以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。
(多連硬貨投出装置1の構成)
本発明の一実施形態に係る多連硬貨投出装置1の全体の概略構成を図1に示す。また、多連硬貨投出装置1の硬貨貯留容器120を取り外した状態を図2に、そのシャーシ11の内部に設けられた駆動機構20及び切換ユニット40の概略構成を図3に、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の構成を図4にそれぞれ示す。
本実施形態に係る多連硬貨投出装置1は、図1に示すように、大きく分けて、ベース部10と硬貨投出部100から構成されている。ベース部10は、略直方体状のシャーシ11を備えており、シャーシ11の略矩形の上面が設置面11aとされている。多連硬貨投出装置1は、設置面11aがほぼ水平になるように設置される。
硬貨投出部100は、第1〜第4の硬貨投出ユニット110と、それら4つの硬貨投出ユニット110にそれぞれ装着された硬貨貯留容器120と、各々の硬貨貯留容器120の上部開口を覆う蓋(図示せず)とを備えている。硬貨投出部100を構成する第1〜第4の硬貨投出ユニット110は、設置面11aの長辺に平行な1つの直線に沿って相互に隣接して配置されており、また、設置面11a上に係脱可能に係止されている。シャーシ11の一方の端部には、各々の硬貨投出ユニット110を駆動して硬貨の投出を実行する第1モータM1が固定されている。第1モータM1は、その回転軸(図示せず)が設置面11aと直交するように配置されている。第1モータM1の制御、すなわち、その回転の開始と停止、回転の方向(正転方向及び逆転方向)の切換は、図示しない制御装置によって実行される。
第1モータM1としては、各々の硬貨投出ユニット110(の回転ディスク)を駆動して所定の硬貨投出を実行するために必要な回転駆動力を持つものであれば、公知の任意のモータが利用可能である。
以下の説明では、4つの硬貨投出ユニット110は、第1モータM1に最も近い位置にある硬貨投出ユニット110を第1硬貨投出ユニットと呼称し、第1モータM1から離れる方向に順に並んでいる3つの硬貨投出ユニット110をそれぞれ、第2、第3及び第4の硬貨投出ユニットと呼称する。
第1〜第4の硬貨投出ユニット110は、所定の4金種(例えば日本円の500円、100円、50円及び10円)にそれぞれ割り当てられている。このため、各々の硬貨投出ユニット110の硬貨貯留容器120には、該当する金種の硬貨が貯留されるようになっている。各々の硬貨投出ユニット110は、上位装置(例えば硬貨入出金機)から送られる払出指令に応じて、硬貨貯留容器120に貯留されている該当する金種の硬貨を外部に1枚ずつ投出する。
第1〜第4の硬貨投出ユニット110は、いずれも同じ構成を有しており、図2及び図5に示すように、板状の本体111と、本体111に回転可能に装着された回転ディスク112とを備えている。設置面11aはほぼ水平であるから、回転ディスク112はほぼ水平な平面内で回転する。回転中の回転ディスク112の4つの透孔のいずれかに、硬貨貯留容器120から落下して来た該当する金種の硬貨が嵌入されると、当該硬貨は、回転ディスク112の回転に伴う慣性力によって、前記透孔から放り出され、本体111の後端部に設けられた投出口113から外部に投出される。なお、投出時には、当該硬貨は、投出口113の近傍に設けられた硬貨ガイド116に当接して、その投出方向が所定方向に制御されるようになっている。回転ディスク112に形成される透孔の数は4に限定されず、それ以外の数でもよいことは言うまでもない。すべての金種に対して同じ構成(透孔数が同じ)回転ディスク112を使用する必要もなく、金種に応じて異なる構成の回転ディスク112を使用可能である。
各々の回転ディスク112は、本体111の内部に回転可能に支持された、ほぼ垂直方向に延在する回転軸115の上端に係止されている。図4に示すように、各々の回転軸115の下端には、カップリングギヤ114が固定されていて、カップリングギヤ114と回転ディスク112は回転軸115と共に一体的に回転するようになっている。したがって、カップリングギヤ114もほぼ水平な平面内で回転する。
シャーシ11の内部には、図3に示すように、第1モータM1の回転駆動力を伝達することによって、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の回転ディスク112を回転駆動する駆動機構20と、第1モータM1による回転駆動力の伝達先を切り換えることによって、第1〜第4の硬貨投出ユニット110のいずれか1つを選択的に駆動する切換ユニット40とが、設けられている。
駆動機構20の構成は、図3及び図6〜図9に示されているとおりであり、シャーシ11の長辺に沿ってほぼ直線状に配置された複数のギヤを有している。すなわち、駆動機構20は、第1モータM1の回転軸に固定された駆動ギヤ21と、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の回転軸115の下端にそれぞれ固定された被動ギヤ23、25、27及び29と、駆動ギヤ21と第1硬貨投出ユニット110の被動ギヤ23の間に回転可能に配置された中間ギヤ22と、第1硬貨投出ユニット110の被動ギヤ23と第2硬貨投出ユニット110の被動ギヤ25の間に回転可能に配置された中間ギヤ24と、第2硬貨投出ユニット110の被動ギヤ25と第3硬貨投出ユニット110の被動ギヤ27の間に回転可能に配置された中間ギヤ26と、第3硬貨投出ユニット110の被動ギヤ27と第4硬貨投出ユニット110の被動ギヤ29の間に回転可能に配置された中間ギヤ28とを備えている。
被動ギヤ23、25、27及び29と中間ギヤ22、24、26及び28は、いずれも、設置面11aに平行な平面(つまり、ほぼ水平な平面)内にあり、設置面11aの長辺に平行な前記直線(それに沿って第1〜第4の硬貨投出ユニット110が並んでいる)に沿って配置されている。被動ギヤ23、25、27及び29と中間ギヤ22、24、26及び28は、それぞれ、シャーシ11の内部で回転可能に支持された、対応する8本の回転軸(図示せず)と一体的に回転可能である。駆動機構20の構成から容易に分かるように、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の被動ギヤ23、25、27及び29は、いずれも駆動ギヤ21と同じ方向に回転せしめられる。
第1〜第4の硬貨投出ユニット110の被動ギヤ23、25、27及び29の上面(上上位側面)には、図6〜図9に示すように、カップリングギヤ30、31、32及び33(第2カップリングギヤ)がそれぞれ固定されている。これらのカップリングギヤ30、31、32及び33は、それぞれ、対応する被動ギヤ23、25、27及び29と一体的に回転する。また、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の4つのカップリングギヤ114(第1カップリングギヤ)は、それぞれ、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の回転軸115にそれぞれ固定された4つのカップリングギヤ114(図4及び図13参照)と、係脱可能に噛合するようになっている。4つのカップリングギヤ30、31、32及び33とそれらに対応する4つのカップリングギヤ114は、切換ユニット40により、必要に応じて選択的に噛合せしめられ、あるいは、その噛合が選択的に解除される。そして、その選択的な噛合及び噛合解除によって、第1モータM1の駆動力の伝達先としての第1〜第4の硬貨投出ユニット110が選択的に切り換えられる。
切換ユニット40の構成は、図6〜図9に示されているとおりであり、複数の薄板材を組み合わせて構成された略直棒状のフレーム42と、フレーム42に回転可能に支持され且つ4つのカム44及び4つの検出片45が固定されたカムシャフト43と、フレーム42に支持され且つカムシャフト43を駆動する第2モータM2とを有している。フレーム42とカムシャフト43は、互いに平行であって、前記直線(それに沿って第1〜第4の硬貨投出ユニット110が並んでいる)に沿って延在している。フレーム42及びカムシャフト43の全長は、被動ギヤ23、25、27及び29と中間ギヤ22、24、26及び28を包含するスペースの全長とほぼ同じである。第2モータM2の回転軸(図示せず)に固定された駆動ギヤ50は、カムシャフト43のそれに対向する位置に固定された被動ギヤ51と噛合しており(図8参照)、第2モータM2の回転駆動力によってカムシャフト43が回転駆動されるようになっている。
