以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる苗移植機1の略左側面図であり、図2は、図1に示された苗移植機1の略平面図である。本明細書においては、図1および図2に矢印で示されるように、苗移植機1の進行方向となる側を前方(F)とする。
図1および図2に示されるように、苗移植機1は、走行車両2と、走行車両2の後部に取り付けられた苗植付部20を備えている。
図1に示されるように、走行車両2は、走行車両2の略中央に配置されたメインフレーム3と、前輪5および後輪6を備えている。メインフレーム3の上方にはフロアステップ19が設けられ、フロアステップ19の前端部にはペダル60が設けられているため、作業者は前方から走行車両2に乗り降り可能に構成されている。フロアステップの上方には、走行車両2の前部に配置されたフロントカバー10と、フロントカバー10の後方に配置された操縦部12と、フロントカバー10に覆われ、苗移植機1を制御する制御部(図1および図2には図示せず)と、操縦部12の後方に配置された操縦席11が設けられている。操縦部12は、走行車両2の操舵を行うステアリングハンドル17と、苗移植機1を操作するための操作部16と、操作部16の近傍に設けられたモニター(図1および図2には図示せず)を備えている。
図3は、図1に示された苗移植機1の操作部16の近傍の略平面図である。
図3に示されるように、操作部16は、ステアリングハンドル17のハンドルポスト17pの周囲を囲うように設けられており、走行車両2の前後進および走行速度を変更するための主変速レバー16a、走行車両2の走行速度を走行する場所に応じた速度に切り換えるための副変速レバー16b、後に詳述する左右一対の線引きマーカーを操作する第一のトリガー手段、第二のトリガー手段および第三のトリガー手段として機能するマーカーレバー16c、後に詳述する旋回制御を設定し、または解除するための旋回制御スイッチ16d、旋回制御が設定されている場合に植始めの位置を調整するための植始め調整ダイアル16eおよびその他の操作に用いられる種々のスイッチ・ダイアル類を備えている。
図3に示されるように、操作部16の前部には、苗移植機1の各部の状態を示すモニター15が取り付けられている。
図1に示されるように、操縦席11の下方にはエンジン4が設けられており、エンジン4から出力された駆動力は、フロアステップ19の下方に設けられたベルト式動力伝達機構9および油圧式無段変速機8を介してミッションケース7に伝動された後に、ミッションケース7内の副変速機(図示せず)で変速されて、前輪5および後輪6への走行用の動力と、苗植付部20への駆動用の動力とに分けて伝動される。
走行用の動力は、ミッションケース7の左右に設けられ、車軸41を介して前輪5に連結された前輪ファイナルケース13を介して前輪5に伝動されるとともに、残りの動力は車軸42を介して後輪6に連結された左右の後輪ギアケース14を介して後輪6に伝動されることにより走行車両2が前進または後進可能に構成されている。ここに、作業者がステアリングハンドル17を切ると、ステアリングハンドル17の操舵操作が操縦部12内に設けられた伝動機構を介して前輪ファイナルケース13に操舵力が伝達され、前輪5の向きを変更可能に構成されている。また、ハンドルポスト17pに支持されたステアリングシャフト(図示せず)にはステアリングセンサ(図1ないし図3には図示せず)が設けられており、ステアリングセンサは、ステアリングハンドル17が切られた角度を検出し、検出結果を走行車両2の制御部に出力するように構成されている。
一方、駆動用の動力は、走行車両2の後部に設けられた植付クラッチ(図示せず)に伝動され、植付クラッチが入れられた際に苗植付部20へ伝動されるとともに、施肥伝動機構(図示せず)によって操縦席11の後部に設けられた施肥装置24へ伝動される。
図1に示されるように、苗植付部20は、昇降リンク装置Rを介して走行車両2に連結されている。昇降リンク装置Rは、上部リンクアーム21および左右一対の下部リンクアーム22を備え、苗植付部20を昇降可能に構成されている。上部リンクアーム21および下部リンクアーム22の一端はメインフレーム3の後部に設けられたリンクベースフレーム43に取り付けられ、他端は苗植付部20の下部に位置する上下リンクアーム44に取り付けられている。詳細には、メインフレーム3に取り付けられた支持部材(図示せず)と上部リンクアーム21に一体形したスイングアーム(図示せず)の先端部の間に設けられた昇降油圧シリンダ23を、制御部により制御される電子油圧バルブ(図1および図2には図示せず)によって油圧で伸縮させることにより、前記上部リンクアーム21が上下に回動し、苗植付部20を、苗植付部20の下端がメインフレーム3の底部と略同一の高さとなる非作業位置まで上昇させたり、苗植付部20が接地し、圃場に苗を植付けるのに好適な作業位置まで下降させたりすることができ、苗植付部20が非作業位置にある場合には、苗植付部20が圃場に接地しないため、走行車両2の走行を妨げることを防止することができる。
図1および図2に示されるように、苗植付部20の下端には、苗植付部20の左右方向中央に配置されたセンターフロート20cおよびその左右に複数配置されたサイドフロート20dが苗植付部20から吊るされるように設けられ、苗移植機1を走行させると、各フロートが圃場を整地可能に構成されている。さらに、センターフロート20cは圃場の凹凸に合わせてその前部が上下するように構成されているため、センターフロート20cの前部に設けられ、ポテンショメータによって構成されたフロートセンサ(図1および図2には図示せず)がセンターフロート20c前部の上下位置を検出し、制御部に出力した後に、制御部は、検出結果にしたがって電子油圧バルブを制御して昇降油圧シリンダ23を伸縮させ、苗植付部20を昇降させることにより、苗の植付深さを一定に維持するように構成されている。また、図2に示されるように、センターフロート20cは、サイドフロート20dよりも前方に設けられており、フロートセンサがより早く圃場の凹凸を検出し、苗植付部20の上下位置を迅速に調整可能に構成されている。
ここに、昇降リンク装置Rの上部リンクアーム21とリンクベースフレーム43との連結部分には、リンクセンサ(図1および図2には図示せず)が設けられており、リンクセンサは、リンクベースフレーム43に対する上部リンクアーム21の相対角度を検出し、検出結果が制御部に出力された後に、制御部は、検出結果から苗植付部20の現在の高さ(上下位置)を算出可能に構成されている。
図1および図2に示されるように、苗植付部20の後部には4つの植付装置20aが設けられている。各植付装置20aは、伝動ケース20eと、伝動ケースの左右に設けられた一対の植付ケース20gと、各植付ケース20gに取り付けられた植付爪20fを備え、植付ケース20gが、走行車両2の左右方向に延びる回動軸周りに回転することにより、植付爪20fは、図1に示された軌跡Tを描くように回転しながら、苗植付部20の上部に設けられた苗載置台20bに載置された苗を、図2に示された苗取出口20hから取り出して圃場に移植可能に構成されている。
図2に示されるように、本実施態様にかかる苗移植機1の苗植付部20には植付爪20fが左右方向に8つ設けられており、走行車両2が圃場を走行する際、同時に8列分の苗を植付可能に構成されている(このような苗の植え付け方法は「8条植」と呼ばれる。)。また、苗載置台20bは、苗送りベルト20iを備え、苗送りベルト20iにより苗載置台20bに載置された土付きのマット状苗を下方に移送可能であるとともに、走行車両2の左右方向に往復動して苗取出口20hに苗を一株ずつ供給可能に構成されている。
図1および図2に示されるように、操縦席11の後方に設けられた施肥装置24は、肥料を貯留する貯留ホッパ24aと、貯留ホッパ24aから供給される肥料を設定量ずつ繰り出す繰出し装置24bと、繰出し装置24bにより繰り出された肥料を圃場に供給する施肥通路である施肥ホース24cと、走行車両2の左側部に設けられ、施肥ホース24cにエアを供給することにより、施肥ホース24c内の肥料を苗植付部20側に移送するブロワ24dと、施肥ホース24cの後側の端部に取り付けられた施肥ガイド45と、移送された肥料を圃場に落とし込むための作溝器46を備えている。
図1および図2に示されるように、走行車両2の前部には、苗載置台20bに補充する苗を載置するための予備苗載台37が左右にそれぞれ設けられている。予備苗載台37は、上から順に、第1予備苗載台37a、第2予備苗載台37bおよび第3予備苗載台37cを備え、フロアステップ19の下部に取り付けられた支持フレーム55に支持されている。
図4は、図1に示された苗移植機1の予備苗載台37の略左側面図であり、図4(a)は、予備苗載台37の第1ないし第3予備苗載台37a,37b,37cが上下方向に並んだ積層状態の場合の略左側面図であり、図4(b)は、予備苗載台37の第1ないし第3予備苗載台37a,37b,37cが前後方向に並んだ展開状態の場合の略左側面図である。
