以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、工程には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
第1〜第6の実施の形態には、主に歯車の歯面の形状に着目した例を説明する。
第7〜第12の実施の形態には、主に外歯車の歯部の外径や内歯車の歯部の内径に着目した例を示す。
第1〜第6の実施の形態の技術思想と第7〜第12の実施の形態の技術思想とは、互いに矛盾しない限り、任意のものを組み合わせて使用することができる。
以下、各実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100を示す断面図である。撓み噛合い式歯車装置100は、入力された回転を減速して出力する。撓み噛合い式歯車装置100は、いわゆるフラット型の撓み噛合い式歯車装置であり、波動発生器2と、波動発生器2により撓み変形される外歯歯車4と、外歯歯車4と噛み合う第1内歯歯車6と、第1内歯歯車6と軸方向に並べて(隣接して)配置され、外歯歯車4と噛み合う第2内歯歯車8と、ケーシング10と、第1規制部材12と、第2規制部材14と、主軸受16と、第1軸受ハウジング18と、第2軸受ハウジング20と、を備える。噛合い式歯車装置100には、潤滑剤(例えばグリース)が封入されている。潤滑剤は、外歯歯車4と第1内歯歯車6および第2内歯歯車8との噛み合い部や各軸受等を潤滑する。
波動発生器2は、起振体軸22と、起振体軸22と外歯歯車4(の第1外歯部4a)との間に配置される第1起振体軸受21aと、起振体軸22と外歯歯車4(の第2外歯部4b)との間に配置される第2起振体軸受21bと、を有する。第1起振体軸受21aは、複数の第1転動体24aと、複数の第1転動体24aを保持する第1保持器26aと、外歯歯車4に内嵌される第1外輪部材28aと、を含む。第2起振体軸受21bは、複数の第2転動体24bと、複数の第2転動体24bを保持する第2保持器26bと、外歯歯車4に内嵌される第2外輪部材28bとを含む。起振体軸22は、入力軸であり、例えばモータ等の回転駆動源に接続され、回転軸Rを中心に回転する。起振体軸22には、回転軸Rに直交する断面が略楕円形状である起振体22aが一体に形成されている。
複数の第1転動体24aはそれぞれ、略円柱形状を有し、軸方向が回転軸R方向と略平行な方向を向いた状態で周方向に間隔を空けて設けられる。第1転動体24aは、第1保持器26aにより転動自在に保持され、起振体22aの外周面22bを転走する。つまり、第1起振体軸受21aの内輪は、起振体22aの外周面22bと一体的に構成されているが、これに限らず、起振体22aとは別体の専用の内輪を備えてもよい。第2転動体24bは、第1転動体24aと同様に構成される。複数の第2転動体24bは、第1保持器26aと軸方向に並ぶように配置された第2保持器26bにより転動自在に保持され、起振体22aの外周面22bを転走する。つまり、第2起振体軸受21bの内輪は、起振体22aの外周面22bと一体的に構成されているが、これに限らず、起振体22aとは別体の専用の内輪を備えてもよい。以降では、第1転動体24aと第2転動体24bとをまとめて「転動体24」とも呼ぶ。また、第1保持器26aと第2保持器26bとをまとめて「保持器26」とも呼ぶ
第1外輪部材28aは、複数の第1転動体24aを環囲する。第1外輪部材28aは、可撓性を有し、複数の第1転動体24aを介して起振体22aにより楕円状に撓められる。第1外輪部材28aは、起振体22a(すなわち起振体軸22)が回転すると、起振体22aの形状に合わせて連続的に撓み変形する。第2外輪部材28bは、第1外輪部材28aと同様に構成される。第2外輪部材28bは、第1外輪部材28aとは別体として形成される。なお、第2外輪部材28bは、第1外輪部材28aと一体に形成されてもよい。以降では、第1外輪部材28aと第2外輪部材28bとをまとめて「外輪部材28」とも呼ぶ。
外歯歯車4は、可撓性を有する環状の部材であり、その内側には起振体22a、転動体24および外輪部材28が嵌まる。外歯歯車4は、起振体22a、転動体24および外輪部材28が嵌まることによって楕円状に撓められる。外歯歯車4は、起振体22aが回転すると、起振体22aの形状に合わせて連続的に撓み変形する。外歯歯車4は、第1外輪部材28aの外側に位置する第1外歯部4aと、第2外輪部材28bの外側に位置する第2外歯部4bと、基材4cと、を含む。第1外歯部4aと第2外歯部4bとは単一の基材である基材4cに形成されており、同歯数である。
第1内歯歯車6は、剛性を有する環状の部材であり、その内周に第1内歯部6aが形成されている。第1内歯部6aは、楕円状に撓められた外歯歯車4の第1外歯部4aを環囲し、起振体22aの長軸近傍の所定領域(2領域)で第1外歯部4aと噛み合う。第1内歯部6aは、第1外歯部4aよりも多くの歯を有する。
第2内歯歯車8は、第1内歯歯車6と軸方向に並べて(隣接して)配置される。第2内歯歯車8は、剛性を有する円筒状の部材であり、その内周に第2内歯部8aが形成されている。第2内歯部8aは、楕円状に撓められた外歯歯車4の第2外歯部4bを環囲し、起振体22aの長軸方向の所定領域(2領域)で第2外歯部4bと噛み合う。第2内歯部8aは、第2外歯部4bと同数の歯を有する。したがって、第2内歯歯車8は、第2外歯部4bひいては外歯歯車4の自転と同期して回転する。
第1規制部材12は、平たいリング状の部材であり、外歯歯車4、第1外輪部材28aおよび第1保持器26aと第1軸受ハウジング18との間に配置される。第2規制部材14は、平たいリング状の部材であり、外歯歯車4、第2外輪部材28bおよび第2保持器26bと第2軸受ハウジング20との間に配置される。第1規制部材12および第2規制部材14は、外歯歯車4、外輪部材28および保持器26の軸方向の移動を規制する。
ケーシング10は、略円筒状の部材であり、第2内歯歯車8を環囲する。ケーシング10には、第1内歯歯車6がインロー嵌合され、ボルト(不図示)により一体化される。ケーシング10と第2内歯歯車8との間には主軸受16が配置される。主軸受16は、本実施の形態ではクロスローラ軸受であり、周方向に間隔を空けて設けられる複数のローラ(転動体)46を含む。複数のローラ46は、第2内歯歯車8の転走面8bおよびケーシング10の転走面10aを転走する。つまり、第2内歯歯車8の外周側は主軸受16の内輪として機能し、ケーシング10の内周側は主軸受16の外輪として機能する。ケーシング10は、主軸受16を介して、第2内歯歯車8を相対回転自在に支持する。なお、主軸受16の軸受の種類は特に限定されるものではなく、例えば4点接触ボール軸受であってもよい。
第1軸受ハウジング18は、環状の部材であり、起振体軸22を環囲する。同様に、第2軸受ハウジング20は、環状の部材であり、起振体軸22を環囲する。第1軸受ハウジング18と第2軸受ハウジング20とは、外歯歯車4、転動体24、保持器26、外輪部材28、第1規制部材12および第2規制部材14を軸方向に挟むよう配置される。第1軸受ハウジング18は、第1内歯歯車6に対してインロー嵌合されボルト固定される。第2軸受ハウジング20は、第2内歯歯車8に対してインロー嵌合されボルト固定される。第1軸受ハウジング18の内周には軸受30が組み込まれ、第2軸受ハウジング20の内周には軸受32が組み込まれており、起振体軸22は、軸受30および軸受32を介して、第1軸受ハウジング18および第2軸受ハウジング20に対して回転自在に支持される。
起振体軸22と第1軸受ハウジング18の間にはオイルシール40が配置され、第1軸受ハウジング18と第1内歯歯車6の間にはOリング34が配置され、第1内歯歯車6とケーシング10との間にはOリング36が配置され、ケーシング10と第2内歯歯車8との間にはオイルシール42が配置され、第2内歯歯車8と第2軸受ハウジング20との間にはOリング38が配置され、第2軸受ハウジング20と起振体軸22との間にはオイルシール44が配置される。これにより、撓み噛合い式歯車装置100内の潤滑剤が漏れるのを抑止できる。
以上のように構成された撓み噛合い式歯車装置100の動作を説明する。ここでは、第1外歯部4aの歯数が100、第2外歯部4bの歯数が100、第1内歯部6aの歯数が102、第2内歯部8aの歯数が100の場合を例に説明する。また、第2内歯歯車8および第2軸受ハウジング20が被駆動部材に連結される場合を例に説明する。
第1外歯部4aが楕円形状の長軸方向の2箇所で第1内歯部6aと噛み合っている状態で、起振体軸22が回転すると、これに伴って第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い位置も周方向に移動する。第1外歯部4aと第1内歯部6aとは歯数が異なるため、この際、第1内歯部6aに対して第1外歯部4aが相対的に回転する。第1内歯歯車6および第1軸受ハウジング18が固定状態にあるため、第1外歯部4aは、歯数差に相当する分だけ自転することになる。つまり、起振体軸22の回転が大幅に減速されて第1外歯部4aに出力される。その減速比は以下のようになる。
減速比=(第1外歯部4aの歯数−第1内歯部6aの歯数)/第1外歯部4aの歯数
=(100−102)/100
=−1/50
第2外歯部4bは、第1外歯部4aと一体的に形成されているため、第1外歯部4aと一体に回転する。第2外歯部4bと第2内歯部8aは歯数が同一であるため、相対回転は発生せず、第2外歯部4bと第2内歯部8aとは一体に回転する。このため、第1外歯部4aの自転と同一の回転が第2内歯部8aに出力される。結果として、第2内歯歯車8からは起振体軸22の回転を−1/50に減速した出力を取り出すことができる。
続いて、外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の構成をさらに詳細に説明する。
図2は、外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図2は、外歯歯車4のピッチ円を通る仮想円筒で切断した、外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の断面図を示す。図2では、理解を容易にするため、第1内歯部6aおよび第2内歯部8aを外歯歯車4から離れるように周方向にスライドさせた状態を示し、また歯部の歯面の形状を誇張して描いている。図2において、横軸は、ある基準位置からの軸方向の位置である。縦軸には、参考のために周方向の寸法目盛(1目盛りが10μm)を示す。また、図2において、平面P1は、回転軸R(図2では不図示)に直交する仮想平面であって、第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向における中央を通る仮想平面を示す。本実施の形態では、第1内歯部6aは、第1外歯部4aよりも軸方向の長さが短く、軸方向における全範囲で第1外歯部4aと噛み合っている。したがって、第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向の長さは第1内歯部6aの軸方向の長さと等しく、平面P1は第1内歯部6aの軸方向における中央を通る。また、平面P2は、回転軸Rに直交する仮想平面であって、第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向における中央を通る仮想平面を示す。本実施の形態では、第2内歯部8aは、第2外歯部4bよりも軸方向の長さが短く、軸方向における全範囲で第2外歯部4bと噛み合っている。したがって、第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向の長さは第2内歯部8aの軸方向の長さと等しく、平面P2は第2内歯部8aの軸方向における中央を通る。
