JP6968597B2 - ポリアセタール樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリアセタール樹脂組成物に関する。
ポリアセタール樹脂は機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、成形性、耐衝撃性、成形品の寸法安定性等において優れた特性を持っており、構造材料や機構部品として電気機器、自動車部品、精密機械部品等に広く使用されている。そして、ポリアセタール樹脂の機械的特性、例えば強度や剛性を向上させるために、ガラス系無機充填材等の強化材を配合することが知られている。
しかしながら、ポリアセタール樹脂は活性に乏しく、またガラス系無機充填材も活性に乏しいため、単にポリアセタール樹脂にガラス系無機充填材を配合し溶融混練しただけでは両者の密着性は不十分なものとなり、期待するほどの機械的特性の向上が得られない場合が多い。そこで、ポリアセタール樹脂とガラス系無機充填材との密着性を向上させて機械的特性を改良するための各種の方法が提案されている。
例えば、ポリアセタール樹脂にガラス系無機充填材とホウ酸化合物とを添加すること、さらに該ガラス系無機充填材を特定のシラン化合物で表面処理すること(特許文献1参照)、ポリアセタール樹脂にポリウレタン系樹脂で表面処理されたガラス系無機充填材を添加すること、さらに亜リン酸を用いてpHを調整すること(特許文献2参照)等が知られている。
特開平09−151298号公報 特開2000−335942号公報
しかしながら、これらの手法は、いずれも、ガラス系無機充填材の化学的活性を高め、引張強さ、引張伸び、曲げ強さ等の機械的特性を得るものである。近年、これらの機械的特性に加え、耐衝撃性や、耐久性、とりわけクリープ特性を発揮するポリアセタール樹脂の提供が求められており、従来のポリアセタール樹脂では、クリープ特性等の耐久性の向上の点において、さらなる改良の余地がある。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、引張強さ、引張伸び、曲げ強さ、耐衝撃性等の機械的特性に優れ、特にクリープ特性に優れたポリアセタール樹脂を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた、その結果、ポリアセタール樹脂に対して、特定のガラス系無機充填材と多官能イソシアネート化合物とホウ酸化合物と含窒素官能基を有するトリアジン誘導体とを用いることで、高い機械的特性を維持しつつ、クリープ特性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の通りである。
1.(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、
(B)ブロック化イソシアネート化合物、ポリウレタン樹脂及びシランカップリング剤から選ばれた少なくとも1種で表面処理されたガラス系無機充填材1質量部〜100質量部と、
(C)多官能イソシアネート化合物0.1質量部〜10質量部と、
(D)ホウ酸化合物0.001質量部〜3質量部と、
(E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体0.002質量部〜10質量部、
とを含有するポリアセタール樹脂組成物。
2.前記(C)多官能イソシアネート化合物が、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート及び2,6−トリレンジイソシアネートから選ばれた少なくとも1種の化合物である前記1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
3.前記(C)多官能イソシアネート化合物が、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート及び2,6−トリレンジイソシアネートの多量体から選ばれた少なくとも1種の化合物である、前記1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
4.前記(C)多官能イソシアネート化合物が、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート及び2,6−トリレンジイソシアネートの三量体から選ばれた少なくとも1種の化合物である、前記1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
5.前記(D)ホウ酸化合物が、オルトホウ酸である、前記1から4いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
6.前記(E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体が、メラミン、ベンゾグアナミン及びCTUグアナミンから選ばれた少なくとも1種の化合物である、前記1から5いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
7.前記(B)ガラス系無機充填材が、ガラス繊維、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー及びガラスフレークから選ばれた少なくとも1種のガラス系無機充填材である、前記1から6いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
本発明によれば、引張強さ、引張伸び、曲げ強さ、耐衝撃性等の機械的特性に優れ、特に、クリープ特性にも優れたポリアセタール樹脂を提供できる。
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
<ポリアセタール樹脂組成物>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、
