JP6943907B2 - 水性塗料組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水性塗料組成物及びその製造方法に関し、より詳しくは、イソシアネート硬化型水性塗料組成物及びその製造方法に関する。
自動車等の塗装において、熱硬化型塗料の焼付温度を低く設計することは、焼付炉におけるエネルギーの削減やCO排出量の削減という観点において重要な課題である。このため、従来から、塗料に硬化触媒を配合して焼付温度の低温化が図られている。
例えば、特開2017−193705号公報(特許文献1)には、ポリオール、ポリイソシアネート、ビスマス化合物からなる硬化触媒、及び炭素数8以上のカルボン酸を含有する塗料組成物が記載されており、この塗料組成物が貯蔵安定性に優れ、かつ、高湿度条件下での硬化性に優れていることも記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の塗料組成物を長時間貯蔵すると、焼付温度より極めて低い温度(例えば、40℃)であってもゲル化が起こるため、長時間貯蔵することは困難であった。
また、特開2017−43759号公報(特許文献2)には、ポリエポキシドとジアザビシクロウンデセン塩及びジアザビシクロノネン塩からなる群から選択される少なくとも1種の硬化触媒と非イオン性界面活性剤とを含有する一液硬化型エポキシエマルションが記載されており、この一液硬化型エポキシエマルションが長期間の貯蔵安定性と低温硬化性が良好なものであることも記載されている。
特開2017−193705号公報 特開2017−43759号公報
しかしながら、ポリオールとポリイソシアネートを含有するイソシアネート硬化型水性塗料組成物に、特許文献2に記載の硬化触媒及び非イオン性界面活性剤を配合して、前記硬化触媒を前記非イオン性界面活性剤により形成されたミセルに内包して保護しても、前記硬化触媒が親水性であるため、前記硬化触媒が経時的にミセルの外側に拡散してポリオールとポリイソシアネートとの反応を促進させるため、十分な貯蔵安定性が得られないという問題があることを本発明者らは見出した。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、優れた低温硬化性と長時間の良好な貯蔵安定性とを兼ね備えるイソシアネート硬化型の水性塗料組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、予め、疎水性硬化触媒とHLB値が特定の範囲内にある非イオン性界面活性剤とを混合して前記疎水性硬化触媒を前記非イオン性界面活性剤で保護し、この非イオン性界面活性剤で保護された前記疎水性硬化触媒を、ポリオールとポリイソシアネートとを含有する水性塗料組成物に配合することによって、優れた低温硬化性と長時間の良好な貯蔵安定性とを兼ね備えるイソシアネート硬化型の水性塗料組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の水性塗料組成物は、ポリオールと、ポリイソシアネートと、Sn、Bi、Zr、Ti及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含有する有機金属化合物からなり、20℃、大気圧条件下における水への溶解度が1g/100ml以下である疎水性硬化触媒と、グリフィン法により求められるHLB値が12〜14.6である非イオン性界面活性剤とを含有することを特徴とするものである。
本発明の水性塗料組成物においては、前記疎水性硬化触媒が、前記非イオン性界面活性剤により形成されるミセルに内包されていることが好ましい。また、本発明の水性塗料組成物においては、有機溶媒を含有しないこと、或いは、20℃における水への溶解度が10g/100ml以上かつ沸点が50〜200℃の有機溶媒を含有することが好ましい。
また、本発明の水性塗料組成物の製造方法は、Sn、Bi、Zr、Ti及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含有する有機金属化合物からなり、20℃、大気圧条件下における水への溶解度が1g/100ml以下である疎水性硬化触媒と、グリフィン法により求められるHLB値が12〜14.6である非イオン性界面活性剤とを混合して、硬化触媒含有界面活性剤水溶液を調製した後、ポリオールとポリイソシアネートと前記硬化触媒含有界面活性剤水溶液とを混合することを特徴とする方法である。
本発明の水性塗料組成物の製造方法においては、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートと前記硬化触媒含有界面活性剤水溶液とを混合する際に、有機溶媒を混合しないこと、或いは、20℃における水への溶解度が10g/100ml以上かつ沸点が50〜200℃の有機溶媒を更に混合することが好ましい。
なお、HLB値とは、界面活性剤の親水性又は親油性(疎水性)の程度を表す値であり、下記式:
HLB値=20×親水性基部分の式量の総和/非イオン性界面活性剤の分子量
で表されるグリフィン法によって求めることができる。
また、本発明の水性塗料組成物が優れた低温硬化性と長時間の良好な貯蔵安定性とを兼ね備えるものとなる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の水性塗料組成物においては、前記疎水性硬化触媒が所定のHLB値を有する非イオン性界面活性剤によって(好ましくは、前記非イオン性界面活性剤により形成されたミセルに内包されることによって)保護されている。このように前記非イオン性界面活性剤によって保護されている前記疎水性硬化触媒は、室温から40℃付近までの温度では硬化触媒の分子運動が抑制される。このため、前記疎水性硬化触媒は、ポリオール及びポリイソシアネートとの接触が抑制され、触媒機能の発現が抑制されるため、本発明の水性塗料組成物は、40℃以下の温度での長時間の貯蔵が可能となる、すなわち、長時間の良好な貯蔵安定性を示すと推察される。一方、前記非イオン性界面活性剤によって保護されている前記疎水性硬化触媒は、50℃以上の温度では、前記非イオン性界面活性剤による保護から解放される(ミセルが形成されている場合には、ミセルの安定性が低下してミセルが崩壊して前記非イオン性界面活性剤による保護から解放される)ため、分子運動が活発となる。このため、前記疎水性硬化触媒は、ポリオール及びポリイソシアネートと接触して活性化するため、本発明の水性塗料組成物は、低温(例えば、100℃)においても硬化反応が進行し、優れた硬化性を示すと推察される。なお、本発明においては、このような特性、すなわち、ある温度以下においては触媒機能の発現を抑制し、ある温度以上にすることによって触媒機能を発現させる特性を「スイッチ性」という。