第1外歯部4aは、いずれかの歯丈方向位置(すなわち径方向位置)に、当該歯丈方向位置において歯厚が最大となる第1外歯最厚部4a7と、第1外歯最厚部4a7から軸方向外側に向かって(すなわち第1外歯部4aと第2外歯部4bの間の中央から遠ざかる方向に向かって)歯厚が減少する第1外側歯厚減少部4a8と、第1外歯最厚部4a7から軸方向内側に向かって(すなわち第1外歯部4aと第2外歯部4bの間の中央に近づく方向に向かって)歯厚が減少する第1内側歯厚減少部4a9と、を有する。第1外歯部4aは、第1外歯最厚部4a7、第1外側歯厚減少部4a8および第1内側歯厚減少部4a9を、好ましくは第1内歯部6aと噛み合う歯丈方向位置に有し、代表的には歯丈方向の中央位置に有する。本実施の形態では、第1外歯部4aは、歯先位置から歯底位置までのすべての歯丈方向位置に、第1外歯最厚部4a7、第1外側歯厚減少部4a8および第1内側歯厚減少部4a9を有する。
第1外歯部4aは、その歯厚中心面S4に対して対称な形状を有する。ここで「歯厚中心面」は、回転軸Rを含む面であって、歯厚が最大である最厚部の歯厚方向における中央を通る面をいう。第1外歯部4aは、その2つの歯面がいずれも、第1外側歯厚減少部4a8では、第1外歯最厚部4a7から軸方向外側に向かって歯厚中心面S4との距離が減少し、第1内側歯厚減少部4a9では、第1外歯最厚部4a7から軸方向内側に向かって歯厚中心面S4との距離が減少するように形成される。
第1外歯最厚部4a7は、平面P1よりも外側、言い換えると第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側に、さらに言い換えると第1内歯部6aの軸方向中央よりも外側に位置する。本実施の形態ではさらに、第1外歯最厚部4a7は、第1外歯部4aの軸方向中央よりも外側に位置する。第1外側歯厚減少部4a8は、第1外歯最厚部4a7から軸方向外側に向かって歯厚が曲線的に減少するように、すなわち第1外歯部4aの2つの歯面がいずれも、第1外側歯厚減少部4a8では第1外歯最厚部4a7から軸方向外側に向かって歯厚中心面S4との距離が曲線的に減少するように構成される。第1内側歯厚減少部4a9は、第1外歯最厚部4a7から軸方向内側に向かって歯厚が曲線的に減少するように、すなわち第1外歯部4aの2つの歯面がいずれも、第1内側歯厚減少部4a9では第1外歯最厚部4a7から軸方向内側に向かって歯厚中心面S4との距離が曲線的に減少するように構成される。また、第1内側歯厚減少部4a9は、第1内歯歯車6と第2内歯歯車8との隙間7に対応する(すなわち対向する)部分まで延在するよう構成される。また、第1外側歯厚減少部4a8および第1内側歯厚減少部4a9はいずれも、第1外歯最厚部4a7から離れるほど軸方向に対する歯厚の減少割合(=歯厚の減少量/軸方向の移動量)が増加するように構成される。言い換えると、第1外側歯厚減少部4a8および第1内側歯厚減少部4a9では、第1外歯部4aの2つの歯面はいずれも、第1外歯最厚部4a7から離れるほど軸方向に対する歯厚中心面S4との距離の減少割合(=歯面と歯厚中心面との距離の減少量/軸方向の移動量)が増加するように構成される。
第2外歯部4bは、いずれかの歯丈方向位置に、当該歯丈方向位置において歯厚が最大となる第2外歯最厚部4b7と、第2外歯最厚部4b7から軸方向外側に向かって歯厚が減少する第2外側歯厚減少部4b8と、第2外歯最厚部4b7から軸方向内側に向かって歯厚が減少する第2内側歯厚減少部4b9と、を有する。第2外歯部4bは、第2外歯最厚部4b7、第2外側歯厚減少部4b8および第2内側歯厚減少部4b9を、好ましくは第2内歯部8aと噛み合う歯丈方向位置に有し、代表的には歯丈方向の中央位置に有する。本実施の形態では、第2内歯部8aは、歯先位置から歯底位置までのすべての歯丈方向位置に、第2外歯部4bは、第2外歯最厚部4b7、第2外側歯厚減少部4b8および第2内側歯厚減少部4b9を有する。
第2外歯部4bは、歯厚中心面S4に対して対称となるように形成される。つまり、第2外歯部4bは、その2つの歯面がいずれも、第2外側歯厚減少部4b8では、第2外歯最厚部4b7から軸方向外側に向かって歯厚中心面S4との距離が減少し、第2内側歯厚減少部4b9では、第1外歯最厚部4a7から軸方向内側に向かって歯厚中心面S4との距離が減少するように形成される。
第2外歯最厚部4b7は、平面P2よりも外側、言い換えると第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側に、さらに言い換えると第2内歯部8aの軸方向中央よりも外側に位置する。本実施の形態ではさらに、第2外歯最厚部4b7は、第2外歯部4bの軸方向中央よりも外側に位置する。第2外側歯厚減少部4b8は、第2外歯最厚部4b7から軸方向外側に向かって歯厚が曲線的に減少するように構成される。つまり、第2外側歯厚減少部4b8では、第2外歯部4bの2つの歯面は、第2外歯最厚部4b7から軸方向外側に向かって歯厚中心面S4との距離が曲線的に減少するように構成される。第2内側歯厚減少部4b9は、第2外歯最厚部4b7から軸方向内側に向かって歯厚が曲線的に減少するように構成される。つまり、第2内側歯厚減少部4b9では、第2外歯部4bの2つの歯面がいずれも、第2外歯最厚部4b7から軸方向内側に向かって歯厚中心面S4との距離が曲線的に減少するように構成される。また、第2内側歯厚減少部4b9は、第1内歯歯車6と第2内歯歯車8との隙間7に対応する部分まで延在するよう構成される。また、第2外側歯厚減少部4b8および第2内側歯厚減少部4b9はいずれも、第2外歯最厚部4b7から離れるほど軸方向に対する歯厚の減少割合が増加するように構成される。言い換えると、第2外側歯厚減少部4b8および第2内側歯厚減少部4b9では、第2外歯部4bの2つの歯面は、第2外歯最厚部4b7から離れるほど軸方向に対する歯厚中心面S4との距離の減少割合(=歯面と歯厚中心面S4との距離の減少量/軸方向の移動量)が増加するように構成される。第2外側歯厚減少部4b8は、第1外側歯厚減少部4a8よりも、軸方向に対する歯厚の減少割合が大きくなるよう構成される。
なお、第1外側歯厚減少部4a8、第1内側歯厚減少部4a9、第2外側歯厚減少部4b8および第2内側歯厚減少部4b9の各減少部では、2つの歯面はそれぞれ、軸方向に対する歯厚中心面S4との距離の減少割合が次式を満たすように構成される。
(式1)減少割合=歯面と歯厚中心との距離の減少量(mm)/軸方向の移動量(mm)≦0.05
ここで、一般的に、面取りの場合の軸方向に対する歯面と歯厚中心面S4との距離の減少割合は次式を満たす。
(式2)面取りによる歯面と歯厚中心面S4との距離の減少量(mm)/軸方向の移動量(mm)≧0.5
したがって、各歯厚減少部と面取りとは、オーダーが異なり、明らかに区別される。
第1内歯部6aは、その歯厚中心面(不図示)に対して対称で、かつ、軸方向において歯厚が実質的に一定になるよう構成される。同様に、第2内歯部8aは、その歯厚中心面(不図示)に対して対称で、かつ、軸方向において歯厚が実質的に一定になるよう構成される。
以上説明した本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100によると、第1外歯部4aは、第1外歯最厚部4a7から軸方向外側および軸方向内側に向かって歯厚が減少するように構成され、第2外歯部4bは、第2外歯最厚部4b7から軸方向外側および軸方向内側に向かって歯厚が減少するように構成される。これにより、第1外歯部4aおよび第2外歯部4bの歯幅端(内歯の軸方向端部に対応する位置)に生じる片当たり荷重を低減でき、歯車の過度な摩耗を低減できる。
また、本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100によると、外歯歯車4の各外歯最厚部は、外歯部と内歯部の噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置する。これにより、各外歯最厚部が噛み合い範囲の軸方向中央または軸方向中央よりも内側に位置する場合と比べ、片当たり荷重をより低減できる。
また、本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100によると、第1内側歯厚減少部4a9、第2内側歯厚減少部4b9はそれぞれ、第1内歯歯車6と第2内歯歯車8との隙間7に対応する部分まで延在するよう構成される。これにより、外歯歯車が内歯歯車に対して軸方向にずれることによる影響を吸収できる。
本発明者達は、効果を確認するために、シミュレーションを行った。図3(a)は、比較例に係る撓み噛合い式歯車装置のシミュレーション結果を示し、図3(b)は本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100のシミュレーション結果を示す。図3(a)、(b)において、横軸は、外歯歯車4の軸方向位置であり、縦軸は、その軸方向位置での外歯歯車4にかかるラジアル荷重である。なお、比較例に係る撓み噛合い式歯車装置は、第1外歯部、第2外歯部、第1内歯部および第2内歯部はいずれも、歯厚が軸方向において実質的に一定になるよう構成される。
図3(a)に示されるように、比較例に係る撓み噛合い式歯車装置では、外歯歯車の歯幅端(点線で囲った部分)におけるラジアル荷重が比較的大きく、片当たりが発生していることが分かる。
一方、図3(b)に示されるように、本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100では、外歯歯車の歯幅端におけるラジアル荷重が比較的小さく、片当たりが低減されていることがわかる。また、本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100では、歯幅端に限らず、外歯歯車4に作用するラジアル荷重が全体的に低減されている。これらより、本実施の形態によれば、歯車の過度な摩耗を低減できることが分かる。
(第2の実施の形態)
