以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本明細書では、基板の周縁部を、基板の最外周に位置するベベル部と、このベベル部の半径方向内側に位置するトップエッジ部およびボトムエッジ部と、結晶方位を特定するために基板の周縁部に形成されたノッチ部とを含む領域として定義する。
図1(a)および図1(b)は、基板の周縁部を示す拡大断面図である。より詳しくは、図1(a)はいわゆるストレート型の基板の断面図であり、図1(b)はいわゆるラウンド型の基板の断面図である。図1(a)の基板Wにおいて、ベベル部は、上側傾斜部(上側ベベル部)P、下側傾斜部(下側ベベル部)Q、および側部(アペックス)Rから構成される基板Wの最外周面(符号Bで示す)である。図1(b)の基板Wにおいては、ベベル部は、基板Wの最外周面を構成する、湾曲した断面を有する部分(符号Bで示す)である。トップエッジ部は、ベベル部Bよりも半径方向内側に位置する平坦部E1である。ボトムエッジ部は、トップエッジ部とは反対側に位置し、ベベル部Bよりも半径方向内側に位置する平坦部E2である。トップエッジ部E1は、デバイスが形成された領域を含むこともある。
図2は、基板のノッチ部を模式的に示す平面図である。図2の基板Wにおいてノッチ部は、符号Nで示す周縁部に形成された切り欠きである。基板の周縁部を研磨する研磨装置は、ベベル部を研磨するベベル研磨装置とノッチ部を研磨するノッチ研磨装置に大別することができる。
図3は、研磨装置の一実施形態を示す模式図である。図3に示す研磨装置は、基板の周縁部であるベベル部を研磨するベベル研磨装置に好適に使用される。図3に示すように、研磨装置は、研磨対象物である基板Wを保持し、回転させる基板保持部10と、基板保持部10に保持された基板Wのベベル部を研磨して基板Wのベベル部から異物や傷を除去する研磨ヘッド組立体49とを備えている。
図3においては、基板保持部10が基板Wを保持している状態を示している。基板保持部10は、基板Wを真空吸着により保持する保持ステージ4と、保持ステージ4の中央部に連結されたシャフト5と、このシャフト5の下端に連結された保持ステージ駆動機構7とを備えている。
保持ステージ駆動機構7は、保持ステージ4を回転させ、かつ上下動させるための図示しないモータおよびエアシリンダを備えている。すなわち、保持ステージ駆動機構7は、保持ステージ4を、その軸心Crを中心に回転させ、軸心Crに沿って上下方向に移動させることが可能に構成されている。
基板Wは、図示しない搬送機構により、基板Wの中心O1が保持ステージ4の軸心Cr上にあるように保持ステージ4の上面に載置される。基板Wは、その表面(デバイス面)が上向きの状態で保持ステージ4の上面に保持される。このような構成により、基板保持部10は、基板Wを保持ステージ4の軸心Cr(すなわち基板Wの軸心)を中心に回転させ、かつ基板Wを保持ステージ4の軸心Crに沿って上昇下降させることができる。
研磨ヘッド組立体49は、基板保持部10に保持された基板Wのベベル部に研磨具の一例である研磨テープ31を接触させて基板Wのベベル部を研磨する研磨ヘッド50と、研磨具支持構造体を基板Wに対して相対的に円運動させる円運動機構61を備えている。本明細書において、研磨具支持構造体は、研磨具を支持し、研磨ヘッド50の少なくとも一部を構成する構造体と定義される。本実施形態では、研磨具は研磨テープ31であり、研磨具支持構造体は研磨ヘッド50の全体である。研磨ヘッド50は、基板保持部10に基板Wが保持されているとき、基板Wの周縁部を向いている。
図4は、研磨具支持構造体を円運動させるための円運動機構61の一実施形態を示す模式図である。図4に示す円運動機構61は、モータ62と、モータ62の回転軸63に固定された偏心回転体65と、偏心回転体65に軸受67を介して連結されたテーブル69と、テーブル69を支持する複数のクランク70を備えている。図4では1つのクランク70のみが図示されているが、少なくとも3つのクランク70が偏心回転体65の周りに配列されている。モータ62は、基台71に固定されている。