(B)ブロック化イソシアネート化合物、ポリウレタン樹脂及びシランカップリング剤から選ばれた少なくとも1種で表面処理されたガラス系無機充填材1質量部〜100質量部と、
(C)多官能イソシアネート化合物0.1質量部〜10質量部と、
(D)ホウ酸化合物0.001質量部〜3質量部と、
(E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体0.002質量部〜10質量部、
とを含有することを特徴とする。
本発明では、(A)ポリアセタール樹脂の反応性末端基と(B)ブロック化イソシアネート化合物、ポリウレタン樹脂及びシランカップリング剤から選ばれた少なくとも1種で表面処理されたガラス系無機充填材との複合化反応が、(C)多官能イソシアネート化合物及び(D)ホウ酸化合物及び(E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体の共存による相乗作用で接着性が一層促進され、その結果、クリープ特性を向上させたものと推定している。
<(A)ポリアセタール樹脂>
本発明の(A)ポリアセタール樹脂は、オキシメチレン基(−CHO−)を主たる構成単位とする高分子化合物で、ポリオキシメチレンホモポリマー、又はオキシメチレン基を主たる繰り返し単位とし、これ以外に他の構成単位、例えばエチレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール等のコモノマー単位を少量含有するコポリマー、ターポリマー、ブロックポリマーのいずれにてもよい。
また、ポリアセタール樹脂は、分子が線状のみならずグリシジルエーテル構造を有するコモノマー等を共重合させた分岐、架橋構造を有するものであってもよく、他の有機基を導入した公知の変性ポリオキシメチレンであってもよく、また線状樹脂と分岐、架橋構造を有する樹脂との混合物であってもよい。
ポリアセタール樹脂は、その重合度に関しても特に制限はなく、溶融成形加工性を有するもの(例えば、190℃、2160g荷重下でのメルトフロー値(MFR)が1.0g/10分以上100g/10分以下)であればよい。
<(B)ブロック化イソシアネート化合物、ポリウレタン樹脂及びシランカップリング剤から選ばれた少なくとも1種で表面処理されたガラス系無機充填材>
(B)ガラス系無機充填材は、ブロック化イソシアネート化合物、ポリウレタン樹脂及びシランカップリング剤から選ばれた少なくとも1種で表面処理されたものである。ガラス系無機充填材は、複数の化合物で表面処理される場合、それぞれの化合物で表面処理するタイミングの先後は問わない。
例えば、ガラス系無機充填材は、ブロック化イソシアネート化合物、ポリウレタン樹脂で表面処理された後に、その他の成分で表面処理されたものであってもよいし、シランカップリング剤で表面処理された後、その他の成分で表面処理されたものであってもよい。
ガラス系無機充填材が、ブロック化イソシアネート化合物、ポリウレタン樹脂及びシランカップリング剤のいずれかで表面処理されたものであるか否かは、ガラス系無機充填材を含むポリアセタール樹脂組成物を溶剤抽出し、成分を分析することで区別可能である。
≪ブロック化イソシアネート化合物≫
本発明のブロック化イソシアネート化合物の原料であるイソシアネート化合物としては、一分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する多官能のイソシアネート化合物であれば特に制限なく使用できる。
例えば、脂肪族及び芳香族のイソシアネート化合物を挙げることができるが、特に、ポリアセタール樹脂との相溶性や適合性の面から、脂肪族イソシアネート化合物が好ましい。
特に、2官能性の脂肪族ジイソシアネート、これらのジイソシアネートを多量化したポリイソシアネートであることが好ましい。
脂肪族ジイソシアネートとしては、直鎖、分岐、脂環式の化合物が挙げられ、直鎖、分岐したイソシアネートとしては炭素数4以上30以下のものが好ましく、炭素数5以上10以下のものがより好ましい。具体的には、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等を挙げることができる。
また、脂環式ジイソシアネートとしては、炭素数8以上18以下のものが好ましく、炭素数10以上15以下のものがより好ましい。
具体的には、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。
芳香族ジイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
さらに、ポリイソシアネートとしては、一分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物、例えば、トリレンジイソシアネートもしくはジフェニルメタンジイソシアネートの如き、各種の芳香族ジイソシアネート類;m−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−m−キシリレンジイソシアネートの如き、各種のアラルキルジイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートの如き、脂肪族ジイソシアネート類と、多価アルコール類とを付加反応せしめて得られるような、イソシアネート基含有プレポリマー類、前記の各種のジイソシアネート類を環化二量化せしめて得られるような、ウレトジオン環を有するプレポリマー類、前記の各種のジイソシアネート類を環化三量化せしめて得られるような、イソシアヌレート環を有するプレポリマー類、あるいは前記の各種のジイソシアネート類と、水とを反応せしめて得られるような、ビウレット構造を有するアダクト、ポリイソシアネート等が挙げられる。
中でも、得られる組成物の耐衝撃性や耐久性、工業的入手の容易さの点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット、環状二量体、又はヘキサメチレンジイソシアネートの環状三量体が好ましい。なお、上記化合物を2種以上併用することもできる。