図4は、第2の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図4は、第1の実施の形態の図2に対応する。第1の実施の形態との主な違いは、外歯部の歯厚ではなく、内歯部の歯厚が軸方向において変化する点である。以下、第1の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100との相違点を中心に説明する。
第1外歯部4aは、その歯厚中心面S4(図4では不図示)に対して対称で、かつ、軸方向において歯厚が実質的に一定になるよう構成される。同様に、第2外歯部4bは、歯厚中心面S4に対して対称で、かつ、軸方向において歯厚が実質的に一定になるよう構成される。第1外歯部4a、第2外歯部4bはいずれも、第1内歯歯車6と第2内歯歯車8との隙間7に対応する部分まで延在するよう構成される。
第1内歯部6aは、第1内歯部6aにおいて歯厚が最大となる第1内歯最厚部6a7と、第1内歯最厚部6a7から軸方向外側に向かって歯厚が減少する第1外側歯厚減少部6a8と、第1内歯最厚部6a7から軸方向内側に向かって歯厚が減少する第1内側歯厚減少部6a9と、を有する。
第1内歯最厚部6a7は、平面P1よりも外側、言い換えると第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側に、さらに言い換えると(第1外歯部4aと第1内歯部6aのうちの軸方向長さが短い方である)第1内歯部6aの軸方向中央よりも外側に位置する。第1外側歯厚減少部6a8は、第1内歯最厚部6a7から軸方向外側に向かって歯厚が曲線的に減少するように構成される。つまり、第1外側歯厚減少部6a8では、第1内歯部6aの2つの歯面がいずれも、第1内歯最厚部6a7から軸方向外側に向かって歯厚中心面S6との距離が曲線的に減少するように構成される。第1内側歯厚減少部6a9は、第1内歯最厚部6a7から軸方向内側に向かって歯厚が曲線的に減少するように構成される。つまり、第1内側歯厚減少部6a9では、第1内歯部6aの2つの歯面は、第1内歯最厚部6a7から軸方向内側に向かって歯厚中心面S6との距離が曲線的に減少するように構成される。また、第1内側歯厚減少部6a9は、第1内歯最厚部6a7から離れるほど軸方向に対する歯厚の減少割合(=歯厚の減少量/軸方向の移動量)が増加するように構成される。言い換えると、第1内側歯厚減少部6a9では、第1内歯部6aの2つの歯面は、第1内歯最厚部6a7から離れるほど軸方向に対する歯厚中心面S6との距離の減少割合(=歯面と歯厚中心面との距離の減少量/軸方向の移動量)が増加するように構成される。
第2内歯部8aは、第2内歯部8aにおいて歯厚が最大となる第2内歯最厚部8a7と、第2内歯最厚部8a7から軸方向外側に向かって歯厚が減少する第2外側歯厚減少部8a8と、第2内歯最厚部8a7から軸方向内側に向かって歯厚が減少する第2内側歯厚減少部8a9と、を有する。
第2内歯最厚部8a7は、平面P2よりも外側、言い換えると第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側に、さらに言い換えると(第2外歯部4bと第2内歯部8aのうちの軸方向長さが短い方である)第2内歯部8aの軸方向中央よりも外側に位置する。第2外側歯厚減少部8a8は、第2内歯最厚部8a7から軸方向外側に向かって歯厚が曲線的に減少するように構成される。つまり、第2外側歯厚減少部8a8では、第2内歯部8aの2つの歯面は、第2内歯最厚部8a7から軸方向外側に向かって歯厚中心面S8との距離が曲線的に減少するように構成される。第2内側歯厚減少部8a9は、第2内歯最厚部8a7から軸方向内側に向かって歯厚が曲線的に減少するように構成される。つまり、第2内側歯厚減少部8a9では、第2内歯部8aの2つの歯面は、第2内歯最厚部8a7から軸方向内側に向かって歯厚中心面S8との距離が曲線的に減少するように構成される。また、第2内側歯厚減少部8a9は、第2内歯最厚部8a7から離れるほど軸方向に対する歯厚の減少割合が増加するように構成される。言い換えると、第2内側歯厚減少部8a9では、第2内歯部8aの2つの歯面は、第2内歯最厚部8a7から離れるほど軸方向に対する歯厚中心面S8との距離の減少割合が増加するように構成される。
なお、第1外側歯厚減少部6a8、第1内側歯厚減少部6a9、第2外側歯厚減少部8a8および第2内側歯厚減少部8a9の各減少部では、2つの歯面はそれぞれ、軸方向に対する歯厚中心面との距離の減少割合が上述の式1を満たすように構成される。
以上説明した本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、第1内歯部6aは、第1内歯最厚部6a7から軸方向外側および軸方向内側に向かって歯厚が減少するように構成され、第2内歯部8aは、第2内歯最厚部8a7から軸方向外側および軸方向内側に向かって歯厚が減少するように構成される。これにより、第1外歯部4aおよび第2外歯部4bの歯幅端に生じる片当たり荷重を低減でき、歯車の過度な摩耗を低減できる。
また、本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、第1内歯歯車6、第2内歯歯車8はそれぞれ、内歯最厚部が外歯部と内歯部の噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置する。これにより、内歯最厚部が噛み合い範囲の軸方向中央または軸方向中央よりも内側に位置する場合と比べ、片当たり荷重をより低減できる。
また、本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、第1外歯部4a、第2外歯部4bはそれぞれ、第1内歯歯車6と第2内歯歯車8との隙間7に対応する部分まで延在するよう構成される。これにより、外歯歯車が内歯歯車に対して軸方向にずれることによる影響を吸収できる。
(第3の実施の形態)
図5は、第3の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図5は、第1の実施の形態の図2に対応する。第1の実施の形態との主な違いは、外歯部および内歯部がともに、歯厚が軸方向において変化する部分を有する点である。以下、第1の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100との相違点を中心に説明する。
第1外歯部4aは、第1外歯最厚部4a7と、第1の実施の形態と同様の第1外側歯厚減少部4a8と、を有する。すなわち、第1外歯部4aは第1内側歯厚減少部を有さず、代わりに第1外歯最厚部4a7が、平面P1よりも外側、言い換えると第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第1内歯部6aの軸方向中央よりも外側の位置から、第2外歯部4bに接続する位置まで、すなわち第1内歯歯車6と第2内歯歯車8との隙間7に対応する部分まで軸方向に延在する。なお、第1外歯部4aは、第1内側歯厚減少部を有していてもよい。
第2外歯部4bは、第2外歯最厚部4b7と、第1の実施の形態と同様の第2外側歯厚減少部4b8と、を有する。すなわち、第2外歯部4bは第2内側歯厚減少部を有さず、代わりに第2外歯最厚部4b7が、平面P2よりも外側、言い換えると第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第2内歯部8aの軸方向中央よりも外側の位置から、第1外歯部4aに接続する位置まで、すなわち第1内歯歯車6と第2内歯歯車8との隙間7に対応する部分まで軸方向に延在する。なお、第2外歯部4bは、第2内側歯厚減少部を有していてもよい。
第1内歯部6aは、第1内歯最厚部6a7と、第2の実施の形態と同様の第1内側歯厚減少部6a9と、を有する。すなわち、第1内歯部6aは第1外側歯厚減少部を有さず、代わりに第1内歯最厚部6a7が、平面P1よりも外側、すなわち第1外歯部4aの軸方向中央よりも外側の位置から軸方向外側に延在する。なお、第1内歯部6aは、第1外側歯厚減少部を有していてもよい。
第2内歯部8aは、第2内歯最厚部8a7と、第2の実施の形態と同様の第2内側歯厚減少部8a9と、を有する。すなわち、第2内歯部8aは第2外側歯厚減少部を有さず、代わりに第2内歯最厚部8a7が、平面P2よりも外側、すなわち第2外歯部4bの軸方向中央よりも外側の位置から軸方向外側に延在する。なお、第2内歯部8aは、第2外側歯厚減少部を有していてもよい。
第1外歯最厚部4a7と第1外側歯厚減少部4a8との境界の軸方向における位置は、第1内歯最厚部6a7と第1内側歯厚減少部6a9との境界の軸方向における位置と実質的に一致する。また、これらの境界は、平面P1よりも外側、言い換えると第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第1内歯部6aの軸方向中央よりも外側に位置する。本実施の形態ではさらに、これらの境界は、第1外歯部4aの軸方向中央よりも外側に位置する。
同様に、第2外歯最厚部4b7と第2外側歯厚減少部4b8との境界の軸方向における位置は、第2内歯最厚部8a7と第2内側歯厚減少部8a9との境界の軸方向における位置と実質的に一致する。また、これらの境界は、平面P2よりも外側、言い換えると第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側に、さらに言い換えると第2内歯部8aの軸方向中央よりも外側に位置する。本実施の形態ではさらに、これらの境界は、第2外歯部4bの軸方向中央よりも外側に位置する。
本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、外歯部は、第1の実施の形態と同様に、外側減少部を有する。一方、外歯部は、第1の実施の形態とは異なり、内側減少部は有しない。しかしながら代わりに、内歯部が内側歯厚減少部を有する。これにより、本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、第1の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。
(第4の実施の形態)
図6は、第4の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図6は、第1の実施の形態の図2に対応する。第1の実施の形態との主な違いは、外歯部および内歯部がともに、歯厚が軸方向において変化する部分を有する点である。以下、第1の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100との相違点を中心に説明する。
