で炭窒化物が析出する。その結果、Ni等の固溶量を十分に確保できなくなり、Fn2を0.5以上にすることができなくなる。このため、本発明鋼の製造においては、熱間での加工プロセスの後に所定の焼鈍処理(加熱、均熱、冷却)を行うことが重要である。
焼鈍温度は、フェライトの単相組織が得られる条件であればよいが、通常は、750〜850℃の温度で、5分以上均熱し、その後に水冷するのがよい。炭窒化物の生成を防止するためには、水冷工程の800〜500℃間の冷却速度を10℃/s以上するのがよい。必要に応じて、焼鈍後に冷間圧延等を施し、強度を高めてもよい。
本発明の効果を検証した実施例を以下に説明する。
表1に示す化学組成を有する低合金鋼をそれぞれ50kg真空溶製した。得られた鋳片から、熱間鍛造、熱間圧延を経て、厚さ30mmの板材を得た後、800℃で60分加熱後水冷の焼鈍熱処理を行い、試験材(焼鈍材)を得た。また、焼鈍後に、減面率60〜94%の冷間圧延を施し、試験材(冷間圧延材)を得た。この際、引張強さが580〜820MPaの範囲に入るように、素材に応じて冷間圧延率を調整した。なお、一部の例(試験番号26)については、焼鈍後に、焼戻し(600℃×30分保持後に放冷)を行った。
Figure 0006729265
<炭窒化物析出量の測定等>
炭窒化物の析出量は、下記の手順により求めた。
試験材(焼鈍材)の中心部から、直径が1〜10mmで長さが50mmの寸法の炭窒化物抽出分析用丸棒試験片を採取した。この試験片を陽極電解してマトリックスを溶解させ、炭窒化物のみを抽出し、抽出された残渣を用いてICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分析を行い、残渣中のFe、Ni、Mo、Coおよび第1群元素のそれぞれの含有量を測定する。このそれぞれの元素の含有量を、陽極電解によるマトリックス溶解前後での試験片の質量差(つまり、試験片の溶解量)で除して、マトリックス中に炭窒化物として析出しているFe、Ni、Mo、Coおよび第1群元素の含有量(質量%)を算出する。厳密には、この方法では炭窒化物中のCおよびNの質量を測定できないが、炭窒化物中のCおよびNの含有量は最大でも原子比で50%(Ti(C,N)のように、第1群元素と{C+N}が原子比で1:1)であることと、CおよびNの原子量はFe、Ni、Mo、Co、第1群元素に比べ小さいことから、この方法で炭窒化物の析出量を大まかに測定できる。
固溶したNi、Mo、V、WおよびCoの含有量(質量%)は、表1に示す各合金元素の化学組成(質量%)から、炭窒化物として析出しているNi、Mo、V、WおよびCoの各含有量(質量%)を差し引いた残量として求めた。
<耐水素脆化特性の測定>
試験材(焼鈍材)および試験材(冷間圧延材)の板厚中心部から平行部の幅2mm×厚さ2mm、もしくは幅2mm×厚さ1mmの板状引張試験片を採取し、水溶液中での陰極チャージ下での低ひずみ速度引張試験により、耐水素脆化特性を評価した。溶液には常温の3%NaCl+3g/Lチオシアン酸アンモニウム水溶液を用いて、飽和カロメル電極に対して−1.2(V)で陰極水素チャージを行いつつ引張試験を行った。ひずみ速度は3×10−4(s−1)とした。陰極チャージ下の破断伸びを測定し、これを大気中で測定した破断伸びで除して、相対破断伸び(%)を算出した。相対破断伸びが大きい材料ほど、耐水素脆化特性に優れる。本実施形態においては、相対破断伸びが50%以上の試材を耐水素脆化特性に優れると判断した。
<機械的特性の測定>
試験材(焼鈍材)および試験材(冷間圧延材)から試験部の厚さが1〜2mm、試験部の幅が6mmの板状引張試験片を採取し、JIS Z 2241:2011に従って引張試験を行い、TS(引張強さ)を求めた。
表2に、焼鈍条件(冷却条件)と、上記の試験結果を示す。
Figure 0006729265
表2に示すように、本発明例である、試験番号1〜20は、焼鈍材、冷間加工材ともに相対破断伸びが50%以上であり、優れた耐水素脆化特性を有していた。一方、比較例である、試験番号21〜23は、Fn1値が低く、耐水素脆化特性に劣っていた。試験番号24は、Fn1値は0.5%以上であるが、炭窒化物(主としてMo炭窒化物)が生成したためにFn2値が小さく、耐水素脆化特性に劣っていた。試験番号25はC含有量が0.01%を超えており、焼鈍時に未固溶の粗大炭窒化物(主として鉄炭窒化物)が残存しており、耐水素脆化特性に劣っていた。試験番号26は、試験番号24と同様に、Fn1値は0.5%以上であるが、炭窒化物(主としてMo炭窒化物)が多量に生成したためにFn2値が小さく、耐水素脆化特性に劣っていた。
本発明によれば、耐水素脆化特性に優れた低合金鋼が得られる。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.01%以下と、
    Si:0.05〜1.0%およびAl:0.01〜0.10%の両方またはいずれか一方と、
    P:0.025%以下、
    S:0.010%以下、
    O:0.005%以下、
    N:0.008%以下、
    Ni:0〜5.0%、
    Mo:0〜5.0%、
    Mn:0〜1.0%、
    B:0〜0.003%、
    Cr:0〜5.0%、
    V:0〜5.0%、
    W:0〜5.0%、
    Nb:0〜0.1%、
    Ti:0〜0.1%、
    Zr:0〜0.2%、
    Hf:0〜0.2%、
    Ta:0〜0.2%、
    Cu:0〜3.0%、
    Co:0〜3.0%、
    Ca:0〜0.01%、
    Mg:0〜0.01%、
    REM:0〜0.50%と、
    残部:Feおよび不純物とである化学組成を有し、
    下記(1)式から求められるFn1が0.5以上であり、
    下記(2)式から求められるFn2が0.5以上であり、
    体積率で、99%以上がフェライトである金属組織を有する、
    低合金鋼。
    Fn1 = Ni+0.5Mo+V+0.25W+Co (質量%)(1)
    Fn2 = Ni+0.5Mo+V+0.25W+Co (固溶分の質量%)(2)
    ただし、(1)式中の各元素記号は、低合金鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を意味し、(2)式中の各元素記号は、低合金鋼中に固溶状態で存在する各元素の含有量(質量%)を意味する。
  2. 質量%で、
    Ni:0.1〜5.0%、
    Mo:0.1〜5.0%、
    Mn:0.1〜1.0%、
    B:0.0003〜0.003%、
    Cr:0.01〜5.0%、
    V:0.01〜5.0%、
    W:0.01〜5.0%、
    Nb:0.001〜0.1%、
    Ti:0.001〜0.1%、
    Zr:0.001〜0.2%、
    Hf:0.001〜0.2%、
    Ta:0.001〜0.2%、
    Cu:0.1〜3.0%、
    Co:0.1〜3.0%、
    Ca:0.0001〜0.01%、
    Mg:0.0001〜0.01%および
    REM:0.0001〜0.50%から選択される一種以上を含有する、
    請求項1に記載の低合金鋼。
  3. 炭窒化物量が0.10質量%以下である、
    請求項1または2に記載の低合金鋼。
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