本発明によれば、優れた低温硬化性(例えば、100℃での硬化性)と長時間の良好な貯蔵安定性(例えば、40℃、8時間の貯蔵安定性)とを兼ね備えるイソシアネート硬化型の水性塗料組成物を得ることが可能となる。
実施例1で調製した硬化触媒含有界面活性剤水溶液のH−NMRスペクトルを示すグラフである。 実施例1及び比較例3で調製した硬化触媒含有界面活性剤水溶液のH−NMRスペクトルを示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明の水性塗料組成物について説明する。本発明の水性塗料組成物は、ポリオールと、ポリイソシアネートと、Sn、Bi、Zr、Ti及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含有する有機金属化合物からなり、20℃、大気圧条件下における水への溶解度が1g/100ml以下である疎水性硬化触媒と、グリフィン法により求められるHLB値が10〜15である非イオン性界面活性剤とを含有するものである。このような本発明の水性塗料組成物は、室温から40℃付近までの温度では、前記疎水性硬化触媒が前記非イオン性界面活性剤によって(好ましくは、前記疎水性硬化触媒が前記非イオン性界面活性剤により形成されるミセルに内包されることによって)保護されているため、長時間の良好な貯蔵安定性を有しており、また、50℃以上の温度(例えば100℃)では、前記疎水性硬化触媒が前記非イオン性界面活性剤による保護から解放される(ミセルが形成されている場合には、ミセルの安定性が低下してミセルが崩壊して前記非イオン性界面活性剤による保護から解放される)ため、優れた低温硬化性を示す。
前記ポリオールとしては、イソシアネート硬化型の水性塗料組成物において基体樹脂として用いられるポリマーポリオールであれば特に制限はなく、例えば、水酸基を含有する、アクリル樹脂(アクリルポリオール)、ポリエステル樹脂(ポリエステルポリオール)、アルキド樹脂(アルキドポリオール)、エポキシ樹脂(エポキシポリオール)、ウレタン樹脂(ポリウレタンポリオール)等が挙げられる。これらのポリオールは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらのポリオールのうち、塗膜性能を十分に確保するという観点から、水酸基を含有する、アクリル樹脂(アクリルポリオール)、ポリエステル樹脂(ポリエステルポリオール)、ウレタン樹脂(ポリウレタンポリオール)が好ましい。また、このようなポリオールの含有量としては、塗膜性能を十分に確保するという観点から、ポリオールとポリイソシアネートとの合計量100質量%に対して、20〜90質量%が好ましく、30〜85質量%がより好ましく、40〜80質量%が特に好ましい。
前記ポリイソシアネートとしては、イソシアネート硬化型の水性塗料組成物において硬化剤として用いられるポリイソシアネートであれば特に制限はなく、例えば、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、イソシアネート樹脂、ブロックイソシアネート樹脂等が挙げられる。これらのポリイソシアネートは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらのポリイソシアネートのうち、塗膜性能を十分に確保するという観点から、イソシアネート化合物が好ましい。また、このようなポリイソシアネートの含有量としては、塗膜性能を十分に確保するという観点から、ポリオールとポリイソシアネートとの合計量100質量%に対して、10〜80質量%が好ましく、15〜70質量%がより好ましく、20〜60質量%が特に好ましい。
本発明に用いられる疎水性硬化触媒は、20℃、大気圧条件下における水への溶解度が1g/100ml以下のものである。このような疎水性の硬化触媒を用いることによって、室温から40℃付近までの温度では、硬化触媒が非イオン性界面活性剤によって(好ましくは、硬化触媒が後述する非イオン性界面活性剤により形成されるミセルに内包されることによって)保護されやすくなり、水性塗料組成物を長時間貯蔵することが可能となる。一方、硬化触媒の水への溶解度(20℃、大気圧条件下)が前記上限を超えると、硬化触媒の親水性が高くなるため、後述する非イオン性界面活性剤による(好ましくは、硬化触媒が後述する非イオン性界面活性剤によって形成されるミセルに内包されることによる)保護から硬化触媒が解放されて水溶媒中に拡散しやすく、室温から40℃付近までの温度でも、硬化触媒の作用によりポリオールとポリイソシアネートとの反応が進行し、長時間の貯蔵安定性が低下する。また、硬化触媒の疎水性が高くなり、室温から40℃付近まで温度では、硬化触媒が非イオン性界面活性剤によって(好ましくは、硬化触媒が後述する非イオン性界面活性剤により形成されるミセルに内包されることによって)更に保護されやすくなり、水性塗料組成物の貯蔵安定性が向上するという観点から、前記疎水性硬化触媒の水への溶解度(20℃、大気圧条件下)としては0.5g/100ml以下が好ましい。
また、本発明に用いられる疎水性硬化触媒は、Sn、Bi、Zr、Ti及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含有する有機金属化合物からなるものである。硬化触媒として前記金属原子を含有する有機金属化合物を用いることによって、比較的低温(例えば、100℃)でポリオールとポリイソシアネートとの反応を進行させることができ、イソシアネート硬化型の水性塗料組成物からなる塗膜の焼付けを比較的低温(例えば、100℃)で行うことが可能となる。
前記有機金属化合物を構成する有機鎖の炭素数としては、3以上が好ましく、5以上がより好ましく、8以上が特に好ましい。これにより、硬化触媒の疎水性が向上し(水への溶解度が小さくなり)、水性塗料組成物の貯蔵安定性が向上する。一方、有機鎖の炭素数が前記下限未満になると、硬化触媒の疎水性が低下する(水への溶解度が大きくなる)傾向にあり、水性塗料組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。なお、有機鎖の炭素数の上限としては特に制限はないが、水性塗料組成物中における硬化触媒の安定性確保の観点から、20以下が好ましい。
また、前記有機金属化合物には酸素原子が含まれていることが好ましい。これにより、前記有機金属化合物の炭素数にかかわらず、スイッチ性が発現しやすくなる。