第1外歯部4aは、第1外歯最厚部4a7と、第1の実施の形態と同様の第1内側歯厚減少部4a9と、を有する。すなわち、第1外歯部4aは第1外側歯厚減少部を有さず、代わりに第1外歯最厚部4a7が、平面P1よりも外側、言い換えると第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第1内歯部6aの軸方向中央よりも外側の位置から軸方向外側に延在する。なお、第1外歯部4aは、第1外側歯厚減少部を有していてもよい。
第2外歯部4bは、第2外歯最厚部4b7と、第1の実施の形態と同様の第2内側歯厚減少部4b9と、を有する。すなわち、第2外歯部4bは第2外側歯厚減少部を有さず、代わりに第2外歯最厚部4b7が、平面P2よりも外側、言い換えると第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第2内歯部8aの軸方向中央よりも外側の位置から軸方向外側に延在する。なお、第2外歯部4bは、第2外側歯厚減少部を有していてもよい。
第1内歯部6aは、第1内歯最厚部6a7と、第2の実施の形態と同様の第1外側歯厚減少部6a8と、を有する。すなわち、第1内歯部6aは第1内側歯厚減少部を有さず、代わりに第1内歯最厚部6a7が、平面P1よりも外側、言い換えると第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第1内歯部6aの軸方向中央よりも外側の位置から軸方向内側に延在する。なお、第1内歯部6aは、第1内側歯厚減少部を有していてもよい。
第2内歯部8aは、第2内歯最厚部8a7と、第2の実施の形態と同様の第2外側歯厚減少部8a8と、を有する。すなわち、第2内歯部8aは第2内側歯厚減少部を有さず、代わりに第2内歯最厚部8a7が、平面P2よりも外側、言い換えると第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第2内歯部8aの軸方向中央よりも外側の位置から軸方向内側に延在する。なお、第2内歯部8aは、第2内側歯厚減少部を有していてもよい。
第1外歯最厚部4a7と第1内側歯厚減少部4a9との境界の軸方向における位置は、第1内歯最厚部6a7と第1外側歯厚減少部6a8との境界の軸方向における位置と実質的に一致する。また、これらの境界は、平面P1よりも外側、言い換えると第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第1内歯部6aの軸方向中央よりも外側に位置する。本実施の形態ではさらに、これらの境界は、第1外歯部4aの軸方向中央よりも外側に位置する。
同様に、第2外歯最厚部4b7と第1内側歯厚減少部4a9との境界の軸方向における位置は、第2内歯最厚部8a7と第2外側歯厚減少部8a8との境界の軸方向における位置と実質的に一致する。また、これらの境界は、平面P2よりも外側、言い換えると第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第2内歯部8aの軸方向中央よりも外側に位置する。本実施の形態ではさらに、これらの境界は、第2外歯部4bの軸方向中央よりも外側に位置する。
本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、外歯部は、第1の実施の形態と同様に、内側歯厚減少部を有する。一方、外歯部は、第1の実施の形態とは異なり、外側歯厚減少部は有しない。しかしながら代わりに、内歯部が外側歯厚減少部を有する。これにより、本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、第1の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。
(第5の実施の形態)
図7は、第5の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図7は、第1の実施の形態の図2に対応する。第1の実施の形態との主な違いは、第2外歯部4bの歯厚だけが軸方向において変化する点である。以下、第1の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100との相違点を中心に説明する。
第1内歯部6aと歯数が異なる第1外歯部4aは、歯厚中心面S4に対して対称で、軸方向において歯厚が実質的に一定で、かつ、第2外歯部4bの最小歯厚と同じ歯厚となるよう構成される。
第2内歯部8aと歯数が同じである第2外歯部4bは、第2外歯最厚部4b7と、第2内側歯厚減少部4b9と、を有する。すなわち、第2外歯部4bは、第2外側歯厚減少部を有しない。第2外歯最厚部4b7は、軸方向外側の端部に位置する。第2内側歯厚減少部4b9は、第2外歯部4bの軸方向範囲の80%以上(図示の例では、ほぼ100%)を占める。第2内側歯厚減少部4b9は、第2外歯最厚部4b7から軸方向内側に向かって連続的に歯厚が減少するように、より具体的には曲線的に歯厚が減少するように構成される。すなわち、第2内側歯厚減少部4b9では、第2外歯部4bの2つの歯面は、第2外歯最厚部4b7から軸方向内側に向かって歯厚中心面S4との距離が連続的に減少するように、より具体的には歯厚中心面S4との距離が曲線的に減少するように構成される。
第1内歯部6aは、歯厚中心面S6(図7では不図示)に対して対称で、かつ、軸方向において歯厚が実質的に一定になるよう構成される。同様に、第2内歯部8aは、歯厚中心面S8(図7では不図示)に対して対称で、かつ、軸方向において歯厚が実質的に一定になるよう構成される。
本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、第2内歯部8aと歯数が同じである第2外歯部4b、すなわち出力側の歯車である第2外歯部4bは、第2外歯最厚部4b7から軸方向内側に向かって歯厚が減少し、かつ、その減少部分(すなわち第2内側歯厚減少部4b9)が第2外歯部4bの軸方向範囲の80%以上を占めるように構成される。これにより、より負荷がかかりやすい出力側の外歯部である第2外歯部4bの歯幅端に生じる片当たり荷重を低減でき、歯車の過度な摩耗を低減できる。
また、本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると第1外歯部4a、第2外歯部4b(特に第2内側歯厚減少部4b9)はそれぞれ、第1内歯歯車6と第2内歯歯車8との隙間7に対応する部分まで延在するよう構成される。これにより、外歯歯車が内歯歯車に対して軸方向にずれることによる影響を吸収できる。
(第6の実施の形態)
図8は、第6の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図8は、第2の実施の形態の図4に対応する。第2の実施の形態との主な違いは、第2内歯部8aの歯厚だけが軸方向において変化する点である。以下、第2の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置の相違点を中心に説明する。
第1外歯部4aは、歯厚中心面S4(図8では不図示)に対して対称で、かつ、軸方向において歯厚が実質的に一定になるよう構成される。同様に、第2外歯部4bは、歯厚中心面S4に対して対称で、かつ、軸方向において歯厚が実質的に一定になるよう構成される。
第1外歯部4aと歯数が異なる第1内歯部6aは、歯厚中心面S8に対して対称で、軸方向において歯厚が実質的に一定で、かつ、第2内歯部8aの最小歯厚と同じ歯厚となるよう構成される。
第2外歯部4bと歯数が同じである第2内歯部8aは、第2内歯最厚部8a7と、第2内側歯厚減少部8a9と、を有する。すなわち、第2内歯部8aは、第2外側歯厚減少部を有しない。第2内歯最厚部8a7は、軸方向外側の端部に位置する。第2内側歯厚減少部8a9は、第2内歯部8aの軸方向範囲の80%以上(図示の例では、ほぼ100%)を占める。第2内側歯厚減少部8a9は、第2内歯最厚部8a7から軸方向内側に向かって連続的に歯厚が減少するように、より具体的には曲線的に歯厚が減少するように構成される。すなわち、第2内側歯厚減少部8a9では、第2内歯部8aの2つの歯面がいずれも、第2内歯最厚部8a7から軸方向内側に向かって歯厚中心面S8との距離が連続的に減少するように、より具体的には歯厚中心面S8との距離が曲線的に減少するように構成される。
本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、第5の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。
(第7の実施の形態)
図9は、第7の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図9では、周方向から見た、外歯歯車4の第1外歯部4aの歯先、第2外歯部4bの歯先、第1内歯歯車6の第1内歯部6aの歯先、第2内歯歯車8の第2内歯部8aの歯先を示す。図9では、理解を容易にするため、第1内歯部6aの歯先および第2内歯部8aの歯先を、外歯歯車4から離れるように径方向外側にスライドさせた状態を示す。図9において、横軸は、ある基準位置からの軸方向の位置である。縦軸には、参考のために径方向の寸法目盛(1目盛りが10μm)を示す。また、図9において、中心線C1は、回転軸R(図9では不図示)に直交する線であって、第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向における中央を通る線を示す。本実施の形態では、第1内歯部6aは、第1外歯部4aよりも軸方向の長さが短く、軸方向における全範囲で第1外歯部4aと噛み合っている。したがって、第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向の長さは第1内歯部6aの軸方向の長さと等しく、中心線C1は第1内歯部6aの歯先の軸方向における中央を通る。また、中心線C2は、回転軸Rに直交する線であって、第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向における中央を通る線を示す。本実施の形態では、第2内歯部8aは、第2外歯部4bよりも軸方向の長さが短く、軸方向における全範囲で第2外歯部4bと噛み合っている。したがって、第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向の長さは第2内歯部8aの軸方向の長さと等しく、中心線C2は第2内歯部8aの歯先の軸方向における中央を通る。
第1外歯部4aの歯先は、第1外歯部4aにおいて外径が最大となる第1最外径部4a1と、第1最外径部4a1から軸方向外側に向かって(すなわち第1外歯部4aと第2外歯部4bの間の中央から遠ざかる方向に向かって)外径が減少する第1外側外径減少部4a2と、第1最外径部4a1から軸方向内側に向かって(すなわち第1外歯部4aと第2外歯部4bの間の中央に近づく方向に向かって)外径が減少する第1内側外径減少部4a9と、を有する。
