JP6962859B2 - 蓄冷熱床、居室 - Google Patents
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Description
そこで、物質が固相と液相との間で相変化する際の潜熱を利用した潜熱蓄熱材(PCM:Phase Change Material)を建物の床に組み込んで室内温度の変化を緩和する技術が知られている。
この床暖房用蓄熱構造は、熱源層の下に、潜熱蓄熱温度の異なる複数の潜熱蓄熱層が上から下に向けて潜熱蓄熱温度を低くしていくように積層状態に備えられ、熱源層からの熱によって各潜熱蓄熱層で潜熱蓄熱が行われるようになされている。
この木質系床材は、裏面に収納凹部が形成された木質系基材と、収納凹部に収納された潜熱蓄熱材とを少なくとも備え、木質系床材の表面には、潜熱蓄熱材の相変化温度と同じ温度で変色する可逆式の第1の示温材と、蓄熱された潜熱蓄熱材が放熱状態にあるときの木質系床材の表面温度と同じ温度で変色する可逆式の第2の示温材と、が配置されている。
床下地材11の上に配置され、第一潜熱蓄熱材(以下、第一PCMと呼ぶ)により形成された蓄熱層14と、
前記蓄熱層14の上方に配置され、前記蓄熱層14より潜熱蓄熱温度が高い第二潜熱蓄熱材(以下、第二PCMと呼ぶ)により形成された蓄冷層18と、
前記蓄冷層18の上に敷設された床仕上げ材19と、
前記蓄熱層14と蓄冷層18との間に配置された剛性を有する板材16と、
前記床下地材11と前記板材16との間に取り付けられた剛性を有する枠材15と、
を備えており、
居室1の床の特定箇所Sに前記蓄熱層14が敷設されて、
前記蓄冷層18は、前記蓄熱層14よりも広範囲で前記居室1の床に敷設されている蓄冷熱床10を特徴とする。
そして、蓄冷層18の下方に、当該蓄冷層18より潜熱蓄熱温度が低い第一PCMにより形成された蓄熱層14が配置されているので、その蓄熱層14を形成する第一PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、蓄冷層18の下方に配置された蓄熱層14の、自身の熱抵抗によって潜熱蓄熱を行わない液相状態の第一PCMも顕熱蓄冷材として利用できる。
また、蓄熱層14を形成する第一PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が低い冬季の暖房時においては、その暖房の熱を最初に受ける蓄冷層18の、自身の熱抵抗によって潜熱蓄熱を行わない固相の第二PCMも顕熱蓄熱材として利用でき、その蓄冷層18の下方に配置された蓄熱層14を形成する第一PCMの潜熱蓄熱によって床10の温度を上げて蓄熱することができる。
したがって、冷暖房が必要な夏季・冬季期間に室温を安定させて、冷暖房の運転時間の短縮が図れる。
さらに、蓄熱層14とその上方に配置される蓄冷層18との間に板材16が配置されているので、蓄冷層18の上の床仕上げ材19の荷重を、蓄冷層18を介してその下の板材16で確実に受け止めることができる。
加えて、居室1の床の特定箇所Sに蓄熱層14が敷設されているので、その蓄熱層14を形成する第一PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が低い冬季の暖房時において、その暖房の熱を受ける蓄冷層18の、自身の熱抵抗によって潜熱蓄熱を行わない固相の第二PCMも顕熱蓄熱として利用でき、その蓄冷層18の下方の蓄熱層14の潜熱蓄熱によって、居室1の床の特定箇所Sのみ温度を上げて蓄熱することができる。
そして、蓄冷層18は、蓄熱層14よりも広範囲で居室1の床に敷設されているので、その蓄冷層18を形成する第二PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を最初に受ける蓄冷層18を形成する第二PCMの潜熱蓄冷によって、居室1の蓄熱層14よりも広範囲で床の温度を下げて蓄冷することができる。