このような疎水性硬化触媒として、具体的には、ジラウリン酸ジブチル錫(0.1g/100ml以下)、2−エチルヘキサン酸ビスマス(0.1g/100ml以下)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(0.1g/100ml以下)、テトラオクチルチタネート(0.1g/100ml以下)、チタンエチルアセトアセテート(0.1g/100ml以下)、アルミニウムトリスアセチルアセトネート(0.1g/100ml以下)等が挙げられる(カッコ内は20℃、大気圧条件下における水への溶解度)。
また、このような疎水性硬化触媒の含有量としては、水性塗料組成物の貯蔵安定性と塗膜性能を両立するという観点から、水性塗料組成物全体に対して、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.01〜1.0質量%が特に好ましい。
本発明に用いられる非イオン性界面活性剤は、前記グリフィン法により求められるHLB値が10〜15のものである。このようなHLB値を有する非イオン性界面活性剤は、室温から40℃付近までの温度では、水溶液中で前記疎水性硬化触媒を保護する(好ましくは、ミセルを形成して前記疎水性硬化触媒を内包することによって保護する)ことができ、水性塗料組成物を長時間貯蔵することが可能となる。また、前記非イオン性界面活性剤は、50℃以上の温度(例えば100℃)では、前記疎水性硬化触媒を解放する(ミセルを形成している場合には、ミセルの安定性が低下してミセルが崩壊することによって前記疎水性硬化触媒を解放する)ため、本発明の水性塗料組成物は優れた低温硬化性を示す。一方、非イオン性界面活性剤のHLB値が前記下限未満になると、前記疎水性硬化触媒が前記非イオン性界面活性剤によって(特に、前記疎水性硬化触媒が前記非イオン性界面活性剤により形成されるミセルに取り込まれないため、)保護されず、水性塗料組成物の長時間の貯蔵安定性が低下する。他方、非イオン性界面活性剤のHLB値が前記上限を超えると、50℃以上の温度(例えば100℃)でも、前記疎水性硬化触媒を解放しない(ミセルを形成している場合には、ミセルが安定して崩壊しないため、前記疎水性硬化触媒を解放しない)ため、水性塗料組成物の低温硬化性が低下する。また、室温から40℃付近まで温度では、水溶液中で前記疎水性硬化触媒を更に保護しやすくなり(好ましくは、ミセルを形成して前記疎水性硬化触媒をミセルに内包することによって更に保護しやすくなり)、水性塗料組成物の貯蔵安定性が向上し、また、50℃以上の温度(例えば100℃)では、前記疎水性硬化触媒を解放する(ミセルを形成している場合には、ミセルの安定性が低下してミセルが崩壊することによって前記疎水性硬化触媒を解放する)ことによって、水性塗料組成物の低温硬化性が向上するという観点から、前記非イオン性界面活性剤のHLB値としては、12〜14.5が好ましく、13〜14がより好ましい。
前記非イオン性界面活性剤の分子量としては100〜5000が好ましく、300〜1500がより好ましい。前記非イオン性界面活性剤の分子量が前記下限未満になると、ミセルが室温から40℃付近までの温度で崩壊しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、水中に均一に溶解しにくく、また、50℃以上の温度(例えば100℃)で崩壊しにくい傾向にある。
このような非イオン性界面活性剤として、具体的には、ポリオキシエチレン−オレイルエーテル(例えば、日油株式会社製のノニオンE−212(HLB値:13.3)、ノニオンE−215(HLB値:14.2))、ポリオキシエチレン−イソデシルエーテル(例えば、日油株式会社製のノニオンID−206(HLB値:12.5)、ノニオンID−209(HLB値:14.3))、ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシル−エーテル(例えば、日油株式会社製のノニオンEH−208(HLB値:14.6))、ポリオキシエチレン−ステアリルエーテル(例えば、日油株式会社製のノニオンS−215(HLB値:14.2))等のエーテル型非イオン性界面活性剤が挙げられる。
このような非イオン性界面活性剤の含有量としては、得られる水性塗料組成物において非イオン性界面活性剤の濃度が臨界ミセル濃度以上となる含有量であれば特に制限はないが、塗膜の耐水性を確保するという観点から、水性塗料組成物全体に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。
また、本発明の水性塗料組成物には有機溶媒が含まれていてもよい。このような有機溶媒としては、20℃における水への溶解度が10g/100ml以上かつ沸点が50〜200℃の有機溶媒が好ましい。水への溶解度及び沸点が前記範囲にある有機溶媒を用いることによって、水性塗料組成物を塗布する際の泡の発生を抑制することができるとともに、水性塗料組成物に有機溶媒が含まれる場合でも、優れた低温硬化性(例えば、100℃での硬化性)と長時間の良好な貯蔵安定性(例えば、40℃、8時間の貯蔵安定性)の両立が維持される。これは、水への溶解度及び沸点が前記範囲にある有機溶媒が高親水性かつ低沸点であり、疎水性硬化触媒を保護している非イオン性界面活性剤に前記有機溶媒が取り込まれにくいため、硬化触媒が非イオン性界面活性剤による保護から解放されることなく、安定に保護されている(非イオン性界面活性剤がミセルを形成している場合には、疎水性硬化触媒を内包しているミセルに前記有機溶媒が取り込まれにくいため、硬化触媒がミセルから放出されることなく、安定に保護されている)からであると考えられる。
水への溶解度及び沸点が前記範囲にある有機溶媒としては、例えば、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。また、このような有機溶媒の含有量としては、水性塗料組成物中の樹脂分100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下が更に好ましい。
また、本発明の水性塗料組成物においては、必要に応じて、従来公知の着色顔料や光輝性顔料等が従来公知の範囲で含まれていてもよい。また、各種物性を調整するために、粘性制御剤、表面調整剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤等の各種添加剤を従来公知の範囲で配合してもよい。
