JP6962513B1 - 繊維強化複合材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
電磁波シールド材として、熱可塑性樹脂及び炭素繊維を用いたものが知られている。例えば特許文献1には、シクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、ラジカル発生剤、及び不連続炭素繊維を含んでなる重合性組成物を連続炭素繊維に含浸させた後、所定の温度範囲で塊状重合し、シクロオレフィンポリマーを炭素繊維に含浸させてなる樹脂含浸基材を得る工程、及び、該工程で得られた樹脂含浸基材と熱可塑性樹脂とを接触させた状態で該基材を架橋させ、樹脂含浸基材−熱可塑性樹脂複合体からなる電磁波シールド部材を得る工程を有する、電磁波シールド部材の製造方法が開示されている。
特許文献2には、熱可塑性樹脂と、所定の組成及び長さの炭素繊維を含有する熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体が、熱伝導性と電磁波シールド性がよいことが開示されている。
特許文献1及び特許文献2に記載の電磁波シールド材料は、いずれも周波数100MHz〜1000MHzの測定において40〜50dB程度のシールド特性を示している。
本発明の課題は、熱可塑性樹脂と連続強化繊維とを含有し、優れた電磁波シールド性能を有する繊維強化複合材を製造する方法を提供することにある。
すなわち本発明は、下記式(1)で示される繰り返し構成単位及び下記式(2)で示される繰り返し構成単位を含み、該式(1)の繰り返し構成単位と該式(2)の繰り返し構成単位の合計に対する該式(1)の繰り返し構成単位の含有比が20〜70モル%のポリイミド樹脂(A):
(R1は少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含む炭素数6〜22の2価の基である。R2は炭素数5〜16の2価の鎖状脂肪族基である。X1及びX2は、それぞれ独立に、少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6〜22の4価の基である。)、及び、連続強化繊維(B)を含有する繊維強化複合材の製造方法であって、下記工程(I)及び工程(II)を順に有する繊維強化複合材の製造方法に関する。
工程(I):少なくとも1層のポリイミド樹脂(A)層と、少なくとも1層の連続強化繊維(B)層とを積層し、積層物を得る工程
工程(II):前記積層物を、下記式(i)で表される加工パラメータXが35以上87以下となる条件で加熱加圧成形する工程
X=(Tp−Tm)3×P1/2/1000 (i)
上記式(i)において、Tpは成形時の温度(℃)、Tmはポリイミド樹脂(A)の融点(℃)、Pは成形時のプレス圧力(MPa)である。
本発明の繊維強化複合材の製造方法(以下、単に「本発明の方法」ともいう)は、下記式(1)で示される繰り返し構成単位及び下記式(2)で示される繰り返し構成単位を含み、該式(1)の繰り返し構成単位と該式(2)の繰り返し構成単位の合計に対する該式(1)の繰り返し構成単位の含有比が20〜70モル%のポリイミド樹脂(A):
(R1は少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含む炭素数6〜22の2価の基である。R2は炭素数5〜16の2価の鎖状脂肪族基である。X1及びX2は、それぞれ独立に、少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6〜22の4価の基である。)、及び、連続強化繊維(B)を含有する繊維強化複合材の製造方法であって、下記工程(I)及び工程(II)を順に有することを特徴とする。
工程(I):少なくとも1層のポリイミド樹脂(A)層と、少なくとも1層の連続強化繊維(B)層とを積層し、積層物を得る工程
工程(II):前記積層物を、下記式(i)で表される加工パラメータXが35以上87以下となる条件で加熱加圧成形する工程
X=(Tp−Tm)3×P1/2/1000 (i)
上記式(i)において、Tpは成形時の温度(℃)、Tmはポリイミド樹脂(A)の融点(℃)、Pは成形時のプレス圧力(MPa)である。
なお本明細書において、成形時のプレス圧力とは、ゲージ圧を意味する。
本発明により上記効果が得られる理由については定かではないが、以下のように考えられる。
ポリイミド樹脂(A)は結晶性熱可塑性樹脂であり、融点Tmを有する。このポリイミド樹脂(A)をフィルム状等に成形したポリイミド樹脂(A)層と、連続強化繊維(B)層とを積層して加熱加圧成形を行うことにより、ポリイミド樹脂(A)をマトリクス樹脂として連続強化繊維(B)に含浸させた繊維強化複合材を製造することができる。所定の繰り返し構成単位を特定量有するポリイミド樹脂(A)と連続強化繊維(B)とを含む繊維強化複合材(以下、単に「複合材」ともいう)は、優れた電磁波シールド性能を発現する。
さらに本発明者らは、ポリイミド樹脂(A)と連続強化繊維(B)とを含む複合材の電磁波シールド性能が、使用する材料の種類のみならずその製造方法にも依存し、特に、加熱加圧成形時の温度とプレス圧力との関係が所定の要件を満たすことが重要であることを見出した。
複合材の加熱加圧成形時の温度Tpは、理論上はポリイミド樹脂(A)の融点Tmを超える温度であればよいが、その差分であるTp−Tmが小さい場合には一般的には樹脂の流動性が低いので、連続強化繊維(B)にポリイミド樹脂(A)を含浸させるため、成形時のプレス圧力Pを高くする必要がある。一方でTp−Tmが大きければ、成形時のプレス圧力Pが低くても連続強化繊維(B)にポリイミド樹脂(A)を容易に含浸させることができる。しかしながらポリイミド樹脂(A)の流動性が高すぎると成形過程で樹脂が系外に流出してしまい、連続強化繊維(B)に十分な量が含浸されないという問題が生じる。
