JP6968402B2 - コンクリート固化物、コンクリート固化物の製造方法、およびコンクリート固化物を利用したリン回収方法 - Google Patents

コンクリート固化物、コンクリート固化物の製造方法、およびコンクリート固化物を利用したリン回収方法 Download PDF

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Description

本発明は、コンクリート固化物、当該コンクリート固化物の製造方法、および当該コンクリート固化物を利用したリン回収方法に関する。
従来から、リンは植物の良好な生育には必須とされており、一般的な化学肥料にも含有されている。また、リンは生体内で代謝を司るATP(アデノシン三リン酸)の構成元素でもあり、動物植物を問わず、生物の生存には必須の元素である。その一方で、このリンの化合物(例えばリン酸)を高濃度に含んだ水(例えば排水)は、水域の水質汚染を引き起こす要因の一つである。
このため、排水を流す際には、この排水からリン酸などのリンの化合物を除去する処置が行われることがある。このような技術としては、例えば下記の特許文献1に開示されている技術が知られている。この技術では、ロックウールをセメントと混合してこのセメントを水和硬化させた固化物を排水流路に設置して、排水中のリン酸を除去する。
特開2004−041891号公報
ここで、上記特許文献1には、セメントの固化物により、排水中のリンをリン酸として除去する技術については開示されている。しかし、排水中から除去したリンを回収する技術については言及されていない。
そこで、本発明は上記課題を解消するものであって、水中のリンの除去能力を有すると共に、除去したリンの回収が可能なコンクリート固化物、当該コンクリート固化物の製造方法、及び当該コンクリート固化物を利用したリン回収方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、カルシウムマグネシウム珪酸塩(Calciummagnesium Silicate)と、結合材とを有し、カルシウムマグネシウム珪酸塩の少なくとも一部が結合材の界面において露出している、コンクリート固化物である。
上記コンクリート固化物はカルシウムマグネシウム珪酸塩を有しており、その少なくとも一部が結合材の界面において露出している。この露出しているカルシウムマグネシウム珪酸塩は、水中のリン酸態リンを、水酸化リン酸カルシウムとしてその界面に析出させる。したがって、上記コンクリート固化物は水に浸漬することで、水中でリン酸態リンを除去して、リン酸態リンの濃度を下げることで、水中のリン濃度を低下させることができる。さらに水酸化リン酸カルシウムとして回収されたリンはカルシウムマグネシウム珪酸塩の界面に析出されているため、コンクリート固化物を水中から引き上げることで回収することできる。
また、カルシウムマグネシウム珪酸塩と、結合材と含有比を1:0.2〜1:50とすることができる。このような含有比とすることで、コンクリート固化物はより良好なリン除去能力を有する。
さらに、結合材を、カルシウム源を含有するセメントとすることもできる。カルシウム源を含有するセメント組成物を使用することにより、カルシウムマグネシウム珪酸塩のリン除去能力が補助される。このため、当該カルシウム源を含有するセメントを有するコンクリート固化物のリン除去能力も向上させることができる。
そして、カルシウムマグネシウム珪酸塩(Calciummagnesium Silicate)と、結合材とを有し、カルシウムマグネシウム珪酸塩の少なくとも一部が結合材の界面において露出しているコンクリート固化物を水に接触させ、水中のリン酸態リンを水酸化リン酸カルシウムとして前記コンクリート固化物と水との界面に析出させる析出ステップと、コンクリート固化物を水中から引き上げ、コンクリート固化物に析出している水酸化リン酸カルシウムを酸に接触させて、水酸化リン酸カルシウムを前記コンクリート固化物から分離させる分離ステップと、分離した水酸化リン酸カルシウムを回収する回収ステップとを有する、水中のリン回収方法を行うことができる。