このような本発明の水性塗料組成物においては、塗膜の相対貯蔵弾性率(Er’)測定により求められる、100℃における反応速度定数k(100℃)が0.09以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましい。このような範囲の反応速度定数k(100℃)を有する水性塗料組成物は低温硬化性(例えば、100℃での硬化性)に優れている。
また、本発明の水性塗料組成物においては、塗膜の相対貯蔵弾性率(Er’)測定により求められる、70℃における反応速度定数k(70℃)と100℃における反応速度定数k(100℃)との比〔k(70℃)/k(100℃)〕が0.3以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましい。k(70℃)/k(100℃)が前記範囲にある水性塗料組成物は貯蔵安定性に優れている。
さらに、本発明の水性塗料組成物においては、初期粘度に対する40℃の温度下で8時間静置した後の粘度の上昇率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。粘度の上昇率が前記範囲にある水性塗料組成物は長時間の貯蔵安定性に優れている。
また、本発明の水性塗料組成物の焼付温度(硬化温度)としては特に制限はなく、通常40〜200℃であり、80〜160℃であることが好ましい。
次に、本発明の水性塗料組成物の製造方法について説明する。本発明の水性塗料組成物の製造方法は、前記疎水性硬化触媒と前記非イオン性界面活性剤とを混合して硬化触媒含有界面活性剤水溶液を調製した後、ポリオールとポリイソシアネートと前記硬化触媒含有界面活性剤水溶液とを混合することによって、前記本発明の水性塗料組成物を得る方法である。
本発明の水性塗料組成物の製造方法においては、先ず、前記疎水性硬化触媒と前記非イオン性界面活性剤とを混合して硬化触媒含有界面活性剤水溶液を調製する。これにより、前記疎水性硬化触媒は、室温から40℃付近までの温度では、前記非イオン性界面活性剤によって(好ましくは、前記非イオン性界面活性剤により形成されるミセルに内包されることによって)保護されるため、得られる水性塗料組成物は長時間の貯蔵安定性に優れたものとなる。また、50℃以上の温度(例えば、100℃)では、前記非イオン性界面活性剤により保護されていた前記疎水性硬化触媒が解放されるため、得られる水性塗料組成物は優れた低温硬化性(例えば、100℃での硬化性)を示す。
前記硬化触媒含有界面活性剤水溶液を調製する際、前記疎水性硬化触媒と前記非イオン性界面活性剤とを混合した後、得られた混合物を30〜60℃で8時間以上加熱することが好ましい。これにより、前記疎水性硬化触媒が前記非イオン性界面活性剤により形成されるミセルに確実に内包される。
次に、このようにして調製した硬化触媒含有界面活性剤水溶液とポリオールとポリイソシアネートとを混合する。これにより、ポリオールとポリイソシアネートと、前記非イオン性界面活性剤により保護された前記疎水性硬化触媒(好ましくは、前記非イオン性界面活性剤により形成されるミセルに内包された前記疎水性硬化触媒)とを含有する本発明の水性塗料組成物が得られる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用したポリオールは以下の方法により合成した。
(合成例1)
先ず、アクリル酸ブチル99.0質量部、メタクリル酸ブチル85.5質量部、スチレン45.0質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル162.0質量部、アクリル酸13.5質量部、メタクリル酸メチル45.0質量部、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン4.5質量部、イオン交換水170質量部、及び乳化重合剤としてポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(花王株式会社製「ラテムルPD−104」)25.0質量部を混合し、ミキサーを用いて攪拌して乳化させ、モノマープレエマルションを調製した。
次に、攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器及び窒素導入管等を備えた通常のアクリル系樹脂エマルジョン製造用反応容器に、イオン交換水320質量部、乳化重合剤としてポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(花王株式会社製「ラテムルPD−104」)5.0質量部、及び重合開始剤として過硫酸アンモニウム水溶液(過硫酸アンモニウム(APS、アルドリッチ社製)1.0質量部とイオン交換水10.0質量部とを混合したもの)を仕込み、攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、この反応容器に、前記モノマープレエマルションのうちの5質量%を添加し、80℃で10分間保持した。その後、残りのモノマープレエマルションを上記反応容器中に3時間かけて攪拌しながら滴下した。滴下終了後、さらに、80℃で1時間撹拌を継続して反応させた。その後、イオン交換水500質量部を添加し、室温まで冷却した。冷却後、50質量%ジメチルエタノールアミン水溶液33.4質量部を添加し、10分間撹拌して、水酸基を含有するアクリルエマルション(ポリアクリルポリオールエマルション)を調製した。
<HLB値>
実施例及び比較例で使用した非イオン性界面活性剤のHLB値は下記式:
HLB値=20×親水性基部分の式量の総和/非イオン性界面活性剤の分子量
により求めた。
(実施例1)
先ず、容器に、イオン交換水80質量部及びHLB値が13.3の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−212」)20質量部を仕込み、非イオン性界面活性剤を溶解させた後、硬化触媒としてジラウリン酸ジブチル錫(DBTL、東京化成工業株式会社製)2質量部を添加して60℃で8時間攪拌し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1を調製した。なお、ジラウリン酸ジブチル錫の20℃、大気圧条件下における水への溶解度は0.1g/100ml以下であった。
次に、合成例1で得たポリアクリルポリオールエマルション33.0質量部、ポリイソシアネート(DIC株式会社製「バーノックDNW5500」)10.5質量部、及びイオン交換水10.5質量部を混合した。得られた水溶液に前記硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1を3.0質量部添加して水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