図4(a)に示されるように、第1ないし第3予備苗載台37a,37b,37cは第1支持枠体38a、第2支持枠体38bおよび第3支持枠体38cによってそれぞれ支持され、第1ないし第3支持枠体38a,38b,38cは、第1移動リンク部材54a、第2移動リンク部材54bおよび第3移動リンク部材54cによって、上下方向に並んだ積層状態と、図4(b)に示されるように、前後方向に並んだ展開状態との間で切換え可能に連結されており、本実施態様においては、電動モータ58を備えた切換駆動装置59によって展開可能に構成されている。
図4(a)および図4(b)に示されるように、第1移動リンク部材54aにおける、走行車両2の左右方向中央部側の側面には、乗降用ハンドル61が設けられており、図1および図2に示されたペダル60を踏んで走行車両2の前方から乗り込む際に、予備苗載台37を展開状態にし、乗降用ハンドル61を掴むことにより、安全かつ快適に走行車両2に乗り込み可能に構成されている。
図5は、図1に示された苗移植機1を「繰り返し走行」させつつ、苗を圃場に植え付けた場合の圃場上の苗移植機1の走行経路を示す略平面模式図である。
すなわち、図5は、苗移植機1を、圃場の一辺に沿ったある列上を走行させつつ、圃場に苗を植え付け、圃場の端部で、苗移植機1を反転させ、反転前に苗移植機1を走行させた圃場の列に略平行で隣接する列に沿って、苗移植機1を走行させて、苗を植え付け、圃場の端部に達した時点で、苗移植機1を再度反転させ、直前に、苗を植え付けた圃場の列と略平行で隣接する列に沿って、苗移植機1を走行させて、苗を植え付けるという植え付け操作を繰り返し、圃場全体に苗を植え付けた場合の圃場上の苗移植機1の走行経路を示す略平面模式図である。
具体的には、苗移植機1を「繰り返し走行」させて苗を植え付ける場合、苗移植機1は、図5に示される「植付始め位置」から、苗の植え付けを開始し、図5において一点鎖線で示されるように、圃場の一辺に沿った列上を一方の方向に走行しつつ(図5における「1列目」)、圃場に苗を植え付け、圃場の端部に達すると、反転されて、直前に苗を植え付けた列に略平行で隣り合った列上を反対方向に走行しつつ(図5における「2列目」)、苗を植え付け、圃場の反対側の端部に達すると、再度反転されて、直前に苗を植え付けた列に略平行で隣り合った列上を反対方向(1列目と同じ方向)に走行しつつ(図5における「3列目」)、苗を植え付け、以下、同様にして、苗移植機1は、圃場全体を走行しつつ(図5における「4〜8列目」)、苗を圃場に植え付けるように構成されている。また、上述のように、本実施態様にかかる苗移植機1の苗植付部20は、走行車両2が圃場を走行する際、同時に8列分の苗を植え付ける8条植えという方法によって苗を圃場に植え付けるように構成されており、図5に示されるように、苗移植機1が「1列目」から「8列目」まで走行および苗の植え付けを行った場合には、図5における左右方向に64列の苗が植え付けられる。
本実施態様においては、苗移植機1は「繰り返し走行」され、一対の線引きマーカーによって、圃場のある列上を走行する際に、反転後に走行すべき列の位置を示す線を圃場に形成し、所望の経路上を苗移植機1が確実に走行することができるように構成されている。
図6は、圃場上に線を形成する線引きマーカーML,MRを備えた苗移植機1の略斜視図である。
図6に示されるように、走行車両2の左右には、圃場上に線を形成する一対の線引きマーカーML,MRが設けられている。
左右一対の線引きマーカーML,MRは、通常、苗移植機1を繰り返し走行させつつ、圃場に苗を植えつける場合に、苗移植機1がある列上を走行中に、反転後に走行すべき列の位置を示す基準線を圃場に形成するものである。なお、苗移植機1が圃場の中央部を「繰り返し走行」され、その後に圃場の周縁部を周るように走行しつつ、苗を植え付ける場合などには、左右一対の線引きマーカーML,MRの使用は、「反転後に」走行すべき列の位置を示す線を形成する目的に限られない。
図6に示されるように、一対の線引きマーカーML,MRはそれぞれ、略L字状をなしたマーカーロッドML2またはMR2と、マーカーロッドML2,MR2の一方の先端部に転動可能に取り付けられた車輪状の線引き体ML1、MR1を備えており、左右の線引き体ML1、MR1の半径方向外側部分にはそれぞれ、複数の突起Pが設けられている。
マーカーロッドML2,MR2は、後に詳述するように、その走行車両2側の端部に取り付けられた軸まわりに、走行車両2の走行方向に垂直な面内を揺動可能に設けられており、図6においては、右側の線引きマーカーMRが、その線引き体MR1が圃場面から離間する非作用姿勢にあり、左側の線引きマーカーMLが、その線引き体ML1が圃場面に接するように、マーカーロッドML2が揺動された作用姿勢にある状態が示されている。
図7は、図1に示された苗移植機1の左側の線引きマーカーMLの近傍の略正面図であり、線引きマーカーMLの構造を示すものである。また、図8は、図1に示された苗移植機1の左側の線引きマーカーMLの線引き体ML1の近傍の略左側面図であり、線引き体ML1による圃場への線の形成過程を示すものである。
図7に示されるように、苗移植機1の左側の圃場に線を形成する場合には、線引きマーカーMLのマーカーロッドML2が、走行車両2の前後方向に延びる略水平軸Axまわりに揺動され、線引き体ML1の半径方向外側部分に設けられた複数の突起Pのうち、線引き体ML1の下部に位置する突起Pが圃場に挿し込まれる。この状態で、苗移植機1が圃場上を走行することによって、図6および図8に示されるように、線引き体ML1が圃場上を転動され、線引き体ML1に設けられた複数の突起Pが、線引き体ML1の転動に伴い圃場の土を起こすことにより、圃場における線引き体ML1が転動された箇所に線が形成される。線引きマーカーMRを用いて、苗移植機1の右側の圃場に線を形成する場合も同様である。
図1、図2および図6に示されるように、苗移植機1のフロアステップ19の前端部には、走行車両2における左右方向中央部の位置を示すセンターマスコット40が設けられており、本実施態様においては、センターマスコット40を用いることによって、圃場に形成された線に沿って、苗移植機1を走行させることができるように構成されている。すなわち、左右の線引きマーカーML,MRにより形成された線の上を、センターマスコット40が通るように苗移植機1を運転することによって、圃場に形成された線に沿って、苗移植機1を走行させることが可能になる。
上述のように、本実施態様にかかる苗移植機1の苗植付部20には、左右方向に8つの植付爪20fが設けられており、図5に示されるように、圃場において苗移植機1を「繰り返し走行」させつつ、苗を圃場に植え付けるにあたり、隣の列を走行した際に形成された線に沿って、苗移植機1を走行させることにより、隣の列を走行した際に植え付けた8列の苗に対して、適切な間隔で8列の苗を植え付けつつ走行することができる。すなわち、左右の線引きマーカーML,MRのマーカーロッドML2,MR2は、苗植付部20が左右方向に8つの植付爪20fを備えている場合に、圃場上の適切な位置に線を形成することができる長さに設定されている。
「8条植」で苗を圃場に植え付けるに際しては、まず、左右の線引きマーカーML,MRのいずれによって圃場に線を形成するかを決定する。左の線引きマーカーMLを用いて圃場に線を形成する場合には、苗移植機1を圃場内を走行させるのに先立って、左の線引きマーカーMLのマーカーロッドML2を略水平軸Axまわりに揺動させ、線引き体ML1をその突起Pが圃場の土内に埋まる深さで圃場内に侵入させ、この状態で、苗移植機1を圃場内で走行させる。すなわち、苗移植機1は、図5における「1列目」の列を走行しつつ、苗植付部20を用いて、「8条植」で圃場に苗を植え付け、同時に、左側の線引きマーカーMLの線引き体ML1が圃場上を転動されて、「2列目」の位置に線が形成される。次いで、苗移植機1が反転され、「1列目」の列を走行した際に形成した「2列目」の線にセンターマスコット40を位置合わせしながら、苗移植機1を運転することにより、苗移植機1は、図5における「2列目」の列を走行しつつ、苗植付部20を用いて「8条植」で圃場に苗を植え付ける。この際、苗移植機1が次に走行する「3列目」の列は、「2列目」を走行する苗移植機1の右側に位置するから、苗移植機1を「2列目」の列を走行させるに先立って、右の線引きマーカーMRを略水平軸Axまわりに揺動させ、線引き体MR1の下部に位置する突起Pを圃場内に侵入させてから、苗移植機1を走行させることにより、「3列目」の走行位置に線が形成される。
以下同様にして、苗移植機1を、圃場の「2列目」ないし「7列目」を走行させた際に、左右の線引きマーカーMLまたはMRを交互に用いて引いた線に沿って、「3列目」ないし「8列目」を走行しつつ、苗植付部20による苗の植付けを行うことにより、圃場全体に、適切な間隔で苗を植え付けることができる。
図7に矢印で示されるように、左の線引きマーカーMLは、マーカーロッドML2が左右方向に延び、線引き体ML1が圃場に接触する作用姿勢と、マーカーロッドML2が上下方向に延び、線引き体ML1が圃場から離間する非作用姿勢との間で切換え可能に構成されており、標準状態では非作用姿勢に設定されている。右の線引きマーカーMRについても同様の構成である。
