JP6942331B2 - AlNウィスカーの製造方法および製造装置ならびにAlNウィスカー構造体 - Google Patents
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Description
第1の実施形態について説明する。
1−1.AlNウィスカーの構造
図1は、本実施形態のAlNウィスカー100の構造を示す部分断面図である。図1に示すように、AlNウィスカー100は、繊維状の材料である。また、AlNウィスカー100は、高い絶縁性と高い熱伝導性とを備えている。AlNウィスカー100の長さは、1μm以上5cm以下である。AlNウィスカー100の直径は、0.1μm以上50μm以下である。これらの数値範囲は目安であり、必ずしも上記の数値範囲に限るものではない。
前述のように、AlNウィスカー100は、表面層120を有している。表面層120は、中心部110と同じAlN単結晶が酸化等した表面膜である。そのため、表面層120の結晶性は非常によい。したがって、表面層120は中心部110の酸化を好適に防止する。このように表面層120の結晶性が優れているため、表面層120の非常に薄い膜厚が実現されている。AlNの酸化層は、それほど高い熱伝導性を備えていない。したがって、表面層120の膜厚が薄い分だけ、本実施形態のAlNウィスカーは、従来のAlN材料より熱伝導性に優れている。
2−1.製造装置の構造
図2は、本実施形態のAlNウィスカー100を製造するための製造装置1000を示す概略構成図である。製造装置1000は、炉本体1100と、ヒーター1400と、窒素ガス供給部1500と、アルゴンガス供給部1600と、を有する。炉本体1100は、材料収容部1200と、反応室1300と、を内部に収容している。炉本体1100の材質は、例えば、カーボンまたは石英である。
反応室1300は、材料収容部1200の上部に配置されている。つまり、材料収容部1200は、反応室1300からみて鉛直下方側の位置に配置されている。そのため、材料収容部1200の内部で発生したAlガスは、材料収容部1200から上部の反応室1300に向かって流入しやすい。
3−1.材料準備工程
まず、製造装置1000の容器1210の内部にAl材料を収容する。このAl材料は、工業的に製錬されたアルミニウムである。この段階ではAl材料は固体の金属である。
次に、材料収容部1200の内部でAl材料を加熱してAlガスを発生させる。そのために、ヒーター1400により炉本体1100を加熱する。これにより、材料収容部1200および反応室1300の内部の温度が上昇する。この材料収容部1200を加熱する際に、アルゴンガス供給部1600が材料収容部1200の内部にアルゴンガスを供給する。そして、Alの融点に達したときにAlが溶融し始める。そして、その後、ヒーター1400による炉本体1100の加熱により、Alの沸点には達しないもののAlの一部が蒸発し始める。これにより、材料収容部1200の内部にはアルゴンガスとAlガスとの混合ガスが充満する。
続いて、材料収容部1200の内部に発生したアルゴンガスとAlガスとの混合ガスを、連通部1220から反応室1300の内部に流入させる。この際に、Alガスとアルゴンガスとの混合ガスは、Al2 O3 基板1310の板面にほぼ平行な向きに反応室1300の内部に供給される。一方、アルゴンガス供給部1600は、ガス導入口1330から反応室1300の内部にアルゴンガスを供給する。ここで、Al2 O3 基板1310の周囲をArガスで満たした後にAlガスをAl2 O3 基板に供給するとよい。また、窒素ガス供給部1500は、ガス導入口1320から反応室1300の内部に窒素ガスを供給する。そして、反応室1300の内部では、アルゴンガスとAlガスと窒素ガスとが混合する。そして、Al2 O3 基板1310の表面では、Alガスと窒素ガスとが反応してAlNウィスカー100が成長する。
4−1.AlNウィスカーの純度
