JP4430559B2 - 耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト用鋼及び高強度ボルト - Google Patents
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Cr/C≧2.3
を満たすと共に、Mo、V及びTiが下記式(1)を満たすところに特徴がある。
4.0 ≦(10[Mo]+25[V]+30[Ti])≦14.0 …(1)
[式(1)中、[Mo]、[V]、[Ti]は、それぞれMo、V、Tiの含有量
(質量%)を示す]
4.0 ≦(10[Mo]+25[V]+30[Ti])≦14.0 …(1)
[式(1)中、[Mo]、[V]、[Ti]はそれぞれMo、V、Tiの含有量(質量%)
を示す]
Cは、鋼の焼入性と強度確保のために必要な元素である。特に本発明の鋼は、後述する通り、Mo,V、Tiといった析出硬化型元素を高温焼入れによって固溶させた後、高温焼戻しによって必要量の炭素含有析出物を析出させる必要があるため、Cを0.30%以上、好ましくは0.33%以上含有させる必要がある。一方、C量が過剰になると、鋼の靭性劣化により遅れ破壊特性が低下する。そのためC量の上限を0.45%以下とした。好ましくは0.40%以下であり、より好ましくは0.38%以下である。
Siは、脱酸剤として添加される元素であるが、残存するSi量が過剰になると焼入れ等の熱処理時に粒界酸化が助長され、遅れ破壊が生じ易くなる。よってSi量は0.2%以下に抑える。好ましくは0.10%以下、より好ましくは0.07%以下である。
Mnは、焼入性向上元素であり高強度を達成するのに有用な元素である。この様な効果を発現させるにはMnを0.30%以上含有させる必要がある。好ましくは0.40%以上であり、より好ましくは0.45%以上である。一方、Mn量が過剰になると、粒界への偏析が助長され粒界強度が低下するため、遅れ破壊が生じ易くなる。よってMn量は0.80%以下に抑える。好ましくは0.60%以下であり、より好ましくは0.55%以下である。
Moは、焼入性向上元素であり、かつ析出硬化型元素でもあるため強度確保に有用である。また、Moは粒界酸化抑制作用を有しており、上述した様にTi及びVとバランスよく添加することで耐遅れ破壊性を向上させる。よって本発明では、Moを0.20%以上含有させる。好ましくは0.35%以上である。一方、Moが過剰になると、炭化物の増量・増大を招き、侵入水素量が増加して耐遅れ破壊性が劣化するだけでなく、コストアップの原因にもなるので、Mo量の上限を0.60%とした。好ましくは0.50%以下、より好ましくは0.45%以下である。
Vは、結晶粒を微細化すると共に、析出硬化により高強度を達成するのに有用な元素である。これらの作用を発揮させるには、V量を0.03%以上とする必要がある。好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.08%以上、更に好ましくは0.09%以上である。しかしV量が過剰になると、鋼の溶製時に生成するV炭化物が増量又は粗大化し、結果として侵入水素量が増大し遅れ破壊特性が劣化する。またVの巨大炭化物が焼入れの加熱の際に十分固溶せず、鋼の靭性を劣化させる場合がある。更には冷間加工性の低下やコストアップの原因ともなるので、V量は0.25%以下とする。好ましくは0.15%以下、より好ましくは0.10%以下である。
Tiも、Vと同様に結晶粒を微細化すると共に、析出硬化により高強度を達成するのに有用な元素である。この様な効果を発現させるためTi量を0.03%以上とする。好ましくは0.04%以上、より好ましくは0.045%以上である。しかしTi量が過剰になると、上記Vの場合と同様に、鋼の溶製時に生成するTi炭化物が増量又は粗大化し、結果として侵入水素量が増大し遅れ破壊特性が劣化する。またTiの巨大炭化物が焼入れの加熱の際に十分固溶せず、鋼の靭性を劣化させる場合がある。更には冷間加工性の低下やコストアップの原因にもなるので、Ti量は0.25%以下とする。好ましくは0.08%以下であり、より好ましくは0.06%以下である。
Alは、脱酸剤として添加される元素であり、また、さび緻密化による耐食性の向上作用を期待できる元素でもある。脱酸剤としての利用を考慮すると、現実的には0%を超えており、耐食性向上作用を発揮させる観点からは0.01%以上存在させることが好ましい。より好ましくは0.02%以上、更に好ましくは0.03%以上である。一方、Al量の増加に伴い酸化物系介在物量が増大して、耐遅れ破壊性が低下し易くなる。よってAl量は0.5%以下に抑える。好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.10%以下、更に好ましくは0.05%以下に抑える。
Pは、粒界偏析による粒界破壊を助長して耐遅れ破壊性を劣化させる元素であるため、低い方が望ましく、その上限を0.02%とする。好ましくは0.009%以下に抑える。
Sは、鋼中でMnSを形成し、該MnSが応力負荷時に応力集中箇所となり、遅れ破壊の起点となり得る。従って、耐遅れ破壊性の改善にはS量を減少させる必要があり、本発明では0.02%以下に抑える。好ましくは0.009%以下である。
Nは、耐遅れ破壊性を劣化させる有害な元素であるため、極力低減する必要があり、本発明では0.02%以下に抑える。好ましくは0.015%以下、更に好ましくは0.010%以下であり、特に好ましくは0.007%以下である。