図6および図7に示されるように、左右の線引きマーカーML,MRのマーカーロッドML2,MR2の走行車両2側の端部は、姿勢切換手段として機能する姿勢切換用モータ50に取り付けられており、姿勢切換用モータ50は操作部16のマーカーレバー16cを操作することによって駆動されるように構成されている。さらに、図1ないし図8には図示されていないが、姿勢切換用モータ50には、左右の線引きマーカーML,MRのマーカーロッドML2,MR2の現在の角度を検出する角度センサにより構成された姿勢検出センサが設けられており、姿勢検出センサが検出した一対の線引きマーカーML,MRのマーカーロッドML2,MR2の角度は制御部に出力され、制御部は姿勢検出センサからの検出信号に基づいて、一対の線引きマーカーML,MRの姿勢を判断することができる。
図3に示されるように、操作部16の前部に取り付けられたモニター15は、その左右の端部に左のマーカーランプ15Lおよび右のマーカーランプ15Rを備え、左右のマーカーランプ15L,15Rは制御部に接続されている。
制御部は、姿勢検出センサから出力された検出信号に基づき、左右の線引きマーカーML,MRの姿勢を判断し、左の線引きマーカーMLのみが作用姿勢にある場合には、左のマーカーランプ15Lを点灯させ、右の線引きマーカーMRのみが作用姿勢にある場合には、右のマーカーランプ15Rを点灯させ、左右両方の線引きマーカーML,MRが作用姿勢にある場合には、左右のマーカーランプ15L,15Rを点灯させる。なお、左右の線引きマーカーML,MRが非作用姿勢にある場合には、いずれのマーカーランプ15L,15Rも点灯させない。
したがって、作業者は、苗移植機1を走行させつつ、苗を植え付ける際に、左右のマーカーランプ15L,15Rを確認することにより、左右の線引きマーカーML,MRの姿勢を把握することができる。
図9は、図1に示された苗移植機1の制御系、検出系、入力系、駆動系、および表示系のブロックダイアグラムである。
図9に示されるように、苗移植機1の制御系は、苗移植機1全体の動作を制御する制御部Cと、制御プログラムなどが格納されたROM27および種々のデータが格納されるRAM26を備えている。
図9に示されるように、苗移植機1の駆動系は、操縦席11の下方に設けられたエンジン4と、予備苗載台37を展開状態と積層状態との間で切換えるための電動モータ58と、線引きマーカーML,MRを作用姿勢と非作用姿勢との間で切換えるための姿勢切換用モータ50と、線引きマーカーML,MRの作用姿勢時の高さ(上下位置)を調節するための高さ調節用モータ49と、苗植付部20を昇降させる際に油圧シリンダ23を伸縮させるための電子油圧バルブ23aを備えている。
図9に示されるように、苗移植機1の検出系は、ハンドルポスト17pに支持され、ステアリングハンドル17が切られた角度を検出するステアリングセンサ17sと、走行車両2のメインフレーム3の左右方向中央部に設けられ、走行車両2の左右の傾きを検出する傾斜検知センサ39と、後輪ギアケース14に内装され、後輪6の回転数をカウントする後輪回転センサ14sと、センターフロート20cの前部に設けられ、センターフロート20c前部の上下位置を検出するフロートセンサ18と、昇降リンク装置Rの上部リンクアーム21とリンクベースフレーム43との連結部分に設けられ、リンクベースフレーム43に対する上部リンクアーム21の相対角度を検出するリンクセンサ25と、姿勢切換用モータ50に設けられ、左右の線引きマーカーML,MRのマーカーロッドML2,MR2の、姿勢切換用モータ50に対する現在の相対角度を検出する姿勢検出センサ28を備えている。
図9に示されるように、苗移植機1の入力系は、操作部16を備えており、操作部16は、主変速レバー16aおよび副変速レバー16bと、線引きマーカーML,MRの姿勢を切り換えるためのマーカーレバー16cと、旋回制御を設定するための旋回制御スイッチ16dおよび植始め調整ダイアル16eと、苗植付部20を昇降させるための苗植付部昇降レバー16fと、植付クラッチを入りにするための植付スイッチ16gを備えている。
図9に示されるように、苗移植機1の表示系は、操作部16の前方に設けられ、苗移植機1の各部の状態を示すモニター15を備えている。
図10は、図1に示された苗移植機1のマーカーレバー16cの略斜視拡大図である。
図10に示されるように、操作部16のマーカーレバー16cは、左方、右方および前方に傾倒操作が可能に構成されている。マーカーレバー16cは制御部Cに接続されており、マーカーレバー16cをいずれかの方向に傾倒操作すると、その方向に応じた信号が制御部Cに出力されるように構成され、マーカーレバー16cを操作することにより、左右の線引きマーカーML,MRの姿勢の切換えが可能に構成されている。
本実施態様においては、マーカーレバー16cを、左または右に傾倒操作することによって、左または右の線引きマーカーML,MRを作用姿勢に切換えることができ、左の線引きマーカーMLが非作用姿勢にある場合に、マーカーレバー16cを左に傾けると、左の線引きマーカーMLが作用姿勢に切換えられ、右の線引きマーカーMRが非作用姿勢にある場合に、右のマーカーレバー16cを右に傾けると、右の線引きマーカーMRが作用姿勢に切換えられるように構成されている。一方、左または右の線引きマーカーML,MRが作用姿勢にある場合に、マーカーレバー16cを前に傾けたときには、作用姿勢にある左または右の線引きマーカーML,MRが非作用姿勢に切換えられ、左右の線引きマーカーML,MRの双方が作用姿勢にある場合に、マーカーレバー16cを前に傾けたときには、左右の線引きマーカーML,MRがともに非作用姿勢に切換えられるように構成されている。
具体的には、例えば、図5に示される「植付始め位置」において、2列目に走行する走行位置を示す基準線を圃場に形成するために、左の線引きマーカーMLを、標準状態である非作用姿勢から作用姿勢に切換えたい場合には、マーカーレバー16cを左方に傾倒操作する。制御部Cには、姿勢検出センサ28から姿勢検出信号が入力されており、制御部Cが入力された姿勢検出信号に基づいて、左の線引きマーカーMLの姿勢が非作用姿勢にあると判定したときは、制御部Cは、マーカーレバー16cの操作にしたがって、左の線引きマーカーMLの姿勢切換用モータ50に信号を出力し、左の線引きマーカーMLを作用姿勢に切換える。同様にして、マーカーレバー16cを右に傾倒操作すれば、非作用姿勢にある右の線引きマーカーMRを作用姿勢に切換えることができる。このように、左右の線引きマーカーML,MRは、マーカーレバー16cを左右いずれかの方向に傾倒操作することにより、左右独立して非作用姿勢から作用姿勢に切換え可能に構成されている。
また、非作用姿勢にある左右の線引きマーカーML,MRの双方を作用姿勢に切換えたい場合には、マーカーレバー16cを左方に傾倒操作して左の線引きマーカーMLを作用姿勢に切換えた後に、マーカーレバー16cを右方に傾倒操作して右の線引きマーカーMRを作用姿勢に切換えることによって、左右の線引きマーカーML,MRの双方を作用姿勢に切換えることができる。あるいは、マーカーレバー16cを右方に傾倒操作して右の線引きマーカーMLを作用姿勢に切換えた後に、マーカーレバー16cを左方に傾倒操作して左の線引きマーカーMLを作用姿勢に切換えることにより、左右の線引きマーカーML,MRの双方を作用姿勢に切換えることも可能である。
図7に示されるように、本実施態様にかかる苗移植機1においては、姿勢切換用モータ50は、フロアステップ19の下面に取り付けられたマーカー支持体48に設けられた高さ調節用モータ49に、上下方向に移動可能に取り付けられている。
図7に示されるように、マーカー支持体48に設けられた高さ調節用モータ49にはピニオンギア52が取り付けられており、左の線引きマーカーMLのマーカーロッドML2に取り付けられた姿勢切換用モータ50の走行車両2側の面には、ラックギア53が、ピニオンギア52と噛み合うように取り付けられている。そして、高さ調節用モータ49によってピニオンギア52が回動されることにより、ラックギア53とともに姿勢切換用モータ50および左の線引きマーカーMLの高さ(上下位置)が、左の線引きマーカーMLの姿勢を維持した状態で、変更可能に構成されている。なお、右の線引きマーカーMRの高さの変更についても、同様の構成である。
本実施態様にかかる苗移植機1においては、制御部Cは、苗植付部20を下降させ、左右の線引きマーカーML,MRの少なくとも一方を作用姿勢に切換えて、走行車両2が走行を開始する際に、または、走行中に、昇降リンク装置Rに設けられたリンクセンサ25によって、リンクベースフレーム43に対する上部リンクアーム21の相対角度を検出し、リンクセンサ25の検出結果に基づいて、現在の苗植付部20の高さを算出し、算出された苗植付部20の高さに基づいて、現在、苗移植機1が位置している場所における圃場の深さ(耕深)を算出する。
