JP6939877B2 - 帯電防止フィルム、偏光板、タッチパネル、及び液晶表示装置 - Google Patents

帯電防止フィルム、偏光板、タッチパネル、及び液晶表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、帯電防止フィルム、偏光板、タッチパネル、及び液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、高画質、薄型、軽量、低消費電力などの利点を有し、例えばテレビジョン、パーソナルコンピューター、カーナビゲーター等に広く用いられている。液晶表示装置では、透過軸が直交するように配置した2枚の偏光子(即ち、入射側偏光子及び出射側偏光子)の間に液晶セルを配置し、液晶セルに電圧を印加することにより液晶分子の配向を変化させて、画面に画像を表示させる。
また、近年、例えば携帯電話、タブレット型パーソナルコンピューター等の携帯端末において、タッチパネルを備えた液晶表示装置が広く用いられるようになってきた。タッチパネルを備える液晶表示装置では、タッチパネルに使用者が触れることによって、液晶表示装置を構成する部材に電荷が蓄積されることがある。このように蓄積された電荷は、タッチパネルの誤作動や液晶セルの液晶分子の駆動制御を乱し画質の低下を引き起こす可能性がある。そこで、前記のような電荷の蓄積を抑制するために、帯電防止フィルムを液晶表示装置に設けることが考えられる。
特許文献1には、基材フィルムと帯電防止層とを備え、ヘイズ値と表面抵抗値を所定の範囲とした帯電防止フィルムが記載されている。
国際公開第2016/063793号(対応公報:米国特許出願公開第2017/238403号明細書)
タッチパネルの誤作動を抑制し、さらに液晶セルの液晶分子の駆動制御の乱れを効果的に抑制して良好な画質を得るために、帯電防止フィルムは、一般に、液晶表示装置の表示範囲の全体にわたって設けられる。したがって、使用者は、帯電防止フィルムを通して液晶表示装置が表示する画像を視認する。そのため、帯電防止フィルムは透明性が高いことが好ましい。
しかし、特許文献1の技術のように、ヘイズ値と表面抵抗値を所定の範囲として優れた透明性と帯電防止性との両立を図ろうとすると、帯電防止フィルムの耐光性が悪化する場合があり、帯電防止フィルムを紫外線に暴露した後の抵抗値が暴露前と比較して大幅に上昇する場合があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ヘイズ値が低く透明性が良好でありながら、帯電防止性が良好であり、かつ耐光性に優れる帯電防止フィルム、該帯電防止フィルムを含む偏光板、該偏光板を含む液晶表示装置、該帯電防止フィルムを含むタッチパネル、さらには該帯電防止フィルムを含むタッチパネルを含む液晶表示装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、帯電防止フィルムの耐光性が、帯電防止層における残留二重結合率、及び金属酸化物粒子の含有率に関係することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は下記の通りである。
〔1〕 基材フィルムと、
基材フィルム上に設けられた帯電防止層と、を含む、
タッチパネルに用いられる帯電防止フィルムであって、
前記帯電防止層が、アクリレート系バインダー組成物と金属酸化物粒子とを含み、
前記帯電防止層が、式2.5<Dre<6.1を満たし、
前記帯電防止層における、前記金属酸化物粒子の前記アクリレート系バインダー組成物に対する重量比が、27重量%以上200重量%以下であり、
Dreは、式Dre=((AC−H/AC=O)×(Wa/(Wa+Wm)))×100により定義される、前記帯電防止層における残留二重結合率であり、
C−Hは、前記帯電防止層の赤外吸収スペクトルにおける、アクリレート構造が有するC−H結合の面外変角振動にかかる赤外吸収であり、
C=Oは、前記帯電防止層の赤外吸収スペクトルにおける、アクリレート構造が有するC=O結合の伸縮振動にかかる赤外吸収とアクリレート構造のC=O結合に由来するC=O結合の伸縮振動にかかる赤外吸収との和であり、
Waは、単位体積の前記帯電防止層におけるアクリレート系バインダー組成物の重量であり、
Wmは、単位体積の前記帯電防止層における金属酸化物粒子の重量である、帯電防止フィルム。
〔2〕 前記帯電防止層が、単層構造を有し、
前記帯電防止層の厚みが、0.5μm以上10.0μm以下である、〔1〕に記載の帯電防止フィルム。
〔3〕 前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×10Ω/□以上7.0×10Ω/□以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の帯電防止フィルム。
〔4〕 前記帯電防止層の紫外線照射による耐光性試験後の抵抗値変化率が、1.0以上4.7未満である、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の帯電防止フィルム。
〔5〕 前記帯電防止層と前記基材フィルムとの屈折率差の絶対値が、0.1以下である、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の帯電防止フィルム。
〔6〕 ヘイズ値が0.3%以下であり、全光線透過率が85%以上である、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の帯電防止フィルム。
〔7〕 前記基材フィルムが、脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる基材フィルムである、〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の帯電防止フィルム。
〔8〕 前記基材フィルムが、第一表面層、中間層及び第二表面層をこの順に備え、
前記中間層が、紫外線吸収剤を含み、
前記基材フィルムの厚みが、10μm以上60μm以下であり、
前記基材フィルムの波長380nmにおける光線透過率が、10%以下である、〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の帯電防止フィルム。
〔9〕 前記基材フィルムが、斜め延伸フィルムである、〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の帯電防止フィルム。
〔10〕 前記基材フィルムが、下記1及び2を満たす、〔9〕に記載の帯電防止フィルム。
1)波長550nmにおける面内レターデーションが80〜180nm
2)遅相軸が長手方向に対して、45°±5°
〔11〕 ロール状のフィルムである、〔1〕〜〔10〕のいずれか1項に記載の帯電防止フィルム。
〔12〕 〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の帯電防止フィルムを含む、偏光板。
〔13〕 〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の帯電防止フィルムとタッチパネル部材とを含む、タッチパネル。
〔14〕 〔12〕に記載の偏光板とタッチパネル部材とを含む、タッチパネル。
〔15〕 〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の帯電防止フィルムとタッチパネル部材とを含む、液晶表示装置。
〔16〕 〔12〕に記載の偏光板を含む、液晶表示装置。
〔17〕 〔13〕又は〔14〕に記載のタッチパネルを含む、液晶表示装置。
〔18〕 前記液晶表示装置の液晶セルと前記帯電防止層とが導通されている、〔15〕〜〔17〕のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
〔19〕 前記液晶表示装置がIPS方式である、〔15〕〜〔18〕のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
本発明によれば、ヘイズ値が低く透明性が良好でありながら、帯電防止性が良好であり、かつ耐光性に優れる帯電防止フィルム、該帯電防止フィルムを含む偏光板、該偏光板を含む液晶表示装置、該帯電防止フィルムを含むタッチパネル、さらには該帯電防止フィルムを含むタッチパネルを含む液晶表示装置を提供することができる。
図1は、本発明の帯電防止フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。 図2は、実施例及び比較例にかかる帯電防止フィルムの、残留二重結合率と抵抗値変化率との関係を示すグラフである。 図3は、実施例及び比較例にかかる帯電防止フィルムの、残留二重結合率と表面抵抗値との関係を示すグラフである。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。長尺のフィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
以下の説明において、フィルムの面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx−ny)×dで表される値である。また、フィルムの厚み方向のレターデーションRthは、別に断らない限り、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは厚み方向の屈折率を表す。dは、フィルムの厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
以下の説明において、長尺のフィルムの長手方向は、通常は製造ラインにおけるフィルムの流れ方向と平行である。
以下の説明において、「偏光板」及び「1/4波長板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
以下の説明において、複数のフィルムを備える部材における各フィルムの光学軸(偏光子の透過軸、位相差フィルムの遅相軸等)がなす角度は、別に断らない限り、前記のフィルムを厚み方向から見たときの角度を表す。
以下の説明において、接着剤とは、別に断らない限り、狭義の接着剤(エネルギー線照射後、あるいは加熱処理後、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa〜500MPaである接着剤)のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤をも包含する。
以下の説明において、フィルムの遅相軸とは、別に断らない限り、当該フィルムの面内における遅相軸を表す。
[1.帯電防止フィルムの概要]
本発明の帯電防止フィルムは、基材フィルムと、基材フィルム上に設けられた帯電防止層とを含む。
図1は、本発明の帯電防止フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の帯電防止フィルム100は、基材フィルム110と、この基材フィルム110上に設けられた帯電防止層120とを含む。本実施形態では、基材フィルム110の表面に直接に帯電防止層120が設けられているが、基材フィルムと帯電防止層との間には、任意の層が介在していてもよい。
[2.基材フィルム]
基材フィルムとしては、光学的な積層体の基材として用いうるフィルムを、適切に選択して用いうる。中でも、基材フィルム及び帯電防止層を備える帯電防止フィルムを光学フィルムとして利用可能にする観点から、基材フィルムとしては透明なフィルムが好ましい。具体的には、基材フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは88%以上である。
基材フィルムの材料は、特に限定されず、種々の樹脂を用いうる。樹脂の例としては、各種の重合体を含む樹脂が挙げられる。当該重合体としては、脂環式構造を有する重合体、セルロースエステル、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリイミド、UV透過アクリル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシ重合体、ポリスチレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、脂環式構造を有する重合体、及びセルロースエステルが好ましく、中でも透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、脂環式構造を有する重合体がより好ましい。
脂環式構造を有する重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を有する。脂環式構造を有する重合体は、主鎖に脂環式構造を有していてもよく、側鎖に脂環式構造を有していてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を有する重合体が好ましい。
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、例えば機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲である。脂環式構造を構成する炭素原子数をこの範囲にすることにより、当該脂環式構造を有する重合体を含む熱可塑性樹脂の機械強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
脂環式構造を有する重合体において、脂環式構造を有する構造単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択しうる。脂環式構造を有する重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、当該脂環式構造を有する重合体を含む熱可塑性樹脂の透明性及び耐熱性が良好となる。
