JP6942479B2 - 銅端子材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
この場合、変質層が基材の全厚さの1%未満では、銅の拡散抑制効果に乏しく、5%を超えると基材の加工性等の材料特性を損なうおそれがある。
これらの金属層を拡散防止層とすることにより、基材からの銅の拡散を有効に防止することができる。これらの金属層は単層でもよいし、2層以上を積層して下地層としてもよい。
拡散防止層における粒径調整部の上にこれらの貴金属層を形成することにより、端子材としての耐熱性を有効に発揮することができる。
本発明の方法では、レーザ光の照射で金属被覆層を表面側から加熱して結晶粒を肥大化するようにしているので、複雑な工程を必要とすることなく、短時間で、ごく表面の結晶粒を局所的に肥大化することができる。このため、端子として基材からの銅の拡散を抑制したい部分のみ金属被覆層の結晶粒を肥大化し、基材に変質層を形成することができる。また、レーザ光を照射しない領域では、基材の材料特性を変化させるおそれがなく、銅端子材としての所望の加工性等の材料特性を維持することができる。
これらのレーザで上記範囲の波長のレーザ光を照射することにより、金属被覆層を効果的に肥大化することができる。
これらのレーザで上記範囲の波長のレーザ光を貴金属層の上から照射することにより、金属被覆層を効果的に肥大化することができる。
<銅端子材の構成>
実施形態の銅端子材1は、図1に断面を模式的に示したように、銅または銅合金からなる基材2上に、拡散防止層3を介して、貴金属層4が積層されている。
基材2は、銅または銅合金からなるものであれば、特に、その組成が限定されるものではない。この場合、貴金属層4が形成されている部分の直下においては、基材2の銅と拡散防止層3中の金属とが固溶状態とされた変質層2aが形成されている。ここでの変質層2aとは、基材2と拡散防止層3との境界面より基材2側に形成される領域であって、かつ、拡散防止層3中の主要成分である金属(後述するニッケル、もしくはコバルト)の含有率が、1.0質量%以上である領域とした。尚、拡散防止層中の金属の含有量の測定方法は、銅端子材1の断面より、基材2と拡散防止層3との境界面より基材2側に形成される領域を、EPMA(Electron Probe Micro Analysis)によって定量分析することにより確認することができる。
まず、第1の製造方法を図2のフローチャートにしたがって説明する。
基材2として、銅または銅合金からなる板材を用意し、図2に示す工程順で銅端子材1を製造する。
まず、この板材に脱脂、酸洗等をすることによって表面を清浄にする前処理を行う(前処理工程)。
次に、拡散防止層3のための金属被覆層3´を形成する(金属被覆層形成工程)。金属被覆層3´の形成はめっき処理により行うのが好適である。
金属被覆層3´がニッケルまたはニッケル合金からなる場合、そのめっき浴は、緻密なニッケル主体の膜が得られるものであれば特に限定されず、公知のワット浴やスルファミン酸浴、クエン酸浴などを用いて電気めっきにより形成することができる。ニッケル合金めっきとしてはニッケルタングステン(Ni−W)合金、ニッケルリン(Ni−P)合金、ニッケルコバルト(Ni−Co)合金、ニッケルクロム(Ni−Cr)合金、ニッケル鉄(Ni−Fe)合金、ニッケル亜鉛(Ni−Zn)合金、ニッケルボロン(Ni−B)合金などを利用することができる。
端子へのプレス曲げ性と銅に対するバリア性を勘案すると、スルファミン酸浴から得られる純ニッケルめっき、純コバルトめっきが望ましい。
レーザ光としては、固体レーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザ(LD)もしくはガスレーザを用いることができる。レーザ光の波長は、400nm以上11μm以下の範囲であり、金属被覆層3´表面における単位面積当たりの照射エネルギーが1.0×102J/cm2以上1.0×106J/cm2以下となるように照射する。
このようにして、金属被覆層3´にレーザ光照射工程を施すことにより、レーザ光Lが照射された部分が粒径調整部3aとなった拡散防止層3が形成されるとともに、その粒径調整部3aに接している部分の基材2に変質層2aが形成される。
貴金属が金(Au)または金合金からなる場合、そのめっき浴は、シアン化金カリウムを主成分とするシアン浴、クエン酸等を用いたノンシアン浴いずれも用いることができる。金めっき浴の温度は15℃以上50℃以下、電流密度は0.1A/dm2以上10A/dm2以下とされる。
貴金属が銀(Ag)または銀合金からなる場合、そのめっき浴は、アルカリシアン浴、中性シアン浴、ノンシアン浴のいずれも用いることができる。銀めっき浴の温度は15℃以上50℃以下、電流密度は0.1A/dm2以上10A/dm2以下とされる。