さらに、成形時の温度とプレス圧力との関係においては温度の影響がより大きいため、本発明では工程(II)において、前記式(i)で表される(Tp−Tm)の3乗とPの平方根との積に比例する加工パラメータXが所定の範囲となる条件で前記積層物を成形する。これにより、ポリイミド樹脂(A)の系外への流出が抑えられ、且つ連続強化繊維(B)への含浸不足によるボイドの発生が抑制されるので、優れた電磁波シールド性能を有する複合材が得られると推察される。
本発明の方法により製造される繊維強化複合材は、下記式(1)で示される繰り返し構成単位及び下記式(2)で示される繰り返し構成単位を含み、該式(1)の繰り返し構成単位と該式(2)の繰り返し構成単位の合計に対する該式(1)の繰り返し構成単位の含有比が20〜70モル%のポリイミド樹脂(A):
(R1は少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含む炭素数6〜22の2価の基である。R2は炭素数5〜16の2価の鎖状脂肪族基である。X1及びX2は、それぞれ独立に、少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6〜22の4価の基である。)、及び、連続強化繊維(B)を含有する。
本発明に用いるポリイミド樹脂(A)は、下記式(1)で示される繰り返し構成単位及び下記式(2)で示される繰り返し構成単位を含み、該式(1)の繰り返し構成単位と該式(2)の繰り返し構成単位の合計に対する該式(1)の繰り返し構成単位の含有比が20〜70モル%である。
(R1は少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含む炭素数6〜22の2価の基である。R2は炭素数5〜16の2価の鎖状脂肪族基である。X1及びX2は、それぞれ独立に、少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6〜22の4価の基である。)
R1は少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含む炭素数6〜22の2価の基である。ここで、脂環式炭化水素構造とは、脂環式炭化水素化合物から誘導される環を意味し、該脂環式炭化水素化合物は、飽和であっても不飽和であってもよく、単環であっても多環であってもよい。
脂環式炭化水素構造としては、シクロヘキサン環等のシクロアルカン環、シクロヘキセン等のシクロアルケン環、ノルボルナン環等のビシクロアルカン環、及びノルボルネン等のビシクロアルケン環が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはシクロアルカン環、より好ましくは炭素数4〜7のシクロアルカン環、さらに好ましくはシクロヘキサン環である。
R1の炭素数は6〜22であり、好ましくは8〜17である。
R1は脂環式炭化水素構造を少なくとも1つ含み、好ましくは1〜3個含む。
(m11及びm12は、それぞれ独立に、0〜2の整数であり、好ましくは0又は1である。m13〜m15は、それぞれ独立に、0〜2の整数であり、好ましくは0又は1である。)
なお、上記の式(R1−3)で表される2価の基において、2つのメチレン基のシクロヘキサン環に対する位置関係はシスであってもトランスであってもよく、またシスとトランスの比は如何なる値でもよい。
X1の炭素数は6〜22であり、好ましくは6〜18である。
X1は芳香環を少なくとも1つ含み、好ましくは1〜3個含む。
(R11〜R18は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基である。p11〜p13は、それぞれ独立に、0〜2の整数であり、好ましくは0である。p14、p15、p16及びp18は、それぞれ独立に、0〜3の整数であり、好ましくは0である。p17は0〜4の整数であり、好ましくは0である。L11〜L13は、それぞれ独立に、単結合、エーテル基、カルボニル基又は炭素数1〜4のアルキレン基である。)
なお、X1は少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6〜22の4価の基であるので、式(X−2)におけるR12、R13、p12及びp13は、式(X−2)で表される4価の基の炭素数が10〜22の範囲に入るように選択される。
同様に、式(X−3)におけるL11、R14、R15、p14及びp15は、式(X−3)で表される4価の基の炭素数が12〜22の範囲に入るように選択され、式(X−4)におけるL12、L13、R16、R17、R18、p16、p17及びp18は、式(X−4)で表される4価の基の炭素数が18〜22の範囲に入るように選択される。
R2は炭素数5〜16の2価の鎖状脂肪族基であり、好ましくは炭素数6〜14、より好ましくは炭素数7〜12、更に好ましくは炭素数8〜10である。ここで、鎖状脂肪族基とは、鎖状脂肪族化合物から誘導される基を意味し、該鎖状脂肪族化合物は、飽和であっても不飽和であってもよく、直鎖状であっても分岐状であってもよく、酸素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
R2は、好ましくは炭素数5〜16のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数6〜14、更に好ましくは炭素数7〜12のアルキレン基であり、なかでも好ましくは炭素数8〜10のアルキレン基である。前記アルキレン基は、直鎖アルキレン基であっても分岐アルキレン基であってもよいが、好ましくは直鎖アルキレン基である。
R2は、好ましくはオクタメチレン基及びデカメチレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、特に好ましくはオクタメチレン基である。
(m21及びm22は、それぞれ独立に、1〜15の整数であり、好ましくは1〜13、より好ましくは1〜11、更に好ましくは1〜9である。m23〜m25は、それぞれ独立に、1〜14の整数であり、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜8である。)