請求項1に記載の蓄冷熱床10において、
前記蓄熱層14は、潜熱蓄熱温度20℃付近に設定されて、
前記蓄冷層18は、潜熱蓄熱温度27℃付近に設定されていることを特徴とする。
また、潜熱蓄熱温度27℃付近に設定された蓄冷層18なので、夏季の冷房時は27℃付近以上で、蓄冷層18を形成する第二PCMの潜熱蓄冷により床10の温度を27℃付近に下げて維持することができる。
請求項1又は2に記載の蓄冷熱床10において、
前記蓄冷層18の上にフローリング19が配置されていることを特徴とする。
請求項1から3のいずれか一項に記載の蓄冷熱床10において、
前記蓄熱層14は、前記第一PCMを樹脂に分散してシート状に形成された蓄熱シートで、
前記蓄冷層18は、前記蓄熱層14より潜熱蓄熱温度が高い前記第二PCMを樹脂に分散してシート状に形成された蓄冷シートであることを特徴とする。
請求項1から4のいずれか一項に記載の蓄冷熱床10において、
前記床下地材11の下に断熱材12が配置されていることを特徴とする。
請求項1から5のいずれか一項に記載の蓄冷熱床を備える居室1において、
居室1の天井下地材31の下に、前記蓄冷熱床10の前記蓄熱層14より潜熱蓄熱温度が高い第三潜熱蓄熱材(以下、第三PCMと呼ぶ)により形成された天井蓄冷層35が配置されていることを特徴とする。
したがって、床蓄冷層18及び天井蓄冷層35の潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を受ける床蓄冷層18及び天井蓄冷層35の潜熱蓄冷によって居室1の床及び天井の温度をともに下げて蓄冷することができる。
請求項6に記載の居室1において、
前記天井蓄冷層35は、前記蓄冷熱床10の前記蓄熱層14より潜熱蓄熱温度が高い前記第三PCMを樹脂に分散してシート状に形成された天井蓄冷シートであることを特徴とする。
請求項6又は7に記載の居室1において、
前記天井蓄冷層35は、前記蓄冷熱床10の前記蓄熱層14よりも広範囲で前記居室1の天井に敷設されていることを特徴とする。
したがって、床蓄冷層18及び天井蓄冷層35の潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を受ける床蓄冷層18及び天井蓄冷層35の顕熱蓄冷によって、蓄冷熱床10の蓄熱層14よりも広範囲で居室1の床及び天井の温度をともに下げて蓄冷することができる。
(実施形態)
先ず、図4は本発明を適用した居室の一例としての概略平面を示すもので、図示のような住宅の間取りプランにおいて、居間2、食堂3及び台所4を含む居室1の床の特定箇所(居室1の四割相当)Sに図1に示す蓄冷熱床10が敷設されて、その他の床は蓄冷床となっていて、居室1の居間2、食堂3及び台所4を含む全範囲Wに図3に示す蓄冷天井30が敷設されている。
なお、図示例では、建物の一階の床であるが、二階以上の床であってもよい。
この床パネル11の面材11cの上に蓄熱板材13が敷設されている。
この高強度石膏ボード13の上に蓄熱層14が敷設されている。
この蓄熱シート14は、高強度石膏ボード13の上面に取り付けられた縦横の長尺材15により囲まれた格子枠状の複数の区画にそれぞれ収納されている。蓄熱板材13の厚さは、8mm程度である。
PCMとしては、例えば蓄熱材料であるノルマルパラフィンや無機水和塩を塩化カルシウム水和塩、多孔質シリカ等の多孔質材料である担持体に含浸させたものが用いられる。
この板材16は、厚さ12mm程度の捨て張り合板である。
この厚さ120mm程度と厚い床パネル21に隣接する床パネル11の端部の段さ部分に沿って、厚さ30mm程度の調整材17が配置されており、この調整材17に沿って高強度石膏ボード13、長尺材15及び板材16の端部が揃えられている。
これにより、捨て張り合板16、調整材17及び床パネル21の面材21cがフラットに連続している。
この蓄冷シート18は、図4の居室1の床全面にわたって、捨て張り合板16、調整材17及び床パネル21の面材21cの上に敷設されている。
