JP6958611B2 - 水素吸蔵合金 - Google Patents

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Description

本発明は、水素吸蔵合金に関する。
従来、ニッケル水素電池等のアルカリ蓄電池に用いられる負極活物質として、水素吸蔵合金が多用されている。また、近年では、燃料電池自動車等へ水素を供給するための水素ステーションにおいて、水素の貯蔵に水素吸蔵合金を用いる技術の開発が進められている。
水素吸蔵合金は、水素との親和力が高いA元素群と、水素との親和力が低いB元素群とから構成された合金であり、AB5型合金、AB2型合金及びAB型合金等が知られている。例えば、ニッケル水素電池用の負極活物質として、希土類混合金属を含むAB5型の水素吸蔵合金が既に実用化されている(特許文献1)。しかし、アルカリ蓄電池のエネルギー密度等の性能向上や水素ステーションにおける水素の貯蔵量増大の観点から、特許文献1の水素吸蔵合金よりも水素吸蔵量の高い水素吸蔵合金が望まれている。
このような水素吸蔵合金として、AB型の組成を有するZrNi(ジルコニウムニッケル)合金がある(非特許文献1)。しかし、ZrNi合金は、吸蔵した水素と反応することにより、ZrNiH3やZrNiHなどの化学的な安定性が高い水素化物を容易に生成する。そのため、ZrNi合金は、吸蔵された水素を放出しにくく、実用には適さないという問題があった。
そこで、ZrNi合金からの水素の放出を促進させるために、Zrの一部をTiで置換するとともに、Niの一部をV(バナジウム)で置換した4元系の水素吸蔵合金(特許文献2)が提案されている。
特開2012−167375号公報 特開平5−239574号公報
Dantzer P, Millet P, Flanagan TB. Thermodynamic Characterization of Hydride Phase Gas Growth in ZrNi-H2. Metall Mater Trans A. 2001;32A:29-38.
特許文献2の水素吸蔵合金は、前記の通り水素放出を促進させるためにVを含んでいるが、V産出地域の偏在性が高いため、社会情勢等の変化に応じて価格が変動し易い。そのため、特許文献2の水素吸蔵合金は、原料コストの変動が比較的大きいという問題がある。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、高い水素吸蔵量を有するとともに、吸蔵された水素を容易に放出することができ、原料コストの変動を小さくすることができる水素吸蔵合金を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、組成がZrATixNbyNiz(但し、0.20≦x≦0.50、0<y≦0.05、0.95≦z≦1.05であり、Aは1−x−yまたは2−x−y−zのいずれかである。)であり、
主相の結晶構造がB33型である、水素吸蔵合金にある。
上記水素吸蔵合金は、上記特定の組成及び結晶構造、即ち、ZrNi(ジルコニウムニッケル)合金におけるZrの一部がTi(チタン)及び微量のNb(ニオブ)に置換された結晶構造を有している。上記水素吸蔵合金は、ZrNi合金と同じB33型の結晶構造を有しているため、ZrNi合金と同等の水素吸蔵量を容易に実現することができる。
また、上記水素吸蔵合金は、Ti及びNbの置換量を上記特定の範囲とし、Zrをより原子半径の小さいTiやNbに置換することにより、B33型の結晶構造を維持しつつ、ZrNi合金に比べて結晶格子の体積を小さくすることができる。これにより、水素吸蔵合金中に吸蔵された水素の安定性を、ZrNi合金中に吸蔵された水素に比べて低くすることができる。
更に、Ti及びNbの置換量を上記特定の範囲とし、Zrをより電気陰性度の高いTiやNbに置換することにより、ZrNi合金に比べて水素吸蔵合金の電気陰性度の値を大きくし、水素の電気陰性度に近づけることができる。このように、合金元素と水素原子との電気陰性度の差を小さくすることにより、水素親和力を低下させ、水素吸蔵合金中に吸蔵された水素の安定性を、ZrNi合金中に吸蔵された水素に比べて低くすることができる。
