以下、本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置101について図面を参照して説明する。図1は、レンズ駆動装置101の分解斜視図である。図2(A)は、レンズ駆動装置101の上方斜視図であり、図2(B)は、Y2側から見たレンズ駆動装置101の正面図である。図3(A)は、レンズ駆動装置101の上面図であり、図3(B)は、レンズ駆動装置101の底面図である。図4(A)は、ヨーク4を省略した状態のレンズ駆動装置101の上方斜視図であり、図2(A)に対応する。図4(B)は、ヨーク4を省略した状態のレンズ駆動装置101の正面図であり、図2(B)に対応する。
レンズ駆動装置101は、図1に示すように、レンズ体(図示せず。)を保持可能なレンズ保持部材2と、レンズ保持部材2をレンズ体に関する光軸方向JD(Z軸方向)に沿って移動させる駆動機構MKと、レンズ保持部材2を光軸方向JDに移動可能に支持する板ばね6と、板ばね6が固定される固定側部材RGと、外部との電気的な接続をもたらす端子7とを含む。レンズ体は、例えば、少なくとも1枚のレンズを備えた筒状のレンズバレルであり、その中心軸線が光軸方向JDに沿うように構成されている。
駆動機構MKは、図1に示すように、八角環状に巻かれたコイル3と、矩形箱状の外側ケースを兼ねたヨーク4と、コイル3の四辺と対向して配置された4つの磁石5とを含む。固定側部材RGは、スペーサ1と、ヨーク4と、端子7が埋め込まれたベース部材18とを含む。板ばね6は、レンズ保持部材2とヨーク4との間に配置される上側板ばね16と、レンズ保持部材2とベース部材18との間に配置される2つの下側板ばね26A、26Bとを含む。
レンズ駆動装置101は、略直方体形状を有し、撮像素子(図示せず。)を実装した基板(図示せず。)の上に取り付けられる。レンズ駆動装置101と、レンズ保持部材2に装着されたレンズ体と、レンズ体に対向するように基板に実装された撮像素子とはカメラモジュールを構成する。また、基板もカメラモジュールを構成する。コイル3は、下側板ばね26A、26B、端子7及び基板を介して電源に接続される。コイル3に電流が流れると、駆動機構MKは、光軸方向JDに沿った電磁力を発生させる。
レンズ駆動装置101は、この電磁力を利用し、撮像素子のZ1側(被写体側)で、光軸方向JDに沿ってレンズ保持部材2を移動させる。レンズ駆動装置101は、撮像素子から離れる方向にレンズ保持部材2を移動させてマクロ撮影を可能にし、撮像素子に近づく方向にレンズ保持部材2を移動させて無限遠撮影を可能にしている。
次に、レンズ保持部材2と駆動機構MKについて説明する。図5(A)は、レンズ保持部材2の上方斜視図であり、図5(B)は、図5(A)のレンズ保持部材2にコイル3が巻かれた状態を示す上方斜視図である。図6(A)は、レンズ保持部材2の下方斜視図であり、図6(B)は、図6(A)のレンズ保持部材2にコイル3が巻かれた状態を示す下方斜視図である。図7(A)は、レンズ保持部材2の上面図であり、図7(B)は、X1側から見たレンズ保持部材2の側面図である。図8(A)は、レンズ保持部材2の下方斜視図であり、図8(B)は、図8(A)に示すレンズ保持部材2にコイル3が巻かれた状態を示す下方斜視図である。図9(A)は、図8(B)に示す部分Sの拡大図であり、図9(B)は、図6(B)に示す部分Pの拡大図である。図10(A)は、端子7及びベース部材18が省略された状態のレンズ駆動装置101の底面図であり、図10(B)は、更に下側板ばね26A、下側板ばね26B及びレンズ保持部材2が省略された状態のレンズ駆動装置101の底面図である。
本実施形態では、レンズ保持部材2は、液晶ポリマー(LCP)等の合成樹脂を射出成形することで作製されている。具体的には、レンズ保持部材2は、図5(A)に示すように、光軸方向JDに沿って貫通されるように形成された筒状部12と、光軸方向JDにおける撮像素子側(Z2側)に形成されたフランジ部(鍔部)52とを含む。筒状部12は、光軸方向JDにおける被写体側(Z1側)においては、円筒状に形成されている。
筒状部12には、レンズ体が装着されるように、円筒状の内周面にねじ溝が設けられている。また、筒状部12には、被写体側の端面に2つの窪み12dhを有した台座部12dが光軸を挟んで2箇所に設けられている。台座部12dには、図4(A)に示すように、上側板ばね16の内側部分16iが載置される。
筒状部12の外周面には、図5(A)に示すように、コイル3を内側から支持する外壁部としてのコイル支持部12jが設けられている。本実施形態では、コイル支持部12jは、八角環状のコイル3を支持できるよう、上面視で八角形状の外形を有する。コイル支持部12jの被写体側には、光軸方向JDにおいてフランジ部52と対向するように径方向外側に突出した庇部12h(図7(A)及び図7(B)参照。)が4箇所形成されている。そして、図5(B)に示すように、コイル3は、コイル支持部12jに支持され且つ光軸方向JDにおいて庇部12hとフランジ部52との間に挟まれるようにしてレンズ保持部材2の外周面側に八角環状に巻かれている。
フランジ部52は、筒状部12の撮像素子側(Z2側)における外周面から径方向外側に突出している。フランジ部52の被写体側にはコイル3が配置されている。フランジ部52には、図6(B)に示すように、レンズ体の光軸を挟んで切欠部52kが2つ形成されている。そして、切欠部52kの一方にはコイル3の巻き始め側の線材である延在部33Aが通され、切欠部52kの他方にはコイル3の巻き終わり側の線材である延在部33Bが通されている。切欠部52kを形成するフランジ部52の縁部は、湾曲するように構成されている。縁部と接するコイル3の線材が断線するのを防止し或いは抑制するためである。
フランジ部52は、図6(A)に示すように、撮像素子側(Z2側)の面から下方(Z2方向)に突出した、角形凸状の2つの保持部72と、丸形凸状の6つの突設部2tと、3つの壁部(内側壁部82u、外側壁部82v、側壁部82w)で形成された2つの突堤部82とを含む。
