JP6955871B2 - 金属防食塗料組成物、及び金属防食剤とその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、屋外構造物、大型鋼構造物、船舶などの防錆塗料の成分として有用な金属防食塗料組成物、及び金属防食剤とその用途に関する。
従来、橋梁、プラント及びタンクなどの金属構造物(金属部材)は、屋外で使用され、太陽からの紫外線、酸素、水(例えば、雨水、海水など)、腐食性イオン(例えば、塩化物イオンなど)などによって劣化し易いため、美観維持と劣化防止(金属防食)のために防食塗料が塗装されている。防食塗料としては、エポキシ系樹脂を主成分とするエポキシ系塗料、エポキシ系樹脂などのバインダー樹脂に亜鉛末を含有した亜鉛末含有塗料などが用いられているが、これらの防食塗料の金属防食性能を一層向上させ、塗り替え周期を長くし、維持管理費用などのコストを削減することが求められている。
特開2015−67762号公報(特許文献1)には、特定の軟化点を有するエポキシ樹脂(a)及び塗膜改質剤(b)を特定の割合で含む主剤成分(A)と、硬化剤成分(B)とを特定の割合で含む塗料組成物が記載されている。また、この文献には、前記硬化剤成分(B)としてアミン系硬化剤を使用すると、金属防食性が向上することが記載されている。しかし、前記所定のエポキシ系樹脂とアミン系硬化剤とを組み合わせるだけでは、金属防食性を十分に向上できない。
一方、特開2007−284600号公報(特許文献2)には、バインダー樹脂(例えば、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂など)、亜鉛末、溶媒とともに腐食性イオン固定化剤(例えば、ハイドロカルマイトなど)を所定の割合で含めることにより、腐食性イオン固定化剤が、腐食性イオンを効率よく固定化するため金属防食性を向上できることが記載されている。しかし、バインダー樹脂に対する前記腐食性イオン固定化剤の割合が多いため、塗膜の物性が低下する虞がある。
なお、WO2015/064394号(特許文献3)には、ポリオレフィンとポリシランとを含む組成物で形成した成形体は、温水などの加熱水に晒されても酸化劣化を防止できることが記載されているが、この文献には前記組成物を塗料用に用いること、さらにはポリシランが金属防食機能を有することについて記載されていない。
特開2015−67762号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2007−284600号公報(特許請求の範囲、実施例) WO2015/064394号(請求の範囲、実施例)
従って、本発明の目的は、金属防食性に優れた塗料組成物、及び高い金属防食性を付与するのに有用な金属防食剤とその用途を提供することにある。
本発明の他の目的は、金属部材との密着性(付着性)に優れた塗料組成物、及び金属防食剤とその用途を提供することにある。
本発明の別の目的は、耐候性を改善するのに有用な塗料組成物、及び金属防食剤とその用途を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、塗膜形成能を有する樹脂とポリシランとを含む塗料組成物を金属部材の表面に塗装すると、ポリシランが金属防食剤として機能するため、金属部材に優れた金属防食性を付与できること、さらには金属部材との密着性(付着性)及び耐候性を改善できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の塗料組成物は、塗膜形成能を有する樹脂とポリシランとを含む。前記樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂及び/又はポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂)であってもよい。本発明の塗料組成物は、さらに、防錆顔料(例えば、亜鉛元素を含む防錆顔料、リン酸金属塩の防錆顔料など)を含んでいてもよい。
ポリシランは、下記式(b1)及び(b2)で表される構造単位のうち少なくとも1つの構造単位を有してもよい。
Figure 0006955871
(式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基、有機基又はシリル基を示す。)
及びRは、同一又は異なって、直鎖状もしくは分岐鎖状アルキル基又は置換基を有してもよいアリール基であってもよく、Rが、置換基を有してもよいアリール基であってもよい。Rは、メチル基又はエチル基であってもよく、R及びRは、フェニル基であってもよい。前記式(b1)で表される構造単位と前記式(b2)で表される構造単位との割合は、前者/後者(モル比)=50/50〜100/0であってもよい。ポリシランの割合は、樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部程度であってもよい。
本発明の塗料組成物は、種々の形態の塗料として利用でき、例えば、下塗塗料又は上塗塗料であってもよい。
本発明は、ポリシランを有効成分として含む金属防食剤;前記塗料組成物を金属部材の表面に塗装し、金属部材を防食する方法;塗膜にポリシランを含有させて金属部材を防食するためのポリシランの使用を含む。
なお、本明細書において、「塗料組成物」とは、塗料のみならず、金属部材を被覆するためのコーティング剤なども含む。また、「塗膜形成成分」とは、塗料組成物から揮発性成分(溶剤など)が除去された成分(塗膜を形成する固形成分)を意味する。
本発明の塗料組成物は、ポリシランが金属防食剤として機能するため、金属防食性を付与でき、金属部材の腐食を有効に防止できる。また、金属部材との密着性(付着性)及び耐候性にも優れる。そのため、本発明では、金属部材を長期間に亘り有効に保護できる。
図1は実施例2及び比較例2の結果を示す写真である。
[塗料組成物及び金属防食剤]
本発明の塗料組成物は、塗膜形成能を有する樹脂と、ポリシランとを含む。ポリシランは、金属部材に対して高い還元作用(還元効率)を示すためか、金属防食性に優れる。そのため、金属部材の腐食を防止できるだけでなく、例えば、腐食生成物(例えば、錆など)の成長(拡大)を抑制できる。さらに、ポリシランは可撓性に優れており、また金属部材などとの親和性も良好であり、金属部材に対する密着性(付着性)を向上できる。そのため、本発明の塗料組成物を用いて塗膜を形成すると、金属部材に対して高い耐久性を付与できる。
塗料組成物の形態は、特に限定されず、油性(溶剤系)塗料、水系塗料(例えば、エマルション系塗料、水溶性塗料など)、無溶剤系塗料(例えば、粉体塗料、ホットメルト型塗料など)などであってもよく、通常、溶剤系塗料である。
本発明の塗料組成物は、塗膜形成成分として樹脂(又はバインダー樹脂)を含んでいる。樹脂(又はバインダー樹脂)は、熱可塑性樹脂(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのスチレン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性エラストマーなど)であってもよく、硬化性樹脂(例えば、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂(又はウレタンプレポリマー)、アミノ系樹脂などの熱硬化性樹脂;光硬化性樹脂など)であってもよい。熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂は、フルオロエチレン−アルキルビニルエーテル共重合体などのフッ素樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂などの耐候性に優れた樹脂であってもよい。また、熱可塑性樹脂は、架橋剤と組み合わせて、熱硬化性樹脂系、例えば、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂などを形成してもよい。
これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。本発明では、必ずしも三次元網目構造又は架橋構造を有する塗膜を形成する必要はなく、乾燥塗膜を形成してもよいが、防食性、耐久性の点で、三次元網目構造又は架橋構造を有する塗膜を形成するのが有利である。
これらの樹脂のうち、常温乾燥、加熱(焼き付け)などにより硬化可能な樹脂、例えば、油脂成分(例えば、不飽和高級脂肪酸など)が導入されたアルキド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂など)、光(例えば、紫外線など)により硬化可能な光硬化性樹脂などを用いる場合が多く、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂及び/又はポリウレタン樹脂など)を用いる場合が多い。なお、ポリシランは、これらの樹脂(アルキド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、光硬化性樹脂など)との相溶性(混和性)に優れている。
[熱硬化性アクリル樹脂]
熱硬化性アクリル樹脂は、グリシジル基を有するアクリル樹脂で形成できるとともに、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を含有するアクリル樹脂と、架橋剤とで形成できる。
グリシジル基を有するアクリル樹脂は、グリシジル(メタ)アクリレートと、共重合性単量体[アルキル(メタ)アクリレート、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルなどのC1−12アルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−6アルキル(メタ)アクリレート;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル単量体;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系単量体;酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体、(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体など]との共重合体などが例示できる。これらの共重合性単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、必要であれば、カルボキシル基含有単量体(例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸など)を共重合させてもよい。グリシジル基を有するアクリル樹脂は、エポキシ樹脂と同様に熱硬化性樹脂を形成してもよい。
ヒドロキシル基含有アクリル樹脂としては、例えば、前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[ヒドロキシC2−6アルキル(メタ)アクリレートなど]と、共重合性単量体[例えば、前記C1−12アルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド系単量体;芳香族ビニル単量体;ビニルエステル系単量体;シアン化ビニル単量体など]などとの共重合体などが例示できる。これらの共重合性単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、必要であれば、前記カルボキシル基含有単量体(例えば、(メタ)アクリル酸など)を共重合させてもよい。
カルボキシル基含有アクリル樹脂は、前記カルボキシル基含有単量体(例えば、(メタ)アクリル酸など)と、共重合性単量体[例えば、前記C1−12アルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、前記ヒドロキシC2−6アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド系単量体;芳香族ビニル単量体;ビニルエステル系単量体;シアン化ビニル単量体など]との共重合体が例示できる。
これらのアクリル樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定方法で、例えば、1000〜100000、好ましくは2000〜50000、さらに好ましくは3000〜30000程度であってもよい。
グリシジル基を有するアクリル樹脂のエポキシ当量は、下記エポキシ樹脂と同様に、例えば、70〜5000g/eq、好ましくは100〜3000g/eq、さらに好ましくは150〜1000g/eq程度であってもよい。グリシジル基を有するアクリル樹脂は、後述するエポキシ樹脂の硬化剤と組み合わせて使用できる。
また、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂の水酸基価、カルボキシル基含有アクリル樹脂の酸価は、例えば、10〜200mgKOH/g、好ましくは20〜150mgKOH/g、さらに好ましくは30〜100mgKOH/g程度であってもよい。
ヒドロキシル基含有アクリル樹脂は、例えば、アミノ樹脂系硬化剤(例えば、メラミン樹脂、グアナミン樹脂など)、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤などの硬化剤と組み合わせて熱硬化性アクリル樹脂を形成してもよい。
カルボキシル基含有アクリル樹脂は、例えば、エポキシ系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ジヒドラジド系硬化剤、アジリジン系硬化剤などの硬化剤と組み合わせて熱硬化性アクリル樹脂を形成してもよい。
硬化剤の割合は、ヒドロキシル基又はカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、例えば、1〜100質量部、好ましくは2〜75質量部、さらに好ましくは3〜50質量部(例えば、5〜25質量部)程度であってもよい。
[熱硬化性ポリエステル樹脂]
熱硬化性ポリエステル樹脂は、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を含むポリエステル樹脂と架橋剤とで形成できる。
ヒドロキシル基含有ポリエステル樹脂は、例えば、ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのアルカンジカルボン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸など)と、ジアルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのC2−10アルキレングリコール類、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのジアルキレングリコール類、トリエチレングリコールなどのトリアルキレングリコール類、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのオキサイド付加体(例えば、エチレンオキサイド付加体、プロピレンオキサイド付加体など)など)との反応、ラクトン(例えば、ε−カプロラクトンなど)又はヒドロキシカルボン酸の重合、ジカルボン酸とジオールとラクトン及び/又はヒドロキシカルボン酸との反応により得ることができる。通常、アルカンジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコール類との反応により得られる場合が多い。このような反応において、ジカルボン酸に対して過剰のジオールが使用される。さらに、多価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ペンタエリトリット、ジペンタエリトリットなど)を併用することにより、必要により分岐構造を導入し、水酸基価を調整できる。