Cuは、耐食性を高めて水素の侵入を抑制するのに有効な元素である。またNiは、鋼の靱性および焼入性を高める作用があると共に、Cuと同様、耐食性を向上させて水素侵入を抑制するのに有効な元素である。これらの効果を十分に発揮させるには、Cu及び/又はNiを合計で0.2%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.3%以上である。一方、Cuを過剰に添加しても効果が飽和し、靭性が却って劣化する。また、Niを過剰に添加した場合も効果が飽和してコストアップを招く。従って、Cu及び/又はNiは合計で1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.7%以下であり、更に好ましくは0.5%以下である。
:合計で0.5%以下(0%を含まない)〉
Zr、W、Nbは、前記Tiと同様に、微細な炭窒化物を形成して遅れ破壊特性の向上に寄与する元素である。またこれらの元素の窒化物及び炭化物は結晶粒の微細化に有効に作用する。これらの効果を発揮させるには、Zr、W及びNbよりなる群から選択される1種以上を合計0.1%以上含有させることが好ましい。しかしこれらの元素を過剰に添加しても効果が飽和するため、コストを抑える観点から合計で0.5%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.4%以下、更に好ましくは0.3%以下である。
Bは、鋼の焼入れ性向上及び結晶粒界の清浄化に有用な元素であり、これらの効果を発現させるには、0.0003%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.0004%以上である。しかしB量が過剰になると却って靭性が低下するため、上限を0.0050%とするのがよい。
[焼入れ条件]
・加熱の保持時間:10分以上(好ましくは20分以上)
1時間以下(好ましくは40分以下)
・冷却条件:油冷または水冷
[焼戻し条件]
・加熱の保持時間:30分以上(好ましくは70分以上)
3時間以下(好ましくは2時間以下)
・冷却条件:油冷、水冷または空冷
焼入れ焼戻しを行った試験片の横断面のD/4部(Dは直径)を観察し、JIS G 0551に規定の「鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法」で旧オーステナイト結晶粒度番号を測定した。
上記旧オーステナイト結晶粒度番号の測定後、図4に示す引張試験片を切削加工により作製して引張試験を行った。そして、引張強度が1300N/mm2以上のものを十分な焼戻し軟化抵抗と引張強度を示すと評価した。
上記旧オーステナイト結晶粒度番号の測定後、図5に示す遅れ破壊試験片を切削加工により作製して遅れ破壊試験を行った。遅れ破壊試験は、上記遅れ破壊試験片を酸性水溶液中に浸漬(35%HCl×15分)し、水洗・乾燥させた後、大気中で種々のレベルの応力を負荷し、100時間に亘って負荷し続けても破断しない最高負荷応力を「遅れ破壊強度」として求めた。そして該遅れ破壊強度が、遅れ破壊の実際に生じる確率が極めて小さい遅れ破壊強度:1800N/mm2以上のものを、耐遅れ破壊性に優れると評価した。
Claims (5)
- C :0.30〜0.45%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:0.2%以下(0%を含まない)、
Mn:0.30〜0.80%、
Mo:0.20〜0.60%、
V :0.03〜0.25%、
Ti:0.03〜0.25%、
Cr:0.80〜1.2%、
Al:0.5%以下(0%を含まない)、
P :0.02%以下(0%を含まない)、
S :0.02%以下(0%を含まない)、
N :0.02%以下(0%を含まない)、
残部:Feおよび不純物であって、
Cr/C≧2.3
を満たすと共に、Mo、V及びTiが下記式(1)を満たすことを特徴とする耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト用鋼。
4.0 ≦(10[Mo]+25[V]+30[Ti])≦14.0 …(1)
[式(1)中、[Mo]、[V]、[Ti]は、それぞれMo、V、Tiの含有量
(質量%)を示す] - 更に、Cu及び/又はNiを合計で1%以下(0%を含まない)含む請求項1に記載の高強度ボルト用鋼。
- 更に、Zr、W及びNbよりなる群から選択される1種以上を合計で0.5%以下(0%を含まない)含む請求項1または2に記載の高強度ボルト用鋼。
- 更に、Bを0.0050%以下(0%を含まない)含む請求項1〜3のいずれかに記載の高強度ボルト用鋼。
- 前記請求項1〜4のいずれかに記載の成分組成を満たし、旧オーステナイト結晶粒度番号が10.0以上であり、かつ引張強度が1300N/mm2以上であることを特徴とする耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト。
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JP2005033529A JP4430559B2 (ja) | 2005-02-09 | 2005-02-09 | 耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト用鋼及び高強度ボルト |
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