フレーム42は、その全長にわたって延在する帯状のフレーム本体42aと、フレーム本体42aの両端部と中央部にそれぞれ突出形成された合計4本の支持部42bとを備えている。両端部にある2つの支持部42bには、それぞれ支持シャフト41が固定されている。2本の支持シャフト41は、フレーム42の外部において、フレーム42及びカムシャフト43の延在方向に突出しており、シャーシ11の内部に固定された2つの支持部材(図示せず)によって、それぞれ、回動可能に支持されている。このため、フレーム42の全体がその両端にある2つの支持シャフト41の周りに揺動可能である。このフレーム42の揺動に伴い、カムシャフト43も2つの支持シャフト41の周りに揺動して変位する。第2モータM2は、カムシャフト43とフレーム本体42aの間において中間ギヤ24にほぼ対向する位置に配置されており、フレーム本体42aの内面に固定されている。
本実施形態では、カムシャフト43は、2つのシャフト部材43aをその中間部に配置された継手43bで相互に連結して形成されている。一方のシャフト部材43aは、フレーム本体42aの右側にある2本の支持部42bに回動可能に支持され、他方のシャフト部材43aは、フレーム本体42aの左側にある2本の支持部42bに回動可能に支持されている。しかし、これは組立の容易化を考慮したためであるから、カムシャフト43を単一のシャフト部材から形成してもよいことは言うまでもない。
第2モータM2としては、公知のサーボモータやステッピングモータが利用可能であるが、これに限定されるわけではない。カムシャフト43の回転位置(回転角度)を精密に制御できるものであれば、任意のモータを使用できることは言うまでもない。
図示しない制御装置による第2モータM2の回転の開始と停止、回転の方向(正転方向及び逆転方向)の切換は、カムシャフト43上での4つのカム44の配置に応じて適宜、調整が可能である。例えば、第2モータM2は、通常は、正転方向及び逆転方向の2方向の回転が可能とされるが、一方向のみ(正転方向または逆転方向)に回転するようにしてもよい。
カムシャフト43に固定された4つのカム44は、それぞれ、第1〜第4の硬貨投出ユニット110用に設けられている。これらのカム44は、いずれも同じ形状、同じ大きさであり、各々の角を丸めた略二等辺三角形の形状(いわゆる三角おむすび形に近い)を持つ所定厚みの部材から形成されている。これら4つのカム44は、図6から分かるように、相互に位相を90°ずつシフトさせて固定されているが、これは、カムシャフト43の回転位置(回転角度)を変えることによって、第1モータM1の駆動力の伝達先である第1〜第4の硬貨投出ユニット110を選択的に切り換えられるようにするためである。
4つのカム44は、第1〜第4の硬貨投出ユニット110用に設けられた被動ギヤ23、25、27及び29にそれぞれ係合せしめられた4つのカムフォロア48(図7及び図8参照)と、協働するようになっている。
4つのカムフォロア48は、それぞれ、対応する被動ギヤ23、25、27及び29を上下方向に変位させる機能を持つ。これら4つのカムフォロア48は、いずれも、同じ形状、同じ大きさであり、図10に示すような構成である。すなわち、各々のカムフォロア48は、全体形状が略Y字形であり、カム受け部48aと分岐部48bとから構成されている。カム受け部48aは、対応するカム44と接触してそれを受け止める部位である。分岐部48bは、対応する被動ギヤ23、25、27及び29に装着された係合部材と係合する部位である。カム受け部48aと分岐部48bの境界付近には、軸孔48cが形成されており、対応するカム44の突端によってカム受け部48aが押し下げられると、この軸孔48cに嵌合される支持軸48f(図12(a)参照)の周りにカムフォロア48が揺動して、分岐部48bが押し上げられるようになっている。対応するカム44の突端によるカム受け部48aの押し下げ力がなくなると、カムフォロア48は、その直下に配置されたバネ47の弾性力によって元の位置に復帰する。つまり、カム受け部48aへの押し下げ力の有無に応じて、カムフォロア48は、支持軸48f(軸孔48c)の周りにシーソーのように揺動するのである。
カムフォロア48の分岐部48bを形成する2つの腕部の先端には、それぞれ、内向きにピン48dが固定されており、それらピン48dにはそれぞれローラ48eが回転可能に係合されている。ローラ48eが配置されているのは、カムフォロア48と係合されている対応する被動ギヤ23、25、27及び29の係合部材との係合動作を円滑にするためである。
図11に、カムフォロア48の分岐部48bが係合される、第1硬貨投出ユニット110用の被動ギヤ23に装着された係合部材23aと、カップリングギヤ30の構成例を示す。
図11から分かるように、被動ギヤ23の上位側面(上面)には、被動ギヤ23より少し小さい直径のカップリングギヤ30が、被動ギヤ23と同心となるように固定されており、その下位側面(下面)には略円筒形の係合部材23aが突出状態で固定されている。係合部材23aは、被動ギヤ23と同心となるように固定されており、その下端には鍔部23aaが突出形成されている。鍔部23aaは、カムフォロア48の分岐部48bの一方の係合面を形成しており、係合部材23aの被動ギヤ23の下位側面と鍔部23aaの間の部分に、分岐部48bが挿入・係合されている。被動ギヤ23の下位側面が、他方の係合面を形成する。係合部材23aの軸孔23bは、対応する被動ギヤ23及びカップリングギヤ30の軸孔と同心である。カムフォロア48の分岐部48bの先端に装着された2つのローラ48eは、対応する被動ギヤ23の下位側面(上位係合面)と鍔部23aa(下位係合面)に挟まれた部位に係合されており、カムフォロア48の分岐部48bが上下に揺動する際に転動して、被動ギヤ23ひいてはカップリングギヤ30が連結位置と非連結位置の間を円滑に移動するようにする。
被動ギヤ25、27及び29についても同様である。図7に示すように、被動ギヤ25、27及び29の下位側面(下面)には、それぞれ、略円筒形の係合部材25a、27a及び29aが突出状態で固定されている。
本実施形態では、被動ギヤ23の上位側面(上面)に固定されたカップリングギヤ30は、図11に示すように、その一方の側面(ここでは上位側面)にその円形の外周縁に沿って、複数の歯30aが等間隔で形成されたギヤとされている。隣接する2つの歯30aの間には、溝30bが形成されている。カップリングギヤ30の中心の軸孔30cは、その直下の被動ギヤ23の軸孔と同心とされている。
カムフォロア48とそれに対応する係合部材23aの係合状態を図12に示す。カムフォロア48は、その軸孔48cに嵌合された支持軸48fの周りに揺動可能であり、カムフォロア48の揺動によって、カップリングギヤ30(第2カップリングギヤ)とそれに対応するカップリングギヤ114(第1カップリングギヤ)とが連結状態と非連結状態の間で切り換えられるようになっている。図12(a)では、対応するカム44の突端(カム44のカムシャフト43から最も大きく突出している部位)がカム受け部48aを少し押し下げており、それに応じて分岐部48bが少し押し上げられていて、それによって、被動ギヤ23とカップリングギヤ30が少し押し上げられている。この状態では、カップリングギヤ30は、対応するカップリングギヤ114に噛合せしめられている、すなわち、カップリングギヤ30は連結状態にある。これに対し、対応するカム44が回動してその突端がカム受け部48aから外れると、図12(b)のように、カム受け部48aがその直下に設けられたバネ47(例えば図7参照)の弾性力によって上向きに少し変位(元の位置に復帰)し、それに応じて、被動ギヤ23とカップリングギヤ30は、下向きに少し変位(元の位置に復帰)する。この状態では、カップリングギヤ30は、対応するカップリングギヤ114と噛合していない、すなわち、カップリングギヤ30は非連結状態にある。
上述したバネ47のカム受け部48aとは反対側の端部は、シャーシ11の内部においてバネ47の直下に設けられた支持構造(図示せず)によって支持されている。このため、カム受け部48aにはバネ47の弾性力が常時、印加されており、したがって、カム受け部48aは所定の上位位置に、分岐部48bは所定の下位位置に維持されるのである。よって、カップリングギヤ30は、分岐部48bが対応するカム44の突端によって押し下げられた時を除いて、前記下位位置すなわち「非連結位置」にある。分岐部48bが対応するカム44の突端によって押し下げられると、カップリングギヤ30は前記上位位置すなわち「連結位置」に移動する。その押し下げがなくなると、「非連結位置」に自動的に復帰する。このように、カム44を回動させるだけで、カムフォロア48を介して、対応するカップリングギヤ30を「連結位置」と「非連結位置」の間で切り換えることが可能である。