具体的には、制御部Cは、現在の苗植付部20の高さから算出される前輪5および後輪6の圃場への沈み具合が所定の深さよりも浅い状態が1秒以上継続するか否かを測定し、1秒以上継続したときは、現在位置の圃場が硬く、圃場の深さが所定の深さよりも浅い状態であり、作用姿勢にある左右の線引きマーカーML,MRの線引き体ML1またはMR1の下端部が圃場に接地せず、左右の線引きマーカーML,MRによって圃場に線を形成することができないと認められるので、制御部Cは、高さ調節用モータ49を駆動してピニオンギア52を回転させ、左右の線引きマーカーML,MRの高さを基準となる位置よりも下げ、左右の線引きマーカーML,MRによる圃場への線の形成を続けるように構成されている。
また、圃場の凹凸により、走行車両2が左右の一方に傾いた場合に、その傾きの角度によっては、作用姿勢に位置する一方の線引きマーカーMLまたはMRが圃場から浮いてしまい、圃場面に線を描くことができなくなることがある。したがって、本実施態様にかかる苗移植機1においては、圃場の凹凸により、走行車両2が左右いずれかに傾いた場合に、下方に傾いた側の反対側の線引きマーカーMLまたはMRの線引き体ML1またはMR1の上下位置を調整可能に構成されている。
図11は、図1に示された苗移植機1の左側の線引きマーカーMLの近傍の略正面図であり、走行車両2が右側に傾いた状態が示されている。
図11に示されるように、圃場の凹凸により、走行車両2が右側に所定の角度以上傾いた(いわゆる右側へのローリング値が所定値以上となった)場合には、フロアステップ19およびマーカー支持体48が右側に傾くことによって、作用姿勢にある左の線引きマーカーMLの線引き体ML1が圃場から持ち上げられて、圃場面から離間される。
したがって、左の線引きマーカーMLを作用姿勢にしても、左の線引きマーカーMLによって圃場面に線を形成することができないから、制御部Cは、圃場内の石などによる走行車両2の一瞬の傾きでなく、走行車両2が右側に傾いた状態が継続すると認められる場合には、引き続き、圃場上に線を形成するため、左の線引きマーカーMLの位置を下げるように構成されている。
具体的には、制御部Cは、メインフレーム3に設けられた傾斜検知センサ39から出力された走行車両2の傾き角度の検出信号に基づいて、走行車両2が所定の角度以上右側に傾いた状態が1秒以上継続するか否かを測定し、1秒以上継続したときは、走行車両2が右側に傾いた状態が継続していると認められるから、高さ調節用モータ49を駆動してピニオンギア52を回転させることにより、ラックギア53およびラックギア53に取り付けられている姿勢切換用モータ50とともに、(作用姿勢にある)左の線引きマーカーMLの上下位置を、線引き体ML1が接地するまで下げる。
ここに、制御部Cによる線引き体ML1が接地したか否かの判断は、本実施態様においては、姿勢切換用モータ50に設けられた姿勢検出センサ28の検出信号に基づいて行われ、具体的には、マーカーロッドML2は、通常の作用姿勢の場合にはメインフレーム3と略平行な状態にあるが、高さ調節用モータ49によって、線引き体ML1が圃場に接地した状態で、さらにラックギア53が下げられることにより、姿勢検出センサ28により検出される、姿勢切換用モータ50に対するマーカーロッドML2の相対角度が増大し始めた(換言すれば、姿勢切換用モータ50に対する線引き体ML1の相対位置が上昇し始めた)時点で、制御部Cは、線引き体ML1が圃場に接地していると認められるので、高さ調節用モータ49の駆動を停止させる。
図11においては、走行車両2が右側に傾き、作用姿勢にある左側の線引きマーカーMLの線引き体ML1が圃場から浮いてしまい、圃場の線を形成することができない場合につき、説明を加えたが、走行車両2が左側に傾き、作用姿勢にある右側の線引きマーカーMRの線引き体MR1が圃場から浮いてしまった場合には、同様にして、右側の線引きマーカーMRの上下位置が調整される。
さらに、本実施態様においては、苗移植機1の走行とともに、少なくとも一方の線引きマーカーML,MRによって圃場に線を形成している際のみならず、苗移植機1が圃場の周縁部において反転され、左右一方の線引きマーカーMLまたはMRを作用姿勢に切換える際においても、圃場の凹凸によって、走行車両2が所定の角度以上傾くことにより、これから作用姿勢に切換えられる側の線引きマーカーMLまたはMRが持ち上げられた場合に、制御部Cは、圃場上に線を形成するため、メインフレーム3に設けられた傾斜検知センサ39から出力された走行車両2の傾き角度の検出信号に基づいて、作用姿勢に切換えられる側の線引きマーカーMLまたはMRの上下位置を、上述の方法で線引き体ML1またはMR1が接地するまで下げるように構成されている。
以下、本実施態様にかかる苗移植機1においては、以下のようにして、圃場に苗を植え付けることができる。
図5に示されるように、圃場内で苗移植機1を用いて、苗植付部20による苗の植え付けを行う際は、まず、「植付始め位置」に苗移植機1を移動させた後に、1列目の走行に続いて、次に走行する列である「2列目」の位置に線を形成するため、図3に示されたマーカーレバー16cを、左方(「1列目」に対する「2列目」の方)に操作した後に、主変速レバー16aに設けられた苗植付部昇降レバー16fを下方に操作して苗植付部20を下し、左の線引きマーカーMLを姿勢切換用モータ50によって非作用姿勢から作用姿勢に切換える。本実施態様においては、苗植付部20が下ろされていない状態では左右の線引きマーカーML,MRは作用姿勢に切り換わらないように構成されている。
次いで、図3に示された主変速レバー16aに設けられた植付スイッチ16gを押圧操作して植付クラッチを入れ、主変速レバー16aを前方に操作して、圃場の「1列目」を走行するとともに、苗植付部20によって、「1列目」の左右に苗が植え付けられる。このとき、線引き体ML1が圃場の「2列目」を転動し、図5に示された「2列目」に、苗移植機1が「2列目」を走行するときに基準となる線が形成される。
次いで、苗移植機1が「1列目」を走行し、圃場の端部に近づくと、作業者は、苗植付部昇降レバー16fを上方に操作して、苗植付部20を上昇させ、ステアリングハンドル17を左に切って苗移植機1を反転させる。苗移植機1を反転させるときには、ステアリングハンドル17が大きく切られるが、本実施態様においては、ステアリングハンドル17が所定の角度以上に大きく切られたときは、作用姿勢にある線引きマーカーML,MRを自動的に非作用姿勢に切換えるように構成されているから、苗移植機1が反転される際には、作用姿勢にあった左の線引きマーカーMLは非作用姿勢に切換えられ、左右の線引きマーカーML,MRがともに、非作用姿勢をとることになる。
苗移植機1が反転され、再び植付を開始する際に、作業者は、苗植付部昇降レバー16fを下方に操作して苗植付部20を下ろし、その次の走行の列である「3列目」の位置に、走行位置の指標となる線を形成するため、マーカーレバー16cを右方に操作して右の線引きマーカーMRを作用姿勢に切換えた後に、「1列目」の位置を走行した際に「2列目」の位置に形成された線上を、センターマスコット40が通るように走行車両2を走行させつつ、苗を植え付ける。
ここに、本実施態様においては、操作部16に設けられた旋回制御スイッチ16dを押圧操作し、オンすることにより、苗移植機1が反転される際に、制御部Cによって、自動的に苗植付部20が上昇され、苗移植機1が反転された後に、苗植付部20による苗の植付けが自動的に開始されるように構成されている。
具体的には、ステアリングセンサ17sによって、ステアリングハンドル17が所定の角度以上切られたことを検出されると、制御部Cは、植付装置20aの駆動を停止させ、電子油圧バルブ23aによって昇降油圧シリンダ23を油圧で伸縮させることにより苗植付部20を上昇させるとともに、後輪ギアケース14に内装された後輪回転センサ14sによって後輪6の回転数のカウントが開始され、その後に、ステアリングハンドル17が元の位置に戻されたことをステアリングセンサ17sが検出し、さらに、後輪回転センサ14sによる後輪6の回転数のカウントが、操作部16に設けられた植始め調整ダイアル16eの回転操作により設定された数に到達すると、制御部Cは、自動的に苗植付部20を下ろし、植付装置20aによる苗の植付けを開始させる(以下、この一連の制御を「旋回制御」という。)。
また、本実施態様においては、旋回制御スイッチ16dをオンして、制御部Cによる旋回制御を設定し、植始め調整ダイアル16eを、植付け開始のタイミングが最も遅い位置(図3における「オートリフト」の位置)まで回転操作する。この状態で、ステアリングハンドル17が所定の角度以上切られたことを検出すると、制御部Cは自動的に苗植付部20を上昇させることができる。すなわち、この状態で、ステアリングハンドル17が所定の角度以上切られた場合には、苗移植機1が反転された後に、制御部Cが自動的に苗植付部20を下ろし、植付装置20aによる苗の植付けを開始させる制御は実行されない。
また、本実施態様にかかる苗移植機1においては、マーカーレバー16cが操作されず、左右一対の線引きマーカーML,MRがいずれも標準状態である非作用姿勢のままであっても、制御部Cは、旋回制御を実行することができるから、旋回制御の利便性・汎用性を向上させることが可能になる。