かかるリン回収方法によれば、水中でリン酸態リンを水酸化リン酸カルシウムとしてコンクリート固化物と水との界面に析出させて、水中のリン酸態リンの濃度を低下させることができ、リン濃度も低下させることができる。そして、この水酸化リン酸カルシウムを酸に接触させることにより、この酸中に、水中から除去したリンを水酸化リン酸カルシウムとして溶かし出し、回収することができる。また、一度リンの除去、回収を行ったコンクリート固化物を、水中のリン酸態リンの除去に再利用することもできる。
さらに、カルシウムマグネシウム珪酸塩(Calciummagnesium Silicate)を含有する溶液をゾルの状態に変質させるゾル化ステップと、前記ゾルの状態の前記溶液から溶媒を気化させることで除去し、残渣を得る気化ステップと、前記残渣を雰囲気温度555〜950℃の環境下で固相焼結させて焼結物を得る固相焼結ステップと、前記焼結物を結合材に混合させる混合ステップと、前記結合材を固化させて、コンクリート固化物を形成する固化ステップとを有する、コンクリート固化物の製造方法により、コンクリート固化物を製造することができる。
上記コンクリート固化物の製造方法は、カルシウムマグネシウム珪酸塩の溶液からゾル化ステップと、気化ステップを経て得られた残渣を雰囲気温度555〜950℃の環境下で固相焼結させた焼結物を結合材と混合させ、コンクリート固化物を製造している。この雰囲気温度555〜950℃の環境下で残渣を固相焼結させて得られた焼結物は、天然のカルシウムマグネシウム珪酸塩の結晶(例えばディオプサイド等)や、他の雰囲気温度で固相焼結させた焼結物と比べ、優れたリン除去能力を有する。このため、かかる焼結物を混合させる本製造方法を用いて製造されたコンクリート固化物もまた優れたリン除去能力を有する。また、引用文献1におけるロックウールは玄武岩、輝緑岩などの天然石、もしくは高炉製鉄法における副生成物であるスラグを溶融状態から繊維状に凝固させることで製造され、製造には1500〜1600℃の高温が必要である。これに対し、上記の製造方法においては、カルシウムマグネシウム珪酸塩の含有する残渣を雰囲気温度555〜950℃の環境下で固相焼結させる。このため、ロックウールの製造に必要なほどの高温を必要とせず、比較的容易にコンクリート固化物を製造することが可能である。
また、混合ステップにおける、焼結物と結合材との混合比を1:0.2〜1:50とすることもできる。かかる混合比とすることで、製造されるコンクリート固化物のリン除去能力はより高いものとなる。
さらに、混合ステップにおける結合材を、カルシウム源を含有するセメントとすることができる。カルシウム源を含有するセメントを結合材として使用することにより、カルシウムマグネシウム珪酸塩のリン除去能力を補助し、向上させることができる。
なお、本発明および本明細書において「コンクリート固化物」とは、コンクリートの他、セメント、モルタルの固化物も含むものとする。また、「リン酸態リン」とは、水中でリン酸イオン(PO 3−)として存在するリンのことを示し、pHによってHPO 2−、HPO 、HPOとなるリンも示す。また、「リン濃度」とは、化合物、単体を問わず、水中リン元素の濃度を示す。さらに、数値範囲を示す「○○〜××」とは、特に明示しない限り「○○以上××以下」を意味する。
本発明のコンクリート固化物、当該コンクリート固化物の製造方法、および当該コンクリート固化物を利用したリン回収方法によれば、水中のリン濃度を低下させ、水中のリン除去を行えると共に、除去したリンを回収することができる。
焼結物や天然のディオプサイドを水中に浸漬させた場合のリン濃度の変化を示すグラフである。 焼結物や天然のディオプサイドを水中に浸漬させた場合のリン濃度の変化を示すグラフである。 コンクリート固化物の水中への設置を示す概略図である。 水中に設置されたコンクリート固化物への水酸化リン酸カルシウムの析出を示す概略図である。 コンクリート固化物の水中からの引き上げを示す概略図である。 コンクリート固化物の酸性水溶液への浸漬を示す概略図である。 実施例及び比較例を水中に浸漬させた場合のリン濃度の変化を示すグラフである。
(水中リン除去用のコンクリート固化物)