カップリングギヤ30に対応するカップリングギヤ114の構成例を図13に示す。図13の構成例では、カップリングギヤ114は、その一方の側面(ここでは下位側面)にその円形の外周縁に沿って、複数の歯114aが等間隔で形成されたギヤとされている。隣接する2つの歯114aの間には、溝114bが形成されている。カップリングギヤ114の中心の軸孔114cは、連結時に対応するカップリングギヤ30の軸孔と同心となるようにされている。カップリングギヤ114の複数の歯114aと複数の溝114bは、対応するカップリングギヤ30の複数の溝30bと複数の歯30aと噛合可能であり、両者が噛合状態(連結時)になると、カップリングギヤ30の駆動力が対応するカップリングギヤ114に伝達され、その結果、当該カップリングギヤ114に連結された硬貨投出ユニット110の回転ディスク112が回転駆動されて、該当する硬貨が投出される。
図13の構成例では、カップリングギヤ114の歯114a及び溝114bが形成された側面とは反対側の側面(ここでは上位側面)が、係合面114gとされている。係合面114gは、後述する不要回転防止機構80の不要回転防止部材117の係合部117bが係合せしめられる面であり、係合面114gの外周縁(カップリングギヤ114の回転方向)に沿って、複数の係止孔114dが等間隔に形成されている。これらの係止孔114dの各々は、係合面114gの外周縁に沿った方向の2つの端部のうち、一方の端部114e(正転方向の端部)が垂直面とされ、他方の端部114f(正転方向とは逆方向の端部)が傾斜面とされている。つまり、各係止孔114dの係合面114gの外周縁方向の一方の端部は垂直端部114eとされ、他方の端部は傾斜端部114fとされているのである。各係止孔114dに、係合面114gの外周縁方向に垂直端部114eと傾斜端部114fを設けているのは、垂直端部114eと傾斜端部114fを持つ係止孔114dに不要回転防止部材117の係合部117bを係合させることによって、ワンウェイクラッチ119としての機能を実現し、カップリングギヤ114が非連結状態にあるときに、カップリングギヤ114が意図しない空転(正転)を起こして、望まない硬貨投出という現象が生じるのを防止するためである。
カップリングギヤ114の、垂直端部114eと傾斜端部114fを持つ係止孔114dを利用したワンウェイクラッチ119についての詳細については後述する(図23〜図29参照)。
第2モータM2によって回転駆動される、4つのカム44が固定されたカムシャフト43と、4つのカップリングギヤ114にそれぞれ係合された、対応するカム44によって変位せしめられる4つのカムフォロア48は、カップリングギヤ変位機構60を構成する。カップリングギヤ変位機構60は、カップリングギヤ30、31、32及び33(第2カップリングギヤ)を所定の「連結位置」と「非連結位置」の間で変位させる。「連結位置」では、カップリングギヤ30、31、32及び33(第2カップリングギヤ)が対応する4つのカップリングギヤ114(第1カップリングギヤ)とそれぞれ噛合・連結される。「非連結位置」では、カップリングギヤ30、31、32及び33と対応する4つのカップリングギヤ114との噛合がいずれも解除され、非連結となる。
上述したようにして、切換ユニット40のカップリングギヤ変位機構60により、カップリングギヤ30とそれに対応するカップリングギヤ114との噛合状態(連結状態)と非噛合状態(非連結状態)の切換が行われるが、その切換状況、換言すれば、第1〜第4の硬貨投出ユニット110のいずれが連結状態にあり、いずれが非連結状態にあるか、を検出するために、4つの検出片45と4つの光学センサ46が切換ユニット40に設けられている。4つの検出片45と4つの光学センサ46は、第1〜第4の硬貨投出ユニット110にそれぞれ対応して設けられている。
光学センサ46としては、公知の赤外線センサ等が任意に使用可能であるが、光学センサ以外のセンサとしてもよい。第1〜第4の硬貨投出ユニット110の連結・非連結を検出できるセンサであれば足りる。4つの検出片45は、ここでは、いずれも同じ形状及び大きさであり、例えば図6に明瞭に示すように、相互に間隔をあけてカムシャフト43に固定されている。
本実施形態では、各々の検出片45は、円環状部材の一部に突起が形成された構成を持っており、円環状部材の中心部の透孔にカムシャフト43(シャフト部材43a)を挿通させて、所望の位置に固定するようになっている。各々の検出片45に対応する光学センサ46は、いずれも同じ構成及び機能であり、対応する検出片45に対向する位置においてフレーム本体42aの内面に固定されている。また、各々の光学センサ46は、その発光部と受光部の間に隙間が設けられており、対応する検出片45の突起がその隙間内に入ると、前記発光部から前記受光部に向けて照射される赤外線が当該突起によって遮断されるため、当該突起が当該センサ46に到達したことが検出される。これにより、該当するカップリングギヤ30とそれに対応するカップリングギヤ114とが噛合状態(連結状態)にあると判断される。そして、その状態を維持する必要がある場合は、当該突起の当該センサ46への到達が検出されると同時に、第2モータM2の回転駆動が停止される。こうして、該当するカップリングギヤ30とそれに対応するカップリングギヤ114とが噛合状態(連結状態)に設定される。この状態にある時に限り、硬貨投出ユニット110から同ユニット110に貯留されている所定金種の硬貨が投出される。前記赤外線が遮断されない時は、該当するカップリングギヤ30とそれに対応するカップリングギヤ114とが非噛合状態(非連結状態)にあると判断される。
本実施形態では、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の全てに対して第1モータM1による駆動力が伝達されない状態に設定可能とされている。第1〜第4の硬貨投出ユニット110のうちのいずれか1つに対して第1モータM1による駆動力が伝達される(該当する硬貨投出ユニット110から硬貨が投出される)状態を「動作モード」と呼ぶとすれば、第1〜第4の硬貨投出ユニット110のいずれに対しても第1モータM1による駆動力が伝達されないモードは、「非動作モード」と呼ぶことができる。「非動作モード」では、図21に示すように、第1〜第4の硬貨投出ユニット110がいずれも駆動機構20から切り離されるため、図22に示すように、第1〜第4の硬貨投出ユニット110のうちのいずれか必要なものを設置面11aに沿ってスライドさせることで、容易にシャーシ11から取り外したり交換したりすることが可能となる、という利点がある。
本実施形態では、「動作モード」から「非動作モード」への移行は、図14に示すように、シャーシ11の前側面に回動可能に設けられたレバー52を操作することで実現される。すなわち、レバー52は、シャーシ11に固定された揺動軸55の周りに揺動可能となっており、レバー52の裏面に固定された作用片53が、レバー52の揺動に伴って下向きに変位するように構成されている。レバー52の真裏には、フレーム回動部材54がレバー52と重なるようにフレーム本体42aに固定されているため、レバー52の揺動に伴ってフレーム回動部材54が押し下げられる。すると、フレーム42の全体がその両端にある支持シャフト41の周りに、前方に向かって少し揺動するため、フレーム42に支持されているカムシャフト43が少し上方に変位して、4つのカム44とそれらに対応する4つのカムフォロア48のカム受け部48aとの距離が増大する。その結果、図7に明瞭に示すように、各々のカム受け部48aの直下に配置されたバネ47の弾性力によって、全てのカムフォロア48の分岐部48bが下降するため、それらカムフォロア48が係合された4つの被動ギヤ23、25、27及び29と4つのカップリングギヤ30、31、32及び33が一緒に下降する。こうして、4つのカム44の突端の位置がどこにあっても、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の全てに対して第1モータM1による駆動力が伝達されなくなり、「非動作モード」への移行が完了する。レバー52を上方に押し上げて元の位置に戻せば、容易に「動作モード」に復帰させることができる。