保持部72は、図6(B)に示すように、コイル3(巻回部13)の巻き始め側に対応する保持部72Aと、コイル3の巻き終わり側に対応する保持部72Bを含む。コイル3の両端は、保持部72に巻き付けられて保持されている。
突設部2tは、図6(A)及び図10(A)に示すように、下側板ばね26Aに対応する3つの突設部2tと、下側板ばね26Bに対応する3つ突設部2tとを含む。突設部2tには、下側板ばね26A及び下側板ばね26Bのそれぞれの内側部分26iが装着されて固定されている。下側板ばね26A及び下側板ばね26Bのそれぞれの内側部分26iの固定は、内側部分26iに形成された貫通孔に挿通された突設部2tを熱かしめすることによって実現される。図6〜図10では、突設部2tは、熱かしめされた後の先端が変形した状態で図示されている。
突堤部82は、図6(A)に示すように、レンズ保持部材2の中心側に位置する内側壁部82uと、内側壁部82uと対向して外側に位置する外側壁部82vと、保持部72に近い側で内側壁部82uと外側壁部82vとの間に位置する側壁部82wとを含む。保持部72から遠い突堤部82の側には、図9(A)に示すように、壁部が切り欠かれた開放部82zが形成されている。そして、3つの壁部(内側壁部82u、外側壁部82v、側壁部82w)で囲われた空間が収容部82sを形成している。収容部82sは、コイル3の延在部33A、33Bと下側板ばね26A、26Bとを接続する導電性接着剤を収容できるように構成されている。本実施形態では、突堤部82が保持部72と隣り合う位置に形成されているので、保持部72の側壁は、突堤部82の側壁部82wとして好適に利用されている。したがって、保持部72と隣り合う位置に収容部82sが設けられている。
次に、レンズ駆動装置101の駆動機構MKについて説明する。駆動機構MKは、図10(B)に示すように、コイル3と、ヨーク4と、ヨーク4の四辺のそれぞれと対向するように配置された4つの磁石5とを含む。そして、駆動機構MKは、コイル3に流れる電流と磁石5が発生する磁界とで駆動力(推力)を発生させ、レンズ保持部材2を光軸方向JDに沿って上下に移動させる。
コイル3は、図6(B)に示すように、レンズ保持部材2の外周に導電性の線材を巻回して形成されている。コイル3は、八角環状に巻かれて形成された巻回部13と、巻回部13から延びて保持部72に巻き付けられる延在部33とを含む。図6(B)は、明瞭化のため、巻回部13に関しては、絶縁部材で表面を被覆された導電性の線材の詳細な巻回状態の図示を省略している。巻回部13を図示する他の図についても同様である。
延在部33は、コイル3の巻き始め側で巻回部13の内周側に位置する巻回部13の端部(巻き始め部分)に繋がっている延在部33Aと、コイル3の巻き終わり側で巻回部13の外周側に位置する巻回部13の端部(巻き終わり部分)に繋がっている延在部33Bとを含む。
具体的には、延在部33Aは、図9(A)に示すように、保持部72Aに巻き付けられる巻き付け部33mと、収容部82sの内底面(Z1側の面)と対向して延びる接続部33cと、切欠部52kに挿通されてフランジ部52の撮像素子側(Z2側)から被写体側(Z1側)に延びる挿通部33kとを含む。延在部33Bは、図9(B)に示すように、保持部72Bに巻き付けられる巻き付け部33mと、収容部82sの内底面(Z1側の面)と対向して延びる接続部33cと、切欠部52kに挿通されてフランジ部52の撮像素子側(Z2側)から被写体側(Z1側)に延びる挿通部33kとを含む。
本実施形態では、延在部33Aは、コイル3の線材がレンズ保持部材2の外周に巻き付けられる前に、レンズ保持部材2の保持部72Aに巻き付けられる。図9(A)に示す例では、コイル3の線材の一部が保持部72Aに3ターン巻き付けられている。これにより、巻き付け部33mが保持部72Aに形成され、延在部33Aの一部が保持部72Aに保持される。但し、延在部33Aは、コイル3の線材がレンズ保持部材2の外周に巻き付けられた後で、保持部72Aに巻き付けられてもよい。
次に、レンズ保持部材2の外周に線材が巻き付けられる。その際には、図9(A)に示すように、巻き付け部33mから延びる線材は、収容部82sの内底面と対向するとともに、壁部が切り欠かれた開放部82zを通る。そして、線材は、フランジ部52の下側から切欠部52kを通ってフランジ部52の上側に延びる。このとき、収容部82sの内底面と対向する部分が延在部33Aの接続部33cを構成し、切欠部52kを通る部分が延在部33Aの挿通部33kを構成する。
延在部33Aの挿通部33kは、フランジ部52の下側から上側に延びる際、図9(A)に示すように、フランジ部52の縁部に接するように構成されている。そのため、落下等により強い衝撃がレンズ駆動装置101に加えられた際には、コイル3の延在部33Aはフランジ部52の縁部に押し付けられる。本実施形態では、フランジ部52の縁部は湾曲するように構成されている。そのため、延在部33Aは、フランジ部52の縁部で切断され難い。延在部33Bと接するフランジ部52の縁部も湾曲するように構成されていてもよい。
レンズ保持部材2の外周に巻回されたコイル3の巻回部13は、図5(B)に示すように、レンズ保持部材2の周囲を囲む位置に配置されている。また、巻回部13は、コイル支持部12j(図5(A)参照。)により内側から支持された状態で、庇部12hとフランジ部52に挟まれるようにして、フランジ部52の被写体側に固定されている。また、巻回部13の内周面がコイル支持部12jにより等方的にバランス良く支持されるため、巻回部13は、コイル3の中心軸とレンズ保持部材2の中心軸とが一致した状態で、レンズ保持部材2に保持される。したがって、レンズ保持部材2に保持されたレンズ体の光軸は、レンズ保持部材2及びコイル3のそれぞれの中心軸と容易に一致するように構成されている。
レンズ保持部材2の外周への線材の巻き付けが終了すると、巻回部13の巻き終わり側の端部に繋がる延在部33Bは、図9(B)に示すように、フランジ部52の被写体側から切欠部52kを介してフランジ部52の撮像素子側に引き出される。具体的には、挿通部33kが切欠部52kを通過し、接続部33cが突堤部82の開放部82zを通過するとともに収容部82sの内底面と対向して延び、巻き付け部33mがレンズ保持部材2の保持部72Bに巻き付けられる。図9(B)に示す例では、延在部33Bは、保持部72Bに3ターン巻き付けられている。