なお、R2は炭素数5〜16(好ましくは炭素数6〜14、より好ましくは炭素数7〜12、更に好ましくは炭素数8〜10)の2価の鎖状脂肪族基であるので、式(R2−1)におけるm21及びm22は、式(R2−1)で表される2価の基の炭素数が5〜16(好ましくは炭素数6〜14、より好ましくは炭素数7〜12、更に好ましくは炭素数8〜10)の範囲に入るように選択される。すなわち、m21+m22は5〜16(好ましくは6〜14、より好ましくは7〜12、更に好ましくは8〜10)である。
同様に、式(R2−2)におけるm23〜m25は、式(R2−2)で表される2価の基の炭素数が5〜16(好ましくは炭素数6〜14、より好ましくは炭素数7〜12、更に好ましくは炭素数8〜10)の範囲に入るように選択される。すなわち、m23+m24+m25は5〜16(好ましくは炭素数6〜14、より好ましくは炭素数7〜12、更に好ましくは炭素数8〜10)である。
式(1)の繰り返し構成単位と式(2)の繰り返し構成単位の合計に対する、式(1)の繰り返し構成単位の含有比は、高い結晶性を発現する観点から、好ましくは65モル%以下、より好ましくは60モル%以下、更に好ましくは50モル%以下である。
中でも、式(1)の繰り返し構成単位と式(2)の繰り返し構成単位の合計に対する式(1)の繰り返し構成単位の含有比は20モル%以上、40モル%未満であることが好ましい。この範囲であるとポリイミド樹脂(A)の結晶性が高くなり、より耐熱性に優れる樹脂組成物を得ることができる。
上記含有比は、成形加工性の観点からは、好ましくは25モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは32モル%以上であり、高い結晶性を発現する観点から、より更に好ましくは35モル%以下である。
前記含有比は、耐熱性の向上という観点からは、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、一方で結晶性を維持する観点からは、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下である。
(R3は少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6〜22の2価の基である。X3は少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6〜22の4価の基である。)
R3の炭素数は6〜22であり、好ましくは6〜18である。
R3は芳香環を少なくとも1つ含み、好ましくは1〜3個含む。
また、前記芳香環には1価もしくは2価の電子求引性基が結合していてもよい。1価の電子求引性基としてはニトロ基、シアノ基、p−トルエンスルホニル基、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基、フェニル基、アシル基などが挙げられる。2価の電子求引性基としては、フッ化アルキレン基(例えば−C(CF3)2−、−(CF2)p−(ここで、pは1〜10の整数である))のようなハロゲン化アルキレン基のほかに、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−などが挙げられる。
(m31及びm32は、それぞれ独立に、0〜2の整数であり、好ましくは0又は1である。m33及びm34は、それぞれ独立に、0〜2の整数であり、好ましくは0又は1である。R21、R22、及びR23は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又は炭素数2〜4のアルキニル基である。p21、p22及びp23は0〜4の整数であり、好ましくは0である。L21は、単結合、エーテル基、カルボニル基又は炭素数1〜4のアルキレン基である。)
なお、R3は少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6〜22の2価の基であるので、式(R3−1)におけるm31、m32、R21及びp21は、式(R3−1)で表される2価の基の炭素数が6〜22の範囲に入るように選択される。
同様に、式(R3−2)におけるL21、m33、m34、R22、R23、p22及びp23は、式(R3−2)で表される2価の基の炭素数が12〜22の範囲に入るように選択される。
(R4は−SO2−又は−Si(Rx)(Ry)O−を含む2価の基であり、Rx及びRyはそれぞれ独立に、炭素数1〜3の鎖状脂肪族基又はフェニル基を表す。X4は少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6〜22の4価の基である。)
X4は、式(1)におけるX1と同様に定義され、好ましい様態も同様である。
該鎖状脂肪族基は、飽和であっても不飽和であってもよく、直鎖状であっても分岐状であってもよい。ポリイミド樹脂(A)が上記特定の基を末端に有すると、耐熱老化性に優れる樹脂組成物を得ることができる。
炭素数5〜14の飽和鎖状脂肪族基としては、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、ラウリル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−メチルペンチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、イソノニル基、2−エチルオクチル基、イソデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基等が挙げられる。
炭素数5〜14の不飽和鎖状脂肪族基としては、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、2−ヘプテニル基、1−オクテニル基、2−オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基等が挙げられる。