また、本発明のブロック化イソシアネート化合物としては、上記イソシアネート化合物の反応基を、周知のブロック化剤で定法によりブロックしたものを、特に限定されることなく使用できる。
具体的なブロック化剤としては、例えば、メチルエチルケトオキシム、アセトキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム系ブロック化剤;m−クレゾール、キシレノール等のフェノール系ブロック化剤;メタノール、エタノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール系ブロック化剤;ε−カプロラクタム等のラクタム系ブロック化剤;マロン酸ジエチル、アセト酢酸エステル等のジケトン系ブロック化剤;チオフェノール等のメルカプタン系ブロック化剤;チオ尿素等の尿素系ブロック化剤;ジメチルピラゾール等のピラゾール系ブロック化剤;イミダゾール系ブロック化剤;カルバミン酸系ブロック化剤;重亜硫酸塩等を挙げることができるが、これらに特に限定されない。
中でも、ラクタム系ブロック化剤、オキシム系ブロック化剤、ジケトン系ブロック化剤、ピラゾール系ブロック化剤の使用が好ましい。
≪ポリウレタン樹脂≫
本発明に用いるポリウレタン樹脂は、ガラス系無機充填材、特に、チョップドストランドの集束性を向上させるものであり、有機ジイソシアネート、高分子ポリオール、さらに必要により鎖延長剤及び/又は架橋剤とから形成される従来既知のものが好ましく使用でき、エマルジョンやディスパージョン等の水分散状にして用いることが好ましい。
有機ジイソシアネートの好ましい具体例としては、例えば、 2,4 '−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4 '−ジフェニルメタンジイソシアネート 、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート 、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5− ナフチレンジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート 、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート 、4 ,4 '−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。
高分子ポリオールの好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチレンアジペートジオール、ポリネオペンチレンテレフタレートジオール、ポリ( ε−カプロラクトン) ジオール、ポリバレロラクトンジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等のポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物等のポリエーテルポリオールが挙げられる。
鎖延長剤及び/又は架橋剤としては、数平均分子量が6 0 〜 5 0 0 の活性水素含有化合物が好ましく、例えば、 エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル) シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、2,2−ビス(4,4'−ヒドロキシシクロヘキシル) プロパン等の2価アルコールや、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコールや、 ペンタエリスリトール、ジグリセリン、α−メチルグルコシド、ソルビトール、ジペンタエリスリトール、グルコース等の4〜8価のアルコール等の多価アルコール類、ピロガロール、カテコール、ハイドロキノン等の多価フェノール類、ビスフェノールA 、ビスフェノールF 、ビスフェノールS 等のビスフェノール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の脂肪族ポリアミン類、イソホロンジアミン、4,4 '−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ポリアミン類、4,4 '−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン類、キシリレンジアミン等の芳香脂環族ポリアミン類等のポリアミンが挙げられる。
本発明において、イソシアネート成分としては、上記に挙げた有機ジイソシアネートの中でも、トリレンジイソシアネート或いはキシリレンジイソシアネーを用いることが好ましく、また、ポリウレタン樹脂のポリオール成分としては、上記に挙げた高分子ポリオール類の中でも、ポリカプロラクトンジオールが好ましい。そして、トリレンジイソシアネートあるいはキシリレンジイソシアネーと、ポリ(ε‐カプロラクトン)ジオールで構成されたポリウレタン樹脂を用いたチョップドストランドは、集束性が極めて高いためより好ましい。
≪シランカップリング剤≫
本発明のシランカップリング剤は、官能基を有するもの(例えばビニルアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、アリルアルコキシシラン、アミノシラン等)であれば本発明の効果を発揮することができるが、アミノシランカップリング剤が好ましい。アミノシランカップリング剤とは、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、窒素原子を含有する官能基とを含有している化合物をいう。
具体的なアミノシランカップリング剤として、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