貴金属がパラジウム(Pd)またはパラジウム合金からなる場合、そのめっき浴は、中性あるいはアルカリ性のアンモニウム水溶液であり、代表的なパラジウム化合物としては、塩化パラジウム、ジニトロジアンミンパラジウムやジジクロロアミノパラジウムなどが用いられ、いずれの浴も用いることができる。パラジウムめっき浴の温度は35℃以上60℃以下、電流密度は0.5A/dm2以上5A/dm2以下とされる。
貴金属が白金(Pt)または白金合金からなる場合、そのめっき浴は、大きく分けて2価(II価)の白金化合物を使用する浴と4価(IV価)の白金化合物を使用する浴があり、酸性から中性で、2価の白金化合物としてジニトロジアミノ白金、水酸化白金カリウムを使用する浴、あるいは、アルカリ性で、4価の白金化合物としてヘキサクロリド白金酸を使用する浴などがあり、いずれの浴も用いることができる。白金めっき浴の温度は65℃以上90℃以下、電流密度は0.1A/dm2以上5.0A/dm2以下とされる。
貴金属がロジウム(Rh)またはロジウム合金からなる場合、そのめっき浴は、硫酸浴、リン酸浴、ほうふっ酸浴およびスルファミン酸浴のいずれも用いることができる。ロジウムめっき浴の温度は、35℃以上60℃以下、電流密度は0.3A/dm2以上30A/dm2以下とされる。
貴金属層4を形成した後、マスクMを外すと銅端子材1が完成する。
この端子は、貴金属層4が積層されている部分では、基材2に拡散防止層3の金属が固溶した変質層2aが形成され、さらに拡散防止層3に平均結晶粒径が0.3μm以上となった粒径調整部3aが形成されているので、基材2からの銅の貴金属層4への拡散を有効に防止することができ、優れた耐熱性を維持することができる。例えば、200℃の温度に長時間(〜1000時間)晒しても、基材2の銅が拡散防止層3を拡散して、貴金属層4上に析出することを抑制することができる。
また、レーザ光を金属被覆層3´のうちの必要な部分についてのみ、その表面から照射したので、レーザ光を照射しない領域においては銅または銅合金からなる基材2の材料特性を変化させることはなく、端子への加工性等の材料特性を良好に維持することができる。
次に、第2の製造方法を図4のフローチャートにしたがって説明する。この第2の製造方法においても、基材に対する前処理工程、金属被覆層形成工程は第1の製造方法と同じである。
これらの工程により基材2の上に金属被覆層3´を形成した後、図5に示すように、その金属被覆層3´の上に、貴金属層4が形成される部分に開口部Maを有するマスクMを積層しておき、その開口部Maから露出する表面に貴金属層4をめっきにより形成した後、マスクMを外す(貴金属層形成工程)。貴金属のめっき条件は前述の第1の製造方法と同様である。
次に、図6に示すように、貴金属層4の上からレーザ光を照射し、金属被覆層3´を局部的に加熱する。尚、貴金属層4が形成される部分のサイズが、レーザ光の焦点サイズよりも小さい場合は、レーザ光を走査(スキャン)することなく照射する。それに対して、貴金属層4が形成される部分のサイズが、レーザ光の焦点サイズよりも大きい場合は、ガルバノミラー等のスキャニングミラーを使用し、貴金属層4が形成される部分全体に、レーザ光を走査(スキャン)して照射する(レーザ光照射工程)。
このレーザ光の照射により、貴金属層4を通過したレーザ光によって金属被覆層3´が加熱され、貴金属層4の直下の部分の結晶粒が平均結晶粒径で0.3μm以上に肥大化した粒径調整部3aを有する拡散防止層3が形成され、さらに、この粒径調整部3aに接している基材2に変質層2aが形成される。
このようにして製造された銅端子材1は、基材2の上に拡散防止層3が形成されるとともに、基材2の一部に拡散防止層3中の金属が固溶した変質層2aが形成され、その変質層2aの上に、拡散防止層3中の平均結晶粒径が0.3μm以上となた粒径調整部3aが形成され、その上に貴金属層4が形成されている。そして、第1の製造方法と同様に、プレス加工等により端子の形状に加工される。
この第2の製造方法では、貴金属層4を形成した後にレーザ光を照射しているので、確実に貴金属層4の直下の拡散防止層3に粒径調整部3a及びその直下の基材2に変質層2aを形成することができる。
例えば、実施形態では、金属被覆層3´及び貴金属層4をめっきにより形成したが、スパッタリング等の他の薄膜形成法によってもよい。
レーザ光の照射は、貴金属層が形成される箇所の所定のエリアに対して、表1に記載のレーザの種類及び条件にて照射を行った。尚、焦点サイズよりも貴金属層が形成されるエリアが大きい場合は、表1記載の条件のレーザ光を複数回照射することによりエリア全体に照射した。
表1中、照射エネルギーにおいて「.E+」及びこれに続く数字は、指数表記を示しており、例えば「4.0.E+3」であると「4.0×103」を示す。
(膜厚及び平均結晶粒径の測定方法)
膜厚及び平均結晶粒径の測定は、以下に記載した断面観察により測定した。測定の対象となる金属被覆層、拡散防止層のレーザ光照射部分及び貴金属層に関する、膜厚及び平均結晶粒径については、圧延平行断面をFIBにて切断することで、断面を露出した後、対象となる各々の層について倍率を8000〜15000倍としてその断面をSIM観察する。次いで、得られた画像において、各々の層の厚さを測定する。一方、厚さ方向の中央部から基材平面方向に5μmの長さを線引きし、その線を各々の層について、結晶粒界が何本交差するかを確認し、5μmをその数で割ることにより結晶粒径と定義する。これを1視野当たり任意の箇所を3回測定し、合計で3視野、9箇所について行い、得られた測定値の平均値を各々の層の平均結晶粒径とした。