シャーシ11に固定された揺動軸55の周りに揺動可能なレバー52と、レバー52の裏面に固定された作用片53と、レバー52の真裏においてフレーム本体42aに固定されたフレーム回動部材54とは、切換ユニット40を駆動機構20に対して相対的に変位させる切換ユニット変位機構70を構成する。レバー52は、切換ユニット変位機構70の操作部材として機能し、作用片53及びフレーム回動部材54は、切換ユニット変位機構70の移動部材として機能する。切換ユニット変位機構70は、切換ユニット40を用いて第1モータM1の駆動力を硬貨投出ユニット110のうちの1つに選択的に伝達できる「接続位置」と、第1モータM1の駆動力を第1〜第4の硬貨投出ユニット110のすべてに伝達できない「分離位置」との間で、切換ユニット40を駆動機構20に対して相対的に変位させる。したがって、切換ユニット変位機構70が「接続位置」にある時には、多連硬貨投出装置1は上述した「動作モード」にあることになる。他方、切換ユニット変位機構70が「分離位置」に移動すると、多連硬貨投出装置1は上述した「非動作モード」に移行する。切換ユニット変位機構70が「接続位置」に復帰すると、多連硬貨投出装置1は「動作モード」に復帰する。
切換ユニット変位機構70によって切換ユニット40の所望の変位を実現する動作は、上述したように、すべて機械的な構造と機能だけを用いて実現されるため、多連硬貨投出装置1の制御装置による電子的制御は一切不要である。このため、所望の硬貨投出ユニット110をシャーシ11から取り外して点検したり、新規な硬貨投出ユニット110に交換したりする際に、前記制御装置に所定の信号を送って、第1モータM1の駆動力の硬貨投出ユニット110への伝達を遮断したり再接続したりする制御を行う必要がない。しかも、切換ユニット変位機構70は、シンプル且つ低コストで製造可能であり、また、動作の不具合が生じにくく耐久性にも優れているものである。
なお、切換ユニット変位機構70の構成要素であるレバー52の裏面には、動作モード時におけるレバー52の停止位置(図14(a)の位置)にレバー52を確実に固定するために、ロックピン(図示せず)が設けられている。これは、多連硬貨投出装置1が動作モードにあるときにレバー52に意図しない操作が加えられて、非動作モード時におけるレバー52の停止位置(図14(b)の位置)に移動してしまったり、動作モード時におけるレバー52の停止位置からずれてしまったりして、4つのカップリングギヤ30、31、32及び33(第2カップリングギヤ)とそれらに対応する4つのカップリングギヤ114(第1カップリングギヤ)との噛合(連結)が解除されたり、その噛合(連結)が不十分になったりする不具合を防止するためである。ロックピンの設置により、切換ユニット変位機構70の誤操作に伴う不具合が確実に防止され、安全性が格段に向上するので、ロックピンは設ける方が好ましい。
続いて、上述したワンウェイクラッチ119と、それを用いた不要回転防止機構80について、図23〜図29を参照しながら説明する。
ワンウェイクラッチ119は、カップリングギヤ114が対応するカップリングギヤ30、31、32又は33と非連結状態にあるとき(図25及び図27参照)に、カップリングギヤ114が意図しない空転(不要な正転)を起こして、望まない(不要な)硬貨投出という現象が生じるのを防止するためである。本実施形態では、ワンウェイクラッチ119の機能を実現するために、図24に示す構成を持つ不要回転防止部材117が設けられている。このような構成を持つ不要回転防止部材117は、カップリングギヤ114及び23に対して、図23に示す位置関係となるように配置されている。
不要回転防止部材117は、図24に示すように、平坦な直棒状の本体117aと、本体117aの先端に固着された係合部117bと、本体117aの基端に形成された支持部117cと、本体117aの先端に回転可能に装着されたローラ117dとを備えている。係合部117bは、それに対向する本体117aの部分との間に凹部117eを形成しており、ローラ117dは凹部117eの直下において本体117aに回転可能に支持されている。対応するカップリングギヤ114が非連結状態(図25及び図27参照)にあると、不要回転防止部材117の凹部117eは、図25及び図27に示すように、当該カップリングギヤ114の外周部に嵌入して、係合部117bの下端が当該カップリングギヤ114の複数の係合孔114d(各々が垂直端部114eと傾斜端部114fを持つ)と係合するようになっている。そして、係合部117bの下端が各係合孔114dの傾斜端部114fに当接する方向には、当該カップリングギヤ114の回転が許容され、係合部117bの下端が各係合孔114dの垂直端部114eに当接する方向には、当該カップリングギヤ114の回転が禁止される。このようにして、不要回転防止部材117の係合部117bと当該カップリングギヤ114の複数の係合孔114dとによって、一方向の回転のみを許容するワンウェイクラッチ119の機能を実現している。
すなわち、当該カップリングギヤ114の回転方向が、その係合孔114dのいずれかに係合している係合部117bの下端が係合孔114dの垂直端部114eに当接する方向(例えば硬貨投出方向とは逆方向)の場合には、その当接によって係合部117bの下端のそれ以上の移動が抑制されるため、当該カップリングギヤ114の同方向の回転は防止される。他方、当該カップリングギヤ114の回転方向が、係合孔114dに係合している係合部117bの下端が係合孔114dの傾斜端部114fに当接する方向(例えば硬貨投出方向)の場合には、係合部117bの下端が傾斜端部114f上を摺動しながら徐々に上方に移動して、傾斜端部114fの頂上(係合面114g)を乗り越えることができるため、当該カップリングギヤ114の同方向の回転は許容される。ワンウェイクラッチ119(不要回転防止機構80)の機能は、このようにして実現されている。
当該カップリングギヤ114の係合孔114dに係合している係合部117bの下端が、傾斜端部114fを乗り越えて次の係合孔114dまで移動して再度係合する時、不要回転防止部材117の係合部117bは上下に変位する。そこで、これを可能にするために、不要回転防止部材117の支持部117cには、支持軸118aが挿通される透孔117fが形成されており、支持軸118aはシャーシ11の内面に固定された支持部材118によって支持されている。不要回転防止部材117は、このようにして、支持部材118によりシャーシ11の内面に揺動可能に支持されている。
ローラ117dの下面は、当該カップリングギヤ114が対応するカップリングギヤ30、31、32又は33と連結状態にあるとき(図26及び図28参照)に、カップリングギヤ30、31、32又は33の外周部に当接するようになっている。このため、連結状態では、ローラ117dが非連結状態での位置から上方に変位せしめられ、したがって、不要回転防止部材117の先端の係合部117bが、対応するカップリングギヤ114の係合孔114dから離脱し、係合部117bと係合孔114dとの係合が解消される。その結果、ワンウェイクラッチ119(ひいては不要回転防止機構80)が機能しなくなり(機能が無効化され)、当該カップリングギヤ114は硬貨投出用の正方向の回転(正回転)もその逆方向の回転(逆回転)も自由に回転できるようになる。不要回転防止機構80は、このようにして、非連結状態(非駆動状態)にある硬貨投出ユニット110のカップリングギヤ114に対してのみ機能を発揮し(機能が有効化され)、連結状態(駆動状態)にある硬貨投出ユニット110からの硬貨投出動作と不具合解消動作には何ら影響を与えないようになっている。
支持部材118によって支持された支持軸118aには、不要回転防止部材117の保内117aと係合部117bを下向きに付勢するバネ118bが装着されている。不要回転防止部材117の係合部117bには、バネ118bによって常時下向きに押圧力が作用しているため、当該カップリングギヤ114が非連結状態にあるとき(図25及び図27参照)には、係合部117bが当該カップリングギヤ114の係合孔114dのいずれかに確実に係合せしめられ、したがって、ワンウェイクラッチ119(不要回転防止機構80)の動作の信頼性が高くなっている。また、当該カップリングギヤ114が対応するカップリングギヤ30、31、32又は33と連結状態にあるとき(図26及び図28参照)には、係合部117bは、バネ118bの弾性力に抗して、当該カップリングギヤ30、31、32又は33によって容易に上方に変位せしめられるため、係合部117bと係合孔114dとの係合が確実に解消される。
上述した構成と機能を持つ不要回転防止部材117と、対応するカップリングギヤ114に形成された複数の係合孔114d(各々が垂直端部114eと傾斜端部114fを持つ)とは、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の各々の内部に設けられた回転ディスク112の不要な回転(正転)を防止する不要回転防止機構80を構成する。この不要回転防止機構80は、各々の硬貨投出ユニット110の連結状態(図26及び図28参照)と非連結状態(図25及び図27参照)の間の移動に連動して、ワンウェイクラッチ119の機能の実行・停止を行う機能(ワンウェイクラッチ119のON/OFF機能)を含んでいる。そのワンウェイクラッチ119のON/OFFの切換は、カップリングギヤ変位機構60(カム44とカムシャフト43とカムフォロア48を含む)によって実行される。
