JP6953986B2 - 光架橋性重合体、絶縁膜及びこれを含む有機電界効果トランジスタデバイス - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献1、及び特許文献2で開示されている技術では何れも、水酸基含有ポリマー中に存在している水酸基を全て光架橋性化合物と反応させることは難しく、水酸基の残存は避けられない。その結果、これらのポリマーを絶縁膜として用いた場合には漏洩電流値、及び/又はヒステリシスの増大を招く。また、特許文献1では、未反応の水酸基を無水トリフルオロ酢酸と反応させてエステル化することで残存水酸基量を低減する技術についても開示している。しかし、水酸基を完全に消失させることは極めて難しい上、フッ素化合物の導入により有機溶剤に対する濡れ性が低下するという弊害がある。特許文献3で開示されているポリマーを製膜した場合、該ポリマーにフッ素化合物が導入されているため表面張力が小さい膜となる。有機半導体は通常、汎用的な炭化水素溶剤に溶解して使用するため、この有機半導体溶液は該膜に対して濡れ性が低く、有機半導体溶液がはじかれて均一塗工出来ないという問題が生じる。また、桂皮酸骨格を側鎖に有するモノマーをラジカル重合する場合、桂皮酸骨格中の二重結合とラジカルとの反応を完全に排除できないため、ミクロゲルまたはゲルの生成は避けられない(例えば、非特許文献1参照)。更に、本技術では閾値電圧により評価したヒステリシスが5.6Vと大きく、絶縁膜としての実用性にも課題があった。
以下に本発明を詳細に説明する。
式(1)中、kは0〜(r−2)の整数を表す。ここで、rはA1を構成する炭素数を表す。
式(1)の反復単位を含む樹脂に対する前述の酸クロリドの仕込み量は、得られる樹脂の有機溶剤に対する溶解性、及び保存安定性を高めるため、該樹脂が含有する芳香族基1モルに対し0.2〜1.5モルであることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜1.2モルである。反応で芳香族基に導入される光反応性基の量は、有機溶剤に対する溶解性、保存安定性、光架橋のし易さ、及び光架橋後の樹脂層の耐溶剤性(耐クラック性)の観点から、0.2〜1.0モルであることが好ましく、更に好ましくは0.2〜0.7モルである。
上式(1)、上式(2)及び上式(3)の反復単位を有する樹脂を溶剤に溶解させた溶液を用いて種々の基材上に塗工又は印刷することが出来る。
<NMR>
JNM−ECZ400S FT−NMR(日本電子(株)製)を用いて、1H−NMR、13C−NMR、及びHMBC(1H−detected Multi−Bond Heteronuclear multiple quantum Coherence spectrum)モードで、ポリマーの重水素化クロロホルム溶剤を用いて測定した。なお、ポリマーの化学構造決定は、前述の式(1)、式(2)、式(3)で表される繰り返し単位の含有量(モル%)をそれぞれ、U1、U2、U3として、1H−NMR測定により得られたピークの積分強度を用いて下記式(a)〜(c)により求めた。
U2=(I3−I1)/(2I2)−5/6 (b)
U3=I1/I2 (c)
(ここで、I1はδ2.6〜δ4.4ppmに存在するピークの積分値の総和を、I2はδ1.4〜δ2.1ppmに存在するピークの積分値の総和を、I3はδ6.5〜δ8.3ppmに存在するピークの積分値の総和を表す。)
<スピンコート>
ミカサ株式会社製MS―A100を用いた。
<膜厚測定>
ブルカー社製DektakXTスタイラスプロファイラーを用いて測定した。
<ディスペンサー印刷>
武蔵エンジニアリング(株)製IMAGE MASTER 350PC SMARTを用いた。
<UV照射>
(株)ジーエス・ユアサ コーポレーション製UV−System、CSN−40A−2を用い、UV強度4.0kWの条件で、搬送速度を変えてUV照射時間を調整した。
<真空蒸着>
アルバック機工社製 小型真空蒸着装置VTR−350M/ERHを用いた。
<架橋に必要なUV照射量>
洗浄、乾燥した30×30mm2のガラス(コーニング社製Eagle XG)上に樹脂の溶液を膜厚500nmとなるようにスピンコート製膜し、十分に乾燥させた。この時点の初期膜厚(A)を測定した上で、UV照射量を変えて得られた架橋膜をトルエンに1時間浸漬、乾燥後の膜厚(B)を測定した。これらの膜厚を用い、下記式
残膜率=膜厚(B)/初期膜厚(A)×100