上記アミノシランカップリング剤として、中でも、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましく挙げられ、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−アミノプロピルトリエトキシシランがより好ましく挙げられる。
また、これらのシランカップリング剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
官能基を有する他のシランカップリング剤(例えばビニルアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、アリルアルコキシシラン等)を併用してもよい。
≪ガラス系無機充填材≫
本実施形態に用いられるガラス系無機充填材は、繊維状(ガラス繊維)、粒状(ガラスビーズ)、粒状(ミルドガラスファイバー)、板状(ガラスフレーク)及び中空状の充填材が挙げられ、特に限定されるものではない。
取り扱い上、ガラス繊維であって、2mm〜8mm程度にカットされたチョップドストランドが好適である。また、ガラス繊維の直径としては、通常は5μm〜15μm、好ましくは7μm〜13μmのものが好適に用いられる。
ブロック化イソシアネートの表面処理量は、ガラス系無機充填材100質量部に対して0.1質量部〜5質量部であり、好ましくは0.3質量部〜3質量部である。
ポリウレタン樹脂の表面処理量は、ガラス系無機充填材100質量部に対して0.1質量部〜5質量部であり、好ましくは0.2質量部〜2質量部である。
シランカップリング剤の表面処理量は、ガラス系無機充填材100質量部に対して0.005質量部〜10質量部であり、好ましくは0.01質量部〜5質量部である。
(B)ガラス系無機充填材の配合量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して1質量部〜100質量部であり、好ましくは5質量部〜80質量部であり、特に好ましくは10質量部〜60質量部である。ガラス系無機充填材の含有量は、成形品のクリープ特性の改善、成形加工容易性から適宜選択される。
ガラス系無機充填材に表面処理を行う際には、公知の方法を採用することができ、一般的にはブロック化イソシアネート化合物、ポリウレタン樹脂及びシランカップリング剤から選ばれた少なくとも1種を、有機溶剤中に溶解した溶液、エマルジョンとして分散、或いは、水中に分散させ使用することが好ましい。
<(C)多官能イソシアネート化合物>
本発明の(C)多官能イソシアネート化合物としては、一分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する多官能のイソシアネート化合物であれば特に制限なく使用でき、本発明のブロック化イソシアネート化合物の原料であるイソシアネート化合物を好ましく使用することができる。
中でも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート又は2,6−トリレンジイソシアネートの多量体、特に三量体が好ましい。三量体以上で、クリープ特性を急激に向上させることができる。なお、上記化合物を2種以上併用することもできる。
多官能イソシアネートの配合量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部であり、好ましくは0.3質量部〜3質量部である。
<(D)ホウ酸化合物>
本発明の(D)ホウ酸化合物としては、種類は特に限定されるものでなく、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等のいずれであってもよい。中でもオルトホウ酸が好ましい。(D)ホウ酸化合物の配合量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.001質量部〜3.0質量部であり、クリープ特性から、好ましくは0.005質量部〜0.2質量部である。
<(E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体>
本発明の(E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体は、耐クリープ性を向上させるだけでなく、耐熱安定性を高める効果も有している。
本発明に用いられる(E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体としては、具体的には、メラミン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N’−ジフェニルメラミン、N,N’−ジアリルメラミン、N,N’,N’’−トリフェニルメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、アンメリン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、2,4−ジヒドロキシ−6−アミノ−sym−トリアジン〔別称(アンメリド)〕、1,1−ビス(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアジニル)メタン、1,2−ビス(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアジニル)エタン〔別称(サクシノグアナミン)〕、1,3−ビス(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアジニル)プロパン、1,4−ビス(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアジニル)ブタン、メチレン化メラミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、3,9−ビス[2−(