脂環式構造を有する重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、及び、これらの水素添加物等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体は、成形性が良好なため、特に好適である。また、脂環式構造を有する重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン系重合体としては、例えば、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報、特開平4−63807号公報などに記載のものを用いうる。ノルボルネン系重合体の具体例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素添加物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素添加物;並びに、これらの変性物が挙げられる。以下の説明において、ノルボルネン構造を有する単量体のことを、「ノルボルネン系単量体」ということがある。ノルボルネン系単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン系単量体及びこれと共重合しうる他の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン系単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン系単量体及びこれと共重合しうる他の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン系単量体の開環重合体の水素添加物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。
ノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネン;ノルボルネンのアルキル置換誘導体;ノルボルネンのアルキリデン置換誘導体;ノルボルネンの芳香族置換誘導体;並びに、これらの極性基置換体などが挙げられる。ここで極性基としては、例えば、ハロゲン、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。このようなノルボルネン系単量体の具体例としては、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−オクチル−2−ノルボルネン、5−オクタデシル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
また、ノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネンに一つ以上のシクロペンタジエンが付加した単量体;この単量体のアルキル置換誘導体;この単量体のアルキリデン置換誘導体;この単量体の芳香族置換誘導体;並びに、これらの極性基置換体などが挙げられる。このようなノルボルネン系単量体の具体例としては、1,4:5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−2,3−シクロペンタジエノオクタヒドロナフタレン、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4:5,10:6,9−トリメタノ−1,2,3,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a−ドデカヒドロー2,3−シクロペンタジエノアントラセンなどが挙げられる。
さらに、ノルボルネン系単量体としては、例えば、シクロペンタジエンの多量体である多環構造の単量体;この単量体のアルキル置換誘導体;この単量体のアルキリデン置換誘導体;この単量体の芳香族置換誘導体;並びに、これらの極性基置換体などが挙げられる。このようなノルボルネン系単量体の具体例としては、ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等が挙げられる。
また、ノルボルネン系単量体としては、例えば、シクロペンタジエンとテトラヒドロインデンとの付加物;この付加物のアルキル置換誘導体;この付加物のアルキリデン置換誘導体;この付加物の芳香族置換誘導体;並びに、これらの極性基置換体などが挙げられる。このようなノルボルネン系単量体の具体例としては、1,4−メタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロフルオレン、5,8−メタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−2,3−シクロペンタジエノナフタレンなどが挙げられる。
ノルボルネン系単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン系重合体の中でも、構造単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの構造単位の含有量が、ノルボルネン系重合体の構造単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの含有割合とYの含有割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような重合体を用いることにより、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れる基材フィルムを得ることができる。
Xの構造を構造単位として有する単量体としては、例えば、ノルボルネン環に五員環が結合した構造を有するノルボルネン系単量体を挙げることができる。その具体例としては、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、及びその誘導体を挙げることができる。また、Yの構造を構造単位として有する単量体としては、例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]デカ−3,7−ジエン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)を挙げることができる。
上述した単量体の重合は公知の方法で行いうる。また、必要に応じて、上述した単量体を任意の単量体と共重合したり、水素添加したりすることにより、所望の重合体を得てもよい。水素添加する場合、水素添加率は、耐熱劣化性及び耐光劣化性の観点から、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。
さらに、得られた重合体を、必要に応じて、例えば、α,β−不飽和カルボン酸及びその誘導体、スチレン系炭化水素、オレフィン系不飽和結合及び加水分解可能な基を有する有機ケイ素化合物、並びに、不飽和エポキシ単量体等の変性剤を用いて変性させてもよい。
脂環式構造を有する重合体の数平均分子量(Mn)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下、特に好ましくは50,000以下である。数平均分子量がこのような範囲にあるときに、基材フィルムの機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされ好適である。
ここで、脂環式構造を有する重合体の数平均分子量は、シクロヘキサン溶媒によるGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)法により、ポリイソプレン換算値として測定しうる。
脂環式構造を有する重合体を含む熱可塑性樹脂において、脂環式構造を有する重合体の量は、好ましくは50重量%〜100重量%、より好ましくは70重量%〜100重量%である。脂環式構造を有する重合体の量を前記の範囲に収めることにより、所望の物性を有する基材フィルムを容易に得られる。
脂環式構造を有する重合体を含む熱可塑性樹脂は、必要に応じて、脂環式構造を有する重合体に組み合わせて任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、紫外線吸収剤;無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料、顔料等の着色剤;老化防止剤;などの配合剤が挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
セルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステル(例:セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートおよびセルロースアセテートプロピオネート)が代表的である。低級脂肪酸は、1分子あたりの炭素原子数6以下の脂肪酸を意味する。セルロースアセテートには、トリアセチルセルロース(TAC)及びセルロースジアセテート(DAC)が含まれる。
セルロースアセテートの酢化度は、50%〜70%が好ましく、特に55%〜65%が好ましい。重量平均分子量70000〜120000が好ましく、特に80000〜100000が好ましい。また、上記セルロースアセテートは、酢酸だけでなく、一部プロピオン酸、酪酸等の脂肪酸でエステル化されていてもよい。また、基材フィルムを構成する樹脂は、セルロースアセテートと、セルロースアセテート以外のセルロースエステル(セルロースプロピオネート及びセルロースブチレート等)とを組み合わせて含んでもよい。その場合、これらのセルロースエステルの全体が、上記酢化度を満足することが好ましい。
トリアセチルセルロースのフィルムの好ましい例としては、富士写真フイルム社製「TAC−TD80U」、及び、発明協会公開技報公技番号2001−1745号にて公開されたものが挙げられる。
基材フィルムは、1層のみを備える単層フィルムであってもよく、2層以上の層を備える複層フィルムであってもよい。中でも、基材フィルムは、第一表面層、紫外線吸収剤を含む中間層、及び、第二表面層を厚み方向においてこの順に備える複層フィルムであることが好ましい。すなわち、基材フィルムは、例えば脂環式構造を有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる第一表面層と、脂環式構造を有する重合体及び紫外線吸収剤を含む熱可塑性樹脂からなる中間層と、脂環式構造を有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる第二表面層とを、厚み方向においてこの順に備えることが好ましい。このような複層フィルムにおいては、第一表面層及び第二表面層によって中間層に含まれる紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制することができる。
ブリードアウトの効果的な抑制のためには、第一表面層及び第二表面層は、紫外線吸収剤を含まないことが好ましい。また、第一表面層に含まれる重合体、中間層に含まれる重合体及び第二表面層に含まれる重合体は、同じでもよく、異なっていてもよい。したがって、第一表面層に含まれる熱可塑性樹脂と、第二表面層に含まれる熱可塑性樹脂とは、異なっていてもよいが、層の形成が容易であることから、同じであることが好ましい。通常、第一表面層及び第二表面層は、紫外線吸収剤を含まないこと以外は中間層に含まれる熱可塑性樹脂と同様の熱可塑性樹脂によって、形成される。
紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤等の有機紫外線吸収剤が挙げられる。中でも、波長380nm付近における紫外線吸収性能が優れているという点で、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。また、紫外線吸収剤としては、分子量は400以上であるものが好ましい。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、1,3,5−トリアジン環を有する化合物を好ましく用いうる。トリアジン系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(へキシル)オキシ]−フェノール、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。また、トリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「チヌビン1577」(チバスペシャリティーケミカルズ社製)等を挙げることができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール等が挙げられる。トリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「アデカスタブLA−31」(旭電化工業社製)等を挙げることができる。
紫外線吸収剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
中間層に含まれる熱可塑性樹脂において、紫外線吸収剤の量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上であり、好ましくは8重量%以下、より好ましくは6重量%以下である。ここで、紫外線吸収剤の量とは、2種類以上の紫外線吸収剤を用いる場合には、それらの紫外線吸収剤の全体量のことを示す。紫外線吸収剤の量を前記範囲の下限以上にすることにより、波長200nm〜370nmの紫外線の透過を効果的に抑制でき、また、上限以下にすることにより、フィルムの黄色味を抑えることができるので、色味の劣化を抑制できる。さらに、紫外線吸収剤の量を前記範囲とすることにより、多量の紫外線吸収剤を含有しないことから、熱可塑性樹脂の耐熱性の低下を抑制できる。
熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含む紫外線吸収剤入り熱可塑性樹脂の製造方法としては、溶融押出法や溶液流延法などによる基材フィルムの製造時より前に紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂に配合する方法;紫外線吸収剤を高濃度に含むマスターバッチを用いる方法;溶融押出法や溶液流延法などによる基材フィルムの製造時に紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂に配合する方法、などが挙げられる。これらの方法では、紫外線吸収剤の量を前記範囲とすることにより、紫外線吸収剤の分散性を十分に高めることができる。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは120℃以上、より更に好ましくは130℃以上、中でも好ましくは150℃以上、特に好ましくは160℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは180℃以下である。熱可塑性樹脂のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、高温環境下における基材フィルムの耐久性を高めることができ、また、上限値以下にすることにより、延伸処理を容易に行える。