本発明のコンクリート固化物は水中のリン酸態リンを除去し、水酸化リン酸カルシウムとして回収するために用いられる。コンクリート固化物は、カルシウムマグネシウム珪酸塩(Calcium magnesium Silicate)、及び結合材から構成される。
〈カルシウムマグネシウム珪酸塩(Calciummagnesium Silicate)〉
カルシウムマグネシウム珪酸塩(Calcium magnesium Silicate)は、カルシウムとマグネシウムの珪酸複塩である。カルシウムマグネシウム珪酸塩は、カルシウムイオン及び水酸化物イオンの存在下、水中のリン酸イオンと反応して水酸化リン酸カルシウム(Ca10(OH)(PO、ヒドロキシアパタイトとも称される)を析出させる。すなわち、カルシウムマグネシウム珪酸塩は、いわゆる晶析脱リン法の種晶としての役割を果たし、水中でリン酸態リンを除去し、リン酸態リンの濃度低下によりリン濃度を低下させる。
ここで、晶析脱リン法とは、以下の反応式(1)に示すように、カルシウムイオン、リン酸イオン、及び水酸化物イオンが反応することにより、カルシウムを主成分とする種晶表面に水酸化リン酸カルシウムが析出することを利用した、水中のリン回収方法である。この晶析脱リン法においては、種晶表面に水酸化リン酸カルシウムが析出し、付着する。このため、水酸化リン酸カルシウムが汚泥となることはなく、種晶と共に水中からリン酸態リンを除去し、水酸化リン酸カルシウムとして回収することができる。また、水酸化リン酸カルシウムとして回収されたリンは弱酸性環境下で溶解することから、根元が弱酸性を示す植物の肥料として容易に転用が可能である。
Figure 0006968402
ここで通常、水酸化リン酸カルシウムの溶解度積は、カルシウムイオン、リン酸イオン、水酸化物イオンの各イオンの濃度の積によって決定される。また、この溶解度積に応じて、リン濃度とpHの散布図は、安定域、準安定域、不安定域に分類される。そして、pHが高い不安定域では水酸化リン酸カルシウムの微細結晶が急速に析出する。これに対し、通常、比較的pHが低い準安定域、及び安定域では水酸化リン酸カルシウムの結晶が析出することはない。しかし、水中にカルシウムを主成分とする種晶が存在する場合、準安定域であっても、種晶と水との界面に水酸化リン酸カルシウムが析出する。晶析脱リン法は、この種晶界面への水酸化リン酸カルシウムの析出を利用したものである。このため晶析脱リン法は、準安定域にある比較的低いpHであっても、容易に水酸化リン酸カルシウムの析出を行うことができる。したがって、pH調整のために必要な薬剤の使用量が少なくて済むというメリットもある。
ここで、上述の晶析脱リン法を利用した水中のリン除去では、カルシウムイオンの存在下で、水酸化リン酸カルシウムの析出を行っている。このため、水酸化リン酸カルシウムの析出と並行して、カルシウムイオンと水中に存在する炭酸イオンが下記反応式(2)のように反応し、炭酸カルシウムが容易に生成する。この炭酸カルシウムは、種晶表面に析出しやすいため、種晶の役割を阻害し、水酸化リン酸カルシウムが僅かしか析出せず、結果十分なリン除去が行えないという問題が生じる。したがって、晶析脱リン法においては、炭酸カルシウムの生成頻度を少なくするために、いわゆる脱炭酸工程が必須となっていた。脱炭酸工程とは、リンの浄化対象である水に対し、硫酸等の酸を添加してpHを一度大きく低下させ、遊離炭酸を炭酸ガスとして放散させて、水中から炭酸イオンを除去する工程である。
Figure 0006968402
しかし、この脱炭酸工程の後には、さらに大きく低下したpHを調整するため、水酸化カルシウム(消石灰)等の塩基を添加してpHを調整する必要があった。このpH調整に必要な塩基により、pH調整のために必要な薬剤の量が増えてしまい、薬剤の添加量が少なくて済むという晶析脱リン法のメリットの一つが失われる結果となっていた。また、この脱炭酸工程及びpH調整工程の煩雑さゆえに、晶析脱リン法は、汚泥の発生が少なく、水中のリンの除去には非常に有用であるにも関わらず十分に普及していなかった。以上の点から、脱炭酸工程が不要な晶析脱リン法の種晶の開発は長年来求められてきたものであった。