偏心回転体65の軸心65aは、モータ62の回転軸63の軸心63aから距離eだけ離れている。よって、モータ62が作動すると、偏心回転体65は半径eの円運動を行う。クランク70は、互いに固定された第1軸体72と第2軸体73を有する。第1軸体72の軸心72aと第2軸体73の軸心73aも、同様に、距離eだけ離れている。第1軸体72は、テーブル69に保持された軸受75によって回転可能に支持されており、第2軸体73は軸受77によって回転可能に支持されている。軸受77は、基台71に固定された支持部材79に固定されている。
上記構成によれば、モータ62が回転すると、偏心回転体65が半径eの円運動を行い、軸受67を介して偏心回転体65に連結されたテーブル69も半径eの円運動を行う。本明細書において、円運動は、対象物が円軌道上を移動する運動と定義される。
テーブル69は、複数のクランク70によって支持されているので、テーブル69が円運動を行っているとき、テーブル69自体は回転しない。このようなテーブル69の運動は、並進回転運動とも呼ばれる。本明細書において、対象物自体は回転せずに、対象物が円軌道上を移動する運動は、並進回転運動と定義される。この並進回転運動は、円運動の1つの具体例である。本実施形態では、研磨ヘッド50は、保持部材89を介してテーブル69に固定される。よって、研磨ヘッド50は、テーブル69とともに円運動(並進回転運動)を行う。本実施形態では、円運動機構61は、研磨具支持構造体(研磨ヘッド50全体)を並進回転運動させる並進回転機構である。本実施形態の円運動(並進回転運動)は、研磨ヘッド50の向きを法線方向とする平面内での円運動(並進回転運動)である。
図3に戻り、本実施形態の研磨装置は、隔壁100と、研磨テープ31を研磨ヘッド50に供給し、かつ研磨ヘッド50から回収する研磨具供給回収機構41と、基板Wの表面に液体を供給する液体供給ノズル28とをさらに備えている。基板保持部10、研磨ヘッド組立体49、液体供給ノズル28は、隔壁100の内部に配置され、研磨具供給回収機構41は隔壁100の外に配置されている。
本実施形態では、研磨具として、砥粒を表面に有する研磨テープ31が使用されている。図5は、研磨テープ31の一例を示す模式図である。図5に示す研磨テープ31は、基材テープ33と、研磨層35とを有する。基材テープ33の表面は、研磨層35で覆われている。研磨層35は、砥粒37と、砥粒37を保持するバインダ(樹脂)39とを有する。研磨層35の表面は、基板Wを研磨するための研磨面を構成する。図6は、研磨テープ31の他の例を示す模式図である。図6に示す研磨テープ31は、基材テープ33と、研磨層35と、これらの間に位置する弾性層40とを有する。弾性層40は、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエステル、またはナイロンからなる不織布、もしくはシリコンゴムなどの弾性材料から構成されている。
図3に戻り、研磨具供給回収機構41は、研磨テープ31を研磨ヘッド50に供給する供給リール43と、基板Wの研磨に使用された研磨テープ31を回収する回収リール44とを備えている。供給リール43および回収リール44には図示しないテンションモータがそれぞれ連結されている。それぞれのテンションモータは、供給リール43および回収リール44に所定のトルクを与え、研磨テープ31に所定のテンションを掛けることができるようになっている。
研磨テープ31は、研磨テープ31の研磨面が基板Wのベベル部の被研磨面を向くように研磨ヘッド50に供給される。研磨テープ31は、隔壁100に設けられた開口部(図示せず)を通して供給リール43から研磨ヘッド50へ供給され、使用された研磨テープ31は開口部を通って回収リール44に回収される。
研磨ヘッド50は、研磨テープ31を基板Wのベベル部に対して押圧する押圧機構52を備えている。研磨テープ31は、押圧機構52の端面を通るように供給される。本実施形態では、押圧機構52は、研磨テープ31の裏面を支持する押圧パッド52aと、押圧パッド52aに連結されたエアシリンダ52bとを備える。一実施形態では、研磨具は、研磨テープ31に代えて、砥石であってもよい。この場合、砥石は押圧機構52を構成するエアシリンダ52bに保持され、研磨具供給回収機構41および押圧パッド52aは省略することができる。