そして、蓄冷シート18の上に床仕上げ材19が敷設されている。
このフローリング19は、図4の居室1の床全面にわたって、蓄冷シート18の上に敷設されている。
したがって、蓄冷シート18の第二PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を最初に受ける蓄冷シート18の第二PCMの潜熱蓄冷によって床10の温度を下げて蓄冷することができる。
したがって、蓄熱シート14の第一PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、蓄冷シート18の下方に配置された蓄熱シート14の、自身の熱抵抗によって潜熱蓄熱を行わない液相状態の第一PCMも顕熱蓄冷材として利用できる。
以上により、冷暖房が必要な夏季・冬季期間に室温を安定させて、冷暖房の運転時間の短縮が図れる。
また、潜熱蓄熱温度27℃付近に設定された蓄冷シート18なので、夏季の冷房時は27℃付近以上で、蓄冷シート18の第二PCMの潜熱蓄冷により蓄冷熱床10を含む床全体の温度を27℃付近に下げて維持することができる。
また、冬季の暖房時においては、暖房運転時間が夏季の冷房運転時間よりも長いことから、床の蓄冷シート18の下層側に、厚さ7.2mm程度の蓄熱シート14を配置して、室温を18〜22℃程度に安定させることができる。
なお、蓄冷シート18とフローリング19は一体化していてもよい。すなわち、工場で蓄冷シート18とフローリング19を接着しておいたり、フローリング19自体に蓄冷シート18を一体成形してもよい。
その結果、空調機の消費電力を低減することができ、省エネルギーや地球温暖化対策、ランニングコスト低減等に貢献できる。
さらに、放熱する際には、この断熱材12によって室内とは反対側に放熱されにくくなるため、蓄熱シート14及び蓄冷シート18と蓄熱板材13に蓄熱・蓄冷された熱をより多く室内側に放熱することができる。
さらに、フローリング19は、長尺材15を介して高強度石膏ボード13に支持されているので、フローリング19を、高強度石膏ボード13から複数の長尺材15分の間隔を空けて支持することができる。これにより、蓄熱シート14のための収納スペースを確保しつつ、フローリング19を、長尺材15を介して高強度石膏ボード13に確実に固定することができる。
さらに、厚みのある床パネル21は、断熱材22を含んで構成されたものなので、高い断熱効果を得ることができる。さらに、このような床パネル21が、蓄熱効果の高い蓄冷熱床10の床パネル11と隣接して設けられているため、双方の床パネル11・21によって、室内温度の変化の緩和に貢献できることになる。
この高強度石膏ボード31の下に天井蓄冷層35が敷設されている。
この天井蓄冷シート35は、図4の居室1の天井全面にわたって、高強度石膏ボード31の下に重ねて敷設されている。
そして、天井蓄冷シート35の下に天井仕上げ材36が敷設されている。
この普通硬質石膏ボード36は、図4の居室1の天井全面(全範囲W)にわたって、蓄冷シート35の下に重ねて敷設されている。
このように、準不燃仕様の蓄冷天井30となっている。
なお、蓄冷シート35と普通硬質石膏ボード36は一体化していてもよい。すなわち、工場で蓄冷シート35と普通硬質石膏ボード36を接着しておいたり、普通硬質石膏ボード36自体に蓄冷シート35を一体成形してもよい。
したがって、その天井蓄冷シート35を形成する第三PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を、天井蓄冷シート35の第三PCMの潜熱蓄冷によって居室1の天井の温度を下げて蓄冷することができる。
以上により、冷房が必要な夏季期間に室温を安定させて、冷房の運転時間の短縮が図れる。