突堤部82には、保持部72Bから遠い側に、壁部が切り欠かれた開放部82zが形成されている。延在部33Bの接続部33cは開放部82zを通って延びる。この構成により、突堤部82と延在部33Bとの干渉が回避され、レンズ保持部材2と下側板ばね26Bとの間隔の増大が回避され、レンズ駆動装置101の寸法が光軸方向JDにおいて大きくなるのが抑制され得る。
次に、駆動機構MKを構成するヨーク4について説明する。本実施形態では、ヨーク4は、鉄等の軟磁性体材料で形成された板材に抜き加工及び絞り加工を施して作製されている。具体的には、図1に示すように、収納部4sを定める箱状の外形を有する。そして、ヨーク4は、矩形環状の外壁部4Aと、外壁部4Aの上端(Z1側の端)と連続するように設けられた平板状の上面部4Bとを有する。このように構成されたヨーク4は、図10(B)に示すように、コイル3及び磁石5を収納部4sに収容し、且つ、図2に示すように、ベース部材18に結合されてベース部材18とともに筐体を構成する。但し、ヨーク4は、オーステナイト系ステンレス鋼等の非磁性体で形成されたカバーで置き換えられてもよい。
次に、駆動機構MKを構成する磁石5について説明する。磁石5は、図1に示すように直方体形状を有する。そして、4つの磁石5は、図10(B)に示すように、コイル3の外側に位置するとともに、ヨーク4を構成する矩形環状の外壁部4Aの四辺のそれぞれに沿うように配置されている。そして、接着剤により、ヨーク4に固定されている。また、磁石5は、例えば、内側がN極、外側がS極となるように配置されている。
次に、板ばね6及び固定側部材RGについて説明する。図11は、板ばね6を説明する図である。図11(A)は、上側板ばね16の上面図であり、図11(B)は、下側板ばね26A及び下側板ばね26Bの上面図である。図12は、下側板ばね26Aとコイル3との接続状態の一例を説明する図である。具体的には、図12(A)は、図10(A)に示す部分Tの拡大図であり、図12(B)は、図10(A)に示す部分TをX2側から見たときの下側板ばね26A、コイル3及びレンズ保持部材2の拡大図である。なお、図12(A)及び図12(B)では、説明を分かり易くするため、導電性接着剤CAがクロスハッチングで示されている。図13は、固定側部材RGのベース部材18を説明する図である。具体的には、図13(A)は、ベース部材18の上方斜視図であり、図13(B)は、ベース部材18に下側板ばね26A及び下側板ばね26Bを組み付けた状態の上方斜視図である。
板ばね6は、銅合金を主な材料とした金属板から作製されている。板ばね6は、図1に示すように、レンズ保持部材2とヨーク4との間に配置される上側板ばね16と、レンズ保持部材2とベース部材18との間に配置される下側板ばね26A及び下側板ばね26Bとを含む。レンズ保持部材2と板ばね6(上側板ばね16、下側板ばね26A、下側板ばね26B)のそれぞれとが係合された状態で、板ばね6は、レンズ保持部材2が光軸方向JD(Z軸方向)へ移動可能となるように、レンズ保持部材2を空中で支持している。下側板ばね26A及び下側板ばね26Bは、コイル3に電流を供給するための給電部材として機能する。そのため、下側板ばね26Aはコイル3の一端に電気的に接続され、下側板ばね26Bはコイル3の他端に電気的に接続されている。上側板ばね16とヨーク4との間にはスペーサ1が配置されている。スペーサ1は、レンズ保持部材2がZ1方向に移動したときにレンズ保持部材2とヨーク4とが衝突するのを防止できるように配置されている。但し、スペーサ1は省略されてもよい。
上側板ばね16は、図11(A)に示すように、略矩形状を有し、レンズ保持部材2に固定される内側部分16iと、固定側部材RGに固定される外側部分16eと、内側部分16iと外側部分16eとの間に位置する4箇所の弾性腕部16gとを含む。具体的には、内側部分16iは、中心を挟んで対向する2箇所に設けられている。外側部分16eは、4箇所の角部分16bと、4箇所の角部分16bのそれぞれを繋ぐ桟部16rとを有している。桟部16rは、スペーサ1と磁石5とで挟持されて固定される。スペーサ1、ヨーク4及び磁石5は、固定側部材RGとして機能する。
上側板ばね16がレンズ駆動装置101に組み込まれた際には、図4(A)に示すように、内側部分16iは、レンズ保持部材2の台座部12d(図5(A)参照。)に載置される。そして、内側部分16iと台座部12dとを接着剤で固定することにより、内側部分16iはレンズ保持部材2に固定される。外側部分16eは、図4(B)に示すように、磁石5の上面(Z1側の面)に接し、スペーサ1(図示せず。)と磁石5との間に挟持されて固定される。
上側板ばね16は、図11(A)に示すように、略左右対称に形成されている。そして、内側部分16iでレンズ保持部材2に固定され、外側部分16eでスペーサ1を介してヨーク4に固定されている。そのため、上側板ばね16は、レンズ保持部材2をバランス良く空中で支持できる。
下側板ばね26A及び下側板ばね26Bは、図11(B)に示すように、それぞれの内側形状が半円形状となるように構成されている。そして、レンズ保持部材2の撮像素子側に固定される内側部分26iと、固定側部材RGに固定される外側部分26eと、内側部分26iと外側部分26eとの間に位置する弾性腕部26gとを含む。
下側板ばね26A及び下側板ばね26Bのそれぞれの内側部分26iは、図11(B)に示すように、レンズ保持部材2と係合される3つの内側接合部分26cと、3つの内側接合部分26cの間を繋ぐ2つの第1連結部26pと、コイル3の延在部33と対向する接続板部26hとを含む。
下側板ばね26A及び下側板ばね26Bがレンズ駆動装置101に組み込まれた際には、図6(A)に示すレンズ保持部材2の6つの突設部2tのそれぞれは、図11(B)に示す下側板ばね26A及び下側板ばね26Bのそれぞれの内側接合部分26cに設けられた円形の貫通孔に挿通されて嵌合される。これにより、下側板ばね26A及び下側板ばね26Bのそれぞれの内側部分26iは、レンズ保持部材2に位置決めされ且つ固定される。下側板ばね26A及び下側板ばね26Bは、例えば、レンズ保持部材2の突設部2tに熱かしめ又は冷間かしめを施すことで、レンズ保持部材2に固定される。