で与えられる残膜率が95%以上となるUV照射量を架橋に必要な照射量とした。
<高分子誘電体層の溶剤に対する濡れ性>
樹脂の架橋膜上に表面張力が異なる5種の溶剤(トルエン、テトラリン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン)をそれぞれ1μl滴下した。S電極及びD電極を覆う適量の有機半導体溶液を塗布したとき、液滴を塗布した瞬間の形状を維持するか、又は濡れ広がれば、電極上をくまなく覆うことが出来るため、この場合を良好(1点)として評価した。一方、該液滴が収縮する場合、及び/又は移動する場合には電極上を覆うことが出来なくなるため、液が収縮及び/又は移動した場合を不良(0点)として評価した。全ての溶剤で良好な結果が得られた場合5点となる。
<絶縁破壊強度>
洗浄、乾燥した30×30mm2のガラス(コーニング社製Eagle XG)に銀を真空蒸着し、厚み30nmの電極を形成した。その後、電極を形成した基材上に誘電体(絶縁体)を製膜し、誘電体層上に金電極を真空蒸着してMIMコンデンサを作製して上記の銀−金電極間に電圧をかけて、絶縁破壊により電流が誘電体層内部を流れ始める電圧を測定し、誘電体層の厚みで割った値を絶縁破壊強度とした。
<FET素子の評価>
有機電界効果トランジスタの一形態であるボトムゲート・ボトムコンタクト(BGBC)型素子を作製し、ケースレイ社製半導体パラメータアナライザーSCS4200を用い、ソース・ドレイン間電圧をマイナス30ボルトとして、ゲート電圧を変化させることにより、移動度、漏洩電流、オン電流/オフ電流比、ソース・ドレイン間電流のヒステリシス、閾値電圧を評価した。
<クラック測定>
形状測定レーザーマイクロスコープ((株)キーエンス製VK−X100)によりフィルム表面上のミクロクラックの有無を確認した。
(実施例1)
<樹脂合成>
窒素ボックス内で300mLのシュレンク管に重量平均分子量28万のポリスチレン(以下、「原料ポリマー」という)10.0g、脱水した塩化メチレン350mL、桂皮酸クロリド8.02gを仕込み、室温、撹拌下で溶解させた。上部に3方コックを取り付け、下部を密閉した30mLの滴下ロートにトリフルオロメタンスルホン酸(以下、「TFMS」という)18.05gを仕込んだ。上記のシュレンク管と滴下ロートを窒素ボックスから取り出し、窒素シールした状態でシュレンク管と滴下ロートを連結させた。シュレンク管への窒素フローを停止し、滴下ロート上部の3方コックを塩化カルシウム管に連結後、窒素フローを停止した。次に、シュレンク管を低温恒温槽中で冷却し、マグネチックスターラーで撹拌下、滴下ロートからTFMSを18分かけて滴下した。滴下とともにポリマー溶液の色は赤紫色に着色した。滴下終了後、2℃で28時間反応させた。飽和炭酸水素ナトリウム15gを溶解させた飽和水溶液150mLを添加してTFMS及び系内の塩酸を中和した。反応物を分液ロートに移し、塩化メチレン層を分離した。更に水層を塩化メチレンで3回洗浄、分液してポリマーの塩化メチレン溶液を得た。この溶液を1.5Lのメタノールに注いで再沈殿させ、ポリマーを濾過により単離する操作を2回行った後、40℃で減圧乾燥して13.9gの樹脂1を得た。更に、得られた樹脂10gを200mLのトルエンに溶解させて0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで吸引濾過して樹脂溶液1を得た。濾過時間は25mL/分であり、迅速な濾過が可能であった。また、濾過工程における濾過速度の低下は無く、ミクロゲルの影響は見られなかった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.62(brs,−CH=CH−Ph),7.39〜6.51(m,芳香族,−CH=CH−Ph),δ4.5(brs, −C(O)CH2−CH(Ph)−),δ2.57(brs,−C(O)CH2−CH(Ph)−),δ3.14(brs, ―C(O)CH2−CH(Ph)−),2.04(brs,−CH2―CH−),1.78〜1.40(bm,−CH2−)
<絶縁膜の作製及び評価>
サイズ5cm×5cm、厚み100ミクロンのPETフィルム(帝人デュポンフィルム製)上に、スピンコータ―を用いて厚み550nmの絶縁膜を作製後、紫外線を照射(室温)して光環化(光架橋)した。このフィルムをトルエンに1時間浸漬後、取り出して常温でトルエンを揮発させミクロクラックの有無を確認した。
<OFET素子の作成及び評価>