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、反応において、ジオールに対して過剰のジカルボン酸が使用される。前記酸価を調整するため、多価カルボン酸(例えば、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸など)を使用してもよい。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるヒドロキシル基又はカルボキシル基含有ポリエステル樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、例えば、500〜50000、好ましくは800〜30000、さらに好ましくは1000〜25000程度であってもよい。
これらのポリエステル樹脂の水酸基価及び酸価は、前記アクリル樹脂と同様に、例えば、10〜200mgKOH/g、好ましくは20〜150mgKOH/g、さらに好ましくは30〜100mgKOH/g程度であってもよい。
ヒドロキシル基含有ポリエステル樹脂は、前記ヒドロキシル基含有アクリル樹脂の硬化剤と同様の硬化剤(メラミン樹脂など)と組み合わせて熱硬化性ポリエステル樹脂を形成してもよい。
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂も、前記カルボキシル基含有アクリル樹脂の硬化剤と同様の硬化剤(エポキシ系硬化剤など)と組み合わせて熱硬化性ポリエステル樹脂を形成してもよい。
なお、油脂成分(飽和又は不飽和高級脂肪酸など)が導入されたアルキド樹脂も、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有していてもよく、硬化剤と組み合わせることにより、熱硬化性アルキド樹脂(例えば、メラミン−アルキド樹脂)を形成してもよい。
[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂は、慣用のエポキシ樹脂、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、環状オキシラン型エポキシ樹脂(例えば、シクロアルケン環の二重結合を酸化してエポキシ化したエポキシ樹脂)などが例示できる。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂などのビス(ヒドロキシフェニル)C1−10アルカン骨格を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂など)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型、ノニルフェノールノボラック型などのアルキルフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂など)、含フルオレン型エポキシ樹脂(例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシアリール)フルオレン(例えば、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−グリシジルオキシ−1−ナフチル)フルオレンなど)、9,9−ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン(例えば、9,9−ビス(4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−(2−グリシジルオキシエトキシ)−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−(2−グリシジルオキシエトキシ)−1−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシアリール)フルオレンなど)などが例示できる。
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、多価カルボン酸のグリシジルエステル(例えば、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルテレフタレート、ジメチルグリシジルフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレートなど)などが例示できる。
環状オキシラン型エポキシ樹脂としては、例えば、アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート、ビニルシクロペンタジエンジオキシド、ビニルシクロヘキセンモノ乃至ジオキシドなどが例示できる。
これらのエポキシ樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのエポキシ樹脂の中でも、通常、ビスフェノール型エポキシ樹脂(特にビスフェノールA型)などを用いる場合が多い。
エポキシ樹脂は、塗膜の物性(例えば、柔軟性など)を向上させるために変性エポキシ樹脂であってもよい。変性の方法としては、例えば、ウレタン変性、フェノール変性、アミン変性などが挙げられる。
また、塗膜の物性(例えば、柔軟性など)を向上させるために、エポキシ樹脂及び/又は変性エポキシ樹脂の他に、他の樹脂を混合してもよい。例えば、フェノール系樹脂(例えば、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂など)、キシレン樹脂、トルエン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂、石油樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂などを用いることができる。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、70〜5000g/eq、好ましくは100〜3000g/eq、さらに好ましくは150〜1000g/eq程度であってもよい。エポキシ当量は、例えば、JIS K 7236に規定されている測定方法により算出できる。
エポキシ樹脂を含む塗料組成物は、硬化剤(架橋剤)を含んでもよい。エポキシ樹脂の硬化剤としては、慣用の硬化剤、例えば、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール樹脂などが例示できる。これらの硬化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
アミン系硬化剤としては、例えば、ポリアミン類(例えば、脂肪族ポリアミン類(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC2−10アルカンジアミン、ジエチレントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリ(メチルアミノ)ヘキサン、イミノビスプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの脂肪族ジ乃至ヘキサアミン類など)、脂環族ポリアミン類(例えば、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、N−エチルアミノピペラジン、1,3,5−トリス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジ乃至ヘキサアミン類など)、芳香族ポリアミン類(例えば、ジアミノフェニル類、ビス(アミノフェニル)アルカン類(例えば、ビス−(4−アミノフェニル)メタン、ジアミノジフェニルスルホン、4−クロローオルトフェニレンジアミンなどの芳香族ジ乃至ヘキサアミン類など)、芳香脂肪族ポリアミン類(例えば、メタキシリレンジアミン、テトラクロロ−p−キシリレンジアミンなどの芳香脂肪族ジ乃至ヘキサアミン類など)、アルカノールアミン類(例えば、エタノールアミンなど)、アミノベンゾエート系硬化剤(例えば、アルキレンビス(アミノベンゾエート)類、(例えば、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)など)など)、ポリアルキレンオキサイド−ビス(アミノベンゾエート)類(例えば、ポリテトラメチレンオキサイド−ジ−p−アミノベンゾエートなど)、これらの変性物(例えば、エポキシ付加物、マンニッヒ反応物など)などが例示できる。これらのアミン系硬化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのアミン系硬化剤の中でも、通常、低温で硬化できる点から脂肪族ジ乃至ヘキサアミン類(特に脂肪族ジアミン類)、芳香族ジ乃至ヘキサアミン類、これらの変性物などを用いる場合が多い。