押圧機構52は、研磨テープ31をその裏側から押圧し、研磨テープ31の研磨面を基板Wのベベル部に接触させることによって基板Wのベベル部を研磨する。研磨ヘッド50は、研磨テープ31を支持するための複数のガイドローラ53a,53b,53c,53d,53e,53fをさらに備えている。研磨具供給回収機構41は、研磨テープ31を支持するための複数のガイドローラ53g,53hをさらに備えている。研磨テープ31の進行方向は、ガイドローラ53a,53b,53c,53d,53e,53f,53g,53hによってガイドされる。特に、研磨ヘッド50の先端に配置されたガイドローラ53a,53cは、基板Wのベベル部の被研磨面と平行な方向に研磨テープ31が進行するように研磨テープ31をガイドする。
液体供給ノズル28は、基板保持部10に保持された基板Wの上方に配置されている。液体供給ノズル28は、図示しない液体供給源に接続されている。液体供給ノズル28は基板Wの中心O1を向いて配置されており、液体は液体供給ノズル28から基板Wの表面に供給される。基板Wの表面に供給された液体は、遠心力により基板Wの表面全体に広がり、基板Wのベベル部上に液体の流れを形成する。基板Wのベベル部は液体の存在下で研磨される。液体は、基板Wの周縁部から下方に流れ落ち、これにより研磨屑を基板Wのベベル部から除去することができる。また、上述の液体は、基板Wの研磨で生じた研磨屑や異物を含む液体が基板Wの表面に付着することを防止する。その結果、基板Wの表面を清浄に保つことができる。本実施形態において、上述の液体としては、純水またはアルカリ水が使用される。
図7は、図3に示す研磨ヘッド組立体49を上方から見た模式図である。図7に示すように、研磨ヘッド組立体49は、研磨ヘッド50を基板保持部10上の基板Wの表面に対して傾斜させるチルト機構81をさらに備えている。円運動機構61は、チルト機構81に固定されており、研磨ヘッド50は保持部材89を介して円運動機構61に固定されている。研磨ヘッド50は円運動機構61に直接固定されてもよい。
チルト機構81は、回転駆動装置82と、クランクアーム85とを備えている。回転駆動装置82は、図示しないモータ、プーリー、ベルトなどを備えている。クランクアーム85の一端は円運動機構61に連結され、その他端は回転駆動装置82に連結されている。クランクアーム85は、回転駆動装置82の回転軸線Ctを中心に回転される。回転軸線Ctは、基板保持部10上の基板Wの接線方向に延びている。回転駆動装置82がクランクアーム85を回転軸心Ctを中心に時計回りおよび反時計回りに所定の角度だけ回転させると、クランクアーム85に連結された円運動機構61および研磨ヘッド50も回転軸線Ctを中心に時計回りおよび反時計回りに所定の角度だけ回転する。
回転駆動装置82の回転軸線Ctの延長線上には、研磨ヘッド50に支持された研磨テープ31の研磨面が位置している。したがって、回転駆動装置82を駆動させると、研磨ヘッド50は研磨テープ31の研磨面を中心に時計回りおよび反時計回りに所定の角度だけ回転する。
このように研磨ヘッド50を回転軸線Ctを中心に回転させることにより、研磨ヘッド50の基板Wのベベル部に対する角度を変えることができる。回転駆動装置82には、サーボモータやステッピングモータなどの位置や速度を精密に制御できるモータが採用されており、研磨ヘッド50はプログラムされた所望の角度へ所望の速度で回転可能に構成されている。
図8は、チルト機構81によって研磨ヘッド50および円運動機構61を上方に傾けた状態を示す模式図であり、図9は、チルト機構81によって研磨ヘッド50および円運動機構61を下方に傾けた状態を示す模式図である。図8では、研磨テープ31は、基板Wのベベル部の下側領域に接触しており、図9では、研磨テープ31は、基板Wのベベル部の上側領域に接触している。このように、基板Wのベベル部に沿って研磨ヘッド50の角度を変えることにより、基板Wのベベル部の全体を研磨することができる。また、ベベル部の断面形状が曲率を持ったものである場合は、研磨ヘッド50の角度を細かく変化させて研磨することや、研磨ヘッド50の回転速度を緩やかにして連続的に研磨ヘッド50の角度を変化させることも可能である。