中でも、上記鎖状脂肪族基は飽和鎖状脂肪族基であることが好ましく、飽和直鎖状脂肪族基であることがより好ましい。また耐熱老化性を得る観点から、上記鎖状脂肪族基は好ましくは炭素数6以上、より好ましくは炭素数7以上、更に好ましくは炭素数8以上であり、好ましくは炭素数12以下、より好ましくは炭素数10以下、更に好ましくは炭素数9以下である。上記鎖状脂肪族基は1種のみでもよく、2種以上でもよい。
上記鎖状脂肪族基は、特に好ましくはn−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、及びイソデシル基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはn−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、及びイソノニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、最も好ましくはn−オクチル基、イソオクチル基、及び2−エチルヘキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
またポリイミド樹脂(A)は、耐熱老化性の観点から、末端アミノ基及び末端カルボキシ基以外に、炭素数5〜14の鎖状脂肪族基のみを末端に有することが好ましい。上記以外の基を末端に有する場合、その含有量は、好ましくは炭素数5〜14の鎖状脂肪族基に対し10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
ポリイミド樹脂(A)中の上記炭素数5〜14の鎖状脂肪族基の含有量は、ポリイミド樹脂(A)を解重合することにより求めることができる。
ポリイミド樹脂(A)の融点、ガラス転移温度は、いずれも示差走査型熱量計により測定することができる。
またポリイミド樹脂(A)は、結晶性、耐熱性、機械的強度、耐薬品性を向上させる観点から、示差走査型熱量計測定により、該ポリイミド樹脂を溶融後、降温速度20℃/分で冷却した際に観測される結晶化発熱ピークの熱量(以下、単に「結晶化発熱量」ともいう)が、5.0mJ/mg以上であることが好ましく、10.0mJ/mg以上であることがより好ましく、17.0mJ/mg以上であることが更に好ましい。結晶化発熱量の上限値は特に限定されないが、通常、45.0mJ/mg以下である。
ポリイミド樹脂(A)の融点、ガラス転移温度、結晶化発熱量は、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
μ=ln(ts/t0)/C
t0:濃硫酸の流れる時間
ts:ポリイミド樹脂溶液の流れる時間
C:0.5(g/dL)
ポリイミド樹脂(A)の重量平均分子量Mwは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を標準試料としてゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
ポリイミド樹脂(A)は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させることにより製造することができる。該テトラカルボン酸成分は少なくとも1つの芳香環を含むテトラカルボン酸及び/又はその誘導体を含有し、該ジアミン成分は少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含むジアミン及び鎖状脂肪族ジアミンを含有する。
鎖状脂肪族ジアミンは1種類あるいは複数を混合して使用してもよい。これらのうち、炭素数が8〜10の鎖状脂肪族ジアミンが好適に使用でき、特に1,8−オクタメチレンジアミン及び1,10−デカメチレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好適に使用できる。
前記モル比は、耐熱性の向上という観点からは、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、一方で結晶性を維持する観点からは、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下である。
また、前記モル比は、ポリイミド樹脂の着色を少なくする観点からは、好ましくは12モル%以下、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下、より更に好ましくは0モル%である。
中でも、末端封止剤としてはモノアミン類末端封止剤が好ましく、ポリイミド樹脂(A)の末端に前述した炭素数5〜14の鎖状脂肪族基を導入して耐熱老化性を向上させる観点から、炭素数5〜14の鎖状脂肪族基を有するモノアミンがより好ましく、炭素数5〜14の飽和直鎖状脂肪族基を有するモノアミンが更に好ましい。
末端封止剤は、特に好ましくはn−オクチルアミン、イソオクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ノニルアミン、イソノニルアミン、n−デシルアミン、及びイソデシルアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはn−オクチルアミン、イソオクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ノニルアミン、及びイソノニルアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、最も好ましくはn−オクチルアミン、イソオクチルアミン、及び2−エチルヘキシルアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