そして、上述した結晶格子の縮小による安定性低下の効果と電気陰性度の増大による安定性低下の効果との相乗効果により、上記水素吸蔵合金は、ZrNi合金に比べて水素吸蔵合金からの水素の放出を促進させることができる。
以上の結果、上記水素吸蔵合金は、高い水素吸蔵量を有するとともに、水素吸蔵合金中に吸蔵された水素を容易に放出することができる。
上記水素吸蔵合金は、例えば、上記特定の組成及び結晶構造を有する鋳塊を不活性ガス雰囲気中において500℃以下に加熱することにより作製することができる。上記鋳塊を上記特定の条件で加熱することにより、上記特定の結晶構造を維持しつつ、鋳造時に生じる空孔や格子歪等の欠陥、及び、転位を除去することができる。これにより、上記水素吸蔵合金の水素吸蔵量をより高くすることができる。
実施例1における、水素吸蔵合金のX線回折パターンの一例を示す説明図である。 実施例1における、水素吸蔵過程の圧力−水素等温線の一例を示す説明図である。 実施例1における、水素放出過程の圧力−水素等温線の一例を示す説明図である。 実施例1における、水素化のエントロピー変化ΔHを求めるためのグラフの一例を示す説明図である。 実施例2における、水素吸蔵合金のX線回折パターンを示す説明図である。 実施例2における、水素吸蔵過程の圧力−水素等温線の一例を示す説明図である。 実施例2における、水素放出過程の圧力−水素等温線の一例を示す説明図である。
上記水素吸蔵合金は、Zr(1-x-y)TixNbyNizまたはZr(2-x-y-z)TixNbyNiz(但し、0.20≦x≦0.50、0<y≦0.05、0.95≦z≦1.05)のいずれかで表される組成を有している。上記組成式中のxの値、即ちTiの置換量を上記特定の範囲とするとともに、yの値、即ちNbの置換量を上記特定の範囲にすることにより、B33型の結晶構造を維持しつつ、ZrNi合金におけるZrの一部をTi及びNbに置換することができる。
Zrの一部をTiに置換することにより、ZrNi合金に比べて結晶格子を縮小させるとともに、電気陰性度を増大させることができる。これにより、水素吸蔵合金からの水素の放出を促進させることができる。上記組成式中のxの値が0.20未満の場合には、Tiの原子数比率が低いため、上記水素吸蔵合金中に吸蔵された水素が水素吸蔵合金から放出されにくくなるおそれがある。従って、水素の放出を促進する観点から、xの値は0.20以上とする。同様の観点から、xの値は0.30以上であることが好ましく、0.35以上であることがより好ましく、0.425以上であることがさらに好ましい。
一方、上記組成式中のxの値が0.50を超える場合には、上記水素吸蔵合金中に、例えばTiNi相やZr9Ni11相等の、B33型以外の結晶構造を有する第二相が形成されるおそれがある。これらの第二相は、主相であるZr(1-x-y)TixNbyNiz相及びZr(2-x-y-z)TixNbyNiz相に比べて水素吸蔵量が低い。それ故、xの値が0.50を超える場合には、第二相の存在により、上記水素吸蔵合金の水素吸蔵量が低下するおそれがある。従って、水素吸蔵量を高くする観点から、上記組成式中のxの値は0.50以下とする。同様の観点から、xの値は0.49以下であることが好ましい。
Zrに対するTiの原子数比率Ti/Zrは、0.800以上1.050以下であることが好ましい。この場合には、B33型以外の結晶構造を有する第二相の形成をより効果的に抑制し、ほとんど全体がB33型の結晶構造を有する水素吸蔵合金を得ることができる。その結果、水素吸蔵量をより高くし、かつ、水素吸蔵合金中に吸蔵された水素の放出をより促進することができる。
水素吸蔵量を増大させる効果と水素の放出を促進する効果との両方をより高める観点から、Ti/Zrの値は、0.850以上1.000以下であることがより好ましく、0.850以上0.975以下であることがさらに好ましく、0.850以上0.955以下であることが特に好ましい。
なお、前述した「ほとんど全体がB33型の結晶構造を有する」状態とは、X線回折装置を用いて上記水素吸蔵合金の結晶構造解析を行った場合に、B33型以外の結晶構造に由来する回折ピークが検出されない状態をいう。