さらに、本実施態様においては、左右の線引きマーカーML,MRの少なくとも一方が作用姿勢にある場合に、マーカーレバー16cを、作用姿勢にある線引きマーカーML,MRの方向に操作することにより、苗移植機1が反転された後に、制御部Cによって、左右一方の線引きマーカーMLまたはMRが自動的に作用姿勢に切換えられるように構成されている。
具体的には、ステアリングハンドル17が所定の角度以上切られ、制御部Cが苗移植機1の反転時の操作と判定した場合に、苗移植機1が反転された後に、苗植付部昇降レバー16fを下方に操作して苗植付部20を下ろした時点で、または、旋回制御において制御部Cによって苗植付部20が自動的に下ろされた時点で、ステアリングハンドル17が切られた方向とは反対側(苗移植機1が反転される際にステアリングハンドル17が左に切られた場合には右側。換言すれば、苗移植機1の反転時に外側に位置した方。)の線引きマーカーMLまたはMRが、制御部Cによって自動的に作用姿勢に切換えられる(以下、苗移植機1が反転された後に、制御部Cによって一方の線引きマーカーMLまたはMRが作用姿勢に自動的に切換えられる制御を「自動作動」という。)。本実施態様においては、マーカーレバー16cを、作用姿勢にある線引きマーカーML,MRの方向に操作する度に、自動作動が実行される状態と、自動作動が実行されない状態との間で切換えることができる。
したがって、本実施態様においては、旋回制御スイッチ16dをオンすることにより、苗移植機1の反転時に、自動的に苗植付部20が上昇され、苗移植機1が反転された後に、苗植付部20による苗の植付けが自動的に開始される旋回制御が設定され(植始め調整ダイアル16eを、図3における「オートリフト」の位置に操作している場合を除く)、さらに、マーカーレバー16cを操作することにより、苗移植機1が反転された後に、左右一方の線引きマーカーML,MRが自動的に作用姿勢に切換えられる自動作動に設定されている場合には、作業者は、圃場の周縁部において苗移植機1を反転させた後に、苗植付部20を降ろし、左右一方の線引きマーカーMLまたはMRを作用姿勢に切換える操作を行う必要はなく、ステアリングハンドル17の操作に集中することができる。
また、本実施態様にかかる苗移植機1においては、以下のようにして、マーカーレバー16cを用いて左右の線引きマーカーML,MRの姿勢を切換え、左右の線引きマーカーML,MRの制御部Cによる自動作動が実行されるように設定し、または自動作動が実行されないように設定することができる。
図12は、図1に示された苗移植機1のマーカーレバー16cの操作と、線引きマーカーML,MRの姿勢との関係を示す図面である。
図12においては、マーカーレバー16cを傾倒操作する前の左右の線引きマーカーML,MRの姿勢と、マーカーレバー16cの傾倒操作の方向と、マーカーレバー16cが傾倒操作されたことにより発生する制御部Cの処理内容と、マーカーレバー16cを傾倒操作した後の左右の線引きマーカーML,MRの姿勢とが、それぞれC1列〜C4列に示されている。
図12のR1行目およびR2行目に示されるように、非作用姿勢にある線引きマーカーML,MRを作用姿勢に切換えたい場合には、上述のように、マーカーレバー16cを、作用姿勢に切換えたい線引きマーカーML,MRの方向に傾倒操作することにより、左右独立して作用姿勢に切換えることができる。したがって、非作用姿勢にある左右の線引きマーカーML,MRをいずれも作用姿勢に切換えたい場合には、マーカーレバー16cを左右一方に傾倒操作して一方の線引きマーカーML,MRを作用姿勢に切換えた後に、R5行目およびR7行目に示されるように、マーカーレバー16cを他方に傾倒操作することにより、左右の線引きマーカーML,MRを作用姿勢に切換えることができる。
さらに、苗移植機1が反転された後に、左右一方の線引きマーカーMLまたはMRが、制御部Cによって自動的に作用姿勢に切換えられる自動作動が実行される状態に設定したい場合には、図12のR4行目、R8行目、R10行目およびR11行目に示されるように、作用姿勢にある線引きマーカーML,MRの方向にマーカーレバー16cを傾倒操作することにより、制御部Cによる自動作動が実行される状態に設定することができる。
一方、すでに自動作動が実行される状態に設定されている場合に、作用姿勢にある線引きマーカーML,MRの方向にマーカーレバー16cを傾倒操作すると、制御部Cによる線引きマーカーML,MRの自動作動が実行されない状態に設定(自動作動の設定が解除)される。なお、R4行目、R8行目、R10行目およびR11行目のC4列に示されるように、マーカーレバー16cによる自動作動を設定するための傾倒操作によっては左右の線引きマーカーML,MRの姿勢は切り換えられず、マーカーレバー16cの操作前の姿勢が維持される。
また、図12のR6行目、R9行目およびR12行目に示されるように、少なくとも一方の線引きマーカーML,MRが作用姿勢にある場合に、作用姿勢にある左右の線引きマーカーML,MRを非作用姿勢に切換えたい場合には、上述のように、マーカーレバー16cを前方に傾倒操作することにより、非作用姿勢に切換えることができる。また、左右の線引きマーカーML,MRがいずれも非作用姿勢である状態で、マーカーレバー16cを前方に傾倒操作した場合には、非作用姿勢に切換えるべき線引きマーカーML,MRが存在しないため、制御部Cは何も処理を行わない。
本実施態様によれば、苗操作部16に設けられたマーカーレバー16cを、左方または右方に傾倒操作することにより、姿勢切換用モータ50を駆動させて、左右一対の線引きマーカーML,MRを、左右独立して、線引き体ML1,MR1が圃場に接地しない非作用姿勢から、線引き体ML1,MR1が圃場に接地する作用姿勢に切り換えることができる。したがって、走行車両2による走行と反転とを繰り返しながら苗植付部20によって圃場に苗を植え付ける場合に、はじめから、次に苗の植え付けを行う列の側の線引きマーカーMLまたはMRを作用姿勢に切換えることができ、さらに、左右の線引きマーカーML,MRの双方が作用姿勢にある場合に、マーカーレバー16cを前方に傾倒操作することによって、姿勢切換用モータ50を駆動させ、一対の線引きマーカーML,MRを同時に非作用姿勢に切り換えることもできるから、一対の線引きマーカーML,MRの操作性を向上させることが可能になる。
また、本実施態様によれば、少なくとも一方の線引きマーカーML,MRが作用姿勢にある場合に、作用姿勢にある線引きマーカーML,MRの方向(左方または右方)に、マーカーレバー16cを傾倒操作する度に、制御部Cによる左右一方の線引きマーカーMLまたはMRの自動作動(ステアリングハンドル17が所定の角度以上切られたことをステアリングセンサ17sが検出した場合に、苗移植機1の反転後に、苗植付部20が下ろされた時点で、制御部Cが、反転時に外側に位置した方の線引きマーカーMLまたはMRを自動的に作用姿勢に切換える制御)が実行される状態と、自動作動が実行されない状態との間で切り換えることができるから、操作性を良くすることができる。また、自動作動が実行されるように設定し、または自動作動が実行されないように設定するためのトリガー手段を別途設ける必要がなく、部品点数を削減でき、構成を簡潔にすることができる。
さらに、本実施態様によれば、左の線引きマーカーMLを作用姿勢に切り換えるためのトリガー手段と、右の線引きマーカーMRを作用姿勢に切り換えるためのトリガー手段と、左右の線引きマーカーML,MRを非作用姿勢に切り換えるためのトリガー手段とが、ひとつのマーカーレバー16cに集約されているから、線引きマーカーML,MRの姿勢を切換えたい場合に、トリガー手段の選択に迷うことを防止し、操作を迅速に行うことができる。
図13には、本発明の別の好ましい実施態様にかかる苗移植機1の予備苗載台37に設けられた乗降用ハンドル61の位置の説明図が示されており、図13(a)は、右側の予備苗載台37の略右側面図であり、図13(b)は、右側の予備苗載台37の近傍の略正面図である。
図13(a)および図13(b)に示されるように、右側の予備苗載台37は、第1予備苗載台37a、第2予備苗載台37bおよび第3予備苗載台37cを備え、フロアステップ19の下部に取り付けられた支持フレーム55に支持されている。本実施態様においては、予備苗載台37は、第1ないし第3予備苗載台37a,37b,37cが上下方向に並んだ状態で固定されており、第1ないし第3予備苗載台37a,37b,37cを前後方向に展開することはできないように構成されている。
図13(a)および図13(b)に示されるように、乗降用ハンドル61が、支持フレーム55の上部と第1予備苗載台37aとに跨るように予備苗載台37に設けられており、フロアステップ19前端部右側の下面にはペダル60が取り付けられている。したがって、ペダル60を踏んで走行車両2の前方からフロアステップ19上に乗り込む際に、乗降用ハンドル61を掴むことにより、安全かつ快適に走行車両2に乗り込むことができる。
図14は、図13に示された別の好ましい実施態様にかかる苗移植機1の操作部16の近傍の略平面図である。