(実施例2)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が14.2の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−215」)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−2を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−2を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
(実施例3)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が12.5の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンID−206」)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−3を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−3を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
(実施例4)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が14.3の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンID−209」)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−4を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−4を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
(実施例5)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が14.6の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンEH−208」)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−5を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−5を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
(実施例6)
硬化触媒として2−エチルヘキサン酸ビスマスミネラルスピリット溶液(2EHBi、和光純薬工業株製)2質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−6を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−6を12.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.36質量%)を調製した。なお、2−エチルヘキサン酸ビスマスミネラルスピリット溶液の20℃、大気圧条件下における水への溶解度は0.1g/100ml以下であった。
(実施例7)
硬化触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート(Zr(acac)、マツモトファインケミカル株式会社製「オルガチックスZC−700」)4質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−7を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−7を12.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.70質量%)を調製した。なお、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートの20℃、大気圧条件下における水への溶解度は0.1g/100ml以下であった。
(比較例1)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が4.9の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−202」)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−1を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−1を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
(比較例2)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が9.0の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−205」)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−2を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−2を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
(比較例3)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が16.6の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−230」)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−3を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−3を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
(比較例4)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が9.0の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−205」)20質量部を用いた以外は実施例6と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−4を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−4を12.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.36質量%)を調製した。
(比較例5)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が16.6の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−230」)20質量部を用いた以外は実施例6と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−5を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−5を12.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.36質量%)を調製した。
(比較例6)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が9.0の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−205」)20質量部を用いた以外は実施例7と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−6を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−6を12.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.70質量%)を調製した。
(比較例7)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が16.6の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−230」)20質量部を用いた以外は実施例7と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−7を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−7を12.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.70質量%)を調製した。
(比較例8)
硬化触媒としてジアザビシクロウンデセンp−トルエンスルホン酸塩(DBU塩、アルドリッチ社製)2質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−8を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−8を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。なお、ジアザビシクロウンデセンp−トルエンスルホン酸塩の20℃、大気圧条件下における水への溶解度は0.5g/100ml以上であった。
(比較例9)
硬化触媒としてジアザビシクロウンデセン(DBU、東京化成工業株式会社製)2質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−9を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−9を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。なお、ジアザビシクロウンデセンの20℃、大気圧条件下における水への溶解度は0.5g/100ml以上であった。
(比較例10)
硬化触媒としてジアザビシクロノネン(DBN、東京化成工業株式会社製)2質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−10を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−10を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。なお、ジアザビシクロノネンの20℃、大気圧条件下における水への溶解度は0.5g/100ml以上であった。
(比較例11)
合成例1で得たポリアクリルポリオールエマルション33.0質量部、ポリイソシアネート(DIC株式会社製「バーノックDNW5500」)10.5質量部、及びアセトン10.5質量部を混合した。得られた溶液に、硬化触媒としてジラウリン酸ジブチル錫(DBTL、東京化成工業株式会社製)0.06質量部を添加して水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
(比較例12)
合成例1で得たポリアクリルポリオールエマルション33.0質量部、ポリイソシアネート(DIC株式会社製「バーノックDNW5500」)10.5質量部、及びイオン交換水10.5質量部を混合して水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0質量%)を調製した。
(実施例8)
イオン交換水10.5質量部の代わりに1−メトキシ−2−プロパノール(PGME、水への溶解度(20℃):10g/100ml以上、沸点:120℃)0.1質量部とイオン交換水10.4質量部を用いた以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%、有機溶媒の含有量:樹脂分100質量部に対して5質量部)を調製した。
(実施例9)
イオン交換水10.5質量部の代わりに2−プロパノール(IPA、水への溶解度(20℃):10g/100ml以上、沸点:83℃)0.2質量部とイオン交換水10.3質量部を用いた以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%、有機溶媒の含有量:樹脂分100質量部に対して10質量部)を調製した。
(実施例10)