Zrの一部をNbに置換することにより、B33型以外の結晶構造を有する第二相の析出を抑制しつつ、Tiの置換量を多くすることができる。上記組成式中のyの値が0の場合、即ち上記水素吸蔵合金中にNbが含まれない場合には、上記水素吸蔵合金中にB33型以外の結晶構造を有する第二相が形成されやすくなり、水素吸蔵量の低下を招くおそれがある。B33型以外の結晶構造を有する第二相の形成を抑制しつつTiの置換量を多くする観点からは、yの値は0.005以上であることが好ましく、0.01以上であることがより好ましい。
一方、上記組成式中のyの値が0.05を超える場合には、かえって上記水素吸蔵合金中にB33型以外の結晶構造を有する第二相が形成されやすくなり、水素吸蔵量の低下を招くおそれがある。従って、B33型以外の結晶構造を有する第二相の形成を抑制する観点から、上記組成式中のyの値は0.05以下とする。同様の観点から、yの値は0.03以下であることが好ましく、0.025以下であることがより好ましく、0.02以下であることが更に好ましい。
また、上記組成式中のzの値、即ちZr、Ti及びNbの合計に対するNiの比率を上記特定の範囲とすることにより、B33型の結晶構造を形成しやすくすることができる。ただし、zの値が上記特定の範囲内であっても、各元素の原子数比率の微妙な違いによっては、製造の際にB33型の結晶構造を有する相が主相とならない場合もあり得る。
特に、zの値が上記特定の範囲外である場合には、B33型以外の結晶構造を有する相が主相となるおそれがある。例えば、Zr−Ni二元系状態図によれば、Niの原子数比率が上記特定の範囲よりも高い場合には、Zr9Ni11相やZr7Ni10相が形成されやすくなる。これらの相が主相となる場合には、水素吸蔵量が低下するおそれがある。また、Niの原子数比率が上記特定の範囲よりも低い場合には、Zr2Ni相が形成されやすくなる。この相が主相となる場合には、水素化物中の水素がより安定化するため、水素の放出が起こりにくくなるおそれがある。
それ故、B33型以外の結晶構造を有する相が主相となる場合には、高い水素吸蔵量を有する水素吸蔵合金や、水素を放出しやすい水素吸蔵合金が得られなくなるおそれがある。
なお、上記の「B33型の結晶構造」は、例えば「金属 vol.80(2010)No.7 32頁」等で明らかにされているCrB型構造と同一である。
上記水素吸蔵合金は、例えば、上記特定の組成を有する合金を単に鋳造することにより、容易に作製することができる。しかし、鋳造直後の水素吸蔵合金には、凝固過程などにおいて生じる空孔や格子歪等の欠陥、及び、転位が存在している。水素吸蔵合金中の欠陥や転位は、水素吸蔵量の低下の原因となる。そのため、水素吸蔵合金中の欠陥や転位を低減することにより、水素吸蔵量をより高くすることができる。
水素吸蔵合金中の欠陥や転位を除去するためには、不活性ガス雰囲気中において、上記特定の組成を有する鋳塊を500℃以下に加熱することが好ましい。上記特定の条件で加熱を行うことにより、上記特定の結晶構造を維持しつつ、欠陥や転位を除去することができる。その結果、上記水素吸蔵合金の水素吸蔵量をより高くすることができる。欠陥や転位の除去をより効率的に行い、水素吸蔵量を更に高くする観点からは、加熱温度を400℃以上500℃以下とすることがより好ましい。
(実施例1)
上記水素吸蔵合金の実施例について、図1〜図4を用いて説明する。本例においては、表1及び表2に示す組成を有する水素吸蔵合金(試験体1〜19)を作製し、得られた水素吸蔵合金の結晶構造解析及び静的水素吸蔵特性(圧力−水素等温線測定)の評価を行った。以下に、水素吸蔵合金の製造方法を詳細に説明する。
アーク溶解炉を用いて、Zr(株式会社高純度化学研究所製、ワイヤーカット品、純度98.0%)、Ti(株式会社高純度化学研究所製、粉末、純度99.0%)、Nb(株式会社高純度化学研究所製、粉末、純度99.0%)及びNi(株式会社高純度化学研究所製、粉末、純度99.9%)を溶融させ、表1に示す組成を有する水素吸蔵合金の鋳塊を作製した。この鋳塊をアルゴン雰囲気中で400〜500℃に加熱し、鋳塊内の欠陥や転位を低減させた。以上により、水素吸蔵合金(試験体1〜19)を作製した。
湿式切断機を用いて得られた試験体を二等分し、一方の鋳塊を用いて比重の測定及び組織観察を行った。また、他方の鋳塊にディスクミルによる粗粉砕、タングステンカーバイド製乳鉢による微粉砕及び篩い分けを順次行うことにより、直径20〜40μmの粉末を作製した。これにより得られた粉末を用いて結晶構造解析及び静的水素吸蔵特性の評価を行った。