第1最外径部4a1は、中心線C1よりも外側、言い換えると第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側に、さらに言い換えると第1内歯部6aの歯先の軸方向中央よりも外側に位置する。本実施の形態ではさらに、第1最外径部4a1は、第1外歯部4aの歯先の軸方向中央よりも外側に位置する。第1外側外径減少部4a2は、第1最外径部4a1から軸方向外側に向かって、曲線的に外径が減少するよう構成される。第1内側外径減少部4a3は、第1最外径部4a1から軸方向内側に向かって、曲線的に外径が減少するよう構成される。また、第1内側外径減少部4a3は、第1内歯歯車6と第2内歯歯車8との隙間7の径方向内側に対応する(すなわち対向する)部分まで延在するよう構成される。また、第1外側外径減少部4a2および第1内側外径減少部4a3はいずれも、第1最外径部4a1から離れるほど軸方向に対する外径の減少割合(=外径の減少量/軸方向の移動量)が増加するように構成される。
第2外歯部4bの歯先は、第2外歯部4bにおいて外径が最大となる第2最外径部4b1と、第2最外径部4b1から軸方向外側に向かって外径が減少する第2外側外径減少部4b2と、第2最外径部4b1から軸方向内側に向かって外径が減少する第2内側外径減少部4b3と、を有する。
第2最外径部4b1は、中心線C2よりも外側、言い換えると第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側に、さらに言い換えると第2内歯部8aの歯先の軸方向中央よりも外側に位置する。本実施の形態ではさらに、第2最外径部4b1は、第2外歯部4bの歯先の軸方向中央よりも外側に位置する。第2外側外径減少部4b2は、第2最外径部4b1から軸方向外側に向かって、曲線的に外径が減少するよう構成される。第2内側外径減少部4b3は、第2最外径部4b1から軸方向内側に向かって、曲線的に外径が減少するよう構成される。また、第2内側外径減少部4b3は、第1内歯歯車6と第2内歯歯車8との隙間7の径方向内側に対応する部分まで延在するよう構成される。また、第2外側外径減少部4b2および第2内側外径減少部4b3は、第2最外径部4b1から離れるほど軸方向に対する外径の減少割合が増加するように構成される。第2外側外径減少部4b2は、第1外側外径減少部4a2よりも、軸方向に対する外径の減少割合が大きくなるよう構成される。
なお、第1外側外径減少部4a2、第1内側外径減少部4a3、第2外側外径減少部4b2および第2内側外径減少部4b3の各外径減少部は、軸方向に対する外径の減少割合が次式を満たすように構成される。
(式3)減少割合=外径(直径)の減少量(mm)/軸方向の移動量(mm)≦0.1
ここで、一般的に、面取りの場合の軸方向に対する外径の減少割合は次式を満たす。
(式4)面取りの外径(直径)の減少量(mm)/軸方向の移動量(mm)≧1.15
したがって、各外径減少部と面取りとは、オーダーが異なり、明らかに区別される。
第1内歯部6aの歯先は、軸方向において内径が実質的に一定になるよう構成される。同様に、第2内歯部8aの歯先は、軸方向において内径が実質的に一定になるよう構成される。
以上説明した本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、第1外歯部4aの歯先は、第1最外径部4a1から軸方向外側および軸方向内側に向かって外径が減少するように構成され、第2外歯部4bの歯先は、第2最外径部4b1から軸方向外側および軸方向内側に向かって外径が減少するように構成される。これにより、第1外歯部4aおよび第2外歯部4bの歯幅端(内歯の軸方向端部に対応する位置)に生じる片当たり荷重を低減でき、歯車の過度な摩耗を低減できる。
また、本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、外歯歯車4の各最外径部は、外歯部と内歯部の噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置する。これにより、各最外径部が噛み合い範囲の軸方向中央または軸方向中央よりも内側に位置する場合と比べ、片当たり荷重をより低減できる。
また、本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、第1内側外径減少部4a3、第2内側外径減少部4b3はそれぞれ、第1内歯歯車6と第2内歯歯車8との隙間7の径方向内側に対応する部分まで延在するよう構成される。これにより、外歯歯車が内歯歯車に対して軸方向にずれることによる影響を吸収できる。
(第8の実施の形態)
図10は、第8の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図10は、第7の実施の形態の図9に対応する。第7の実施の形態との主な違いは、外歯部の歯先の径ではなく、内歯部の歯先の径が軸方向において変化する点である。以下、第7の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置との相違点を中心に説明する。
第1外歯部4aの歯先は、軸方向において外径が実質的に一定になるよう構成される。同様に、第2外歯部4bの歯先は、軸方向において外径が実質的に一定になるよう構成される。第1外歯部4a、第2外歯部4bはいずれも、第1内歯歯車6と第2内歯歯車8との隙間7の径方向内側に対応する部分まで延在するよう構成される。
第1内歯部6aの歯先は、第1内歯部6aにおいて内径が最小となる第1最内径部6a1と、第1最内径部6a1から軸方向外側に向かって内径が増大する第1外側内径増大部6a2と、第1最内径部6a1から軸方向内側に向かって内径が増大する第1内側内径増大部6a3と、を有する。
第1最内径部6a1は、中心線C1よりも外側、言い換えると第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側に、さらに言い換えると(第1外歯部4aと第1内歯部6aのうちの軸方向長さが短い方である)第1内歯部6aの歯先の軸方向中央よりも外側に位置する。第1外側内径増大部6a2は、第1最内径部6a1から軸方向外側に向かって、曲線的に内径が増大するよう構成される。第1内側内径増大部6a3は、第1最内径部6a1から軸方向内側に向かって、曲線的に内径が増大するよう構成される。また、第1内側内径増大部6a3は、第1最内径部6a1から離れるほど軸方向に対する内径の増大割合(=内径の増大量/軸方向の移動量)が増加するように構成される。
第2内歯部8aの歯先は、第2内歯部8aにおいて内径が最小となる第2最内径部8a1と、第2最内径部8a1から軸方向外側に向かって内径が増大する第2外側内径増大部8a2と、第2最内径部8a1から軸方向内側に向かって内径が増大する第2内側内径増大部8a3と、を有する。
第2最内径部8a1は、中心線C2よりも外側、言い換えると第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側に、さらに言い換えると(第2外歯部4bと第2内歯部8aのうちの軸方向長さが短い方である)第2内歯部8aの歯先の軸方向中央よりも外側に位置する。第2外側内径増大部8a2は、第2最内径部8a1から軸方向外側に向かって、曲線的に内径が増大するよう構成される。第2内側内径増大部8a3は、第2最内径部8a1から軸方向内側に向かって、曲線的に内径が増大するよう構成される。また、第2内側内径増大部8a3は、第2最内径部8a1から離れるほど軸方向に対する内径の増大割合が増加するように構成される。
なお、第1外側内径増大部6a2、第1内側内径増大部6a3、第2外側内径増大部8a2および第2内側内径増大部8a3の各内径増大部は、軸方向に対する内径の増大割合が次式を満たすように構成される。
(式5)増大割合=外径(直径)の増大量(mm)/軸方向の移動量(mm)≦0.1
したがって、第7の実施の形態の各外径減少部と同様に、各内径増大部と面取りとは、オーダーが異なり、明らかに区別される。
以上説明した本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、第1内歯部6aの歯先は、第1最内径部6a1から軸方向外側および軸方向内側に向かって内径が増大するように構成され、第2内歯部8aの歯先は、第2最内径部8a1から軸方向外側および軸方向内側に向かって内径が増大するように構成される。これにより、第1外歯部4aおよび第2外歯部4bの歯幅端に生じる片当たり荷重を低減でき、歯車の過度な摩耗を低減できる。
また、本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、第1内歯歯車6、第2内歯歯車8はそれぞれ、最内径部が外歯部と内歯部の噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置する。これにより、最内径部が噛み合い範囲の軸方向中央または軸方向中央よりも内側に位置する場合と比べ、片当たり荷重をより低減できる。
また、本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、第1外歯部4aの歯先、第2外歯部4bの歯先はそれぞれ、第1内歯歯車6と第2内歯歯車8との隙間7の径方向内側に対応する部分まで延在するよう構成される。これにより、外歯歯車が内歯歯車に対して軸方向にずれることによる影響を吸収できる。
(第9の実施の形態)
図11は、第9の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図11は、第7の実施の形態の図9に対応する。第7の実施の形態との主な違いは、外歯部および内歯部がともに、歯先の径が軸方向において変化する部分を有する点である。以下、第7の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置との相違点を中心に説明する。
第1外歯部4aの歯先は、第1最外径部4a1と、第7の実施の形態と同様の第1外側外径減少部4a2と、を有する。すなわち、第1外歯部4aの歯先は第1内側外径減少部を有さず、代わりに第1最外径部4a1が、中心線C1よりも外側、言い換えると第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第1内歯部6aの歯先の軸方向中央よりも外側の位置から、第2外歯部4bの歯先に接続する位置まで、すなわち第1内歯歯車6と第2内歯歯車8との隙間7の径方向内側に対応する部分まで軸方向に延在する。なお、第1外歯部4aの歯先は、第1内側外径減少部を有していてもよい。
第2外歯部4bの歯先は、第2最外径部4b1と、第7の実施の形態と同様の第2外側外径減少部4b2と、を有する。すなわち、第2外歯部4bの歯先は第2内側外径減少部を有さず、代わりに第2最外径部4b1が、中心線C2よりも外側、言い換えると第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第2内歯部8aの歯先の軸方向中央よりも外側の位置から、第1外歯部4aの歯先に接続する位置まで、すなわち第1内歯歯車6と第2内歯歯車8との隙間7の径方向内側に対応する部分まで軸方向に延在する。なお、第2外歯部4bの歯先は、第2内側外径減少部を有していてもよい。