さらに、基材フィルムが第一表面層、中間層及び第二表面層を備える場合には、中間層に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度TgAと第一表面層及び第二表面層に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度TgBとは、TgB−TgA<15℃の関係を満たすことが好ましい。
基材フィルムの波長380nmにおける光線透過率は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、特に好ましくは1%以下である。また、基材フィルムの波長280nm〜370nmにおける光線透過率は、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下である。これにより、帯電防止フィルムによって紫外線を遮ることができるので、帯電防止フィルムを備える液晶表示装置において、偏光子及び液晶セルへの紫外線によるダメージを抑制できる。そのため、偏光子の偏光度の低下及び着色を抑制できる。さらに、液晶セルの液晶駆動を安定させることができる。基材フィルムの波長380nmにおける光線透過率の下限、及び基材フィルムの波長280nm〜370nmにおける光線透過率は、理想的には0%としうる。
ここで光線透過率は、JISK0115に準拠して、分光光度計を用いて測定しうる。
基材フィルムは、光学的に等方なフィルムであってもよく、光学的な異方性を有するフィルムであってもよい。基材フィルムは、例えば、10nm以下の面内レターデーションReを有する等方性フィルムであってもよい。基材フィルムが等方性フィルムである場合、この基材フィルムの厚み方向のレターデーションRthは10nm以下が好ましい。また、基材フィルムが光学的な異方性を有するフィルムである場合、基材フィルムは、1/4波長板として機能しうるフィルムであってもよい。基材フィルム層が1/4波長板として機能しうる場合、その基材フィルム層の測定波長550nmにおける面内レターデーションReは、好ましくは80nm以上、より好ましくは95nm以上であり、好ましくは180nm以下、より好ましくは150nm以下である。基材フィルム層の面内レターデーションReが前記の範囲内であると、帯電防止フィルムを液晶表示装置に組み込んだ際に、表示面の法線方向を回転軸として設置位置を変えた場合でも、偏光サングラス越しの画像の色味変化が少なくなるために、液晶表示装置の画像の視認性が優れる。また、基材フィルム層が1/4波長板として機能しうる場合、この基材フィルム層の測定波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRthは、50nm〜225nmが好ましい。
さらに、基材フィルム層が1/4波長板として機能しうる長尺のフィルムである場合、その基材フィルム層の遅相軸は、基材フィルム層の長手方向に対して所定の範囲の角度をなすように設定されることが好ましい。以下、基材フィルム層の遅相軸が基材フィルム層の長手方向に対してなす角度を、適宜「配向角」ということがある。この配向角の範囲は、好ましくは45°±5°、より好ましくは45°±3°、特に好ましくは45°±1°である。このような範囲の配向角を有する基材フィルム層を備えた帯電防止フィルムを用いれば、偏光サングラスによる画像の視認性を高められる偏光板の製造を容易にできる。
基材フィルムの面内レターデーションReのバラツキは、好ましくは10nm以内、より好ましくは5nm以内、特に好ましくは2nm以内である。また、基材フィルムの厚み方向のレターデーションRthのバラツキは、好ましくは20nm以内、より好ましくは15nm以内、特に好ましくは10nm以内である。レターデーションRe及びRthのバラツキを前記の範囲に収めることにより、本発明の帯電防止フィルムを適用した液晶表示装置の表示品質を良好なものにすることが可能になる。
基材フィルムの厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、特に好ましくは20μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。基材フィルムの厚みを前記範囲に収めることにより、帯電防止フィルムの薄膜化が可能になる。また、基材フィルムが第一表面層、中間層及び第二表面層を備える場合、中間層の厚みは10μm以上40μm以下が好ましく、第一表面層及び第二表面層の厚みは合計で5μm以上20μm以下が好ましい。さらに、中間層の厚みと第一表面層及び第二表面層の合計厚みとの比{(中間層の厚み)/(第一表面層及び第二表面層の合計厚み)}は、生産安定性の観点から、1〜3が好ましい。また、中間層の厚みのばらつきは、全面で±2.0μm以内とすることが、液晶表示装置の画像表示性を良好にできるため、好ましい。
基材フィルムは、例えば、熱可塑性樹脂をフィルム状に成形することにより製造しうる。成形方法としては、例えば、加熱溶融成形法、溶液流延法などを用いうる。中でも、フィルム中の揮発性成分を低減させられることから、加熱溶融成形法を用いることが好ましい。加熱溶融成形法は、さらに詳細には、例えば溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れる基材フィルムを得るためには、溶融押出成形法を用いるのが好ましい。
特に、基材フィルムとして2以上の層を備える複層フィルムを製造する場合には、共押出法を用いることが好ましい。例えば、第一表面層、中間層及び第二表面層を備える複層構造の基材フィルムは、第一表面層を形成するための熱可塑性樹脂と、中間層を形成するための熱可塑性樹脂と、第二表面層を形成するための熱可塑性樹脂とをダイから共押し出しすることにより、製造しうる。このような共押出法の中でも、共押出Tダイ法が好ましい。また、共押出Tダイ法としては、フィードブロック方式及びマルチマニホールド方式を挙げることができる。
共押出Tダイ法において、Tダイを有する押出機における熱可塑性樹脂の溶融温度は、好ましくは(Tg+80)℃以上、より好ましくは(Tg+100)℃以上であり、好ましくは(Tg+180)℃以下、より好ましくは(Tg+150)℃以下である。ここで「Tg」は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度を示し、基材フィルムが第一表面層、中間層及び第二表面層を備える場合には第一表面層及び第二表面層に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度を示す。押出機での溶融温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、熱可塑性樹脂の流動性を十分に高めることができ、また、上限値以下にすることにより、熱可塑性樹脂の劣化を抑制できる。
さらに、溶融押出成形法において、押出機における熱可塑性樹脂の温度は、樹脂投入口ではTg〜(Tg+100)℃、押出機出口では(Tg+50)〜(Tg+170)℃、ダイス温度は(Tg+50)℃〜(Tg+170)℃が好ましい。
基材フィルムの製造方法は、上述した成形方法によって得られたフィルムに延伸処理を施す工程を含んでいてもよい。延伸処理を施すことにより、基材フィルムにレターデーション等の光学特性を発現させることができる。
延伸処理は、基材フィルムに発現させたいレターデーションに応じて、任意の方法で行いうる。例えば、一方向のみに延伸処理を行う一軸延伸処理を行ってもよく、異なる2方向に延伸処理を行う二軸延伸処理を行ってもよい。また、二軸延伸処理では、2方向に同時に延伸処理を行う同時二軸延伸処理を行ってもよく、ある方向に延伸処理を行った後で別の方向に延伸処理を行う逐次二軸延伸処理を行ってもよい。さらに、延伸処理は、フィルム長手方向に延伸処理を行う縦延伸処理、フィルム幅方向に延伸処理を行う横延伸処理、フィルム幅方向に平行でもなく垂直でもない斜め方向に延伸処理を行う斜め延伸処理のいずれを行ってもよく、これらを組み合わせて行ってもよい。延伸処理の方式は、例えば、ロール方式、フロート方式、テンター方式などが挙げられる。
基材フィルムが1/4波長板として機能しうるフィルムである場合、前記の延伸処理の中でも、斜め延伸処理が好ましい。1/4波長板としての基材フィルムを備える帯電防止フィルムと偏光子とを貼り合わせて使用する場合には、通常、偏光子の透過軸と基材フィルムの遅相軸とを、平行でもなく垂直でもない所定の角度で交差するように貼り合わせを行う。この際、斜め延伸処理によって得た基材フィルムでは、その基材フィルムの幅方向に対して斜め方向に遅相軸が発現しているので、貼り合わせのために帯電防止フィルムを枚葉に裁断する必要が無く、ロール・トゥ・ロール法による効率的な貼り合わせが可能である。斜め延伸処理に用いうる延伸機は、例えば、テンター延伸機が挙げられる。テンター延伸機には、横一軸延伸機、同時二軸延伸機などがあり、中でも長尺のフィルムを連続的に斜め延伸しうるものが好ましい。
延伸温度は、基材フィルムに含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、好ましくは(Tg−30)℃以上、より好ましくは(Tg−10)℃以上であり、好ましくは(Tg+60)℃以下、より好ましくは(Tg+50)℃以下である。
延伸倍率は、好ましくは1.01倍〜30倍、より好ましくは1.01倍〜10倍、さらに好ましくは1.01倍〜5倍である。
基材フィルムの表面には、必要に応じて、表面処理を施してもよい。例えば、帯電防止層を設けられる側の基材フィルムの面には、帯電防止層との接着性を高めるために、例えば、プラズマ処理、コロナ処理、アルカリ処理、コーティング処理等の表面処理を施してもよい。
表面処理の中でも、コロナ処理が好ましい。コロナ処理により、基材フィルムと帯電防止層との接着性を顕著に高めることが可能である。コロナ処理時のコロナ放電電子の照射量は、好ましくは1W/m/min〜1000W/m/minである。このようなコロナ処理を施された基材フィルムの面の水接触角は、好ましくは10°〜50°である。水接触角の測定は、JIS R3257 θ/2法に準拠して測定しうる。また、コロナ処理を施した後には、帯電防止層の外観を良好にするために、コロナ処理を施された面に帯電防止層を形成する前に基材フィルムを除電することが好ましい。
[3.帯電防止層]
帯電防止層は、基材フィルム上に設けられた層であって、アクリレート系バインダー組成物と、導電性を有する金属酸化物粒子とを含む。帯電防止層においては、金属酸化物粒子が鎖状に連結するように凝集して鎖状連結体を形成しており、この鎖状連結体によって導電パスが形成されている。そのため、本発明の帯電防止フィルムは、帯電防止機能を発揮できる。
[3.1.アクリレート系バインダー組成物]
帯電防止層は、アクリレート系バインダー組成物を含む。アクリレート系バインダー組成物により、金属酸化物粒子を帯電防止層に保持することができる。
本願において、「アクリレート系バインダー組成物」とは、アクリレート系バインダー重合体と、アクリレート系重合性単量体とを合わせたものを意味する。アクリレート系バインダー重合体は、アクリレート系重合性単量体を含む単量体組成物を重合させることにより得られる二量体以上の重合体である。かかる重合の反応が完全に進行した場合は、アクリレート系バインダー組成物は、アクリレート系バインダー重合体のみからなる。即ち、アクリレート系バインダー組成物は、アクリレート系バインダー重合体のみからなっていてもよく、アクリレート系バインダー重合体及びアクリレート系重合性単量体からなっていてもよい。
アクリレート系重合性単量体とは、アクリレート構造を含有する単量体を意味する。ここで、アクリレート構造とは、アクリレートにおける、HC=CH−(C=O)−O−で表される構造を意味する。
アクリレート系重合性単量体としては、例えば、アルキルアクリレート、アクリル酸とポリオールとのエステル、アクリル酸とポリヒドロキシエーテルとのエステル、アクリル酸と芳香環を含むアルコールとのエステル、多官能ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートが挙げられる。
アルキルアクリレートとしては、例えば、炭素原子数1〜30のアルキルのアクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、及びステアリルアクリレートが挙げられる。
アクリル酸とポリオールとのエステルとしては、例えば、アクリル酸とペンタエリスリトールとのエステル(例、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、アクリル酸とトリメチロールプロパンとのエステル(例、トリメチロールプロパントリアクリレート)、アクリル酸とエチレングリコールとのエステル(例、エチレングリコールジアクリレート)、及びアクリル酸とグリセリンとのエステルが挙げられる。
アクリル酸とポリヒドロキシエーテルとのエステルとしては、例えば、アクリル酸とジペンタエリスリトールとのエステル(例、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、アクリル酸とジエチレングリコールとのエステル(例、ジエチレングリコールジアクリレート)、及びアクリル酸とポリエチレングリコールとのエステル(例、ポリエチレングリコールジアクリレート)が挙げられる。
アクリル酸と芳香環を含むアルコールとのエステルとしては、例えば、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキシドジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
多官能ウレタンアクリレートとしては、例えば、ジイソシアネートと、アクリル酸とポリヒドロキシエーテルとのエステルとの、ウレタン反応アクリレートが挙げられる。多官能ウレタンアクリレートとしては、具体的には、例えば、イソホロンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物とのウレタン反応アクリレートが挙げられる。
アクリレート系重合性単量体としては、アクリレート構造を1分子中に3個以上有する化合物が好ましい。このような化合物の重合体をアクリレート系バインダー組成物が含むことで、帯電防止層の表面抵抗値を効果的に低くすることができる。