以下では、主に下側ばね26Aとレンズ保持部材2及びコイル3との関係を説明する。但し、下側ばね26Aに関する説明は、下側ばね26Bにも同様に適用される。
下側板ばね26Aの内側部分26iの接続板部26hは、図12(B)に示すように、レンズ駆動装置101が組み立てられた際には、レンズ保持部材2の突堤部82と対向する。すなわち、接続板部26hの被写体側(Z1側)の面は、図12(A)に示すように、突堤部82で形成された収容部82sと対向する。そして、コイル3の延在部33Aの接続部33cは、図12(B)に示すように、下側板ばね26Aの内側部分26iの被写体側の面とレンズ保持部材2のフランジ部52の撮像素子側(Z2側)の面との間を通って延びる。
内側部分26iの接続板部26hには、図12(A)に示すように、突堤部82の開放部82zと対向する位置に、両側から切り欠かれた貫通部26tが設けられ、且つ、外側壁部82vと対向する位置に、U字形状(半円形状)の切欠部26kが設けられている。貫通部26tは、底面視で、突堤部82の内側壁部82u及び外側壁部82vの端部に対応する位置に設けられ、且つ、貫通部26tを構成している壁端面26xがこれらの端部を覆うように設けられている。また、切欠部26kは、収容部82sに対応する位置に形成されている。
下側板ばね26Aがレンズ保持部材2に組み付けられた際には、図12(B)に示すように、保持部72Aは、その先端が下側板ばね26Aの内側部分26iの撮像素子側(Z2側)に位置するように、内側部分26iよりも下方(Z2方向)に突出している。また、巻き付け部33mの一部も内側部分26iの撮像素子側(Z2側)に位置するように保持部72Aに巻き付けられている。
下側板ばね26Aとコイル3の延在部33Aは、合成樹脂中に銀粒子等の導電性フィラーが分散された導電性接着剤CAで電気的且つ機械的に接続されている。具体的には、下側板ばね26Aをレンズ保持部材2に組み込む前に、レンズ保持部材2の突堤部82で囲まれた収容部82sに導電性接着剤CAが充填され、その後、下側板ばね26Aがレンズ保持部材2に装着される。そして、レンズ保持部材2の突設部2tが熱かしめされ、且つ、導電性接着剤CAが熱硬化される。導電性接着剤CAの収容部82sへの充填から導電性接着剤CAの熱硬化までは、保持部72が鉛直上方に突出するようにレンズ保持部材2が逆さまにされた状態で行われる。そのため、導電性接着剤CAは、流動性を有する場合であっても、所望の位置(収容部82s内の位置)に適切に保持され得る。そして、接続部33cの一部は、収容部82s内に配置されているため、導電性接着剤CA内に埋設される。なお、導電性接着剤CAは、熱硬化型に限らず、紫外線硬化型のものであってもよい。
また、下側板ばね26Aとコイル3の延在部33Aは、導電性接着剤CAではなく、半田付けで電気的に接続されていてもよい。この場合、半田は、下側板ばね26AのZ2側に配置され、下側板ばね26Aと延在部33Aとを電気的に接続する。
下側板ばね26Aの外側部分26eは、図11(B)に示すように、ベース部材18と係合される2つの外側接合部分26dと、2つの外側接合部分26dを繋ぐ第2連結部26qとを含む。下側板ばね26Aの外側接合部分26dに設けられた貫通孔は、ベース部材18の上面に設けられた突設部18t(図13(A)参照。)と嵌合する。これにより、下側板ばね26Aの外側部分26eは、ベース部材18に位置決めされ且つ固定される。
下側板ばね26A及び下側板ばね26Bは、図11(B)に示すように、略左右対称に形成されている。そして、下側板ばね26Aは、3つの内側接合部分26cでレンズ保持部材2に接続され、2つの外側接合部分26dでベース部材18に接続されている。下側板ばね26Bについても同様である。この構成により、下側板ばね26A及び下側板ばね26Bは、レンズ保持部材2を光軸方向JDへ移動可能な状態でバランス良く空中で支持することができる。
次に、固定側部材RGについて説明する。固定側部材RGは、上側板ばね16を固定するスペーサ1、ヨーク4及び磁石5と、下側板ばね26A及び下側板ばね26Bのそれぞれを固定するベース部材18とを含む。
ベース部材18は、液晶ポリマー等の合成樹脂を用いた射出成形によって作製される。本実施形態では、ベース部材18は、図13(A)に示すように、矩形板状の外形を有する部材であり、中央に円形の開口18kが形成されている。また、ベース部材18の被写体側(Z1側)の面(上面)には、上方に向けて突出する6つの突設部18tが設けられている。突設部18tは、下側板ばね26A及び下側板ばね26Bのそれぞれにおける外側接合部分26dに設けられた貫通孔に挿通され且つ嵌合される。この際、突設部18tは熱かしめが施されて外側接合部分26dに固定される。
ベース部材18には、図13(A)に示すように、銅若しくは鉄又はそれらを主成分とする合金等の材料を含む金属板から形成された端子7がインサート成形されて埋め込まれている。端子7は、端子7A及び端子7Bを含み、端子7A及び端子7Bのそれぞれは、一部がベース部材18の上面(Z1側の面)に露出している。そして、互いに電気的に絶縁されている端子7A及び端子7Bのそれぞれは、撮像素子を実装した基板(図示せず。)に電気的に接続されている。また、端子7Aは下側板ばね26Aに電気的に接続され、端子7Bは下側板ばね26Bに電気的に接続されている。更に、下側板ばね26Aはコイル3の一端に電気的に接続され、下側板ばね26Bはコイル3の他端に電気的に接続されている。そのため、コイル3は、端子7と下側板ばね26A及び下側板ばね26Bとを介して電流の供給を受けることができる。
ベース部材18には、端子7と同様に、銅若しくは鉄又はそれらを主成分とする合金等の材料を含む金属板から形成された接続部材57もインサート成形されて埋め込まれている。接続部材57は、図2に示すように、ヨーク4の四隅の下端部のところで、一部を露出させている。ベース部材18は、ヨーク4の外壁部4Aの内面とベース部材18の外周側面とが組み合わさって位置決めされた後で、接続部材57とヨーク4の四隅の下端部とが溶接されてヨーク4に固定される。ヨーク4とベース部材18とは少なくとも部分的に接着剤で固定されてもよい。