酸無水物系硬化剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸無水物(例えば、ドデセニル無水コハク酸など)、脂環族カルボン酸無水物(例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物など)、芳香族カルボン酸無水物(例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物など)などが例示できる。これらの酸無水物系硬化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
硬化剤の使用量は、官能基当量(例えば、アミン系硬化剤のアミン当量、酸無水物系硬化剤の酸無水物基当量)として、エポキシ当量1当量に対して、例えば、0.5〜3当量、好ましくは0.6〜1.5当量、さらに好ましくは0.8〜1.2当量程度であってもよい。
[ポリウレタン樹脂]
ポリウレタン樹脂は、末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(ウレタンプレポリマー)であってもよい。このようなポリウレタン樹脂は、通常、ポリイソシアネート成分とポリオール(特にポリマーポリオール)成分との反応物であってもよい。
また、ポリウレタン樹脂は、主剤としてポリオールを含むとともに、硬化剤としてポリイソシアネート成分を含む多液型塗料(例えば、二液型塗料)により、塗膜の形態で形成可能なポリウレタン樹脂であってもよい。
(ポリイソシアネート成分)
ポリイソシアネート成分としては、特に限定されず、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートなどが例示できる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルジイソシアネート類、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)など、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルフィド、4,4’−ジフェニルケトンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルスルホンジイソシアネートなどが例示できる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などが例示できる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロペンタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネートなどのC5−8シクロアルカンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添MDI、水添XDI、テトラメチルキシレンジイソシアネートなどが例示できる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンジイソシアネートなどが例示できる。
これらのポリイソシアネートは、3官能以上のポリイソシアネート(例えば、トリイソシアネートなど)であってもよい。
これらのポリイソシアネートは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらのポリイソシアネートの中でも、通常、芳香族ジイソシアネート(特に、TDI、MDIなど)などを用いる場合が多い。
ポリイソシアネート成分は、前記ポリイソシアネートの誘導体、例えば、前記ポリイソシアネート単量体の多量体(2量体、イソシアヌレート環(トリアジン環)を有する3量体、5量体など)、ウレタン変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、ウレア変性体などであってもよい。これらの誘導体も単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、前記ポリイソシアネート単量体と組み合わせて使用してもよい。
(ポリオール成分)
ポリオール成分としては、特に限定されず、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール(例えば、ポリオールのホスゲン化又はジフェニレンカーボネートによるエステル交換反応により得られる反応物など)などが例示できる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、アルキレンオキサイドの単独又は共重合体(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリC2−4アルキレンオキサイド、及びこれらの共重合体など)、ビスフェノールA又は水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体(例えば、ヒドロキシル基に対して1〜5モル程度のC2−4アルキレンオキサイドが付加した付加体)などが例示できる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、セバシン酸などのアルカンジカルボン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸など)と、ジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのC2−10アルキレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの(ポリ)オキシアルキレングリコールなど)との反応、ラクトン(例えば、ε−カプロラクトンなど)又はヒドロキシカルボン酸の重合、多価カルボン酸と多価アルコールとラクトン及び/又はヒドロキシカルボン酸との反応により得ることができる。なお、必要により、多価カルボン酸、ポリオールを用い、分岐構造を導入するとともに、ヒドロキシル基の濃度を調整してもよい。ポリエステルポリオールは、通常、ポリエステルジオールである場合が多い。
これらのポリオール成分は、結晶性であってもよく非結晶性であってもよく、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリオール成分の中でも、通常、ポリエーテルポリオール(特にポリテトラメチレンエーテルグリコール)などを用いる場合が多い。
ポリオール成分(ポリマーポリオール)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定方法において、ポリスチレン換算で、400〜10000、好ましくは500〜8000、さらに好ましくは550〜5000程度であってもよい。
ポリオール成分のヒドロキシル基に対するポリイソシアネート成分のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、例えば、1.2〜5、好ましくは1.3〜4、さらに好ましくは1.5〜2.5程度であってもよい。
ポリウレタン樹脂を含む塗料組成物は、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを含む一液型塗料であってもよく、硬化剤(架橋剤)を含む二液型塗料であってもよい。
硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂の硬化剤の項で例示したアミン系硬化剤、多価アルコール系硬化剤などが例示できる。これらの硬化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