図14に示されるように、本実施態様においては、前記実施態様において操作部16に設けられていたマーカーレバー16cに代えて、左側の線引きマーカーMLの姿勢を切換えるための第一のトリガー手段として機能する左マーカースイッチ16Lと、右側の線引きマーカーMRの姿勢を切換えるための第二のトリガー手段として機能する右マーカースイッチ16Rと、作用姿勢にある左右一方または両方の線引きマーカーML,MRを非作用姿勢に切換えるための第三のトリガー手段として機能するマーカーオフスイッチ16iが設けられている。これらのスイッチは制御部Cに接続されており、各スイッチを押圧操作することにより、各スイッチから制御部Cに信号が送られ、制御部Cが、各スイッチから受信した信号および姿勢検出センサ28から出力された検出結果に応じて姿勢切換用モータ50を駆動させることにより、左右の線引きマーカーML,MRの姿勢を切換え可能に構成されている。
本実施態様にかかる苗移植機1においては、以上のように構成された左右のマーカースイッチ16L,16Rおよびマーカーオフスイッチ16iを用いて、以下のようにして、左右の線引きマーカーML,MRの姿勢を切換えることができる。
図15は、図13に示された別の好ましい実施態様にかかる苗移植機1の左マーカースイッチ16L、右マーカースイッチ16Rおよびマーカーオフスイッチ16iの押圧操作と、左右の線引きマーカーML,MRの姿勢との関係を示す図面である。
図15には、スイッチを押圧操作する前の左右の線引きマーカーML,MRの姿勢と、押圧操作したスイッチの種類と、スイッチが押圧操作されたことにより発生する制御部Cの処理内容と、スイッチを押圧操作した後の左右の線引きマーカーML,MRの姿勢が、それぞれC1列〜C4列に示されている。
本実施態様においては、左右の線引きマーカーML,MRは、前記実施態様と同様に、標準状態で非作用姿勢として構成されており、非作用姿勢にある左右の線引きマーカーML,MRを作用姿勢に切換えたい場合には、図15のR1行目およびR2行目に示されるように、作用姿勢に切換えたい方のマーカースイッチ(左マーカースイッチ16Lまたは右マーカースイッチ16R)を押圧操作することにより、切換えたい側の線引きマーカーML,MRを作用姿勢に切換えることができる。したがって、左右両方の線引きマーカーML,MRを非作用姿勢から作用姿勢に切換えたい場合には、左マーカースイッチ16Lまたは右マーカースイッチ16Rを押圧操作して、左右一方の線引きマーカML,MRを作用姿勢に切換えた後に、R5行目およびR7行目に示されるように、前回押した側と反対側である右マーカースイッチ16Rまたは左マーカースイッチ16Lを押圧操作することにより、左右の線引きマーカーML,MRを作用姿勢に切換えることができる。
また、本実施態様にかかる苗移植機1においては、左右の線引きマーカーML,MRは、苗植付部20による苗の植え付けを伴う走行車両2の走行中に、主変速レバー16aを手前側に操作して苗移植機1を後進させるか、または苗植付部昇降レバー16fを上方に傾倒操作すると、制御部Cは、苗植付部20を上昇させ、作用姿勢にある左右の線引きマーカーML,MRを非作用姿勢に切換えるように構成されているが、その場合であっても、苗植付部20による苗の植え付けを伴う走行を再開する際に、作用姿勢に切換えたい方のマーカースイッチ16L,16Rを押圧操作することにより、任意の側の線引きマーカーMLまたはMRを作用姿勢に切換えることができる。
図15のR4行目、R8行目、R10行目およびR11行目に示されるように、作用姿勢にある線引きマーカーMLまたはMRを非作用姿勢に切換えたい場合には、非作用姿勢に切換えたい方のスイッチ(左マーカースイッチ16Lまたは右マーカースイッチ16R)を押圧操作することにより、切換えたい方の線引きマーカーML,MRを非作用姿勢に切換えることができる。
また、R6行目、R9行目およびR12行目に示されるように、マーカーオフスイッチ16iを押圧操作することによっても、作用姿勢にある左右一方または両方の線引きマーカーML,MRを非作用姿勢に切換えることができる。
一方、R3行目に示されるように、左右の線引きマーカーML,MRがいずれも非作用姿勢である状態で、マーカーオフスイッチ16iを押圧操作した場合には、非作用姿勢に切換えるべき線引きマーカーML,MRが存在しないため、制御部は何も処理を行わない。
また、ステアリングハンドル17が所定の角度以上切られて、本実施態様にかかる苗移植機1が反転された後には、制御部Cによって、以下のようにして、反転時に外側に位置した方の線引きマーカーMLまたはMRの作用姿勢への自動的な切換えが行われる。
図16には、制御部Cが、左右の線引きマーカーML,MRの姿勢を制御する手順が示されており、図16(a)は、図13に示された別の好ましい実施態様にかかる苗移植機1において、旋回制御スイッチ16dがオンされていない場合の、左右の線引きマーカーML,MRの姿勢を制御する手順を示すフローチャートであり、図16(b)は、図13に示された別の好ましい実施態様にかかる苗移植機1において、旋回制御スイッチ16dがオンされている場合の、左右の線引きマーカーML,MRの姿勢を制御する手順を示すフローチャートである。
本実施態様においては、旋回制御スイッチ16dがオンされていない場合には、苗移植機1が反転された後に、制御部Cによって、反転時に外側に位置した方の線引きマーカーMLまたはMRの作用姿勢への自動的な切換え(自動作動)は行われず、旋回制御スイッチ16dがオンされている場合には、苗移植機1が反転された後に、制御部Cによって、反転時に外側に位置した方の線引きマーカーMLまたはMRの作用姿勢への自動的な切換えが行われる。
具体的には、旋回制御スイッチ16dがオンされていない場合に、苗移植機1の反転時に、苗植付部昇降レバー16fの操作により苗植付部20が上昇され、図16(a)に示されるように、ステアリングハンドル17が所定の角度以上切られて(ステップS1)、ステアリングセンサ17sから制御部Cに検出信号が出力されると、制御部Cは、まず、姿勢検出センサ28から出力された検出信号に基づいて、左右の線引きマーカーML,MRの姿勢を判断し、作用姿勢にある線引きマーカーML,MRがあるか否かを判定する(ステップS2)。
判定の結果、少なくとも一方の線引きマーカ−ML,MRが作用姿勢にある場合には、制御部Cは、姿勢切換用モータ50を駆動させることにより、作用姿勢にある線引きマーカーML,MRを非作用姿勢に切換え(ステップS3)、苗移植機1のこの反転に伴う線引きマーカーML,MRの制御を終了する。したがって、旋回制御スイッチ16dがオンされていない場合には、制御部Cは、苗移植機1が反転された後に、反転時に外側に位置した線引きマーカーMLまたはMRの作用姿勢への自動的な切換えを行わない。
一方、旋回制御スイッチ16dがオンされている場合には、図16(b)に示されるように、ステアリングハンドル17が所定の角度以上切られて(ステップS1)、ステアリングセンサ17sから制御部Cに検出信号が出力されると、制御部Cは、まず、植付装置20aの駆動を停止させ、苗植付部20を上昇させる。そして、後輪回転センサ14sによる後輪6の回転数のカウントを開始させるとともに、姿勢検出センサ28から出力された信号に基づいて、左右の線引きマーカーML,MRの姿勢を判断し、作用姿勢にある線引きマーカーML,MRがあるか否かを判定する(ステップS2)。
判定の結果、少なくとも一方の線引きマーカ−ML,MRが作用姿勢にある場合には、制御部Cは、姿勢切換用モータ50を駆動させることにより、作用姿勢にある線引きマーカーML,MRを非作用姿勢に切換える(ステップS3)。
次いで、苗移植機1の反転が終了すると、ステアリングハンドル17が元に戻され(ステップS4)、ステアリングセンサ17sから制御部Cに信号が出力される。
その後に、後輪回転センサ14sによる後輪6の回転数のカウントが、操作部16に設けられた植始め調整ダイアル16eの回転操作により設定された数に到達すると(ステップS5)、制御部Cは、苗植付部20を作業位置に下ろすとともに、ステアリングハンドル17が切られた方向とは反対側(反転時に外側であった方)の線引きマーカーMLまたはMRを自動的に作用姿勢に切換え(ステップS6)、苗移植機1のこの反転に伴う線引きマーカーML,MRの制御を終了する。
なお、旋回制御スイッチ16dがオンされた状態であっても、植始め調整ダイアル16eを、図14に示される「オートリフト」の位置に操作した場合には、苗植付部昇降レバー16fを下方に傾倒操作して苗植付部20が作業位置に下ろされた時点で、制御部Cによって、ステアリングハンドル17が切られた方向とは反対側(反転時に外側であった方)の線引きマーカーMLまたはMRが自動的に作用姿勢に切換えられる。
また、旋回制御スイッチ16dがオンされている場合であっても、苗移植機1が反転する際にステアリングハンドル17が切られた時点において、左右一対の線引きマーカーML,MRが非作用姿勢にある場合には、苗移植機1が反転された後に、制御部Cは、左右の線引きマーカーML,MRの自動的な作用姿勢への切換えを行わないように構成されている。