アクリレート構造を1分子中に3個以上含有する化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
また、アクリレート系重合性単量体として、アクリレート構造を1分子中に3個以上含有する化合物1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの組み合わせ、並びに、ジペンタエリスリトールテトラアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの組み合わせを、アクリレート系バインダー重合体を得るためのアクリレート系重合性単量体として用いてもよい。
アクリレート系バインダー重合体を得るための単量体組成物として、1分子中にアクリレート構造を4個含有する化合物、5個含有する化合物、及び、6個含有する化合物を、合計で80重量%以上含む単量体組成物を用いることが好ましい。
また、アクリレート系バインダー重合体を得るための単量体としては、上記に挙げた単量体の他に、任意の単量体を用いてもよい。任意の単量体として、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
任意の単量体として、カルボキシル基と重合性の炭素−炭素二重結合とを有する化合物を、アクリレート系バインダー重合体を得るための単量体組成物に対して0.01重量%〜5重量%用いると、帯電防止層の表面抵抗値を効果的に低下させられるので、好ましい。前記のカルボキシル基と重合性の炭素−炭素二重結合とを有する化合物としては、例えば、アクリル酸;メタクリル酸;クロトン酸;フマル酸;イタコン酸;ムコン酸;無水マレイン酸とモノアルコールとのハーフエステル類;ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレート等の水酸基を有するアクリレート類中の水酸基の一部がアクリル酸の炭素−炭素二重結合に付加した化合物;ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレート等の水酸基を有するアクリレート類中の水酸基とジカルボン酸もしくは無水カルボン酸とが反応した化合物;などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
アクリレート系バインダー重合体を得るための単量体組成物の酸価は、好ましくは0.01mgKOH/g〜0.5mgKOH/gである。アクリレート系バインダー重合体を得るための単量体組成物の酸価を前記範囲の下限値以上にすることにより、帯電防止層の表面抵抗値を効果的に低くでき、また、上限値以下にすることにより、帯電防止剤の安定性を良好にできる。
単量体組成物の酸価は、JIS K0070(化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法)により、指示薬にブロモチモールブルーを用いて測定しうる。
帯電防止層において、アクリレート系バインダー組成物の量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上であり、好ましくは100重量%以下、より好ましくは79重量%以下、特に好ましくは78重量%以下である。アクリレート系バインダー組成物の量を前記範囲にすることにより、帯電防止層と基材フィルムとの接着性を高めることができ、かつ金属酸化物粒子の帯電防止層中での分散性を向上させることができる。また、帯電防止層の厚みを均一にすることができる。
[3.2.金属酸化物粒子]
金属酸化物粒子に含まれる金属酸化物としては、例えば、酸化錫;アンチモン、フッ素又はリンがドーピングされた酸化錫;酸化インジウム;アンチモン、スズ又はフッ素がドーピングされた酸化インジウム;酸化アンチモン;低次酸化チタン等が挙げられる。特に、アンチモンがドーピングされた酸化錫、及び、アンチモンがドーピングされた酸化インジウムが好ましい。また、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
金属酸化物粒子の平均粒子径は、好ましくは2nm以上、より好ましくは4nm以上、特に好ましくは5nm以上であり、好ましくは50nm以下、より好ましくは40nm以下、特に好ましくは10nm以下である。金属酸化物粒子の平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、金属酸化物粒子が粒状に凝集し難くなるので、金属酸化物粒子を鎖状に連結するように凝集させ易い。また、上限値以下にすることにより、帯電防止層のヘイズを小さくできるので、帯電防止層の透明性を向上させることができる。さらに、金属酸化物粒子同士を鎖状に連結させ易くできる。
ここで、粒子の平均粒子径とは、レーザー回折法で測定された粒子径分布が正規分布を示すと仮定した場合において散乱強度が最大となる粒子径を示す。
また、金属酸化物粒子は、当該粒子の表面を、加水分解性の有機ケイ素化合物で処理されたものであることが好ましい。このような処理を施された金属酸化物粒子は、通常、金属酸化物からなる粒子本体の表面が、有機ケイ素化合物の加水分解物によって修飾されている。そこで、以下、加水分解性の有機ケイ素化合物による金属酸化物粒子の表面の処理を「修飾処理」と呼ぶことがある。また、粒子表面を加水分解性の有機ケイ素化合物で処理された金属酸化物粒子のことを「修飾粒子」ということがある。このような修飾処理を施すことにより、金属酸化物粒子の鎖状の連結を強固にしたり、金属酸化物粒子の分散性を向上させたりすることができる。
加水分解性の有機ケイ素化合物としては、例えば、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物が挙げられる。
Si(OR4−a (1)
(式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基、及び、炭素原子数1〜10の有機基からなる群より選ばれる基を表し、aは、0〜3の整数を表す。)
式(1)において、Rとして好ましい例を挙げると、ビニル基、アクリル基、炭素原子数1〜8のアルキル基などが挙げられる。
また、式(1)において、Rとして好ましい例を挙げると、水素原子、ビニル基、アリール基、アクリル基、炭素原子数1〜8のアルキル基、−CHOC2n+1(nは1〜4の整数を表す。)などが挙げられる。
式(1)で表される有機ケイ素化合物としては、「a」が0又は1の有機ケイ素化合物が好ましい。式(1)において「a」が0である四官能の有機ケイ素化合物は、金属酸化物粒子の連結を維持することに有効である。また、式(1)において「a」が1である三官能の有機ケイ素化合物は、鎖状に連結した金属酸化物粒子の帯電防止剤中での分散性を向上させることに有効である。更に、式(1)において「a」が0又は1である三官能以上の有機ケイ素化合物は、通常、加水分解速度が速い。
また、式(1)で表される有機ケイ素化合物としては、「a」が0である四官能の有機ケイ素化合物と「a」が1である三官能の有機ケイ素化合物とを組み合わせて用いることが好ましい。このように組み合わせて用いる場合、四官能の有機ケイ素化合物と三官能の有機ケイ素化合物とのモル比(四官能の有機ケイ素化合物/三官能の有機ケイ素化合物)は、好ましくは20/80以上、より好ましくは30/70以上であり、好ましくは80/20以下、より好ましくは70/30以下である。四官能の有機ケイ素化合物が過剰とならないようにすることで、金属酸化物粒子が塊りに凝固することを抑制できるので、鎖状の連結を生成させ易い。また、三官能の有機ケイ素化合物が過剰とならないようにすることで、金属酸化物粒子の連結の際におけるゲルの生成を抑制できる。そのため、前記のようなモル比で式(1)で表される四官能の有機ケイ素化合物と三官能の有機ケイ素化合物とを組み合わせることにより、金属酸化物粒子を効率的に鎖状に連結させることができる。
前記のように、式(1)で表される有機ケイ素化合物として四官能の有機ケイ素化合物と三官能の有機ケイ素化合物とを組み合わせて用いることにより、金属酸化物粒子同士を鎖状に強固に連結することができる。その理由は、明確ではないものの、下記のように推察される。金属酸化物粒子の連結部分は活性が高いので、「a」が0である四官能の有機ケイ素化合物は、金属酸化物粒子の連結部分に吸着しやすい。また、四官能の有機ケイ素化合物は、加水分解しやすいので、アルコールの混合と同時に加水分解が進行し、Si−OHが多く生成する。他方、「a」が1である三官能の有機ケイ素化合物は、水への溶解度が低く、アルコールと混合することで水に溶解して加水分解が進む。そのため、三官能の有機ケイ素化合物は、先に金属酸化物粒子の連結部分に吸着して加水分解した四官能の有機ケイ素化合物のSi−OHに、後から反応すると考えられる。
したがって、四官能の有機ケイ素化合物と三官能の有機ケイ素化合物とを組み合わせて用いる場合には、これらの有機ケイ素化合物を同時に金属酸化物粒子の水分散液と混合するのではなく、まず、四官能の有機ケイ素化合物を金属酸化物粒子の水分散液と混合したのち、アルコールを混合するとともに三官能の有機ケイ素化合物を混合することが好ましい。
加水分解性の有機ケイ素化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシ又はトリアシルオキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン又はジアシルシラン類;トリメチルクロロシラン等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
次いで、修飾粒子(粒子表面を加水分解性の有機ケイ素化合物で処理された金属酸化物粒子)の製造方法について説明する。下記に説明する製造方法では、修飾粒子は、分散液の状態で製造される。
修飾粒子の製造方法では、処理対象となる金属酸化物粒子の水分散液を用意する。このとき、水分散液における金属酸化物粒子の濃度は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、好ましくは40重量%以下である。
次いで、前記の水分散液のpHを、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、且つ、好ましくは5以下、より好ましくは4以下に調整する。水分散液のpHを前記範囲の下限値以上にすることにより、金属酸化物粒子の球状の凝集を抑制できるので、鎖状の連結を生じさせ易い。また、上限値以下にすることにより、金属酸化物粒子が鎖状に連結する際、連結数を高め易い。そのため、金属酸化物粒子の平均連結数を2以上と多くし易いので、帯電防止フィルムの帯電防止性能を向上させ易い。
pHを調整する方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換処理法、酸を混合する方法、などが挙げられる。イオン交換樹脂としては、H型カチオン交換樹脂が好ましい。通常、イオン交換処理によって、水分散液のpHを酸性にシフトさせることができる。また、イオン交換樹脂処理だけではpHが充分に低くならない場合には、必要に応じて水分散液に酸を混合してもよい。
また、通常、イオン交換処理の際には、脱イオン処理も行われるので、金属酸化物粒子は鎖状に配向し易くなる。
pHを調整した後で、金属酸化物粒子の水分散液を濃縮又は希釈することにより、当該水分散液の固形分濃度を、適切な範囲に調整することが好ましい。具体的には、pH調整後の水分散液の固形分濃度を、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、且つ、好ましくは40重量%以下、より好ましくは35重量%以下に調整する。金属酸化物粒子の水分散液の固形分濃度を前記範囲の下限値以上にすることにより、金属酸化物粒子の鎖状の連結を生じさせ易い。そのため、金属酸化物粒子の平均連結数を3以上と多くし易いので、帯電防止フィルムの帯電防止性能を向上させ易い。また、上限値以下にすることにより、金属酸化物粒子の水分散液の粘度を低くして、撹拌による混合を十分に進行させることができる。そのため、加水解性の有機ケイ素化合物を金属酸化物粒子に均一に吸着させることができる。
その後、前記のようにして用意した金属酸化物粒子の水分散液と、加水分解性の有機ケイ素化合物とを混合する。加水分解性の有機ケイ素化合物としては、前記の式(1)で表される化合物が挙げられる。
加水分解性の有機ケイ素化合物の量は、当該有機ケイ素化合物の種類、金属酸化物粒子の粒子径などの要素に応じて適切に設定しうる。金属酸化物粒子と加水分解性の有機ケイ素化合物との重量比(有機ケイ素化合物/金属酸化物粒子)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上であり、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。2種類以上の有機ケイ素化合物を用いる場合、その有機ケイ素化合物の合計量が、前記の重量比の範囲を満たすことが好ましい。前記の重量比を前記範囲の下限値以上にすることにより、鎖状に連結した金属酸化物粒子の連結が帯電防止剤中で切れることを抑制できるので、優れた帯電防止機能を有する帯電防止フィルムが得られる。また、帯電防止剤中での金属酸化物粒子の分散性を向上させたり、帯電防止剤の粘度を低くしたり、帯電防止剤の経時安定性を良好にしたりできるので、帯電防止層のヘイズを低くできる。また、重量比を前記範囲の上限値以下にすることにより、金属酸化物粒子の表面を修飾する有機ケイ素化合物の加水分解物の層が厚くなりすぎることを抑制できるので、帯電防止層の表面抵抗値を小さくできる。
また、ここで説明する修飾粒子の製造方法では、金属酸化物粒子の水分散液とアルコールとを混合することにより、加水分解性の有機ケイ素化合物を加水分解する工程を行う。この工程は、通常、金属酸化物粒子の水分散液と加水分解性の有機ケイ素化合物とを混合する工程の後で行う。ただし、前述したように、四官能の有機ケイ素化合物と三官能の有機ケイ素化合物とを組み合わせて用いる場合には、四官能の有機ケイ素化合物を金属酸化物粒子の水分散液と混合した後で、この水分散液にアルコールを混合し、金属酸化物粒子の水分散液とアルコールとを混合すると同時又はその後に、三官能の有機ケイ素化合物を金属酸化物粒子の水分散液に混合することが好ましい。
アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等が挙げられる。これらのアルコールは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、前記のアルコールに組み合わせて、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の有機溶媒を用いてもよい。
アルコールの量は、アルコールとの混合後の金属酸化物粒子の水分散液の固形分濃度(有機ケイ素化合物を含む全固形分。有機ケイ素化合物はシリカ換算。)が、所望の範囲に収まるように調整することが好ましい。ここで、水分散液の固形分濃度の所望の範囲は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。
加水分解の際の温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上である。加水分解の際の温度の上限は、通常は使用溶媒の沸点(概ね100℃)以下である。加水分解の際の温度を前記の下限値以上にすることにより、加水分解に要する時間を短くしたり、加水分解性の有機ケイ素化合物の残存を抑制したりでき、また、上限値以下にすることにより、得られる修飾粒子の安定性を良好にできるので、粒子の過剰な凝集を抑制できる。
さらに、必要に応じて、加水分解触媒として、金属酸化物粒子の水分散液に酸を混合してもよい。酸としては、塩酸、硝酸、酢酸、リン酸が挙げられる。また、酸は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
有機ケイ素化合物を加水分解する際の操作の好適な具体例は、以下の通りである。
まず、式(1)において「a」が0である四官能の有機ケイ素化合物を、金属酸化物粒子の水分散液と混合し、この水分散液とアルコールとを混合して、四官能の有機ケイ素化合物の加水分解を行う。その後、水分散液を室温に冷却し、必要に応じて再び前記アルコールと混合する。その後、式(1)において「a」が1である三官能の有機ケイ素化合物を前記の水分散液と混合し、前述の加水分解に適した温度に昇温して、加水分解を行う。これにより、四官能の有機ケイ素化合物の加水分解物によって、金属酸化物粒子の鎖状の連結を維持することができる。さらに、三官能の有機ケイ素化合物の加水分解物の金属酸化物粒子の表面への結合が促進されるので、金属酸化物粒子の分散性を向上させることができる。
前記のように有機ケイ素化合物を加水分解することにより、金属酸化物粒子の表面を有機ケイ素化合物の加水分解物によって修飾して、修飾粒子を得ることができる。加水分解を行った直後においては、前記の修飾粒子は、水等の溶媒に分散した分散液の状態で得られる。この修飾粒子の分散液は、そのまま帯電防止剤の調製に用いうるが、必要に応じて、洗浄処理又は脱イオン処理を施してもよい。脱イオン処理によりイオン濃度を低下させることで、安定性に優れた修飾粒子の分散液を得ることができる。この脱イオン処理は、例えば、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、両イオン交換樹脂等のイオン交換樹脂を用いて行いうる。また、洗浄処理は、例えば、限外濾過膜法等を用いて行いうる。
さらに、得られた修飾粒子の分散液は、必要に応じて、溶媒置換を行ってから用いてもよい。溶媒置換を行うと、アクリレート系バインダー組成物及び極性溶媒への分散性が向上する。そのため、帯電防止剤の塗工性を向上させることができる。したがって、帯電防止層の表面の平滑性を良好にしたり、帯電防止層における筋条及びムラ等の外観上の欠陥の発生を抑制したりできる。さらに、帯電防止層の耐擦傷性、透明性、密着性を向上させたり、ヘイズを小さくしたりできる。また、帯電防止フィルムの製造信頼性を向上させることができる。
また、得られた修飾粒子の分散液は、必要に応じて、水と混合して用いてもよい。水と混合することにより、通常、修飾粒子の連結数が増加し、得られる帯電防止層の導電性が向上する。そのため、概ね10Ω/□〜1012Ω/□の表面抵抗値を有する帯電防止層が得られるので、帯電防止性に優れた帯電防止フィルムが得られる。
上述した導電性を有する金属酸化物粒子(修飾粒子を含む。)は、通常、当該金属酸化物粒子を含む分散液又は帯電防止剤中において、鎖状に連結している。そして、このような連結は帯電防止層においても維持されているので、連結した金属酸化物粒子により帯電防止層に導電パスが形成される。そのため、帯電防止層は、優れた帯電防止性を発揮できると推察される。また、金属酸化物粒子が粒状に凝集するのではなく、鎖状に連結するように凝集しているので、金属酸化物粒子は、可視光線の散乱を生じうるほど大きな凝集塊を形成し難い。そのため、このような金属酸化物粒子を含む帯電防止層のヘイズを低くすることが可能になっていると推察される。ただし、本発明は前記の推察に制限されるものではない。
金属酸化物粒子の平均連結数は、好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上、特に好ましくは5個以上である。金属酸化物粒子の平均連結数を前記下限値以上にすることにより、帯電防止層の帯電防止性能を高めることができる。金属酸化物粒子の平均連結数の上限は、好ましくは20個以下、より好ましくは10個以下である。金属酸化物粒子の平均連結数を前記上限値以下にすることにより、鎖状に連結した金属酸化物粒子の製造を容易に行うことができる。
ここで、金属酸化物粒子の平均連結数は、下記の方法により測定しうる。
金属酸化物粒子の鎖状連結体の写真を、透過型電子顕微鏡によって撮影する。この写真から、金属酸化物粒子の鎖状連結体100個について、それぞれの鎖状連結体における連結数を求める。そして、各鎖状連結体の連結数の平均値を計算し、小数点以下1桁を四捨五入して、金属酸化物粒子の平均連結数を得る。
帯電防止層において、金属酸化物粒子の量は、通常25重量%以上、好ましくは27重量%以上、より好ましくは43重量%以上、特に好ましくは58重量%以上であり、通常200重量%以下であり、好ましくは198重量%以下、より好ましくは98重量%以下、特に好ましくは78重量%以下である。金属酸化物粒子の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、帯電防止層の表面抵抗値を小さくして、帯電防止性能を良好にできる。また、上限値以下にすることにより、帯電防止層のヘイズを小さくできるので、帯電防止フィルムの透明性を向上させることができるとともに、帯電防止層の耐擦傷性を一定値以上に維持できる。
帯電防止層において、金属酸化物粒子の、アクリレート系バインダー組成物に対する比率は、特定の範囲となる。金属酸化物粒子の、アクリレート系バインダー組成物に対する重量比は、27重量%以上、好ましくは45重量%以上、より好ましくは60重量%以上であり、一方200重量%以下、好ましくは100重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。金属酸化物粒子のアクリレート型バインダー組成物に対する比率を前記下限値以上にすることにより、帯電防止層の表面抵抗値を小さくして、帯電防止性能を良好にできる。また、前記上限値以下にすることにより、帯電防止層のヘイズを小さくできるので、帯電防止フィルムの透明性を向上させることができるとともに、帯電防止層の耐擦傷性を一定値以上に維持できる。
[3.3.任意の成分]
帯電防止層は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述したアクリレート系バインダー組成物及び金属酸化物粒子以外に、任意の成分を含んでいてもよい。
[3.4.帯電防止層の残留二重結合率Dre]
帯電防止層は、残留二重結合率Dreが、2.5<Dre<6.1を満たす。ここで、残留二重結合率Dreは、下記の式により定義される。
Dre=((AC−H/AC=O)×(Wa/(Wa+Wm)))×100
上記式において、AC−Hは、前記帯電防止層の赤外吸収スペクトルにおける、アクリレート構造が有するC−H結合の面外変角振動にかかる赤外吸収であり、AC=Oは、前記帯電防止層の赤外吸収スペクトルにおける、アクリレート構造が有するC=O結合の伸縮振動にかかる赤外吸収とアクリレート構造のC=O結合に由来するC=O結合の伸縮振動にかかる赤外吸収との和であり、Wa/(Wa+Wm)は、アクリレート系バインダー組成物の、アクリレート系バインダー組成物及び金属酸化物粒子に対する重量比率である。
Waは、単位体積の帯電防止層におけるアクリレートバインダー組成物の含有重量であり、Wmは単位体積の帯電防止層における金属酸化物粒子の含有重量である。
Wa及びWmは通常はそれぞれ、帯電防止層を得るための帯電防止剤に配合した、アクリレート系重合性単量体の重量及び金属酸化物粒子の重量としてよく、Wa/(Wa+Wm)は、通常は帯電防止剤における、アクリレート系重合性単量体の、アクリレート系重合性単量体及び金属酸化物粒子に対する重量比率としてよい。
帯電防止層の赤外吸収スペクトルは、例えば、全反射測定法(ATR法)により測定することができる。
測定装置としては、Perkinelmer製「Spectrum Spotlight 300」を使用し得る。
アクリレートが重合すると、アクリレート構造が有するビニル基はエチレン基に変換され、ビニル基に結合するカルボニル基は、エチレン基に結合するカルボニル基となる。「アクリレート構造のC=O結合に由来するC=O結合」とは、アクリレートが重合した結果出現する、エチレン基に結合するカルボニル基のC=O結合を意味する。
アクリレート構造が有するC=O結合の伸縮振動にかかるピークと、アクリレート構造のC=O結合に由来するC=O結合の伸縮振動にかかるピークとが分離せず単一のピークとなっている場合は、かかる単一のピークの赤外吸収を、アクリレート構造が有するC=O結合の伸縮振動にかかる赤外吸収とアクリレート構造のC=O結合に由来するC=O結合の伸縮振動にかかる赤外吸収との和としてよい。
C−H/AC=Oの値として、アクリレート構造が有するC−H結合の面外変角振動にかかるピークの面積(areaC−H)を、アクリレート構造が有するC=O結合の伸縮振動にかかるピークの面積及びアクリレート構造のC=O結合に由来するC=O結合の伸縮振動にかかるピークの面積の和(areaC=O)で除した値(areaC−H/areaC=O)を用いてよい。
赤外吸収スペクトルにおいて、アクリレート構造が有するC−H結合の面外変角振動にかかるピークは、通常810cm−1付近に現れる。また、アクリレート構造が有するC=O結合の伸縮振動にかかるピーク及びアクリレート構造のC=O結合に由来するC=O結合の伸縮振動にかかるピークは、通常どちらも1720cm−1付近に現れる。
C−H/AC=Oの値は、アクリレート系バインダー組成物に含まれる、未反応であるアクリレート構造の量に依存して定まる値であり、Dreの値は、帯電防止層の単位体積に含まれる、未反応であるアクリレート構造の量に依存して定まる値である。
Dreの値が、2.5<Dre<6.1を満たすことで、帯電防止性が良好であり、かつ耐光性に優れる帯電防止フィルムが得られる。帯電防止性は、帯電防止層の表面抵抗値を測定することにより確認し得る。耐光性に優れることは、耐光性試験後における帯電防止フィルムの抵抗値変化率が小さいことにより確認し得る。表面抵抗値及び抵抗値変化率については後で詳述する。
Dreの値が、2.5<Dre<6.1を満たすことで、帯電防止性が良好であり、かつ耐光性に優れる帯電防止フィルムが得られる理由は明らかではないが、以下のように推測される。
帯電防止層の帯電防止性能は、帯電防止層の抵抗値が低いほど良好であるといえるが、帯電防止層の抵抗値は、層中に金属酸化物粒子が良好に分散しているほど低い値となると推測される。
帯電防止層の製造過程において又は耐光性試験において、アクリレート系重合性単量体を急激に重合してアクリレート系バインダー重合体とすると、帯電防止層の体積が急激に収縮し、アクリレート系バインダー組成物に分散している金属酸化物粒子が粒状に凝集するため、帯電防止層の抵抗値が上昇すると推測される。Dreの値を、2.5<Dre<6.1を満たすものにすることによって、帯電防止層の製造過程又は耐光性試験において重合するアクリレート系重合性単量体の量を、金属酸化物粒子が粒状に凝集しない程度に制御することができ、その結果帯電防止性が良好であり、かつ耐光性試験後における抵抗値変化率が小さい帯電防止フィルムが実現できると推測される。
ただし、上記推測により、本発明は限定されない。
Dreの値は、2.5より大きく、好ましくは3.2以上であり、より好ましくは3.7以上である。Dreの値をこのように大きくすることにより、帯電防止性が良好な帯電防止フィルムとし得る。
Dreの値は、6.1未満であり、好ましくは5.4以下であり、より好ましくは4.8以下である。Dreの値をこのように小さくすることにより、帯電防止フィルムの抵抗値変化率を小さいものとして、耐光性に優れた帯電防止フィルムとし得る。
Dreの値は、帯電防止層の製造過程において、照射する活性エネルギー線の照射強度及び時間を調整することにより制御し得る。
[3.5.帯電防止層の表面抵抗値]
帯電防止層の表面抵抗値は、好ましくは1.0×10Ω/□以上であり、より好ましくは1.0×10Ω/□以上であり、さらに好ましくは1.0×10Ω/□以上であり、特に好ましくは1.5×10Ω/□以上であり、好ましくは7.0×10Ω/□以下であり、より好ましくは6.0×10Ω/□以下であり、特に好ましくは5.5×10Ω/□以下である。
帯電防止層の表面抵抗値が低いほど、帯電防止性が良好である。
上記の残留二重結合率Dre値が小さいほど、表面抵抗値が高く、Dre値が大きいほど、表面抵抗値が低い傾向があるため、残留二重結合率Dreを制御することにより、表面抵抗値を上記の範囲とし得る。
帯電防止層の表面抵抗値及びは、JIS K6911に準拠した測定法により測定し得る。測定装置としては、三菱化学アナリテック社製「ハイレスタ−UX MCP−HT800」を使用し得る。
[3.6.帯電防止層の抵抗値変化率]
本発明の帯電防止フィルムによれば、紫外線照射による耐光性試験後における帯電防止層の抵抗値変化率を小さいものとすることができる。
ここで、耐光性試験後における帯電防止層の抵抗値変化率は、下記実施例の項目(初期抵抗値の測定方法)及び項目(耐光性試験)に記載された方法に従い測定された数値を意味し、抵抗値変化率は、耐光性試験後の抵抗値(R1)/初期抵抗値(R0)により算出される。
本発明の帯電防止フィルムは、帯電防止層の紫外線照射による耐光性試験後の抵抗値変化率が、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.0より大きく、さらに好ましくは1.7以上であり、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは4.7未満であり、より好ましくは4.1以下であり、特に好ましくは3.5以下である。