本発明に用いる連続強化繊維(B)の形態としては、例えばモノフィラメント又はマルチフィラメントを一方向又は交互に交差するように並べたもの、編織物等の布帛、不織布あるいはマット等の種々の形態が挙げられる。これらのうち、得られる複合材の電磁波シールド性能の観点、及び連続強化繊維(B)層を容易に形成する観点から、モノフィラメントを一方向又は交互に交差するように並べたもの、布帛、不織布又はマットの形態が好ましく、布帛の形態がより好ましい。
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。また、リグニンやセルロースなど、植物由来原料の炭素繊維も用いることができる。
連続強化繊維(B)の表面処理剤による処理量は、表面処理剤の種類、炭素繊維の形態等により適宜選択することができる。
ポリイミド樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂(A)以外のポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトンケトン樹脂等)、ポリベンゾイミダゾール樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。耐熱性向上の観点からはポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂(A)以外のポリイミド樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂が好ましく、耐薬品性向上の観点からはフッ素樹脂、靭性向上の観点からはポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、低吸水性の観点からは液晶ポリマー、難燃性向上の観点からはポリフェニレンサルファイド樹脂、成形性調整の観点からはポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
これらの熱可塑性樹脂はポリイミド樹脂(A)層とは別の熱可塑性樹脂層として積層してもよく、本発明の効果を阻害しない範囲で、ポリイミド樹脂(A)層に相溶又は非相溶の状態で含有させることもできる。
ポリイミド樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂を含有させる場合、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、その含有量には特に制限はない。
上記のうち、衝撃性改良剤としての微粉末としては、成分(A)からなるポリイミド樹脂粉末、成分(A)以外のポリイミド樹脂粉末、ポリエーテルイミド樹脂粉末、ポリエーテルスルホン樹脂粉末、反応性ポリエーテルスルホン樹脂粉末、ポリフェニレンサルファイド粉末、ポリエーテルケトン系樹脂粉末等の有機粉末が挙げられる。当該微粉末の平均粒子径に制限はないが、好ましくは0.1〜200μm、より好ましくは1〜100μm、更に好ましくは2〜50μmである。当該微粉末は、成形加工後に粒子が保持されていても溶融していてもよい。
可塑剤としては高耐熱性のものが好ましく、例えば、旭化成ワッカーシリコーン(株)製「GENIOPLAST Pellet S」等のシリコーン系可塑剤;ペンタエリスリトールテトラステアレート(例えば、Emery Oleochemicals製「LOXIOL VPG861」)等のポリオール脂肪酸エステル;等が挙げられる
上記添加剤の含有量には特に制限はないが、優れた電磁波シールド性能を維持する観点から、複合材中、通常、30質量%以下であり、好ましくは0.0001〜25質量%、より好ましくは0.001〜20質量%、更に好ましくは0.01〜20質量%である。
複合材の両表面とは、各層の積層方向に対し略垂直な上面及び下面である。
本発明の製造方法において、工程(I)では、少なくとも1層のポリイミド樹脂(A)層(以下、単に「(A)層」ともいう)と、少なくとも1層の連続強化繊維(B)層(以下、単に「(B)層」ともいう)とを積層し、積層物を得る。該積層物を後述する工程(II)に供して加熱加圧成形を行うことで、ポリイミド樹脂(A)を連続強化繊維(B)に含浸させ、複合材を製造する。
工程(I)において、少なくとも1層の(A)層と少なくとも1層の(B)層を積層する方法としては、例えば、事前にポリイミド樹脂(A)をフィルム、繊維等の形状に成形加工したものを用いて(B)層に積層する方法;(A)層をフィルム状、繊維状等の形状に溶融押し出ししながら(B)層上に直接積層していく方法;等が挙げられる。前者は、室温状態での精密な積層が可能となり、後者は製造工程を大幅に短縮することが可能となる。
ポリイミド樹脂(A)のフィルム又は繊維は、公知の方法により製造できる。ポリイミド樹脂(A)のフィルムの製造方法としては、例えば、ポリイミド樹脂(A)ペレットを製造した後、該ペレットを押出機より押し出して連続的にフィルムを成形する方法;ポリイミド樹脂(A)の粉末又はペレットを熱プレス機により成形する方法;等が挙げられる。ポリイミド樹脂(A)の繊維の製造方法としては、例えばポリイミド樹脂(A)ペレットから溶融紡糸により繊維を製造する方法等が挙げられる。
複合材に前述した添加剤を含有させる場合には、取り扱い性の観点、及び添加剤を均一に分散させる観点から、ポリイミド樹脂(A)層に添加剤を含有させることが好ましい。
工程(I)で用いる連続強化繊維(B)層の厚さは、優れた電磁波シールド性能を得る観点、及びポリイミド樹脂(A)の含浸性の観点から、好ましくは0.1〜1mm、より好ましくは0.15〜0.8mmである。
またポリイミド樹脂(A)層と連続強化繊維(B)層の合計積層数は、複合材が所望の厚さとなるよう適宜選択できるが、優れた電磁波シールド性能を得る観点、及び生産性の観点から、好ましくは2〜1000層、より好ましくは5〜400層、更に好ましくは9〜200層である。
(A)層と(B)層とを交互に積層する態様には、(A)層−(B)層−(A)層のように(A)層と(B)層を1層ずつ交互に積層する態様の他、(A)層−(A)層−(B)層−(A)層−(A)層のように、同一の層を2層以上重ねて、別の層と交互に積層する態様も含まれる。
