JP4867638B2 - 耐遅れ破壊特性および耐腐食性に優れた高強度ボルト - Google Patents
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(1)、質量%で、C:0.15%超、0.30%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、Ti:0.1%以下、Mo:0.3%以上、0.5%以下、B:0.0005%以上、0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を、焼入れ後に、100℃〜400℃で焼き戻し処理を施し、焼入後の平均旧オーステナイト粒径が10μm以下の鋼組織とすること特徴とする耐遅れ破壊特性および耐腐食性に優れた高強度ボルト。
(2)、鋼が、さらに、質量%で、Al:1.0%以下、Cr:2.5%以下、Cu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、V:0.5%以下の中から選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の耐遅れ破壊特性および耐腐食性に優れた高強度ボルト。
(3)、鋼が、さらに、質量%で、W:0.1%以下、Nb:0.1%以下の中から選んだ1種または2種を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の耐遅れ破壊特性および耐腐食性に優れた高強度ボルト。
(4)、焼入れを、高周波加熱を用いて行うことを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の耐遅れ破壊特性および耐腐食性に優れた高強度ボルト。
Cは必要な強度を確保するために必須の元素であり、0.15%以下では所定の強度確保が難しい。一方で、0.30%を超えると強度が上がりすぎて、遅れ破壊特性が低下し、また、冷間鍛造性も低下するため、0.3%を上限とした。
Siは脱酸剤として鋼の溶製時に作用するために、含有させることができる。但し、1.0%を超えると鋼の冷間鍛造性を著しく低下させるので、上限を1.0%とした。
Mnは、鋼の溶製時の脱酸剤としての作用を有しているので、含有させることができる。但し、1.5%を超えると鋼の冷間鍛造性を著しく低下させるので、上限を1.5%とした。
Moは本発明において、特に重要な元素である。Moは延性を大きく損なうことなく強度を向上させる。また耐腐食性の維持のためにも必要な元素である。その効果を発現するには0.3%以上の添加が必須である。一方で、0.5%を超えて添加しても強度のそれ以上の向上にならず、コスト高となってしまう。また過剰に添加すると冷間鍛造性も低下する傾向にあるので、上限を0.5%とした。
Bは、粒界部に濃化して粒界強度向上に寄与する最も重要な元素である。遅れ破壊は主にオーステナイト粒界で発生するものであり、この粒界を強化することは耐遅れ破壊特性の向上に大きく寄与する。そのためには0.0005%以上の含有が必要である。しかし0.01%を超えて含有してもその効果は飽和するので、上記範囲に限定した。
Tiは、不可避的不純物として混入するNと結合することで、BがBNを形成してBの効果が消失することを防止する。この効果を得るためには0.005%以上含有することが好ましいが、0.1%を超えて添加してもTiNが大量に形成されて、強度や疲労強度の低下を招くため、上限を0.1%とする。
本発明では旧オーステナイト粒径の調整が重要である。旧オーステナイト粒径を微細化することで、粒界に析出し遅れ破壊特性を低下させる膜状炭化物の析出を抑制し、粒界強度を向上させる。そのためには粒径は10μm以下であることが必要である。なおより好ましくは、粒径を7μm以下とする。粒径が7μm以下であれば、一層耐遅れ破壊特性を向上させる効果がある。
Alは脱酸に有効な元素である。また焼入れ時のオーステナイト粒成長を抑制することによって、強度の維持に有効な元素である。しかしながら含有量が1.0%を超えて含有させてもその効果は飽和し、コスト上昇を招く不利が生じるだけでなく、冷間鍛造性も低下する。よってAlを添加する場合は、1.0%以下とする。
Crは焼入れ性の向上に有効であり、硬化深さを確保する上で有用である。しかし過度に含有すると、炭化物安定効果によって残留炭化物の生成を助長し、強度の低下をまねく。従ってCr含有はできる限り低減することが望ましいが、2.5%までは許容できる。なお、焼入れ性を向上させる作用を発現させるためには、0.2%以上含有させることが好ましい。
