JP2004307932A - 耐遅れ破壊性に優れたボルト用鋼及びボルトの製造方法 - Google Patents

耐遅れ破壊性に優れたボルト用鋼及びボルトの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】コスト的に安価であり、且つボンデ被膜を被覆処理した上で伸線及びボルト成形した場合であっても、耐遅れ破壊性に優れたボルトを得ることのできるボルト用鋼を提供する。
【解決手段】ボルト用鋼の化学組成を、重量%でC:0.22〜0.32%,Si:≦0.20%,Mn:0.60〜1.20%,P:≦0.015%,S:≦0.005%,Cu:0.07〜0.25%,Ni:0.03〜0.20%,Cu+Ni:0.10〜0.40%,Cr:0.05〜0.45%,Ti:0.01〜0.10%,Nb:0.01〜0.06%,N:0.002〜0.010%,B:0.0005〜0.0030%残部不可避的不純物及びFeからなる組成とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は耐遅れ破壊性に優れたボルト用鋼及びボルトの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、引張強さ1000MPa以上のボルトはJIS SCM435やSCM440等のクロム・モリブデン鋼を用いて製造されていた。
詳しくは、JIS SCM435やSCM440等のクロム・モリブデン鋼の圧延線材に焼鈍しを施し、更に潤滑のためのボンデ皮膜の被覆処理をした後、伸線とボルト成形を行い、その後調質処理を施すことにより製造されていた。
【0003】
しかしながらこれらクロム・モリブデン鋼は高価な元素であるCr,Moを添加しており、材料自体のコストが高い問題があった。
近年、ボルトの製造コストをより低減することが強く求められており、そのような中で高価な元素の添加を抑えて焼入性も確保でき、且つ焼鈍しが省略可能な低炭素−ボロン鋼の実用化が検討されている。
【0004】
ところが高価なCrやMo等の添加を抑えたこの種廉価な合金の場合、今までのSCM435やSCM440等では特に大きな問題となっていなかったボルトの遅れ破壊が重大な問題となって来る。
【0005】
この低炭素−ボロン鋼は炭素含有量が0.2〜0.3%程度であり、引張強さ1000MPa以上を得るためにはクロム・モリブデン鋼製ボルトに比べて焼戻し温度を低めとすることが必要である。
ところが焼戻し温度を低下すると、これに伴い旧オーステナイト粒界の割れが起点となる遅れ破壊感受性が高まるのである。
ここでボルトにおける遅れ破壊は、周知のようにボルトを所定の力で締め付けた後において使用環境中から水素が鋼中に浸入して脆化し、ある時間経過すると突然破壊する現象である。
このためこの低炭素−ボロン鋼では、旧オーステナイト粒界の割れを防止する対策、具体的には焼入中にオーステナイト粒界に偏析する不純物量を低減する対策が講じられている。
【0006】
ところで、ボルト製造に際して上記のようにボンデ皮膜を圧延線材に被覆処理すると、その後におけるボルト成形の成形性が良好となり、線材と金型との焼付けを良好に防止することができるが、一方でこのようにボンデ被膜を被覆処理した線材をボルト成形後に焼入れすると、ボンデ皮膜中のP成分がボルト表層のオーステナイト粒界に沿って侵入して来る、いわゆる侵リン現象を起こし、Pが粒界に偏析して粒界の結合力を低下させる問題を生ずる。
そこへ更に使用環境中から水素が侵入すると粒界が更に強度劣化し、遅れ破壊をより起こし易くなる。
【0007】
即ち表層に濃化したPが水素脆化、即ち遅れ破壊を助長してしまうのである。
従ってこのため、ボルト表層にPの濃化層が形成されてしまった場合、前述した鋼中の粒界偏析不純物量を低減させるだけでは完全に遅れ破壊を防止できない。
そのためこのような鋼についてはボンデ被膜を付けないでボルト成形し、焼入れすることが行われている。この場合当然ボルト成形の際の成形性は悪化する。
【0008】
上記問題の解決策として、下記特許文献1にはPを含まない潤滑皮膜を用いることで、焼入中のPの浸入を回避する方法が開示されている。
ところが非P含有皮膜の潤滑性能はボンデ皮膜よりも劣るため、ボルト成形時に金型と線材が焼付き、生産効率を低下させてしまう。