多価アルコール系硬化剤としては、ジオール類[例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルカンジオール、ジエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)又はその水添ビスフェノール類のC2−4アルキレンオキサイド付加体など]、分子中に3以上(例えば、3〜8程度)のヒドロキシル基を有するポリオール類[例えば、トリオール類(グリセリン、トリメチロールエタンなどのアルカントリオール、トリエタノールアミンなど)、テトラオール類(例えば、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、メチルグルコジットなど)、ペンタオール類(キシリトールなど)、ヘキサオール類(ソルビトール、マニトール、ジペンタエリスリトールなど)、オクトオール類(シュクロースなど)など]が例示でき、アルキレンジアミン[例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどのC2−6アルキレンジアミン]のC2−4アルキレンオキサイド付加体(例えば、エチレンオキサイド付加体など)などであってもよい。アルキレンオキサイドの付加モル数は、特に限定されず、例えば、ヒドロキシル基又はアミノ基の活性水素原子に対して1〜2モル程度であってもよい。これらの多価アルコール系硬化剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
多価アルコール系硬化剤(多価アルコール)の分子量は、例えば、60〜350、好ましくは70〜300、さらに好ましくは80〜250程度であってもよい。
硬化剤の使用量は、活性水素原子換算で、プレポリマーのイソシアネート基1モルに対して、例えば、0.5〜3当量、好ましくは0.6〜1.5当量、さらに好ましくは0.8〜1.2当量程度であってもよい。
[光硬化性樹脂]
光硬化性樹脂は、例えば、(メタ)アクリロイル基などのα,β−エチレン性不飽和結合を有するプレポリマー、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどを含んでいてもよい。これらの光硬化性プレポリマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
光硬化性プレポリマーの重量平均分子量は、特に限定されず、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、例えば、500〜30000、好ましくは800〜20000、さらに好ましくは1000〜10000程度であってもよい。
光硬化性樹脂は、多官能(メタ)アクリレートを含んでもよい。多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、分子内に複数(例えば、2〜8程度)の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートが例示できる。2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのC2−10アルカンジオールジ(メタ)アクリレートなど]、グリセリンジ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール類のC2−4アルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
3官能以上(3〜8官能程度)の(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
これらの多官能(メタ)アクリレートは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。多官能(メタ)アクリレートの割合は、光硬化性オリゴマー100質量部に対して、例えば、1〜200質量部、好ましくは10〜150質量部、さらに好ましくは20〜100質量部程度であってもよい。
光硬化性樹脂は、単官能ビニル化合物、例えば、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロイル基を有する化合物[メチル(メタ)アクリレートなどのC1−24アルキル(メタ)アクリレート類;ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの橋架け環式(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレートなどのアラルキル(メタ)アクリレート類など]を含んでいてもよい。単官能ビニル化合物の使用量は、光硬化性オリゴマー100質量部に対して、0〜50質量部、好ましくは5〜30質量部程度であってもよい。
光硬化性樹脂を含む塗料用組成物は、さらに光重合開始剤、増感剤を含んでもよい。
光重合開始剤は、活性光線の種類に応じて選択でき、活性光線が紫外線の場合、例えば、ベンゾイン類(例えば、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類など)、アセトフェノン類(例えば、アセトフェノンジエチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−フェニル−2−ヒドロキシ−アセトフェノンなど)、プロピオフェノン類(p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなど);ブチリルフェノン類[1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オンなど];アミノアセトフェノン類[2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−ジメチルアミノフェニル)−ブタン−1−オンなど];ベンゾフェノン類(例えば、ベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなど);ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなど);チオキサンテン類(チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテンなど);アントラキノン類(2−エチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノンなど);(チオ)キサントン類(チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなど);アクリジン類(1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタンなど);トリアジン類(2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジンなど);スルフィド類(ベンジルジフェニルサルファイドなど);アシルフォスフィンオキシド類(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドなど)などが例示できる。これらの光重合開始剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
なお、光重合開始剤は、市販品、例えば、商品名「イルガキュア」「ダロキュア」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、商品名「サイラキュア」(ユニオンカーバイド社製)などとして入手できる。
光重合開始剤の割合は、重合性成分(光硬化性オリゴマー、多官能(メタ)アクリレート及び単官能ビニル化合物の総量)100質量部に対して、例えば、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜8質量部、さらに好ましくは0.5〜5質量部程度であってもよい。
