JP3940035B2 - 床暖房用蓄熱構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、潜熱蓄熱材を用いた床暖房用等の蓄熱構造に関する。
【0002】
【関連技術及び課題】
安価な深夜電力を利用して夜間の通電で熱を蓄え、蓄えた熱を昼間放熱して居室を暖かく保つ蓄熱式の床暖房が提供されている。このような蓄熱式の床暖房として、図3(イ)に示すように、床面材51の下に面状ヒーターによる熱源層52を設け、その下に潜熱蓄熱層53を設け、その下に断熱層54を設けた構造のものがある。この床暖房構造において、蓄熱層53として、潜熱蓄熱温度が例えば41°Cの潜熱蓄熱材を用いた場合は、潜熱蓄熱層53に蓄えられた熱によって快適な暖房を体感することができる。
【0003】
ところが、暖房を長い時間にわたって保てるように、図3(ロ)に示すように、潜熱蓄熱層53の厚さ寸法を大きくしても、暖房時間がそれに見合うようには長くならないという問題があった。これは、潜熱蓄熱層53において、熱源層52から近い領域では潜熱蓄熱が行われるが、潜熱蓄熱層53自身の熱抵抗によって、熱源層52から離れたところの潜熱蓄熱材が潜熱蓄熱を行わないことによる。
【0004】
そこで、図3(ハ)に示すように、潜熱蓄熱温度が上記の場合よりも低い例えば35°Cの潜熱蓄熱材によって蓄熱層55を形成し、この潜熱蓄熱層55の厚さ寸法を大きくすることも考えられる。この場合は、熱源層52から離れたところでも潜熱蓄熱が行われて、蓄えた熱で長い時間にわたって暖房を継続することが可能となる。
【0005】
しかしながら、潜熱蓄熱温度が35°Cの潜熱蓄熱層55では、蓄熱温度が少々低く目であり、そのため、暖房による快適さが体感されにくいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような背景において、蓄熱量を多く確保できて蓄えた熱で暖房を長時間継続することができ、しかも、蓄えた熱によって快適な暖房を体感することが可能な床暖房用蓄熱構造等を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、熱源層の下に、潜熱蓄熱温度の異なる複数の潜熱蓄熱層が上から下に向けて潜熱蓄熱温度を低くしていくように積層状態に備えられ、熱源層からの熱によって各潜熱蓄熱層で潜熱蓄熱が行われるようになされていることを特徴とする床暖房用蓄熱構造等によって解決される。
【0008】
この構造では、熱源層近くの潜熱蓄熱温度の高い蓄熱層に熱が蓄えられるのみならず、熱源層から離れた蓄熱層においても、潜熱蓄熱温度の高い蓄熱層による熱抵抗を受けるけれども、この蓄熱層の潜熱蓄熱温度は低いので潜熱蓄熱が行われ、それによって、蓄熱量が多く確保されて暖房を長時間継続することができる。
【0009】
しかも、熱源層近くの蓄熱層は、潜熱蓄熱温度が高いので、この蓄熱層に蓄えられた熱によって快適な暖房も体感することができる。
【0010】
また、熱源層に対し、潜熱蓄熱温度の異なる複数の潜熱蓄熱層が熱源層から離れていくにつれて潜熱蓄熱温度を低くしていくように積層状態に備えられ、熱源層からの熱によって各潜熱蓄熱層で潜熱蓄熱が行われるようになされていることを特徴とする床暖房用蓄熱構造によっても同様に解決される。
【0011】
更に、本発明は、熱源層に対し、潜熱蓄熱温度の異なる複数の潜熱蓄熱層が熱源層から離れていくにつれて潜熱蓄熱温度を低くしていくように積層状態に備えられ、熱源層からの熱によって各潜熱蓄熱層で潜熱蓄熱が行われるようになされていることを特徴とする蓄熱構造も含む。