イオン交換水10.5質量部の代わりに1−プロパノール(PrOH、水への溶解度(20℃):10g/100ml以上、沸点:97℃)0.2質量部とイオン交換水10.3質量部を用いた以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%、有機溶媒の含有量:樹脂分100質量部に対して10質量部)を調製した。
(実施例11)
イオン交換水10.5質量部の代わりに1−ブタノール(BuOH、水への溶解度(20℃):10g/100ml、沸点:118℃)0.2質量部とイオン交換水10.3質量部を用いた以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%、有機溶媒の含有量:樹脂分100質量部に対して10質量部)を調製した。
(実施例12)
イオン交換水10.5質量部の代わりに1−メトキシ−2−プロパノール(PGME、水への溶解度(20℃):10g/100ml以上、沸点:120℃)0.2質量部とイオン交換水10.3質量部を用いた以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%、有機溶媒の含有量:樹脂分100質量部に対して10質量部)を調製した。
(実施例13)
イオン交換水10.5質量部の代わりにエチレングリコールモノブチルエーテル(EGBE、水への溶解度(20℃):10g/100ml以上、沸点:171℃)0.2質量部とイオン交換水10.3質量部を用いた以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%、有機溶媒の含有量:樹脂分100質量部に対して10質量部)を調製した。
(実施例14)
イオン交換水10.5質量部の代わりに1−メトキシ−2−プロパノール(PGME、水への溶解度(20℃):10g/100ml以上、沸点:120℃)0.4質量部とイオン交換水10.1質量部を用いた以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%、有機溶媒の含有量:樹脂分100質量部に対して20質量部)を調製した。
(実施例15)
イオン交換水10.5質量部の代わりに1−メトキシ−2−プロパノール(PGME、水への溶解度(20℃):10g/100ml以上、沸点:120℃)0.6質量部とイオン交換水9.9質量部を用いた以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%、有機溶媒の含有量:樹脂分100質量部に対して30質量部)を調製した。
<水性塗料組成物の硬化挙動>
得られた水性塗料組成物をステンレス鋼板(40mm×50mm、厚さ0.5mm)上に焼付け後の膜厚が35±5μmとなるように塗布した。具体的には、前記ステンレス鋼板を水平な台に設置し、このステンレス鋼板の対向する2辺の縁からそれぞれ5mm程度の領域に厚さ70μmの粘着テープを貼付けた。粘着テープで囲まれた領域内に、前記水性塗料組成物を適量滴下した後、刃先が直線のナイフを粘着テープ上で滑らせて前記ステンレス鋼板とナイフの刃先との隙間に水性塗料組成物を塗り込んだ。
前記ステンレス鋼板上に前記水性塗料組成物からなる塗膜を形成してから7±1分後に、刃先角度40°のナイフエッジを取付けた直径74mmの円環状振子を装着した剛体振子型物性試験機(株式会社エー・アンド・ディ製「RPT−5000型」を用いて、室温(25℃)から焼付温度(70℃、100℃、又は140℃)まで昇温速度20±4℃/分で昇温し、その後、焼付温度(70℃、100℃、又は140℃)で維持する温度プログラムで、前記塗膜の相対貯蔵弾性率(Er’)を測定した。測定は、下記の変曲点から15分間以上経過するまで継続した。
得られた相対貯蔵弾性率(Er’)の測定値を時間に対してプロットし、時間の経過に従って下に凸の曲線から上に凸の曲線に変化した点(以下、この変化した点を「変曲点」という)から15分間の部分について下記式:
Er’=A〔1−exp{k(t−t)}〕
(式中、Aは定数であり、kは反応速度定数を表し、tは時間を表し、tは反応開始時間を表す)
を当てはめ、非線形最小二乗法により反応速度定数kを求めた。その結果を表1〜表4に示す。なお、このkの値が大きいほど、硬化が進行していることを意味する。
<水性塗料組成物の貯蔵安定性>
得られた水性塗料組成物を40℃に設定したオーブン中で8時間静置し、静置前後の水性塗料組成物の粘度を、粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製「ARES−G2レオメーター)を用いて、温度:25.0±0.1℃、剪断速度:1000s−1、ジオメトリ:径25mmのコーンプレート及び角度0.04rad、ギャップ:50μmの条件で測定した。その結果を表1〜表4に示す。
Figure 0006943907
Figure 0006943907
Figure 0006943907
Figure 0006943907
表1〜表3に示したように、水への溶解度(20℃、大気圧条件下)が1g/100ml以下である疎水性硬化触媒とHLB値が10〜15である非イオン性界面活性剤とを含有するイソシアネート硬化型水性塗料組成物は、100℃における高い硬化性と40℃における高い貯蔵安定性とが両立していることが確認された(実施例1〜7)。これは、40℃では、前記疎水性硬化触媒が前記非イオン性界面活性剤により形成されたミセルに取り込まれて保護され、触媒機能が発現しなかったのに対して、100℃では、ミセルが崩壊して前記疎水性硬化触媒が解放され、触媒機能が発現した(スイッチ性が発現した)ためと考えられる。
一方、非イオン性界面活性剤のHLB値が9以下になると、40℃における貯蔵安定性が低下することがわかった(比較例1〜2、4、6)。これは、疎水性硬化触媒がミセルに取り込まれず、スイッチ性が発現しなかったためと考えられる。また、非イオン性界面活性剤のHLB値が16.6になると、100℃における硬化性が低下することがわかった(比較例3、5、7)。これは、温度が100℃になっても、疎水性硬化触媒がミセルから放出されず、触媒機能が発現しなかったためと考えられる。
また、アミン系硬化触媒を用いた場合にも、40℃における貯蔵安定性が低下することがわかった(比較例8〜10)。これは、アミン系硬化触媒が、水への溶解性が高いものであることから、ミセル中だけでなく、水溶媒中にも分配され、スイッチ性が発現しなかったためと考えられる。
さらに、界面活性剤を使用しなかった場合にも、40℃における貯蔵安定性が低下することがわかった(比較例11)。これは、界面活性剤が存在しないことから、ミセルが形成されず、スイッチ性が発現しなかったためと考えられる。