【0009】
尤もボンデ皮膜付線材から成形したボルトの、表面の残存ボンデ皮膜をアルカリ洗浄で除去する方法も知られている。
しかしながらその場合洗浄液の品質管理や廃液処理に多大なコストがかかってしまい、ボルトの製造コスト低減に寄与しなくなる。
【0010】
他方、下記特許文献2にはボルトを水焼入れして遅れ破壊を防止する方法も開示されている。
一般的に高強度ボルトの焼入れとしては油焼入れが採用されており、従って水焼入れをする場合には従来用いられている油冷槽を水冷槽に置き換える必要があるが、この場合その置換えに要する費用が発生する他、水焼入れの場合、複雑な頭部形状を有するボルトでは焼割れする恐れがある。
【0011】
本発明は以上のような事情を背景とし、ボルト用鋼として低炭素−ボロン鋼線材を用い、そして冷間加工性を維持するためにボンデ被膜を被覆処理して伸線及びボルト成形を行い得、しかも油焼入れ・焼戻しにより強度確保できるとともに耐遅れ破壊性の改善されたボルトを得ることのできるボルト用鋼及びボルトの製造方法が強く望まれている中で創出されたものである。
【0012】
【特許文献1】
特開平9−104945号公報
【特許文献2】
特開2001−62639号公報
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明のボルト用鋼は、重量%で、C:0.22〜0.32%,Si:≦0.20%,Mn:0.60〜1.20%,P:≦0.015%,S:≦0.005%,Cu:0.07〜0.25%,Ni:0.03〜0.20%,Cu+Ni:0.10〜0.40%,Cr:0.05〜0.45%,Ti:0.01〜0.10%,Nb:0.01〜0.06%,N:0.002〜0.010%,B:0.0005〜0.0030%残部不可避的不純物及びFeからなることを特徴とする(請求項1)。
【0014】
また請求項2のものは、請求項1において、重量%で、Mo:0.03〜0.10%,V:0.05〜0.20%の1種又は2種を更に含有することを特徴とする。
【0015】
請求項3はボルトの製造方法に関するもので、請求項1,2の何れかに記載のボルト用鋼を素材として線材の熱間圧延を終止温度700〜900℃で行い、その後ボンデ皮膜の被覆処理を施した後、伸線及びボルト成形し、しかる後油焼入れを施した上、400℃以上の温度で焼戻しすることを特徴とする。
【0016】
【作用及び発明の効果】
請求項1に規定する本発明のボルト用鋼は、CrやMoといった価格の高い高級な合金成分を可及的に排して低コスト化を図る一方で、それらの減少による焼入性の低下をBの添加で補い、また固溶Bによる焼入性を確保すべく、その阻害要因となるNをTi添加によって固着し、またNb添加によるNb炭窒化物のピン止め効果で結晶粒を微細化することの外、Cu,Niを所定量含有させ且つそれらの総量規制を行うことを骨子とする。
【0017】
本発明では、特にCu,Niの添加及びそれらの総量規制によって、線材の熱間圧延時の表面疵の生成を抑制しつつ、ボルトの耐遅れ破壊性を効果的に向上させ得ることが確認されているが、その具体的な理由については明確には確認できていない。
【0018】
但し推測として、Cu添加によりオーステナイト化加熱中にCuが粒界に偏析し、ボンデ被膜からのPの粒界への拡散を防止する。
併せて焼戻し中にCuが金属間化合物の如き析出物を生成してこれが使用環境中からの水素の粒界への侵入を防止し、また水素をトラップする働きをなすことによるものと考えられる。
但しCuを一定量を超えて多く含有させると、線材の熱間圧延時に表面疵の生成頻度が増えてしまう。Niの複合添加はその表面疵の生成を抑える働きをする。
【0019】
かかる本発明によれば、コストの安い材料を用いながらボンデ被膜を被覆処理をした上で伸線及びボルト成形を行うことが可能であり、しかもそのようにした場合であっても遅れ破壊が助長されることのない、耐遅れ破壊性に優れた高強度のボルトを得ることができる。
即ち本発明によればボルトを安価に製造することが可能となり、しかも優れた耐遅れ破壊性を有するボルトを得ることが可能となる。
【0020】
尚、本発明においてはMo:0.03〜0.10%及びV:0.05〜0.20%の1種又は2種を必要に応じて添加することができる(請求項2)。