【0012】
この蓄熱構造では、蓄熱量を多く確保できて蓄えられた熱の放射を長時間継続することができ、しかも、蓄えられた熱によって温度の高い熱放射を一定時間維持することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1(イ)に示す第1実施形態において、1は床面材、2は根太であり、根太2,2間において、床面材1の下面側に面状ヒーターによる熱源層3が備えられ、熱源層3の下に、潜熱蓄熱温度の異なる2つの潜熱蓄熱層4,5が、潜熱蓄熱温度の高い第1蓄熱層4を上、潜熱蓄熱温度の低い第2蓄熱層5を下にして積層状態に備えられ、更に、その下に発泡樹脂などによる断熱層6が備えられ、熱源層3からの熱によって、各潜熱蓄熱層4,5で潜熱蓄熱が行われるようになされている。なお、第1蓄熱層4の潜熱蓄熱温度は例えば41°Cであり、第2蓄熱層5の潜熱蓄熱温度は例えば35°Cである。
【0015】
上記の床暖房用蓄熱構造では、熱源層3の近くの潜熱蓄熱温度41°Cの第1潜熱蓄熱層4に熱が蓄えられるのみならず、熱源層3から離れた第2潜熱蓄熱層5においても、第1蓄熱層4による熱抵抗を受けるけれども、この第2蓄熱層5の潜熱蓄熱温度は35°Cと低いので潜熱蓄熱が行われる。これによって、蓄熱量が多く確保されて暖房を長時間継続することができる。しかも、熱源層3の近くの第1蓄熱層4は、潜熱蓄熱温度が高いので、この第1蓄熱層4に蓄えられた熱によって一定時間にわたって快適な床暖房を体感することもできる。
【0016】
因みに、潜熱蓄熱温度が41°Cの単層蓄熱層の場合と、潜熱蓄熱温度が35°Cの単層蓄熱層の場合と、本実施形態におけるような潜熱蓄熱温度が41°Cと35°Cの複層蓄熱層の場合とについて、安価な深夜電力を利用して蓄熱を行いその時間帯を終えて熱源層3の電源を切った午前7時から次の深夜電力時間帯の開始時刻である午後11時を迎えるまでの床面の温度変化を測定したところ、図1(ロ)、図4(イ)(ロ)に示すような結果を得た。
【0017】
これら結果に示すように、潜熱蓄熱温度が41°Cの単層蓄熱層の場合は、図4(イ)に示すように、41°Cの快適な床暖房を一定時間にわたって体感することができたが、その時間を過ぎると、温度は35°Cで止まることなくそのままその温度を下回っていき、次の深夜電力時間帯を迎える前の早い時点で床暖房効果は失われた。
【0018】
また、潜熱蓄熱温度が35°Cの単層蓄熱層の場合は、図4(ロ)に示すように、温度が41°Cで止まることなくそのまま35°Cまで低下していき、次の深夜電力時間帯を迎えるときまでその温度は維持されたが、41°Cの快適な床暖房を体感することはできなかった。
【0019】
これに対し、第1実施形態のように蓄熱層を複層にした場合は、図1(ロ)に示すように、41°Cの快適な暖房を一定時間にわたって体感することができ、そのような41°Cの快適な暖房を終えた後であっても35°Cの暖房が次の深夜電力時間帯を迎えるまで維持された。このように、上記の第1実施形態の蓄熱構造によれば、蓄熱量を多く確保できて蓄えられた熱で暖房を長時間継続することができ、しかも、蓄えられた熱によって41°Cの快適な床暖房を一定時間ではあるが体感できるのを確認できた。
【0020】