残留二重結合率Dreを大きくするほど、初期抵抗値は小さく抵抗値変化率が大きく、残留二重結合率Dreを小さくするほど、初期抵抗値は大きく抵抗値変化率は小さくなる傾向がある。したがって、残留二重結合率Dreを制御することにより、初期抵抗値と抵抗値変化率を所定の範囲内のものとし得る。
[3.7.帯電防止層の構造]
帯電防止層は、2層以上の層を備える複層構造を有していてもよいが、1層のみからなる単層構造を有していることが好ましい。帯電防止層が単層構造を有することにより、帯電防止層を容易に製造でき、且つ、帯電防止フィルムの厚みを薄くできる。
帯電防止層の厚みは、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは0.8μm以上であり、特に好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは10.0μm以下であり、より好ましくは5.0μm以下であり、特に好ましくは3.0μm以下である。
帯電防止層の厚みは、干渉式膜厚計(フィルメトリクス社製「F20膜厚測定システム」)にて測定し得る。
[4.帯電防止フィルムの物性及び形状]
[4.1.屈折率]
帯電防止層と基材フィルムとの屈折率差の絶対値は、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.07以下であり、特に好ましくは0.05以下である。屈折率差の絶対値をこのように小さくすることにより、基材フィルム層と帯電防止層との界面での光の反射を抑制できる結果、帯電防止フィルムを透明性に優れたものとすることができ、また帯電防止フィルムに光の干渉模様が現れることを抑制し得る。また、帯電防止層の塗工ムラ及びスポットムラを視認し難くできるので、帯電防止フィルムの外観を良好にし易い。
[4.2.帯電防止フィルムのヘイズ値]
帯電防止フィルムのヘイズ値は、好ましくは0.3%以下であり、より好ましくは0.2%以下であり、特に好ましくは0.1%以下である。帯電防止フィルムのヘイズ値の下限は、理想的には0%としうる。
帯電防止フィルムのヘイズ値は、JIS K7136に準拠して、ヘイズメーター(東洋精機社製「ヘイズガードII」)を用いて測定しうる。
[4.3.帯電防止フィルムの全光線透過率]
帯電防止フィルムの全光線透過率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは86%以上であり、特に好ましくは87%以上である。帯電防止フィルムの全光線透過率の上限は、理想的には100%としうる。
帯電防止フィルムの全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長380nm〜780nmの範囲で測定しうる。
帯電防止フィルムの全光線透過率は、JIS K7361−1に準拠して測定し得る。測定装置としては、ヘイズメーター(東洋精機社製「ヘイズガードII」)を用い得る。
[4.4.帯電防止フィルムの形状]
本発明の帯電防止フィルムの形状に限定はなく、長尺のフィルムであってもよく、枚葉のフィルムであってもよい。通常、製造効率を高める観点から、帯電防止フィルムは長尺のフィルムとして製造される。本発明の帯電防止フィルムが長尺のフィルムである場合、通常フィルムは巻き取られてロール状となっている。また、枚葉の帯電防止フィルムを製造する場合には、通常は、長尺の帯電防止フィルムを所望の形状に切り出すことにより、枚葉の帯電防止フィルムを製造する。
[5.帯電防止フィルムの製造方法]
本発明の帯電防止フィルムは、アクリレート系重合性単量体及び金属酸化物粒子を含む帯電防止剤を前記基材フィルムに塗工して帯電防止層を形成することにより製造し得る。
アクリレート系重合性単量体は、通常、紫外線等の活性エネルギー線の照射により重合しうる。したがって、帯電防止剤は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン誘導体、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシアセトフェノン類、α−アミノアセトフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類、o−アシルオキシム類等が挙げられる。また、市販の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン/アミン、ミヒラーケトン/ベンゾフェノン、チオキサントン/アミンなどの組み合わせ(商品名:イルガキュアやダロキュアなど、チバガイギー社製)等が挙げられる。光重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤の量は、アクリレート系重合性単量体100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは2重量部以上、特に好ましくは3重量部以上であり、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下、特に好ましくは5重量部以下である。光重合開始剤の量を前記の範囲にすることで、重合性単量体の重合を効率良く進行させることができ、かつ光重合開始剤の過剰混合を避けて、未反応の光重合開始剤起因の帯電防止層の黄変や膜物性の変化を抑制することができる。
帯電防止剤は、溶媒を含みうる。溶媒としては、アクリレート系重合性単量体を溶解でき、且つ、容易に揮発しうるものが好ましい。このような溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコール等のアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、シクロヘキサノン等のケトン類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;トルエン、キシレン等の芳香族化合物;イソホロン等が挙げられる。また、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
前記の溶媒の中でも、親水性の溶媒が好ましい。親水性の溶媒を用いることにより、帯電防止剤を塗工する際に、空気中の水分を吸収することによる白化を抑制できる。具体的には、エタノール、メタノール、イソプロパノール(IPA)の混合溶媒が好ましい。
さらに、前記の溶媒の中でも、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン及びアセチルアセトンは、塗工した帯電防止剤の膜の表面の平坦性が向上することから、好ましい。
また、金属酸化物粒子を、水を含む分散液の状態で用意にする場合には、帯電防止剤の溶媒として、水溶性を有する溶媒を用いることが好ましい。
溶媒の量は、帯電防止剤の固形分濃度が所望の範囲に収まるように設定することが好ましい。ここで、帯電防止剤の固形分濃度は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、特に好ましくは30重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは55重量%以下である。帯電防止剤における固形分の濃度を前記の範囲に収めることにより、帯電防止層の厚みを適切な範囲に収めやすく、充分な帯電防止性能を有する帯電防止層を製造しやすい。さらに、通常は、帯電防止層のヘイズを低くできるので、帯電防止フィルムの透明性を良好にできる。また、通常は、帯電防止層のクラック、基材フィルムの反りを抑制できる。さらに、帯電防止剤の粘度を低くできるので、帯電防止剤の塗工性を良好にできる。そのため、帯電防止層の表面の平坦性を高めることができ、筋ムラの発生を抑制できる。
さらに、帯電防止剤は、帯電防止層が含み得る任意の成分を含んでいてもよい。
帯電防止剤は、帯電防止剤が含む各成分を適切な混合装置で混合することにより、得られる。混合装置としては、例えば、ホモミキサーなどが挙げられる。
帯電防止剤を用意した後で、この帯電防止剤を基材フィルム上に塗工して、基材フィルム上に帯電防止剤の膜を形成することが好ましい。そして、必要に応じて乾燥により帯電防止剤の膜から溶媒を除去した後で、紫外線等の活性エネルギー線を照射してアクリレート系重合性単量体を重合することにより帯電防止剤の膜を硬化させて、帯電防止層を得ることが好ましい。
塗工方法としては、例えば、バーコート法、スロットコート法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
[6.偏光板]
本発明の帯電防止フィルムは、偏光子と組み合わせて偏光板として用いられ得る。
本発明の偏光板は、偏光子と、当該偏光子の少なくとも片側に設けられた帯電防止フィルムを備える。
偏光子としては、直角に交わる二つの直線偏光の一方を透過し、他方を吸収又は反射しうるフィルムを用いうる。偏光子の具体例を挙げると、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系重合体のフィルムに、ヨウ素、二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適切な処理を適切な順序及び方式で施したものが挙げられる。特に、ポリビニルアルコールを含む偏光子が好ましい。また、偏光子の厚さは、通常、5μm〜80μmである。
偏光板において、帯電防止フィルムの基材フィルムが1/4波長板である場合には、偏光子の透過軸に対して帯電防止フィルムの基材フィルムの遅相軸が、所定の角度θをなすように配置することが好ましい。前記の角度θは、具体的には、好ましくは40°以上、より好ましくは43°以上であり、好ましくは50°以下、より好ましくは48°以下であり、特に好ましくは45°±1°の範囲内の角度である。このように配置することで、液晶セル及び偏光子を透過し、帯電防止フィルムを通って進む偏光を円偏光又は楕円偏光に変換できるので、液晶表示装置の使用者が偏光サングラスを装着した状態でも、表示内容を視認可能にすることができる。
偏光板は、偏光子の片側に帯電防止フィルムを貼り合せることにより、製造できる。
貼り合せに際しては、必要に応じて接着剤を用いてもよい。偏光子と帯電防止フィルムを貼り合せて偏光板を得る場合、通常は、偏光子、基材フィルム及び帯電防止層がこの順になるように貼り合せを行う。
接着剤としては、任意の接着剤を使用でき、例えば、ゴム系、フッ素系、アクリル系、ポリビニルアルコール系、ポリウレタン系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系、エポキシ系などの接着剤を用いうる。また、これらの接着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、偏光子と帯電防止フィルムとの間には、例えばアクリル系接着剤層のような紫外線硬化型の接着剤層を設け、この紫外線硬化型の接着剤層によって偏光子と帯電防止フィルムとを貼り合わせることが好ましい。これにより、偏光子に対する水分の影響を小さくできるので、偏光子の劣化を抑制できる。この際、接着剤層の膜厚は0.1μm以上2.0μm以下が好ましい。
偏光板は、上述した偏光子、帯電防止フィルムに組み合わせて、さらに任意の層を備えてもいてもよい。例えば、偏光板は、帯電防止フィルム以外の任意の保護フィルム(偏光板保護フィルム)を、偏光子の保護のために備えていてもよい。このような保護フィルムは、通常、帯電防止フィルムとは反対側の偏光子の面に設けられる。
任意の保護フィルムとしては、光学的に等方な等方性フィルムを用いてもよく、所望のレターデーションを有する位相差フィルムを用いてもよい。任意の保護フィルムとして位相差フィルムを用いる場合、その位相差フィルムは光学補償機能を発揮して、視野角依存性を改善したり、斜視時の偏光子の光漏れ現象を補償して液晶表示装置の視野角特性を改善したりできる。このような位相差フィルムとしては、例えば、縦一軸延伸フィルム、横一軸延伸フィルム、縦横二軸延伸フィルム、液晶性化合物を重合させてなる位相差フィルム、などを用いうる。位相差フィルムの具体例としては、ノルボルネン系重合体などの脂環式構造を有する重合体を含む樹脂などの熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂フィルムを一軸延伸または二軸延伸したものが挙げられる。また、市販の熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、日本ゼオン社製の「ゼオノアフィルム」;積水化学工業社製の「エスシーナ」及び「SCA40」;JSR社製の「アートンフィルム」などが挙げられる。
[7.タッチパネル]
本発明の帯電防止フィルムは、タッチパネル部材と組み合わせてタッチパネルとして用いられ得る。組み合わせるタッチパネル部材としては、任意の方式のものを使用し得る。
タッチパネル部材とは、表示装置に設けられ、必要に応じて表示装置の表示面に表示された画像を参照しながら、所定の箇所に使用者が触れることで情報の入力を行えるように設けられたセンサー部材である。タッチパネル部材の方式としては、ガラスやフィルム等の基材上にパターン化した電極を液晶セルとは別個に設置するアウトセル方式、パターン化した電極を液晶セル内部に一体化したインセル方式、パターン化した電極を液晶セル外部に一体化したオンセル方式等があり、これらのいずれも使用し得る。
タッチパネルは、偏光子を含んだものとし得る。
また、本発明の帯電防止フィルムと偏光子とを含む偏光板を、タッチパネル部材と組み合わせて、偏光板を含むタッチパネルとし得る。
[8.液晶表示装置]
本発明の帯電防止フィルムは、液晶表示装置に用いられ得る。