【0021】
請求項3はボルトの製造方法に関するもので、この製造方法は、特に熱間圧延をその終止温度が700〜900℃の範囲となるように行い、そしてボンデ皮膜の被覆処理を施した後、伸線及びボルト成形し、その後焼入れに際して従来一般的に行われている油焼入れを施し、その後の焼戻しを400℃以上の温度で行うことを特徴とするものである。
【0022】
この場合において熱間圧延を終止温度700〜900℃の低温度とするのは次の理由による。
即ち線材を熱間圧延すると表面に圧延スケールが生成するが、Cuは熱間圧延中に酸化して外部即ち圧延スケール中に排出されてしまい、その結果線材の表層即ちボルト表層のCu濃度が希薄となり、前述したCuによる侵入水素のトラップ効果、即ち耐遅れ破壊性の改善効果が低下してしまう。
そこで本発明では圧延中のCuの酸化を抑制すべく、終止温度が900℃以下となるように熱間圧延を行う。
【0023】
一方焼戻しを400℃以上の温度で行うのは、そのような温度での焼戻しによって時効によるCuの析出が効果的に行われ、Cuによる耐遅れ破壊性の改善効果が十分に引き出されることによる。
【0024】
次に本発明における各化学成分等の限定理由を以下に詳述する。
C:0.22〜0.32%
Cは熱処理によって所要の強度を得るために有効な元素であり、0.22%以上含有させることが必要である。
しかし0.32%を超えて含有させると冷間加工性が劣化するので0.32%以下とする必要がある。
【0025】
Si:≦0.20%
Siはオーステナイト化時の高温加熱による粒界酸化を助長する元素であり、酸化物と粒界が剥離することで遅れ破壊の起点となる。
また圧延後の線材の硬さを高め、冷間加工性を劣化させる。
このためSi量は低い方が望ましく、上限を0.20%とした。
Siは製鋼,精錬コストが上がるので、0.01%以上にすることが望ましい。
【0026】
Mn:0.60〜1.20%
Mnは溶製時の脱酸材として有効であるとともに焼入性の向上に寄与する元素であるため、0.60%以上必要である。
しかしMnはSiとともに焼入時の粒界酸化を助長し、耐遅れ破壊性を劣化させることがある。
また圧延後の線材の硬さを高め、冷間加工性を劣化させることがあるのでその上限を1.20%とした。
【0027】
P:≦0.015%
Pはオーステナイト化加熱時にオーステナイト粒界に偏析して耐遅れ破壊性を劣化させるので0.015%以下とした。
【0028】
S:≦0.005%
SはPと同様にオーステナイト化加熱時にオーステナイト粒界に偏析し、またMnSを形成して遅れ破壊の起点となるため0.005%以下とした。
【0029】
Cu:0.07〜0.25%
Ni:0.03〜0.20%
Cu+Ni:0.10〜0.40%
ボンデ皮膜から焼入中にPがオーステナイト粒界に沿って侵入して遅れ破壊感受性が高まるが、Cuを適量添加すると遅れ破壊し難くなることを見出した。
これはCuがオーステナイト化加熱中に粒界に偏析して、皮膜からのPの粒界拡散を防止するためと考えられる。
Cu添加量とともにこの効果は増加するが、線材の熱間圧延時に表面傷の生成頻度が増えて歩留りが減少することがあった。
表面傷生成防止元素を鋭意調査した結果、Niの複合添加が有効であった。
但し多量に両元素を添加していくと線材の硬さが高くなり、冷間加工性が劣化するためCuとNiの量を規制した。
【0030】
Cr:0.05〜0.45%
Crは焼入性の向上に寄与する元素であるので、ボルトの寸法等に応じてその添加量を調整するのが良く、これによってボルトの焼入性を確保するため0.05%以上とした。
しかしCrを添加し過ぎるとSi及びMnと同様に粒界酸化を助長して耐遅れ破壊性を劣化させる。
また圧延後の線材の硬さを高め、冷間加工性を劣化させる。このため上限を0.45%とした。
【0031】
Ti:0.01〜0.10%
ボロン鋼では固溶Bを利用して焼入性を確保している。
鋼中の固溶Nが高いと、これが固溶Bと反応してBN析出物を形成し、焼入性に寄与する固溶Bを消費してしまうことがある。
そこで微量のTiを添加して、固溶NをTiNとして固着しておく必要がある。
このためにはTi量は0.01%以上必要であるが、過度にTiを添加すると粗大なTiNを形成し、ボルト成形性が劣化する。そこでTi量は0.10%以下と規制した。