また、工程(II)において加熱加圧成形を行う際にポリイミド樹脂(A)を連続強化繊維(B)に均一に含浸させる観点から、積層物の最上層及び最下層はポリイミド樹脂(A)層であることが好ましい。
一方、ポリイミド樹脂(A)層の形成においてポリイミド樹脂繊維を使用する場合には、特開2014−224333の内容を参酌することもできる。
工程(II)では、工程(I)で得られた前記積層物を、下記式(i)で表される加工パラメータXが35以上87以下となる条件で加熱加圧成形する。本発明の方法は工程(II)を有することで、前述の作用機構により、優れた電磁波シールド性能を有する複合材を製造できる。
X=(Tp−Tm)3×P1/2/1000 (i)
上記式(i)において、Tpは成形時の温度(℃)、Tmはポリイミド樹脂(A)の融点(℃)、Pは成形時のプレス圧力(MPa)である。
樹脂流出量(%)={(工程(I)で得られた積層物の質量(g))−(得られた複合材の質量(g))}÷(工程(I)で用いた樹脂の質量(g))×100
本発明においては、工程(II)の後に、系外に流出した余剰の熱可塑性樹脂を切削等により除去する工程を行うことが好ましい。
その他の工程としては、工程(I)と工程(II)との間、又は工程(II)の後に、複合材の両表面、あるいは片表面に金属シート、成分(A)以外のポリイミド樹脂からなるフィルム、液晶ポリエステル(LCP)フィルム等を圧着する工程を行ってもよい。また、工程(II)の後に、複合材の寸法安定性を向上させるため、さらに熱処理を行うこともできる。
さらに、例えば工程(II)の後に、さらなるシールド特性を付与するために複合体表面にシールド塗料を塗布する工程;複合材表面にレーザー、物理研磨、プレス等により細かな溝を刻み、他樹脂をインサート成形等で接合する工程;レーザー、物理研磨、プレス等により細かな溝を刻んだ金属や合金、熱硬化樹脂に対し、複合材を加熱圧着することで接合する工程;等を行うこともできる。
ポリイミド樹脂のIR測定は日本電子(株)製「JIR−WINSPEC50」を用いて行った。
ポリイミド樹脂を190〜200℃で2時間乾燥した後、該ポリイミド樹脂0.100gを濃硫酸(96%、関東化学(株)製)20mLに溶解したポリイミド樹脂溶液を測定試料とし、キャノンフェンスケ粘度計を使用して30℃において測定を行った。対数粘度μは下記式により求めた。
μ=ln(ts/t0)/C
t0:濃硫酸の流れる時間
ts:ポリイミド樹脂溶液の流れる時間
C:0.5g/dL
熱可塑性樹脂の融点Tm、ガラス転移温度Tg、結晶化温度Tc、及び結晶化発熱量ΔHmは、示差走査熱量計装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「DSC−6220」)を用いて測定した。
窒素雰囲気下、試料に下記条件の熱履歴を課した。熱履歴の条件は、昇温1度目(昇温速度10℃/分)、その後冷却(降温速度20℃/分)、その後昇温2度目(昇温速度10℃/分)である。加熱温度は室温から400℃までとした。
融点Tmは昇温2度目で観測された吸熱ピークのピークトップ値を読み取り決定した。ガラス転移温度Tgは昇温2度目で観測された値を読み取り決定した。結晶化温度Tcは冷却時に観測された発熱ピークのピークトップ値を読み取り決定した。
また結晶化発熱量ΔHm(mJ/mg)は冷却時に観測された発熱ピークの面積から算出した。
ポリイミド樹脂の半結晶化時間は、示差走査熱量計装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「DSC−6220」)を用いて測定した。
窒素雰囲気下、420℃で10分保持し、ポリイミド樹脂を完全に溶融させたのち、冷却速度70℃/分の急冷操作を行った際に、観測される結晶化ピークの出現時からピークトップに達するまでにかかった時間を計算した。なお表1中、半結晶化時間が20秒以下である場合は「<20」と表記した。
ポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、昭和電工(株)製のゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)測定装置「Shodex GPC−101」を用いて下記条件にて測定した。
カラム:Shodex HFIP−806M
移動相溶媒:トリフルオロ酢酸ナトリウム2mM含有HFIP
カラム温度:40℃
移動相流速:1.0mL/min
試料濃度:約0.1質量%
検出器:IR検出器
注入量:100μm
検量線:標準PMMA
複合材及びその作製に使用した部材の厚さは、マイクロメータ((株)ミツトヨ製「Mitsutoyo ABSOLUTE 547−401」)を用いて測定した。
各例の複合材作製における樹脂流出量は、下記式より算出した。
樹脂流出量(%)={(工程(I)で得られた積層物の質量(g))−(得られた複合材の質量(g))}÷(工程(I)で用いた樹脂の質量(g))×100
各例で作製し、次いで切削加工して得られた複合材の断面をデジタル顕微鏡((株)キーエンス製「VHX−6000」)を用いて、倍率500倍の条件で観察し、ボイドの有無を下記基準で評価した。
A:炭素繊維同士の隙間に樹脂成分が十分に含浸されており、ボイド(黒い影)が観察されない。
B:炭素繊維同士の隙間に樹脂成分が含浸されているが、ボイドが部分的に観察される。
C:炭素繊維同士の隙間の大部分にボイドが観察される。
各例で作製した328mm×328mmの平板状の繊維強化複合材を300mm×300mmに切削加工した。この複合材を用いて、国際電気電子工業会IEEE−Std−299の規格に基づき、KEC法により、下記条件で電界及び磁界のシールド性能(dB)を測定した。
(測定条件)
使用装置:東陽テクニカ製 シールド材料透過損失測定システム「JSE−KEC」(一般社団法人KEC関西電子工業振興センターなどで開発したシールド材料評価測定装置)
測定雰囲気:23℃、50%R.H.