なお、水素吸蔵合金の粉砕方法は、上記の方法に限定されるものではない。例えば、粗粉砕を行った後に、タングステンカーバイド製乳鉢による微粉砕に替えて、水素の吸蔵と放出とを交互に繰り返す水素化粉砕を行ってもよい。
[結晶構造解析]
X線回折装置(株式会社リガク製「RINT(登録商標)−2000」)を用いて粉末X線回折を行い、各試験体のX線回折パターンを取得した。図1に、X線回折パターンの一例として、試験体2、5、10、17、18のX線回折パターンを示す。なお、図1における縦軸は回折強度(相対強度)であり、横軸は回折角2θ(°)である。
得られたX線回折パターンに基づき、試験体の結晶相を同定した。また、WPPF(Whole Powder Pattern Fitting)法により試験体の結晶構造における格子定数及び格子体積を算出した。これらの結果は、表1に示す通りであった。なお、粉末X線回折はCuKα1線を用いて行い、X線管球の出力は40kV、20mAとした。また、結晶構造解析は、粉末X線解析ソフト(株式会社リガク製「PDXL」)を用いて行った。
[静的水素吸蔵特性]
PCT(Pressure-Composition-Temperature)特性測定装置(株式会社鈴木商館製)を用い、各試験体について、互いに測定温度の異なる3本の圧力−水素等温線を取得した。その一例として、試験体17の圧力−水素等温線を図2及び図3に示す。なお、図2は水素吸蔵過程における圧力−水素等温線であり、図3は水素放出過程における圧力−水素等温線である。図2及び図3の縦軸は平衡水素圧(MPa)であり、横軸は水素濃度(質量%)である。
試験体1については、温度200℃における水素吸蔵過程の圧力−水素等温線から、プラトー圧及び圧力0.8MPaにおける試験体の最大水素吸蔵量を読み取った。また、試験体2〜19については、温度150℃における水素吸蔵過程の圧力−水素等温線から、プラトー圧及び圧力0.8MPaにおける試験体の最大水素吸蔵量を読み取った。これらの結果は、表2に示した通りであった。
また、圧力−水素等温線から読み取った水素吸蔵過程のプラトー圧に基づき、各試験体の水素化のエンタルピー変化を算出した。具体的には、プラトー圧をp[MPa]、標準圧力をp0[MPa]、温度をT[K]とし、縦軸をlog(p/p0)、横軸を1000/Tで表示したグラフ上に各温度Tにおけるプラトー圧pをプロットした(図4参照)。そして、これら3つの点の近似直線を求めた。
得られた近似直線の傾きは、Van’t Hoffの式(下記式(1))の傾きに相当する。それ故、近似直線の傾きに1000Rを乗ずることにより、水素化のエンタルピー変化ΔH[Jmol-1]を算出することができる。
Figure 0006958611
なお、上記式(1)において、p[MPa]は水素吸蔵過程におけるプラトー圧、p0[MPa]は標準圧力、T[K]は温度、ΔH[Jmol-1]は水素化のエンタルピー変化、ΔS[JK-1mol-1]は水素化のエントロピー変化、Rは気体定数を表す記号である。また、標準圧力p0は0.1013MPa、気体定数Rは8.314JK-1mol-1とした。
さらに、圧力−水素等温線から読み取った水素放出過程のプラトー圧に基づき、各試験体の脱水素化のエンタルピー変化を算出した。脱水素化のエンタルピー変化の算出方法は、水素吸蔵過程のプラトー圧に替えて水素放出過程のプラトー圧を用いた以外は、上述した方法と同様である。
水素化のエンタルピー変化及び脱水素化のエンタルピー変化の値は、表2に示した通りであった。なお、水素吸蔵反応は吸熱反応であるため、水素化のエンタルピー変化の値は負の値として示した。また、水素放出反応は発熱反応であるため、脱水素化のエンタルピー変化の値は正の値として示した。
Figure 0006958611
Figure 0006958611
図1及び表1に示すように、試験体2〜17は、上記特定の範囲の組成を有しており、かつ、ZrNi合金(試験体1)と同じB33型の結晶構造を有している。これらの試験体は、Ti及びNbの置換量が多くなるほどX線回折ピークの位置が高角度側にシフトし、格子体積が縮小する傾向を示した。また、これらの試験体は、Ti及びNbの置換量が多くなるほど電気陰性度の値が増大した。
