JP6825401B2 - 貴金属層付銅端子材の製造方法 - Google Patents
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Description
しない領域では、基材の材料特性を変化させるおそれがなく、銅端子材としての所望の加工性等の材料特性を維持することができる。
また、これらのレーザで上記範囲の波長のレーザ光を貴金属層の上から照射することにより、金属被覆層を効果的に肥大化することができる。
これらの金属層を金属被覆層とすることにより、基材からの銅の拡散を有効に防止することができる。これらの金属層は単層でもよいし、2層以上を積層して下地層としてもよい。
これらの貴金属層とすることにより、端子材としての耐熱性を有効に発揮することができる。
まず、この製造方法が適用される実施形態の貴金属層付銅端子材について説明する。
この貴金属層付銅端子材1は、図2に断面を模式的に示したように、銅または銅合金からなる基材2上に、拡散防止層3を介して、貴金属層4が積層されている。
基材2は、銅または銅合金からなるものであれば、特に、その組成が限定されるものではない。
基材2として、銅または銅合金からなる板材を用意し、図1に示す工程順で貴金属層付銅端子材1を製造する。
まず、この板材に脱脂、酸洗等をすることによって表面を清浄にする前処理を行う(前処理工程)。
次に、拡散防止層3を形成するための金属被覆層3´を形成する(金属被覆層形成工程)。金属被覆層3´の形成はめっき処理により行うのが好適である。
金属被覆層3´がニッケルまたはニッケル合金からなる場合、そのめっき浴は、緻密なニッケル主体の膜が得られるものであれば特に限定されず、公知のワット浴やスルファミン酸浴、クエン酸浴などを用いて電気めっきにより形成することができる。ニッケル合金めっきとしてはニッケルタングステン(Ni−W)合金、ニッケルリン(Ni−P)合金、ニッケルコバルト(Ni−Co)合金、ニッケルクロム(Ni−Cr)合金、ニッケル鉄(Ni−Fe)合金、ニッケル亜鉛(Ni−Zn)合金、ニッケルボロン(Ni−B)合金などを利用することができる。
端子へのプレス曲げ性と銅に対するバリア性を勘案すると、スルファミン酸浴から得られる純ニッケルめっき、純コバルトめっきが望ましい。
貴金属が金(Au)または金合金からなる場合、そのめっき浴は、シアン化金カリウムを主成分とするシアン浴、クエン酸等を用いたノンシアン浴いずれも用いることができる。金めっき浴の温度は15℃以上50℃以下、電流密度は0.1A/dm2以上10A/dm2以下とされる。
貴金属が銀(Ag)または銀合金からなる場合、そのめっき浴は、アルカリシアン浴、中性シアン浴、ノンシアン浴のいずれも用いることができる。銀めっき浴の温度は15℃以上50℃以下、電流密度は0.1A/dm2以上10A/dm2以下とされる。
貴金属がパラジウム(Pd)またはパラジウム合金からなる場合、そのめっき浴は、中性あるいはアルカリ性のアンモニウム水溶液であり、代表的なパラジウム化合物としては、塩化パラジウム、ジニトロジアンミンパラジウムやジジクロロアミノパラジウムなどが用いられ、いずれの浴も用いることができる。パラジウムめっき浴の温度は35℃以上60℃以下、電流密度は0.5A/dm2以上5A/dm2以下とされる。
貴金属が白金(Pt)または白金合金からなる場合、そのめっき浴は、大きく分けて2価(II価)の白金化合物を使用する浴と4価(IV価)の白金化合物を使用する浴があり、酸性から中性で、2価の白金化合物としてジニトロジアミノ白金、水酸化白金カリウムを使用する浴、あるいは、アルカリ性で、4価の白金化合物としてヘキサクロリド白金酸を使用する浴などがあり、いずれの浴も用いることができる。白金めっき浴の温度は65℃以上90℃以下、電流密度は0.1A/dm2以上5.0A/dm2以下とされる。
なお、この貴金属層4は、金属めっき層3´の全面に対して形成することも可能であるが、端子として加工される部分などの必要な部分にのみ施せばよい。
レーザ光としては、固体レーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザ(LD)もしくはガスレーザを用いることができる。レーザ光の波長は、200nm以上1.1μm以下の範囲であり、金属被覆層3´表面における単位面積当たりの照射エネルギーが1.0×102J/cm2以上1.0×106J/cm2以下となるように照射する。
この場合、貴金属層4はレーザ光に対する反射率が高く吸収率が低いので、波長が短いものがよく、前述した200nm以上1.1μm以下の波長のレーザ光が好ましく、貴金属層4に吸収されたレーザ光の熱エネルギーによって瞬時に金属被覆層3´が加熱され、結晶粒の肥大化が生じる。また、金属被覆層3´の表面からレーザ光を照射するので、照射時間等を調整することにより、拡散防止層3の厚さのうち、主として表面部分の平均結晶粒径を0.3μm以上とし、基材2との界面付近では0.3μm未満の平均結晶粒径とすることも可能である。