この点、晶析脱リン法の種晶として、カルシウムマグネシウム珪酸塩を利用した場合、カルシウムマグネシウム珪酸塩は、その一部が水中において、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンとして溶出する。このため、カルシウムイオンとマグネシウムイオンが水中の炭酸イオンと反応して、炭酸カルシウムマグネシウムが優先的に生成する一方で、炭酸カルシウムの生成は抑制される。したがって、晶析脱リン法の種晶であるカルシウムマグネシウム珪酸塩が、炭酸カルシウムに覆われてしまうことは少なくなり、カルシウムマグネシウム珪酸塩のリン除去能力が低下することも少なくなる。このため、脱炭酸工程は不要となる。これにより、より簡便に水中のリンの除去を行うことができるようになる。また、海や湖といった自然状態を保つ観点からpHの調節を行えない場所のリン除去や、そもそもpH調節を行うこと自体が不可能な流水を対象とする、川や水路といった場所のリン除去を行うことも容易となる。
〈結合材〉
結合材はカルシウムマグネシウム珪酸塩を固定するものである。結合材としては、従来からセメント、またはレジンセメントにおける樹脂として使用されているものであれば特に種類は問わない。このうちセメントとしては、例えばポルトランドセメント、混合セメント、特殊セメントなど各種セメントを挙げることができる。ポルトランドセメントとしては、具体的には、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等を挙げることができる。混合セメントとしては、具体的には高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等を挙げることができる。特殊セメントとしては、白色ポルトランドセメント、セメント系固化材、超微粒子セメント、高ビーライト系セメント、超速硬セメント、アルミナセメント、リン酸セメント、気硬性セメント等を挙げることができる。なお、結合材としてはカルシウム源を含有しているセメントが好ましい。水中において、カルシウム源を含有するセメントからはカルシウムイオンが溶出する。そして、晶析脱リン法おける種晶となるカルシウムマグネシウム珪酸塩のリン除去能力は、水中のカルシウムイオンの濃度、水酸化物イオンの濃度、リン酸イオンの濃度に依存する。すなわちカルシウムイオンの濃度が上がれば、カルシウムマグネシウム珪酸塩の表面に水酸化リン酸カルシウムが析出する反応の反応速度は向上する。このため、結合材がカルシウム源を含有するセメントであれば、カルシウムマグネシウム珪酸塩のリン除去能力を補強することができる。
コンクリート固化物中の、カルシウムマグネシウム珪酸塩と結合材の含有比は1:0.2〜1:50とするのが好ましく、1:0.5〜1:10とするのがより好ましく、1:0.5〜1:7とするのがさらに好ましい。カルシウムマグネシウム珪酸塩に対する結合材の比が50以上である場合、水中のリン除去性能が十分なものではなくなる。また、カルシウムマグネシウム珪酸塩に対する結合材の比が0.2よりも小さい場合、コンクリート固化物が十分な強度を有しない。
〈その他の添加材〉1
その他、コンクリート固化物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて種々の添加物を添加することができる。例えば、通常のコンクリートやモルタルで使用される骨材(細骨材または粗骨材)を配合してもよい。また、必要に応じて硬化剤や水を添加してもよい。
〈コンクリート固化物の形状〉
また、形成したコンクリート固化物は、種々の形状に成形することができる。例えば、大型、小型を問わないブロック状や消波ブロックの形状にすることができる。
(水中リン除去用のコンクリート固化物の製造方法)
コンクリート固化物は、カルシウムマグネシウム珪酸塩を特定の方法で焼結物とし、結合材に混合させることで製造することができる。
この焼結物は、下記に示す方法により製造される。具体的には、まずカルシウムマグネシウム珪酸塩を溶媒に溶解させて、カルシウムマグネシウム珪酸塩のゾルを形成する。溶媒としては、カルシウムマグネシウム珪酸塩がコロイドを形成できるものであれば特に問わないが、例えばエタノール、プロパノール、エチレングリコール等を挙げることができる。このカルシウムマグネシウム珪酸塩のゾルから溶媒を気化させて、ゲルを形成する。このゲルからさらに溶媒を気化させ、残渣を形成する。なお、本明細書では、以上の工程をゾル・ゲル法と称することもある。