測定周波数:1〜1000MHz
シールド性能(dB)=20×log({複合材がある状態での電界(又は磁界)強度}/{複合材がない状態での電界(又は磁界)強度})
また表3に示す「平均シールド性能」とは、測定周波数1〜1000MHzにおけるシールド性能(dB)の平均値である。
ディーンスターク装置、リービッヒ冷却管、熱電対、4枚パドル翼を設置した2Lセパラブルフラスコ中に2−(2−メトキシエトキシ)エタノール(日本乳化剤(株)製)500gとピロメリット酸二無水物(三菱ガス化学(株)製)218.12g(1.00mol)を導入し、窒素フローした後、均一な懸濁溶液になるように150rpmで撹拌した。一方で、500mLビーカーを用いて、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学(株)製、シス/トランス比=7/3)49.79g(0.35mol)、1,8−オクタメチレンジアミン(関東化学(株)製)93.77g(0.65mol)を2−(2−メトキシエトキシ)エタノール250gに溶解させ、混合ジアミン溶液を調製した。この混合ジアミン溶液を、プランジャーポンプを使用して徐々に加えた。滴下により発熱が起こるが、内温は40〜80℃に収まるよう調整した。混合ジアミン溶液の滴下中はすべて窒素フロー状態とし、撹拌翼回転数は250rpmとした。滴下が終わったのちに、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール130gと、末端封止剤であるn−オクチルアミン(関東化学(株)製)1.284g(0.010mol)を加えさらに撹拌した。この段階で、淡黄色のポリアミド酸溶液が得られた。次に、撹拌速度を200rpmとした後に、2Lセパラブルフラスコ中のポリアミド酸溶液を190℃まで昇温した。昇温を行っていく過程において、液温度が120〜140℃の間にポリイミド樹脂粉末の析出と、イミド化に伴う脱水が確認された。190℃で30分保持した後、室温まで放冷を行い、濾過を行った。得られたポリイミド樹脂粉末は2−(2−メトキシエトキシ)エタノール300gとメタノール300gにより洗浄、濾過を行った後、真空乾燥機で90℃、10時間乾燥を行い、317gのポリイミド樹脂1の粉末を得た。
ポリイミド樹脂1のIRスペクトルを測定したところ、ν(C=O)1768、1697(cm−1)にイミド環の特性吸収が認められた。対数粘度は1.30dL/g、Tmは323℃、Tgは184℃、Tcは266℃、結晶化発熱量は21.0mJ/mg、半結晶化時間は20秒以下、Mwは55,000であった。
・PMDA;ピロメリット酸二無水物
・1,3−BAC;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン
・OMDA;1,8−オクタメチレンジアミン
<ポリイミド樹脂フィルムの作製>
製造例1で得られたポリイミド樹脂1の粉末を、二軸混練押出機「TEM58SX」(芝浦機械(株)製)を用いてバレル温度250〜330℃、スクリュー回転数100rpmで押し出した。押出機より押し出されたストランドを空冷後、ペレタイザー((株)星プラスチック製「ファンカッターfcwn30−12」)によってペレット化した。
得られたペレットを、160℃に加熱した熱風乾燥機で12時間乾燥させた後、幅900mmのTダイスを備えたΦ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練した。この際に、単軸押出機の温度は340〜355℃、Tダイスの温度は355℃とした。溶融混練したポリイミド樹脂1を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して、150℃に加熱された冷却ロールにて冷却させたのち、巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅650mm、厚さ0.05mmのフィルムを製造した。フィルムをカッターにより切断し、ポリイミド樹脂1からなる328mm×328mm×0.05mm厚のフィルムを作製した。
前記ポリイミド樹脂フィルムを2枚重ねて載置し、そのフィルム上に炭素繊維織物(東レ(株)製「CO6343」、T300平織りクロス、縦糸及び横糸のフィラメント数:3K、織物重量:198g/m2、0.25mm厚、4ply)を328mm×328mmに切断したものを積層した。この上にポリイミド樹脂フィルム2枚及び炭素繊維織物1枚を交互に積層し、最後にポリイミド樹脂フィルムを2枚積層して、ポリイミド樹脂フィルムを合計20枚、炭素繊維織物を合計9枚積層した積層物を得た(工程(I))。
この積層物を、熱プレス装置((株)小平製作所製)を使用して、プレス機温度(Tp)355℃、プレス圧(P)3MPa、プレス時間900秒の条件で加熱加圧成形した(工程(II))。冷却後、バリを含んだ端部をダイアモンドカッターにて切断し、両表面がポリイミド樹脂1で構成された300mm×300mm×厚さ2mmの平板状の繊維強化複合材を作製した。