洗浄、乾燥した30×30mm2のガラス(基材)(コーニング社製Eagle XG)にアルミニウムを真空蒸着し、厚み50nmのゲート電極を形成した。電極が形成された基材の上に、得られた樹脂1のトルエン溶液(5wt%)を500rpm×5秒、1000rpm×20秒の条件でスピンコートし、100℃で10分間乾燥した後(絶縁膜の形成)、300mJ/cm2の紫外線を照射(室温)して架橋した膜厚520nmの高分子誘電体層を形成した。ゲート電極及び高分子誘電体層が形成された基材上に金を真空蒸着して厚み50nm、チャンネル長100μm、電極幅500μmのソース電極、及びドレイン電極を形成した。その後、直ちにペンタフルオロベンゼンチオール30mmolのイソプロパノール溶液に浸漬し、5分間経過した時点で取り出し、イソプロパノールで洗浄後、ブロー乾燥した。その後、有機半導体(ジ−n−ヘキシルジチエノベンゾジチオフェン)の0.8wt%トルエン溶液60nLをディスペンサにより印刷した。溶剤を揮発させ50℃で1時間乾燥した後、ボトムゲート・ボトムコンタクト(BGBC)型の有機電界効果トランジスタデバイスを作製した。作製した有機電界効果トランジスタデバイスの構成、評価結果等を表2に示す。
(実施例2)
<樹脂の合成>
窒素ボックス内で300mLのシュレンク管に原料ポリマー10g、脱水した塩化メチレン260mL、桂皮酸クロリド19.2gを仕込み、室温、撹拌下で溶解させた。上部に3方コックを取り付け、下部を密閉した100mLの滴下ロートにTFMS26gを仕込んだ。上記のシュレンク管と滴下ロートを窒素ボックスから取り出し、窒素シールした状態でシュレンク管と滴下ロートを連結させた。シュレンク管への窒素フローを停止し、滴下ロート上部の3方コックを塩化カルシウム管に連結後、窒素フローを停止した。次に、低温恒温槽中で冷却し、マグネチックスターラーで撹拌下、滴下ロートからTFMSを10分かけて滴下した。滴下とともにポリマー溶液の色は赤紫色に着色した。滴下終了後、1℃で55時間反応させた。飽和炭酸水素ナトリウム36gを溶解させた飽和水溶液360mLの内、100MLをゆっくりと滴下した。残りの飽和炭酸水素ナトリウム溶液を1Lのビーカーに入れ、氷100gを添加して冷却した。このビーカーに反応溶液を注いで、2時間撹拌した後、分液ロートに移し、塩化メチレン層を分離した。更に水層を塩化メチレンで3回洗浄、分液してポリマーの塩化メチレン溶液を得た。このポリマー溶液を3Lのメタノールで再沈殿させる操作を2回行い、濾別後、50℃で減圧乾燥して17.9gの樹脂2を得た。更に、得られた樹脂10gを200mLのトルエンに溶解させて0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで吸引濾過して樹脂溶液2を得た。濾過時間は20mL/分であり、迅速な濾過が可能であった。また、濾過工程における濾過速度の低下は無く、ミクロゲルの影響は見られなかった。
<絶縁膜の作製及び評価>
サイズ5cm×5cm、厚み100ミクロンのPETフィルム(帝人デュポンフィルム製)上に、スピンコータ―を用いて厚み540nmの絶縁膜を作製後、紫外線を照射(室温)して光環化(光架橋)した。このフィルムをトルエンに1時間浸漬後、取り出して常温でトルエンを揮発させミクロクラックの有無を確認した。
<OFET素子の作成及び評価>
樹脂2を用いて、UV照射量を200mJ/cm2とした以外は実施例1と同様の手法を用いて、絶縁膜を形成後、有機電界効果トランジスタデバイスを作製した。
(比較例1)
<樹脂の合成>
窒素ボックス内で300mLのシュレンク管に原料ポリマー5.0g、脱水した塩化メチレン150mL、無水塩化アルミニウム3.9gを仕込み、室温、撹拌下で溶解させた。上部に3方コックを取り付け、下部を密閉した30mLの滴下ロートに桂皮酸クロリド4.0gの塩化メチレン溶液30mlを仕込んだ。上記のシュレンク管と滴下ロートを窒素ボックスから取り出し、窒素シールした状態でシュレンク管と滴下ロートを連結させた。シュレンク管への窒素フローを停止し、滴下ロート上部の3方コックを塩化カルシウム管に連結後、窒素フローを停止した。次に、シュレンク管を氷水で冷却し、滴下ロートから桂皮酸クロリドを10分かけて滴下した。滴下とともにポリマー溶液の色は赤紫色に着色した。滴下終了後、氷水浴を除き、室温で28時間反応させた。反応溶液を再度、氷水で冷却した後、35%塩酸水溶液20mlを滴下した。