このカルシウムマグネシウム珪酸塩を含有する残渣を、好ましくは555〜950℃、より好ましくは580〜780℃、さらに好ましくは600〜700℃の雰囲気温度の環境下で固相焼結させることで、焼結物を得ることができる。すなわち、ゾル・ゲル法によって得た残渣は、その後固相焼結させることによって、リン除去能力は変化し、雰囲気温度555〜950℃の環境下で固相焼結させた焼結物はリンの除去性能が高いことを証明した。
図1、2のグラフは、天然のカルシウムマグネシウム珪酸塩の結晶の一種であるディオプサイド、ゾル・ゲル法によって得たカルシウムマグネシウム珪酸塩を含有する残渣を650℃、700℃、750℃、800℃、850℃、900℃の各雰囲気温度で固相焼結させた焼結物0.1gを、10mmol/lのリン溶液100mlに浸漬させた際のリン濃度の変化を示したものである。650℃、700℃、750℃、800℃、850℃、900℃の各雰囲気温度で固相焼結させた焼結物はいずれもリン溶液に浸漬させた場合、リン溶液に浸漬後15分でリン濃度を低下させている。なお、上記各雰囲気温度の有効数字は二桁とした。
特に、650℃で固相焼結させた焼結物は、リン溶液に浸漬後5分で3mmol/l未満までリン濃度を低下させ、浸漬後15分で1mmol/l程度までリン濃度を低下させるなど、顕著なリン除去能力を有する。これは、700℃以上で固相焼結させた焼結物内のカルシウムマグネシウム珪酸塩が結晶状態になっているのに対し、650℃で固相焼結させた焼結物内のカルシウムマグネシウム珪酸塩はアモルファス状態でも、完全な結晶状態でもないからであると推測される。
その一方で、固相焼結を経ていない天然のカルシウムマグネシウム珪酸塩の結晶の一種であるディオプサイドをリン溶液に浸漬させた場合、リン溶液に浸漬後15分経っても、上記特定の雰囲気温度で固相焼結させたカルシウムマグネシウム珪酸塩を含有する焼結物と比較して、リン濃度の低下は十分ではなかった。
以上から、雰囲気温度555〜950℃の環境下で固相焼結させた焼結物は、天然のカルシウムマグネシウム珪酸塩の結晶(例えばディオプサイド等)と比べ、リン除去能力が高くなることを証明した。
以上では、雰囲気温度555〜950℃の環境下で固相焼結させた焼結物のリン除去能力に基づくメリットを述べたが、雰囲気温度555〜950℃の環境下で固相焼結させることには以下のメリットもある。例えば、リンを除去可能なものとしてはロックウールを挙げることができる。このロックウールの製造には、玄武岩、輝緑岩などの天然石、もしくは高炉製鉄法における副生成物であるスラグを溶融状態から繊維状に凝固させること必要であり、その製造の際には1500〜1600℃という高温が必要である。これに対し、上記の製造方法においては、カルシウムマグネシウム珪酸塩の含有する残渣を雰囲気温度555〜950℃の環境下で固相焼結させる。このため、ロックウールの製造に必要なほどの高温を必要とせず、比較的容易にコンクリート固化物を製造することが可能である。
上記方法で得たカルシウムマグネシウム珪酸塩を含有する焼結物を、上述の結合材と混合する。カルシウムマグネシウム珪酸塩を含有する焼結物と結合材の混合は、両者をそのまま混合してもよいし、水を加えながら混合してもよい。ただし、結合材が水硬性である場合は、カルシウムマグネシウム珪酸塩を含有する焼結物と結合材をあらかじめ混合した状態で水を添加する方が好ましい。
また、カルシウムマグネシウム珪酸塩を含有する焼結物と結合材を混合させる際の混合比は、1:0.2〜1:50とすることが好ましく、1:0.5〜1:10とするのがより好ましく、1:0.5〜1:7とするのがさらに好ましい。焼結物に対する結合材の比が50以上である場合、製造されたコンクリート固化物の水中リン除去能力が十分なものではなくなる。また、焼結物に対する結合材の比が0.2よりも小さい場合、製造されたコンクリート固化物が十分な強度を有しない。
なお、カルシウムマグネシウム珪酸塩と結合材を混合した後は、結合材の種類に応じて、コンクリート固化物が十分な強度を持つように、従来行われていたような養生を行うこともできる。例えば普通養生、蒸気養生、オートクレーブ養生等を行うことができる。