図7に示すように、研磨ヘッド組立体49は研磨ヘッド移動機構105に連結されている。研磨ヘッド移動機構105は、チルト機構81の回転駆動装置82に固定されており、研磨ヘッド50は、チルト機構81および円運動機構61を介して研磨ヘッド移動機構105に連結されている。研磨ヘッド移動機構105は、研磨ヘッド組立体49を基板Wの半径方向に移動させることが可能に構成されている。研磨ヘッド移動機構105は、エアシリンダなどのリニアアクチュエータから構成することができる。研磨ヘッド移動機構105は、図3に示す動作制御部180に電気的に接続されており、動作制御部180によって動作を制御される。
基板Wが基板保持部10の保持ステージ4上に搬送されるとき、および基板Wが基板保持部10の保持ステージ4から取り出されるときは、研磨ヘッド移動機構105は研磨ヘッド組立体49を保持ステージ4から離れる方向に移動させる。保持ステージ4に保持された基板Wのベベル部が研磨されるときは、研磨ヘッド移動機構105は研磨ヘッド組立体49を基板Wに向けて移動させる。
本実施形態の研磨装置は、1組の研磨ヘッド組立体49および研磨具供給回収機構41を備えているが、一実施形態では、2組またはそれよりも多い研磨ヘッド組立体49および研磨具供給回収機構41を備えてもよい。一実施形態では、2つ以上の液体供給ノズル28を備えてもよい。
次に、本実施形態の研磨装置の動作について説明する。以下に説明する研磨装置の動作は、図3に示す動作制御部180によって制御される。動作制御部180は、基板保持部10、研磨ヘッド組立体49、研磨具供給回収機構41に電気的に接続されている。基板保持部10、液体供給ノズル28、研磨ヘッド組立体49、研磨具供給回収機構41の動作は動作制御部180によって制御される。動作制御部180は、専用のコンピュータまたは汎用のコンピュータから構成される。
研磨される基板Wは、図示しない搬送機構により、表面(デバイス面)が上向きの状態で、かつ基板Wの中心O1が保持ステージ4の軸心Cr上に位置するように保持ステージ4により保持される。そして基板Wは、保持ステージ4の軸心Cr(すなわち基板Wの軸心)を中心に回転される。次に、液体供給ノズル28から基板Wの表面に液体が供給される。基板Wの表面に供給された液体は、遠心力により基板Wの表面全体に広がり、基板Wのベベル部上に液体の流れを形成する。
研磨テープ31は、予め研磨ヘッド50に供給されている。動作制御部180は、研磨具供給回収機構41を駆動し、所定のテンションを掛けながら研磨テープ31を押圧機構52の端面と平行な方向に進行させる。
そして、基板Wの表面に液体を供給しながら、かつ研磨テープ31を回転する基板Wのベベル部に接触させながら、円運動機構61によって研磨具支持構造体(研磨ヘッド50全体)を円運動させて基板Wのベベル部を研磨する。研磨ヘッド50全体を円運動させることによって、研磨テープ31を基板Wのベベル部に対して相対運動させる。これにより、研磨テープ31を有効に使用することができ、研磨速度を上げ、研磨中の研磨テープ31の目詰まりを防ぐことができる。さらには、研磨テープ31を有効に使用することができるため、研磨テープ31の使用量を削減し、研磨テープ31の寿命を向上させることができる。一実施形態では、チルト機構81によって研磨ヘッド50の基板Wに対する角度を変化させながら、研磨ヘッド50全体を円運動させて基板Wのベベル部を研磨してもよい。
動作制御部180は、予め設定された時間が経過した後、基板保持部10、研磨ヘッド組立体49、および研磨具供給回収機構41の動作を停止させ、研磨を終了する。
図10は、研磨装置の他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図3乃至図9を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、円運動機構61は押圧機構52に連結されている。より具体的には、押圧パッド52aは、保持部材90を介して円運動機構61のテーブル69(図4参照)に固定されており、円運動機構61はエアシリンダ52bに連結されている。円運動機構61は、押圧機構52に組み込まれている。このような構成により、エアシリンダ52bが円運動機構61および押圧パッド52aを基板Wのベベル部に向かって押しながら、円運動機構61は押圧パッド52aを円運動(並進回転運動)させることができる。本実施形態では、研磨具は研磨テープ31である。また、本実施形態では、研磨具支持構造体は押圧機構52であり、より具体的には押圧パッド52aである。