以上述べたように、不要回転防止機構80では、対応する硬貨投出ユニット110が非連結位置に位置する時には、不要回転防止部材117の係合部117bと対応するカップリングギヤ114の係合面114gの複数の係合孔114dとが相互に係合せしめられるため、ワンウェイクラッチ119の機能が実行される。それによって、所定の硬貨投出方向への対応する回転ディスク112の不要な回転(正転)が防止されると同時に、前記硬貨投出方向とは逆方向への回転ディスク112の回転(逆転)が許容される。また、対応する硬貨投出ユニット110が連結位置に位置する時には、不要回転防止機構80の機能が不要であるから、当該硬貨投出ユニット110が非連結位置から連結位置に移動する動作に連動して、不要回転防止部材117の係合部117bと対応するカップリングギヤ114の係合孔114dとが相互に離隔せしめられて、ワンウェイクラッチ119(不要回転防止機構80)の機能が停止される。不要回転防止機構80は、このようにして、駆動中の硬貨投出ユニット110の内部にある回転ディスク112の回転(正転及び逆転)に何らは影響を与えることなく、非駆動の硬貨投出ユニット110の内部にある回転ディスク112が意図しない回転(正転)をして、硬貨の誤投出が生じるのを確実に防止しているのである。
(多連硬貨投出装置1の動作)
次に、上述したような構成を持つ本発明の一実施形態に係る多連硬貨投出装置1の硬貨投出動作について、図15を参照しながら説明する。
図15(a)〜(d)は、多連硬貨投出装置1の切換ユニット40に含まれている対応するカム44が1回転する間に、そのカム44の回転位置(回転角度)に応じて、第1硬貨投出ユニット110の連結状態と非連結状態が順に切り換わることを示している。以下の説明では、カムシャフト43が図15において半時計回りに1回転する時に生じる状況変化について述べることにする。
まず、図15(a)に示すように、カム44の突端が右斜め下を向いている時には、対応するカムフォロア48のカム受け部48aが上位の非連結位置にある。これは、当該カム受け部48aが、その直下に配置されたバネ47の弾性力により、常時、押し上げられているからである。この状態では、当該カムフォロア48の分岐部48bは下位の非連結位置にあるため、第1硬貨投出ユニット110のカップリングギヤ114は、駆動機構20の対応するカップリングギヤ33から分離しており、したがって、2つのカップリングギヤ114及び33は非連結状態(非連結位置)にある。このため、第1モータM1の駆動力は第1硬貨投出ユニット110のカップリングギヤ114には伝達されず、同ユニット110からの硬貨の投出は生じない。
次に、カムシャフト43が、図15(a)の位置から90°だけ反時計回りに回動すると、換言すれば、カムシャフト43の位相が90°進むと、図15(b)に示すように、当該カム44の突端が右斜め上を向く。この時、当該カムフォロア48のカム受け部48aは、図15(a)の状態と同様に、上位の非連結位置にある。この状態でも、当該カムフォロア48の分岐部48bは下位の非連結位置にあるため、第1硬貨投出ユニット110のカップリングギヤ114は、駆動機構20の対応するカップリングギヤ33から分離しており、したがって、2つのギヤ114及び33は非連結状態(非連結位置)にある。このため、第1モータM1の駆動力は第1硬貨投出ユニット110のカップリングギヤ114には伝達されず、同ユニット110からの硬貨の投出は生じない。これは、図15(a)の状態と同様である。
続いて、カムシャフト43が、図15(b)の位置からさらに90°だけ反時計回りに回動すると、つまり、カムシャフト43の位相が図15(a)の位置から180°進むと、図15(c)に示すように、当該カム44の突端が左斜め上を向く。この時も、当該カムフォロア48のカム受け部48aは、図15(a)の状態と同様に、上位の非連結位置に維持される。この状態でも、当該カムフォロア48の分岐部48bは下位の非連結位置に維持されるため、第1硬貨投出ユニット110のカップリングギヤ114は、駆動機構20の対応するカップリングギヤ33から分離したままであり、したがって、2つのギヤ114及び33は非連結状態(非連結位置)に維持される。このため、図15(c)の状態でも、第1モータM1の駆動力は第1硬貨投出ユニット110のカップリングギヤ114には伝達されず、同ユニット110からの硬貨の投出は生じない。
最後に、カムシャフト43が、図15(c)の位置からさらに90°だけ反時計回りに回動すると、つまり、カムシャフト43の位相が図15(a)の位置から270°進むと、図15(d)に示すように、当該カム44の突端が左斜め下を向く。この時、当該カムフォロア48のカム受け部48aは、図15(a)〜図15(c)の状態とは異なり、下位の連結位置に移動する。これは、当該カムフォロア48のカム受け部48aが、当該バネ47の弾性力に抗して、当該カム44の突端によって押し下げられるからである。これに伴い、当該カムフォロア48の分岐部48bが上位の連結位置に移動する。当該連結位置では、第1硬貨投出ユニット110のカップリングギヤ114は、駆動機構20の対応するカップリングギヤ33と噛合し、したがって、2つのギヤ114及び33は連結状態(連結位置)に移行する。このため、図15(d)の状態では、第1モータM1の駆動力が第4硬貨投出ユニット110のカップリングギヤ114には伝達されることになり、同ユニット110からの硬貨の投出が生じることになる。
このように、カム44がカムシャフト43の回動に伴ってその周りに回動することで、第1硬貨投出ユニット110のカップリングギヤ114は、図20(a)に示すように、駆動機構20の対応するカップリングギヤ33と噛合(両カップリングギヤ114及び33が連結位置に移行)したり、図20(b)に示すように、駆動機構20の対応するカップリングギヤ33と離脱(両カップリングギヤ114及び33が非連結位置に移行)したりする。そして、第1硬貨投出ユニット110からの硬貨の投出を、両カップリングギヤ114及び33が連結位置にある時に限定することが可能となるのである。これは、第2〜第4の硬貨投出ユニット110についても同様である。
単一のカムシャフト43を回動するだけで、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の4つのカップリングギヤ114と駆動機構20の対応する4つのカップリングギヤ30、31、32及び33との噛合(連結)が変化する状況を、図16〜図19に示す。
図16では、第4硬貨投出ユニット110に対応する駆動機構20のカップリングギヤ33のみが上方に変位していて、第4硬貨投出ユニット110だけが連結状態にあり、第1〜第3硬貨投出ユニット110はいずれも非連結状態にある。図17では、第3硬貨投出ユニット110に対応する駆動機構20のカップリングギヤ32のみが上方に変位していて、第3硬貨投出ユニット110だけが連結状態にあり、第1、第2及び第3の硬貨投出ユニット110はいずれも非連結状態にある。図18では、第2硬貨投出ユニット110に対応する駆動機構20のカップリングギヤ31のみが上方に変位していて、第2硬貨投出ユニット110だけが連結状態にあり、第1、第3及び第4の硬貨投出ユニット110はいずれも非連結状態にある。図19では、第1硬貨投出ユニット110に対応する駆動機構20のカップリングギヤ30のみが上方に変位していて、第1硬貨投出ユニット110だけが連結状態にあり、第2〜第4の硬貨投出ユニット110はいずれも非連結状態にある。このように、4つのカム44の位相(回転位置)を変えるだけで、第1〜第4の硬貨投出ユニット110のうちのいずれか1つを選択的に連結状態にして駆動することが可能である。
具体例を挙げると、例えば、上位装置から630円の釣銭の払出指令が送信されて来た場合、多連硬貨投出装置1の制御装置(図示せず)は、その払出指令に応じて切換ユニット40を動作させることにより、まず、500円硬貨の投出を行う第1硬貨投出ユニット110を第1モータM1の駆動力の伝達先に選択してこれを駆動し、500円硬貨を1枚投出させる。続いて、100円硬貨の投出を行う第2硬貨投出ユニット110を前記駆動力の伝達先に選択してこれを駆動し、100円硬貨を1枚投出させる。さらに、10円硬貨の投出を行う第4硬貨投出ユニット110を前記駆動力の伝達先に選択してこれを駆動し、10円硬貨を3枚、順に投出させる。こうして前記払出指令の実行が完了させることができる。