本実施形態の技術においては、特開2014−073951号公報の技術のように、TiやSiを成長活性剤として用いない。金属を触媒としないため、AlNウィスカー100の周囲に金属の塊が発生するおそれがほとんどない。また、原材料のAl材料は純度の高いAlである。そのため、AlNウィスカー100に不純物がほとんど混入しない。したがって、高純度なAlNウィスカー100を製造することができる。本実施形態においては、Al2 O3 が触媒に似た働きをしていると考えられる。
また、AlNウィスカー100にAlNの粉末がほとんど混入しない。そのため、原材料に対するAlNウィスカー100の収率は非常に高い。
本実施形態では材料収容部1200と反応室1300とが別々に配置されている。つまり、Alガスの発生箇所とAlNの発生箇所とが異なっている。そして、材料収容部1200の内圧は、反応室1300の内圧よりも高い。そのため、窒素ガスは材料収容部1200にほとんど入らない。したがって、溶融しているAl材料の表面が窒化されることはほとんどない。つまり、Al材料を長時間にわたって反応室1300に供給することができる。ゆえに、本実施形態では、長さの長いAlNウィスカーを製造することができる。
5−1.開口部のシャッター
連通部1220は、材料収容部1200と反応室1300との間に位置している。連通部1220の開口部1220aまたは開口部1220bに開閉可能なシャッターを設けてもよい。シャッターは、開口部1220aまたは開口部1220bを開いた状態と閉じた状態とのいずれかの状態にする開閉部である。これにより、Alガスが反応室1300の内部に流入する時期を調整することができる。
図2に示すように、材料収容部1200は、炉本体1100の内部に配置されている。しかし、材料収容部1200と反応室1300とを別体としてもよい。この場合には、製造装置1000は、材料収容部1200を加熱する第1の加熱部と、反応室1300を加熱する第2の加熱部と、を有する。これにより、材料収容部1200と反応室1300とを別々に加熱することができる。つまり、Alガスの蒸発させる温度と、反応室1300の炉内温度と、を別々に設定することができる。
本実施形態のAl2 O3 基板1310はアルミナ基板である。Al2 O3 基板1310は、サファイア基板であってもよい。そのため、Al2 O3 基板はアルミナ基板とサファイア基板とを含む。また、絶縁性基材は、AlN多結晶基板であってもよい。
本実施形態では、工業的に製錬されたアルミニウムであるAl材料を用いる。しかし、このような純度の高いAl材料の代わりにAl合金を用いてもよい。このようにAl原子を含むAl含有材料を用いてもAlNウィスカー100を製造することができる。ただし、工業的に製錬されたアルミニウムを用いたほうが、製造されるAlNウィスカー100に不純物が混じりにくい。
上記の変形例について、自由に組み合わせてもよい。
本実施形態のAlNウィスカー100の製造方法は、材料収容部1200の内部でAlガスを発生させ、反応室1300の内部でAlガスと窒素ガスとを混合してAl2 O3 基板1310の表面からAlNウィスカー100を成長させる。これにより、AlNウィスカー100が製造される。
第2の実施形態について説明する。
図3は、本実施形態のAlNウィスカー構造体200の構造を示す部分断面図である。AlNウィスカー構造体200は、AlNウィスカー100と、AlN粒子210と、を有する。AlNウィスカー100は、AlN粒子210の表面211でAlN粒子210と連結されている。つまり、AlNウィスカー構造体200においては、AlNウィスカー100とAlN粒子210とは一体に形成されている。AlN粒子210の粒径は0.2μm以上10mm以下の程度である。
AlNウィスカー構造体200の製造方法は、第1の実施形態のAlNウィスカー100の製造方法とほぼ同じである。したがって、異なる点を説明する。
図4は、AlN粒子210を収容しているAlN粒子収容部B1を示す図である。本実施形態ではこのように、AlN粒子収容部B1の内部にAlN粒子210を収容する。そして、反応室1300の内部にAl2 O3 基板1310の代わりにAlN粒子収容部B1を配置する。つまり、本実施形態の絶縁性基材はAlN粒子210である。