第1内歯部6aの歯先は、第1最内径部6a1と、第8の実施の形態と同様の第1内側内径増大部6a3と、を有する。すなわち、第1内歯部6aの歯先は第1外側内径増大部を有さず、代わりに第1最内径部6a1が、中心線C1よりも外側、すなわち第1外歯部4aの歯先の軸方向中央よりも外側の位置から軸方向外側に延在する。なお、第1内歯部6aの歯先は、第1外側内径増大部を有していてもよい。
第2内歯部8aの歯先は、第2最内径部8a1と、第8の実施の形態と同様の第2内側内径増大部8a3と、を有する。すなわち、第2内歯部8aの歯先は第2外側内径増大部を有さず、代わりに第1最内径部6a1が、中心線C2よりも外側、すなわち第2外歯部4bの歯先の軸方向中央よりも外側の位置から軸方向外側に延在する。なお、第2内歯部8aの歯先は、第2外側内径増大部を有していてもよい。
第1最外径部4a1と第1外側外径減少部4a2との境界の軸方向における位置は、第1最内径部6a1と第1内側内径増大部6a3との境界の軸方向における位置と実質的に一致する。また、これらの境界は、中心線C1よりも外側、言い換えると第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第1内歯部6aの歯先の軸方向中央よりも外側に位置する。本実施の形態ではさらに、これらの境界は、第1外歯部4aの歯先の軸方向中央よりも外側に位置する。
同様に、第2最外径部4b1と第2外側外径減少部4b2との境界の軸方向における位置は、第2最内径部8a1と第2内側内径増大部8a3との境界の軸方向における位置と実質的に一致する。また、これらの境界は、中心線C2よりも外側、言い換えると第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側に、さらに言い換えると第2内歯部8aの歯先の軸方向中央よりも外側に位置する。本実施の形態ではさらに、これらの境界は、第2外歯部4bの歯先の軸方向中央よりも外側に位置する。
本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、外歯部の歯先は、第7の実施の形態と同様に、外側外径減少部を有する。一方、外歯部の歯先は、第7の実施の形態とは異なり、内側外径減少部は有しない。しかしながら代わりに、内歯部の歯先が内側内径増大部を有する。これにより、本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、第7の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。
(第10の実施の形態)
図12は、第10の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図12は、第7の実施の形態の図9に対応する。第7の実施の形態との主な違いは、外歯部および内歯部がともに、歯先の径が軸方向において変化する部分を有する点である。以下、第7の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置との相違点を中心に説明する。
第1外歯部4aの歯先は、第1最外径部4a1と、第7の実施の形態と同様の第1内側外径減少部4a3と、を有する。すなわち、第1外歯部4aの歯先は第1外側外径減少部を有さず、代わりに第1最外径部4a1が、中心線C1よりも外側、言い換えると第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第1内歯部6aの歯先の軸方向中央よりも外側の位置から軸方向外側に延在する。なお、第1外歯部4aの歯先は、第1外側外径減少部を有していてもよい。
第2外歯部4bの歯先は、第2最外径部4b1と、第7の実施の形態と同様の第2内側外径減少部4b3と、を有する。すなわち、第2外歯部4bの歯先は第2外側外径減少部を有さず、代わりに第2最外径部4b1が、中心線C2よりも外側、言い換えると第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第2内歯部8aの歯先の軸方向中央よりも外側の位置から軸方向外側に延在する。なお、第2外歯部4bの歯先は、第2外側外径減少部を有していてもよい。
第1内歯部6aの歯先は、第1最内径部6a1と、第8の実施の形態と同様の第1外側内径増大部6a2と、を有する。すなわち、第1内歯部6aの歯先は第1内側内径増大部を有さず、代わりに第1最内径部6a1が、中心線C1よりも外側、言い換えると第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第1内歯部6aの歯先の軸方向中央よりも外側の位置から軸方向内側に延在する。なお、第1内歯部6aの歯先は、第1内側内径増大部を有していてもよい。
第2内歯部8aの歯先は、第2最内径部8a1と、第8の実施の形態と同様の第2外側内径増大部8a2と、を有する。すなわち、第2内歯部8aの歯先は第2内側内径増大部を有さず、代わりに第2最内径部8a1が、中心線C2よりも外側、言い換えると第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第2内歯部8aの歯先の軸方向中央よりも外側の位置から軸方向内側に延在する。なお、第2内歯部8aの歯先は、第2内側内径増大部を有していてもよい。
第1最外径部4a1と第1内側外径減少部4a3との境界の軸方向における位置は、第1最内径部6a1と第1外側内径増大部6a2との境界の軸方向における位置と実質的に一致する。また、これらの境界は、中心線C1よりも外側、言い換えると第1外歯部4aと第1内歯部6aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第1内歯部6aの歯先の軸方向中央よりも外側に位置する。本実施の形態ではさらに、これらの境界は、第1外歯部4aの歯先の軸方向中央よりも外側に位置する。
同様に、第2最外径部4b1と第1内側外径減少部4a3との境界の軸方向における位置は、第2最内径部8a1と第2外側内径増大部8a2との境界の軸方向における位置と実質的に一致する。また、これらの境界は、中心線C2よりも外側、言い換えると第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向における中央よりも外側、さらに言い換えると第2内歯部8aの歯先の軸方向中央よりも外側に位置する。本実施の形態ではさらに、これらの境界は、第2外歯部4bの歯先の軸方向中央よりも外側に位置する。
本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、外歯部の歯先は、第7の実施の形態と同様に、内側外径減少部を有する。一方、外歯部の歯先は、第7の実施の形態とは異なり、外側外径減少部は有しない。しかしながら代わりに、内歯部の歯先が外側内径増大部を有する。これにより、本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、第7の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。
(第11の実施の形態)
図13は、第11の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図13は、第7の実施の形態の図9に対応する。第7の実施の形態との主な違いは、第2外歯部4bの歯先の径だけが軸方向において変化する点である。以下、第7の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置との相違点を中心に説明する。
第1内歯部6aと歯数が異なる第1外歯部4aの歯先は、軸方向において外径が実質的に一定で、かつ、第2外歯部4bの最小外径と同じ外径となるよう構成される。
第2内歯部8aと歯数が同じである第2外歯部4bの歯先は、第2最外径部4b1と、第2内側外径減少部4b3と、を有する。すなわち、第2外歯部4bの歯先は、第2外側外径減少部を有しない。第2最外径部4b1は、軸方向外側の端部に位置する。第2内側外径減少部4b3は、第2外歯部4bの歯先の軸方向範囲の80%以上を占め(図示の例では、ほぼ100%を占め)、第2最外径部4b1から軸方向内側に向かって連続的に外径が減少するように、より具体的には曲線的に外径が減少するように構成される。
第1内歯部6aの歯先は、軸方向において内径が実質的に一定になるよう構成される。同様に、第2内歯部8aの歯先は、軸方向において内径が実質的に一定になるよう構成される。
本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、第2内歯部8aと歯数が同じである第2外歯部4b、すなわち出力側の歯車である第2外歯部4bの歯先は、第2最外径部4b1から軸方向内側に向かって外径が減少し、かつ、その外径減少部分(すなわち第2内側外径減少部4b3)が第2外歯部4bの歯先の軸方向範囲の80%以上を占めるように構成される。これにより、より負荷がかかりやすい出力側の外歯部である第2外歯部4bの歯幅端に生じる片当たり荷重を低減でき、歯車の過度な摩耗を低減できる。
また、本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると第1外歯部4aの歯先、第2外歯部4bの歯先(特に第2内側外径減少部4b3)はそれぞれ、第1内歯歯車6と第2内歯歯車8との隙間7に対応する部分まで延在するよう構成される。これにより、外歯歯車が内歯歯車に対して軸方向にずれることによる影響を吸収できる。
(第12の実施の形態)
図14は、第12の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図14は、第8の実施の形態の図10に対応する。第8の実施の形態との主な違いは、第2内歯部8aの歯先の径だけが軸方向において変化する点である。以下、第8の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置との相違点を中心に説明する。
第1外歯部4aの歯先は、軸方向において外径が実質的に一定になるよう構成される。同様に、第2外歯部4bの歯先は、軸方向において外径が実質的に一定になるよう構成される。
第1外歯部4aと歯数が異なる第1内歯部6aの歯先は、軸方向において内径が実質的に一定で、かつ、第2内歯部8aの最小内径と同じ内径となるよう構成される。