本発明の帯電防止フィルムは、タッチパネル部材を備える画像表示装置に設けることが好ましい。また、液晶表示装置は、本発明の帯電防止フィルムを含むタッチパネルを備えたものとすることが好ましい。本発明の帯電防止フィルムを搭載したタッチパネルを備える液晶表示装置は、通常、液晶セルと、液晶セルの視認側に設けられた偏光子と、偏光子の視認側に設けられた帯電防止フィルムとを備え、さらにタッチパネル部材を備える。この際、タッチパネル部材が搭載される位置としては、その液晶表示装置の構成によりさまざまであり、視認側(使用者が画像を視認する側)より(1)タッチパネル部材/帯電防止フィルム/偏光子/液晶セル、(2)帯電防止フィルム/タッチパネル部材/偏光子/液晶セル、(3)帯電防止フィルム/偏光子/タッチパネル部材/液晶セル、(4)帯電防止フィルム/偏光子/オンセルタッチパネル部材付液晶セル、(5)帯電防止フィルム/偏光子/インセルタッチパネル部材付液晶セルなどの構成が挙げられる。上記の構成において、帯電防止フィルムは予め偏光子、タッチパネル部材、あるいは液晶セルと一体化された状態で用いてもよく、タッチパネル部材を備える液晶表示装置に帯電防止フィルムを粘着剤を用いて後付けする形態で用いても良い。この中でも特に(5)帯電防止フィルム/偏光子/インセルタッチパネル部材付液晶セルの構成は、タッチパネルの帯電による液晶セルの表示品位の低下の影響を受けやすく、本発明の帯電防止フィルムの機能が最も発揮される構成である。したがって、本発明の帯電防止フィルムを含む液晶表示装置は、上記(5)の構成とすることが好ましい。
本発明の帯電防止フィルムは耐光性に優れるので、前記の液晶表示装置は、液晶セルの液晶分子の駆動制御を安定化させることができる。また、特に帯電防止フィルムの基材フィルムが脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる場合は、耐熱性及び耐湿性を良好にでき、さらに、貼り合わせに際して水系の接着剤を使用する必要がないため、高温高湿下での耐久試験での品質低下を抑制できる。さらに帯電防止フィルムの基材フィルムが紫外線吸収剤を含む場合、液晶表示装置を製造するときに浴びる紫外線、及び、液晶表示装置を使用するときに浴びる外光中の紫外線から、液晶セル及び偏光子等の構成部材を保護できる。
液晶表示装置としては、TN方式、VA方式、IPS方式等の任意のものを使用しうる。その中でも、IPS方式の液晶表示装置が、視野角が変わった場合に液晶表示の表示色が変わらないため、好ましい。また、液晶表示装置をタッチパネルセンサーとして使用する場合には、液晶表示装置全体の厚さの低減のため、インセルタイプの液晶セルを使用してもよい。
液晶表示装置において、液晶セルと帯電防止フィルムの帯電防止層とは導通されていることが好ましい。これにより、液晶セルに貯まった電荷を帯電防止層に逃がして液晶セルの帯電を抑制できるので、液晶セルの液晶分子の駆動制御を効果的に安定化させることができる。
液晶表示装置において、帯電防止フィルムは、通常、帯電防止層よりも基材フィルムの方が液晶セルに近くなる向きで設ける。
液晶セル、タッチパネル部材、偏光板保護フィルム、偏光子及び帯電防止フィルムのような液晶表示装置の構成部材は、貼り合わせられて一体化されていてもよい。例えば、偏光板保護フィルム、偏光子及び帯電防止フィルムを貼りあわせて、単一の偏光板としてもよい。また、この偏光板と液晶セルとを貼りあわせて、偏光板を液晶セルに固定してもよい。このような場合、前記の構成部材は、適切な接着剤層によって貼り合わせられていてもよく、部材表面のプラズマ処理等の方法によって直接に貼り合わせられていてもよい。
前記の接着剤層に用いられる接着剤としては、上述の任意の接着剤を使用できる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものでは無く、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
[評価方法]
(金属酸化物粒子の平均連結数の測定方法)
金属酸化物粒子の鎖状連結体の写真を、透過型電子顕微鏡によって撮影した。この写真から、金属酸化物粒子の鎖状連結体100個について、それぞれの鎖状連結体における連結数を求め、その平均値を計算し、小数点以下1桁を四捨五入して、金属酸化物粒子の平均連結数を求めた。
(基材フィルムの厚みの測定方法)
基材フィルムの厚みは、接触式膜厚計(ミツトヨ社製「ダイヤルゲージ」)にて測定した。
(基材フィルムの測定波長380nmにおける光線透過率の測定方法)
基材フィルムの測定波長380nmにおける光線透過率は、分光光度計(日本分光社製「V−7200」)にて測定した。
(帯電防止層の残留二重結合率の測定方法)
帯電防止層の残留二重結合率は、下記の通りの方法で算出した。
帯電防止層の赤外吸収スペクトルを、ATR法により測定した。
具体的には、ATR測定装置(機種名「Spectrum Spotlight 300」、Perkinelmer製)により、プリズムとしてZeSeを用いて1回反射の条件で、帯電防止フィルムの表面に露出した帯電防止層の赤外吸収スペクトルを測定した。AC−Hとして810cm−1付近に現れたピークの面積(a1)、及びAC=Oとして1720cm−1付近に現れたピークの面積(a2)からa1/a2を算出してAC−H/AC=Oの値とした。
帯電防止剤における、アクリレート系重合性単量体の、アクリレート系重合性単量体及び金属酸化物粒子に対する重量比率、すなわち、(アクリレート系重合性単量体の配合重量)/((アクリレート系重合性単量体の配合重量)+(金属酸化物粒子の配合重量))の値を算出し、Wa/(Wa+Wm)の値とした。
C−H/AC=O×Wa/(Wa+Wm)×100を算出し、帯電防止層の残留二重結合率Dreの値とした。
(帯電防止層の表面抵抗値の測定方法)
後述する耐光性試験を行う前の帯電防止フィルムを10cm×10cmの正方形に切り出して、試料フィルムを得た。この試料フィルムの基材フィルム側の面に接するようにフッ素樹脂の板を配置し、帯電防止層側の表面抵抗率を、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製「ハイレスタ−UX MCP−HT800」、プローブURSを装着)を用いて、500V、10秒の条件で測定した。表面抵抗値が小さいほど、帯電防止性に優れている。
(初期抵抗値の測定方法)
帯電防止フィルム(導電性ハードコート保護膜)を切断し、45mm×50mmの矩形のサンプルを得た。矩形のサンプルの辺の方向は、長尺状の基材フィルムの長手方向及び幅方向と平行な方向とし、長手方向を50mm、幅方向を45mmとした。
帯電防止フィルムの基材フィルム側に45mm×50mmに切断した粘着シート(CS9621T:日東電工社製、厚さ20μm)、偏光フィルム(サンリッツ社製「HLC2−5618S」)、粘着シート(CS9621T:日東電工社製、厚さ20μm)、ガラス(厚み0.7mm)をこの順に、帯電防止フィルムをすべて覆うように貼合した。一方、帯電防止層の上に、45mm×45mmの青板ガラス(厚み0.7mm)を粘着シート(CS9621T:日東電工社製、厚さ20μm)を用いて貼合した。このとき、帯電防止層の長辺方向の両端部が2.5mmずつ余るように貼合した。これにより、(青板ガラス)/(粘着シート)/(帯電防止層)/(基材フィルム)/(粘着シート)/(偏光フィルム)/(粘着シート)/(青板ガラス)の層構成を有し、端部において帯電防止層が露出した構造を有する積層体を得た。
得られた積層体の帯電防止層が露出した部分に、銀ペーストを塗布し、室温で24時間乾燥し、テストピースを作成した。
テストピースの両端の導電テープそれぞれに、ワニグチクリップを介してテスターを接続し、電圧250Vの条件で抵抗値の測定を開始した。測定開始から30秒経過した時点の測定値を初期抵抗値R0とした。
(耐光性試験)
初期抵抗値の測定後、テストピースの青板ガラス側の面に、紫外線を照射した。照射は、紫外線オートフェードメーター(U48AUB:スガ試験機社製)を用いて、500W/m、ブラックパネル温度63℃の条件で行った。照射開始後96時間経過した時点、192時間経過した時点、288時間経過した時点での抵抗値のうち、最も大きい値を最大抵抗値R1とし、抵抗値変化率として、R1/R0の値を求めた。この値に基づいて、耐光性を評価した。抵抗値変化率が小さいほど、耐光性が優れる。
(帯電防止フィルムのヘイズ値の測定方法)
帯電防止フィルムのヘイズ値は、JIS K7136に準拠して、ヘイズメーター(東洋精機社製「ヘイズガードII」)を用いて測定した。
(帯電防止フィルムの全光線透過率の測定方法)
帯電防止フィルムの全光線透過率は、JIS K7361−1に準拠して、ヘイズメーター(東洋精機社製「ヘイズガードII」)を用いて測定した。
(帯電防止層の厚みの測定方法)
帯電防止層の厚みは、干渉式膜厚計(フィルメトリクス社製「F20膜厚測定システム」)にて測定した。
(基材フィルム及び帯電防止層の屈折率の測定方法)
基材フィルム及び帯電防止層の屈折率は、屈折率膜厚測定装置(Metricon社製「プリズムカプラ」)にて、波長407nm、波長532nm、及び波長633nmの3波長で測定した。基材フィルムが延伸フィルムである場合は、延伸方向の屈折率(ns)、延伸方向に垂直な面内方向の屈折率(nf)、厚み方向の屈折率(nz)から、(ns+nf+nz)/3の式で基材フィルムの平均屈折率を計算し、この平均屈折率を当該基材フィルムの屈折率の測定値として採用した。また、基材フィルムが、一軸延伸フィルムである場合、厚み方向の屈折率(nz)は、延伸方向に垂直な面内方向の屈折率(nf)と等しいと近似して計算した。帯電防止層は、配向しておらず屈折率はどの方向でも一定であるため、長手方向の屈折率を当該帯電防止層の屈折率の測定値として採用した。この測定した値を元にコーシーフィッティングを行い、波長550nmでの基材フィルム及び帯電防止層それぞれの屈折率を算出した。
[製造例1:金属酸化物粒子の製造]
錫酸カリウム130gと酒石酸アンチモニルカリウム30gを純水400gに溶解した混合溶液を調製した。
硝酸アンモニウム1.0gと15%アンモニア水12gを純水1000gに溶解させた水溶液を用意した。この水溶液を60℃で撹拌しながら、この水溶液に前記の混合溶液を12時間かけて添加して、加水分解を行った。また、この際、前記の水溶液をpH9.0に保つように、10%硝酸溶液を前記水溶液に同時に添加した。加水分解により、水溶液中に沈殿物が生成した。
生成した沈殿物を濾別洗浄した後、再び水に分散させて、固形分濃度20重量%のSbドープ酸化スズ前駆体の水酸化物の分散液を調製した。この分散液を温度100℃で噴霧乾燥して、粉末を得た。得られた粉体を、空気雰囲気下、550℃で2時間加熱処理することにより、アンチモンドープ酸化スズの粉末を得た。
この粉末60部を、濃度4.3重量%の水酸化カリウム水溶液140部に分散させて、水分散液を得た。この水分散液を30℃に保持しながらサンドミルで3時間粉砕して、ゾルを調製した。次に、このゾルに、イオン交換樹脂で、pHが3.0になるまで脱アルカリイオン処理を行った。次いで、このゾルに純水を加えて、アンチモンドープ酸化スズの粒子を固形分濃度20重量%で含む、粒子分散液を調製した。この粒子分散液のpHは、3.3であった。また粒子の平均粒子径は、9nmであった。
次いで、前記の粒子分散液100gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学製:正珪酸エチル、SiO濃度28.8%)4.0gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後、これにエタノール100gを1分かけて添加し、30分間で50℃に昇温し、15時間加熱処理を行った。加熱処理後の分散液の固形分濃度は10%であった。
次いで、限外濾過膜にて、分散媒である水及びエタノールをエタノールに置換した。これにより、金属酸化物粒子(P1)として、シリカで被覆されたアンチモンドープ酸化スズの粒子を固形分濃度20%で含む分散液を得た。前記の金属酸化物粒子(P1)は、複数個が凝集することにより鎖状に連結していた。このとき、金属酸化物粒子(P1)の平均連結数は、5個であった。
[製造例2−1:帯電防止剤(A1)の製造]
アクリレート系重合性単量体である、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、「DP6A」と略記することがある。)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(以下、「DP5A」と略記することがある。)及びジペンタエリスリトールテトラアクリレート(以下、「DP4A」と略記することがある。)を含む、紫外線硬化型の重合性単量体の組成物(R1)を用意した。この重合性単量体の組成物(R1)において、各成分の重量比は、DP6A/DP5A/DP4A=64/17/19であった。また、重合性単量体の組成物(R1)の固形分の濃度は100%であった。
イソホロンジイソシアネート222重量部と、ペンタエリスリトールトリアクリレート(以下、「PE3A」と略記することがある。)及びペンタエリスリトールテトラアクリレート(以下、「PE4A」と略記することがある。)の混合物(PE3A/PE4A=75/25(重量比))795重量部とのウレタン反応アクリレートである多官能ウレタンアクリレート(U1)を用意した。この多官能ウレタンアクリレート(U1)は、アクリレート系重合性単量体である。この多官能ウレタンアクリレート(U1)の固形分の濃度は100%であった。
エタノール、ノルマルプロピルアルコール、メタノール及び水の混合物であるミックスエタノールを用意した。このミックスエタノールにおいて、各成分の重量比は、エタノール/ノルマルプロピルアルコール/メタノール/水=85.5/9.6/4.9/0.2であった。
前記の重合性単量体の組成物(R1)13.7重量部、前記の多官能ウレタンアクリレート(U1)1.5重量部、メチルエチルケトン7.3重量部、前記のミックスエタノール7.3重量部、アセチルアセトン7.3重量部、及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」固形分100%)0.86重量部を十分混合して、混合液を得た。この混合液に、製造例1で製造した金属酸化物粒子(P1)(固形分20%)の分散液21.7重量部、及び、アクリル系界面活性剤(固形分100%)0.24重量部を加え、均一に混合して、帯電防止剤(A1)として活性エネルギー線硬化性を有する液状組成物を得た。帯電防止剤(A1)は、アクリレート系重合性単量体(重合性単量体の組成物(R1)及び多官能ウレタンアクリレート(U1))の、アクリレート系重合性単量体及び金属酸化物粒子(P1)に対する重量比率が、0.78である。また、金属酸化物粒子のアクリレート系重合性単量体に対する重量比率が、0.28(28重量%)である。
[製造例2−2:帯電防止剤(A2)の製造]