本実施形態では、円運動機構61は、押圧パッド52aを並進回転運動させる並進回転機構である。本実施形態の円運動(並進回転運動)は、研磨ヘッド50の向きを法線方向とする平面内での円運動(並進回転運動)である。本実施形態においても、押圧パッド52aを円運動させることによって、研磨テープ31を基板Wのベベル部に対して相対運動させることができる。
一実施形態では、円運動機構61はエアシリンダ52bに連結され、押圧パッド52aおよびエアシリンダ52bを含む押圧機構52の全体を円運動させてもよい。この場合は、研磨具支持構造体は、押圧機構52の全体である。
図11は、研磨装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図3乃至図9を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図11に示す研磨装置のガイドローラ53a,53cは、円運動機構61に連結されている。より具体的には、ガイドローラ53a,53cは、保持部材91を介して円運動機構61のテーブル69(図4参照)に固定される。よって、ガイドローラ53a,53cは、円運動機構61によって円運動(並進回転運動)を行う。すなわち、ガイドローラ53a,53cは、テーブル69の動きに同期して同じ円運動を行う。
本実施形態では、円運動機構61は、ガイドローラ53a,53cを並進回転運動させる並進回転機構である。本実施形態の円運動(並進回転運動)は、研磨ヘッド50の向きを法線方向とする平面内での円運動(並進回転運動)である。本実施形態においても、ガイドローラ53a,53cを円運動させることによって、研磨テープ31を基板Wのベベル部に対して相対運動させることができる。本実施形態では、研磨具は研磨テープ31であり、研磨具支持構造体はガイドローラ53a,53cである。
図12は、研磨装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図3乃至図9を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図12に示す研磨装置は、基板の周縁部であるノッチ部を研磨するノッチ研磨装置に好適に使用される。図12に示すように、研磨装置は、研磨対象物である基板Wを保持し、回転させる基板保持部110と、基板保持部110に保持された基板Wのノッチ部を研磨して基板Wのノッチ部から異物や傷を除去する研磨ヘッド組立体149と、基板Wを平面内でノッチ部を中心としてスイングさせるスイング機構120とを備えている。
図12においては、基板保持部110が基板Wを保持している状態を示している。基板保持部110は、基板Wを真空吸着により保持する保持ステージ114と、保持ステージ114の中央部に連結された第1のシャフト115と、この第1のシャフト115の下端に連結された第1の保持ステージ駆動機構117とを備えている。第1の保持ステージ駆動機構117は、保持ステージ114を回転させ、かつ上下動させるための図示しないモータおよびエアシリンダを備えている。第1の保持ステージ駆動機構117は、保持ステージ114を、その軸心Cpを中心に回転させ、軸心Cpに沿って上下方向に移動させることが可能に構成されている。
スイング機構120は、第2のシャフト125と、第2の保持ステージ駆動機構127と、スイングアーム130を備えている。基板保持部110の第1の保持ステージ駆動機構117は、スイングアーム130によって第2のシャフト125に連結されている。すなわち、スイングアーム130の一端は第1の保持ステージ駆動機構117に固定され、スイングアーム130の他端は第2のシャフト125に固定されている。第2の保持ステージ駆動機構127は、図示しないモータを備えている。第2のシャフト125およびスイングアーム130は、第2の保持ステージ駆動機構127によって、第2のシャフト125の軸心Cqを中心に回転可能に構成されている。第1のシャフト115および第2のシャフト125は互いに平行に延びている。