この複合材を用いて、前述した各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、表2に示す実施例1−1〜1−3は、同一条件で複合材を5個作製し、樹脂流出量がそれぞれ中央値、最小値、及び最大値となった複合材の評価結果を示したものである。また、実施例1−1で作製した平板状の複合材を用いて、前記方法でシールド性能を評価した。結果を表3に示す。
実施例1−1〜1−3において、ポリイミド樹脂フィルム及び炭素繊維織物の積層数、並びに成形条件を表2に記載の通り変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で平板状の複合材を作製し、前述した各種評価を行った。結果を表2に示す。実施例2及び3の樹脂流出量については、n=3の平均値を示した。なお、比較例1で作製した平板状の複合材を用いて、前記方法でシールド性能を評価した。結果を表3に示す。
実施例1において、ポリイミド樹脂フィルムに替えてポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)フィルム(信越ポリマー(株)製「Shin−Etsu Sepla Film」、328mm×328mm×0.05mm厚、PEEKの融点:343℃、Tg:143℃)を用い、プレス機温度(Tp)を380℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で複合材を作製し、各種評価を行った。結果を表2に示す。なお、比較例4で作製した平板状の複合材を用いて、前記方法でシールド性能を評価した。結果を表3に示す。
実施例1−1〜1−3に記載の方法と同様の方法で、ポリイミド樹脂1からなる350mm×145mm×0.05mm厚のフィルムを作製した。
このポリイミド樹脂フィルムを2枚重ねて載置し、該フィルム上に炭素繊維織物(東レ(株)製「CO6343」、T300平織りクロス、縦糸及び横糸のフィラメント数:3K、織物重量:198g/m2、0.25mm厚、4ply)を350mm×145mmに切断したものを積層した。この上にポリイミド樹脂フィルム1枚及び炭素繊維織物1枚を交互に積層し、最後にポリイミド樹脂フィルムを2枚積層して、ポリイミド樹脂フィルムを合計12枚、炭素繊維織物を合計9枚積層した積層物を得た(工程(I))。
この積層物を、熱プレス装置((株)小平製作所製)にてハット型の金型を使用して、プレス機温度(Tp)355℃、プレス圧(P)5MPa、プレス時間900秒の条件で加熱加圧成形した(工程(II))。冷却後、バリを含んだ端部をダイアモンドカッターにて切断し、両表面がポリイミド樹脂1で構成されたハット状の繊維強化複合材100を得た。得られた複合材100を用いて、前述した各種評価を行った。結果を表2に示す。
図1は実施例4で得られたハット状の繊維強化複合材100の形状を示す断面模式図であり、図2はその斜視図である。図1におけるaは15mm、bは25mm、cは40mm、eは70mmであり、図2におけるLは300mmである。また複合材の厚さdは表1に示した。
実施例1で作製した328mm×328mm×0.1mm厚のポリイミド樹脂フィルムを用いて、前記方法でシールド性能を評価した。結果を表3に示す。
なお参考例1に示すように、ポリイミド樹脂(A)層単独では十分なシールド性能が得られないことを確認した。
Claims (4)
- 下記式(1)で示される繰り返し構成単位及び下記式(2)で示される繰り返し構成単位を含み、該式(1)の繰り返し構成単位と該式(2)の繰り返し構成単位の合計に対する該式(1)の繰り返し構成単位の含有比が20〜70モル%のポリイミド樹脂(A):
(R1は少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含む炭素数6〜22の2価の基である。R2は炭素数5〜16の2価の鎖状脂肪族基である。X1及びX2は、それぞれ独立に、少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6〜22の4価の基である。)、及び、
連続強化繊維(B)を含有する繊維強化複合材の製造方法であって、
下記工程(I)及び工程(II)を順に有する、繊維強化複合材の製造方法。
工程(I):少なくとも1層のポリイミド樹脂(A)層と、少なくとも1層の連続強化繊維(B)層とを積層し、積層物を得る工程
工程(II):前記積層物を、下記式(i)で表される加工パラメータXが35以上87以下となる条件で加熱加圧成形する工程
X=(Tp−Tm)3×P1/2/1000 (i)
上記式(i)において、Tpは成形時の温度(℃)、Tmはポリイミド樹脂(A)の融点(℃)、Pは成形時のプレス圧力(MPa)である。 - 前記連続強化繊維(B)を構成する強化繊維が炭素繊維である、請求項1に記載の繊維強化複合材の製造方法。
- 前記工程(II)の加熱加圧成形における樹脂流出量が1.0〜5.0%である、請求項1又は2に記載の繊維強化複合材の製造方法。
- 前記繊維強化複合材中の連続強化繊維(B)の含有量が20〜80質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維強化複合材の製造方法。
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