また、硬化触媒及び界面活性剤の両者を含まない場合には、40℃における貯蔵安定性は確保されるものの、100℃における硬化性が低く、実施例1で得られた水性塗料組成物の100℃における硬化性と同等の硬化性を得るためには、140℃で焼付ける必要があることがわかった(比較例12)。
さらに、表4に示したように、水への溶解度(20℃)が10g/100ml以上かつ沸点が50〜200℃の有機溶媒を含有するイソシアネート硬化型水性塗料組成物においても、100℃における高い硬化性と40℃における高い貯蔵安定性とが両立していることが確認された(実施例8〜15)。これは、高親水性の前記有機溶媒が前記非イオン性界面活性剤により形成されたミセルに取り込まれにくいため、前記疎水性硬化触媒がミセルから放出されることなく、ミセル内で安定に保護されたためと考えられる。
<硬化触媒含有界面活性剤水溶液のNMR測定>
実施例1で調製した硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1及び比較例3で調製した硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−3についてH−NMRスペクトルを測定した。具体的には、硬化触媒含有界面活性剤水溶液を通常測定用のNMR試料管(直径:5mm)に入れ、フーリエ変換核磁気共鳴(NMR)装置(日本電子株式会社製「JNM−ECA500」)を用いて、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1については室温から90℃の温度範囲で、硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−3については50℃で、H−NMRスペクトルを測定した。その結果を図1及び図2に示す。
図1に示したように、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1のH−NMRスペクトルにおいて、DBTL由来のピークは、室温から40℃までの温度では不明瞭なものであったが、温度が50℃以上になると明瞭になることがわかった。この結果は、室温から40℃までの温度では、DBTLが非イオン性界面活性剤により形成されたミセルに内包されて保護され、分子運動が抑制されていたのに対して、温度が50℃以上になると、ミセルが崩壊してDBTLの保護が解放され、DBTLの分子運動が活発になったことを示している。したがって、HLB値が所定の範囲にある非イオン性界面活性剤を含有する本発明の水性塗料組成物においては、40℃以下の温度では、非イオン性界面活性剤により硬化触媒の分子運動が抑制され、ポリオール及びポリイソシアネートと硬化触媒との接触が抑制されるため、硬化反応が進行しないのに対して、50℃以上の温度では、硬化触媒が、非イオン性界面活性剤による保護から解放されて分子運動が活発となり、ポリオール及びポリイソシアネートと接触して活性化するため、100℃においても硬化反応が進行すると考えられる。
一方、図2に示したように、硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−3のH−NMRスペクトルにおいて、DBTL由来のピークは、温度が50℃であっても不明瞭なものであった。この結果は、温度が50℃になっても、非イオン性界面活性剤により形成されたミセルに内包されたDBTLの保護が解放されず、分子運動が抑制されていることを示している。したがって、HLB値が所定の値より大きい非イオン性界面活性剤を含有する水性塗料組成物においては、温度が50℃になっても、硬化触媒が非イオン性界面活性剤による保護から解放されず、分子運動が抑制され、ポリオール及びポリイソシアネートと硬化触媒との接触が抑制されるため、硬化反応が進行しないと考えられる。
以上説明したように、本発明によれば、非イオン性界面活性剤によって(好ましくは、非イオン性界面活性剤により形成されるミセルに内包されることによって)保護された疎水性硬化触媒を含有するイソシアネート硬化型の水性塗料組成物を得ることが可能となる。
したがって、本発明の水性塗料組成物は、優れた低温硬化性と長時間の良好な貯蔵安定性とを兼ね備えているため、乗用車、トラック、バス、オートバイ等の車両用ボディーやそれらの部品等の塗装に用いられる塗料組成物として有用である。

Claims (7)

  1. ポリオールと、ポリイソシアネートと、Sn、Bi、Zr、Ti及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含有する有機金属化合物からなり、20℃、大気圧条件下における水への溶解度が1g/100ml以下である疎水性硬化触媒と、グリフィン法により求められるHLB値が12〜14.6である非イオン性界面活性剤とを含有することを特徴とする水性塗料組成物。
  2. 前記疎水性硬化触媒が、前記非イオン性界面活性剤により形成されるミセルに内包されていることを特徴とする請求項1に記載の水性塗料組成物。
  3. 有機溶媒を含有しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
  4. 20℃における水への溶解度が10g/100ml以上かつ沸点が50〜200℃の有機溶媒を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
  5. Sn、Bi、Zr、Ti及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含有する有機金属化合物からなり、20℃、大気圧条件下における水への溶解度が1g/100ml以下である疎水性硬化触媒と、グリフィン法により求められるHLB値が12〜14.6である非イオン性界面活性剤とを混合して、硬化触媒含有界面活性剤水溶液を調製した後、ポリオールとポリイソシアネートと前記硬化触媒含有界面活性剤水溶液とを混合することを特徴とする水性塗料組成物の製造方法。
  6. 前記ポリオールと前記ポリイソシアネートと前記硬化触媒含有界面活性剤水溶液とを混合する際に、有機溶媒を混合しないことを特徴とする請求項5に記載の水性塗料組成物の製造方法。
  7. 前記ポリオールと前記ポリイソシアネートと前記硬化触媒含有界面活性剤水溶液とを混合する際に、20℃における水への溶解度が10g/100ml以上かつ沸点が50〜200℃の有機溶媒を更に混合することを特徴とする請求項5に記載の水性塗料組成物の製造方法。
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