次に、図14を参照し、保持部72の詳細について説明する。図14は、図14(A)〜図14(F)を含む。図14(A)は、Z2側から見た保持部72Aの底面図である。図14(B)は、Y1側から見た保持部72Aの側面図である。図14(C)は、X2側から見た保持部72Aの側面図である。図14(D)は、Y2側から見た保持部72Aの側面図である。図14(E)は、X1側から見た保持部72Aの側面図である。図14(F)は、図14(A)に示す一点鎖線DLを含む断面を示す。保持部72Aと保持部72Bは、図10(A)に示すように、Y軸に関して左右対称に形成されている。そのため、以下の保持部72Aに関する説明は保持部72Bにも適用される。
保持部72Aは、図14に示すように、四角柱状に形成されている。具体的には、4つの側面S1〜S4と端面73を含む。但し、保持部72Aは、三角柱、五角柱、六角柱、七角柱、八角柱等の他の多角柱の形状を有していてもよい。また、図14では、側面S1及びS3の幅W1は、側面S2及びS4の幅W2より大きいが、保持部72Aは、幅W1が幅W2より小さくなるように形成されていてもよく、幅W1と幅W2とが同じになるように、すなわち、正四角柱状に形成されていてもよい。
側面S1と側面S2との間の側辺に対応する縁75−1、側面S2と側面S3との間の側辺に対応する縁75−2、及び、側面S3と側面S4との間の側辺に対応する縁75−3は何れもエッジが立つよう(湾曲しないよう)に成形されている。例えば、レンズ保持部材2は、縁75−1〜75−3のそれぞれに対応する金型部分が放電加工で形成された金型による射出成形によって形成されている。
一方で、側面S1と側面S4との間の側辺に対応する縁75−4は、エッジが立たないよう(湾曲するよう)に成形されている。本実施形態では、縁75−4は、4つの縁75−1〜75−4のうち、延在部33Aの根本部分から最も遠い位置にある。根本部分は、コイル3の巻き始め側にある延在部33Aを構成する1本の線材の一部であり、巻回部13に近い部分(例えば、巻回部13から所定の距離範囲内にある部分)を構成し、巻回部13を構成する線材の一巻き目に繋がっている。そのため、レンズ保持部材2は、例えば、縁75−4に対応する金型部分が放電加工ではなく切削加工で形成された金型による射出成形によって形成されている。エッジが立たないように縁75−4が成形される理由は、コイル3の巻回部13に繋がる延在部33Aの線材が保持部72Aに巻き付けられる際に、縁75−4と接触するその線材の表面に過度の力が掛からないようにするためである。この構成により、コイル3の線材は、保持部72Aに巻き付けられる際に断線し難くなる。
保持部72Aの端面73は、図14(A)に示すように、平坦部73fと、平坦部73fから隆起する隆起部73rとを有する。平坦部73fと側面S1〜S4のそれぞれとは直交している。
平坦部73fは、図14(A)に示すように、端面73の縁に沿って環状に形成されている。具体的には、底面視で長方形状の外形を有する端面73の四辺に対応する4つの縁76−1〜76−4に沿って環状に形成されている。図14(A)では、4つの縁76−1〜76−4のそれぞれに沿って連続するように形成された4つの平坦部73fは、等しい大きさの幅Waを有する。但し、4つの平坦部73fは、幅が互いに異なるように形成されていてもよい。
4つの縁76−1〜76−4は何れもエッジが立つよう(湾曲しないよう)に形成されている。すなわち、保持部72Aは、縁76のところで先細りしないように形成されている。そのため、レンズ保持部材2は、例えば、縁76に対応する部分に金型の合わせ面が位置するように構成された入れ子構造の金型による射出成形によって形成されている。
隆起部73rは、端部73r1及び連結部73r2を含む。端部73r1は、隆起が始まる部分である。連結部73r2は、2つ以上の端部73r1を連結する部分である。また、連結部73r2は、平坦部73fと平行な平面によって形成されている。図14では、端部73r1は、曲率半径Rの湾曲面を含む。図14(B)〜図14(F)においては、理解を容易にするために、曲率半径Rの円(球)を破線で示している。曲率半径Rは、例えば、切削加工で形成された金型で成形可能な最小曲率半径(例えば50μm)である。なお、端部73r1の湾曲面は、曲率半径R以上の異なる曲率半径を有する複数の湾曲面で構成されていてもよい。
隆起部73rは、その高さ(平坦部73fからZ2方向への高さHa)が端部73r1の湾曲面の曲率半径Rよりも小さくなるように構成されている。保持部72Aの側面S1〜S4における平面部分の高さH1をできるだけ高くしながら、保持部72Aの全高(H1+Ha)をできるだけ低くするためである。但し、高さHaは、所定値(例えば30μm)以上となるように構成される。高さHaが所定値よりも小さいと、縁76に打痕が付き難くするという効果が失われてしまうためである。
また、隆起部73rは、図14(B)〜図14(E)のそれぞれにおいて一点鎖線で示す線分TLと平坦部73f(XY平面)との間に形成される角度が所定角度θ以上となるように構成されている。線分TLは、例えば、端部73r1の湾曲面に関する接線のうち縁76を通る接線である。この構成により、隆起部73rは、保持部72Aの端面73を構成する縁76に他の部材が直接接触するのを抑制或いは防止できる。平坦な表面を有する他の部材は、その表面と保持部72Aの平坦部73f(XY平面)との間に形成される角度が所定角度θ未満であれば、Z1方向に移動しながら保持部72Aに接近する際に最初に隆起部73rに接触するためである。すなわち、隆起部73rに接触することなく縁76のみに接触することはないためである。