この状態で5時間撹拌後、反応溶液を分液ロートに移し、塩化メチレン層を分離した。この塩化メチレン層を4回繰り返し水洗した。水層は塩化メチレンで3回抽出し、分液した。得られた塩化メチレン層を合わせて1.5Lのメタノールで再沈殿させ、ポリマーを濾過により単離する操作を2回行った後、50℃で減圧乾燥して5.9gの樹脂3を得た。得られた樹脂5gを100mLのトルエンに溶解させて0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで吸引濾過したが、濾過開始5秒程度で濾過不可となり、ミクロゲルによるフィルター閉塞が顕著であった。そこで、本溶液を順次5μm、3μm、1μm、0.5μm、0,2μmのフィルターで吸引濾過して樹脂溶液3を得た。
<絶縁膜の作製及び評価>
サイズ5cm×5cm、厚み100ミクロンのPETフィルム(帝人デュポンフィルム製)上に、スピンコータ―を用いて厚み570nmの絶縁膜を作製後、紫外線を照射(室温)して光環化(光架橋)した。このフィルムをトルエンに1時間浸漬後、取り出して常温でトルエンを揮発させミクロクラックの有無を確認した。
<OFET素子の作成及び評価>
得られた樹脂溶液3を用いて、UV照射量を500mJ/cm2とした以外は実施例1と同様の手法を用いて絶縁膜を形成後、有機電界効果トランジスタデバイスを作製した。ここで、UV照射量が500mJ/cm2であるとき、残膜率が95%以上となるものである。
(比較例2)
<樹脂の合成>
窒素ボックス内で300mLのシュレンク管に原料ポリマー5.0g、脱水した塩化メチレン150mL、桂皮酸クロリド4.0gを仕込んだ。上部に3方コックを取り付け、下部を密閉した30mLの滴下ロートにTFMS0.36g及び塩化メチレン15mLを仕込んだ。上記のシュレンク管と滴下ロートを窒素ボックスから取り出し、窒素シールした状態でシュレンク管と滴下ロートを連結させた。シュレンク管への窒素フローを停止し、滴下ロート上部の3方コックを塩化カルシウム管に連結後、窒素フローを停止した。次に、シュレンク管を氷水で冷却し、滴下ロートから桂皮酸クロリドを10分かけて滴下した。滴下とともにポリマー溶液の色は赤紫色に着色した。滴下終了後、氷水浴を除き、室温で28時間反応させた。反応溶液を再度、氷水で冷却した後、飽和炭酸水素ナトリウム2.2gを溶解させた反応溶液を中和した。反応物を分液ロートに移し、塩化メチレン層を分離した。更に水層を塩化メチレンで3回洗浄、分液してポリマーの塩化メチレン溶液を得た。この溶液を1.5Lのメタノールに注いでポリマーを再沈殿させ、濾過によりポリマーを単離する操作を2回繰り返した後、50℃で減圧乾燥して5.0gの樹脂4を得た。得られた樹脂5gをトルエン100mLに溶解させた後、0.2μmのフィルターで吸引濾過したが、約50mL濾過した時点で濾過速度が急激に低下し、その後、濾過不可ととなり、ミクロゲルによるフィルター閉塞が顕著であった。そこで、残された溶液50mLを順次5μm、3μm、1μm、0.5μm、0,2μmのフィルターで吸引濾過して樹脂溶液4を得た。なお、濾過速度低下前の平均濾過速度は50mL/分であり、実施例1及び2に対して劣っていた。
<絶縁膜の作製及び評価>
サイズ5cm×5cm、厚み100ミクロンのPETフィルム(帝人デュポンフィルム製)上に、スピンコータ―を用いて厚み560nmの絶縁膜を作製後、紫外線を照射(室温)して光環化(光架橋)した。このフィルムをトルエンに1時間浸漬後、取り出して常温でトルエンを揮発させミクロクラックの有無を確認した。
<OFET素子の作成及び評価>
得られた樹脂溶液4を用いて、UV照射量を600mJ/cm2とした以外は実施例1と同様の手法を用いて絶縁膜を形成後、有機電界効果トランジスタデバイスを作製した。ここで、UV照射量が600mJ/cm2であるとき、残膜率が95%以上となるものである。
Claims (3)
- 式(1)、式(2)及び式(3)で表される反復単位からなる樹脂。
- 請求項1に記載の樹脂の架橋物を含有することを特徴とする絶縁膜。
- 基板上に、ソース電極及びドレイン電極を付設した有機半導体層とゲート電極とをゲート絶縁層(高分子誘電体層)を介して積層した有機電界効果トランジスタデバイスにおいて、該ゲート絶縁層(高分子誘電体層)が請求項2に記載の絶縁膜であることを特徴とする有機電界効果トランジスタデバイス。
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