第2の保持ステージ駆動機構127は第2のシャフト125およびスイングアーム130を時計回りおよび反時計回りに所定の角度だけ回転させるように構成されている。第2の保持ステージ駆動機構127が第2のシャフト125およびスイングアーム130を時計回りおよび反時計回りに回転させると、基板保持部110も時計回りおよび反時計回りに所定の角度だけ回転する。第1のシャフト115の軸心Cpは、第2のシャフト125の軸心Cqから距離dだけ離れており、第2のシャフト125の軸心Cqの延長線上には、保持ステージ114に保持された基板Wのノッチ部が位置している。
図13は、スイング機構120を駆動したときの基板Wの動作を基板Wの上方から見た模式図である。図13に示すように、第2の保持ステージ駆動機構127を駆動させると、基板Wは平面内でノッチ部を中心に時計回りおよび反時計回りに所定の角度だけ回転する(すなわちスイングする)ように構成されている。
図12に戻り、第2の保持ステージ駆動機構127は、第2のシャフト125、スイングアーム130、および基板保持部110を上下動させるための図示しないエアシリンダをさらに備えている。すなわち、第2の保持ステージ駆動機構127は、第2のシャフト125、スイングアーム130、および基板保持部110を軸心Cq,Cpに沿って上下方向に移動させることが可能に構成されている。
基板Wは、図示しない搬送機構により、基板Wの中心O1が保持ステージ114の軸心Cp上にあるように保持ステージ114の上面に載置される。基板Wは、表面(デバイス面)が上向きの状態で保持ステージ114の上面に保持される。このような構成により、基板保持部110は、基板Wを保持ステージ114の軸心Cp(すなわち基板Wの軸心)を中心に回転させることができ、第2の保持ステージ駆動機構127は、基板Wを基板保持部110と共に、保持ステージ114の軸心Cpに沿って上昇下降させることができる。
本実施形態の研磨ヘッド組立体149は、基板保持部110に保持された基板Wのノッチ部に研磨具の一例である研磨テープ160を接触させて基板Wのノッチ部を研磨する研磨ヘッド150と、研磨具支持構造体を基板Wに対して円運動させる円運動機構61を備えている。研磨ヘッド150の基本的構成は、図3に示す研磨ヘッド150と同様であるが、研磨ヘッド150は、押圧機構52を備えていない点で研磨ヘッド150と異なっている。
円運動機構61の構成および動作は、図4に示す円運動機構61の構成および動作を同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、研磨ヘッド150は、保持部材89を介して円運動機構61のテーブル69(図4参照)に固定される。本実施形態においても、研磨具支持構造体は、研磨具を支持し、研磨ヘッド150の少なくとも一部を構成する構造体と定義される。本実施形態では、研磨具は研磨テープ160であり、研磨具支持構造体は研磨ヘッド150の全体である。研磨ヘッド150は、基板保持部110に基板Wが保持されているとき、基板Wの周縁部を向いている。
研磨テープ160の基本的構成は、図5および図6に示す研磨テープ31の構成と同じであるが、研磨テープ160は、ノッチ部に入り込む必要があるため、図3に示す実施形態で使用される研磨テープ31よりも狭い幅を有している。研磨テープ160の研磨面は、研磨テープ31と同じように、砥粒を有する研磨層の表面から構成される。
本実施形態の研磨装置は、隔壁190と、研磨テープ160を研磨ヘッド150に供給し、かつ研磨ヘッド150から回収する研磨具供給回収機構141と、基板Wの表面に液体を供給する液体供給ノズル128とをさらに備えている。液体供給ノズル128は、保持部材129を介してスイング機構120の第2のシャフト125に接続されており、保持ステージ114と一体に基板Wのノッチ部を中心として所定の角度だけ回転するようになっている。本実施形態では、基板保持部110、研磨ヘッド組立体149、第2のシャフト125、スイングアーム130、液体供給ノズル128は隔壁190の内部に配置され、研磨具供給回収機構141および第2の保持ステージ駆動機構127は隔壁190の外に配置されている。