硬貨投出ユニット110の取り外しや交換等の作業を行うために多連硬貨投出装置1を「動作モード」から「非動作モード」へ移行させる場合は、図14に示す切換ユニット変位機構70を使用して、切換ユニット40を駆動機構20に対して相対的に変位させ、切換ユニット40を「接続位置」から「分離位置」に移動させればよい。具体的には、ユーザーやサービスエンジニアが、シャーシ11の前面に設けられたレバー52を下向きに所定の限界点(図14(b)に示す位置)まで揺動させるだけでよい。それだけで、切換ユニット40の全体が一括して相対変位するため、多連硬貨投出装置1は容易且つ迅速に「非動作モード」(図21参照)に移行することができる。また、多連硬貨投出装置1を「非動作モード」から「動作モード」(図16〜図19参照)へ復帰する場合は、レバー52を上向きに揺動させて、元の位置に復帰させるだけでよい。それだけで、切換ユニット40の全体が一括して逆方向に相対変位するため、多連硬貨投出装置1は容易且つ迅速に「動作モード」に復帰する。
続いて、上述した多連硬貨投出装置1の不要回転防止機構80の動作について、第1硬貨投出ユニット110を例にとって、図23〜図29を参照しながら説明する。
第1硬貨投出ユニット110の駆動機構20側のカップリングギヤ30と、それに対応する硬貨投出ユニット110側のカップリングギヤ114とが、非連結状態にあるとき、すなわち、カップリングギヤ変位機構60によってカップリングギヤ30が「非連結位置」に設定・保持されているときは、カップリングギヤ30とカップリングギヤ114とは離隔しており、したがって、不要回転防止機構80は図25及び図27に示すような状態にある。
図25及び図27の状態では、不要回転防止部材117の係合部117bは、カップリングギヤ114の係合面114gに形成された複数の係合孔114dのいずれか1つに嵌入・係合されており、係合部117bの対向位置で本体117aに装着されたローラ117dは、カップリングギヤ30に当接していない。これは、カップリングギヤ30が「非連結位置」にあるため、ローラ117dはカップリングギヤ30から離隔しているからである。ローラ17dは、カップリングギヤ30の円環状の外周部と重なる位置にある。この状態では、不要回転防止部材117の先端にある係合部117bがカップリングギヤ114の係合孔114dのいずれか1つに嵌入・係合されているため、ワンウェイクラッチ119が有効であり、したがって、カップリングギヤ114の硬貨投出方向への回転(正回転)が抑制され、カップリングギヤ114の硬貨投出方向とは逆方向への回転(逆回転)が許容される。回転ディスク120は、カップリングギヤ114と共に回転軸115に固定されているから、カップリングギヤ114と同一方向に回転する。このため、駆動(連結)状態にある第2、第3又は第4の硬貨投出ユニット11で生じる振動などにより、非駆動(非連結)状態にある第1硬貨投出ユニット110の内部にある回転ディスク120が硬貨投出方向への意図しない(不要な)回転(正回転)をするのを確実に抑制することができ、したがって、硬貨の誤投出を確実に防止することができる。
なお、ワンウェイクラッチ119により、非駆動(非連結)状態にある第1硬貨投出ユニット110で回転ディスク120の逆回転が許容されているのは、駆動(連結)状態にある第2、第3又は第4の硬貨投出ユニット11で生じる振動などにより、回転ディスク112が逆回転するのを許容する方が、抑制するよりも好都合であるからである。したがって、ワンウェイクラッチ119を省略して、回転ディスク112の正回転と逆回転の双方を抑制するようにすることも可能である。
他方、第2〜第4の硬貨投出ユニット110のうちで駆動(連結)状態にあるものの内部で硬貨詰まり等の不具合が生じたときには、該当する硬貨投出ユニット110の内部にある回転ディスク112を硬貨投出方向(正回転)とは逆方向に回転(逆回転)させて、前記不具合を解消することが多い。この場合、非連結状態にある第1硬貨投出ユニット110では、不要回転防止機構80が有効で、カップリングギヤ114の硬貨投出方向とは逆方向への回転が許容されるため、回転ディスク112の不具合解消のための逆回転も実行可能である。したがって、回転ディスク112の逆回転によって、前記不具合を容易に解消することができる。
図29は、ワンウェイクラッチ119が有効であるときに、カップリングギヤ114の硬貨投出方向の回転(正回転)が抑制され、カップリングギヤ114の硬貨投出方向とは逆方向への回転(逆回転)が可能となる状況を示している。
最初に、不要回転防止部材117の係合部117bが、その直下にあるカップリングギヤ114の係合孔114d、つまり、傾斜端部114fと垂直端部114fの間に嵌入・係合していると仮定する(図29の左上図参照)。その状態から、カップリングギヤ114の逆方向の回転が矢印の方向に少し進むと、係合部117bは係合孔114dの傾斜端部114fの上を移動する。その結果、不要回転防止部材117は、バネ118bの弾性力に抗して支持軸118aの周りに少し揺動し、係合部117bは少し持ち上げられる(図29の右上図参照)。カップリングギヤ114の逆方向の回転が同方向にさらに進むと、係合部117bは係合孔114dの傾斜端部114fの頂上に到達する。その結果、不要回転防止部材117は支持軸118aの周りにさらに揺動し、係合部117bはさらに持ち上げられる(図29の右下図参照)。この時の係合部117bの高さが最も高い。カップリングギヤ114の逆方向の回転が同方向にさらに進むと、係合部117bは傾斜端部114fの頂上を越えて、隣接する係合孔114dに嵌入・係合し、その係合孔114dの垂直端部114fと傾斜端部114fの間に位置する(図29の左下図参照)。以後、カップリングギヤ114の逆方向回転に伴って、同様の動作が繰り返されるため、カップリングギヤ114の硬貨投出方向とは逆方向への回転が可能となる。
図29の左上図又は左下図の状態で、カップリングギヤ114が硬貨投出方向に回転(正回転)しようとすると、係合部117bは係合孔114dの垂直端部114fに当接する。しかし、傾斜面のない垂直端部114fからは、係合部117bに持ち上げ力が働かないため、係合部117bはそれ以上移動することができない。すなわち、カップリングギヤ114の硬貨投出方向に回転(正回転)は抑制される。
第1硬貨投出ユニット110の駆動機構20側のカップリングギヤ30と、それに対応する硬貨投出ユニット110側のカップリングギヤ114とが、連結状態に移行すると、カップリングギヤ変位機構60によってカップリングギヤ30が「連結位置」に移行する。連結状態では、カップリングギヤ30とカップリングギヤ114とは相互に離隔しており、したがって、不要回転防止機構80は、図26及び図28に示すような状態にある。
図26及び図28の状態では、不要回転防止部材117の係合部117bは、カップリングギヤ114の係合孔114dから離隔している。その代わりに、係合部117bの近傍に装着されたローラ117dが、カップリングギヤ30の円環状の外周部に当接している。これは、カップリングギヤ30が「連結位置」に移動したため、カップリングギヤ30が「非連結位置」よりも押し上げられているからである。この時、カップリングギヤ30の歯30a及び溝30bは、カップリングギヤ114の溝114b及び歯114aとそれぞれ噛合しているため、第1モータM1の駆動力がカップリングギヤ30からカップリングギヤ114に伝達される。この状態では、ワンウェイクラッチ119(不要回転防止機構80)が無効であり、したがって、カップリングギヤ114及び回転ディスク112の硬貨投出方向への回転(正回転)も、それとは逆方向への回転(逆回転)も、許容されている。したがって、駆動(連結)状態にある第1硬貨投出ユニット110の回転ディスク120によって、所望の硬貨投出動作が実行可能であると共に、逆回転による不具合解消動作も実行可能である。
以上のような構成及び機能を持つ不要回転防止機構80は、カップリングギヤ変位機構60によってカップリングギヤ30、31、32及び33をその「連結位置」と「非連結位置」の間で遷移させるだけで、不要回転防止機構80の有効化(ON)と無効化(OFF)を行うことができるため、図示しない制御装置による不要回転防止機構80の制御が不要である。したがって、不要回転防止機構80の構成及び機能が極めてシンプルになるだけでなく、多連硬貨投出装置1bの制御装置に組み込まれる制御プログラムもシンプルになる、という利点がある。