同様に、隆起部73rは、図14(F)の一点鎖線で示す線分TLuと平坦部73f(XY平面)との間に形成される角度が所定角度θu以上となるように構成されている。また、隆起部73rは、図14(F)の一点鎖線で示す線分TLvと平坦部73f(XY平面)との間に形成される角度が所定角度θv以上となるように構成されている。線分TLu及び線分TLvは、例えば、端部73r1の湾曲面に関する接線のうち縁75及び縁76を通る接線である。この構成により、隆起部73rは、縁75−2と縁76が形成する角に他の部材が直接接触するのを抑制或いは防止できる。平坦な表面を有する他の部材は、その表面と保持部72Aの平坦部73f(XY平面)との間に形成される角度が所定角度θu未満であれば、隆起部73rに接触することなくその角のみに接触することはないためである。また、隆起部73rは、縁75−4と縁76が形成する角(エッジ部分)に他の部材が直接接触するのを抑制或いは防止できる。平坦な表面を有する他の部材は、その表面と保持部72Aの平坦部73f(XY平面)との間に形成される角度が所定角度θv未満であれば、隆起部73rに接触することなくそのエッジ部分のみに接触することはないためである。
また、縁76−1〜76−4に対応する部分に金型の合わせ面が位置する状態で成形されるレンズ保持部材2は、平坦部73fの幅Waが所定幅よりも大きくなるように構成されている。成形品としてのレンズ保持部材2が入れ子構造の金型から確実に取り外されるようにするためである。例えば、図14では、平坦部73fの幅Waは20μmである。そして、隆起部73rは、その高さHaが幅Waよりも大きくなるように構成されている。結果として、隆起部73rは、例えば、平坦部73fの幅Waが小さいほど高さHaが低くなるように構成される。
次に、図15を参照し、保持部72Aと保持部72Aに巻き付けられるコイル3の延在部33Aとの関係について説明する。図15は、保持部72Aと延在部33Aの位置関係を示す図であり、図15(A1)、図15(A2)、図15(B1)及び図15(B2)を含む。図15(A1)及び図15(A2)は、延在部33Aが巻き付けられていない保持部72Aに関する2つの斜視図である。図15(B1)及び図15(B2)は、延在部33Aが巻き付けられた保持部72Aに関する2つの斜視図であり、図15(B1)が図15(A1)に対応し、図15(B2)が図15(A2)に対応する。
延在部33Aは、図15(B1)及び図15(B2)に示すように、保持部72Aに3ターン巻き付けられている。具体的には、延在部33Aの巻き付け部33mは、最初に側面S4と接触した後、湾曲するように形成されている縁75−4に沿って折り曲げられて第1湾曲部WPを形成した後で側面S1と接触する。その後、巻き付け部33mは、縁75−1(図14(A)参照。)で折り曲げられて側面S2と接触し、縁75−2(図14(A)参照。)で折り曲げられて側面S3と接触し、更には、縁75−3(図14(A)参照。)で折り曲げられて再び側面S4と接触する。
図15では、コイル3の線材は、保持部72Aの根本部分から端面73に向かって互いに密接するように3ターン巻き付けられ、且つ、切離部CPのところで引きちぎられている。具体的には、コイル3の線材は、3ターン目のところで縁75−4に沿って折り曲げられ且つ引っ張られて引きちぎられる。そのため、切離部CPは、縁75−4のところに位置し、且つ、端面73の縁76に最も近いところに位置する。
次に、図16を参照し、レンズ保持部材2を成形するための入れ子構造の金型について説明する。図16は、プラテンPTに取り付けられた金型本体部M1と入れ子M2を含む入れ子構造の金型の部分断面図である。具体的には、図16は、図16(A)〜図16(D)を含み、保持部72Aに対応する金型部分の断面を示している。図16(A)は合成樹脂がキャビティCVに射出される前の金型の状態を示し、図16(B)は合成樹脂がキャビティCVに射出されたときの金型の状態を示す。図16(C)は、異なる形状の入れ子M2で構成される別の金型の断面を示し、図16(A)に対応する。図16(D)は、離型できない成形品をもたらす金型の設置状態を参考例として示している。
入れ子構造の金型は、図16(A)に示すように、保持部72Aに対応する金型部分に入れ子M2が取り付けられている。入れ子M2は、保持部72Aの端面73における隆起部73rに対応する凹部M2aを有する。凹部M2aは、図16(B)に示すように隆起部73rの両側に幅Waの平坦部73fが形成されるように、保持部72Aの側面S1及びS3の幅W1より小さい幅W3を有する。
また、図16(B)に示すように、金型本体部M1と入れ子M2との間の合わせ面を含む平面PLは、保持部72Aの端面73における平坦部73fに対応している。そのため、キャビティCVに合成樹脂が射出されると、キャビティCV内に存在していたガスは、図16(B)の矢印で示すように、合わせ面のところにある僅かな隙間を通って外部に排出される。すなわち、キャビティCVにおける、端面73を区切る縁76−1〜76−4に対応する部分にガスが溜まることはない。その結果、その部分で合成樹脂の充填不足が発生することもない。この構成により、縁76−1〜76−4は、図16(B)に示すように、エッジが立つよう(湾曲しないよう)に成形される。
入れ子M2の凹部M2aは、図16(C)に示すように、保持部72Aの側面S1及びS3の幅W1とほぼ同じ大きさの幅W4を有していてもよい。但し、この場合には、金型本体部M1と入れ子M2とのはめ合い公差によっては、図16(D)に示すような離型できない成形品をもたらす凹部RCが金型に形成されてしまうおそれがある。そのため、望ましくは、入れ子M2の凹部M2aの幅W4は、幅W1よりも所定幅だけ小さくなるように構成される。すなわち、幅W4を幅W1より所定幅だけ小さくすることは、凹部RCが金型に形成されてしまうのをより確実に防止できることを意味する。
次に、図17を参照し、図16(A)で示すような入れ子構造の金型で成形された保持部72による全高の低減効果について説明する。図17は、X2側から見た保持部72の側面図と、X2側から見た参考例としての保持部72Xの側面図とを並べて示している。