研磨具供給回収機構141は、研磨テープ160を研磨ヘッド150に供給する供給リール143と、基板Wの研磨に使用された研磨テープ160を回収する回収リール144とを備えている。供給リール143および回収リール144には図示しないテンションモータがそれぞれ連結されている。それぞれのテンションモータは、供給リール143および回収リール144に所定のトルクを与え、研磨テープ160に所定のテンションを掛けることができるようになっている。
研磨テープ160は、研磨テープ160の研磨面が基板Wのノッチ部の被研磨面を向くように研磨ヘッド150に供給される。研磨テープ160は、隔壁190に設けられた開口部(図示せず)を通して供給リール143から研磨ヘッド150へ供給され、使用された研磨テープ160は開口部を通って回収リール144に回収される。
研磨ヘッド150は、研磨テープ160を支持するための複数のガイドローラ153a,153b,153c,153d,153e,153fを備えている。研磨具供給回収機構141は、研磨テープ160を支持するための複数のガイドローラ153g,153hをさらに備えている。研磨テープ160の進行方向は、ガイドローラ153a,153b,153c,153d,153e,153f,153g,153hによってガイドされる。特に、研磨ヘッド150の先端に配置されたガイドローラ153a,153cは、基板Wのノッチ部の被研磨面と平行な方向に研磨テープ160が進行するように研磨テープ160をガイドする。研磨ヘッド150は、ガイドローラ153a,153cの間を延びる研磨テープ160を基板Wのノッチ部に接触させることによって、基板Wのノッチ部を研磨する。
液体供給ノズル128は、保持ステージ114の外側に配置されている。液体供給ノズル128は、図示しない液体供給源に接続されている。液体供給ノズル128は基板Wの中心O1を向いて配置されている。液体は液体供給ノズル128から基板Wの表面に供給され、基板Wのノッチ部上に液体の流れを形成する。基板Wのノッチ部は液体の存在下で研磨される。液体は、基板Wの周縁部から下方に流れ落ち、これにより研磨屑を基板Wのノッチ部から除去することができる。また、上述の液体は、基板Wの研磨で生じた研磨屑や異物を含む液体が基板Wの表面に付着することを防止する。その結果、基板Wの表面を清浄に保つことができる。本実施形態において、上述の液体としては、純水またはアルカリ水が使用される。
図13に示すように、研磨ヘッド組立体149は、チルト機構81をさらに備えている。このチルト機構81の構成および動作は、図7に示すチルト機構81と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図14は、チルト機構81によって研磨ヘッド150および円運動機構61を上方に傾けた状態を示す模式図であり、図15は、チルト機構81によって研磨ヘッド150および円運動機構61を下方に傾けた状態を示す模式図である。図14に示す実施形態では、研磨テープ160は、基板Wのノッチ部の下側領域に接触しており、図15に示す実施形態では、研磨テープ160は、基板Wのノッチ部の上側領域に接触している。このように、基板Wのノッチ部に沿って研磨ヘッド150の角度を変えることにより、基板Wのノッチ部の全体を研磨することができる。また、ノッチ部の断面形状が曲率を持ったものである場合は、研磨ヘッド150の角度を細かく変化させて研磨することや、研磨ヘッド150の回転速度を緩やかにして連続的に研磨ヘッド150の角度を変化させることも可能である。
図13に示すように、研磨ヘッド組立体149は研磨ヘッド移動機構155に連結されている。研磨ヘッド移動機構155は、チルト機構81の回転駆動装置82に固定されており、研磨ヘッド150は、チルト機構81および円運動機構61を介して研磨ヘッド移動機構155に連結されている。研磨ヘッド移動機構155は、研磨ヘッド組立体149を基板Wの半径方向に移動させることが可能に構成されている。研磨ヘッド移動機構155は、エアシリンダなどのリニアアクチュエータから構成することができる。研磨ヘッド移動機構155は、図12に示す動作制御部180に電気的に接続されており、動作制御部180によって動作を制御される。