そして、製造装置1000の容器1210の内部にAl材料を収容する。
そして、第1の実施形態のように、Al材料を気化させてAlガスを発生させるとともに、反応室1300の内部にAlガスを導入する。また、反応室1300の内部にアルゴンガスと窒素ガスとを導入する。これにより、図5に示すように、AlN粒子210の表面211からAlNウィスカー100が成長する。
本実施形態のAlNウィスカー構造体200は、AlNウィスカー100と、AlN粒子210と、を有する。そして、AlNウィスカー構造体200の重心は、AlN粒子210の近傍にある。そのため、AlNウィスカー構造体200のAlN粒子210の側を第1面(表面)とし、AlNウィスカー100の側を第2面(裏面)として平坦な樹脂を成形しやすい。これにより、表面から裏面にかけて熱伝導パスが形成された樹脂を製造することができる。
4−1.絶縁性基材
絶縁性基材としてAlN粒子の代わりにAl2 O3 粒子を用いてもよい。このように、第1の実施形態およびその変形例で説明したように、絶縁性基材は、Al2 O3 基板と、AlN多結晶基板と、AlN粒子と、Al2 O3 粒子と、のうちのいずれかであるとよい。このように絶縁性基材は、Al原子を含有する材料であるとよい。
絶縁性基材は、カーボン基材を覆っているものであってもよい。例えば、カーボン基板の上にAlN多結晶とAlN粒子との少なくとも一方が形成されていてもよい。この場合のAlNウィスカー構造体は、カーボン基材と、カーボン基材の表面に形成されたAlN多結晶またはAlN粒子と、AlN多結晶またはAlN粒子の表面でAlN多結晶またはAlN粒子と連結されているAlNウィスカーと、を有する。
上記の変形例について、自由に組み合わせてもよい。また、第1の実施形態およびその変形例と第2の実施形態およびその変形例とを組み合わせてもよい。
1−1.実験手順
製造装置1000の材料収容部1200の内部にAl材料を収容する容器1210を配置する。次に、炉本体1100の内部を500Pa程度に真空引きする。そして、アルゴンガスで炉本体1100の内部を充填する。そして、材料収容部1200および反応室1300を1700℃に加熱するとともに反応室1300の内部に窒素ガスを導入する。処理時間は2時間程度である。
図6は、Al2 O3 基板の上に成長させたAlNウィスカーを示す写真である。図6に示すように、大量のAlNウィスカーが基板上に成長している。
2−1.実験手順
製造装置1000の材料収容部1200の内部に容器1210を配置する。容器1210の内部にAlN粒子を収容する。AlN粒子の粒径は0.2μm以上10mm以下の程度である。次に、炉本体1100の内部を500Pa程度に真空引きする。そして、アルゴンガスで炉本体1100の内部を充填する。そして、材料収容部1200および反応室1300を1700℃に加熱するとともに反応室1300の内部に窒素ガスを導入する。処理時間は2時間程度である。
図7は、AlN粒子の上に成長させたAlNウィスカー(AlNウィスカー構造体)を示す走査型顕微鏡写真(その1)である。図7に示すように、AlN粒子の表面の一部から繊維状のなめらかなAlNウィスカーが成長している。
3−1.実験手順
製造装置1000の材料収容部1200の内部に容器1210を配置する。容器1210の内部にアルミナ粒子を収容する。アルミナ粒子の粒径は0.2μm以上10mm以下の程度である。次に、炉本体1100の内部を500Pa程度に真空引きする。そして、アルゴンガスで炉本体1100の内部を充填する。そして、材料収容部1200および反応室1300を1700℃に加熱するとともに反応室1300の内部に窒素ガスを導入する。処理時間は2時間程度である。
図9は、アルミナ粒子の上に成長させたAlNウィスカー(AlNウィスカー構造体)を示す走査型顕微鏡写真(その1)である。図9に示すように、アルミナ粒子の表面から比較的まっすぐなAlNウィスカーが成長している。