増感剤としては、例えば、第三級アミン類(例えば、トリアルキルアミン、トリアルカノールアミン、ジアルキルアミノ安息香酸又はそのエステル、アクリジンなど)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリンなど)、キノリン類(例えば、2−(2−(4−ジメチルアミノフェニル)エテニル)キノリンなど)、キノン類(例えば、ベンゾキノン、アントラキノンなど)、ピレン類(例えば、1−ニトロピレンなど)、トリフェニルホスフィンなどのフォスフィン類、N,N−ジメチルトルイジンなどのトルイジン類、芳香族炭化水素類(例えば、アセナフテン、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセンなどのアントラセン類など)などを含んでいてもよい。
増感剤の割合は、光重合開始剤100質量部に対して、例えば、0.1〜100質量部、好ましくは5〜80質量部、さらに好ましくは10〜50質量部程度であってもよい。
[ポリシラン]
ポリシランは、前述のとおり、金属防食性に優れており、金属防食剤として機能する。このため、本発明には、ポリシランを有効成分として含有する金属防食剤も含み、金属防食剤は、ポリシラン単独で構成してもよい。本発明では、このようなポリシランを塗膜形成成分(塗膜)に含有させることにより、金属部材を有効に防食できる。
ポリシランは、主鎖がSi−Si結合で構成された重合体を意味し、環状、非環状(直鎖状、分岐鎖状、ネットワーク状(網目状)など)のポリシラン、これらを組み合わせたポリシラン(例えば、直鎖状とネットワーク状とを組み合わせたポリシラン)などが例示できる。これらのポリシランの中でも、有機溶媒に対する溶解性、還元作用に優れる点から非環状ポリシラン、及びこれらを組み合わせたポリシランが好ましい。
これらのポリシランを構成する構造単位(シラン単位)としては、下記式(b1)〜(b4)で表される構造単位(シラン単位(b1)〜(b4))が例示できる。通常、ポリシランは、下記式(b1)及び(b2)で表される構造単位のうち少なくとも1つの構造単位を有することが多い。
Figure 0006955871
(式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基、有機基又はシリル基を示す)
前記式(b1)〜(b2)、(b4)において、R〜Rで表される有機基としては、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが例示でき、通常、炭化水素基である場合が多い。
炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状アルキル基(アルキル基)、アリール基、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル基などのC5−10シクロアルキル基など)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6−12アリール−C1−4アルキル基など)、アルケニル基(例えば、ビニル、アリル基などのC2−6アルケニル基など)、シクロアルケニル基(例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などのC5−10シクロアルケニル基など)などが例示でき、アルキル基又はアリール基であるのが好ましい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基などの直鎖状もしくは分岐鎖状C1−10アルキル基などが例示でき、好ましくはC1−6アルキル基、さらに好ましくはC1−4アルキル基、特にメチル基又はエチル基であってもよい。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのC6−12アリール基などが例示でき、好ましくはC6−10アリール基、さらに好ましくはフェニル基であってもよい。アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基の個数は、特に限定されず、例えば、1又は複数(例えば、2〜4個)であってもよく、複数の場合は、置換基の種類が異なってもよい。このような置換基を有するアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、メチルナフチル基などのC1−6アルキルC6−10アリール基(例えば、モノ乃至トリC1−4アルキルC6−10アリール基、特にモノ又はジC1−4アルキルフェニル基など)などであってもよい。
これらの炭化水素基の中でも、アルキル基(特にメチル基、エチル基などのC1−4アルキル基)、アリール基(特にフェニル基)であるのが、有機溶媒に対する溶解性に優れるため有利である。
前記式(b1)において、RとRとの組み合わせは、例えば、アルキル基同士(例えば、C1−4アルキル基(特にエチル基又はメチル基))、アリール基(特にフェニル基)同士、アルキル基及びアリール基の組み合わせであってもよい。特に、RとRとの組み合わせは、有機溶媒に対する溶解性と金属防食性とを向上させる点からアルキル基(例えば、C1−4アルキル基(特にメチル基))とアリール基(特にフェニル基)との組み合わせが好ましく、特に、メチル基又はエチル基(特にメチル基)とフェニル基との組み合わせが好ましい。
シラン単位(b1)とシラン単位(b2)との割合は、前者/後者(モル比)=10/90〜100/0の広い範囲から選択でき、例えば、50/50〜100/0(例えば、55/45〜90/10)、好ましくは60/40〜100/0(例えば、65/35〜85/15)、さらに好ましくは70/30〜100/0(例えば、75/25〜80/20)程度であってもよい。
ポリシラン全体に対するシラン単位(b1)及びシラン単位(b2)の合計割合は、10〜100モル%の広い範囲から選択でき、例えば、30モル%以上(例えば、40〜90モル%)、好ましくは50モル%以上(例えば、60〜85モル%)、さらに好ましくは70モル%以上(例えば、75〜80モル%)、特に90モル%以上、通常、100モル%であってもよい。
ポリシラン全体に対するシラン単位(b3)の割合は、例えば、0〜20モル%(例えば、1〜10モル%、好ましくは2〜5モル%)程度であってもよい。
ポリシラン全体に対するシラン単位(b4)の割合は、例えば、0〜40モル%(例えば、1〜20モル%、好ましくは5〜10モル%)程度であってもよい。
ポリシランの少なくとも一部の末端基は、シラノール基(ヒドロキシル基)であってもよい。末端基がシラノール基(ヒドロキシル基)であると、シラノール基との反応性を有するエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ヒドロキシル基含有樹脂、カルボキシル基含有樹脂などとの反応又は結合により、塗膜の機械的強度、耐摩耗性を向上できるため有利である。
ポリシランの重合形態は、特に限定されず、単独重合体、または共重合体(例えば、ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体など)であってもよい。
なお、ポリシランは、シロキサン結合(−Si−O−Si−)を有さないのが好ましいが、不可避的に微量のシロキサン結合を有する場合がある。
ポリシランの平均重合度は、ケイ素原子換算(すなわち、一分子あたりのケイ素原子の平均数)で、例えば、2〜100、好ましくは3〜80、さらに好ましくは5〜50(特に10〜30)程度であってもよい。ポリシランの重量平均分子量は、GPC(ポリスチレン換算)による測定方法において、例えば、50〜30000(例えば、100〜20000)、好ましくは100〜3000、さらに好ましくは200〜1000(特に300〜800)程度である。