【0032】
Nb:0.01〜0.06%
ボロン鋼ではNがTiNとなり固着される。このTiNはサブミクロン(μm)〜数μmのサイズであり、焼入中の結晶粒界のピン止め効果を期待できない。
そこでNbを添加して、Nb炭窒化物による結晶粒の粗大化防止を図る必要がある。このために0.01%以上必要であるが、過度に添加すると粗大Nb炭窒化物が生成して粒界ピン止め効果がなくなる。このためNb量は0.06%以下と規制した。
【0033】
N:0.002〜0.010%
結晶粒微細化に寄与するNb炭窒化物を形成するのに必要である。
過度に添加すると粗大なNb炭窒化物が生成して粒界ピン止め効果が失われ、耐遅れ破壊性とボルト成形性が劣化するため0.002〜0.010%に規制する。
【0034】
B:0.0005〜0.0030%
線材の冷間加工性を向上させるためにMn,Cr,Si等の焼入性に寄与する合金元素量を低減すると、素材の焼入性が不足してボルトの焼入時に不完全焼入組織を生じる。
Bはこの焼入性低下を補うとともに、焼入時にオーステナイト粒界に優先的に偏析してPやSの偏析を軽減する効果もある。
これらの効果を得るには0.0005%以上含有させる必要があるが、多量に含有させても効果が飽和し、逆に粗大なボロン炭化物が粒界析出し、焼入性,耐遅れ破壊性とも劣化するので上限を0.0030%とする。
【0035】
Mo:0.03〜0.10%
V :0.05〜0.20%
溶湯が凝固する際に一次炭化物が晶出するが、熱間圧延中に徐々に再固溶して消失していく。
この際MoやVは再固溶速度を小さくし、圧延後も一次炭化物の残存に寄与する。
焼入れ・焼戻しされたボルト中に残存した一次炭化物は水素のトラップサイトとして機能し、耐遅れ破壊性を向上させると考えられる。
但し多量に添加すると巨大な一次炭化物が晶出してしまい、冷間加工性を劣化させるため上限を設けた。
またMoについては上限を超えると圧延後の線材にベイナイトが生成し、冷間加工性の劣化を招く。
【0036】
線材の熱間圧延終止温度:700〜900℃
Cu添加によって効率的に耐遅れ破壊性を上昇させるには焼入れ・焼戻し前のボルト表層においてCu量が低下していないことが重要である。
しかしCuは熱間圧延中に酸化して外部に排出されるため線材表層、ひいては成形ボルト表層のCu濃度が希薄になる。
熱間圧延中の酸化を抑制してCuの表層からの外部拡散を防止するためには、熱間圧延の終止温度を900℃以下に制御する必要がある。
しかし低温圧延は圧延効率を落としてコスト高を招くため、終止温度を700℃以上とする。
【0037】
焼戻し温度:400℃以上
CuとNi未添加材は焼戻し温度の上昇とともに硬さが低下して単調に耐遅れ破壊性が向上していく。
CuとNi複合添加材も同様な傾向は見られるが、400℃以上の焼戻しでその向上効果が更に大きくなっていた。
この理由は明らかではないが、表層近傍に濃化した両元素が400℃以上で金属間化合物を形成して、これが水素トラップサイトになったことが一因と考えられる。
【0038】
【実施例】
次に本発明の実施例を以下に詳述する。
<実施例1>
表1に示す化学成分の本発明の実施例A〜Fと比較例G〜X及びSCM440をそれぞれ溶製した後、造塊し、各鋼を直径10.6mmの線材に圧延した。その際圧延終止温度は830±50℃とした。
尚従来例のJIS SCM440は、圧延後に760℃で10時間保持した後徐冷して球状化焼鈍しを行った。
冷間伸線はボルト軸部の寸法公差を確保するために行った。ここでは直径10.6mmの線材を、ボンデ皮膜処理後、直径10.0mmまで途中で焼鈍しや球状化焼鈍しを施さずに伸線した。
【0039】
次いでフランジ付六角ボルトに成形し、その際にボルト頭部に割れを生じたものも×印として表2に示した。
続いて引張強度が1000〜1200MPaとなるように調質(焼戻し)した。焼入れは加熱温度850℃,保持時間1時間とし、冷却は油冷とした。
得られたボルトの引張試験結果を表2に示した。
【0040】
遅れ破壊試験は、上記ボルトを治具に取り付けて各ボルトが弾性限界に達する降伏点にて締め付け、15質量%の塩酸水溶液に2分間浸漬した後、洗浄,乾燥し、24時間大気中に放置させるサイクルを1サイクルとし、これを14サイクルまで繰り返した時の各鋼種10本中の破損ボルトの割合で表2に示した。