参考例としての保持部72Xは、入れ子を含まない非入れ子構造の金型で成形されたレンズ保持部材の一部であり、保持部72に対応する。具体的には、非入れ子構造の金型は、保持部72Xに対応する金型部分が、切削加工で形成された単一の凹部で構成されている。そのため、保持部72Xの端部は、曲率半径Rの湾曲面を含む。曲率半径Rは、例えば、切削加工で形成された金型で成形可能な最小曲率半径(例えば50μm)である。この構成により、保持部72Xの全高は、側面S1〜S4における平面部分の高さH1と、端部における曲面部分の高さHaXとの合計で表される。なお、曲面部分の高さHaXは、曲率半径Rに等しい。
これに対し、保持部72は、保持部72Xの平面部分と同じ高さH1の平面部分を有し、且つ、保持部72Xの曲面部分の高さHaXより小さい高さHaの隆起部73rを有する。すなわち、保持部72は、保持部72Xの平面部分と同じ高さH1の平面部分を有しながら、保持部72Xの全高(H1+HaX)よりもΔHだけ低い全高(H1+Ha)を有する。
保持部72及び保持部72Xは何れも、上述のように、平面部分の縁76に他の部材が直接接触するのを抑制或いは防止できる。上述のように、平坦な表面を有する他の部材が隆起部73rに接触することなく縁76のみに接触することは起こり難いためである。
次に、図18を参照し、保持部72の別の構成例について説明する。図18(A1)は保持部72の第1変形例をZ2側から見たときの底面図であり、図18(A2)はその第1変形例をX2側から見たときの側面図である。図18(B1)は保持部72の第2変形例をZ2側から見たときの底面図であり、図18(B2)はその第2変形例をX2側から見たときの側面図である。図18(C1)は保持部72の第3変形例をZ2側から見たときの底面図であり、図18(C2)はその第3変形例をX2側から見たときの側面図である。図18(D1)は保持部72の第4変形例をZ2側から見たときの底面図であり、図18(D2)はその第4変形例をX2側から見たときの側面図である。
第1変形例は、4つの独立した隆起部73r−1〜73r−4を有する点で、1つの連続した隆起部73rを有する図14の保持部72(以下、「基本構成例」とする。)と異なる。この構成により、第1変形例は、基本構成例に比べて隆起部73rの総体積を低減させながらも、基本構成例と同様に、4つの縁76−1〜76−4の全てで打痕が付き難くなるという効果をもたらす。但し、第1変形例では、4つの隆起部73r−1〜73r−4のうちの少なくとも1つが省略されてもよい。例えば、縁76−1と縁76−2で打痕が付き難くなるという効果さえ実現できればよいのであれば、隆起部73r−3は省略されてもよい。同様に、縁75−4と縁76が接する角部分で打痕が付き難くなるという効果さえ実現できればよいのであれば、隆起部73r−2〜73r−4は省略されてもよい。
第2変形例は、隆起部73rが底面視でL字形状を有する点で、底面視で矩形状を有する基本構成例と異なる。具体的には、第2変形例では、L字形状の隆起部73rは、縁76−1と縁76−2に打痕が付き難くなるように、縁76−1及び縁76−2に沿うように配置されている。この構成により、第2変形例は、基本構成例に比べて隆起部73rの総体積を低減させながらも、少なくとも縁76−1及び76−2で打痕が付き難くなるという効果をもたらす。但し、第2変形例では、例えば縁76−2と縁76−3で打痕が付き難くなるという効果さえ実現できればよいのであれば、L字形状の隆起部73rは、縁76−2及び縁76−3に沿うように配置されていてもよい。同様に、L字形状の隆起部73rは、縁76−3及び縁76−4に沿うように配置されていてもよく、縁76−4及び縁76−1に沿うように配置されていてもよい。
第3変形例は、隆起部73rに囲まれた平坦部73f2を有する点で基本構成例と異なる。この構成により、第3変形例は、基本構成例に比べて隆起部73rの総体積を低減させながらも、基本構成例と同様に、4つの縁76−1〜76−4の全てで打痕が付き難くなるという効果をもたらす。なお、第3変形例は、隆起部73rに囲まれた複数の平坦部73f2を有するように構成されていてもよい。
第4変形例は、例えば、図16(C)に示す入れ子構造の金型で成形される。第4変形例は、隆起部73rの端部73r1が縁76−1〜76−4のそれぞれと接している点で基本構成例と異なる。そのため、第4変形例では、平坦部73fは、端面73の四隅に独立して配置されている。この構成により、第4変形例は、基本構成例に比べ、縁76−1〜76−4の全てで更に打痕が付き難くなるという効果をもたらす。但し、隆起部73rは、4つの縁76−1〜76−4のうちの少なくとも1つと接するように形成されていてもよい。例えば、隆起部73rは、縁76−1のみと接するように形成されていてもよい。この場合、平坦部73fは、3つの縁76−2、76−3及び76−4に沿うように且つ連続するように配置される。或いは、隆起部73rは、縁76−1及び縁76−3のみと接するように形成されていてもよい。この場合、平坦部73fは、縁76−2に沿った部分と縁76−4に沿った部分が互いに独立して配置される。
上述のように、本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置101は、レンズ体を保持可能なレンズ保持部材2と、レンズ保持部材2の周囲に固定されるコイル3と、コイル3に対向して配置される磁石5とを備える。そして、レンズ駆動装置101は、コイル3に流れる電流と磁石5が発生する磁界とで力を発生させて板ばね6で支持されているレンズ保持部材2を光軸方向JDに沿って移動させる。レンズ保持部材2には、コイル3を構成する線材が巻き付けられる角柱状の保持部72が形成されている。保持部72の端面73は、平坦部73fと、平坦部73fから隆起する隆起部73rとを有する。この構成により、レンズ駆動装置101は、打痕が付き難く且つ線材を巻き付け易い保持部72を提供できる。保持部72の端面73と別部品とが接触する際、保持部72は、端面73の縁76と隆起部73rとでその別部品を受けることができるためである。すなわち、保持部72の端面73と別部品とが接触したとしても、保持部72は、エッジが立つように形成された縁76でそのエッジが丸まってしまうのを防止できるためである。また、保持部72は、コイル3を構成する線材が保持部72の先端近傍まで巻き付けられ得る形状(先細りのない形状)を維持できるためである。すなわち、保持部72に巻き付けられた線材は、保持部72の先端が先細りになっていると、縁76から滑って抜けてしまうが、本実施形態では、保持部72の先端は先細りになっていないためである。