図2(イ)に示す第2実施形態は、熱源層3の下に、潜熱蓄熱温度の異なる3つの潜熱蓄熱層4,5,7が、潜熱蓄熱温度の最も高い第1蓄熱層4を上、潜熱蓄熱温度が中間の第2蓄熱層5を中間、潜熱蓄熱温度の最も低い第3蓄熱層7を最も下にして積層状態に備えられ、更に、その下に発泡樹脂などによる断熱層6が備えられ、熱源層3からの熱によって、各潜熱蓄熱層4,5,7で潜熱蓄熱が行われるようになされている。第1蓄熱層4の潜熱蓄熱温度は例えば41°Cであり、第2蓄熱層5の潜熱蓄熱温度は例えば35°Cであり、第3蓄熱層7の潜熱蓄熱温度は例えば30°Cである。
【0021】
この場合も、熱源層3の近くの潜熱蓄熱温度41°Cの第1潜熱蓄熱層4に熱が蓄えられ、第1熱源層3から離れた第2潜熱蓄熱層5においても、第1蓄熱層4による熱抵抗を受けるけれども、この第2蓄熱層5の潜熱蓄熱温度は35°Cと低いので潜熱蓄熱が行われ、また、第1、第2の蓄熱層4,5から離れた第3潜熱蓄熱層7においても、第1、第2の蓄熱層4,5による熱抵抗を受けるけれども、この第3蓄熱層7の潜熱蓄熱温度は30°Cと低いので潜熱蓄熱が行われる。これによって、蓄熱量が多く確保され、暖房をより長い時間にわたって継続することができる。しかも、熱源層3の近くの第1蓄熱層4は、潜熱蓄熱温度が高いので、この第1蓄熱層4に蓄えられた熱で一定時間快適な床暖房を体感することができる。このように本発明では、潜熱蓄熱温度の異なる3つ、ないしはそれ以上の潜熱蓄熱層が備えられていてもよい。
【0022】
また、図2(ロ)に示す第3実施形態は、熱源層3の上に、潜熱蓄熱温度の異なる2つの潜熱蓄熱層4,5が、潜熱蓄熱温度の高い第1蓄熱層4を下、潜熱蓄熱温度の低い第2蓄熱層5を上にして積層状態に備えられ、熱源層3の下面側に断熱層6が備えられたもので、熱源層3からの熱によって、各潜熱蓄熱層4,5で潜熱蓄熱が行われるようになされている。この場合には、熱源層3への通電による直接的な床暖房効果は鈍くなるけれども、熱源層3の近くに位置する第1潜熱蓄熱層4に熱が蓄えられるのみならず、熱源層3から離れた第2潜熱蓄熱層5においても、第1蓄熱層4による熱抵抗を受けるけれども、この第2蓄熱層5の潜熱蓄熱温度は低いので潜熱蓄熱が行われ、それによって、蓄熱量が多く確保されて床暖房を長時間継続することができる。しかも、熱源層3の近くの第1蓄熱層4は、潜熱蓄熱温度が高いので、この第1蓄熱層4に蓄えられた熱によって快適な暖房を体感することができる。
【0023】
また、図2(ハ)に示す第4実施形態は、壁暖房に適用したもので、熱源層3の背面側に、潜熱蓄熱温度の異なる2つの潜熱蓄熱層4,5が、潜熱蓄熱温度の高い第1蓄熱層4を熱源層3の近くに、潜熱蓄熱温度の低い第2蓄熱層5を熱源層3から離れたところに位置させるようにして積層状態に備えられ、更に、第2蓄熱層5の背面側に断熱層6が備えられたもので、熱源層3からの熱によって、各潜熱蓄熱層4,5で潜熱蓄熱が行われるようになされている。なお、8は内装壁面材である。この場合でも、熱源層3近くの第1潜熱蓄熱層4に熱が蓄えられるのみならず、熱源層3から離れた第2潜熱蓄熱層5においても、第1蓄熱層4による熱抵抗を受けるけれども、この第2蓄熱層5の潜熱蓄熱温度は低いので潜熱蓄熱が行われ、それによって、蓄熱量が多く確保されて壁暖房を長時間継続することができる。しかも、熱源層3の近くの第1蓄熱層4は、潜熱蓄熱温度が高いので、この第1蓄熱層4に蓄えられた熱によって快適な壁暖房を一定時間にわたって体感することができる。このように、本発明は、床暖房に限らず、壁暖房でもよいし、また、その他の暖房であってもよいし、暖房以外の熱利用に用いることも可能である。