(リン回収方法)
上記コンクリート固化物を利用して、水中のリン酸態リンを除去し、除去したリン酸態リンを水酸化リン酸カルシウムとして回収するリン回収方法を行うことができる。リン回収方法は、図3に示すように、コンクリート固化物1を水中2に設置することで行われる(図3の破線)。設置される水中2としては、水流のほとんどないため池、湾内等の閉鎖性水域でも、水路でも構わない。すなわち、図3では水中2にコンクリート固化物1を設置することで、リンの除去を行っているが、流れる水に対してコンクリート固化物1を設置することでもリンの除去を行うことも可能である。しかし、水酸化リン酸カルシウムの析出速度は緩やかであることから鑑み、閉鎖性水域でリンの除去を行う方が好ましい。
図4に示すように、水中2にあるコンクリート固化物1と水の接触域である界面には、リン酸態リンが半透明状の水酸化リン酸カルシウム3として析出する(矢印a)。したがって、図5に示すように、コンクリート固化物1を水中2から引き上げる(図5の破線参照)ことによって、コンクリート固化物1と共に水酸化リン酸カルシウム3としてリンを水中から除去することができる。
さらに、図6に示すように、水中から引き上げられたコンクリート固化物1を、酸性溶液4に浸漬(図6の破線参照)することで、コンクリート固化物1表面の水酸化リン酸カルシウム3が酸性溶液中に溶出し(矢印b)、酸溶液4中に水酸化リン酸カルシウムを回収することができる。このとき、水酸化リン酸カルシウム3に覆われていたコンクリート固化物1の界面が再び露出することとなる。このため、水酸化リン酸カルシウム3がコンクリート固化物1の界面に析出したせいで、コンクリート固化物1の界面が遮断され、十分に水酸化リン酸カルシウムが析出しなくなって、リン酸態リンを十分に除去できなくなったコンクリート固化物であっても、再度リン酸態リンを十分に除去できるようになる。
なお、上記方法では酸性溶液4に浸漬するとしたが、酸性の液を回収したコンクリート固化物1に浴びせることによっても、コンクリート固化物1から水酸化リン酸カルシウム3を分離し、酸性の液中に水酸化リン酸カルシウム3を回収することができる。
(実施例1,2)
〈カルシウムマグネシウム珪酸塩の合成〉
まず、カルシウムマグネシウム珪酸塩を含有する残渣はゾル・ゲル法で合成した。具体的には、硝酸カルシウム四水和物(和光純薬工業社製)29.5g(0.125mol)と、塩化マグネシウム六水和物(和光純薬工業社製)25.4g(0.125mol)と、オルト珪酸テトラエチル(関東化学社製)52.1g(0.250mol)を150mlのエタノールに添加した。かかるエタノール溶液を80℃で24時間静置して無色透明なゲルを得た。このゲルを雰囲気温度650℃下で2時間焼結させ、粉末状のカルシウムマグネシウム珪酸塩を含有する焼結物を得た。
〈コンクリートブロックの形成〉
上述のようにして得た粉末状の焼結物を、アルミナセメント(株式会社神垣組製)に添加して混合した。焼結物100gに対するアルミナセメントの量は100g(実施例1)、または200g(実施例2)となるよう調整した。その後、かかる混合物に蒸留水130〜200mlを添加し、アルミナセメントを硬化させると共に、縦2.5cm、横1.5cm、高さ1.0cmのコンクリートブロックに成形した。
(比較例)
比較例のコンクリートブロックは、アルミナセメント100gに蒸留水70mlを添加して硬化させ、縦2.5cm、横1.5cm、高さ1.0cmのコンクリートブロックに成形して得た。
<リンイオン濃度の測定>
実施例1,2及び比較例のコンクリートブロックを1.05mmol/lのリン溶液200mlに浸漬した。リン溶液のリンイオン濃度はコンクリートブロック浸漬前、コンクリートブロック浸漬から300分後、及びコンクリートブロック浸漬から1200分後のリン溶液の上澄み液を20ml採取し、溶液中のリン濃度をモリブデンブルー法により測定した。なお、測定値の算出に当たってはコンクリートブロック浸漬前のリンイオン濃度を100%の基準にして換算した。