Cuは焼入れ性の向上に有効であり、またフェライト中に固溶して強度を向上させる。しかし1.0%を超えて含有すると熱延等の熱間加工時に割れが発生する。そこでCuを添加する場合は、1.0%以下とする。なお、焼入れ性や強度を向上させる作用を発現させるためには、0.2%以上含有させることが好ましい。
Niは焼入れ性を向上させるのに有効であり、また炭化物の生成を抑制するため、膜状炭化物の粒界への生成を抑制し粒界強度を上げることで強度、遅れ破壊特性の向上に寄与する。ただしNiは非常に高価な元素であり、2.0%を超えて添加すると鋼材コストが著しく上昇する。そこでNiを添加する場合は、2.0%以下とする。なお、焼入れ性や強度、遅れ破壊特性を向上させる作用を発現させるためには、0.5%以上含有させることが好ましい。
Vは、鋼中でCと結合し強化元素としての作用が期待される。また焼き戻し軟化抵抗性を向上させる効果もあり、強度向上に寄与する。しかし0.5%を超えて含有してもその効果は飽和するため、Vを添加する場合は、0.5%以下とする。なお、強度を向上させる作用を発現させるためには、0.1%以上含有させることが好ましい。
Wは安定した炭化物を形成し、強化元素として有効である。一方で、0.1%を超えて添加すると冷間鍛造性を低下させるので、Wを添加する場合は0.1%以下とする。
Nbは焼入れ性向上効果のほかに、析出強化元素として強度や靭性の向上に寄与する。この効果を発現させるためには0.005%以上含有させることが好ましい。しかし0.1%を超えて含有しても、その効果は飽和するので、Nbを添加する場合は0.1%以下とする。
焼入れ処理においては、高周波加熱を用いることで、必要な温度域に到達後に、直ちに焼き入れることが可能であり、不必要な結晶粒の粗大化を避け微細な結晶粒組織を得ることができる。このためには高周波焼入れにおいて、昇温速度100℃/s以上で最高温度800℃〜1100℃に加熱し、到達後即焼き入れる方法が有効である。
この条件が本発明では最も鍵となる部分である。すなわち、焼戻し温度100℃〜400℃は通常のボルト用鋼等では一般的に使用されない温度域である。しかし本発明の場合には、この温度域とすることで、不必要な炭化物が析出しない。焼戻し温度を本範囲より高くすると、炭化物が析出する。炭化物が析出すると、低pH(ほぼpH2以下)中では、炭化物とマトリックス間に局部電池が生成して、鋼自体の腐食による減量が大きくなる。そこで不必要に炭化物を析出させないために上記温度範囲とした。さらに含有しているBが拡散したり不必要な析出をしたりすることなく、粒界に濃化して粒界の強化にうまく寄与する。そして焼戻し温度が高くないことで、微細粒効果との重畳によって、一定以上の強度レベルおよび耐遅れ破壊特性を維持する。なお焼戻し温度は、100℃〜250℃であることが一層好ましい。
2 割れ
Claims (4)
- 質量%で、C:0.15%超、0.30%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、Ti:0.1%以下、Mo:0.3%以上、0.5%以下、B:0.0005%以上、0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を、焼入れ後に、100℃〜400℃で焼き戻し処理を施し、焼入後の平均旧オーステナイト粒径が10μm以下の鋼組織とすること特徴とする耐遅れ破壊特性および耐腐食性に優れた高強度ボルト。
- 鋼が、さらに、質量%で、Al:1.0%以下、Cr:2.5%以下、Cu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、V:0.5%以下の中から選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐遅れ破壊特性および耐腐食性に優れた高強度ボルト。
- 鋼が、さらに、質量%で、W:0.1%以下、Nb:0.1%以下の中から選んだ1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐遅れ破壊特性および耐腐食性に優れた高強度ボルト。
- 焼入れを、高周波加熱を用いて行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の耐遅れ破壊特性および耐腐食性に優れた高強度ボルト。
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