これらのポリシランは、市販品を用いてもよく、調製してもよい。調製する場合、前記式(b1)〜(b4)で表される単位を有するハロシラン類を用いた種々の調整方法、例えば、マグネシウムを還元剤としてハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「マグネシウム還元法」)などにより調製できる。
ポリシランの割合は、塗膜形成成分(塗膜)全体に対して、0.1〜99質量%(例えば、0.1〜50質量%)の広い範囲から選択でき、例えば、0.2〜25質量%(例えば、0.3〜20質量%)、好ましくは0.5〜15質量%(例えば、0.8〜10質量%)、さらに好ましくは1〜8質量%(例えば、1.2〜5質量%)程度であってもよい。
ポリシランの割合は、樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部(例えば、0.1〜30質量部)の広い範囲から選択でき、例えば、0.2〜25質量部(例えば、0.3〜20質量部)、好ましくは0.5〜15質量部(例えば、0.7〜12質量部)、さらに好ましくは1〜10質量部(例えば、1.5〜8質量部)程度であってもよい。本発明の塗料組成物では、ポリシラン(金属防食剤)の割合を樹脂に対して小さくしても、効率よく防食することができるが、ポリシランの割合が小さすぎると、金属部材との密着性(付着性)及び金属防食性が十分でない虞がある。一方、大きすぎると、塗膜の乾燥性の不良、塗膜の初期強度の低下に加えて、長期暴露後に塗膜が脆化する虞がある。
[顔料]
本発明の塗料組成物は、顔料を含まない透明塗料(クリヤー塗料)であってもよく、塗膜形成成分(塗膜)に顔料を含む顔料着色塗料(エナメル塗料)であってもよい。前記顔料としては、着色顔料、体質顔料、防食顔料などが例示できる。
着色顔料としては、例えば、白色顔料[二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リトポン(ZnS+BaSO)など]、黒色顔料(例えば、カーボンブラックなど)、赤色顔料(例えば、ベンガラ、鉛丹、モリブデンレッド、カドミウムレッド、ピグメントレッド、ウォッチングレッド、キナクリドンレッドなど)、黄色顔料(例えば、黄色酸化鉄、黄鉛、硫化セリウム、リサージ、カドミウムイエロー、クロムイエロー、ビスマスイエロー、ピグメントイエロー、ハンザイエロー、ファーストイエローなど)、橙色顔料(例えば、モリブデートオレンジ、ピグメントオレンジ、パーマネントオレンジなど)、青色顔料(例えば、紺青、群青、コバルトブルー、フタロシアニンブルーなど)、緑色顔料(例えば、クロムグリーン、フタロシアニングリーンなど)、紫色顔料(マンガンバイオレット、ジオキサジンバイオレットなど)などが例示できる。
体質顔料としては、例えば、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ガラス(例えば、石英ガラスなど)などが例示できる。
防錆顔料としては、亜鉛含有防錆顔料、リン酸系防錆顔料(例えば、リン酸アルミニウム、縮合リン酸アルミニウム、リン酸鉄などのリン酸金属塩など)などが例示できる。
亜鉛含有防錆顔料としては、亜鉛元素を含む防錆顔料、例えば、金属亜鉛末(金属亜鉛粉末)、亜鉛含有合金、亜鉛化合物(例えば、リン酸亜鉛、オルトリン酸亜鉛、リン酸亜鉛カルシウムなどのリン酸亜鉛系化合物など)などが例示できる。
亜鉛含有合金(合金粉)において、亜鉛と合金を形成する金属としては、例えば、スズ、マグネシウム、ニッケル、銅、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、アルミニウムなどが例示できる。これらの金属成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの金属成分の中でも、通常、スズ、マグネシウム、ニッケル、アルミニウムなどを使用することが多い。
これらの顔料は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの顔料の中でも、防錆顔料が好ましく、亜鉛含有防錆顔料(特に金属亜鉛末)がさらに好ましい。
着色顔料、体質顔料の平均粒子径は、これらの顔料の種類により適宜選択できるが、例えば、5μm以下(例えば、5nm〜1μm)、好ましくは0.5μm以下(例えば、10nm〜0.2μm程度)であってもよい。
防錆顔料(例えば、亜鉛含有防錆顔料、特に金属亜鉛末)の平均粒子径は、均一に分散でき、かつ防食作用が有効に作用する点から、例えば、1〜30μm、好ましくは2〜20μm、さらに好ましくは3〜10μm程度であってもよい。平均粒子径が小さすぎると、表面積が大きくなりすぎて塗料組成物の保存安定性が低下する虞があり、大きすぎると、亜鉛粒子同士の接触面積が小さくなりすぎて防食作用が有効に作用しない虞がある。
これらの平均粒子径は、例えば、レーザー回折法(光散乱法)を利用して測定できる。
着色顔料、体質顔料の割合は、これらの顔料の種類により適宜選択でき、樹脂100質量部に対して、例えば、75質量部以下(例えば、1〜70質量部)、好ましくは60質量部以下(例えば、5〜50質量部、好ましくは10〜40質量部、さらに好ましくは15〜30質量部程度)であってもよい。
本発明の塗料組成物は、亜鉛含有防錆顔料を含まなくても、高い防食性機能を有するが、さらに防食性を高めるために亜鉛含有防錆顔料を含んでもよい。
亜鉛含有防錆顔料(例えば、金属亜鉛末)の割合は、樹脂100質量部に対して、例えば、1000質量部以下(例えば、0〜950質量部)好ましくは900質量部以下(例えば、100〜850質量部)、さらに好ましくは800質量部以下(例えば、200〜700質量部)であってもよい。顔料の割合が大きすぎると、形成した塗膜が脆くなり易くクラックが発生したり、金属部材に対する密着性(付着性)が低下したりする虞がある。
[腐食性イオン固定化剤]
塗料組成物は、必要により、腐食性イオンを不活性化するために腐食性イオン固定化剤(例えば、ハイドロカルマイト、ハイドロタルサイトなど)を含んでもよい。
[溶剤]
本発明の塗料組成物は、さらに溶剤を含んでもよい。前記溶剤は、水であってもよく、有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、特に限定されず、例えば、炭化水素類[例えば、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂環族炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、へプタン、ミネラルスピリットなど)]、ケトン類(例えば、メチルエチルケトンなどのジC1−4ジアルキルケトンなど)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸C1−6アルキルエステルなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、ブタノールなどの一価アルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの多価アルコール類など)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのC1−6アルキルセロソルブ類など)、カルビトール類(例えば、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどのC1−4アルキルカルビトール類など)、グリコールエーテルエステル類(例えば、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、テルペン類などが例示できる。これらの有機溶媒は、単独で又は混合溶媒として使用できる。
本発明の塗料組成物は、慣用の塗料用添加剤、例えば、湿潤剤、顔料分散剤、増粘剤、カップリング剤、消泡剤、沈降防止剤、皮張防止剤、重合防止剤、レベリング剤、チキソトロピック剤、色別れ防止剤、艶消し剤、難燃剤、安定剤(例えば、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤など)、可塑剤、軟化剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。