実施例1,2及び比較例の試験結果を、図7に示す。図7の結果から、実施例1,2ではリン濃度は優位に下がっている。具体的には、実施例1のコンクリートブロックは、当該コンクリートブロックの浸漬から300分後には水中の74%のリンを回収するほどにリン濃度を減少させ、さらに当該コンクリートブロックの浸漬から1200分後には水中のリンを100%除去するに至った。一方で、実施例2のコンクリートブロックは、当該コンクリートブロックの浸漬から300分で47%の水中のリンを除去し、さらに実験開始から実験特に実施例1のコンクリートブロックは、当該コンクリートブロックの浸漬から1200分後には水中のリンの85%を除去するに至った。
一方、比較例のコンクリートブロックは十分にリンの除去が行えなかった。具体的には、当該コンクリートブロックの浸漬から300分後であっても水中の7.1%のリンしか回収できておらず、1200分後となっても57%しか水中のリンを除去できていなかった。
1 コンクリート固化物
2 水中
3 水酸化リン酸カルシウム
4 酸性溶液

Claims (7)

  1. 水中のリン酸態リンを晶析脱リン法により水酸化リン酸カルシウムとして回収するための固相焼結の焼結物であり、かつ、前記水中において晶析脱リン法の種晶としての役割を果たすカルシウムマグネシウム珪酸塩(Calcium magnesium Silicate)と、結合材とを有し、
    前記カルシウムマグネシウム珪酸塩の少なくとも一部が前記結合材の界面において露出し、
    前記結合材が、カルシウム源を含有するセメントであり、かつ、前記水中において溶出現象を生じさせて当該水中のカルシウムイオンの濃度を上げるものである、コンクリート固化物。
  2. 請求項1に記載されたコンクリート固化物であって、
    前記水中が、閉鎖性水域の水の中である、コンクリート固化物。
  3. 請求項1または請求項2に記載されたコンクリート固化物であって、
    前記カルシウムマグネシウム珪酸塩と、前記結合材との含有比が1:0.2〜1:50である、コンクリート固化物。
  4. カルシウムマグネシウム珪酸塩(Calcium magnesium Silicate)と、結合材とを有し、前記カルシウムマグネシウム珪酸塩の少なくとも一部が前記結合材の界面において露出しているコンクリート固化物を水に接触させ、水中のリン酸態リンを水酸化リン酸カルシウムとして前記コンクリート固化物と水との界面に析出させる析出ステップと、
    前記コンクリート固化物を水中から引き上げ、前記コンクリート固化物に析出している前記水酸化リン酸カルシウムを酸に接触させて、該水酸化リン酸カルシウムを前記コンクリート固化物から分離させる分離ステップと、
    分離した前記水酸化リン酸カルシウムを回収する回収ステップとを有する、水中のリン回収方法。
  5. カルシウムマグネシウム珪酸塩(Calcium magnesium Silicate)を含有する溶液をゾルの状態に変質させるゾル化ステップと、
    前記ゾルの状態の前記溶液から溶媒を気化させることで除去し、残渣を得る気化ステップと、
    前記残渣を雰囲気温度555〜950℃の環境下で固相焼結させて、水中において晶析脱リン法の種晶としての役割を果たす、前記水中のリン酸態リンを晶析脱リン法により水酸化リン酸カルシウムとして回収するためのカルシウムマグネシウム珪酸塩の焼結物を得る固相焼結ステップと、
    前記焼結物を結合材に混合させる混合ステップと、
    前記結合材を固化させて、コンクリート固化物を形成する固化ステップとを有し、
    前記混合ステップにおける前記結合材が、カルシウム源を含有するセメントであり、かつ、前記水中において溶出現象を生じさせて当該水中のカルシウムイオンの濃度を上げるものである、コンクリート固化物の製造方法。
  6. 請求項5に記載されたコンクリート固化物の製造方法であって、
    前記混合ステップにおける、前記焼結物と前記結合材との混合比が1:0.2〜1:50である、コンクリート固化物の製造方法。
  7. 請求項5または請求項6に記載されたコンクリート固化物の製造方法であって、
    前記固相焼結ステップにおける前記雰囲気温度有効数字二桁で650℃の範囲にある、コンクリート固化物の製造方法。
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