【0041】
本発明の実施例では冷間伸線のために焼鈍しや球状化焼鈍しを施していないが、ボルトの形状が複雑で、素材により優れた冷間成形能が求められる場合は、成形前に各種の軟化熱処理を施しても構わない。
【0042】
【表1】
Figure 2004307932
【0043】
【表2】
Figure 2004307932
【0044】
表2の結果に表れているように、本実施例のものは何れもボルト破壊率は0%となっており、耐遅れ破壊性が良好となっているのに対し、比較例のものはボルト成形ができなかったり或いはボルト成形できたものについてもボルト破壊率が高く、耐遅れ破壊性において本実施例のものに比べ劣っている。
【0045】
尚表1及び表2の最下段の比較例SCM440は、従来ボルト用鋼として用いられているものであり、ボルト破壊率即ち耐遅れ破壊性は良好となっているが、このものはコストの高い材料である。
【0046】
<実施例2>
表1に示す化学成分の実施例A,B,D,Fの鋼種を造塊し、各鋼を直径10.6mmの線材に、圧延仕上温度を変化させて熱間圧延した。
尚仕上温度を700℃よりも低くしたところ、圧延速度を小さくすることが必要になり、生産効率が著しく低下して線材製造コストの増加を招いた。
【0047】
冷間伸線はボルト軸部の寸法公差を確保するために行った。
ここでは直径10.6mmの線材をボンデ皮膜処理後、直径10.0mmまで途中で焼鈍しや球状化焼鈍しを施さずに伸線した。
次いでフランジ付六角ボルトに成形し、続いて引張強度が1000〜1200MPaとなるように調質(焼戻し)した。
焼入れは加熱温度850℃,保持時間1時間とし、油冷した。
得られたボルトの引張試験結果を表3に示した。
【0048】
遅れ破壊試験は、上記ボルトを治具に取り付けて各ボルトが弾性限界に達する降伏点にて締め付け、15質量%の塩酸水溶液に2分間浸漬した後、洗浄,乾燥し、24時間大気中に放置させるサイクルを1サイクルとし、これを14サイクルまで繰り返した時の各鋼種10本中の破損ボルトの割合で表3に示した。
【0049】
【表3】
Figure 2004307932
【0050】
表3の結果から分るように、終止温度700〜900℃で熱間圧延を施し、更に焼戻し温度を400℃以上で行った本実施例のものは何れもボルト破壊率が0%、即ち耐遅れ破壊性が良好となっているのに対し、終止温度900℃以上で熱間圧延を施した比較例のものは何れもボルト破壊率が悪い値となっている。
【0051】
以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた対応で実施可能である。

Claims (3)

  1. 重量%で、
    C :0.22〜0.32%
    Si:≦0.20%
    Mn:0.60〜1.20%
    P :≦0.015%
    S :≦0.005%
    Cu:0.07〜0.25%
    Ni:0.03〜0.20%
    Cu+Ni:0.10〜0.40%
    Cr:0.05〜0.45%
    Ti:0.01〜0.10%
    Nb:0.01〜0.06%
    N :0.002〜0.010%
    B :0.0005〜0.0030%
    残部不可避的不純物及びFeからなることを特徴とする引張強さ1000MPa以上の耐遅れ破壊性に優れたボルト用鋼。
  2. 重量%で、
    Mo:0.03〜0.10%
    V :0.05〜0.20%
    の1種又は2種を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の耐遅れ破壊性に優れたボルト用鋼。
  3. 請求項1,2の何れかに記載のボルト用鋼を素材として線材の熱間圧延を終止温度700〜900℃で行い、その後ボンデ皮膜の被覆処理を施した後、伸線及びボルト成形し、しかる後油焼入れを施した上、400℃以上の温度で焼戻しすることを特徴とする引張強さ1000MPa以上の耐遅れ破壊性に優れたボルトの製造方法。
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