一方、図17は、図13に示された別の好ましい実施態様にかかる苗移植機1において、旋回制御スイッチ16dがオンされた場合に、苗移植機1の反転後に、作用姿勢に切換えられる線引きマーカーML,MRがどのように決定されるかを説明する図面である。
すなわち、本実施態様においては、制御部Cは、以下のようにして、苗移植機1が反転された後に、左右いずれの線引きマーカーML,MRを作用姿勢に切換えるかを決定する。
図17に示されるように、苗移植機1が、圃場内において、N列目(Nは自然数)を走行中に、圃場の端部に達し、次に走行する列の方(図17においてN列目の左側の列)に反転させるため、「1回目のハンドル操作」として示されるように、ステアリングハンドル17を左の方に切ると(ステップs1)、上述のように、ステアリングセンサ17sは、ステアリングハンドル17が左に所定の角度以上切られたことを検出し、検出結果を制御部Cに出力する。
制御部Cは、出力された検出信号に基づいて、反転時のハンドル操作として判断し、作用姿勢にある左右一方または両方の線引きマーカーML,MRを非作用姿勢に切換える(ステップs2)。このとき、旋回制御スイッチ16dがオンされているので、制御部Cは、反転時のハンドル操作に基づいて、線引きマーカーML,MRの姿勢の切換えと同時に、苗植付部20を上昇させる。
また、本実施態様においては、上述のように、旋回制御スイッチ16dがオンされている場合には、苗移植機1が反転された後に、制御部Cによって、旋回制御および線引きマーカーMLまたはMRの自動作動が行われる。
なお、制御部Cによって実行される旋回制御は、苗移植機1の反転時に、苗植付部20を上昇させ、苗移植機1が反転された後に、苗植付部20による苗の植付けを自動的に再開させるものであり、自動作動は、苗移植機1が反転された後に、制御部Cが、苗移植機1の反転時に外側に位置した方の線引きマーカーMLまたはMRを作用姿勢に自動的に切換えるものである。
線引きマーカーML,MRの姿勢の切換えの後に、通常は、図17に「ルート1」として破線で示された軌跡で苗移植機1が反転され、後輪回転センサ14sによる後輪6の回転数のカウントが、植始め調整ダイアル16eの操作により設定された数に到達した時点で、制御部Cは、苗植付部20を下降させるとともに、ステアリングハンドル17が切られた方向とは反対側(反転時に外側であった方)の線引きマーカーMRを自動的に作用姿勢に切換える(ステップs3)。
これに対して、ステアリングハンドル17が左に切られた後に(ステップs1)、作業者が、次に走行する列である「N+1列目」がN列目の右側であると判断し直したなどの理由により、ステアリングハンドル17が右に切り直され(ステップs4)、苗移植機1が「ルート2」として一点鎖線で示された軌跡で右に反転された場合には、本実施態様にかかる苗移植機1においては、制御部Cは、左右の後輪ギアケース14に内装された後輪回転センサ14sにより検出される左右の後輪6の回転数の差に基づいて、図17に「2回目のハンドル操作」として示される実際の反転の方向を判断し、適切な方の線引きマーカーMLまたはMRを作用姿勢に切換え可能に構成されている(ステップs5)。
苗移植機1の反転時には、通常、反転される際に内側に位置する方の後輪6の回転数よりも、外側に位置する方の後輪6の回転数の方が多いから、図17において「ルート1」として示されるように、苗移植機1が左に反転された場合には、内側に位置する左側の後輪6の回転数よりも、外側に位置する右側の後輪6の回転数の方が多くなるはずである。
しかしながら、「1回目のハンドル操作」において、ステアリングハンドル17が所定の角度以上左に切られた後に、「ルート2」として示される軌跡で苗移植機1が反転された場合には、「2回目のハンドル操作」にかかる苗移植機1の反転において、内側に位置する右側の後輪6の回転数よりも、外側に位置する左側の後輪6の回転数の方が多くなる。
このため、ステアリングハンドル17が所定の角度以上切られてから(ステップs1)、後輪6の回転数が植始め調整ダイアル16eの操作により設定された数に到達し、苗植付部20を下降させるまでの間に、「1回目のハンドル操作」にかかる苗移植機1の反転の際に外側に位置する右側の後輪6の回転数よりも、内側に位置する左側の後輪6の回転数の方が第1の所定数以上多くなった(回転数の差が第1の所定数以上となった)時点で、苗移植機1が反転される方向が変更されたことが認められる。
したがって、左右の後輪6間の回転数の差が、第2の所定数以下になった(苗移植機1の反転が終了した)時点で、制御部Cは、苗植付部20を自動的に下降させ、「2回目のハンドル操作」によって回転数が増加した後輪6の側の線引きマーカーMLを作用姿勢に切換えるように構成されている(ステップs5)。
また、旋回制御スイッチ16dがオンされている場合であっても、植始め調整ダイアル16eが、図14における「オートリフト」の位置に操作されている場合には、「1回目のハンドル操作」として示されるように、ステアリングハンドル17が所定の角度以上に切られて、苗移植機1が反転されてから(ステップs1)、苗植付部昇降レバー16fを下方に操作し、苗植付部20が下降されるまでの間に、「1回目のハンドル操作」にかかる苗移植機1の反転の際に外側に位置する右側の後輪6の回転数よりも、内側に位置する左側の後輪6の回転数の方が、第1の所定数以上多くなった(回転数の差が第1の所定数以上となった)時点で、苗移植機1が反転される方向が変更されたことが認められる。
したがって、苗移植機1の反転後に、苗植付部昇降レバー16fの操作により苗植付部20が下降された時点で、制御部Cによって、「2回目のハンドル操作」によって回転数が増加した後輪6側の線引きマーカーMLが作用姿勢に切換えられるように構成されている(ステップs5)。
なお、旋回制御スイッチ16dがオンされている場合に、図17に基づき、「1回目のハンドル操作」においてステアリングハンドル17が左に切られた後に、右に切り直され、左の線引きマーカーMLが自動的に作用姿勢に切換えられる構成について説明を加えたが、本実施態様にかかる苗移植機1においては、「1回目のハンドル操作」においてステアリングハンドル17が右に切られた後に、左に切り直された場合においても、制御部Cによって右の線引きマーカーMRが自動的に作用姿勢に切換えられるように構成されている。
さらに、本実施態様における苗移植機1が反転された際に、制御部Cは、モニター15に設けられた左右のマーカーランプ15L,15Rを、以下のように点灯させる。
図14に示されるように、操作部16の近傍に設けられたモニター15は、その左右の端部に左のマーカーランプ15Lおよび右のマーカーランプ15Rを備え、左右のマーカーランプ15L,15Rは制御部Cに接続されている。そして、前記実施態様の場合と同様に、姿勢検出センサ28から出力された検出信号に基づき、制御部Cは、左右の線引きマーカーML,MRの姿勢を判断し、左の線引きマーカーMLが作用姿勢にある場合に、左のマーカーランプ15Lを点灯させ、右の線引きマーカーMRが作用姿勢にある場合に、右の線引きマーカーMRを点灯させるように構成されている。
ここに、旋回制御スイッチ16dがオンされている場合には、苗移植機1の反転時に、制御部Cによって自動的に苗植付部20が上昇され、作用姿勢にある一方または両方の線引きマーカーML,MRが非作用姿勢に切換えられた後に、制御部Cによって一方の線引きマーカーMLまたはMRが自動的に作用姿勢に切換えられるが、本実施態様にかかる苗移植機1においては、苗植付部20が自動的に上昇され、作用姿勢にある線引きマーカーML,MRを自動的に非作用姿勢に切換えられた後においても、制御部Cによって、苗移植機1の反転前に点灯されていた左右のマーカーランプ15L,15Rが点灯された状態に維持される。さらに、苗移植機1が反転された後に、制御部Cによって苗植付部20が自動的に下降され、苗移植機1の反転時に外側に位置した方の線引きマーカーMLまたはMRが作用姿勢に切換えられたときに、制御部Cは、作用姿勢に切換えられた側のマーカーランプ15L,15Rのみを点灯させるように構成されている。
また、旋回制御スイッチ16dがオンされている状態であっても、植始め調整ダイアル16eが、図14における「オートリフト」の位置に操作されている場合には、制御部Cは、苗植付部昇降レバー16fの操作により苗植付部20が作業位置に下ろされ、苗移植機1の反転時に外側に位置した方の線引きマーカーMLまたはMRを作用姿勢に切換えたときに、作用姿勢に切換えた側のマーカーランプ15L,15Rのみを点灯させるように構成されている。
一方、旋回制御スイッチ16dがオンされていない状態で、苗移植機1が反転された場合には、ステアリングハンドル17が所定の角度以上切られ、制御部Cにより作用姿勢にある線引きマーカーML,MRが非作用姿勢に切換えられた時点で、制御部Cは、非作用姿勢に切換えられた側のマーカーランプ15L,15Rの点灯を終了させるように構成されている。