【0024】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で、各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、熱源層として、電気で発熱する面状ヒーターを用いた場合を示しているが、本発明における熱源層は、その他の電気ヒーターであってもよいし、温水の熱などによるその他の熱源であってもよい。また、各蓄熱層に用いられる潜熱蓄熱材やその潜熱蓄熱温度は適宜決められてよい。
【0025】
【発明の効果】
本発明は、以上のとおりのものであるから、蓄熱量を多く確保できて蓄えた熱で暖房を長時間継続することができ、しかも、蓄えた熱によって快適な暖房を体感することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態を示すもので、図(イ)は床暖房用蓄熱構造を示す断面図、図(ロ)は蓄えた熱で床暖房を行ったときの温度変化を示したもので、縦軸を床面温度、横軸を時間としたグラフ図である。
【図2】図(イ)は第2実施形態の床暖房用蓄熱構造を示す断面図、図(ロ)は第3実施形態の床暖房用蓄熱構造を示す断面図、図(ハ)は第4実施形態の壁暖房用蓄熱構造を示す断面図である。
【図3】図(イ)〜図(ハ)はそれぞれ関連技術の床暖房用蓄熱構造を示す断面図である。
【図4】図(イ)及び図(ロ)はそれぞれ比較例の蓄熱構造によって蓄えた熱で床暖房を行った場合の温度変化を示したもので、縦軸を床面温度、横軸を時間としたグラフ図である。
【符号の説明】
3…熱源層
4…第1潜熱蓄熱層(潜熱蓄熱温度高の蓄熱層)
5…第2潜熱蓄熱層(潜熱蓄熱温度低の蓄熱層)

Claims (3)

  1. 熱源層の下に、潜熱蓄熱温度の異なる複数の潜熱蓄熱層が上から下に向けて潜熱蓄熱温度を低くしていくように積層状態に備えられ、前記熱源層からの熱によって各潜熱蓄熱層で潜熱蓄熱が行われるようになされており、かつ、
    前記潜熱蓄熱温度の最も高い潜熱蓄熱層は、その層厚を前記積層状態にした複数の潜熱蓄熱層の合計厚さにした場合に、前記熱源層から最も離れた部分においてそれ自身の熱抵抗によって潜熱蓄熱を行わないものからなっていることを特徴とする床暖房用蓄熱構造。
  2. 熱源層に対し、潜熱蓄熱温度の異なる複数の潜熱蓄熱層が熱源層から離れていくにつれて潜熱蓄熱温度を低くしていくように積層状態に備えられ、前記熱源層からの熱によって各潜熱蓄熱層で潜熱蓄熱が行われるようになされており、かつ、
    前記潜熱蓄熱温度の最も高い潜熱蓄熱層は、その層厚を前記積層状態にした複数の潜熱蓄熱層の合計厚さにした場合に、前記熱源層から最も離れた部分においてそれ自身の熱抵抗によって潜熱蓄熱を行わないものからなっていることを特徴とする床暖房用蓄熱構造。
  3. 熱源層に対し、潜熱蓄熱温度の異なる複数の潜熱蓄熱層が熱源層から離れていくにつれて潜熱蓄熱温度を低くしていくように積層状態に備えられ、前記熱源層からの熱によって各潜熱蓄熱層で潜熱蓄熱が行われるようになされており、かつ、
    前記潜熱蓄熱温度の最も高い潜熱蓄熱層は、その層厚を前記積層状態にした複数の潜熱蓄熱層の合計厚さにした場合に、前記熱源層から最も離れた部分においてそれ自身の熱抵抗によって潜熱蓄熱を行わないものからなっていることを特徴とする蓄熱構造。
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