表2に示すように、試験体3〜19は、試験体1に比べてプラトー圧が高く、水素化のエンタルピー変化及び脱水素化のエンタルピー変化の絶対値が小さかった。この結果は、ZrNi合金におけるZrの一部をTi及びNbで置換することにより、ZrNi合金に比べて吸蔵された水素が放出され易くなることを示している。
これらの試験体の中でも、試験体8〜14、16、17は、試験体1に比べて高いプラトー圧を有するとともに、1.70質量%以上の最大水素吸蔵量を確保することができ、水素の放出を促進する効果と最大水素吸蔵量とのバランスが特に優れていた。
試験体18は、各成分の含有量は上記特定の範囲内ではあるが、図1及び表1に示すように、B2型の結晶構造を有するTiNi相が主相となった。その結果、試験体18の最大水素吸蔵量は、試験体2〜17に比べて格段に低くなった。
試験体19は、Nbの置換量が上記特定の範囲よりも多かった。そのため、表1に示すように、B33型の結晶構造を有する相が主相であるものの、試験体2〜17に比べて最大水素吸蔵量が格段に低くなった。
(実施例2)
本例は、表3及び表4に示すように水素吸蔵合金の組成を変更した例である。本例においては、実施例1と同様の方法により表3及び表4に示す組成を有する試験体20〜24を作製した。そして、実施例1と同様の方法により結晶構造解析及び静的水素吸蔵特性の評価を行った。これらの結果は、表3及び表4に示した通りであった。
また、図5には、試験体20〜24のX線回折パターンを示した。図5の縦軸は回折強度(相対強度)であり、横軸は回折角2θ(°)である。図6には、試験体21及び試験体23の水素吸蔵過程における圧力−水素等温線を、図7には、試験体21及び試験体23の水素放出過程における圧力−水素等温線をそれぞれ示した。図6及び図7の縦軸は平衡水素圧(MPa)であり、横軸は水素濃度(質量%)である。なお、図6及び図7は、温度100℃における圧力−水素等温線である。
Figure 0006958611
Figure 0006958611
表3及び表4に示したように、試験体20〜22におけるZr、Ti、Nb及びNiの組成は上記特定の範囲内にある。更に、試験体20〜22における、Zrに対するTiの原子数比率Ti/Zrの値は0.800〜1.050の範囲内にある。そのため、図5に示すように、試験体20〜22のX線回折パターンには、B33型以外の結晶構造に由来する回折ピークが存在せず、B33型の結晶構造に由来する回折ピークのみが検出された。
また、試験体20〜22は、Zrの一部がTi及びNbによって置換されているため、ZrNi合金(試験体1)に比べて回折ピークの位置が高角度側にシフトし、格子体積が縮小する傾向を示した。図5に示したX線回折パターンによれば、試験体20〜22は、ほとんど全体がB33型の結晶構造を有していることが理解できる。
また、表4と表2との比較から、試験体20〜22は、ZrNi合金の水素吸蔵量(表2、試験体1)と同等の水素吸蔵量を有し、かつ、ZrNi合金よりも格段に高いプラトー圧を有している。これらの結果から、Zrに対するTiの原子数比率Ti/Zrを0.800〜1.050の範囲内にすることにより、ZrNi合金における高い水素吸蔵量を維持しつつ水素の放出をより促進できることが容易に理解できる。
一方、試験体23及び試験体24は、Tiの置換量が上記特定の範囲よりも多く、Ti/Zrの値が1.050よりも大きかった。そのため、試験体23及び試験体24にはB33型の結晶構造が形成されず、ほぼ全体がB2型の結晶構造となった。その結果、試験体2〜17(表2参照)及び試験体20〜22に比べて最大水素吸蔵量が格段に低くなった。

Claims (2)

  1. 組成がZrATixNbyNiz(但し、0.20≦x≦0.50、0<y≦0.05、0.95≦z≦1.05であり、Aは1−x−yまたは2−x−y−zのいずれかである。)であり、
    主相の結晶構造がB33型である、水素吸蔵合金。
  2. Zrに対するTiの原子数比率Ti/Zrが0.800以上1.050以下である、請求項1に記載の水素吸蔵合金。
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