したがって、床の蓄冷シート18及び天井蓄冷シート35の潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を受ける床の蓄冷シート18及び天井蓄冷シート35の第一PCM及び第三PCMの顕熱蓄冷によって居室1の床全面及び天井全面の温度をともに下げて蓄冷することができる。
その結果、空調機の消費電力を低減することができ、省エネルギーや地球温暖化対策、ランニングコスト低減等に貢献できる。
さらに、放熱する際には、この断熱材33によって室内とは反対側に放熱されにくくなるため、天井蓄冷シート35と蓄熱板材31に蓄冷された熱をより多く室内側に放熱することができる。
以上の実施形態においては、床下地材を床パネル、天井下地材を天井パネルとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、床下地材及び天井下地材は板材であってもよい。
また、実施形態では、蓄冷層を床及び天井の全面(全範囲)に設けたが、少なくとも蓄熱層よりも広い範囲で設ければよく、蓄冷層を設ける範囲は床及び天井の全面に限らない。
さらに、蓄冷熱床及び蓄冷天井の各構成部材の厚さ寸法等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
S 居室の床の特定箇所
10 蓄冷熱床
11 床下地材(床パネル)
12 断熱材
13 蓄熱板材(高強度石膏ボード)
14 蓄熱層(蓄熱シート)
15 長尺材
16 板材(捨て張り合板)
17 調整材
18 蓄冷層(蓄冷シート)
19 床仕上げ材(フローリング)
21 床下地材(床パネル)
22 断熱材
30 蓄冷天井
31 天井下地材(蓄熱板材、高強度石膏ボード)
32 桟材
33 断熱材
35 蓄冷層(蓄冷シート)
36 天井仕上げ材(普通硬質石膏ボード)
41 壁材(壁パネル)
42 面材
43 断熱材
45 梁材
47 外壁材
Claims (8)
- 床下地材の上に配置され、第一潜熱蓄熱材により形成された蓄熱層と、
前記蓄熱層の上方に配置され、前記蓄熱層より潜熱蓄熱温度が高い第二潜熱蓄熱材により形成された蓄冷層と、
前記蓄冷層の上に敷設された床仕上げ材と、
前記蓄熱層と蓄冷層との間に配置された剛性を有する板材と、
前記床下地材と前記板材との間に取り付けられた剛性を有する枠材と、
を備えており、
居室の床の特定箇所に前記蓄熱層が敷設されて、
前記蓄冷層は、前記蓄熱層よりも広い範囲で前記居室の床に敷設されていることを特徴とする蓄冷熱床。 - 請求項1に記載の蓄冷熱床において、
前記蓄熱層は、潜熱蓄熱温度20℃付近に設定されて、
前記蓄冷層は、潜熱蓄熱温度27℃付近に設定されていることを特徴とする蓄冷熱床。 - 請求項1又は2に記載の蓄冷熱床において、
前記蓄冷層の上にフローリングが配置されていることを特徴とする蓄冷熱床。 - 請求項1から3のいずれか一項に記載の蓄冷熱床において、
前記蓄熱層は、前記第一潜熱蓄熱材を樹脂に分散してシート状に形成された蓄熱シートで、
前記蓄冷層は、前記蓄熱層より潜熱蓄熱温度が高い前記第二潜熱蓄熱材を樹脂に分散してシート状に形成された蓄冷シートであることを特徴とする蓄冷熱床。 - 請求項1から4のいずれか一項に記載の蓄冷熱床において、
前記床下地材の下に断熱材が配置されていることを特徴とする蓄冷熱床。 - 請求項1から5のいずれか一項に記載の蓄冷熱床を備える居室において、
居室の天井下地材の下に、前記蓄冷熱床の前記蓄熱層より潜熱蓄熱温度が高い第三潜熱蓄熱材により形成された天井蓄冷層が配置されていることを特徴とする居室。 - 請求項6に記載の居室において、
前記天井蓄冷層は、前記蓄冷熱床の前記蓄熱層より潜熱蓄熱温度が高い前記第三潜熱蓄熱材を樹脂に分散してシート状に形成された天井蓄冷シートであることを特徴とする居室。 - 請求項6又は7に記載の居室において、
前記天井蓄冷層は、前記蓄冷熱床の前記蓄熱層よりも広い範囲で前記居室の天井に敷設されていることを特徴とする居室。
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