基材の変質層の厚さの測定は、以下に記載した断面観察により測定した。
測定の対象となる基材と拡散防止層との境界面により、基材側の領域について、EPMA(Electron Probe Micro Analysis)により定量分析を行い、拡散防止層中の主要金属の含有率が1.0質量%以上となる領域の幅を測定し、変質層の厚さとした。
最表面の貴金属層の接触抵抗は、JCBA−T323に準拠し、4端子接触抵抗試験機を用いて、摺動式(1mm)で荷重0.98N時の接触抵抗を測定した。まず、貴金属層形成直後の初期の接触抵抗を測定した後、熱処理として、恒温槽を用いて、大気雰囲気中、200℃、1000時間保持後、再度接触抵抗を測定した。初期の測定から200℃、1000時間保持後の測定値の変化率が、10%未満のものを「◎」とし、10%以上、20%未満のものを「○」とし、20%以上、25%未満のものを「△」とし、25%以上のものを「×」とした。
曲げ加工性については、圧延方向に対して曲げの軸が直交方向になるように、幅10mm×長さ30mmの試験片を複数採取し、JCBA(日本伸銅協会技術標準)T307の4試験方法に準拠して、曲げ角度が90°、曲げ半径が0.5mmのW型治具を用い、9800Nの荷重でW曲げ試験を行った。その後、実体顕微鏡にて観察を行った。曲げ加工性の評価は、試験後の曲げ加工部に明確なクラックが認められないレベルを「◎」とし、めっき面に部分的に微細なクラックが発生しているが銅基材の露出は認められないレベルを「○」とし、銅基材の露出はないが「○」と評価したレベルより大きいクラックが発生しているレベルを「△」とし、発生したクラックにより銅基材が露出しているレベルを「×」とした。
これらの結果を表1に示す。
2 基材
2a 変質層
3 金属層
3´ 金属被覆層
4 貴金属層
M マスク
Ma 開口部
Claims (7)
- 銅または銅合金からなる基材上に厚さ0.1μm以上10.0μm以下の拡散防止層が形成されるとともに、該拡散防止層の一部に、平均結晶粒径が0.3μm以上とされた粒径調整部が形成され、該粒径調整部以外の領域における前記拡散防止層の平均結晶粒径は0.3μm未満とされており、前記基材のうち、前記粒径調整部に接する部分に、該粒径調整部との境界面から1μm以上50μm以下の厚さの範囲で前記拡散防止層中の金属の含有率が1.0質量%以上となる変質層が形成されていることを特徴とする銅端子材。
- 前記拡散防止層が、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金のいずれかからなる1層以上の金属層によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の銅端子材。
- 前記拡散防止層における前記粒径調整部の上に、金、金合金、銀、銀合金、パラジウム、パラジウム合金、白金、白金合金、ロジウム、ロジウム合金のいずれか1層以上からなる厚さ0.1μm以上5.0μm以下の貴金属層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の銅端子材。
- 請求項1から3のいずれか一項に記載の銅端子材を製造する方法であって、前記基材の表面に金属被覆層を形成した後、該金属被覆層の表面の一部にレーザ光を照射することにより、前記金属被覆層を、前記レーザ光が照射された部分が前記粒径調整部とされた前記拡散防止層とするとともに、前記粒径調整部に接する部分の前記基材に前記変質層を形成することを特徴とする銅端子材の製造方法。
- 前記レーザ光が、固体レーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザもしくはガスレーザより得られる、波長が400nm以上11μm以下の範囲のレーザ光であることを特徴とする請求項4記載の銅端子材の製造方法。
- 請求項3記載の銅端子材を製造する方法であって、前記基材の表面に金属被覆層を形成した後、該金属被覆層の表面の一部に前記貴金属層を形成し、該貴金属層の表面にレーザ光を照射することにより、前記金属被覆層を、前記レーザ光が照射された部分が前記粒径調整部とされた前記拡散防止層とするとともに、前記粒径調整部に接する部分の前記基材に前記変質層を形成することを特徴とする銅端子材の製造方法。
- 前記レーザ光が、固体レーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザもしくはガスレーザより得られる、波長が200nm以上1.1μm以下の範囲のレーザ光であることを特徴とする請求項6記載の銅端子材の製造方法。
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