コイル3を構成する線材は、例えば、図15(B1)及び図15(B2)に示すように保持部72の側面S1〜S4における平面部分の全高にわたって巻き付けられ得る。そのため、線材は、保持部72にしっかりと固定され得る。また、線材は、図12(B)に示すように、巻き数(ターン数)が多い程、下側板ばね26Aの内側部分26iのZ2側に位置する部分が多くなる。そのため、線材の巻き数が多い程、半田付けで線材と下側板ばね26Aとを接続する場合の作業性、接続性等を向上させることができる。
切削加工で形成された金型で成形可能な最小曲率半径(例えば50μm)が同じであれば、入れ子構造の金型で成形される保持部72の全高(H1+Ha)は、図17に示すように、非入れ子構造の金型で成形される保持部72Xの全高(H1+HaX)よりも小さくなる。その一方で、保持部72を構成する側面S1〜S4における平面部分の高さH1は、保持部72Xを構成する側面S1〜S4における平面部分の高さH1と同じに維持される。これは、打痕の付き難さ及び線材の巻き付け易さが維持されたまま、全高が短縮され得ること、更には、レンズ駆動装置101の薄型化に対応できることを意味する。
平坦部73fは、望ましくは、図14(A)に示すように端面73の縁76に沿って環状に形成されている。そして、所定の幅を有する平坦部73fは、例えば、入れ子構造の金型を用いてレンズ保持部材2が成形される場合、図16(D)に示すような離型できない成形品をもたらす凹部RCが金型に形成されてしまうのを防止できる。
平坦部73fからの隆起部73rの高さHaは、望ましくは、平坦部73fの幅Waよりも大きい。この場合、高さHaは、例えば30〜50μmであり、幅Waは、例えば20μmである。
保持部72は、望ましくは、図14に示すように四角柱状である。この場合、4つの側辺に対応する縁75−1〜75−4のうち、線材が最初に接触する側面S4と2番目に接触する側面S1との間にある縁75−4は、望ましくは湾曲している。そして、他の3つの縁75−1〜75−3は、エッジが立つよう(湾曲しないよう)に構成されていてもよい。この構成により、保持部72は、コイル3の線材が保持部72に巻き付けられる際に、縁75−4と接触するその線材の表面に過度の力が掛かってしまうのを防止できる。そのため、コイル3の線材は、保持部72に巻き付けられる際に断線し難くなる。
保持部72は、望ましくは、光軸方向JDに突出している。具体的には、図15に示すように、Z2方向に突出している。この構成により、レンズ体の光軸の周りに配置された巻回部13から延びるコイル3の延在部33は、過度に折り曲げられることなく、保持部72に巻き付けられる。但し、保持部72は、光軸方向JDとは異なる方向に突出していてもよい。
平坦部73fからの隆起部73rの高さHaは、望ましくは、隆起部73rの端部73r1の曲率半径Rよりも小さい。この場合、保持部72は、例えば、図16(A)に示すような切削加工で形成された入れ子構造の金型で成形され得る。曲率半径Rは、例えば、切削加工で形成された金型で成形可能な最小曲率半径(例えば50μm)である。この構成により、保持部72は、切削加工で形成された非入れ子構造の金型で成形される場合に比べ、側面S1〜S4における平面部分の高さH1を維持しながらも、全高(H1+Ha)を小さくすることができる。その結果、レンズ保持部材2は、保持部72に関する打痕の付き難くさ及び線材の巻き付け易さが維持されたままで薄型化され得る。
レンズ保持部材2は、望ましくは、図16(A)に示すように入れ子M2を含む入れ子構造の金型で成形された成形品である。この場合、金型本体部M1と入れ子M2との間の合わせ面(図16(B)における合わせ面を含む平面PL参照。)の位置は、望ましくは、保持部72の端面73における平坦部73fの位置に対応している。そのため、保持部72の端面73における縁76−1〜76−4での空気溜まりに起因するショートショットの発生が防止される。その結果、保持部72は、縁76−1〜76−4でエッジが立つよう(湾曲しないよう)に成形され得る。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形及び置換が適用され得る。また、上述の実施形態を参照して説明された特徴のそれぞれは、技術的に矛盾しない限り、適宜に組み合わされてもよい。
例えば、上記実施形態では、保持部72がレンズ保持部材2(フランジ部52)の一端部から光軸方向JDに突出するように構成されているが、この構成に限定されるものではない。保持部72は、光軸方向JDとは異なる方向(例えば側方)に突出していてもよい。
また、上記実施形態では、フランジ部52には、コイル3の延在部33を通す切欠部52kが2つ設けられているが、コイル3の巻回部13を保持可能であれば、3つ以上の切欠部が設けられていてもよい。
また、上記実施形態では、下側板ばね26Aと延在部33Aとを電気的に接続し、且つ、下側板ばね26Bと延在部33Bとを電気的に接続する構成としたが、これに限るものではない。例えば、手振れ補正機能付きのレンズ駆動装置においては、上側板ばねを2つに分割して一対とし、延在部33A及び延在部33Bのそれぞれと電気的に接続する構成であってもよい。この場合には、レンズ保持部材2の上端部側(Z1側)に切欠部を有するフランジ部が設けられていてもよい。
また、上記実施形態では、金型本体部M1と入れ子M2とがプラテンPTに取り付けられる構成としたが、入れ子構造の金型は、この構成に限られない。例えば、プラテンPTを用いずに、入れ子M2が直接的に金型本体部M1に取り付けられていてもよい。この場合には、図16(A)に示す金型本体部M1及び入れ子M2をZ2方向へ延長させ、キャビティCVから離れたZ2側の位置で、入れ子M2を金型本体部M1に、例えばねじ止めによって固定することができる。