第2外歯部4bと歯数が同じである第2内歯部8aの歯先は、第2最内径部8a1と、第2内側内径増大部8a3と、を有する。すなわち、第2内歯部8aの歯先は、第2外側内径増大部を有しない。第2最内径部8a1は、軸方向外側の端部に位置する。第2内側内径増大部8a3は、第2内歯部8aの歯先の軸方向範囲の80%以上を占め(図示の例では、ほぼ100%を占め)、第2最内径部8a1から軸方向内側に向かって、連続的に内径が増大するように、より具体的には曲線的に内径が増大するように構成される。
本実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によると、第11の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。
以上、実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置について説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
(変形例1)
第1〜第6の実施の形態では、歯厚減少部が曲線的に減少するよう構成されている場合について説明したが、これに限られず、これらは直線的に減少するよう構成されてもよい。
図15は、第1の実施の形態の変形例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図15は第1の実施の形態の図2に対応する。本変形例では、第1外側歯厚減少部4a8は軸方向外側に向かって直線的に歯厚が減少するよう構成され、第1内側歯厚減少部4a9は軸方向内側に向かって直線的に歯厚が減少するよう構成される。具体的には、第1外側歯厚減少部4a8では、第1外歯部4aの2つの歯面は、軸方向外側に向かって直線的に歯厚中心面S4との距離が減少するよう構成され、第1内側歯厚減少部4a9では軸方向内側に向かって直線的に歯厚中心面S4との距離が減少するよう構成される。また、第2外側歯厚減少部4b2は軸方向外側に向かって直線的に歯厚が減少するよう構成され、第2内側歯厚減少部4b3は軸方向内側に向かって直線的に歯厚が減少するよう構成される。具体的には、第2外側歯厚減少部4b8では、第2外歯部4bの2つの歯面は、軸方向外側に向かって直線的に歯厚中心面S4との距離が減少するよう構成され、第2内側歯厚減少部4b9では軸方向内側に向かって直線的に歯厚中心面S4との距離が減少するよう構成される。第1内側歯厚減少部4a9および第2内側歯厚減少部4b9の少なくとも一方の歯面は、軸方向に対する傾きが異なる2つの直線部、別の言い方をすると回転軸R(図1参照)とのなす角が異なる2つの直線部を有する。内側歯厚減少部の2つの直線部のうち、外側に位置する直線部すなわち外歯最厚部に近い側の直線部は、内側に位置する直線部すなわち外歯最厚部から遠い側の直線部よりも傾きが小さい、すなわち回転軸Rとのなす角が小さい。なお、図15では、第1内側歯厚減少部4a9および第2内側歯厚減少部4b9の両方の歯面が、傾きが異なる2つの直線部を有する場合を示している。
図16は、第2の実施の形態の変形例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図16は第2の実施の形態の図4に対応する。本変形例では、第1外側歯厚減少部6a8は軸方向外側に向かって直線的に歯厚が減少するよう構成され、第1内側歯厚減少部6a9は軸方向内側に向かって直線的に歯厚が減少するよう構成される。具体的には、第1外側歯厚減少部6a8では、第1内歯部6aの2つの歯面は、軸方向外側に向かって直線的に歯厚中心面S6との距離が減少するよう構成され、第1内側歯厚減少部6a9では軸方向内側に向かって直線的に歯厚中心面S6との距離が減少するよう構成される。また、第2外側歯厚減少部8a8は軸方向外側に向かって直線的に歯厚が減少するよう構成され、第2内側歯厚減少部8a9は軸方向内側に向かって直線的に歯厚が減少するよう構成される。具体的には、第2外側歯厚減少部8a8では、第2内歯部8aの2つの歯面は、軸方向外側に向かって直線的に歯厚中心面S8との距離が減少するよう構成され、第2内側歯厚減少部8a9では軸方向内側に向かって直線的に歯厚中心面S8との距離が減少するよう構成される。第1内側歯厚減少部6a9および第2内側歯厚減少部8a9の少なくとも一方の歯面は、軸方向に対する傾きが異なる2つの直線部、別の言い方をすると回転軸R(図1参照)とのなす角が異なる2つの直線部を有する。内側歯厚減少部の2つの直線部のうち、外側に位置する直線部すなわち内歯最厚部に近い側の直線部は、内側に位置する直線部すなわち内歯最厚部から遠い側の直線部よりも傾きが小さい、すなわち回転軸Rとのなす角が小さい。なお、図16では、第1内側歯厚減少部6a9および第2内側歯厚減少部8a9の両方が、傾きが異なる2つの直線部を有する場合を示している。
図17は、第3の実施の形態の変形例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図17は第3の実施の形態の図5に対応する。本変形例では、第1外側歯厚減少部4a8は軸方向外側に向かって直線的に歯厚が減少するよう構成され、第1内側歯厚減少部6a9は軸方向内側に向かって直線的に歯厚が減少するように構成される。具体的には、第1外側歯厚減少部4a8では、第1外歯部4aの2つの歯面は軸方向外側に向かって直線的に歯厚中心面S4との距離が減少するよう構成され、第1内側歯厚減少部6a9では、第1内歯部6aの2つの歯面は軸方向内側に向かって直線的に歯厚中心面S6との距離が減少するよう構成される。また、第2外側歯厚減少部4b8は軸方向外側に向かって直線的に歯厚が減少するよう構成され、第2内側歯厚減少部8a9は軸方向内側に向かって直線的に歯厚が減少するように構成される。具体的には、第1外側歯厚減少部4a8では、第2外歯部4bの2つの歯面は軸方向外側に向かって直線的に歯厚中心面S4との距離が減少するよう構成され、第2内側歯厚減少部8a9では、第2内歯部8aの2つの歯面は軸方向内側に向かって直線的に歯厚中心面S8との距離が減少するよう構成される。
図18は、第4の実施の形態の変形例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図18は第4の実施の形態の図6に対応する。本変形例では、第1内側歯厚減少部4a9は軸方向内側に向かって直線的に歯厚が減少するよう構成され、第1外側歯厚減少部6a8は軸方向外側に向かって直線的に歯厚が減少するよう構成される。具体的には、第1内側歯厚減少部4a9では、第1外歯部4aの2つの歯面は軸方向内側に向かって直線的に歯厚中心面S4との距離が減少するよう構成され、第1外側歯厚減少部6a8では、第1内歯部6aの2つの歯面は軸方向外側に向かって直線的に歯厚中心面S6との距離が減少するよう構成される。また、第2内側歯厚減少部4b9は軸方向内側に向かって直線的に外径が減少するよう構成され、第2外側歯厚減少部8a8は軸方向外側に向かって直線的に歯厚が減少するよう構成される。具体的には、第2内側歯厚減少部4b9では、第2外歯部4bの2つの歯面は軸方向内側に向かって直線的に歯厚中心面S4との距離が減少するよう構成され、第2外側歯厚減少部8a8では、第2内歯部8aの2つの歯面は、軸方向外側に向かって直線的に歯厚中心面S8との距離が減少するよう構成される。
図19は、第5の実施の形態の変形例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図19は第5の実施の形態の図7に対応する。本変形例では、第2内側歯厚減少部4b9は、第2外歯最厚部4b7から軸方向内側に向かって直線的に外径が減少するように構成される。具体的には、第2内側歯厚減少部4b9では、第2外歯部4bの2つの歯面は第2外歯最厚部4b7から軸方向内側に向かって直線的に歯厚中心面S4との距離が減少するよう構成される。
図20は、第5の実施の形態の別の変形例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図20は第5の実施の形態の図7に対応する。本変形例では、第2内側歯厚減少部4b9は、第2外歯最厚部4b7から軸方向内側に向かって直線的に歯厚が減少するように構成される。具体的には、第2内側歯厚減少部4b9では、第2外歯部4bの2つの歯面は第2外歯最厚部4b7から軸方向内側に向かって直線的に歯厚中心面S4との距離が減少するよう構成される。また、本変形例では、第1外歯部4aは、第1外歯最厚部4a7と、第1内側歯厚減少部4a9と、を有する。第1外歯最厚部4a7は、軸方向に延在する。第1内側歯厚減少部4a9は、第1外歯最厚部4a7から軸方向内側に向かって、直線的に歯厚が減少するよう構成される。具体的には、第1内側歯厚減少部4a9では、第1外歯部4aの2つの歯面は第1外歯最厚部4a7から軸方向内側に向かって直線的に歯厚中心面S4との距離が減少するよう構成される。第1内側歯厚減少部4a9は特に、その軸方向寸法D1が、第2内側歯厚減少部4b9の軸方向寸法D2よりも小さくなるよう構成される。
図21は、第6の実施の形態の変形例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図21は第6の実施の形態の図8に対応する。本変形例では、第2内側歯厚減少部8a9は、第2内歯最厚部8a7から軸方向内側に向かって直線的に歯厚が減少するように構成される。具体的には、第2内側歯厚減少部8a9では、第2内歯部8aの2つの歯面は第2内歯最厚部8a7から軸方向内側に向かって直線的に歯厚中心面S8との距離が減少するよう構成される。
図15〜図21の変形例において、各歯厚減少部では、2つの歯面はそれぞれ、軸方向に対する歯厚中心面との距離の減少割合が上述の式1を満たすように構成される。
図15〜図21の変形例によれば、第1〜6の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。加えて、本変形例によれば、直線的な歯面形状の歯部しか加工できない加工機すなわち曲線的な歯面形状の歯部を加工できない加工機を、歯車の製造に使用することができる。
(変形例2)
第1の実施の形態では、第1外歯最厚部4a7および第2外歯最厚部4b7の両方が、対応する外歯部と内歯部との噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置する場合について説明したが、これに限られず、第1外歯最厚部4a7および第2外歯最厚部4b7の一方だけが、対応する外歯部と内歯部との噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置してもよい。例えば、第2内歯部8aと歯数が同じである第2外歯部4b、すなわち出力側の歯車である第2外歯部4bの第2外歯最厚部4b7だけが、第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置してもよい。