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(CTUグアナミン)、3,9−ビス[1−(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)メチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[2−(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)−2−メチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[1−(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)−1,1−ジメチルメチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[3−(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)−1,1−ジメチルプロピル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[3−(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)−2,2−ジメチルプロピル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、メラミンシアヌレート、エチレンジメラミンシアヌレート、トリグアナミンシアヌレート等である。
これらのトリアジン誘導体は1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくはベンゾグアナミン、CTUグアナミン、メラミンであり、中でもメラミンが特に好ましい。
本発明においてかかる(E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体の配合量はポリアセタール樹脂100質量部に対して0.002質量部〜10質量部とするのが好ましく、より好ましくは0.01質量部〜2質量部、特に好ましくは0.03質量部〜1質量部である。
<その他の添加剤>
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、さらにシランカップリング剤以外の公知のカップリング剤で表面処理されたガラス系無機充填材を含有してもよい。カップリング剤は、ガラス系無機充填材を、ポリアセタール樹脂との濡れ性や接着性等を良好なものとするために用いられるものであって、例えば、チタネート系、アルミニウム系、クロム系、ジルコニウム系、ボラン系カップリング剤等がある。
また、本発明の目的とする成形品の性能を大幅に低下させないような範囲であるならば、ガラス系無機充填材以外の公知の無機、有機、及び金属等の繊維状、板状、粉粒状等の充填材を1種又は2種以上複合させて配合することも可能である。このような充填材の例としては、タルク、マイカ、ウォラストナイト、炭素繊維等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
さらに公知の各種安定剤・添加剤を配合し得る。安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、アルカリ或いはアルカリ土類金属の水酸化物、カルボン酸塩等のいずれか1種又は2種以上を挙げることができる。添加剤としては、熱可塑性樹脂に対する一般的な添加剤、例えば染料、顔料等の着色剤、滑剤、核剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤のいずれか1種又は2種以上を挙げることができる。
<ポリアセタール樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリアセタール樹脂組成物の製造は、従来の樹脂組成物製造法として一般に用いられる公知の方法により容易に製造される。例えば各成分を混合した後、1軸又は2軸の押出機により練込み押出しして、ペレットを調製し、しかる後、成形する方法、一旦組成の異なるペレット(マスターバッチ)を調製し、そのペレットを所定量混合(稀釈)して成形に供し、成形後に目的組成の成形品を得る方法等、いずれも使用できる。
また、ポリアセタール樹脂組成物の製造において、基体であるポリアセタール樹脂の一部又は全部を粉砕し、これとその他の成分を混合した後、押出等を行うことは添加物の分散性を良くする上で好ましい方法である。
以下、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に記載のない限り、各評価は23℃、55%RHの環境下で行った。
<ポリアセタール樹脂組成物の製造>
(A)ポリアセタール樹脂100質量部に、(B)ガラス系無機充填材、(C)多官能イソシアネート化合物、(D)ホウ酸化合物及び(E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体を、表1及び2に示す量で配合し、シリンダー温度200℃の押出機で溶融混練し、実施例及び比較例に係るペレット状のポリアセタール樹脂組成物を製造した。
使用した各種材料は次のとおりである。
〔(A)ポリアセタール樹脂〕
(A1)ポリアセタール樹脂(トリオキサン96.7質量%と1,3−ジオキソラン3.3質量%とを共重合させてなるポリアセタール共重合体(メルトインデックス(190℃,荷重2160gで測定):9g/10min)
〔(B)表面処理されたガラス系無機充填材100質量部〕
(B1)ポリウレタン樹脂(キシリレンジイソシアネートとポリカプロラクトンジオールとの反応物)0.8質量部、シランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)0.02質量部で表面処理された直径13μmのチョップドストランド。