以上、詳細に述べたように、本発明の一実施形態に係る多連硬貨投出装置1では、切換ユニット40によって、第1〜第4の硬貨投出ユニット110に共通に使用される第1モータM1による駆動力の伝達先を切り換えることで、第1〜第4の硬貨投出ユニット110のいずれか1つを選択的に駆動するように構成されている。そして、こうして駆動された、つまり、第1モータM1による駆動力が伝達された1つの硬貨投出ユニット110は、指令に応じて該当する金種の硬貨を投出する。したがって、所望の金種の硬貨の投出を行う硬貨投出ユニット110のみに前記駆動力を選択的に伝達させて、所望の金種の硬貨の投出を行わせることが可能となる。
また、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の各々の内部に設けられた不要回転防止機構80は、対応する硬貨投出ユニット110が前記非連結位置にある時に、対応する回転ディスク112が不要な回転(正転)をして硬貨を誤投出するのを防止する不要回転防止部材117を有しており、その不要回転防止部材117は、対応する硬貨投出ユニット110の前記連結位置と前記非連結位置の間の移動に連動して、対応するカップリングギヤ114の係合面114gに対する係合及び離隔が切り換えられるように構成されている。このため、対応する硬貨投出ユニット110を前記連結位置と前記非連結位置の間で移動させるだけで、不要回転防止機構80を有効化したり無効化したりすることができる。よって、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の各々を駆動状態と非駆動状態の間で移動させるだけで、回転ディスク112の正転と逆転の双方が可能な状態(不要回転防止機構80が無効化された状態)と、回転ディスク112の正転のみが禁止された状態(不要回転防止機構80が有効化された状態)とを、切り換えることが可能である。
さらに、対応する硬貨投出ユニット110が前記非連結位置にある時には、不要回転防止部材117の係合部117bと、対応するカップリングギヤ114の係合面114gに形成された複数の係合孔114dとが、相互に係合して、対応する回転ディスク112が硬貨投出用の正回転をするのを防止するようになっているから、対応する硬貨投出ユニット110が非駆動状態にあるときには、回転ディスク112の正回転が確実に防止される。したがって、駆動中の硬貨投出ユニット110で生じる振動などにより、非駆動の硬貨投出ユニット110の内部にある回転ディスク112が意図しない回転をして、硬貨の誤投出が生じるのを確実に防止することができる。他方、対応する硬貨投出ユニット110が前記連結位置にある時には、不要回転防止部材117の係合部117bと、対応するカップリングギヤ114の複数の係合孔114dとが、相互に離隔して、対応する回転ディスク112の正回転と逆回転を許容するようになっているから、対応する硬貨投出ユニット110が駆動状態にあるときには、回転ディスク112の硬貨投出(正回転)と不具合解消(逆回転)の双方が可能となる。
よって、駆動機構を介して単一のモータで複数の硬貨投出ユニット110を選択的に駆動する構成を採用している多連硬貨投出装置1において、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の各々が駆動状態にあるときには、その内部の回転ディスク112は硬貨投出用の正転と不具合解消用の逆転の双方が可能であり、しかも、非駆動状態に移行すると、回転ディスク112が意図しない正転をして硬貨の誤投出が生じるのを確実に防止することができる。
さらに、本実施形態に係る多連硬貨投出装置1では、駆動中の硬貨投出ユニット110では回転ディスク112の硬貨投出用の正転と不具合解消用の逆転の双方を可能とすると共に、非駆動の硬貨投出ユニット110では回転ディスク112の意図しない正転の防止を可能とする、という機能が、不要回転防止部材117の係合部117bと対応するカップリングギヤ114の係合孔114dとの係合及び離隔によって実現されている。しかも、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の各々を駆動状態と非駆動状態の間で移動させるだけで、回転ディスク112の正転と逆転の双方が可能な状態(不要回転防止機構80が無効化された状態)と、回転ディスク112の正転が禁止された状態(不要回転防止機構80が有効化された状態)とを切り換えできるから、これら2つの状態の切換のために専用の機構を設ける必要がない。よって、前記機能を機械的な構成だけを用いて実現することができる。
さらに、前記機能を実現する前記機械的構成は、相互に係合及び離隔が可能とされた、不要回転防止部材117の係合部117bと、対応するカップリングギヤ114の係合孔114dとを含んでいればよく、しかも、回転ディスク112の正転と逆転の双方が可能な状態と、回転ディスク112の正転のみが禁止された状態とを切り換えるための専用の機構が不要である。よって、前記機械的構成は、非常にシンプルになると共に低コストで実現(製造)が可能であり、しかも、動作の不具合が生じにくく耐久性にも優れるように実現(製造)することも容易である。
本実施形態の多連硬貨投出装置1では、上記効果に加えて、さらに次のような効果がある。
第1〜第4の硬貨投出ユニット110の合計4つのカップリングギヤ114(第1カップリングギヤ)の各々が、対応する硬貨投出ユニット110の回転軸115に固定され、且つ、一方の側面に複数の歯114a及び溝114bが形成されたギヤとされ、駆動機構20の4つのカップリングギヤ30、31、32及び33(第2カップリングギヤ)の各々が、駆動機構20の対応するギヤ30、31、32及び33に固定され、且つ、一方の側面に対応するカップリングギヤ114の溝114b及び歯114aと噛合可能な複数の歯30a及び30bが形成されたギヤとされているので、4つのカップリングギヤ114とそれらに対応する4つのカップリングギヤ30、31、32及び33との噛合及び離脱を実現する構成が容易に実現される。
また、4つのカップリングギヤ114(第1カップリングギヤ)の各々が、対応する硬貨投出ユニット110の回転ディスク112が係止された回転軸115に固定され、且つ、一方の側面に複数の歯114a及び溝114bが形成されたギヤとされていると共に、複数の歯114a及び溝114bが形成された前記側面とは反対側に係合面14gを有しており、係合面114gには、対応するカップリングギヤ114の回転方向に沿って複数の係合孔114dが形成されている。そして、不要回転防止部材117の係合部117bが、対応するカップリングギヤ114の係合面114gの複数の係合孔114dのいずれかに係合するように構成されている。このため、不要回転防止機構80を非常にシンプルな構成で実現することができる。
また、不要回転防止部材117の係合部117bが、対応するカップリングギヤ114の係合面114gの複数の係合孔114dのいずれかに係合することで、対応する回転ディスク112の正回転のみを許容するワンウェイクラッチ119の機能を持っているから、対応する回転ディスク112の正回転のみを確実に防止することができる。
また、切換ユニット40によって第1〜第4の硬貨投出ユニット110のうちの1つが前記非連結位置から前記連結位置に移動されると、不要回転防止部材117が、対応する硬貨投出ユニット110のカップリングギヤ30、31、32又は33(第2カップリングギヤ)によって変位せしめられ、それによって不要回転防止部材117の係合部117bが対応するカップリングギヤ114(第1カップリングギヤ)の係合面114gから離隔せしめられて、ワンウェイクラッチ119の機能が消失するようになっているため、非常にシンプルな構成で、前記連結位置において対応する回転ディスク112の正転及び逆転を許容することが可能となる。
また、不要回転防止部材117が、係合部117bと共に、対応する硬貨投出ユニット110のカップリングギヤ30、31、32又は33(第2カップリングギヤ)の対向面上を転動可能なローラ117dを有しており、切換ユニット40によって第1〜第4の硬貨投出ユニット110のうちの1つが前記非連結位置から前記連結位置に移動されると、不要回転防止部材117ローラ117dが、対応する硬貨投出ユニット110の前記対向面に当接して変位せしめられ、それによって不要回転防止部材117の係合部117bが対応するカップリングギヤ114(第1カップリングギヤ)の係合面114gから離隔せしめられて、対応する回転ディスク112の正回転と逆回転が可能とされており、さらに、前記対向面に当接したローラ117dは、カップリングギヤ30、31、32又は33の回転に伴って前記対向面上を転動するようになっている。このため、切換ユニット40によって前記非連結位置から前記連結位置に移動された硬貨投出ユニット110において、対応する回転ディスク112の正回転と逆回転を可能とすることが容易である。