製造例2−1と同様にして調製した重合性単量体の組成物(R1)10.3重量部、製造例2−1と同様にして調製した多官能ウレタンアクリレート(U1)1.1重量部、メチルエチルケトン7.3重量部、製造例2−1と同様にして調製したミックスエタノール7.3重量部、アセチルアセトン7.3重量部、及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」固形分100%)0.86重量部を十分混合して、混合液を得た。この混合液に、製造例1で製造した金属酸化物粒子(P1)(固形分20%)の分散液41.1重量部、及び、アクリル系界面活性剤(固形分100%)0.24重量部を加え、均一に混合して、帯電防止剤(A2)として活性エネルギー線硬化性を有する液状組成物を得た。帯電防止剤(A2)は、アクリレート系重合性単量体(重合性単量体の組成物(R1)及び多官能ウレタンアクリレート(U1))の、アクリレート系重合性単量体及び金属酸化物粒子(P1)に対する重量比率が、0.58である。また、金属酸化物粒子のアクリレート系重合性単量体に対する重量比率が、0.72(72重量%)である。
[実施例1]
(1−1.基材フィルムの製造)
乾燥させた脂環式構造を有する重合体を含む熱可塑性樹脂(COP1)(日本ゼオン社製、ガラス転移温度123℃)100部、及び、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA−31」)5.5部を、二軸押出機により混合した。次いで、その混合物を、押出機に接続されたホッパーへ投入し、単軸押出機へ供給し溶融押出して、紫外線吸収剤を含む熱可塑性樹脂(J1)を得た。この熱可塑性樹脂(J1)における紫外線吸収剤の量は、5.2重量%であった。
目開き3μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを備えた、ダブルフライト型のスクリュー径50mm単軸押出機(スクリュー有効長さLとスクリュー径Dとの比L/D=32)を用意した。この単軸押出機に装填されたホッパーへ、前記の熱可塑性樹脂(J1)を投入した。そして、この熱可塑性樹脂(J1)を溶融させ、押出機の出口温度280℃、押出機のギヤポンプの回転数10rpmで、溶融した熱可塑性樹脂(J1)をマルチマニホールドダイに供給した。このマルチマニホールドダイのダイスリップの算術表面粗さRaは、0.1μmであった。
他方、熱可塑性樹脂(J1)を投入された単軸押出機とは別に、目開き3μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを備えた、スクリュー径50mmの単軸押出機(L/D=32)を用意した。この単軸押出機に装填されたホッパーへ、熱可塑性樹脂(J1)の製造に用いたのと同様の脂環式構造を有する重合体を含む熱可塑性樹脂(COP1)を投入した。そして、この熱可塑性樹脂(COP1)を溶融させ、押出機の出口温度285℃、押出機のギヤポンプの回転数4rpmで、溶融した熱可塑性樹脂(COP1)を前記のマルチマニホールドダイに供給した。
溶融状態の熱可塑性樹脂(COP1)、紫外線吸収剤を含む溶融状態の熱可塑性樹脂(J1)、及び、溶融状態の熱可塑性樹脂(COP1)を、それぞれマルチマニホールドダイから280℃で吐出させ、150℃に温度調整された冷却ロールにキャストして、延伸前フィルムを得た。樹脂の吐出の際、エアギャップ量は50mmに設定した。また、吐出された樹脂を冷却ロールにキャストする方法として、エッジピニングを採用した。
得られた延伸前フィルムは、熱可塑性樹脂(COP1)からなる厚み15μmの樹脂層、紫外線吸収剤を含む熱可塑性樹脂(J1)からなる厚み40μmの樹脂層、及び、熱可塑性樹脂(COP1)からなる厚み15μmの樹脂層をこの順に備える、3層構造の複層フィルムであった。また、延伸前フィルムの幅は1400mm、総厚みは70μmであった。こうして得た延伸前フィルムに、当該延伸前フィルムの幅方向の両端部50mmずつを切り除くトリミング処理を施して、幅を1300mmにした。
前記の延伸前フィルムに、延伸温度140℃、延伸速度20m/minの条件で、延伸前フィルムの長手方向に対して平行でもなく垂直でもない斜め方向に延伸して、基材フィルムとして延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムは、熱可塑性樹脂(COP1)からなる厚み8μmの第一表面層、紫外線吸収剤を含む熱可塑性樹脂(J1)からなる厚み31μmの中間層、及び、熱可塑性樹脂(COP1)からなる厚み8μmの第二表面層をこの順に備える、3層構造の複層フィルムであった。また、この延伸フィルムの幅は1330mm、厚みは47μmであり、遅相軸は延伸フィルムの長手方向に対して45°の角度をなしていた。
この延伸フィルムの測定波長550nmでの面内レターデーションは100nm、測定波長380nmにおける光線透過率は0.02%、屈折率は1.53であった。
(1−2.帯電防止フィルムの製造)
基材フィルムとしての延伸フィルムの片面に、コロナ処理(出力0.4kW、放電量200W・min/m)を施し、帯電防止剤(A1)を、硬化後に得られる帯電防止層の厚みが2.2μmとなるようにダイコーターを用いて塗工して、帯電防止剤(A1)の膜を形成した。前記の帯電防止剤(A1)の塗工は、相対湿度50%の環境において行った。その後、この帯電防止剤(A1)の膜を、60℃で2分間乾燥したのち、高圧水銀ランプで積算光量564mJ/cmの光を照射して硬化させることで、帯電防止層を形成した。これにより、基材フィルムと、この基材フィルム上に設けられた帯電防止層とを備える長尺の帯電防止フィルムを得た。
こうして得られた帯電防止フィルムの評価を、上述した方法によって行った。結果を表1に示す。
[実施例2]
帯電防止剤として、製造例2−1で得たA1に代えて、製造例2−2で得たA2を用いた。
帯電防止剤の塗工厚みを変更し、硬化後に得られる帯電防止層の厚みを1.51μmとした。
帯電防止剤の膜の硬化のために照射する光の積算光量を、386mJ/cmに変更した。
以上の点以外は実施例1と同様にして、帯電防止フィルムを得た。得られた帯電防止フィルムを、上述した方法によって評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
帯電防止剤として、製造例2−1で得たA1に代えて、製造例2−2で得たA2を用いた。
帯電防止剤の塗工厚みを変更し、硬化後に得られる帯電防止層の厚みを1.58μmとした。
帯電防止剤の膜の硬化のために照射する光の積算光量を、593mJ/cmに変更した。
以上の点以外は実施例1と同様にして、帯電防止フィルムを得た。得られた帯電防止フィルムを、上述した方法によって評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
帯電防止剤として、製造例2−1で得たA1に代えて、製造例2−2で得たA2を用いた。
帯電防止剤の塗工厚みを変更し、硬化後に得られる帯電防止層の厚みを1.3μmとした。
帯電防止剤の膜の硬化のために照射する光の積算光量を、300mJ/cmに変更した。
以上の点以外は実施例1と同様にして、帯電防止フィルムを得た。得られた帯電防止フィルムを、上述した方法によって評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
帯電防止剤の膜の硬化のために照射する光の積算光量を、188mJ/cmに変更した。
以上の点以外は実施例1と同様にして、帯電防止フィルムを得た。得られた帯電防止フィルムを、上述した方法によって評価した。結果を表2に示す。
[比較例2]
帯電防止剤の膜の硬化のために照射する光の積算光量を、282mJ/cmに変更した。
以上の点以外は実施例1と同様にして、帯電防止フィルムを得た。得られた帯電防止フィルムを、上述した方法によって評価した。結果を表2に示す。
[比較例3]
帯電防止剤として、製造例2−1で得たA1に代えて、製造例2−2で得たA2を用いた。
帯電防止剤の塗工厚みを変更し、硬化後に得られる帯電防止層の厚みを1.11μmとした。
帯電防止剤の膜の硬化のために照射する光の積算光量を、588mJ/cmに変更した。
以上の点以外は実施例1と同様にして、帯電防止フィルムを得た。得られた帯電防止フィルムを、上述した方法によって評価した。結果を表2に示す。
Figure 0006939877
Figure 0006939877
表1によれば、実施例1〜4にかかる帯電防止フィルムは、ヘイズ値が低く良好な透明性を有することがわかる。
図2は、実施例1〜4及び比較例1〜3にかかる帯電防止フィルムの、残留二重結合率と抵抗値変化率との関係を示すグラフである。
図3は、実施例1〜4及び比較例1〜3にかかる帯電防止フィルムの、残留二重結合率と表面抵抗値との関係を示すグラフである。
図2によれば、Dreの値が2.5より大きく6.1未満である実施例1〜4の帯電防止フィルムは、抵抗値変化率が4.7未満であって小さく、帯電防止性の耐光性が優れていることが分かる。一方、Dreの値が6.1以上である、比較例1及び2の帯電防止フィルムは、抵抗値変化率が4.7以上であって大きく、帯電防止性の耐光性が劣ることが分かる。また、図3によれば、Dreの値が2.5より大きく6.1未満である実施例1〜4の帯電防止フィルムは、表面抵抗値が7.0×10Ω/□以下であり、帯電防止性が良好である。一方、Dreの値が2.5以下である比較例3の帯電防止フィルムは、抵抗値変化率が1.9であるが、表面抵抗値が7.1×10Ω/□であって大きく、帯電防止性に劣る。
よって、実施例1〜4の帯電防止フィルムは、ヘイズ値が低く透明性が良好でありながら、良好な帯電防止性及び優れた耐光性の双方を実現していることが分かる。
100 帯電防止フィルム
110 基材フィルム
120 帯電防止層

Claims (19)

  1. 基材フィルムと、
    基材フィルム上に設けられた帯電防止層と、を含む、
    タッチパネルに用いられる帯電防止フィルムであって、
    前記帯電防止層が、アクリレート系バインダー組成物と金属酸化物粒子とを含み、
    前記帯電防止層が、式2.5<Dre<6.1を満たし、
    前記帯電防止層における、前記金属酸化物粒子の前記アクリレート系バインダー組成物に対する重量比が、27重量%以上200重量%以下であり、
    Dreは、式Dre=((AC−H/AC=O)×(Wa/(Wa+Wm)))×100により定義される、前記帯電防止層における残留二重結合率であり、
    C−Hは、前記帯電防止層の赤外吸収スペクトルにおける、アクリレート構造が有するC−H結合の面外変角振動にかかる赤外吸収であり、
    C=Oは、前記帯電防止層の赤外吸収スペクトルにおける、アクリレート構造が有するC=O結合の伸縮振動にかかる赤外吸収とアクリレート構造のC=O結合に由来するC=O結合の伸縮振動にかかる赤外吸収との和であり、
    Waは、単位体積の前記帯電防止層におけるアクリレート系バインダー組成物の重量であり、
    Wmは、単位体積の前記帯電防止層における金属酸化物粒子の重量である、帯電防止フィルム。
  2. 前記帯電防止層が、単層構造を有し、
    前記帯電防止層の厚みが、0.5μm以上10.0μm以下である、請求項1に記載の帯電防止フィルム。
  3. 前記帯電防止層の表面抵抗値が、1.0×10Ω/□以上7.0×10Ω/□以下である、請求項1又は2に記載の帯電防止フィルム。
  4. 前記帯電防止層の紫外線照射による耐光性試験後の抵抗値変化率が、1.0以上4.7未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電防止フィルム。
  5. 前記帯電防止層と前記基材フィルムとの屈折率差の絶対値が、0.1以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の帯電防止フィルム。
  6. ヘイズ値が0.3%以下であり、全光線透過率が85%以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電防止フィルム。
  7. 前記基材フィルムが、脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる基材フィルムである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の帯電防止フィルム。
  8. 前記基材フィルムが、第一表面層、中間層及び第二表面層をこの順に備え、
    前記中間層が、紫外線吸収剤を含み、
    前記基材フィルムの厚みが、10μm以上60μm以下であり、
    前記基材フィルムの波長380nmにおける光線透過率が、10%以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の帯電防止フィルム。
  9. 前記基材フィルムが、斜め延伸フィルムである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の帯電防止フィルム。
  10. 前記基材フィルムが、下記1及び2を満たす、請求項9に記載の帯電防止フィルム。
    1)波長550nmにおける面内レターデーションが80〜180nm
    2)遅相軸が長手方向に対して、45°±5°
  11. ロール状のフィルムである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の帯電防止フィルム。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の帯電防止フィルムを含む、偏光板。
  13. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の帯電防止フィルムとタッチパネル部材とを含む、タッチパネル。
  14. 請求項12に記載の偏光板とタッチパネル部材とを含む、タッチパネル。
  15. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の帯電防止フィルムとタッチパネル部材とを含む、液晶表示装置。
  16. 請求項12に記載の偏光板を含む、液晶表示装置。
  17. 請求項13又は14に記載のタッチパネルを含む、液晶表示装置。
  18. 前記液晶表示装置の液晶セルと前記帯電防止層とが導通されている、請求項15〜17のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  19. 前記液晶表示装置がIPS方式である、請求項15〜18のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
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