(B2)ポリウレタン樹脂(トリレンジイソシアネートとポリカプロラクトンジオールとの反応物)0.8質量部、シランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)0.02質量部で表面処理された直径10μmのチョップドストランド。
(B3)ポリウレタン樹脂(キシリレンジイソシアネートとポリカプロラクトンジオールとの反応物)0.3質量部、シランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)0.02質量部、メチルエチルケトオキシムでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化イソシアネート1.2質量部で表面処理された直径10μmのチョップドストランド。
(B4)ポリウレタン樹脂(トリレンジイソシアネートとポリカプロラクトンジオールとの反応物)0.7質量部で表面処理された直径10μmのチョップドストランド。
(B5)メチルエチルケトオキシムでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネート三量体のブロック化イソシアネート1.2質量部で表面処理された直径10μmのチョップドストランド。
[ガラス系無機充填材の表面処理法]
ブロック化イソシアネート化合物、ポリウレタン樹脂(エマルジョン)、シランカップリング剤から選ばれた少なくとも1種を単独または併用混合してガラス系無機充填材の表面処理剤を得た。この表面処理剤をガラス系無機充填材に塗布、乾燥して表面処理されたガラス系無機充填材を得た。さらに、ガラス系無機充填材がガラス繊維である場合、ガラス繊維束を長さ3mmに切断し、チョップドストランドを調製した。
また、ガラス系無機充填材(B3)は、ポリウレタン樹脂(エマルジョン)とシランカップリング剤で1次表面処理したチョップドストランドに、さらに、ブロック化イソシアネートを2次的に塗布・乾燥して調製した。
〔(C)多官能イソシアネート化合物〕
(C1)イソホロンジイソシアネート三量体
(エボニック社製 VESTANAT T1890/100)
(C2)4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
〔(D)ホウ酸化合物〕
(D)オルトホウ酸
〔(E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体〕
(E1)メラミン
(E2)ベンゾグアナミン
(E3)CTUグアナミン
<物性評価>
実施例及び比較例に係るペレット状の組成物から射出成形機を用い、試験片を成形した。そして、ISO527−1,2に準拠した引張強さ・引張伸び、ISO178に準拠した曲げ強さ、ISO179・1eAに準拠したシャルピー衝撃強さ(ノッチ付、23℃)の測定を実施した。
<耐クリープ性評価>
ISO3167に準拠した引張試験片を用い、クリープ試験機で高温高荷重条件として大気中80℃、40MPaの荷重を掛け、試験片が破断するまでの時間を測定した。
評価結果を表1及び2に示す。組成における単位は、質量部である。
Figure 0006968597
Figure 0006968597
表1及び2から、本発明においては機械的特性及びクリープ特性が改善されることが明らかである。

Claims (7)

  1. (A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、
    (B)ブロック化イソシアネート化合物、ポリウレタン樹脂及びシランカップリング剤から選ばれた少なくとも1種で表面処理されたガラス系無機充填材1質量部〜100質量部と、
    (C)多官能イソシアネート化合物0.1質量部〜10質量部と、
    (D)ホウ酸化合物0.001質量部〜3質量部と、
    (E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体0.002質量部〜10質量部と
    を含有するポリアセタール樹脂組成物。
  2. 前記(C)多官能イソシアネート化合物が、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート及び2,6−トリレンジイソシアネートから選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
  3. 前記(C)多官能イソシアネート化合物が、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート及び2,6−トリレンジイソシアネートの多量体から選ばれた少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
  4. 前記(C)多官能イソシアネート化合物が、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート及び2,6−トリレンジイソシアネートの三量体から選ばれた少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
  5. 前記(D)ホウ酸化合物が、オルトホウ酸である、請求項1から4いずれかの項記載のポリアセタール樹脂組成物。
  6. 前記(E)含窒素官能基を有するトリアジン誘導体が、メラミン、ベンゾグアナミン及びCTUグアナミンから選ばれた少なくとも1種の化合物である、請求項1から5いずれかの項記載のポリアセタール樹脂組成物。
  7. 前記(B)ガラス系無機充填材が、ガラス繊維、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー及びガラスフレークから選ばれた少なくとも1種のガラス系無機充填材である、請求項1から6いずれかの項記載のポリアセタール樹脂組成物。

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