さらに、不要回転防止部材117の係合部117bを対応する硬貨投出ユニット110のカップリングギヤ30、31、32又は33(第2カップリングギヤ)の対向面に向かって付勢するバネ(バネ部材)118bを有しており、対応する硬貨投出ユニット110が前記非連結位置にある時には、不要回転防止部材117の係合部117bは、バネ118bの弾性力により対応するカップリングギヤ114(第1カップリングギヤ)の係合面114gに向かって付勢されて、係合面114gの複数の係合孔114dのいずれかと係合せしめられ、対応する硬貨投出ユニット110が前記連結位置にある時には、不要回転防止部材117の係合部117bは、バネ118bの弾性力に抗して係合面114gから離隔されて、係合面114gの複数の係合孔114dとの係合が解消される。このため、不要回転防止部材117の係合部117bと係合面114gの係合孔114dとの係合が、バネ118bの弾性力によってより確実になるため、不要回転防止機構80の信頼性が高くなる。
さらに、カップリングギヤ変位機構60が、第2モータM2によって回転駆動される、4つのカム44が固定されたカムシャフト43と、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の4つのカップリングギヤ114(第1カップリングギヤ)にそれぞれ係合された、対応するカム44によって変位せしめられる4つのカムフォロア48とを有しており、各々のカム44の回転によって対応するカムフォロア48が変位せしめられ、それに応じて対応する硬貨投出ユニット110が前記連結位置と前記非連結位置の間を移動するようにしているので、カップリングギヤ変位機構60を非常にシンプルな構成で実現することができる。
さらに、カムシャフト43に固定された4つのカム44の各々の回転位置(回転角度)を検出する複数のセンサ46が設けられていると共に、それらカム44の固定位置に対応して4つの検出片45がカムシャフト43に固定されているので、シンプルな構成で各々のカム44の回転位置(回転角度)を常時検出することができ、第1〜第4の硬貨投出ユニット110による硬貨投出の的確な制御が可能となる。
さらに、切換ユニット40を用いて第1モータM1の駆動力を第1〜第4の硬貨投出ユニット110のうちの1つに選択的に伝達できる接続位置と、前記駆動力を全ての硬貨投出ユニット110に伝達できない分離位置との間で、切換ユニット40を駆動機構20に対して相対的に変位させる切換ユニット変位機構70を備えていて、切換ユニット変位機構70は、シャーシ11に設けられた操作部材(例えばレバー52)と、前記操作部材に加えられる所定の動作に応じて切換ユニット40を前記接続位置と前記分離位置の間で機械的に移動させる移動部材(例えば作用片53とフレーム回動部材54)とを有しており、切換ユニット40が前記接続位置にある時に前記操作部材に所定の操作が加えられると、前記移動部材を介して切換ユニット40が変位せしめられて前記分離位置まで移動せしめられるようになっている。したがって、切換ユニット40を前記接続位置から前記分離位置まで移動させる際に、多連硬貨投出装置1の制御装置(図示せず)を用いて、第1モータM1の駆動力の硬貨投出ユニット110への伝達を遮断したり再接続したりする制御を行う必要がない。そして、このようにして切換ユニット40が前記分離位置に移動せしめられた後は、第1モータM1の駆動力を全ての硬貨投出ユニット110に伝達できなくなるため、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の中から所望の1つをシャーシ11から取り外して点検したり、新規な硬貨投出ユニット110に交換したりすることが、容易に行なえるようになる。
さらに、切換ユニット変位機構70によって切換ユニット40を前記分離位置に移動させると、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の全てに対して第1モータM1による駆動力が伝達されない非動作モードとなって、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の中から所望の1つをシャーシ11から取り外すことが可能となり、切換ユニット変位機構70によって切換ユニット40を前記接続位置に復帰させると、第1〜第4の硬貨投出ユニット110のうちのいずれか1つに対して第1モータM1による駆動力が伝達される動作モードとなって、第1〜第4の硬貨投出ユニット110を選択的に駆動して所望の硬貨投出ができるように構成されているので、第1〜第4の硬貨投出ユニット110のうちのいずれか必要なものを設置面11aに沿ってスライドさせることで、容易に取り外したり交換したりする作業が可能となる。
さらに、切換ユニット変位機構70が、シャーシ11に回転可能に支持されたシャフト41の周りに揺動可能とされ、第1〜第4の硬貨投出ユニット110のうちのいずれか1つに対して第1モータM1による駆動力が伝達される動作モードと、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の全てに対して第1モータM1による駆動力が伝達されない非動作モードとが、カップリングギヤ変位機構60がシャフト41の周りに揺動されることで切り換えられるので、両モードの切換が簡単且つ迅速に行える。
(変形例)
上述した実施形態は、本発明を具体化した例を示すものである。したがって、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を外れることなく種々の変形が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、第1〜第4の硬貨投出ユニット110の各々の内部に設けられた不要回転防止機構80を構成するために、硬貨投出ユニット110が前記非連結位置にある時に、対応する回転ディスク112が不要な回転(正転)をして硬貨を誤投出するのを防止する不要回転防止部材117を設けると共に、対応する硬貨投出ユニット110の前記連結位置と前記非連結位置の間の移動に連動して、不要回転防止部材117と対応するカップリングギヤ114の係合面114gとの間の係合及び離隔を切り換えるようにしているが、本発明はこれには限定されない。硬貨投出ユニット110が前記非連結位置にあるときに回転ディスク112の正転を防止でき、且つ、前記連結位置にあるときにその回転ディスク112の正転及び逆転を許容できる構成であれば、任意のものを使用できる。
また、上述した実施形態では、不要回転防止機構80にワンウェイクラッチ119の機能を持たせているが、ワンウェイクラッチ119の機能を持たせずに、硬貨投出ユニット110が前記非連結位置にあるときに、対応する回転ディスク112の正転及び逆転の双方を防止するようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、駆動機構20の側に図11に示したような一方の側面に複数の歯と溝が形成されたカップリングギヤ30、31、32及び33を使用し、硬貨投出ユニット110の側に図13に示したような一方の側面に複数の溝と歯が形成されたカップリングギヤ114を使用しているが、本発明はこれには限定されない。第1モータM1の駆動力を駆動機構20の側から硬貨投出ユニット110の側に伝達できるものであれば、これらとは異なる構成のカップリングギヤを使用しても良いことは言うまでもない。
また、上述した実施形態では、カップリングギヤ変位機構60として、第2モータM2によって回転駆動される、複数のカム44が固定されたカムシャフト43と、対応するカム44によって変位せしめられる複数のカムフォロア48とを用いているが、本発明はこれには限定されない。所望のカップリングギヤ変位が実現できるものであれば、カムとカムフォロアの組み合わせとは異なる機構を用いてもよいことは言うまでもない。
また、使用する硬貨投出ユニット110の構成にも制限はない。回転軸115によって回転可能とされた回転ディスク112で硬貨を投出できるものであれば、任意の構成の硬貨投出ユニットを使用可能である。
また、上述した実施形態では、切換ユニット変位機構70を、シャーシ11に設けられたレバー52(操作部材)と、レバー52に加えられる所定の操作に応じて切換ユニット40を前記接続位置と前記分離位置の間で機械的に移動させる作用片53及びフレーム回動部材54(移動部材)とで構成しているが、本発明はこれには限定されない。前記接続位置と前記分離位置との間で切換ユニット40を駆動機構20に対して相対変位させることができるものであれば、切換ユニット変位機構70をこれら以外の構成で実現してもよいことは言うまでもない。