同様に、第2の実施の形態では、第1内歯最厚部6a7および第2内歯最厚部8a7の両方が、対応する外歯部と内歯部との噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置する場合について説明したが、これに限られず、第1内歯最厚部6a7および第2内歯最厚部8a7の一方だけが、対応する外歯部と内歯部との噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置してもよい。
また、第3、第4の実施の形態では、第1外歯部4aおよび第1内歯部6aにおける境界と、第2外歯部4bおよび第2内歯部8aにおける境界の両方が、対応する外歯部と内歯部との噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置する場合について説明したが、これに限られず、第1外歯部4aおよび第1内歯部6aにおける境界と、第2外歯部4bおよび第2内歯部8aにおける境界の一方だけが、対応する外歯部と内歯部との噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置してもよい。
(変形例3)
第1〜第6の実施の形態では、各外歯部および各内歯部が、歯厚中心面に対して対称である場合について説明したが、これに限られず、歯厚中心面に対して非対称であってもよい。例えば起振体軸22が一方向にしか回転しない場合は、各外歯部および各内歯部は、2つの歯面のうちの一方の歯面のみが他の歯部と接触する。この場合、他の歯部と接触する歯面は図2、4〜8のように形成し、他の歯部と接触しない歯面は、特に形状は問われないため、例えば歯厚中心面との距離が軸方向で一定となるように形成してもよい。
(変形例4)
第7〜第12の実施の形態では、外径減少部、内径増大部それぞれの外径や内径が曲線的に減少、増大するよう構成されている場合について説明したが、これに限られず、これらは直線的に減少、増大するよう構成されてもよい。
図22は、第7の実施の形態の変形例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図22は第7の実施の形態の図9に対応する。本変形例では、第1外側外径減少部4a2は軸方向外側に向かって直線的に外径が減少するよう構成され、第1内側外径減少部4a3は軸方向内側に向かって直線的に外径が減少するよう構成される。また、第2外側外径減少部4b2は軸方向外側に向かって直線的に外径が減少するよう構成され、第2内側外径減少部4b3は軸方向内側に向かって直線的に外径が減少するよう構成される。第1内側外径減少部4a3および第2内側外径減少部4b3の少なくとも一方は、軸方向に対する傾きが異なる、別の言い方をすると回転軸R(図1参照)とのなす角が異なる、2つの直線部を有する。内側外径減少部の2つの直線部のうち、外側に位置する直線部すなわち最外径部に近い側の直線部は、内側に位置する直線部すなわち最外径部から遠い側の直線部よりも傾きが小さい、すなわち回転軸Rとのなす角が小さい。なお、図9では、第1内側外径減少部4a3および第2内側外径減少部4b3の両方が、傾きが異なる2つの直線部を有する場合を示している。
図23は、第8の実施の形態の変形例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図23は第8の実施の形態の図10に対応する。本変形例では、第1外側内径増大部6a2は軸方向外側に向かって直線的に内径が増大するよう構成され、第1内側内径増大部6a3は軸方向内側に向かって直線的に内径が増大するよう構成される。また、第2外側内径増大部8a2は軸方向外側に向かって直線的に内径が増大するよう構成され、第2内側内径増大部8a3は軸方向内側に向かって直線的に内径が増大するよう構成される。第1内側内径増大部6a3および第2内側内径増大部8a3の少なくとも一方は、軸方向に対する傾きが異なる、別の言い方をすると回転軸R(図1参照)とのなす角が異なる、2つの直線部を有する。内側内径増大部の2つの直線部のうち、外側に位置する直線部すなわち最内径部に近い側の直線部は、内側に位置する直線部すなわち最内径部から遠い側の直線部よりも傾きが小さい、すなわち回転軸Rとのなす角が小さい。なお、図23では、第1内側内径増大部6a3および第2内側内径増大部8a3の両方が、傾きが異なる2つの直線部を有する場合を示している。
図24は、第9の実施の形態の変形例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図24は第9の実施の形態の図11に対応する。本変形例では、第1外側外径減少部4a2は軸方向外側に向かって直線的に外径が減少するよう構成され、第1内側内径増大部6a3は軸方向内側に向かって直線的に内径が増大するように構成される。また、第2外側外径減少部4b2は軸方向外側に向かって直線的に外径が減少するよう構成され、第2内側内径増大部8a3は軸方向内側に向かって直線的に内径が増大するように構成される。
図25は、第10の実施の形態の変形例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図25は第10の実施の形態の図12に対応する。本変形例では、第1内側外径減少部4a3は軸方向内側に向かって直線的に外径が減少するよう構成され、第1外側内径増大部6a2は軸方向外側に向かって直線的に内径が増大するよう構成される。また、第2内側外径減少部4b3は軸方向内側に向かって直線的に外径が減少するよう構成され、第2外側内径増大部8a2は軸方向外側に向かって直線的に内径が増大するよう構成される。
図26は、第11の実施の形態の変形例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図26は第11の実施の形態の図13に対応する。本変形例では、第2内側外径減少部4b3は、第2最外径部4b1から軸方向内側に向かって、直線的に外径が減少するように構成される。
図27は、第11の実施の形態の別の変形例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図27は第11の実施の形態の図13に対応する。本変形例では、第2内側外径減少部4b3は、第2最外径部4b1から軸方向内側に向かって、直線的に外径が減少するように構成される。また、本変形例では、第1外歯部4aは、第1最外径部4a1と、第1内側外径減少部4a3と、を有する。第1最外径部4a1は、軸方向に延在する。第1内側外径減少部4a3は、第1最外径部4a1から軸方向内側に向かって、直線的に外径が減少する。第1内側外径減少部4a3は特に、その軸方向寸法D1が、第2内側外径減少部4b3の軸方向寸法D2よりも小さくなるよう構成される。
図28は、第12の実施の形態の変形例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車4、第1内歯歯車6および第2内歯歯車8の形状を説明するための図である。図28は第12の実施の形態の図14に対応する。本変形例では、第2内側内径増大部8a3は、第2最内径部8a1から軸方向内側に向かって、直線的に内径が増大するように構成される。
図22〜図28の変形例において、各外径減少部は、軸方向に対する外径の減少割合が上述の式1を満たすように構成され、各内径増大部は、軸方向に対する内径の増大割合が上述の式2を満たすように構成される。
図22〜図28の変形例によれば、第7〜12の実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。加えて、本変形例によれば、直線的な歯先形状の歯部しか加工できない加工機すなわち曲線的な歯先形状の歯部を加工できない加工機を、歯車の製造に使用することができる。
(変形例5)
第7の実施の形態では、第1最外径部4a1および第2最外径部4b1の両方が、対応する外歯部と内歯部との噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置する場合について説明したが、これに限られず、第1最外径部4a1および第2最外径部4b1の一方だけが、対応する外歯部と内歯部との噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置してもよい。例えば、第2内歯部8aと歯数が同じである第2外歯部4b、すなわち出力側の歯車である第2外歯部4bの第2最外径部4b1だけが、第2外歯部4bと第2内歯部8aとの噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置してもよい。
同様に、第8の実施の形態では、第1最内径部6a1および第2最内径部8a1の両方が、対応する外歯部と内歯部との噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置する場合について説明したが、これに限られず、第1最内径部6a1および第2最内径部8a1の一方だけが、対応する外歯部と内歯部との噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置してもよい。
また、第9、第10の実施の形態では、第1外歯部4aおよび第1内歯部6aにおける境界と、第2外歯部4bおよび第2内歯部8aにおける境界の両方が、対応する外歯部と内歯部との噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置する場合について説明したが、これに限られず、第1外歯部4aおよび第1内歯部6aにおける境界と、第2外歯部4bおよび第2内歯部8aにおける境界の一方だけが、対応する外歯部と内歯部との噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側に位置してもよい。
(変形例6)
第1〜第12の実施の形態および上述の変形例では、内歯部が外歯部よりも軸方向の長さが短い場合について説明したが、これに限られない。外歯部は、内歯部よりも軸方向の長さが短く、軸方向における全範囲で内歯部と噛み合うように構成されてもよい。つまり、外歯部と内歯部との噛み合い範囲の軸方向の長さが外歯部の軸方向の長さと等しくなるよう構成されてもよい。この場合、例えば、第1の実施の形態における各外歯最厚部、第2の実施の形態における各内歯最厚部、第3の実施の形態における外歯最厚部と外側歯厚減少部との各境界、および第4の実施の形態における外歯最厚部と内側歯厚減少部との各境界は、対応する外歯部と内歯部の噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側、言い換えると、対応する外歯部の軸方向中央よりも外側に位置する。また例えば、第7の実施の形態における各最外径部、第8の実施の形態における各最内径部、第9の実施の形態における最外径部と外側外径減少部との各境界、および第10の実施の形態における最外径部と内側外径減少部との各境界は、対応する外歯部と内歯部の噛み合い範囲の軸方向中央よりも外側、言い換えると、対応する外歯部の歯先の軸方向中央よりも外側に位置する。