この端子は、貴金属層4が形成されている部分(図2の3aで示す部分)では、基材2と貴金属層4との間に平均結晶粒径が0.3μm以上のニッケル等からなる拡散防止層3が形成されているので、基材2からの銅の貴金属層4への拡散を有効に防止することができ、優れた耐熱性を維持することができる。例えば、200℃の温度に長時間(〜1000時間)晒しても、基材2の銅が拡散防止層3を拡散して、貴金属層4上に析出することを抑制することができる。また、レーザ光を貴金属層4が形成されている部分にのみ、その貴金属層4の上から照射したので、レーザ光を照射しない領域においてはもちろん、照射した領域でも、銅または銅合金からなる基材2の材料特性を変化させることはなく、端子への加工性等の材料特性を良好に維持することができる。なお、レーザ光の熱エネルギーを高めるなどにより、基材2の表面のごく一部も変質させるようにすることは可能であり、その場合は、基材2自体も銅が拡散しにくいものとすることができる。
例えば、実施形態では、金属被覆層3´及び貴金属層4をめっきにより形成したが、スパッタリング等の他の薄膜形成法によってもよい。
レーザ光の照射は、貴金属層が形成される箇所の所定のエリアに対して、表1に記載のレーザの種類及び条件にて照射を行った。尚、焦点サイズよりも貴金属層が形成されるエリアが大きい場合は、表1記載の条件のレーザ光をスキャンすることによりエリア全体に照射した。
表1中、照射エネルギーにおいて「.E+」及びこれに続く数字は、指数表記を示しており、例えば「8.0.E+3」であると「8.0×103」を示す。
(膜厚及び平均結晶粒径の測定方法)
膜厚及び平均結晶粒径の測定は、以下に記載した断面観察により測定した。測定の対象となる金属被覆層、拡散防止層のレーザ光照射部分及び貴金属層に関する、膜厚及び平均結晶粒径については、圧延平行断面をFIBにて切断することで、断面を露出した後、対象となる各々の層について倍率を8000〜15000倍としてその断面をSIM観察する。次いで、得られた画像において、各々の層の厚さを測定する。一方、厚さ方向の中央部から基材平面方向に5μmの長さを線引きし、その線を各々の層について、結晶粒界が何本交差するかを確認し、5μmをその数で割ることにより結晶粒径と定義する。これを1視野当たり任意の箇所を3回測定し、合計で3視野、9箇所について行い、得られた測定値の平均値を各々の層の平均結晶粒径とした。
最表面の貴金属層の接触抵抗は、JCBA−T323に準拠し、4端子接触抵抗試験機を用いて、摺動式(1mm)で荷重0.98N時の接触抵抗を測定した。まず、貴金属層形成直後の初期の接触抵抗を測定した後、熱処理として、恒温槽を用いて、大気雰囲気中、200℃、1000時間保持後、再度接触抵抗を測定した。初期の測定から200℃、1000時間保持後の測定値の変化率が、10%未満のものを「◎」とし、10%以上、20%未満のものを「○」とし、20%以上、25%未満のものを「△」とし、25%以上のものを「×」とした。
曲げ加工性については、圧延方向に対して曲げの軸が直交方向になるように、幅10mm×長さ30mmの試験片を複数採取し、JCBA(日本伸銅協会技術標準)T307の4試験方法に準拠して、曲げ角度が90°、曲げ半径が0.5mmのW型治具を用い、9800Nの荷重でW曲げ試験を行った。その後、実体顕微鏡にて観察を行った。曲げ加工性の評価は、試験後の曲げ加工部に明確なクラックが認められないレベルを「◎」とし、めっき面に部分的に微細なクラックが発生しているが銅基材の露出は認められないレベルを「○」とし、銅基材の露出はないが「○」と評価したレベルより大きいクラックが発生しているレベルを「△」とし、発生したクラックにより銅基材が露出しているレベルを「×」とした。
これらの結果を表1に示す。
2 基材
3 拡散防止層
3´ 金属被覆層
4 貴金属層
M マスク
Ma 開口部
Claims (3)
- 銅または銅合金からなる基材上に厚さ0.1μm以上10.0μm以下の金属被覆層を形成する金属被覆層形成工程と、前記金属被覆層の表面の少なくとも一部に貴金属層を形成する貴金属層形成工程と、前記貴金属層の表面にレーザ光を照射することにより、該レーザ光を照射した部分の前記金属被覆層の平均結晶粒径を0.3μm以上とした拡散防止層を形成するレーザ光照射工程とを有し、
前記レーザ光が、固体レーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザもしくはガスレーザより得られる、波長が200nm以上1.1μm以下の範囲のレーザ光であるとともに、前記金属被覆層表面における前記レーザ光の単位面積当たりの照射エネルギーが1.0×10 2 J/cm 2 以上1.0×10 6 J/cm 2 以下である
ことを特徴とする貴金属層付銅端子材の製造方法。 - 前記金属被覆層が、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金のいずれかからなる1層以上の金属層によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の貴金属層付銅端子材の製造方法。
- 前記貴金属層が、金、金合金、銀、銀合金、パラジウム、パラジウム合金、白金、白金合金、ロジウム、ロジウム合金のいずれか1層以上からなり、厚さが0.1μm以上5.0μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の貴金属層付銅端子材の製造方法。
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