本発明の塗料組成物は、樹脂とポリシランとを含む組成物を慣用の方法により混合して調製できる。樹脂とポリシランとの割合は、塗料組成物の項で例示した割合であればよい。
[塗膜]
本発明では、前記塗料組成物を金属部材の表面に塗装することにより金属防食性に優れた塗膜を形成できる。そのため、本発明は、前記塗料組成物を金属部材の表面に塗装し、金属部材を防食する方法も含む。金属部材の塗装は、例えば、粉体塗料組成物では、溶射、静電塗装、流動浸漬などにより塗装してもよく、流動性の液状塗料組成物では、金属部材の表面に塗布し、乾燥してもよい。
塗布(コーティング)工程では、塗料組成物の種類に応じて、慣用の塗布手段を用いて塗布してもよい。例えば、溶媒を含む塗料組成物では、前記塗布手段として、エアースプレー、エアレススプレー、ロールコーター、ハケなどを用いて塗布(コーティング)してもよい。
乾燥温度は、特に限定されず、例えば、室温〜120℃、好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは40〜90℃程度であってもよく、乾燥時間は、例えば、0.5〜48時間、好ましくは1〜24時間、さらに好ましくは2〜12時間程度であってもよい。
なお、上記乾燥により塗膜を形成してもよく、硬化性樹脂(又はバインダー樹脂)の種類によっては、例えば、塗料の種類に応じて、常温硬化させてもよく、加熱(焼付)硬化してもよく、光硬化性樹脂では、光硬化により硬化してもよい。
加熱(焼付)温度は、特に限定されず、塗料の種類、塗膜の厚さにより適宜選択できるが、例えば、100〜300℃、好ましくは120〜250℃、さらに好ましくは140〜200℃程度であってもよい。加熱(焼付)時間は、例えば、10〜120分、好ましくは15〜60分(例えば、20〜40分)程度であってもよい。なお、乾燥温度と加熱(焼付)温度とは重複することがあるが、乾燥温度は溶媒を除去するための温度を意味し、加熱(焼付)温度は架橋又は硬化塗膜を形成するための温度を意味する。
光硬化工程では、未硬化塗膜に活性光線を照射すればよく、活性光線としては、紫外線、可視光線などが例示でき、通常、紫外線である。塗膜の単位面積当たりの活性光線(例えば、紫外線)の照射エネルギーの値は、例えば、100〜5000mJ/cm、好ましくは200〜4000mJ/cm、さらに好ましくは400〜2500mJ/cm程度であってもよい。
金属部材の種類は特に制限されず、アルミニウム、亜鉛、銅、チタン、ニッケル、錫、マグネシウム、鉄又はこれらの金属成分を含む合金(例えば、ステンレススチールなど)などであってもよく、通常、腐食性金属部材、特に鉄鋼部材が使用される。金属部材には、防食性を向上させるために慣用の下地処理を施してもよい。
本発明の塗料組成物は、金属防食性、金属部材との密着性(付着性)、耐候性に優れる。このため、単層塗膜、多層塗膜のいずれにも好適に適用できる。本発明では、多層塗膜において、下塗塗料用に適用すると金属防食性及び密着性に優れ、上塗塗料用、中塗塗料用に適用すると耐光性に優れる。
多層塗膜は、例えば、金属部材の表面に形成された下塗層(下塗塗膜)と、下塗層上に形成された上塗層(上塗塗膜)とで形成された二層塗膜であってもよく、さらにこの二層塗膜の下塗層と上塗層に介在する中間層(中塗塗膜)を含む三層塗膜などであってもよい。
塗膜の厚みは、特に限定されず、例えば、1〜500μm、好ましくは10〜400μm、さらに好ましくは50〜300μm程度であってもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
黒皮普通鋼板(150mm×75mm×t2mm)を動力工具で素地調整し、この黒皮普通鋼板の表面に、エポキシ樹脂塗料100質量部にポリシラン(大阪ガスケミカル(株)製「オグソールSI−10−40(前記式(b1)で表され、Rがメチル基であり、Rがフェニル基である構造単位で構成されたポリシラン、Mn=620,Mw=700)」)2質量部を添加した塗料組成物を厚さ約200μm塗布し、乾燥させた後、塗面から鋼素地に達する人口傷をクロスカットにより形成し、塗装試験片を作製した。
なお、エポキシ樹脂塗料は、変性エポキシ樹脂溶液:EPICLON TSR−250−80BX(ウレタン変性エポキシ樹脂の溶剤希釈品、樹脂成分80質量%、DIC株式会社製)40質量部、防錆顔料:K−WHITE Ca650(縮合リン酸アルミニウム、テイカ(株)製)10質量部、体質顔料:タルクTY−86(タルク、東洋化成(株)製)35質量部、沈降性硫酸バリウム(富平加工社製)5質量部及びその他の成分(有機溶剤など)10質量部を含んでいる。
比較例1
ポリシランを添加しない以外は実施例1と同様にして塗装試験片を作製した。
(耐久性試験)
実施例1及び比較例1で得られた塗装試験片について、JIS H8502(JASO法)中性塩水噴霧試験(試験槽内温度35℃,噴霧溶液5%NaCl(pH7))により、塩水噴霧2時間、乾燥処理4時間、湿潤処理2時間の計8時間を1サイクルとし、これを1日に3サイクル行い、150日間供し耐久性能を判定した。耐久性能は、画像処理により算出した発錆面積率を評価基準とした。結果を表1に示す。
Figure 0006955871
実施例2
鉄板(5cm角、黒皮SS材)の表面被膜を5質量%塩酸水に6時間浸漬し、剥離した。
実施例1のエポキシ樹脂塗料92質量部と硬化剤8質量部とを混合し、この混合物90質量部に対して、実施例1で用いたポリシラン「SI−10−40」10質量部を配合し、塗料を作製した。
作製した塗料約0.6gを前記鉄板の剥離面上に均一に刷毛で塗布した。40℃の乾燥機で一晩乾燥した後、2.5質量%塩酸水に360時間浸漬し、膨れを評価したところ、図1に示すように、膨れがなく、ASTM D714−02等級で10であった。
比較例2
ポリシランを添加することなく、実施例2と同様にして塗装試験片を作製し、2.5質量%塩酸水に360時間浸漬し、膨れを評価したところ、図1に示すように、多数の膨れが認められ、ASTM D714−02等級で2Dであった。
実施例2及び比較例2で得られた試験片の膨れの程度を図1に示す。
本発明の塗料組成物は、高い金属防食性、金属部材との高い密着性(付着性)、高い耐候性を有する点からタンク、パイプ、プラントなどの屋外構造物、橋梁などの大型鋼構造物、船舶、車両(鉄道車両)、航空機、建築物、土木建築物などの防食用塗料として好適に利用できる。

Claims (8)

  1. 塗膜形成能を有する樹脂とポリシランと防錆顔料とを含み、
    前記樹脂がエポキシ樹脂及び/又はポリウレタン樹脂であり、
    前記ポリシランが、下記式(b1)及び(b2)で表される構造単位のうち少なくとも1つの構造単位を有し、
    前記ポリシランの重量平均分子量が100〜3000であり、
    かつ前記ポリシランの割合が、前記樹脂100質量部に対して0.1〜30質量部である塗料組成物。
    Figure 0006955871
    (式中、R 及びR は、同一又は異なって、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、R は、置換基を有してもよいアリール基を示す。)
  2. 樹脂が熱硬化性樹脂である請求項1記載の塗料組成物。
  3. 防錆顔料が、亜鉛元素を含む請求項1又は2記載の塗料組成物。
  4. 防錆顔料が、リン酸金属塩である請求項1又は2記載の塗料組成物。
  5. が、メチル基又はエチル基であり、R及びRが、フェニル基である請求項1〜4のいずれかに記載の塗料組成物。
  6. 式(b1)で表される構造単位と式(b2)で表される構造単位との割合が、前者/後者(モル比)=50/50〜100/0である請求項のいずれかに記載の塗料組成物。
  7. 下塗塗料又は上塗塗料である請求項1〜のいずれかに記載の塗料組成物。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の塗料組成物を金属部材の表面に塗装し、金属部材を防食する方法。
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