4−1.実験手順
製造装置1000のAl2 O3 基板1310の代わりに、AlN多結晶膜を形成済みのカーボン基板を配置する。そして、実験1と同様にAlN多結晶膜の上にAlNウィスカーを成長させる。
この場合であっても、AlN多結晶の表面からAlNウィスカーが形成される。
種々の絶縁性基材からAlNウィスカーを成長させることができた。AlNウィスカーは、AlN粒子もしくはアルミナ粒子における特定の面、例えば(0001)面から発生しているようである。そのため、AlN粒子もしくはアルミナ粒子の結晶面とAlNウィスカーの結晶面とはほとんど一致する。したがって、AlN粒子もしくはアルミナ粒子とAlNウィスカーとの間で格子欠陥はほとんどないものと考えられる。つまり、AlNウィスカー構造体の熱伝導性はよいといえる。
110…中心部
120…表面層
200…AlNウィスカー構造体
210…AlN粒子
211…表面
1000…製造装置
1100…炉本体
1200…材料収容部
1210…容器
1220…連通部
1220a、1220b…開口部
1230…ガス導入口
1300…反応室
1310…Al2 O3 基板
1320、1330…ガス導入口
1340…排気口
1400…ヒーター
1500…窒素ガス供給部
1600…アルゴンガス供給部
Claims (9)
- 第1室の内部でAl含有材料を加熱してAlガスを発生させ、
第1の導入口から第2室に前記Alガスを導入するとともに第2の導入口から前記第2室に窒素ガスを導入し、
前記第2室の内部に配置された絶縁性基材の表面からAlNウィスカーを成長させること
を特徴とするAlNウィスカーの製造方法。 - 請求項1に記載のAlNウィスカーの製造方法において、
前記絶縁性基材は、
Al2 O3 基板と、AlN多結晶基板と、Al2 O3 粒子と、AlN粒子と、のうちのいずれかであること
を特徴とするAlNウィスカーの製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載のAlNウィスカーの製造方法において、
前記AlNウィスカーを成長させる際の前記第2室の雰囲気温度を1500℃以上1800℃以下とすること
を特徴とするAlNウィスカーの製造方法。 - Al含有材料を収容する材料収容部と、
AlNウィスカーを成長させる反応室と、
少なくとも前記材料収容部を加熱する第1の加熱部と、
を有し、
前記反応室は、
1以上の絶縁性基材を有し、
前記第1の加熱部は、
前記材料収容部に収容されている前記Al含有材料を加熱し、
前記材料収容部と前記反応室との間に、
前記材料収容部と前記反応室とを連通する1以上の連通部を有すること
を特徴とするAlNウィスカーの製造装置。 - 請求項4に記載のAlNウィスカーの製造装置において、
前記第1の加熱部は、
前記反応室を加熱すること
を特徴とするAlNウィスカーの製造装置。 - 請求項4に記載のAlNウィスカーの製造装置において、
前記反応室を加熱する第2の加熱部を有すること
を特徴とするAlNウィスカーの製造装置。 - 請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載のAlNウィスカーの製造装置において、
前記1以上の連通部の開口部を開いた状態または閉じた状態にする開閉部を有すること
を特徴とするAlNウィスカーの製造装置。 - 請求項4から請求項7までのいずれか1項に記載のAlNウィスカーの製造装置において、
前記材料収容部は、
前記反応室からみて鉛直下方側の位置に配置されていること
を特徴とするAlNウィスカーの製造装置。 - カーボン基材と、
前記カーボン基材の表面に形成されたAlN多結晶またはAlN粒子と、
前記AlN多結晶または前記AlN粒子の表面で前記AlN多結晶または前記AlN粒子と連結されているAlNウィスカーと、
を有するAlNウィスカー構造体。
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