本実施態様によれば、操作部16に、左の線引きマーカーMLを作用姿勢に切り換えるための第一のトリガー手段として機能する左マーカースイッチ16Lと、右の線引きマーカーMRを作用姿勢に切り換えるための第二のトリガー手段として機能する右マーカースイッチ16Rとが設けられているから、左右の線引きマーカーML,MRを左右独立して非作用姿勢から作用姿勢に切換えることができ、走行車両による走行と反転とを繰り返しながら苗植付部によって圃場に苗を植え付ける場合に、はじめから、圃場において次に苗の植え付けを行う列の側の線引きマーカーを、感覚的に作用姿勢に切換えることができる。
また、左右の線引きマーカーML,MRがいずれも作用姿勢にある状態で、一対の線引きマーカーにより圃場に線を形成する必要がなくなった時に、左右の線引きマーカーML,MRを非作用姿勢に切り換えるための第三のトリガー手段として機能するマーカーオフスイッチ16iを押圧操作することによって、左右の線引きマーカーML,MRを非作用姿勢へ迅速に切換えることができる。
さらに、本実施態様によれば、少なくとも一方の線引きマーカーML,MRが作用姿勢にある場合に、作用姿勢にある側のマーカースイッチ16Lまたは16Rを押圧操作することにより、作用姿勢にある線引きマーカーMLまたはMRを非作用姿勢に切換えることができるから、左右の線引きマーカーML,MRを左右独立して作用姿勢と非作用姿勢との間で切換えることができる。
また、本実施態様によれば、旋回制御スイッチ16dをオンし、制御部Cによる旋回制御(苗移植機1の反転時に、自動的に植付装置20aの駆動を停止し、苗植付部20を上昇させ、苗移植機1が反転された後に、苗植付部20を下降させ、植付装置20aによる苗の植付けを自動的に再開させる制御)が実行されるように設定されている場合には、走行車両2の反転後に左右一方の線引きマーカーMLまたはMRが制御部Cによって非作用姿勢から作用姿勢に自動的に切換えられる自動作動が実行されるように構成されているから、旋回制御および自動作動がいずれも実行されるように設定したい場合に、旋回制御の設定と別途に、自動作動の設定を行う手間を省くことができる。さらに、自動作動を設定するためのトリガー手段を別途設ける必要がなく、部品点数を削減し、構成を簡潔にすることができる。
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、図1ないし図12に示される実施態様においては、苗植付部20に植付爪20fが左右方向に8つ設けられており、左右の線引きマーカーML,MRのマーカーロッドML2,MR2は、所定の長さに設定されているが、植付爪20の数が異なる苗植付部が走行車両2に取り付けられた場合には、例えば、ピニオンギア、ラックギアおよびモータを用いてマーカーロッドML2,MR2を左右方向にスライドさせて、線引きマーカーML,MRの線引き体ML1,MR1の転動によって形成される線の位置を変更可能に構成されてもよい。
また、図1ないし図12に示される実施態様においては、苗植付部20を下降させ、左右の線引きマーカーML,MRの少なくとも一方を作用姿勢に切換えて苗移植機1が走行を開始する際、または走行中において、制御部Cは、リンクセンサ25の検出結果によって圃場の深さ(耕深)を算出し、算出された距離が所定の距離よりも遠い状態が1秒以上継続した場合に、線引きマーカーML,MRの高さを調節するように構成されているが、走行車両2の前端部などに設けられた超音波センサが、超音波を照射してから、圃場によって反射された超音波を超音波センサが検出するまでの時間から、いわゆるToF法によって超音波センサと圃場との距離を算出して制御部Cに出力し、出力された距離が所定の距離よりも遠い状態が1秒以上継続した場合に、線引きマーカーML,MRの高さを下げるか、あるいは、圃場の凹凸により、苗植付部20のフロートセンサによるセンターフロート20c前部の上下位置の検出結果が所定の値よりも下がった状態が1秒以上継続した場合に、作用姿勢にある少なくとも一方の線引きマーカーML,MRの高さを下げるようにしてもよい。
さらに、図1ないし図12に示される実施態様においては、高さ調節用モータ49によりピニオンギア52を回転させ、ラックギア53、姿勢切換用モータ50および作用姿勢にある一方の線引きマーカーMLまたはMRを一体的に上下させることによって、線引き体ML1またはMR1の上下位置を調節するように構成されているが、左右の線引き体ML1,MR1の高さの調節の機構はこれに限定されず、姿勢切換用モータ50により線引き体ML1、MR1の上下位置を調節するように構成されてもよい。
また、図11に示される実施態様においては、制御部Cは、高さ調節用モータ49を駆動してピニオンギア52を回転させることにより、左右一方の線引きマーカーMLまたはMRの上下位置を、線引き体ML1が圃場に接地するまで下げるように構成されているが、走行車両2の左右方向の傾きが一定以上となった場合に、左右一方の線引きマーカーMLまたはMRの上下位置を、基準となる位置よりも下げるように構成されてもよく、基準となる位置は、一定の位置であっても、走行車両2の傾斜角度に応じて変動するものであってもよい。
さらに、図1ないし図12に示される実施態様においては、旋回制御スイッチ16dがオンされていない状態で、苗移植機1が反転されるときに、制御部Cは、ステアリングセンサ17sから出力された検出信号に基づいて、作用姿勢にある線引きマーカーML,MRを自動的に非作用姿勢に切換えるように構成されているが、制御部Cは、苗植付部20を上昇させるための苗植付部昇降レバー16fを上方に操作した際に苗植付部昇降レバー16fから出力される信号に基づいて、作用姿勢にある線引きマーカーML,MRを非作用姿勢に切換えるように構成されてもよい。
また、図12に示される実施態様においては、左右一方または両方の線引きマーカーML,MRが作用姿勢にある状態で、マーカーレバー16cを前方に傾倒操作すると、左右の線引きマーカーML,MRが非作用姿勢に切換えられるが、マーカーレバー16cを前方に傾倒操作するときに、制御部Cによる一方の線引きマーカーMLまたはMRの自動作動が実行されるように設定されている場合には、マーカーレバー16cを前方に傾倒操作することにより、左右の線引きマーカーML,MRの姿勢の切換えのみならず、自動作動が実行されないように設定される(すなわち、自動作動の設定が解除される)ように構成されてもよい。
さらに、図13に示される実施態様においては、右側の予備苗載台37のみに乗降用ハンドル61が設けられ、フロアステップ19前端部右側の下面のみにペダル60が取り付けられているが、左右両側の予備苗載台37の左右方向内側の面にそれぞれ乗降用ハンドル61を設け、フロアステップ19前端部の左右の下面にそれぞれペダル60を設けてもよい。
また、図13ないし図17に示される実施態様においては、前記一対の線引きマーカーML,MRを同時に非作用姿勢に切り換えたい場合には、図15のR12行目に示されるように、操作部16に設けられたマーカーオフスイッチ16iを押圧操作することにより、一対の線引きマーカーML,MRを同時に非作用姿勢に切換えることができるように構成されているが、図14に示された左マーカースイッチ16Lおよび右マーカースイッチ16Rを同時に押圧操作することにより、一対の線引きマーカーML,MRを同時に非作用姿勢に切換えることができるように構成されてもよい。
さらに、図1ないし図12に示される実施態様においては、操作部16に、左の線引きマーカーMLを作用姿勢に切り換えるための第一のトリガー手段、右の線引きマーカーMRを作用姿勢に切り換えるための第二のトリガー手段および一対の線引きマーカーML,MRを非作用姿勢に切り換えるための第三のトリガー手段として、マーカーレバー16cが設けられており、図13ないし図16に示される実施態様においては、操作部16に、左の線引きマーカーMLを作用姿勢に切り換えるための第一のトリガー手段として、左マーカースイッチ16Lが、右の線引きマーカーMRを作用姿勢に切り換えるための第二のトリガー手段として、右マーカースイッチ16Rが、一対の線引きマーカーML,MRを同時に作用姿勢から非作用姿勢に切り換えるための第三のトリガー手段として、プッシュボタンの形のマーカーオフスイッチ16iが設けられているが、これらのトリガー手段はレバーやプッシュボタンの形状のものに限定されるものではなく、ロータリースイッチやタッチパネル式のスイッチ等によって構成されてもよい。
また、図1ないし図17に示される各実施態様においては、一方の線引きマーカーMLまたはMRの自動作動(作用姿勢への自動的な切換えの制御)は、ステアリングセンサ17sからの出力信号に基づいて、制御部Cによって、苗移植機1の反転が認識され、実行されるように構成されているが、後輪回転センサ14sによって検出される左右の後輪6間の回転数の差や、地磁気センサなどからの出力信号に基づいて、制御部Cによって、苗移植機1の反転が認識され、一方の線引きマーカーMLまたはMRの自動作動が実行されるように構成されてもよい。さらに、制御部Cによる左右の線引きマーカーML,MRの自動作動の内容には、苗移植機1が反転される際に、制御部Cによって、作用姿勢にある線引きマーカーML,MRを非作用姿勢に切換える制御も含まれるように構成されてもよい。