基板Wが基板保持部110の保持ステージ114上に搬送されるとき、および基板Wが基板保持部110の保持ステージ114から取り出されるときは、研磨ヘッド移動機構155は研磨ヘッド組立体149を保持ステージ114から離れる方向に移動させる。保持ステージ114上に保持された基板Wのノッチ部が研磨されるときは、研磨ヘッド移動機構155は研磨テープ160がノッチ部に接触するまで、研磨ヘッド組立体149を基板Wに向けて移動させる。
本実施形態の研磨装置は、1組の研磨ヘッド組立体149および研磨具供給回収機構141を備えているが、一実施形態では、2組またはそれよりも多い研磨ヘッド組立体149および研磨具供給回収機構141を備えてもよい。さらに一実施形態では、2つ以上の液体供給ノズル128を備えてもよい。
次に、本実施形態の研磨装置の動作について説明する。以下に説明する研磨装置の動作は、図12に示す動作制御部180によって制御される。動作制御部180は、基板保持部110、スイング機構120、研磨ヘッド組立体149、研磨具供給回収機構141に電気的に接続されている。基板保持部110、スイング機構120、液体供給ノズル128、研磨ヘッド組立体149、研磨具供給回収機構141の動作は動作制御部180によって制御される。動作制御部180は、専用のコンピュータまたは汎用のコンピュータから構成される。
研磨される基板Wは、図示しない搬送機構により、表面(デバイス面)が上向きの状態で、かつ基板Wの中心O1が保持ステージ114の軸心Cpにあるように保持ステージ114により保持される。隔壁190の内部には、保持ステージ114に保持された基板Wのノッチ部を検出するノッチサーチユニット(図示せず)が設けられている。ノッチサーチユニットは、図示しないアクチュエータにより、ノッチサーチ位置と退避位置との間を移動するように構成されている。ノッチサーチユニットによりノッチ部が検出されると、ノッチ部が研磨ヘッド150の方を向くまで、保持ステージ114は、第1の保持ステージ駆動機構117によって回転される。さらに、液体供給ノズル128から基板Wの表面に液体が供給される。液体供給ノズル128は、基板Wの研磨中常に液体を供給し続ける。
研磨テープ160は、予め研磨ヘッド150に供給されている。研磨ヘッド移動機構155(図13参照)は研磨テープ160がノッチ部に接触するまで、研磨ヘッド150を基板Wに向けて移動させる。動作制御部180は、研磨具供給回収機構141を駆動し、所定のテンションを掛けながら研磨テープ160を基板Wのノッチ部の被研磨面と平行な方向に進行させる。
そして、スイング機構120を駆動し、基板Wを平面内でノッチ部を中心に時計回りおよび反時計回りに所定の角度だけ回転させる(スイングさせる)。研磨テープ160を基板Wのノッチ部に接触させながら、円運動機構61によって研磨具支持構造体(研磨ヘッド150全体)を円運動させて基板Wのノッチ部を研磨する。研磨ヘッド150全体を円運動させることによって、研磨テープ160を基板Wのノッチ部に対して相対運動させることができる。一実施形態では、チルト機構81によって研磨ヘッド150の角度を変化させながら、研磨ヘッド150全体を円運動させて基板Wのノッチ部を研磨してもよい。
動作制御部180は、予め設定された時間が経過した後、スイング機構120、研磨ヘッド組立体149、および研磨具供給回収機構141の動作を停止させ、研磨を終了する。
図16は、研磨装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図12乃至図15を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図16に示す研磨装置ガイドローラ153a,153cは、円運動機構61に連結されている。より具体的には、ガイドローラ153a,153cは、保持部材191を介して円運動機構61のテーブル69(図4参照)に固定される。本実施形態においても、ガイドローラ153a,153cを円運動させることによって、研磨テープ160を基板Wのノッチ部に対して相対運動させることができる。本実施形態では、研磨具は研磨テープ160であり、研磨具支持構造体はガイドローラ153a,153cである。
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。